綾野剛が見た一筋の光「息苦しくなったら、空を見上げてみればいい」
読んでいて生きた気持ちになれる台本が、いい台本なんだと勝手に思い込んでいた。だからこそ、綾野の答えに意表を突かれた。
「活字上で生きられたら、現場に行って何があるのよ、という話です。そうじゃなくて、台本を読んでも、これをどうやって生きたらいいのか見当もつかないぐらいの方が、いざ現場に行ったときに、ロケーションが共演者となって、いろんな発見をくれるんです」
この映画もそうだった。ロケ地のY字路に立ったとき、綾野は「覚悟を決めさせられた」と振り返る。
「誰が読んでも同じ芝居になる書かれ方をしている台本は、演じていて恥ずかしいんです。どう生きればいいかわからないからこそ、何をやっても正解になる。もっと言うと、答えを見つけることなんて大事じゃないんです。
それよりも、監督とキャストとスタッフと一緒になって答えを紡いでいくことが、映画をつくることなんじゃないかと思います」
本作では、陰惨な村社会の歪みがありありと描かれているが、決してこの閉塞感は地方都市に限ったことではない。フォーカスを広げれば、日本そのものが大きな村社会だ。同調圧力や集団心理による過剰な攻撃が、今を生きるすべての人たちを生きにくくさせている。