支配人・岩波律子氏に聞く、ミニシアターの草分け・岩波ホールの“re:START”
ですから通常に戻るにはかなり時間がかかることは覚悟しております。
もう一方で、現在のような席数を限定して、ソーシャルディスタンスをとっての上映というのが、果たして、真のスクリーン体験、劇場体験、映画体験と言えるのかなと。やはり、多くのお客さんと場を共有しながら時間を過ごす。暗闇の中で、見ず知らずの人と観ることが真の映画体験ではないでしょうか。それがこのコロナ禍で、なくなってしまってはいけない。
もちろん作品を楽しむことはDVDやVODでもできます。ただ、実感を伴うということに関しては、音楽にしても舞台にしても、ライブが長けている。映画を映画館で観るということも、変な言い方になりますが、“半ライブ”だと思うんです。
演者や奏者は目の前にいませんけど、映画が代わりとなってくれて、体感としてこちらに伝わってくるものがある。
そうやって身をもって実感したことは、自分でなにか物事を判断する際の素養を作るんです。情報として素通りしていかない。単なるデータで終わらない。自分の身に置き換えて考えたり、そのことに思いを馳せたりすることができる。そのように物事を感じたり、見たりすることができるのは、とても大切だと思うんです。