おとな向け映画ガイド 今週の公開作品から、出色の3本をご紹介します。
最も重要で大変な「言葉の用例を探す」作業に、一般人の協力を募ったのです。それに応え、世界中から用例が郵便で集まります。なかでも、大量に、しかも的確なものを送ってきたのが、マイナーという医師でした。教養人で読書家、辞書編纂にこれほど力になる協力者はいないのですが、アメリカ人の彼は、実は、南北戦争の後遺症で精神を病み、イギリスで殺人事件を起こし、精神病院に措置入院させられていたのです。
マレー博士を演じるのはメル・ギブソン。そして、マイナー役はショーン・ペンです。歴史の教科書にでてくるような、髭面の偉人そのままの顔。格調があり、パッションも充分です。
このふたりが、最初は手紙のやりとりから、やがて交流が始まり、深い友情と信頼で結ばれていきます。
超アナログ時代の辞書作り、ビクトリア朝のイギリスの再現に好奇心がそそられます。そして、なによりもハリウッドを代表する名優ふたりの奥深い演技がみもの。ご堪能ください。
『スパイの妻』
黒沢清監督がヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞した作品です。1940年、大戦前夜の神戸を舞台にした歴史ドラマであり、緻密に作られたスパイサスペンスです。