【LIMIA歳時記】7月は「文月」。本格的な夏の到来です
と言い、この言葉は平安時代には既に和歌に歌われていました。今でも「納涼花火大会」、「納涼船」などといいますよね。『源氏物語』によると、平安貴族は、池の面を吹く夕風のなかで、釣りをしたり、詩歌の会や音楽の会を催して暑さを忘れたそうです。優雅ですね。
「涼し」には、実際に体に感じる涼しさ以外に、心持ちを表現する場合があります。「涼しい顔」「涼しい目」などといいますが、これはまさに英語でいう「cool」というニュアンスですね。
明治から昭和にかけて活躍した小説家・泉鏡花の、江戸時代を舞台にした戯曲『天守物語』に出てくる亀姫が、富姫に向かって「お涼しい、お姉様(あねえさま)」というシーンがあります。これは「お姉様、カッコいい!」という意味のセリフです。
この『天守物語』は短い戯曲なのですが、「涼しい」という言葉がそれぞれ違うニュアンスで3回出てきます。ご興味のある方は、原作や映画、舞台などで確かめてみてはいかがでしょうか。
【今月の一句】
髪少しつめて涼しく結ひにけり高橋淡路女
●文如月サラ(きさらぎさら)
エディター、俳人。(株)マガジンハウスで『anan』『Hanako』などの編集者を経て独立。