料理家・飛田和緒の10年ぶりのエッセイ「おとなになってはみたけれど」が発売。歳を重ねて気付く“おとな”の楽しみかた
50代を迎え、“おとな"には十分な年になった今だから思うこと、日々のことを、海辺の家に住む料理家・飛田和緒さんが「自分の言葉で伝えたい」と飾らない言葉で綴りました。著者にとっては10年ぶりのエッセイ集。読むほどに、年を重ねることが楽しく思えてきます。
本書の一部をご紹介します【01:料理家という仕事をしていても】
料理家という肩書ではあるが、料理をつくるのが根っから好きなのかと自問する。
もし、いつも隣にわたし好みの味をつくってくれる人がいて、食べたいときにさっと料理が出来上がってくるとすれば、きっとわたしは台所に立たないのではないかと思うときがある。それが実際にはままならないから、自分でつくるしかないのだ。
どちらかといえばつくるより、食べることが好き。おいしいものを食べたい一心。ただ食いしんぼなのだ。
わたしの料理は18歳のときに親元を離れて自分の台所を持ったときから始まった。最初はテレビや雑誌で見かけたレシピをつくってみたり、バイトをしていた洋食屋さんのまかないや居酒屋のおいしかったメニューをまねしてみたり。
お金もない学生だから、そんなにぜいたくなものを食べていたわけではないが、自分がおいしいと思ったものは、できる限りその味に近づくようつくってみたいと台所に立っていた。