営業車を傷つけてしまった! 社員が修理費用を支払うべき?
を考えることもできます。
この場合、労働契約上、業務命令に基づく労務の過程で生じた事故であれば、一定のリスクがあるのは当然だから、単なる過失に過ぎない場合は労働者の責任は制限されるべきという考え方もあります。
上記の最高裁判例はやや古い事案ですが、最近の下級審裁判例では、このような責任制限の論理を用いて労働者の責任を1割と認定したケース(東京地判平成17年7月12日労判899号47頁)もあります。
いずれにしても、個別具体的な事情に即して、妥当とされる責任割合が認定されることになると考えられます」
過失・不注意の程度によって、「どちらが払うか」が変わってくるようですね。
■原則として就業規則が優先される
佐藤弁護士:「就業規則に特別な規定があれば、それは労働契約の一部を構成するため、その規定の内容が不合理であるなどの事情がない限り、当該規定に基づいて判断することになると思われます。
ちなみに、労働基準法24条1項に「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」という『賃金全額払いの原則』があり、原則として賃金との間で相殺することはできません。