ルーを大都会で獲物を狩る野生動物に見立てて、彼の行動をネイチャー・ドキュメンタリーのように撮りたかったんだ。だからこそワイドレンズを多用し、きれいなネオンがきらめく場所や美しい山々を背景にした場所で撮影を行っている。それと映画全体を通して“善悪を区別しない”ことを心がけた。野生の世界では、それが当然だから」。
スクープ映像をモノにするため、危ういモラルの一線を踏み越えていくルーは、観る者を戦慄させる不気味なキャラクターだが、冷酷非情な悪人にはしたくなかったという。「ルーは暴力性を内に秘めた危険な男だが、観客が共感を抱ける余地を残したかった。仕事を通して自分を高め、他者に認められたいと願っているルーは、ごく普通の若者でもある。なるべく彼を人間らしく見せるために、いかにもスリラー風のダークな撮り方や音楽の使い方は避けるようにした。
単なるサイコパス映画だと観客に思われたら、僕が伝えたかったテーマが損なわれてしまうから」。
その監督が大切にしたテーマは、物議を醸すであろう“驚愕の結末”に集約されている。「結末には、僕自身が世界の現状を見て感じたことが反映されている。ルーは金のためなら何でもやる男だが、現代ではそのようなやり方がしばしば成功に結びついたりする。