音楽に青春というプロローグを。〈ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール〉【洒脱なレディ論】
映画鑑賞中、手元のノートにメモを取る癖のあるわたしは物語中盤、イヴの言葉にハッとする。『この先の10年を社会に文句を言っているだけで過ごしていいの?』この言葉を思わず走り書きで、書き留めた。ゴッド・ヘルプ・ザ・ガールーーー、20代前半のわたしにとってはまるで生き写しのような映画のひとつだ。精神疾患ガールの爽やかなまでの成長物語高校卒業後してすぐ男を追って渡英したイヴは精神を病み病院暮らし。物語はその病棟を抜け出して潜り込んだクラブで心優しいギタリスト(だけれども大学内にあるプールのライフガードで生計を立てている)のジェームズと出会うところから始まる。ジェームズはスクールカーストの底辺を生きてきたようなTHE 文化系ボーイ。ギタリストとしていつか自分のレコードをリリースすることを夢見ながら、現実は日々ライフガードで日銭を稼ぎ、クラブで自作の歌を披露しようものなら地元のギャングに叩かれる。そんなさえないジェームズを気に入ったイヴはある日、彼の住むアパートメントの隣の部屋に転がり込む。
ウェイターの仕事を見つけ、病院から持ち出した薬が減っていくのに比例して、充実した新生活を始めていた。そんな毎日において、ジェームズがイヴの音楽の才能に気づくのにそんなに時間はかかるまい。