なぜフリーの眼科医は無報酬で1万人以上を失明から救ったのか?
しかもベトナムでは、患者さんからは一切の金銭を受け取らず、渡航費、滞在費、医療品代などもすべて持ち出しなのだとか。
■医者は特別な存在じゃない
「白衣が患者さんに与える威圧感が好きじゃないから、もう何年も白衣を着ていない」
「権力、金銭欲、嫉妬、憎しみ、裏切りが渦巻く環境で、そんなふうに染まるのが嫌だった」
「変なプライドなんか必要ない。困っている人がいたら助けてあげたい」
「目指すは“医者らしくない医者”。医者は特別な存在じゃない」
著者の言葉はそれぞれが真っ当なもので、だからこそ強い説得力があります。
とはいえ、ここまで献身的になれるということにはただ驚くばかり。近年は「人のためになる」ことの価値が再確認されていますが、そうはいっても簡単にできることではないはずです。
■父親を侮辱した医師の言葉
著者が医師になる決意をしたのは16歳のころ。がんのためみるみる衰弱していく父親についての、医師と看護師との会話を偶然耳にしてしまったことがきっかけだったのだといいます。
「82号室のあのクランケ(患者)は文句ばかりいって本当にうるさいやつだ。そうせもうすぐ死ぬのに」
病気を治して命を助ける存在だと思っていた医師が、死と戦っている父親を侮辱した……。