株式会社 中島大祥堂(本社:大阪府八尾市、代表取締役:中島 慎介)は、7月12日(水)、「中島大祥堂 淀屋橋店」をオープンいたします。今回は、オープンに先駆け、商品ラインナップをご紹介いたします。中島大祥堂淀屋橋店、7月12日オープン「中島大祥堂」は、栗・黒豆・小豆など丹波の素材を使ったケーキや焼菓子のブランドとして兵庫県丹波市柏原町に本店を構えるほか、大丸梅田店、高島屋大阪店、大丸心斎橋店、大丸東京店にも店舗を構えており、今回は本店以外の初の路面店となります。大きな丹波栗、丹波大納言小豆の鹿の子をサクサクのパイ生地で包んだ「くりまる」「あんまる」、そして丹波産の素材を使った淀屋橋店限定のカヌレを店内のオーブンから焼きたてでご提供いたします。カフェも併設し、注文を受けてからモンブランクリームをしぼる「丹波栗のしぼりたてモンブラン」や、夏場は丹波栗を贅沢に使ったかき氷もメニューに並びます。物販では、丹波ならではの良質な素材を使った7種クッキーを詰め合わせたクッキー缶や、丹波栗や小豆、黒豆のパウンドケーキやサブレなど、手土産にご好評いただいている詰め合わせも多数ご用意。地下鉄・京阪淀屋橋駅に直結、中之島公園や北浜エリアにもほど近く、近隣にお勤めの方や、休日に遊びに来られる方の日常にも特別な日にもお使いいただける、丹波の豊かな実りにあふれた店舗です。中島大祥堂 淀屋橋店限定「丹波カヌレ」の5個入(各1種)【商品ラインナップ】<淀屋橋店限定 丹波カヌレ>■丹波カヌレ5個入(各1個) 960円丹波素材の魅力を閉じ込めて、外はカリッと中はもっちりと焼き上げました。■プレーン 162円丹波のやまぶき卵を使ったカヌレ。バニラの風味とラム酒の余韻が広がる上品な味わい。■丹波栗 216円丹波栗の渋皮煮を閉じ込めて焼き上げたカヌレに、丹波栗のペーストを乗せました。■丹波大納言小豆 194円ほろ苦い宇治抹茶の生地に、丹波大納言小豆の鹿の子豆を合わせた上品な味わい。■丹波黒豆 194円香ばしい丹波産黒豆きな粉を合わせた生地に、優しい甘さの黒豆鹿の子を合わせました。■丹波黒胡麻 194円芳醇な香りの丹波産黒胡麻を練り込んで焼き上げました。■くりまる テイクアウト594円/イートイン605円丹波栗の渋皮煮と金時芋のフィリングを、バターの風味豊かなパイ生地で包んでまんまるに焼き上げました。ほっくりした丹波栗とサクサクのパイのおいしさをお楽しみください。■いもくり 1個 192円いもくり 12個入 2,700円ていねいに裏ごしした和栗と甘みのある“なると金時芋”の繊細な風味。吟味した素材の良さを、素直に味わっていただけるお菓子。■丹波フールセック 2,700円丹波黒ごまのフロランタンや、丹波黒豆クッキー、丹波いちごのメレンゲなど、丹波ならではの良質な素材を使った7種クッキーの詰め合わせ。数量限定。■かやぶき テイクアウト864円/イートイン880円丹波栗をふんだんに使用した、茅葺屋根がモチーフのモンブラン。ロースト玄米入りのメレンゲが食感のアクセントに。■丹波栗のしぼりたてモンブラン 1,650円しぼりたてならではの丹波栗の繊細な風味と味わいをお愉しみいただけるモンブラン。ほっくりとした大粒の丹波栗とサクサクのメレンゲ、甘さ控えめの生クリームの上に、モンブランクリームをしぼりました。<近日メニューオン>■かき氷丹波栗とキャラメル 1,320円丹波栗の美味しさを愉しめる特製かき氷。芳ばしいキャラメルソースと玄米パフが丹波栗の風味を引き立てます。トッピングにも丹波栗の渋皮煮を乗せた栗尽くしの美味しさ。食べ進めるごとに素材の味わいが広がります。近日メニューオンされる夏期限定の「かき氷 丹波栗とキャラメル」※価格は全て税込です中島大祥堂 淀屋橋店内観【中島大祥堂 淀屋橋店】所在地 :〒541-0041 大阪市中央区北浜3-2-23 新・大阪信愛ビル1FTEL :06-6926-8152(7月12日より開通)営業時間 :10:00~19:00平米数 :85m2席数 :14席オープン日:2023年7月12日(水)中島大祥堂 丹波本店外観【「中島大祥堂」ブランド】丹波里山から実りと心を込めたお菓子をお届けしています。丹波は日本の原風景「里山」として栗・黒豆・黒ごま・大納言小豆など大地の恵みの豊かな地。四季折々の景観や、自然と共存するための知恵が脈々と受け継がれてきました。私たちはその大地の豊かな恵みをお菓子に込めて多くの方にお届けします。旗艦店となる「丹波本店」(兵庫県丹波市)をはじめ、関西地区、東京で6店舗展開しております。 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2023年07月11日健康志向の高まりや美容面から人気が再燃しているピラティスは、実は腸にもいい影響があるんです。今回は毎日続けられる超簡単な動きを紹介。“排便筋”を鍛え、腸を刺激する“腸活ピラティス”を始めよう!快便をもたらす、胸式呼吸ピラティス。眠っている筋肉を目覚めさせ、使いすぎた筋肉の疲労はほぐしてくれるピラティスは、実は腸活にも大いに役立つ。「便秘の人は、姿勢が悪かったり、冷えにも悩みがちです。ピラティスを続ければ姿勢は整い、血流が改善して冷えが解消し、普段意識していなかった排便に役立つ筋肉を目覚めさせることもできます」(ピラティストレーナー・千葉絵美さん)今回、“腸活ピラティス”として千葉さんが提案してくれたのは、朝昼夜のエクササイズ。「排便に役立つ筋肉の中でも、腹直筋、腹斜筋、腹横筋などのお腹まわりの筋肉や、骨盤と脚をつなぐ腸腰筋、骨盤を支える骨盤底筋など、普段意識しにくい筋肉をターゲットにしました。朝は“排便筋”にスイッチを入れ、昼は疲れを取ったり、筋トレのようなことをして刺激。夜はリラックスモードに導く、といった具合に構成しました」特に意識してほしいのが呼吸。「常に肺全体を大きく使う胸式呼吸で行います。横隔膜が上下に大きく動くので胃腸への刺激にもなり、ぜん動運動を促進。腸活に欠かせない呼吸を、この機会にマスターしてください」この“排便筋”にアプローチ!排便筋1:腹直筋・腹斜筋・腹横筋お腹の縦、横、斜めに配された腹筋は便を押し出す時に必要。女性は男性に比べ腹筋が弱い人が多い。腹筋を刺激すると腹部の血流が促進され、腸の機能改善につながることも。排便筋2:腸腰筋腸と密接な関係がある、上半身と下半身をつなぐインナーマッスル。腸をまたぐように骨についているので、座りっぱなしの影響で腸腰筋が硬くなると排便しにくくなる。排便筋3:骨盤底筋骨盤下部をハンモックのような形状で覆い、腸や子宮などの臓器を下から支える筋肉群。いきむ時に必要で、骨盤底筋の柔軟性が低下すると直腸が締めつけられ、便秘にもなりやすい。朝の腸活ピラティス起き抜けに、ベッドの中からスタート!誰でも寝起き直後は腸も頭もスイッチオフ状態。ベッドの中でゆっくり刺激を与えて徐々に目覚め、呼吸を整え体を動かし、朝の排便につながる流れをサポートしていこう。1、目覚めのおなかトントン(30秒)目覚めたら即実行できるエクササイズ。おへそまわりの大腸を優しく刺激。上行結腸~横行結腸~下行結腸~S状結腸~直腸と、腸の形をイメージしながら行おう。仰向けで両膝を立て、腰幅より少し広めに足を開く。両手をグーにしておへそ周辺を軽く叩く。呼吸を止めずに30秒続ける。2、朝の胸式呼吸(5回)横隔膜を大きく広げる胸式呼吸は、酸素をたっぷり吸い込めるので頭がスッキリ。横隔膜が上下にダイナミックに動いて腸をマッサージし、ぜん動運動を促してくれる。1の姿勢のまま、両手を胸のすぐ下、肋骨の下部に当てる。そのままゆっくり口から息を吐き切る。肩などが力まないよう注意。息を吐き切ったら、鼻から息を吸い込む。肋骨に添えた指が開くように横隔膜を広げる。お腹は膨らまさない。5回ゆっくり繰り返す。3、膝抱えゆらゆら(5往復)寝ている間にこわばった背中や腰まわりを同時にほぐせる動き。骨盤と脚をつなぐインナーマッスル・腸腰筋が刺激されるのを感じながら行うとより効果的。仰向けのまま両膝を抱え、胸の近くまで持っていく。無理に胸に近づけなくてOK。左右に膝を倒すイメージで揺らす。腰の両サイドを交互に床につけ、ゆっくり5往復。呼吸は止めない。4、スパインツイスト(5往復)背骨を構成する骨の隙間を広げるように行うと捻りやすい。縮まっていた腸が伸びて捻られることで、便意が起きやすくなる。背筋を高く伸ばすイメージ。その高さを維持したまま、息を吐きながら上半身を捻る。息を吸いながら体を正面に戻す。足を腰幅に開き、背筋を伸ばして椅子に座り、両肘下を上下に重ねて胸の前に。骨盤が後傾したり前傾しないよう注意。息を吐きながら反対側も同様に捻る。おへそごと回転させるのがポイント。腕の位置は変えず、左右ゆっくり5往復。5、腹斜筋ストレッチ(左右1回ずつ)背中側から脇腹にかけてある腹斜筋は脊椎やお腹の筋肉を支える。便を出し切る際に重要で、特に左側を伸ばすと便が出やすくなる。両足をできるだけ大きく開いて立つ。呼吸を整えて肩に力が入らないようリラックス。息を吐きながら上体を右へ倒す。左手はまっすぐ遠くに伸ばすようにする。右手は右膝の上。体の左側面、腰辺りをしっかり伸ばし、視線は上に。倒し切った位置で5呼吸。反対側も同様に。NG:上体を倒す際は、前のめりにならないようにする。腕をしっかり伸ばさないと呼吸が深く入らない。千葉絵美さんピラティストレーナー。「studio‐emi」主宰。手ぬぐいを使って、誰でも正しい姿勢でトレーニングできる“手ぬトレ(R)”を考案。YouTubeで無料レッスン動画を毎日配信中。ブラトップ¥9,350レギンス¥13,750(共にチャコット・バランス/チャコット TEL:0120・155・653)※『anan』2023年7月12日号より。写真・中島慶子スタイリスト・武政ヘア&メイク・浜田あゆみモデル・横川莉那(スペースクラフト)取材、文・板倉ミキコ(by anan編集部)
2023年07月09日出会った女性がネタの源。そんな横澤夏子さんが、街で見つけたいい女を実演。今回は、予想外の休みが続いても焦らない女性、「無理に仕事しようとしない女」になりきり。休みは自分にとって必要な休養をとる期間だと考えて。仕事をしていると時々、思ったようにオファーが入らなくて休みが続き、「最近呼ばれないな」「知らないうちに何かヘマをしたのかな?」と不安になることがあります。先輩に相談したところ、「焦るよりもどっしり構えて、今はそういう時期なんだと開き直ることが大事」「神様が与えてくれたお休みだと思ってしっかり休んだ方が、次の仕事が来た時に誠心誠意働ける」と、教えてくれました。まず、“この方でもそんなふうに思う時期があるんだな”と安心したし、焦った気持ちで仕事をしていると空回りをすることも多いなと気づきました。以前、仕事を受けるためにシッターさんを頼んだことがあったのですが、“そこまでしたのだから頑張らなきゃ”と肩に力が入って、上手くいかなかったことも…。また、気の進まない婚活パーティに無理して行った時に限って、“今日はいい人がいないな”と思っている人ばかりが集まっていたことも思い出しました。引き寄せじゃないですが、ネガティブな気持ちが良くない方向に影響することはあると思うので、無理せず、気持ちよく仕事することが一番だなと、あらためて感じました。先輩のように、次の仕事のための準備期間にしようというポジティブな変換力や、気持ちを切り替える力があることは、重要ですよね。そのためには、休みをただの休みととらえず、自分に必要な休養をとる期間だと考えてしっかりと休み、メンタルを癒しておくことが大事だと思います。また、周りの人と自分の状況を比べると焦りがちなので、比較するのであれば、これまでの自分自身を対象にしてみましょう。“私にしては上手くいってる”“前の自分よりはいいかも”と感じることができたら、それで上出来だと思います!よこさわ・なつこ芸人。“ちょっとイラッとくる女”のモノマネで大ブレイク。バラエティ番組やCMで活躍中。2023年6月に第三子を出産。※『anan』2023年7月12日号より。写真・中島慶子イラスト・別府麻衣文・重信 綾(by anan編集部)
2023年07月08日町の高台にある、森の中かと錯覚するような道の先に立つ洋館の主であり、顧客の求めに応じて完全オーダーメイドで香りを作る調香師・小川朔。その館に家事手伝いのアルバイトとして通うようになった若い女性・若宮一香を語り手にした『透明な夜の香り』は、ゾクゾクするような妖しさが楽しめる傑作で、熱狂的なファンを生んだ。五感を刺激される描写が官能的。天才調香師が活躍する第2弾。常に新しい小説舞台を用意してきた千早茜さんだが、初めて小川朔が登場する続編を執筆。『赤い月の香り』で語り手を務めるのは、一香とは対照的な朝倉満だ。騒がしくて、哀しみも寂しさも〈怒りの匂い〉にしてしまう彼が、終盤の思いがけない展開に深く関わっていくさまに、息を呑む。「前作では、天才を書いてみないかというリクエストも踏まえ、朔の天才性を前面に出しました。ただ一香と出会ったことで、朔は少し人間味を帯びたし、〈感覚に対する身体の反応が過敏な〉満を羨ましく思っているところもあるんですね。なので本作では、朔が作った香り自体は完璧でも、それがどんな効果を及ぼすかまではコントロールできないという回も入れました」朔が分析し、調合する香りの描写の中に、愛、執着、記憶などの分かちがたい感情が溶け込み、読み手の鼻腔をくすぐってくる。「愛情と執着って、ともするとすごく近いものになり得ると思うんです。相手が大事だから気にかけるんですけれど、気にかけ方が過剰だと束縛や嫉妬にもつながってしまう。私は朔と似てそこらへんのバランスがすごい不器用な人間なので、結構悩みながら書きましたね」さて、朔のファンとしては気になっているだろう、一香との関係。「これについてはすごく考えたんですね。メモもいっぱいあって(笑)。最初は映画『シザーハンズ』のようなイメージで、雪が降る中でずっと相手の幻影を見て思い続けているとかを考えていたんですが、朔と一香は映画のふたりよりは交流があるわけで。はっきりした進展を明示するか、平行線の名前のつかない関係のままか、読者はどちらを望んでいるのか気になりますね」朔が満を洋館のアルバイトとして採用した真の理由とは。満の記憶を縛り悪夢のように追いかけてくる赤い月の秘密とは。一気読み必至だ。千早 茜『赤い月の香り』『透明な~』の主要キャラもたびたび登場、一香は満と関わり、朔と真逆キャラの新城も活躍。庭師の源さんの過去はかなりのサプライズ!集英社1760円ちはや・あかね1979年、北海道生まれ。2008年、『魚神』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。’13年、『あとかた』で島清恋愛文学賞、今年1月に『しろがねの葉』で直木賞ほか受賞歴多数。※『anan』2023年7月5日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2023年07月03日中島健人(Sexy Zone)がMCを務める映画情報番組『中島健人の今、映画について知りたいコト。』の第28回が、7月7日(金) にWOWOWで放送・配信される。『中島健人の今、映画について知りたいコト。』は、ハリウッドをけん引する映画監督やクリエーター、さらに世界へ羽ばたく日本の映画監督へのインタビューや映画製作現場の取材などを通じて、中島が知りたい“映画の今”について学ぶ月1回のレギュラー情報番組。第28回は「アジアを代表する監督に直撃!~行定勲&パク・チャヌク~」と題し、最新作『リボルバー・リリー』の公開(8月11日(金・祝) 予定)を控える行定勲監督と、アジアの巨匠パク・チャヌク監督にインタビュー。映画作りに向き合い続ける行定監督に、何を考え、どんな映画を作っていこうとしているのか、中島が聞きつくす。そしてパク監督には、世界から注目を集める韓国映画の魅力について質問をぶつけた。また、放送・配信に先駆け、前回の未公開映像とともに、第28回の模様を紹介するプロモーション映像が公開された。前回の未公開映像では、中島と対談したルーカス・ドン監督が、なんとSexyZoneの“あの曲”のMusic Videoを鑑賞し、感想を述べる姿が。そして次回予告では、行定監督とのインタビューの一部を見ることができる。なおプロモーション映像の全編は、WOWOWオンデマンドで公開中だ。■中島健人 コメント~行定勲監督とのインタビューを経て~お話させていただき、僭越ながらとてもフィーリングの合う方だと感じました。行定監督は、アカデミー賞の生放送や、別々の作品の撮影中に映画スタジオでお会いしたりと、今まで不思議なご縁があったのですが、今回ようやくお話させていただき、自分自身の作品に対する熱量のぶつけ方や、作品に対しての監督の考え・取り組み方に共通点を見つけることができ、とても熱い時間になりました。最高の出逢いを結んでくれた番組に心から感謝します。~パク・チャヌク監督とのインタビューを経て~同じアジア人として刺激を受けました。今回『別れる決心』を拝見し、自分のラブストーリーの概念が崩れ、ロマンスの描き方には何通りもあるのだと教わりました。韓国映画はクオリティが高くとても人気があります。その理由をパク・チャヌク監督から聞き出せた気がします。『中島健人の今、映画について知りたいコト。』プロモーション映像(ショートVer.)<番組情報>中島健人の今、映画について知りたいコト。第28回:7月7日(金) 午後10:00~放送・配信[WOWOWプライム] [WOWOWオンデマンド]関連リンク番組オフィシャルサイト:映画公式Twitter:オンデマンド番組ページ:番組公式Instagram:
2023年06月29日前作『イチケイのカラス』では、裁判官という職業を軸に裁判所で働く人々をリアルに描いた、浅見理都さん。本作『クジャクのダンス、誰が見た?』のテーマは“冤罪”だ。元警察官の父を殺した犯人は?なかったことにはできない真実。「『イチケイ~』でも少し扱った題材ですが、自分のなかで消化しきれた感覚が得られず、気になっていました。冤罪は個人に降りかかる最大級の不幸だと思っているのですが、ある日いきなり警察に捕まったらどうしよう、などと不安に思っている人はまずいないし、自分事として想像しにくいですよね。今回はもっとエンタメに寄せながら、もう一度自分なりに描いてみたいと思いました」事件が起こるのは、雪がちらつくクリスマスイブの夜。心麦(こむぎ)と父が暮らす一軒家が全焼し、元警察官の父が遺体で発見される。容疑者として逮捕されたのは、父が担当した凶悪事件で死刑囚となった男の息子。これによって事件は終息したかに思えたが、亡き父が遺した手紙には、その容疑者が犯人ではないことを示す内容が。そして心麦は“遺言”に従って、松風という弁護士のもとへ。「心麦は理想の妹像です。私は3人姉妹の末っ子で、弟か妹が欲しかったのですが、芯がしっかりある子に叱られたいっていう願望があって(笑)。一方で心麦は、何度も同じ失敗をするなど危なっかしい面もあるんですけど、応援したくなるような子に描けていればいいですね」大人びたところと子供っぽさを併せ持つ21歳の心麦に振り回される、飄々とした雰囲気の松風という、デコボコのバディも本作の読みどころ。そして多くの人がおそらく気になっているのが、このタイトルだろう。1巻でタイトルにまつわるエピソードが出てくるのだが、簡単に説明すると、もしもジャングルの中でクジャクが踊っていて、それを誰も見ていなかったとしたら、存在していないことと同じなのか、というちょっとドキリとするような意味が。「世界のことわざを紹介している本から見つけた言葉です。描こうとしていた内容にも合っているし、前作がカラスだったので、今回はクジャクにするのもいいかなと(笑)」父はなぜ殺されてしまったのか、そして父が主張するように冤罪であるならば、真の犯人は誰なのか。クジャクのダンスをないものにしないために、心麦と松風は奔走する。「冤罪は誰かひとりの責任で起こることではないと思うので、それぞれの立場の人をしっかり描いていきたいと思っています。3巻以降、物語はさらに加速する予定なので!」浅見理都『クジャクのダンス、誰が見た?』2松風と共に父を殺した犯人を捜す心麦。父が関わった過去の猟奇的殺人事件と複雑に絡み合い、翻弄されるクライム・サスペンス。月刊誌『Kiss』で連載中。講談社726円あさみ・りとマンガ家。埼玉県出身。「第三日曜日」で第33回MANGA OPEN東村アキコ賞を受賞。『イチケイのカラス』(全4巻)は映像化もされた。※『anan』2023年6月28日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2023年06月26日2023年6月15日、映画監督の中島貞夫さんが亡くなったことが分かりました。88歳でした。サンケイスポーツによると、中島さんは同月11日、肺炎のため亡くなったとのこと。葬儀はすでに、家族葬で営まれたといいます。中島さんは東映株式会社への入社後、1964年に映画『くノ一忍法』で監督としてデビュー。『893愚連隊』や『まむしの兄弟』シリーズ、『木枯し紋次郎』シリーズ、『日本の首領』シリーズ、『極道の妻たち』シリーズなど、数多くの映画を生み出したほか、脚本家としても活躍をしてきました。ヤクザ映画の大物監督として、多くの人の心をつかんできた、中島さん。訃報に対し、ネットでは中島さんの作品に触れてきた人から「中島監督の作品は、自分にとって青春の映画でした」「素晴らしい作品をありがとう」といった声が上がっています。中島さんのご冥福をお祈りいたします。[文・構成/grape編集部]
2023年06月15日小学5年生の晶(あき)は、物知りで絵が上手な高校生の兄・達(とおる)が大好きだ。しかし、不登校で家にいることの多い達は、晶のクラスメイトの権(ごん)ちゃんからは〈大変だよね〉などと同情されてしまうし、〈衝動的に、必要以上に〉動いて音を立ててしまうので大家さんからはお目玉を食らう。兄をめぐる軋轢と受容を、晶の真っすぐな視点で描き出したのが、川上佐都さんの『街に躍(は)ねる』だ。温かな兄弟愛や人との信頼を通して、普通という呪縛を解いていく感動作。「私の周りでも、知識が豊富で、ぼそっとつぶやいたアイデアがすごく面白かったりする人が、何人かいたんですね。でも、闊達に人とコミュニケーションしたり、人前でプレゼンしたりするのは苦手そうで、世間のもの差しではかってしまうと理解されにくい。それこそ達のような人を語り手にしてしまうと、『これが苦しい、あれが苦しい』のお話になりかねないなと思ったんです。そうしないために、別視点を用意して、彼をカッコ良く書いてみたいという気持ちがありました」晶は、取り立てて頭がいいキャラではなく、ただ明るくて純粋な子として描かれる。「自分の家で起きていることが“普通”だから、よその家と比べて普通じゃないと言われたら、戸惑ったり反発したりするわけですよね」兄に〈権ちゃんの言う「コミュ障」〉ではなくなってほしい気持ちと、自分までもが普通を求める周囲に同調してしまうことへの嫌悪で揺れる晶。家族ぐるみで立ち向かう試練を通し、真っすぐに一生懸命考え続ける晶がまぶしく、愛おしい。本書は2章からなる。受賞後に、兄弟の母視点となる第二章を加筆。「『この子のことを私がいちばんわかっている』というプライドがあり、見えにくい部分も見ている母親に語らせるのが面白いのではないかと」達の生きづらさや、彼を見守る晶や母のつらさは、語りの端々から伝わってくる。だが、それを理解してくれる味方が必ずいる。たとえば晶には親友のシンジュが、母には2人の夫が。そんな温かな存在が余さず描かれているのも本書の魅力だ。「達自身は、自分が人と違うとも感じていないだろうし、幸福なのかもしれない。私たちが勝手に、『普通じゃないとかわいそう』というのは違うんじゃないかなと思います」普通のレールに乗らなくても幸せに生きよう、と言われた気がする。川上佐都『街に躍(は)ねる』達を対等の友人として接してくれる年上の美術館員・加賀美や、子どもにはおおらかな愛情を持つ元夫など周囲の大人もいい人揃い。ポプラ社1760円かわかみ・さと1993年生まれ、神奈川県鎌倉市出身。3年弱の投稿生活を経て、第11回ポプラ社小説新人賞特別賞を受賞。受賞作を含む本書がデビュー作となる。※『anan』2023年6月14日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2023年06月12日遥か昔から人々の生活に息づいていた暦。その古来の知恵を現代風に読み解き、生活の指針となるように解説します。教えてくれたのは、運命学研究家・C.I.さんです。暦を使うに当たって一つ覚えてほしいことがあります。それは、その日の影響は1日限りではなく、起点としての働きをしているということです。その日に始めたことが今後どうなるのか、その傾向や可能性が暦に書かれていると考えてください。そして、あまり吉凶にとらわれず、置かれた状況下で暦の指針をどう生かすかを考えてみる。それが人としての知恵の使いどころであり、毎日をより意義深いものにするための秘訣なのです。ここでは7月の“全体傾向”をご紹介します。7月の指針節度を基本とすべき時期です。誰もが不公平を感じることなく、楽しんだり使ったりできるようなルール作りが目指されるでしょう。例えばAI生成。有用となり得る革新的技術が問題の温床になってしまわないように世界的ルールが必要です。それと同じく、日々の暮らしの中で誰ひとり嫌な思いをすることなく、穏やかに豊かさや便利さを享受できるように節度を守ることが大切です。【1日(土)】世間に対する自分のキャラクターとか会社のイメージに関わりやすい日です。頑張って培ってきたブランド力を損なわないように気を使う場面があるかも。でも、自分のイメージに固執してしまうと、かえって自由度が下がってしまい苦しいこともあるでしょう。一度、等身大のあなたに立ち戻ってみることも大事かもしれません。【2日(日)】新しい環境に自分という存在をねじ込もうとするさまを表す日です。最初は受け入れてもらえずに苦い経験をすることもあるでしょう。それでも「郷に入れば郷に従え」というように、アドバイスを受けたりして溶け込む方法を見つけられたら次第に認められてゆくでしょう。あまり自分を大きく見せないほうが気楽にやれるはず。【3日(月)】誰にでも順調な時期とそうでない時期とがあるものです。ちょっとしたスランプに陥って、何も進展のない状況に焦りや苛立ちを感じることもあるでしょう。今日はそんな自分に失望することなく、今できることだけに力を注いで自信を取り戻すことに集中しましょう。しばらくすればまた元気な自分を見つけられます。【4日(火)】足並みをそろえることがテーマの日です。周りの人たちと協調して物事を進めていくことの難しさを感じるかもしれませんが、それもまた経験のうち。今後のための勉強だと思って学んでいきましょう。考え方の違う人ともうまくやっていくには柔軟性を持つこと、適度な距離を保つこと、そして我を張りすぎないことが大切です。【5日(水)】どっちつかずというのは時に面倒な結果を生むものです。今日の暦は、自分の立場やしたいことを明確にして、あなたにとって大事だと思うことに集中するように告げています。メリハリをつけ、迷いを断つことで、無駄なエネルギーを使わずに済むでしょう。価値を感じる方向や可能性を感じる方向へと歩みを進めましょう。【6日(木)】あまたの無機質な情報が飛び交う現代にあっても、人間社会である以上はお互いの心と心、感情と感情とが交錯するところにあらゆる事柄の重心があります。今日は“お互いの気持ち”を感じ合うことを学ぶ日です。相手の事情や境遇、苦労、努力を推し量り、共感し、励まし合う。気恥ずかしくても相手の働きに対して感謝を伝えよう。【7日(金)】働くことを通じて他の人たちや社会により深く関わることを表す日です。パフォーマンスを維持または回復させるために自ら気合を入れたり、生活のリズムを整えたりするのに向いています。上司などに叱られつつ同僚に励まされて立て直す人もいるかもしれません。自立した人たちとの関係の中で成長していく日ともいえます。【8日(土)】先生と生徒、上司と部下のような上下関係に縁の深い日です。そして精神的な意味では、この両者の立場はふいに反転します。優位に立とうとした瞬間、人は聞く耳を持たなくなり、自ら成長の機会を潰してしまうのです。お互いに謙虚であれば、どっちが偉いというような考えにとらわれず共に向上してゆくことができるはずです。【9日(日)】求心力を得るための通過儀礼の意味を持つ日です。特にリーダー的立場の人にとっては大事なタイミングといえます。舵取り役として周りの人たちの心の機微を捉えることが重要で、ネガティブな感情を振り払い、皆のモチベーションを高めることが求められるでしょう。一段落つけば成果を楽しむ余裕も出てくるはず。【10日(月)】毎日同じ顔触れの人たちと過ごしていると、だんだんと内輪話が多くなり、精神的にも現実的にも閉じた状態になりがちです。今日はそうした状況に新風を吹き込むことに関係します。外部の人材を見つけるとか、年代や業種を超えた交流をして息苦しさを吹き飛ばすのです。ただ、身内の保守的な人には眉をひそめられるかもしれません。【11日(火)】人間、時には度が過ぎてしまうことがあるものです。今日の暦はそんな危なっかしい状況にストップをかけたり、境界線を引いて注意を促したりすることに関係しています。ちょっとした悪ふざけのつもりが、された側に大きなショックを与えてしまうかもしれません。どんな理由があるにしても限度をわきまえておきたいものです。【12日(水)】スタートの意味がある日ですが、詳しく言えば“新たに始めたいことの準備”のほうに力点が置かれています。ただ理想や個性の強さが表れやすく、それをダイレクトに打ち出すと他と衝突するかもしれません。ワンクッション置くために話の通じる人とのコネクションを探すか、小出しにして抵抗感を薄めるとよいでしょう。【13日(木)】お互いの胸の内を隠したまま、あるいは問題の核心から目を背けたままでは進むものも進まない、だからちゃんと向き合う必要があるという意味の日です。心を開くことや問題と向き合うことは一種の冒険で、怖さやリスクもあります。しかし、それを通じて状況と真剣に向き合ったとき、はじめて前進できる地盤が生まれるのです。【14日(金)】新しいアイデアなど、なかなか理解されないことをどうしたら理解してもらえるのか、その方法を模索することがテーマの日です。たとえ少人数でもわかってくれる人がいたら、まずはそこを足掛かりにして丁寧に進めていきましょう。最初は高評価を得るどころか誤解や批判を受けることがあるかもしれませんが、めげないことです。【15日(土)】ビジネスを含め、自分の可能性を広い世界で試したい欲求が出てきやすい日です。特定の人との深いつながりや窮地を切り抜けた体験などから、想像すらしていなかった自分の潜在能力に気づくかもしれません。己の限界を定めてしまう先入観や誰かの否定的な意見に惑わされず、広い視野と展望を持って物事に取り組んでください。【16日(日)】時代の移り変わりや運気の変わり目においては、これから重要になる事柄の“片鱗”が現れているものです。今日の暦はその片鱗、即ち前兆となる物事やキーパーソンを察知することに関係しています。これは個人や社会にとっての運命的な鍵となるものです。そして、それにいち早く気がつき育てた人が次の時代の立役者になります。【17日(月)】今日の暦は仲間や絆がテーマです。「持つべきものは友」という言葉があるように、助けが必要なときに見捨てることなく力になってくれる、そんな存在が本当の友達だとよくいわれます。確かに、表面的な付き合いで終わらず、困ったときに親身になってくれる人(たち)というのは、何物にも代えがたい宝に違いありません。【18日(火)】好きなことは人それぞれだとわかっていても、つい自分のおすすめを聞いてほしかったり、長時間のゲームや愚痴に付き合わせてしまったりすることもあるものです。それが行きすぎると面倒がられて距離を置かれてしまいますが、逆に言えばそんな人間関係を整理するのには良い日です。ただし、無下にするのではなく丁寧な対応を。【19日(水)】周りから求められている役割(キャラクター)を演じることに関係した日です。あたかも役者のように期待されるあり方を表現することで成果を得るわけですが、誰かの言いなりになれという意味ではありません。もし演じることがストレスなら心身の不調として表れてくるので、その際はリトリートして回復を優先してください。【20日(木)】友達と勉強するために集まったのに、おしゃべりに興じて思うように進まなかった経験はありませんか。今日の暦からはそんな印象を受けます。一人で黙々と取り組むほうがずっとはかどりそうです。ちなみに、勉強するなら今日は数学や物理、プログラミングのような理系に向いているでしょう。静かに集中できる環境があれば最高です。【21日(金)】自分らしく生きるために責任を負うような面倒事を避けて、もっと日常的な楽しいことに時間を使いたくなる日。もちろん立場上そうできない人もいますが、友達との飲食やデートなど、心の滋養になるようなことを後のお楽しみにするとモチベーションが上がるでしょう。ちょっと甘えん坊の一面が出やすい日でもあります。【22日(土)】持ち前の天分や才能を誰かのために生かすことを意味する日です。それが仕事として成立するかどうかはともかく、学んだことや培ってきたスキルを活用できる場を見つけられたら嬉しいでしょう。自分に合った場であれば、そこから自然と人間関係も広がりますし、自分自身にもっと価値を感じることができるようになるはずです。【23日(日)】人それぞれ価値観が違うと普段はわかっていても、自分が好きなことや興味を持っていることに関しては、つい押し付けがましくなってしまうことが誰しもあると思います。今日の暦は、魅力などを語りたくなっても主張しすぎずほどほどで自制することが大事だと説いています。あまり熱く語るとかえって引かれてしまうものです。【24日(月)】環境を変える決意に関わる日です。留学など新しい挑戦をするために自分から変わる人もいれば、会社や家族の事情など周囲の意向で変化に巻き込まれていく人もいるでしょう。適応力が高まる日ですので、偶然に思える出来事も必然の運命として受け止めてみてください。より前向きに変化を楽しむことができるはずです。【25日(火)】感性が共鳴する文化や環境を探すことに関係する日です。身近にそうしたものがなくても、海外や過去の時代へと視野を広げてみれば見つかるかもしれません。例えば、なぜだか江戸時代に魅力を感じるとか、中世のヨーロッパに親近感を覚えるなどです。精神の共鳴・共感を通じて自分の好きなものと向き合ってみてください。【26日(水)】長い時間をかけて編み物をするかのように、じっくりと人脈や友情を培い、知識や技術を蓄積していくことを表す日です。何年もの時を重ねて築かれたものはそれ相応の力を持ちますが、そこに至る前に謙虚さをなくしてしまうと意外にも簡単に崩れてしまいます。地道に丁寧に物事を進めていくことの大切さを説いている日です。【27日(木)】溜め込んできた知識を実際の場で試していくことを表す日です。大学や専門学校で学んだことや趣味で続けてきたことを、普段の生活の中で生かせないか模索してみましょう。頭の中だけで完結して満足するのではなく、それが活躍する機会を与えてあげるのです。SNSなどで自分の思うところを定期的に表現してみるといいでしょう。【28日(金)】影響を受けた本や先生などの話をいつでもどこでも思い出して反芻し、それに従って考えるというスタイルを意味する日です。見聞きしたことの全てというより印象に残った箇所を心に留め、何かを判断するときの指針にするという具合です。ただし、あくまでそれは個人の観点なので誰にでも通用するとは考えないほうがよいです。【29日(土)】現実的に把握できているところと、裏側や死角、未知領域のような全く認識できていないところ、その両面を意識することが大切な日です。物質面と精神面とを表裏一体とみて、どちらかに過不足が生じないようにバランス調整することが求められています。片方の比重が大きくなりすぎたときには修正を促すサインが現れるでしょう。【30日(日)】はじめて訪れた土地の見知らぬ人や、出会ったことのないタイプの人とも臆せずに話すコミュニケーション能力の高さが求められる日です。今日は土用の丑の日なのですが、丑の字は人と人、物と物とを結びつける紐から来ているとされます。そして土用は調整作用を表しますから、“間を取り持つ力”が試される日とも解釈できます。【31日(月)】多くの人にとって重要なことが、案外あっさりと決められてしまう危なさを示す日です。管理やセキュリティにも関係していますが、守るべきものは何かを理解していないと、いつの間にか大事なものが奪われてしまっているなんてことになりかねません。防災や防犯を含め、守るべきものを守るために用心し、対策しておきましょう。お話を伺った方C.I.さん運命学研究家。暦法を含め、易・四柱推命・西洋占星術など洋の東西の占術を学ぶ。運命学を人生のナビゲーションシステムとみなし、その活用法を研究している。現在、愛猫たちに囲まれた日々を送る。写真の日めくりの情報はイメージです。※『anan』2023年6月14日号より。写真・中島慶子(by anan編集部)
2023年06月10日株式会社 中島大祥堂は、7月12日(水)、「中島大祥堂 淀屋橋店」をオープンいたします。丹波の豊かな恵みが詰まった店舗が淀屋橋に誕生「中島大祥堂」は、栗・黒豆・小豆など丹波の食材を使ったケーキや焼菓子のブランドとして、兵庫県丹波市柏原町に築150年の茅葺民家を改装した本店を構え、大丸梅田店、高島屋大阪店、大丸心斎橋店、大丸東京店にも店舗を構えています。この度、新しくオープンする店舗は丹波以外では初めての路面店であり、物販のほか、カフェも併設。本店でしか召し上がることができなかった、丹波栗を贅沢に使ってお客様の目の前で仕上げる「丹波栗のしぼりたてモンブラン」をはじめ、大きな丹波栗を丸ごとサクサクのパイ生地で包んで店内で焼きあげる「くりまる」、丹波栗や小豆、黒豆などを使った淀屋橋店限定の新作スイーツをご提供予定です。また、オフィス街という立地から、お手土産やギフトにもぴったりな焼菓子の詰め合わせもご用意いたします。「中島大祥堂 淀屋橋店」は、地下鉄・京阪淀屋橋駅に直結、中之島公園や近年注目されている北浜エリアにもほど近く、近隣にお勤めの方や、休日に遊びに来られる方の日常にも特別な日にもお使いいただける、丹波の豊かな恵みにあふれた店舗です。■中島大祥堂 淀屋橋店所在地:〒541-0041大阪市中央区北浜3-2-23 新・大阪信愛ビル1FTEL :未定営業時間:10:00~19:00平米数:85平米席数:14席オープン日:2023年7月12日(水)(画像はプレスリリースより)
2023年06月09日各紙の文芸時評などでも好意的に取り上げられた三島由紀夫賞候補作「息」に、新潮新人賞受賞作「わからないままで」を併せ、このたび初めての著書を刊行。小池水音さんは、雑誌やウェブメディアの編集者の顔も持つ、気鋭の新人作家だ。学生時代は、村上春樹や伊丹十三らを担当したことでも知られる元編集者で作家の松家仁之氏の講義に熱心に通ったという。翻訳小説を彷彿させる、繊細な筆致。純文学界の新鋭が放つ2作を収録。「松家さんは50代で初めて小説を書かれたんですね。僕もそのくらいの年齢になったら自分も書けるようになりたいと思って。となると、たとえ力不足でも、20代のうちに一度形にしておきたい…。それが最初のモチベーションでした。だから、賞に応募しようともあまり思ってはいなかったんです」表題作は、15年ぶりに再発したぜんそくの発作の苦しさを媒介に、過去の記憶とそれに続く現在を見つめ直していく〈わたし〉こと、たまきの視点で描かれる。幼い頃に同じぜんそくに苦しんだ弟は若くして死を選び、遺された姉である〈わたし〉の孤独に読者の胸も締めつけられる。「僕自身も子どものころにぜんそくで息も絶え絶えの経験をしたことがあります。書きながら、最初は姉のたまきの苦しみを書くところから出発したのですが、書き進めるうちに、たまきが自分のつらさを明かせなかったのと同じように、父や母、死んだ弟もそれぞれに、きっとまた別の形で、明かせない苦しみを抱えているのだろうな、それも掬い上げなければいけないなと感じたんです」実は「息」も「わからないままで」も、モチーフに家族が自死した経験が描かれている。だが書き方は大きく異なる。「初めて一人称に挑戦した『息』は、ある限られた季節を濃密に描こうという試みだったので、目の前に起きる物事を追っていくスタイルでした。後者では、1章で小学生の子どもと父親のことを書き、次に成人した男性の離婚後の姿を書き…というふうに、あまり時系列で整理していかないことで、かえって浮かび上がるものはあるかもしれないなと」『新潮クレスト・ブックス』という海外文学レーベルを愛読、「文学の栄養はほとんどそこから得てきた」と語る小池さん。そんな文学青年にとって必然の挑戦なのかもしれない。「なぜ小説に惹かれたかといえば、やはり自分自身の体験は大きいです。それがなければたぶん小説を書くことも切実に読むこともなかった。なので、生と死の相克やそれと向き合う人々というテーマは持ち続けていきたいと思っています」『息』表題作には〈ガネット〉という鳥が、併録作には〈ホワイトウイングス〉という紙飛行機が、巧みなモチーフとして織り込まれている。新潮社2090円こいけ・みずね1991年、東京都生まれ。2020年「わからないままで」が新潮新人賞を受賞し、デビュー。山田洋二監督の映画『こんにちは、母さん』のノベライズを7月に刊行。※『anan』2023年6月7日号より。写真・土佐麻理子(小池さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2023年06月06日「Hey! Say! JUMP」中島裕翔主演映画『#マンホール』の豪華版Blu-ray&DVDに、特典映像として収録されるメイキングのダイジェスト版が公開された。『マスカレード・ホテル』シリーズの岡田道尚によるオリジナル脚本、熊切和嘉監督のタッグによる本作は、結婚式前夜にマンホールに落ち、幸せの絶頂からどん底に転落する男を描くシチュエーションスリラー。豪華版は、スリーブに空いたマンホールを模した穴から、主人公・川村の姿がのぞくデジパック仕様。ブックレットと海外ビジュアルポストカードが封入されている。今回収録される約60分のメイキングでは、クランクインからクランクアップまで撮影の裏側を余すことなくカメラが捉えている。美術スタッフ渾身の細部まで作り込まれた狭くて身動きがとり辛いマンホールの中、熊切監督のリアリティにこだわった演出、過酷な撮影下で主人公の豹変ぶりを文字通り体当たりで表現していく中島さん、そして支える製作スタッフが一丸となり作り上げられた、本作の秘密を全て解き明かす、見逃せない内容となっている。公開された映像では、お祝いムード満載の川村の結婚サプライズパーティシーンの撮影から、薄暗いマンホールの中へ。異様な存在感を放つ居心地の悪いマンホールの中では、熊切監督の演出を受けながら、雨に打たれ、大量の泡にまみれ、泥だらけになる中島さん。過酷な撮影の連続に「全部きつかったです!」と笑顔で本音も覗かせる。また、共演者の永山絢斗のインタビューや、黒木華と中島さんの格闘シーンも盛り込まれている。『#マンホール』Blu-ray&DVDは8月4日(金)発売。『#マンホール』8月4日(金)発売豪華版Blu-ray(2枚組): ¥7,150(税込)豪華版DVD(2枚組):¥6,380(税込)発売元:ジェイ・ストーム販売元:ギャガ©2023 Gaga Corporation/J Storm Inc.(cinemacafe.net)■関連作品:#マンホール 2023年2月10日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開©2023 Gaga Corporation/J Storm Inc.
2023年06月01日中島健人(Sexy Zone)がMCを務める映画情報番組『中島健人の今、映画について知りたいコト。』の第27回が、6月2日(金) にWOWOWで放送・配信される。それに先駆けて、第27回のプロモーション映像と前回の未公開映像が公開された。『中島健人の今、映画について知りたいコト。』は、ハリウッドをけん引する映画監督やクリエーター、さらに世界へ羽ばたく日本の映画監督へのインタビューや映画製作現場の取材などを通じて、中島が知りたい“映画の今”について学ぶ月1のレギュラー情報番組。第27回は「世界が注目する31歳監督にインタビュー~新世代の感性と演出術~」と題し、昨年カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した『CLOSE/クロース』(7月14日(金) 公開)のルーカス・ドン監督にインタビュー。若き新進気鋭監督の演出論に切り込む。また前回に続く「アカデミー映画博物館」訪問の後編では、『ターミネーター』や『ゴッドファーザー』シリーズなど名作映画で使われた衣装、小道具などを通じ、映画づくりの原点に触れる。未公開映像では、映画『ザ・ホエール』で第95回アカデミー賞主演男優賞に輝いたブレンダン・フレイザーと休憩時間に談笑する中島の姿を見ることができる。なお未公開映像の全編とプロモーション映像はWOWOWオンデマンドでチェックを。■中島健人 コメント『CLOSE/クロース』は子供の繊細な心理描写を表現している作品で、ルーカス・ドン監督の子供に対してのとても丁寧なアプローチを感じました。お話しさせていただいて、ルーカスの何事に対しても深く追求する一面を知ることができ、また同世代としてすごく刺激を受けたことが今回の大きな収穫です!『中島健人の今、映画について知りたいコト。』第26回未公開映像(ショートVer.)<番組情報>中島健人の今、映画について知りたいコト。第27回:6月2日(金) 午後10:00~放送・配信[WOWOWプライム] [WOWOWオンデマンド]関連リンク番組オフィシャルサイト:映画公式Twitter:オンデマンド番組ページ:番組公式Instagram:
2023年05月26日野生のもぎさんによる、『オトリ―過剰殺傷(オーバーキル)取締官・斑目詩子(まだらめ・うたこ)―』をご紹介します。日々ネット上で当たり前のように起こっている、炎上や誹謗中傷。対岸の火事と捉える人も多いかもしれないが、本当にそうなのだろうか。「ドラマが好きで、バディものによく出てくる車の中で張り込むような話を描きたかったんです。一方で同じ張り込みでも、週刊誌などはいきすぎなんじゃないの?と思うこともあったりして、一方的にやられるのではなく、それを成敗する話にしたら面白いんじゃないかと思いました」と著者の野生のもぎさん。本作において「オーバーキル」が意味するのは、主にネット社会で激しい攻撃の標的となり、心身の健康を著しく害される過剰制裁のこと。その犠牲者を救うために、政府が厚生労働省に新設したオーバーキル取締部、通称「オトリ」。その取締官に抜擢された、斑目詩子と迎井史也(むかい・ふみや)が奔走する物語だ。1巻で登場するオーバーキル事案は、新人女優の恋愛スキャンダル、ラーメン批評家による店の無断掲載、ストーカー被害、失言による炎上など。どれも実際に聞いたことがあるような話ばかりだ。「テーマを選ぶ際は、鮮度ももちろん大事にしていますが、何よりも本当に困っている人に対して解決策を提示できたらいいなと思っています。今は有名人だけでなく、一般人も炎上する時代なので、ごく身近なものとして描いていきたいですね」現実では今のところ、被害者が泣き寝入りするしかなかったり、うやむやになったりするパターンがまだまだ多い印象だが、マンガならではの“御破算”という解決法が痛快。「読んでスカッとできるオチを大前提にしています。やりすぎがテーマなので、単純に被害額と加害額の金額面でイーブンにするだけでなく、精神的にも肉体的にもやられた以上でも以下でもなく、やられた分だけきっちりやり返す。そろばん片手に、斑目がそこまで被害者を導いてくれるのが御破算なんです」シリアスにも振れる内容だが、あくまでも「こんなところで笑かすんか!?っていうような、深夜ドラマ的テンション」にこだわる。何を考えているのかよくわからないものの、正義感の強さは伝わってくる斑目と、相性がいいのか悪いのかこれまたよくわからない迎井が、淡々と弱きを助け、強きを挫く様が癖になる。「今気になるのは、アスリートへの野次や誹謗中傷。多様性という言葉で逆に枠をはめ、お互いを許容しないような矛盾もいつか描いてみたい。それこそネタには困りませんね」『オトリ―過剰殺傷取締官・斑目詩子―』1過剰制裁(オーバーキル)を取り締まり、弱者のために奔走する“マトリ”ならぬ“オトリ”の熱き戦い。「コミックDAYS」で連載中。2巻が5月23日発売予定。講談社715円©野生のもぎ/講談社やせいの・もぎマンガ家。第1回Dモーニング連載獲得コンペ「最強ヒロイン」で連載権を獲得。本作でデビュー。Twitterは@yaseino_mogi※『anan』2023年5月17日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2023年05月16日『うみみたい』は、気鋭の詩人・水沢なおさんによる初小説集だ。産むこと、増えることに惹かれながら臆するうみと、生まれてきたこと、産むことを否定したいみみ。表題作は、性や生殖をめぐって異なる思いを持つふたりを軸に描かれる。身体、性、生殖、たまご、海、水…透き通った感性に瞠目し、共鳴する。「自分の中にはその両方の気持ちがあるんですね。特に〈うみたい〉というより〈ふえたい〉といううみの気持ちに近い気がします。そのふたつがどう違うのかを突き詰めてみたいというのもありました」うみとみみは副業で、むむというキャラクターぬいぐるみのネット販売をしている。うみのアルバイト先〈孵化コーポ〉は、卵生生物をブリーディングする施設だ。ポケモンのミュウツーの名言〈だれがうめと頼んだ〉…作中に登場するモチーフが世界観を幾重にも塗り重ねる。「言葉を集めたというか、思い浮かんだ言葉の中に〈うみみたい〉があったんです。この5文字に、生殖や海など自分が大切にしてきたモチーフや感覚が入っていると感じ、その言葉に導かれるように、ストーリーができてきた気がします。ダブルミーニングになるなど、これぞと思う表現や言葉ってそんなに出合えない。だからこそ、出合えたときには湧き出るものがある。見えていなかった世界が広がるんですね」うみとみみは同じ美大卒。在学中からその才能で特別な存在だったみみのアトリエに、うみが転がり込む形で同居は始まった。そんなふたりの無二の関係性から、読者もまた自身が抱えてきた感情や価値観を見つめることになる。「互いが親密になって溶け合っていく感じって、自分が消えていく感覚にも近いような気がして。そうなれるほど大切な人と出会えた喜びの中に、やわらかな孤独も光っている。そういう表裏一体な感覚は書きたかったです」読者から「みみに幸せになってほしい」という感想をもらい、小説を書く面白さを強く感じたという。「詩では人物はむしろ曖昧にして読み手ごとの多様な解釈や感情をかき立てるのが書く楽しさかなと思っていたのですが、小説だと作中人物が読者の中にリアルに存在して世界を広げていくことができるんだなと」うみとみみが互いの違いを認めながら決めたこととは。かけがえのない美しさに満ちたラストシーンだ。『うみみたい』表題作ほか、何もかもがたまごから生まれたらいいのにと思う女性のひとり語り「スウィミング」など、4つの中短編を収録。河出書房新社1760円みずさわ・なお1995年、静岡県生まれ。武蔵野美術大学卒。2019年に第一詩集『美しいからだよ』が発売になり、第25回中原中也賞を受賞。’22年に刊行した第二詩集『シー』は発売即重版。※『anan』2023年5月17日号より。写真・土佐麻理子(水沢さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2023年05月14日出会った女性がネタの源。そんな横澤夏子さんが、街で見つけたいい女を実演。今回は、花の愛で方を知っている女性、「鏡の前に花を置く女」になりきり。いろいろな角度から花を楽しめる人って素敵!この間、友だちの新居に遊びに行った時、ルームツアーをしてもらったのですが、いろいろな場所にきれいなお花が飾ってあったんです。しかも共通点があって、そのほとんどが洗面台や玄関など、鏡の前のスペースに生けられていました。すると自分と花が鏡という額縁の中に収まり、まるで一枚の絵になったような、いい気持ちに。さらに、鏡に映った花の反対側の部分までが目に入り、鏡の前に置くと花がより映えて見えるんだと気づかされたんです。私は、あまり花を生けることがなく、花束をいただいた時は、大きな花びんにそのままガサッと入れてしまうタイプ。だからこそ、“洗面台にはこの花”“玄関はこれ”と、場所に合わせて花を選んでいることも本当にすごいと思いました。また、鏡の前ではないけど、アイランドキッチンには大きな花が飾られていて、どの角度からでもきれいに見えるように生けられていることにも感動…!最近は100円ショップにも可愛い花びんがたくさんあるので、一輪でいいから生けてみようと思いました。また別の友だちは、定期的に自分に花束を贈っていて、それもオシャレだと思いました。“今の気持ちは明るいから黄色とオレンジにしよう”と気分を大事にして作るそうで、これは自分と向き合う時間ができるしメンタルケアにもよさそうですよね!いきなり花を生けることはハードルが高いという人もいると思うので、まずは街中の花壇に咲いているきれいな花を見て、愛でる気持ちを育てるところから始めるのがよさそう。想像以上に色々な花に出合えると思います。また、“桜が咲いたな”“金木犀の香りがするな”のように季節を感じるのもいいですし、できることから花に触れ合ってみましょう!よこさわ・なつこ芸人。“ちょっとイラッとくる女”のモノマネで大ブレイク。婚活で培ったテクニックをまとめた著書『追い込み婚のすべて』(光文社)が発売中。2021年10月に第二子を出産。※『anan』2023年5月3日‐10日合併号より。写真・中島慶子イラスト・別府麻衣文・重信 綾(by anan編集部)
2023年05月04日中島健人(Sexy Zone)がWOWOWでMCを務める映画情報番組『中島健人の今、映画について知りたいコト。』の第26回が、5月5日(金) に放送・配信される。本番組は、ハリウッドをけん引する映画監督やクリエーター、さらに世界へ羽ばたく日本の映画監督へのインタビューや、映画制作現場の取材等を通じて、中島が知りたい“映画の今”について学ぶ月1回のレギュラー情報番組だ。第26回は、「オスカー俳優ブレンダン・フレイザーが語る“俳優の生き方”」と題し、映画『ザ・ホエール』で第95回アカデミー賞主演男優賞に輝いたブレンダン・フレイザーへ対面で緊急インタビューを敢行。さらに、映画制作にまつわる芸術、科学、そしてアーティストたちに捧げられたアメリカ最大級の映画博物館「アカデミー映画博物館」訪問前編という豪華構成となっている。併せて、第25回未公開映像と第26回予告映像がWOWOW公式YouTubeチャンネルで公開。第25回の未公開映像では、第95回アカデミー賞授賞式前日にトム・クルーズへの想いを語る中島やロサンゼルスロケの様子などを収録する。第25回未公開映像&第26回予告映像 ショートver.■中島健人 コメント今年、アカデミー賞主演男優賞を受賞されたブレンダン・フレイザーさんとお会いできたことで興奮とエネルギーをさらに感じることができました。人生の荒波を数多く経験され、栄えある賞に輝いたブレンダンの印象は、「何事に対してもリスペクトを忘れない人物」でした。役者、製作陣等、どの部署にも感謝の言葉を述べられていた彼の姿は、俳優としての自分もこれからさらに意識すべきことだという風に思えた刺激的な時間になりました。ブレンダンと過ごした、有意義な対談をぜひ多くの方にご覧いただけたら幸いです。<番組情報>『中島健人の今、映画について知りたいコト。』『中島健人の今、映画について知りたいコト。』新ビジュアル第26回:2023年5月5日(金) 22:00 [WOWOWプライム] [WOWOWオンデマンド]毎月第1金曜 22:00 放送MC:中島健人(Sexy Zone)ゲスト:ブレンダン・フレイザーナレーション:津田健次郎番組オフィシャルサイト:公式インスタグラムアカウント:
2023年04月29日第64回メフィスト賞を受賞した須藤古都離さんのデビュー作『ゴリラ裁判の日』が話題だ。主人公は、なんと、雌のゴリラである。主人公は知能を持つゴリラ。彼女が起こした裁判とは?「小説を書き始めたのは4年くらい前から。最初は人間を書きたいと考えていたんです。大学の授業で進化について学んでいた時に、人間が進化する際に零れ落ちるものってなんだろうと気になって。それで調べてみたら、人間の定義は曖昧だと知り衝撃を受けました。自分は人間だと思っていても、定義がないなら証明できない。それを小説で書けないかと思っている時に、なぜか突然、ゴリラが浮かんだんです」カメルーンの動物保護区で育ったニシローランドゴリラのローズ。言葉を理解し手話で会話する知性を持つ彼女は、アメリカの動物園へと移住、リーダーゴリラのオマリと夫婦になる。しかし4歳の少年が柵を乗り越えてゴリラのエリアに落下、危険を感じた園長の指示でオマリは射殺されてしまう。ローズは園側を訴えて裁判を起こすのだった。ゴリラ射殺に関しては、数年前にハランベ事件と呼ばれる同様の出来事があり、賛否両論があった。「ハランベ事件と、手話を使って有名になったゴリラ、ココのことは知っていました。それで、すっと話の流れができました」移住前のカメルーンのジャングルでのローズの生活や、彼女が言語を獲得したことで、死の概念などを理解していく過程も丁寧に描かれる。「ゴリラを擬人化しただけの話にならないよう、ちゃんと地に足の着いたキャラクターにしたかった。人間でも、海外の言葉を学ぶとその言語の文化が自分の中に入ってくる。ゴリラでもそれは起きると考えました。野生のゴリラが実際何を考えているかはわかりませんが、ゴリラはもともとすごく優しくて繊細で、戦いを避ける性格なので、そういうところを反映させていきました」そんなローズがアメリカに来て搾取される様子からは、現代の人間社会のひずみが浮かび上がる。圧巻は終盤の2回目の裁判シーン。「ここはクライマックスになるだろうと思っていました。2回目の裁判の論旨は、今回僕が一番書きたかったものです」こういう考え方があったのか、と誰もが膝を打つはず。まさに“人間”を書いた作品となった。須藤古都離『ゴリラ裁判の日』人の言葉を理解できるニシローランドゴリラのローズ。動物園で人間の子供を助けるために夫が射殺され、彼女は裁判で闘いを挑むのだが…。講談社1925円すどう・ことり1987年、神奈川県生まれ。2022年「ゴリラ裁判の日」で第64回メフィスト賞を受賞。第2作『無限の月』が今年夏に刊行予定。人間のアイデンティティを扱った作品だという。※『anan』2023年4月26日号より。写真・土佐真理子(須藤さん)中島慶子(本)インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2023年04月23日恋愛小説や推しの作家などについて、書評や著者インタビューを通して、作家と作品のきらめきを伝えているライターの三浦天紗子さんと吉田大助さんに語っていただきました。画期的な恋愛小説が登場。すべての男性の必読書!?吉田大助(以下、吉田):今、恋愛小説って超下火じゃないですか。その代わり、家族小説が全盛になっている。ステイホーム期間もあり、家族という関係について考える機会が増えたことも作用していそうです。三浦天紗子(以下、三浦):恋愛小説が盛り上がっていたのは20年くらい前ですかね。その後、恋愛はリスクしかないとかコスパが悪いとかさんざん言われ続けて、世の中の価値観がシフトしましたからね。吉田:そんな時代にとんでもない作品が生まれたんです。紗倉まなさんの『ごっこ』、もう読まれました?なにがすごいって、体の相性の「合う・合わない」というパラメータを取り入れた恋愛小説集なんです。ロマンティックさのかけらもなくなるじゃないですか!プラトニックな状態であれば好きでい続けられたのに、いざ結ばれてみたらがっかり、みたいなことが起こりうる世界なわけです。三浦:生理的嫌悪や体の相性があるのは、女性は知っているけども、と。吉田:現実のそれを恋愛もののなかに持ち込んじゃっていいの?という驚きですよね。今までも、目の前の相手との相性の良さを強調するために他の人に対する「合わない」を書く手法はあったんです。だけど、相手のことを「合わない」と感じたり、相手が自分のことを「合わない」と感じているのがわかっちゃっている状態でし続ける関係って何なの、と。三浦:そういうSEXや恋愛のリアルは、それこそananや恋愛指南書などでは普通に語られてきたけど、たしかに小説では珍しいかもしれませんね。本当のことを書くと冷めてドラマが生まれにくいし、合わないなんて言うべきでないと女性側が洗脳されてきたというか。吉田:少女漫画でも、ヒロインが気になる男子にいきなりキスされてズッキューンとなるのが昔からのお決まりじゃないですか。そこで「うわ、気持ち悪っ」とか「マジで合わん」となる可能性を、今までの恋愛コンテンツは無視してきた。三浦:紗倉さんがそこに風穴をあけたと。吉田:そこを見よ、と。パンドラの箱を開けちゃいましたよ(笑)。三浦:男性も読んだ方がいいですね。本を読んで人生を深め、出版界を盛り上げよう。吉田:今日僕がananにのこのこと顔を出したのは、西加奈子さんの『くもをさがす』を推すためなんです。三浦:乳がんを公表された西さんの初のノンフィクションですね。吉田:闘病記なのかな…と読むのを躊躇する人がいるかもしれないけど、これは紛れもなく「西加奈子文学」の最新作。ノンフィクションとか関係なく、西さんの小説を読んで一度でも心が震えたことのある人は安心して手に取ってほしいです。三浦:まだしっかり読めていませんが、わりと淡々と客観的に、病気のことを見つめているなという印象でした。吉田:リアルな体験よりも少し抑えめに書いてくださっているようなんですが、正直、読んでいて苦しくなる部分もあります。でも、西さんの真骨頂である「光」がちゃんと見える。西さんは初期からずっと希望を書き続けている人ですから。社会問題を思考することができたりブックガイド的な要素もあったりと、全人類におすすめの一冊です。三浦:日本の女性作家の小説が海外でブームになっていますが、これまでとは少し違う流れも。ドラマ化もされた原田ひ香さんのベストセラー『三千円の使いかた』が、欧米から人気なんですよ。吉田:それは知らなかったです。節約系のお金小説ですよね。温かくていい話だけど、ちょっと意外な感じもしますね。三浦:私も最初は驚いたのですが、節約するとか3000円をどう使うかという価値観、モノとの向き合い方が海外の人からしたらすごく面白いみたいです。吉田:なるほど。なんだか第二のこんまり(R)さんになれそうな予感も…(笑)。三浦:さっき版権ビジネスの話が出ましたが、原田さんもインタビューで同じことを言っていました。日本の小説家にとって海外はブルーオーシャンだと。吉田:それは間違いないです。今はまだ海外での受け入れられ方が、異国趣味的な物珍しさが勝っているかもしれないけど、日本人が思う人生観や家族観、人間ドラマみたいなものが向こうの読者に届き始めている気もするんですよね。それにもともと日本の小説はコンテンツが豊富。SFとかミステリーなんて世界でもトップクラスに面白いと断言できるし、そのあたりが発見され始めて流通していくと、びっくりするような展開になるんじゃないかと。ぜひ、なってほしい!紗倉まなの描く、恋愛描写のリアルさに衝撃。側にいるとしても、「わかる」ことの難しさ。『ごっこ』紗倉まな6つ年下の恋人・モチノくんの逃避行に付き合わされてドライブを続けるミツキ。そろそろ資金が尽きそうだ。(ごっこ)恋人、夫婦、友だち…。これは「ごっこ」なのか?形式を保ちながら背後に蠢いている感情を丁寧に描いた3作を収録。1650円(講談社)「体が合わない問題」をさらりと俎上に載せた、紗倉まなさんの『ごっこ』。「このリアルは男性作家には絶対描けない!」と吉田さんは力説。「体が合わない感覚を抱くのは、男性の側にもあります。ただ、ヘテロ男性はおしなべて身体感覚は鈍いです。女性の側の方がセンシティブだし、紗倉さんは“たったひとつの本職”と公言しているAV女優の仕事を通して、考える機会が多かったのかもしれない」体の相性や曖昧な関係に悩む女性はもちろん、すべての男性に読んでほしいとも。「別に合わないなら合わないでいいんですよ。それでも一緒にいたいと思う感情の尊さ、それだけでなくてズルさも描いた。脱帽です」西加奈子初のノンフィクションは「西文学」だ。がんとの闘病の先の希望と生を描く。『くもをさがす』西 加奈子カナダ在住時に乳がんが発見された西加奈子さんの闘病と日常生活に対する思いが綴られる。家族や親族のことやカナダと日本の違いなどの描写も興味深い。どんな時代でも生きていくことの希望を描くノンフィクション。4月19日発売。1540円(河出書房新社)「がんの話だから、ノンフィクションだから…といって、手に取らないなんてもったいない!ずっと主人公たちが“希望”へと至る道のりを描き続けてきた西さんが、ご自身のしんどい経験も生への賛歌に昇華させた、“文学”です」(吉田さん)がんの発見から寛解までの約8か月を、現実に起きた事件の記録とともに思いを綴る。「引用される多数の作品を見ると、文学をはじめとした芸術が生み出す側、受け取る側にかかわらず、いかに人を支え、助け、救うかを感じます」(吉田さん)多数の引用作品は、西さんの思考をたどるブックガイドのようにも楽しめる。原田ひ香の、お金小説に各国から翻訳オファー!お金との付き合い方が見えるベストセラー。『三千円の使いかた』原田ひ香一人暮らしを始めたばかりの美帆。元証券会社勤務の姉・真帆。専業主婦の智子、そして堅実に貯金をしている祖母・琴子。貯金額も世代も異なる御厨家の女性たちが、それぞれの人生でお金とどう向き合っていくのかを軽やかかつ鮮やかに描く。770円(中公文庫)文庫が88万部の大ヒットの原田ひ香さんの『三千円の使いかた』。中央公論新社の担当によると「コロナ禍でのおうち時間の増加で、投資や貯蓄など“お金をどう使うか”について気になっているときに、実用書より読みやすく、手に取りやすかったのではないか」とのこと。欧米はもとより、東南アジア、アジアなど言語、文化を問わず多数の国から出版のオファーが殺到しているそう。「原田さんの読者が気になる実用知識を物語に落とし込んで展開する妙が、世界から見たらとても新しく映ったよう。3000円をどう使うか、という発想はあまりないのかもしれませんね」(三浦さん)三浦天紗子さんライター、ブックカウンセラー。女性誌や文芸誌、Webメディアで書評やインタビュー、メディカル記事を担当。著書に『そろそろ産まなきゃ』(CCCメディアハウス)など。吉田大助さんライター。雑誌を中心に、書評や作家インタビューなどを手がける。編者を務めたアンソロジー『僕たちの月曜日』(角川文庫)が発売中。ツイッターは@readabookreview※『anan』2023年4月19日号より。写真・中島慶子取材、文・熊坂麻美(by anan編集部)
2023年04月16日ディストピア小説やアンソロジー作品、詩人の書く小説について、ライターの三浦天紗子さんと吉田大助さんに語っていただきました。本読みライターの対談で見えてくる、小説界の新潮流とは?ディストピアの世界から新しい価値観や勇気を得る。吉田大助(以下、吉田):世界的には9.11、日本では3.11以降とくに、終末的な世界や監視社会を描くディストピア小説が盛り上がってきました。そのなかで、今すぐ海外出版されてほしいと思わずにいられない衝撃作が夕木春央さんの『方舟』です。簡単に言うと「誰か一人を犠牲にすれば全員が助かるけどどうする?」という、いわゆるトロッコ問題の話ですが、『方舟』は「それは…アリなの!?」と頭を抱えたくなるくらい究極の結論を出したんです。三浦天紗子(以下、三浦):読みました。面白かったけどモヤモヤしたところも多かったかな(笑)。吉田:この作品は人間の醜さや暗黒的な心理描写が特徴の「イヤミス」的な話でもある。つまり、人として越えちゃいけない一線を踏み越えることをOKとすることで可能となった物語。現実では体験しえない感情に小説を通して触れるという意味では、小説らしい小説ともいえる。三浦:それはたしかにそうですね。登場人物と同じ状況に陥ったときに自分ならどうするかと考えたり、思いがけない価値観と出合うのも小説を読む醍醐味のひとつですからね。吉田:ディストピア小説って、いま三浦さんがおっしゃったように「自分ならどうする?」ということや倫理観を突き付けられる思考実験の要素が強いですよね。その意味で、安野貴博さんの『サーキット・スイッチャー』もおすすめです。誰かの犠牲が避けられない状況で、自動運転を担うAIは命の重さをどう判断するかという、これまたトロッコ問題がテーマですが、ハリウッドばりのアクション・スリラーで、何より素晴らしいのは最後に希望を見出していること。ディストピア的想像力をキックする、「ホープパンク」「ソーラーパンク」といった海外SFの潮流とのリンクを感じました。三浦:私はディストピアでは、川野芽生(めぐみ)さんの『無垢なる花たちのためのユートピア』を推したいです。気鋭の歌人である川野さんの初の小説集ということで話題になっていますが、歌人というフックなしに単純にすごい才能の作家が現れたなと。とくに印象的だった一編「卒業の終わり」は、ある秘密を抱えた女学園を舞台に、主人公がどう生きていくかや女性性を問う物語。ハッピーエンドではないけれど、過酷な現実のなかで思いを巡らせて立ち向かうこと自体が美しいのだと気づかせてくれました。若い世代も勇気をもらえる一作だと思います。テーマ切りのアンソロジーは読書の幅を広げるツール。三浦:複数の作家の短編を集めたアンソロジーはこの5年くらいブームです。読書の入り口としても、いろんな作家を知る入り口としても価値があると思います。吉田:アンソロジーでは、昨年末に日韓同時発売された『絶縁』があらゆる意味で感動的でした。村田沙耶香さんを含むアジア9都市9人の作家による“絶縁”をテーマにした作品を編んだもので、冒頭に置かれた村田さんの短編「無」から大傑作。これだけで十分元をとれる素晴らしさです。三浦:韓国実力派作家、チョン・セランさんの発案らしいですね。日韓中、タイやシンガポールなどの気鋭作家が集まり、すべて書き下ろし。「奇跡のアンソロジー」といわれているのも納得です。吉田:出版文化遺産になってもいいくらい前代未聞の本だと思います。制作に約3年かけたみたいですし、本当によくぞやってくれましたと編集者に大拍手です。それぞれの国の今の息吹が反映されていてどれも良作。『絶縁』がアジアの作家を知る入り口になってくれるはずです。三浦:アンソロジーってなかなか売り上げにつながりにくいなかで、想像以上に売れたのが百合小説の『彼女。』です。相沢沙呼さん、織守きょうやさん、斜線堂有紀さんら豪華なラインナップも魅力ですし、ガールズラブという側面だけでなく、女性同士の関係性からジェンダーの問題にまで肉薄し、読みごたえ十分。吉田:百合というポップな看板を入り口にして、女性性の議論にまでたどり着くのは、すごくいい届け方ですね。三浦:最近、詩や短歌の世界から小説への流入が目立っています。それも詩や短歌界のスターが満を持して小説デビューしたというより、小説の完成度でまず注目されて実は詩や短歌の有望株だったというケースが多い印象です。吉田:川野芽生さんも歌人でしたよね。僕はあまりこのジャンルは詳しくないんです。ほかにはどんな方がいますか?三浦:すごいと思ったのは、山﨑修平さん。彼は詩人と文芸評論家の二足のわらじを履きながら小説の世界に来た人。初小説の『テーゲベックのきれいな香り』は、詩人である主人公が「書くとは何か」という問いに向き合う連作集で、わかりやすいストーリーがあるわけじゃないけど、読み進めた先に私自身が見知ったような懐かしい風景や感情がふと現れたりする。そういう面白さが魅力です。吉田:ある意味、新しい小説と位置づけられそうな作品ですね。気になるな~。三浦:中原中也賞を獲った期待の詩人・水沢なおさんも最近、初小説『うみみたい』を出しました。彼女の書く詩は、生と性を連想させるSF散文詩というか、もともと小説っぽかった。そこに物語の仕組みを加えた感じですね。きっと編集者は彼女に小説を書かせるだろうと思っていたから、やっぱりそうだよねと。吉田:この間『この世の喜びよ』で芥川賞を受賞した井戸川射子さんも、出発点は詩でした。詩や短歌と小説の垣根が、薄くなりつつあるのかもしれません。三浦:それはあるかも。若い世代は文学を自由に捉えて表現していますね。トロッコ問題に通じる!?ディストピア小説。最悪の状況のなかで、死んでもいいのは“誰”?『方舟』夕木春央大学時代の6人の友人と従兄と共に山奥の地下建築を訪れた柊一は、偶然出会った3人家族と共に一夜を過ごすことになった。ところが、明け方に地震が起き、扉が塞がれ、さらに浸水してきていることがわかる。そんな状況下で殺人が起こり…。1760円(講談社)AIのトロッコ問題解決法とは!?『サーキット・スイッチャー』安野貴博完全自動運転車が普及した2029年の東京。自動運転のアルゴリズムを開発する企業の社長が車内で襲われ拘束された。襲撃犯は車に爆弾を仕掛けて首都高の封鎖を要求するが…。現役SEが専門知識を駆使して描く疾走感あふれるサスペンス。1870円(早川書房)美しく残酷な幻想世界を凝縮。『無垢なる花たちのためのユートピア』川野芽生第一歌集『Lilith』で現代歌人協会賞を受賞した著者の初の小説集。花の名前を持つ77人の少年たちと7人の指導者を乗せて伝説の楽園を目指す船で起きた悲劇を描く表題作ほか5編を収録。1870円(東京創元社)トロッコ問題とは、「ある人を助けるために誰かを犠牲にするのは許されるか」という倫理的葛藤を問うもの。世界中で議論が交わされている。「リスクとリスクを天秤にかける、選択と決断の問題でもある。極端に言えばすべての物語がトロッコ問題をテーマとして孕んでいるんです」(吉田さん)ホープパンクの台頭について吉田さんは、「とてつもない絶望のなかに一縷の希望を描くうまさは、伊坂幸太郎さんが天才的。伊坂さんの作品が今続々と新装版で刊行し直されているのは、“絶望だけでなく希望も読みたい”というトレンドに合致している気がします」。編集のセンスが光る!アンソロジー。発想の違いにも注目したいスカート発のとりどりの世界。『朝倉かすみリクエスト!スカートのアンソロジー』朝倉かすみ北大路公子佐藤亜紀佐原ひかり高山羽根子津原泰水中島京子藤野可織吉川トリコひとりの作家が好きな作家たちにお題に沿った短編をリクエストするシリーズ作。元事務員の友人が遺した9号から15号の制服スカート、痴漢の手をかみちぎるスカートの歯、制服の自由化でスカートをはく彼氏…。スカートにまつわる9編を。748円(光文社文庫)コアファンにもビギナーにも。百合の多様性を味わう短編集。『彼女。百合小説アンソロジー』相沢沙呼青崎有吾乾くるみ織守きょうや斜線堂有紀武田綾乃円居 挽新作の百合小説7編と7人のイラストレーターによる扉絵がコラボレーション。女性同士の切実な関係性とルッキズムを描いた斜線堂有紀「百合である値打ちもない」、ミステリー要素を含んだ乾くるみ「九百十七円は高すぎる」などを収録。1925円(実業之日本社)どんなお題で誰に書いてもらうか、テーマ選定と作家のラインナップがアンソロジーのキモと、三浦さんは話す。「ふつうの小説以上に企画力や編集者の腕がものをいう本だと思います。『彼女。』がヒットしたのは、キャッチーな装丁込みで“読みたい”と思わせるバランスが素晴らしかったから。それぞれの作品の扉イラストも小説の世界観を際立ててグッときます。また、作家の朝倉かすみさんが選んだ9人の好きな作家たちに“スカート”というお題で書いてもらった『スカートのアンソロジー』もおすすめ。これも裏テーマとしてフェミニズムがあり、スカートから広がる多彩な物語は示唆に富んでいます」詩人の書く小説に注目。“超小説”で未知の読書体験を。『テーゲベックのきれいな香り』山﨑修平物語は2028年の東京を舞台にスタート。詩人の「わたし」が住む街が災厄に見舞われ、暮らしが混乱をきたすなか、「書くとは何か」「詩とは何か」という問いを追いかける記憶の旅が始まる。装画を手がけたのは浅野忠信さん。1980円(河出書房新社)「生まれる」「産む」生殖行為を考える物語。『うみみたい』水沢なお卵生生物を孵化させるアルバイトをしながら、性行為に対して後ろ向きなうみ。そして、「生まれたくなかった」と思い続けているみみ。美大の同級生だったふたりは同居しながら制作を続けているが…。表題作ほか、3編収録。1760円(河出書房新社)「東直子さんや加藤千恵さん、雪舟えまさん、最近だと、小佐野彈さん、くどうれいんさんなど、歌人で小説を書く人はわりと多いのですが、ここのところ若手詩人の小説デビューが増えていて面白い」と三浦さん。山﨑修平さんと水沢なおさんはその注目株。歌人や詩人の書く小説は、言葉の美しさやリズム感、独特な物語構成や連想的な場面転換など、歌や詩のフィールドで培った巧みな表現力が魅力と三浦さんは言う。「ストーリーや文章の意味をなかなかつかめなくても、磨かれた言葉の美しさや遊びを味わい、書き手の思考の片鱗に触れるのも小説体験として意義が。構えずに手に取ってほしいです」三浦天紗子さんライター、ブックカウンセラー。女性誌や文芸誌、Webメディアで書評やインタビュー、メディカル記事を担当。著書に『そろそろ産まなきゃ』(CCCメディアハウス)など。吉田大助さんライター。雑誌を中心に、書評や作家インタビューなどを手がける。編者を務めたアンソロジー『僕たちの月曜日』(角川文庫)が発売中。ツイッターは@readabookreview※『anan』2023年4月19日号より。写真・中島慶子取材、文・熊坂麻美(by anan編集部)
2023年04月15日おすすめの歴史・時代小説、若手作家の作品について、書評や著者インタビューを通し作家と作品のきらめきを伝えている、ライターの三浦天紗子さんと吉田大助さんに語っていただきました。本格派だけど親しみやすい。一級の歴史・時代小説は必読!三浦天紗子(以下、三浦):最近、時代小説がまたきていますね。コアなファン以外も手に取りやすい作品が増えて、じわじわすそ野が広がっています。たとえば永井紗耶子さんの『木挽町のあだ討ち』。吉田大助(以下、吉田):これは面白かったですね~。芝居街で起きたある仇討ちについて5人の話者がそれぞれに語り、少しずつ真相が見えていく「回想の殺人」ミステリーですが、江戸に生きる人々の生活や感情の描写が秀逸でぐんぐん引き込まれました。次期直木賞、大本命だと思います。三浦:永井さんは去年直木賞の候補作になった『女人入眼』も素晴らしかった。本当に筆達者な方ですよね。吉田:江戸を舞台にした作品を長く書かれているから、史実も文化も庶民の暮らしも隅々まで知り尽くしている。いってみれば在野の研究者ですよね。土台があるからここまで書けるわけで、それでいうと蝉谷めぐ実さんも同じです。彼女はもともと大学で文化文政時代の歌舞伎を研究されていた人。その知識を存分に生かした『おんなの女房』は抜群でした。三浦:蝉谷さんの作品は私もとても好き。『おんなの女房』のテーマは芸道のすごみ。フェミニズムに通じることだし、『木挽町のあだ討ち』は家族的なつながりに光を当てています。豊富な知識と現代的な感性を持ってエンタメ化できているところがおふたりの強み。時代ものを読まない人にこそ体験してほしいです。吉田:蝉谷さんも新人ですが、ほかにも才能あふれる若い作家が続々出てきています。安堂ホセさん、日比野コレコさん、宇佐見りんさん、遠野遥さんと、近年の文藝賞受賞者だけでもイケイケです。三浦:最近の若手はみんな、デビュー作から完成度が高くてびっくりしますね。私はいま吉田さんがおっしゃったなかでは日比野さんが気になります。彼女は昨年、『ビューティフルからビューティフルへ』で文藝賞を獲りましたが、言語センスなど、もっと話題になっていい逸材だと思います。吉田:文体というか、いろんな文脈を持った言葉の並列のさせ方が面白いですよね。松本人志さんの言葉に影響されてきた、というananのインタビューがネットでバズってましたし(笑)。三浦:ラップ好きということもあって、言語センスが独特ですよね。小説のなかに詩や短歌を意図的に越境させてちりばめてもいる。どこかミュージカルに通じるような無二の文体が魅力です。吉田:Z世代の作家のなかでの僕のイチオシは、高野知宙(ちひろ)さん。デビュー作の『ちとせ』は御一新直後の京都を舞台に、失明する運命にある三味線弾きの少女を描いた作品ですが、五感に訴える情景描写のみならず、書きすぎないセンスが抜群なんですよ。ちとせの運命はどうなったかという事実関係をギリギリまで明かさず、クライマックスへと至る重要な場面でサラッと記す。たった1~2行にとてつもない爆発力を込められる書き手なんです。しかも高野さん、これ書いたときまだ高校生だったんです!三浦:人生3周目くらいなのかも(笑)。すごい新人が出てきましたね。話を聞いているだけで読みたくなりました。私は一昨年にホラー作品の『虚魚(そらざかな)』でデビューした新名智さんにも注目しています。この作品は2人の女の子が「人が死ぬ怪談」を探っていく物語。ホラーということでどうしても光が当たりにくいけど、青春小説としても読めるし何より文章がうまい。新名さんはまだ2冊しか出していないのですが、もっともっと読みたい作家さんです。知識に裏打ちされた歴史・時代小説が熱い。人と人とのつながりを巧みに紡いでいく。『木挽町のあだ討ち』永井紗耶子雪の降る夜に、芝居小屋の裏通りで、若衆・菊之助があだ討ちを成し遂げる。その2年後に、あだ討ちの顛末を聞きたいと菊之助の縁者を名乗る者が現れて…。あだ討ちを目撃した者たちに話を聞いていくと驚くべき真相が見えてくる。1870円(新潮社)女形の夫婦を通して、共に生きることを問う。『おんなの女房』蝉谷めぐ実武家の娘・志乃は芝居について何も知らないまま、歌舞伎役者で人気の女形・燕弥の元に嫁ぐ。家でも女としてふるまい、芸事にまい進する夫に対し、戸惑いながらも尽くそうとする志乃。そこに他の役者の妻たちとの交流も生まれ…。1815円(KADOKAWA)小さなブームが数年おきに訪れるという歴史・時代小説が、再燃してきている。「10数年前に『ネオ時代小説』ブームがありましたが、史実と違う、ポップすぎるという否定派も当時はいて。一方、永井紗耶子さんと蝉谷めぐ実さんはわりとガチで江戸時代を研究しているうえ、エンターテインメントの体幹がしっかりしている。歴史・時代小説のトップランナーとして長く活躍するはず」(吉田さん)「おふたりに先駆けて芸道・時代小説を手がけた大島真寿美さんの『渦』もぜひ。浄瑠璃作者・近松半二の生涯を描いた作品で、人形浄瑠璃の世界を知る一冊としても」(三浦さん)デビュー作の完成度がすごい!大型新人の台頭。生の息吹の混沌と鮮烈。これが現代高校生の声。『ビューティフルからビューティフルへ』日比野コレコ死にたくなる気持ちに抗う高3の静とネグレクト家庭育ちのナナ。ナナは駅前で声をかけてきた若い男・ビルEを〈ことばぁ〉という老女の家に連れていく。静、ナナ、ビルEの3人はことばぁから出される宿題を通して自分を見つめ直す。1540円(河出書房新社)少女の葛藤と成長を描く青春譚。『ちとせ』高野知宙舞台は明治5年の京。天然痘で失明の不安を抱えた少女・ちとせは俥屋の跡取りと出会い、京で見聞を広げていく。景色や人々を目に焼き付けながら、やがて三味線の名手となったちとせは大きな舞台に立ち…。京都文学賞中高生部門最優秀賞受賞作。1760円(祥伝社)各文学賞への応募が軒並み増加し、新人らしからぬ高水準の作品が続々誕生している。「某新人賞の選考委員いわく、ステイホーム期間のおかげで時間をかけて推敲した結果か、最終候補の全体的なレベルが上がってきている、と。Twitter発の『タワマン文学』で注目を集めて作家デビューした麻布競馬場さんも、暇になったから書き始めたと言っていました(笑)。コロナ禍が文学に与えた影響は、これからわかってくると思います」(吉田さん)「長編に日比野コレコさんや安堂ホセさんがトライしたとき、今の言葉の強度のまま書き切れたらすごいし、また違う新たな作風を見せてくれるのかもしれない。楽しみです」(三浦さん)三浦天紗子さんライター、ブックカウンセラー。女性誌や文芸誌、Webメディアで書評やインタビュー、メディカル記事を担当。著書に『そろそろ産まなきゃ』(CCCメディアハウス)など。吉田大助さんライター。雑誌を中心に、書評や作家インタビューなどを手がける。編者を務めたアンソロジー『僕たちの月曜日』(角川文庫)が発売中。ツイッターは@readabookreview※『anan』2023年4月19日号より。写真・中島慶子取材、文・熊坂麻美(by anan編集部)
2023年04月15日書評や著者インタビューを通して、作家と作品のきらめきを伝えているライターの三浦天紗子さんと吉田大助さん。さまざまなジャンルの本を日々読み込むおふたりに、小説界で今起きていることや推しの作家、読書の喜びについて存分に語っていただきました。本読みライターの対談で見えてくる、小説界の新潮流吉田大助(以下、吉田):まず注目したい流れとしては、日本の女性作家の作品が英語圏で爆売れしていること。2018年に村田沙耶香さんの芥川賞受賞作『コンビニ人間』が英訳刊行されて、海外メディアで高い評価を受けたうえにベストセラーとなった。多和田葉子さんや柳美里さんら、欧米の文学賞を受賞している作家もここ数年で増えてきました。英米文化圏の作家とは違う想像力が、特に女性の主人公像のなかに宿っていると捉えられている。たくさんの日本文学の英訳を手がけてきた辛島ディヴィッドさんによれば、「quirky(奇妙な/奇抜な/風変わりな)」の一語がキーワードだとのことです。三浦天紗子(以下、三浦):男性作家では、犯罪や社会悪を描いたノワール小説の名手・中村文則さんが海外でも高く評価されていますね。吉田:中村さんは、相当数の作品が英訳されているんじゃないかな。男性作家では、別格中の別格ですよね。そのつながりでいえば、海外人気も高い川上未映子さんの新作『黄色い家』は大注目。前世紀末の東京で少女たちが生き延びるために犯罪に手を染める物語ですが、女性性をテーマにした作品が多かった川上さんが今作でノワールも乗せてきた。もう最強じゃないですか!?三浦:クライムノベル的なドキドキ感もすごくあって、川上さんのエンタメ力を感じましたね。吉田:この作品はすでに各国から翻訳のオファーが殺到しているそうですし、海外の版権ビジネスがこれからの出版界のカギを握ると思います。英語圏の翻訳は入ってくるお金がケタ違い。今は海外サイドが目を付けた作品に日本の出版社側が反応している段階ですが、その経験は今後必ず花開くと思うんですよね。三浦:たまたま『黄色い家』の後に津村記久子さんの『水車小屋のネネ』を読んだら、主人公たちの境遇が似ていて驚きました。いわゆる親ガチャに外れた少女たちのサバイブものですが、描き方はまったく違う。『黄色い家』が「陰」で、『水車小屋のネネ』が「陽」という感じ。どちらも読んでほしいと思います。吉田:津村さんのこれ、僕もすごく読みたかったんですよ!三浦:“親という資産を持たない”姉妹が周りの過剰すぎない善意に支えられて成長していく話で、ギフト的な才能を武器にする展開じゃないところがいい。しゃべる鳥のヨウム「ネネ」が彼女たちをほどよく手助けする小説の自由さを感じる要素もあって。温かく、とてもいい作品です。吉田:そのバランス、すごくいいですね。というのも、最近は時代を映して貧困やジェンダー、家族観などをテーマにした小説がかなり多い。それらをストレートに書くだけだとお腹いっぱい気味かも。三浦:「似た内容を最近も読んだな」と思うものが結構多いですよね。世相を反映した問題は読者にとっても身近なテーマだけど、小説ならそこに意外性や発見も欲しい。吉田:そうなんです!その点で僕は石田夏穂さんの『我が友、スミス』と宇野碧さんの『レペゼン母』を推したい。前者はボディビルの世界からジェンダーバイアスを、後者はラップバトルを通してミソジニーと親子関係を描いた作品。設定や視点にひねりがあるから、そのなかに自分と直結するものを見つける方が実は、普遍的なテーマやメッセージ性が刺さる。この回路作りが重要なのかもと思います。ここ5年ほどで日本の小説の海外人気が高まる。善と悪も凌駕する、クライムサスペンス。『黄色い家』川上未映子貧困や親との確執から「黄色い家」に集った少女たちは、まっとうに稼ぐ術を持たず危ういシノギに手を出した。主人公・伊藤花の庇護者的存在の黄美子を交えたいびつな共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かうが…。2090円(中央公論新社)これまで海外で評価され、読まれてきたのは大江健三郎さんや村上春樹さんらレジェンド的な作家と一部の男性作家が主だった。しかし近年は村田沙耶香さんが火付け役となり、川上未映子さん、柳美里さん、松田青子さん、小川洋子さんら、女性作家の海外人気がうなぎ上り。「日本特有の受動的な女性像や社会の閉塞感などが、ある種の新鮮さとして海外で受け入れられている。対談でも出ていた、設定や視点にひねりがあるなかに自分と直結するものを見つける方が普遍的なテーマやメッセージ性が刺さる…という流れにもつながります。僕らが海外文学を読む理由のひとつも、そこにありますよね」(吉田さん)家族、フェミニズム…注目テーマの斬新な切り口。支え合う人々の希望と再生の物語。『水車小屋のネネ』津村記久子身勝手な母とその恋人から離れ、姉妹で生きることに決めた18歳の理佐と10歳の律。生活の場としてたどり着いた山あいの町でしゃべる鳥「ネネ」と出会い…。背伸びしない善意がゆるやかに循環するなかで生きる姉妹の40年の軌跡を描く。1980円(毎日新聞出版)女性性や評価主義に一石を投じる。『我が友、スミス』石田夏穂会社員・U野は、ジムで自己流の筋トレに励んでいたところ、ボディ・ビル大会への出場を勧められて本格的に取り組むことに。しかし、大会で結果を残すには筋肉だけでなく「女らしさ」を求められると知った彼女がとった行動とは…。1540円(集英社)痛快なラップバトルで綴る家族の愛。『レペゼン母』宇野 碧和歌山で梅農家を営む明子は、借金まみれのダメ息子・雄大が悩みのタネ。ある日、彼がラップバトルの大会に出場すると知り、明子は「最後のチャンス」とばかりにマイクを握る。素直になれない親子はこれまでの思いをぶつけ合って――。1540円(講談社)家族的なつながり、ジェンダー、貧困など、世相や社会課題を反映した小説が全盛の時代。それゆえ直球すぎる作品には、「やや食傷気味」。「SNSでもみんなが主張し、お腹いっぱいのテーマだからこそ、フィクションでは斬新なアプローチや緻密なプロット、仕掛けが重要。まっすぐ語られるより、思わぬところから自分が知っている感情が浮き上がってくる方が腹落ちの仕方が違うんです」(吉田さん)「LGBTQキャラを加えたり、貧困や毒親など家族問題を下敷きにしたり、必然を感じない安易な設定に食傷しているなか、上の3作品はエンタメとしても出色です」(三浦さん)三浦天紗子さんライター、ブックカウンセラー。女性誌や文芸誌、Webメディアで書評やインタビュー、メディカル記事を担当。著書に『そろそろ産まなきゃ』(CCCメディアハウス)など。吉田大助さんライター。雑誌を中心に、書評や作家インタビューなどを手がける。編者を務めたアンソロジー『僕たちの月曜日』(角川文庫)が発売中。ツイッターは@readabookreview※『anan』2023年4月19日号より。写真・中島慶子取材、文・熊坂麻美(by anan編集部)
2023年04月15日20年余の歴史を持つ「女による女のためのR‐18文学賞」。宮島未奈さんは2021年、「ありがとう西武大津店」でその大賞、読者賞、友近賞(特別選考委員・友近さんの名前を冠した賞)をトリプル受賞。3冠を射止めたのは史上初だ。その受賞作を含む『成瀬は天下を取りにいく』は、本好きの間では刊行前から話題に。とりわけ主人公・成瀬あかりの突き抜け方に揺さぶられ、推し宣言するファンが続出!「私も応募作を書き終わったときに、『成瀬のようにふるまいたかったけれど、できなかった人に読んでほしいな』と思っていたんです。そうしたらAマッソの加納愛子さんが〈成瀬になりたくて、なれなかった〉と私の思いそのままのコメントをくださって、これには感動しました」「R‐18文学賞」受賞作は、成瀬の幼なじみ・島崎みゆきの視点で進む。中学2年の夏休み、コロナ禍に閉館が決まった西武大津店に通い、ローカルテレビの中継番組に映り続けると決めた成瀬。風変わりな思い出作りに挑む少女たちのひと夏を描く。続く2話目「膳所(ぜぜ)から来ました」で成瀬は〈お笑いの頂点を目指そうと思う〉と島崎を誘って〈ゼゼカラ〉というお笑いコンビを結成。「主人公は、変わっているけれどなんでもできてしまう子がいいなと思ったんですね。もちろん成瀬のキャラクターも好きですが、私がいちばんうらやましかったのは島崎みたいな友達がいることです。10代20代の未熟な時期、ただ一緒にいることを友情としたり、それもお互い厳しいことは言わないようにして平穏を保ったりしますよね。だからよけいに、厳しいことも言うけれど基本的に成瀬を全肯定してくれる島崎みたいな存在が私も欲しかったです」最終話「ときめき江州(ごうしゅう)音頭」は、怖いものなしの成瀬に、初めての逆境が訪れるというストーリー。「成瀬にとっていちばん耐えがたいことは何かと考えたら、ああいう展開になりました」また、作中では琵琶湖の観光船「ミシガン」ほか実在の名称も登場。滋賀という土地が魅力的に描かれる。「私は実は『びわ湖アンバサダー』でして(笑)。私自身がミシガンには何度も乗っているんです。描写にはその経験が生きています」本書は、そんなローカル愛に満ちた、新たな滋賀文学でもある。『成瀬は天下を取りにいく』作中に登場する〈ときめき坂〉は大津市実在の場所(他のときめき小学校やときめき夏祭りは架空のもの)。6編からなる連作短編集だ。新潮社1705円みやじま・みな1983年、静岡県生まれ。現在は、本書の舞台でもある滋賀県大津市に在住。京都大学文学部卒。2018年「二位の君」で第196回コバルト短編小説新人賞を受賞(宮島ムー名義)。※『anan』2023年4月12日号より。写真・土佐麻理子(宮島さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2023年04月10日将棋のマンガだが、ルールを知らなくても十分に楽しめるマンガである。作者は、移民社会としての日本をSF的に描いた『バクちゃん』で話題を呼んだ、増村十七さんだ。「名人を目指す過程に焦点を当てたマンガは、読むのは好きなんですけど、自分が挑戦するようなものではない気がして。先人たちが描いていなくて、かつ気になっていたのが、トップの戦線に行くことのできていないプロの人たち。プロになった時点でみなさん天才といえますが、上には上がいるので一番になれない人はどういうモチベーションでやっているのだろうと思ったのです。そしてそれをコメディで描けたら、だいぶ読みやすいんじゃないかなと」花四段こと花つみれは、プロのなかではピラミッドの下のほうにいる棋士。将棋にはごく真剣に取り組んでいるものの、対局中にちょくちょく雑念に惑わされてしまう。浮世離れした雰囲気は、たしかに並外れた頭脳を持つプロ棋士っぽいのだが、こちらが“つかめなさ”を感じるのには、実はこんな理由があった。「この作品は最初にツイッターで発表しているのですが、ストーリーもキャラクターもまずはそこで反応を見て、だんだん固めていきました。第1話で、対局に関係ないことをいっぱい考えてしまう展開も、ギリギリまで勝敗を決めていなくて。だけどあそこで花四段が負けたことで、“負けてもいい将棋マンガ”になったんですよね。今思うと、あの選択は大きかった気がします」花つみれの日常は些細な事件が頻発する。対局に向かう途中、工事現場でずぶ濡れになったり、対局時に昼食のメニューがなかなか決められなかったり、ネット中継の解説の仕事でハプニングに陥ったり……。笑いが幾層にも重なっている。「棋士の方への取材で聞いたことや、配信を見て気になったことなど小ネタをストックしておいて、どんなエピソードとつなげられるか考えるんです。でもこれだけは言っておきたいのですが、実際のプロの方は本当に真面目で、このマンガほどふざけている人はいませんので(笑)」2巻では、花四段を一方的にライバル視している友人の意外な一面や、女性初のプロ棋士を目指す、花四段の妹弟子の苦悩も描かれ、感情の振れ幅がより大きくなっている。「プロ棋士は全員幼なじみといえる関係性で、子どもの頃から知っている相手と戦い続けています。だからこそお互いの過去の話が面白いというのも、描きながらわかってきました。3巻でどう動くかわかりませんが、花四段の過去を掘り下げるような展開も描いていきたいです」増村十七『花四段といっしょ』2雑念多きプロ棋士・花つみれ四段と、将棋界の愉快な仲間の日常を描いたコメディ。最新話はTwitter公式アカウント(@hanayodan)で読むことが。朝日新聞出版770円©増村十七/朝日新聞出版ますむら・じゅうしちマンガ家、イラストレーター。2012年、「のんちゃん!の破壊日記」で商業誌デビュー。代表作に『バクちゃん』(全2巻)。※『anan』2023年4月12日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2023年04月09日睡眠中に筋肉が固まってしまい、朝、カラダは全身ガチガチに。そのまま一日をスタートすると、血流も滞ったままで体温も上がらずなかなか活動モードにならない。目覚めたら、まずはストレッチで筋肉を起こし、代謝&血流をアップ。メリットいっぱいの朝ストレッチで、毎朝カラダにスイッチを入れよう!3ステップで習慣づけるメリット満載の朝ストレッチ。朝、目が覚めてすぐにできる運動、それはストレッチ。無理なくゆっくりカラダを動かすだけで、さまざまなメリットが期待できると、ヨガインストラクターの廣田なおさん。「寝ている間に固まった筋肉をストレッチで動かすことで、代謝が上がります。その結果、血流が促されて体温も上がり、ますます代謝が上がる。これが朝ストレッチの最大のメリットです」その他にも、寝姿勢による筋肉や姿勢のクセの矯正や自律神経のバランス調整、体内時計のリズムが整うことで仕事の効率が上がるなど、いいことずくめ。今回、廣田さんが教えてくれるのは、目が覚めてすぐベッドで横になったまま行えるストレッチ、ベッドに座ってさらに血行を促すストレッチ、立ち上がって全身を使うストレッチの3ステップ。「慣れてくれば、すべて行ってもかかる時間は5分程度。朝、脳やカラダを覚醒モードに切り替えるのが難しいという人も、やったその日から切り替え効果を感じられると思います」明日の朝、試してみれば実感できるはず。朝ストレッチって気持ちいい!ここでは、目が覚めてすぐベッドで横になったまま行えるストレッチを2つ紹介します。胸&太もも。まずは、大きな筋肉を起こそう。寝ている間に縮こまった、胸と太もも、2か所の筋肉をまずは伸ばして動かします。どちらも大きな筋肉なので、しっかり刺激を入れればそれだけで代謝がアップ!カラダが目覚め始めます。POINT:食後は消化のためのエネルギーがそれなりに必要。ストレッチに集中するために食事の前に行うこと。目覚めたらすぐに取りかかって。【胸】胸を開いて寝姿勢のクセをリセット。1、手のひらを合わせるベッドに横向きになり、上側の脚を前に出して膝を直角に曲げる。両手は前にまっすぐ伸ばして左右の手のひらを合わせる。2、真横に開く上側の腕を真横に伸ばし胸を開いて3~5呼吸キープ。3、斜め上に開くいちど1の姿勢に戻って、今度は斜め上に腕を伸ばして3~5呼吸キープ。逆も同様に行う。【太もも】太ももの表と裏をしっかり伸ばす。1、もも前を伸ばす横向きで下側の膝を曲げる。上側の足の甲を同じ側の手で掴み、かかとをお尻に引きつけて太ももの前側を伸ばす。2~3呼吸キープ。2、膝を前に次に、上側の膝をカラダの前で畳んで、手で足の指を掴む。3、もも裏を伸ばす膝をまっすぐ伸ばして太もも裏側を伸ばす。2~3呼吸キープ。逆も同様に行う。廣田なおさんヨガインストラクター。自分自身が納得できるカラダ作りをベースにしたメソッド「美筋ヨガ」を考案。オンラインサロンやYouTube 配信でレッスンを行い、SNSのフォロワー数は35万人超え。※『anan』2023年4月12日号より。写真・中島慶子ヘア&メイク・yumi(Three PEACE)取材、文・石飛カノ(by anan編集部)
2023年04月06日巻き肩状態の寝姿勢では、肩まわりの筋肉が固まりやすく、膝を外側に開いた寝姿勢では、お尻や太もも外側が硬くなりがち。血流の要となる部分を伸ばそう!メリットいっぱいの朝ストレッチについて、ヨガインストラクターの廣田なおさんに話を聞きました。ここでは、ベッドに座ったままできる、血行を促すストレッチをご紹介。首、肩、お尻を伸ばして、血流を促そう。座って朝ストレッチ!【首と肩】肩まわりの血流を促し、コリを解消。1、あぐらをかくあぐらをかき、両手をカラダの後ろでベッドにつける。2、肩を後ろ回し肩を後ろ方向に2回まわして胸を開いた姿勢を作る。3、後頭部に手のひらを当てる次に、右の手のひらを左の後頭部に当てる。4、斜め前に倒し首を伸ばす腕の重みを利用しながら頭を斜め前に倒し、首の斜め後ろを伸ばす。2~3呼吸キープ。逆も同様に行う。【お尻、ももの外側】下半身血流アップでむくみも改善。1、膝を立てて座る両足を腰幅に開いて左右の膝を立てる。両手をカラダの後ろからやや離れた位置でベッドにつけ、上体を後ろに傾ける。2、両膝を横に倒す上体はそのまま、両膝を左側に倒す。3、お尻とももの外側を伸ばす左足を右膝の外側に乗せて2~3呼吸キープ。右のお尻と太ももの外側が気持ちよく伸びる。逆も同様に。廣田なおさんヨガインストラクター。自分自身が納得できるカラダ作りをベースにしたメソッド「美筋ヨガ」を考案。オンラインサロンやYouTube 配信でレッスンを行い、SNSのフォロワー数は35万人超え。※『anan』2023年4月12日号より。写真・中島慶子ヘア&メイク・yumi(Three PEACE)取材、文・石飛カノ(by anan編集部)
2023年04月05日一度も恋愛感情を持ったことがないけれど、結婚や子どもをあきらめることもできない38歳の平井。両親の離婚によって結婚には興味が持てないが、恋愛を忌避しているわけでもない42歳の菅沼。大谷朝子さんの『がらんどう』では、そんなふたりがルームシェアする距離感が心地よく、それでも「普通」の呪縛から逃れられない女性たちの姿が描かれる。平井や菅沼の心情に共感必至の一冊だ。結婚、子ども、経済力。女性たちは答えを出せないままに、思い惑う。「本作を書く前に婚活のつらさを書いてみようと始めた作品があったんですが、重すぎて挫折しました(笑)。もう少し別の形でそのしんどさを描けないかなと思って考えたのが、菅沼のような強いエネルギーの人物を主人公のそばに置くことでした。菅沼のように“普通”を笑い飛ばしてくれる人がいたら平井はずいぶん気持ちが楽になるだろうなと。私もああいう友達が欲しかったんですよね」普通じゃないことを選ぶのに臆病な平井は、菅沼との同居に安寧を見いだしながらも、当たり前に結婚したり産んだりする生き方に思いを巡らせ、〈したくない。でも、できる、かもしれない〉と揺れ続ける。そんな平井に対し、普通であることを気にしない菅沼がかけた言葉は、読者にとってもお守りのようだ。〈諦めないことが正解じゃないように、たぶん諦めることも正解じゃないよ〉「平井の〈わたしの産みたさはどこから来るのだろう〉という強迫観念は、ひとつは普通でいなければという社会的な要因ですが、もうひとつ、女性の体を抱えていることから来る要請なのかなと思うんですね。女として生まれてしまったがゆえに、頭では産まない選択もあるとわかっているけれど、本能や母性が、切り離して人生を考えさせてくれない気がします」菅沼の副業になっている3Dプリンターで作る犬のフィギュアやお焚き上げサービス、平井が登録しているマッチングアプリやある医療サービスなど、作品を彩るモチーフがとても現代的なのも本作の美点。そのひとつひとつの空虚さが〈がらんどう〉というタイトルと呼応する。「書くときは、個人的に引っかかって見過ごせないと思うことがヒントになることが多いですね。どちらかというと私自身は平井と似ていて、普通じゃない選択をする怖さがわかります。そういったことも含めて、『普通の人』の感覚を大事にしながら書いていきたいです」大谷朝子『がらんどう』語り手の平井は、ルームメイトの菅沼と同じアラフォーで、アイドルデュオ「KI Dash」という推しも同じ。ふたり暮らしは快適だったが……。集英社1595円おおたに・あさこ1990年、千葉県生まれ。2022年に「空洞を抱く」ですばる文学賞を受賞。改題した本作でデビュー。現在は、仕事をテーマにした次回作に取り組んでいる。撮影=山口真由子※『anan』2023年4月5日号より。写真・中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2023年04月03日人生の先輩的女性をお招きし、お話を伺う「乙女談義」。今年、俳優生活50年を迎えた多岐川裕美さんの4回目は、“演じる”世界において女性が歳を取ることの意味、そして歳を重ねたからこそ感じる喜びについて語ります。歳を取ると役柄の幅が、男女で異なってくる?60歳くらいから思うようになったのですが、男性の俳優は歳を重ねても役柄のバリエーションが減らないのに、女優はいわゆる“おばあちゃん”の役ばかりになります。家でドラマや映画を見ていると、男性が演じる役で、おもしろそうなのが結構あるんですよ。会社を舞台にした物語が多いからなのか…などと考えたこともありますが、物語は現実の鏡でもあるわけで、改めて、日本は男社会なのだと、ここ10年くらいずっと思っています。今私たちの世代の女優にあまり回ってこないタイプで、だからこそ演(や)ってみたいと思うのは、コメディ系の役。50年俳優をやっていますが、コメディってほとんどやったことがないんです。笑っちゃうような、突拍子もない70代の女性の役とか、ぜひやりたいですね。コロナに戦争、そして不況。こんな世の中だからこそ、見終わったときに「面白かった!」と思え、なおかつスカッとするような物語が必要だと思います。少ない出番で、印象的な演技をするのが今のやりがい。俳優の仕事は、いろんな人間を生きられるのが一番の喜び。お嬢さんにもなれるし、ヤクザの恋人にも、お侍さんの奥さんにもなれる。役をいただくたびに、こうするのはどうかな、あんなことをしようかな…と考える、その時間が好きですね。特に舞台は役に対して毎回違うアプローチができるので、映像とは違う喜びがあります。ただ、年齢を重ねた女性という役が主役の物語は日本では少ないので、脇役が多いですし、おのずと出番が少なくなる。でもだからこそ、その限られた時間の中で、しっかりと印象を残す凝縮した演技が必要とされます。そこには若いときとは違う難しさ、そしてやりがいがあります。正直、まさかこの歳まで女優をやっているとは思いませんでしたが、役を探求する時間はいくつになっても楽しい。これからもまだまだ、新しい役に出合いたいです。そしてそれが出番が多い役だったら、さらに嬉しいんですけどね(笑)。たきがわ・ゆみ俳優。1951年2月16日生まれ、東京都出身。1974年、映画でデビュー。映画、テレビドラマで活躍。代表作にドラマ『鬼平犯科帳』や映画『いつかギラギラする日』など。昨年放送された連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』への出演も話題に。※『anan』2023年4月5日号より。写真・中島慶子(by anan編集部)
2023年04月01日前作『春、死なん』が野間文芸新人賞候補になるなど作家としても注目される紗倉まなさん。新刊『ごっこ』は3編を収録した作品集だ。「他の小説を何度も書き直して行き詰まっている時に、編集者さんから『息抜きに恋愛小説を書いてみませんか』と言われて。“息抜き”という言葉に救われて、力を抜いて自由に書けました」という本作は、人と人の繋がりの不可思議さを絶妙なタッチで描き出す。最初に書いたのは、「はこのなか」という短編。中学校時代からの女友達に思いを寄せる女性の話だ。「私もすごく好きな親友のことを友達以上に気にしたり心配したことがあります。友達同士って、相手に恋人ができると彼との付き合いを優先されてしまったりしますよね。突き放された友達がこんなふうに思いを馳せていることもあるよな、と考えながら書きました」次に執筆したのが表題作の「ごっこ」。ドライブ中、助手席の男に癇癪を起こされた女性が語り手だ。カップルのケンカと思いきやこの二人、単にデートしているわけではなく…。「密閉された空間でこんなことが起きたら嫌だな、というものを詰め込みました(笑)。強がっている感じでこちらを馬鹿にしてくる男性と、その男性を冷静に見ながら心のどこかで馬鹿にしている女性、という構図を書いてみたかったんです。片方が振り回されているように見えて、本当の意味で相手を振り回していたのはどちらなのか、という話です」また、「見知らぬ人」は自分も浮気をしている妻が、夫の浮気相手と対峙する。「ごっこ」同様、会話のなかで二人のパワーバランスが変化していく様子がスリリング。「世の中にはあえて既婚者の男性ばかり狙う女性がいる、という話を聞いて、どんな価値観なんだろうと思って。二人の会話を書いていたら、どちらも持論を展開して止まらなくなりました(笑)」3編とも友達、恋人、夫婦の間の、友情や愛情では説明できない揺らめく感情が鮮烈に描かれていく。「“友達”といっても、実際は友達未満だったり友達以上の気持ちがあったりして、自分たちの関係性をどう言葉に落とし込めばいいのか分からない時ってありますよね。3編ともそうした、枠からこぼれた人たちの話になりました」紗倉まな『ごっこ』10代の頃から自由奔放だった女友達、タクボ。彼女が結婚した今も、戸川にとってタクボは特別な存在で…。「はこのなか」ほか2編を収録。講談社1650円さくら・まな2012年、SODクリエイトの専属女優としてAVデビュー。小説『最低。』『凹凸』『春、死なん』やエッセイなど、執筆活動でも注目されている。『最低。』は映画化もされた。撮影・渞忠之※『anan』2023年3月29日号より。写真・中島慶子(本)インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2023年03月28日人生の先輩的女性をお招きし、お話を伺う「乙女談義」。今月のゲストは、俳優の多岐川裕美さん。デビュー以来、目の前の仕事をこなしながら、ひたすらに走ってきたという多岐川さん。その経験の後、いま読者世代に伝えたいことを聞きました。第3回目をお届けします。立ち止まり、自分と向き合う時間を持ちましょう。忙しい時期は、ゆっくり自分のことを考える時間を持つのは難しいもの。若い頃の私はまさにそんな感じでした。30代、40代と歳を重ねる中で、どんなふうに生きたい、こんな女優になりたいといったことをほとんど考えずに生きてきてしまった。でも50歳になったときにふと、このままでいいのか、という思いがよぎりました。そこがひとつの節目でした。55歳で初めてまとまった休みを取り、初めて自分と向き合う時間を持ちました。それから少し、人生が変わったような気がします。立ち止まるタイミングが何歳のときに来るかは人それぞれですが、できれば日々の中で、自分と対話する時間を少しずつでも持つといいのでは、と思います。そのときはぜひ、テレビや音楽を消し、スマホも手放すといいですよ。静かな時間に身を置くだけで、自分の心の声が聞こえてくるものですし、なぜか自然に前向きな気持ちになれる。騙されたと思って、ちょっとやってみてください。「あとで」「今度」は来ないかもしれません。若いみなさんに私が伝えたいことの一つに、やりたいと思うことがあったらとりあえずトライを、というのがあります。人間はなにかやりたいことがあっても、いろんな理由をつけてつい後回しにしがちですよね。特に若いときは時間は無限だと思うから、「あとでやろう、今度やろう」と思うもの。でもその“あとで”や“今度”は来ないこともあるし、やろうと思ったときには年齢制限を越えてしまっていることもある。だから、会いたい人にはすぐ会ったほうがいいし、やりたいこともできるだけやったほうがいい。振り返ったとき「あのときああしていれば…」と思う回数は、少ないほうが絶対いいですから。ただ一方で、何をするにも遅いということもない。私は60歳を越えてからジムに通い始め、すっかりハマってしまいました。目下の夢は縦横の開脚!だいぶできるようになったのですが、まだまだ体が硬い…。1年後?2年後?を楽しみに頑張っています。たきがわ・ゆみ俳優。1951年2月16日生まれ、東京都出身。1974年、映画でデビュー。映画、テレビドラマで活躍。代表作にドラマ『鬼平犯科帳』や映画『いつかギラギラする日』など。昨年放送された連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』への出演も話題に。※『anan』2023年3月29日号より。写真・中島慶子(by anan編集部)
2023年03月26日