スポーツ関連の雑誌でライターを担当する黒澤祐美さんが、大人の男代表として挙げてくれたのは、コーチや監督など、名選手を育てあげる指導者。「指導というのは、教えたことを相手が理解し、受け入れないと意味がありません。ランニングなら、なぜこのフォームで走ると速く走れるようになるのか、理由がはっきりしていないと選手は納得できないもの。単に『昔はこうだった』と古い考えで説明する人は、今や選手の共感を得られないし、実績もついてきません。素敵な指導者とは、正しい知識を持っていて、相手が本当に必要としているものを与え、そして隠れた能力を引き出してくれる人です」(黒澤さん)そう語る黒澤さんが選ぶ、指導者としても一流の男5人とは?■マッシモ・オッド(イタリアのサッカークラブ・デルフィーノ・ペスカーラ1936監督)「2006年のワールドカップで優勝したドイツ代表の一人。引退してすぐに監督ライセンスを取得し、イタリアでU‐17の監督の座に就任。一見、華々しい経歴ですが、任されたのは二番手であるBチームの指導。しかし、『監督とは、いかなるときも自らの信念からブレてはいけない』と、手を抜くことなく指導を続け、その後トップチームの監督に就任。努力家の指導者には、選手もついていきたくなるもの」■マイケル・チャン(男子プロテニス・錦織圭のコーチ)「あるインタビューでマイケル・チャンコーチは『コーチングは、その選手が“これまでと違った視点”を持てるように手助けをすること』と語っています。人は一つのことに夢中になると、周りが見えなくなるもの。そのときに、コーチが選手のポテンシャルや才能を見取り、“気付き”を与えることで、相手の能力は伸びるといいます。そんな熱く、筋の通ったサポートが、錦織圭選手の実力を開花させました!」■原 晋(すすむ/青山学院大学・陸上競技部監督)「原監督は、自身で『管理職の仕事は管理することじゃない。感じることだ』と話しているように、朝食時は必ず部員たちと雑談をし、食堂に漂うその日の雰囲気を感じ取っているのだそう。少しでも違和感があったらその原因と対策を考えて、トラブルが起こる前に未然に防ぐ。普段のコーチングはもちろん、選手に寄り添うきめ細やかな姿勢こそが、箱根駅伝2連覇の輝かしい結果へと繋がっていったのでしょう」■井上康生(柔道男子・日本代表監督)「日本発祥の柔道は、いい意味で伝統と理想に縛られていて、成績が伸び悩んでいた時期が。そんなときに井上監督がトレーニングに取り入れたのが、海外の格闘技の要素。“継承すべきものは継承し、必要なら新しいものを取り入れる”という柔軟な発想のもと、選手の意識改革を行ったところ、リオオリンピックでの全階級メダル獲得という結果がついてきました。選手からの信頼も厚く、素晴らしい指導者!」■エディー・ジョーンズ(ラグビー元日本代表・ヘッドコーチ)「ラグビー日本代表を世界のトップクラスまでに導いた男、エディー・ジョーンズコーチ。彼の考えるコーチングのキーワードは“信じる力”。インタビューでも『コーチにとって大切なのは、なぜ選手はそういう決断をしたかを考えること』と言っています。これは選手を信じているからこそ、できる指導といえます。自分をきちんと見て、評価してくれる。そんな指導者に巡り会える選手は、幸せ者ですよね!」◇黒澤祐美さんライター。雑誌『Tarzan』を中心に、フィットネスやスポーツ関連の記事を執筆している。自身もパーソナルトレーナーの資格を持ち、活動中。※『anan』2016年11月16日号より。文・重信 綾古屋美枝イラスト・くぼあやこ
2016年11月12日アイドルデュオ・KinKi Kidsの堂本剛が、小栗旬主演の映画『銀魂』(2017年公開)に高杉晋助役で出演することが19日、明らかになった。さらに新井浩文、佐藤二朗、菜々緒、安田顕、早見あかりの出演が発表された。同作は、漫画家・空知英秋氏が漫画誌『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載中の同名コミックを原作に、『HK 変態仮面』シリーズやTVドラマ『勇者ヨシヒコ』シリーズなどで知られる福田雄一監督が実写化のメガホンをとる。パラレルワールドの江戸を舞台に、宇宙からやってきた"天人(あまんと)”と侍・坂田銀時(小栗)の間に起こるさまざまな事件を描く。2005年公開の映画『ファンタスティポ』以来12年ぶりの映画出演となる堂本は、小栗演じる銀時の旧友で、現在は敵対しているライバル・高杉晋助を演じる。剣術の達人という設定で、攘夷過激派武装集団<鬼兵隊>を率いて、2000年放送のドラマ『Summer Snow』(TBS)以来の共演となる小栗と刃を交えることになる。堂本は「監督に『堂本剛に悪役を演じさせたい』と言われ、キザでクールな高杉と僕のギャップをどう埋めてプラスにするのか監督と話し合いを重ねる内に、出演が決まっていました。人気キャラを演じる重圧に耐えながら撮影に臨みました」と出演について語る。さらに「正直、エリザベスがやりたかった……」と、別の役に思いを馳せた。アーティストとして、ギターだけでなくピアノやベース、ドラムなども弾きこなす堂本だが、今回は三味線に挑戦。「座って練習していたところ、監督から撮影2日前に『立って弾いてほしい』と言われて本当無茶振りばかりで……」とぼやき、アクションシーンについては「殺陣は10代ぶりでしたし、何せ小栗くんは背が高いので大変でした」とコメントを残した。高杉が率いる<鬼兵隊>メンバーで、人斬り似蔵の異名を持つ岡田似蔵を演じる新井は「福田組なのに……『銀魂』なのに……ウチはギャグゼロで戦っていたので不安と不満と疲労の3つでした」と撮影を振り返った。同じく<鬼兵隊>のメンバーで、策略家・武市変平太役の佐藤は「福田にとっておそらく最初で最後の大作ですので、まあ奴を支えてやるか的な気持ちで参加しました(笑)。僕は福田組の常連とよく言われますが、毎回が勝負だと思って全力でふざけています」と頼もしい一言を残す。高杉を慕う拳銃の使い手・来島また子役の菜々緒は「原作のキャラクターはビジュアルが強烈なので、私にできるか不安だったのですが、難しい役だからこそ挑戦したいと思い精一杯演じました」と真摯に語った。また、刀鍛冶屋の村田鉄矢役の安田は「とにかく大きな声をだすことを意識して演じましたが、いざやってみると結構難しかったです……」と振り返り、鉄矢の妹の村田鉄子役を演じた早見は「実際の刀鍛冶の仕事場に行き、本物の刀に触れたりして勉強させて頂きました」と役作りの裏側を明かした。(C)空知英秋/集英社(C)2017「銀魂」製作委員会
2016年09月19日東京・品川の「原美術館」にて、2014 年秋の「開館35周年記念 原美術館コレクション展」以来となる全館を使ったコレクション展示「みんな、うちのコレクションです」が、8月21日(日)まで開催中だ。「原美術館」は、もともと個人邸宅として 1938年に建てられたもので、西洋モダニスム建築を取り入れ、中庭を包みこむように緩やかな円弧を描いた空間デザインが特徴的。居間や寝室であったスペースは企画ごとに展示を入れ替えるギャラリーに変わった一方、浴室や洗面所などのユーティリティースペースは、アーティストに依頼してユニークな常設展示作品に生まれ変わっているほか、建物の中以外の、敷地内の庭にも、野外の常設作品が点在している。大規模な美術館とは一風異なり、作品と同時に、美術を鑑賞体験する“場”そのものも味わえる場所だ。1979年の創立以来収集してきたコレクションは、国内外の多彩な現代アーティストの絵画・彫刻・写真・映像作品など、現在約1,000点にのぼる。その中から、横尾忠則、加藤泉、クリスト&ジャンヌ=クロード、ウィリアム ケントリッジをはじめとする絵画・彫刻・ドローイング・映像作品を展示。今回は、中国を代表するアーティストであると同時に、積極的な社会活動でも知られる艾未未(アイ・ウェイウェイ)の貴重な初期作品や、日本から帰化してブラジル美術界の巨匠となり、昨年惜しくも亡くなったトミエオオタケ(大竹富江)の絵画も展示される予定だ。原美術館では、増築した多目的ホールや中庭を利用して多彩なイベントも随時開催されており、会期中には、8月13日(土)、14(日)に「トヨダ ヒトシ 映像日記・スライドショー」が行われる。また、日曜日と祝日には、同館学芸員による展示解説も行われる。展示解説は、14:30から約30分間で予約は不要。(text:cinemacafe.net)
2016年06月30日今年で70回目を迎える「毎日映画コンクール」の表彰式が2月16日(火)に開催され、最高賞の日本映画大賞が橋口亮輔監督の『恋人たち』に贈られたほか、塚本晋也が『野火』で監督賞、男優主演賞の2冠を達成した。先日行われた「キネマ旬報ベスト・テン」での日本映画第1位の栄誉に続き、70年の歴史を誇るこの毎日映画コンクールでも最高賞に輝いた『恋人たち』。壇上でトロフィーを受け取った橋口監督はこの日、会場に到着するもスタッフから一般の観客と間違われ「整理券を受け取ってください」と言われ、受賞者だと伝えると「『受賞者?』と2回聞かれました(笑)」と自虐気味に明かし笑いを誘う。前作『ぐるりのこと。』は、同コンクールで日本映画優秀賞を受賞したが「その時の大賞は『おくりびと』で、滝田洋二郎監督に『すいませんね』と言われて『いえいえ』と答えましたが、内心は悔しかったです。映画人ならだれでも憧れる賞であり、名誉に感じています」と喜びを噛みしめた。本作はワークショップで募った無名の俳優を中心に低予算で制作されており、公開規模も大きいとは言えないが、各地の劇場で満席が続出するなど口コミで大きな話題に。橋口監督自身の経験を主人公に反映させており「(自身が)どんな目に遭ったかを話すと3時間かかりますが(笑)、お金を一千万以上盗まれまして、『何だこの国は…』と思い、その後、震災も重なって、心の中にいろんな思いを抱えて、表に出せずに耐えている人がいっぱいいるはずで、そんな人に見てもらえたらと思い、作りました」と語った。この日は、主演の篠原篤、成嶋瞳子、池田良をはじめ、キャスト陣も駆けつけ、橋口監督と共に壇上に上がり、喜びを分かち合った。塚本晋也監督は自身がメガホンを握り、主演まで務めた『野火』で監督賞、男優主演賞の2冠を獲得!こうした形での2冠は初の快挙だが、塚本監督は男優主演賞の授与の場で「僕ですいません。ホントにすいません、申し訳ないです!」と不祥事でも起こしたかのように謝罪を連発!過酷な戦地での日本兵の姿を描いた本作は「20~30年前から作りたかった映画」というが「戦争に行った人がどんどんなくなっていく中で、いま作らなければ作るチャンスがない」と考え、私費を投じて制作した。これまでも自作を含め、俳優としても活動している塚本監督だが「自分で出れば交通費を出さなくていいから(笑)。カメラ持って、自分で(現場に)行こうという発想」と低予算ゆえの苦肉の策だったと明かし「想像を絶するものが来た(笑)」と思わぬ受賞に困惑…。最後まで「すいません!」と謝り通しだった。また男優助演賞は、舞台を中心に活動し、山田洋次監督作『母と暮せば』で27年ぶりに映画出演を果たした加藤健一が受賞。久々の映画出演の経緯について「下北沢の劇場の楽屋に山田監督がいらっしゃって『出なさい』と言われ、そのひと言で『はい、出ます』と」と明かした。男優賞には渋い面々が並んだが、女優賞では『海街diary』で4姉妹の長女、次女を演じた綾瀬はるかと長澤まさみが女優主演賞、女優助演賞を受賞!また一般のファンの投票による「TSUYATA映画ファン賞」は日本映画部門で『幕が上がる』が受賞し、主演の「ももいろクローバーZ」の5人がそろって登壇し「喜びを全身で表現した」(百田夏菜子)というド派手な衣装とフェイスペインティングで会場をわかせた。スポニチグランプリ新人賞には人気バンド「RADWIMPS」のボーカルで、『トイレのピエタ』で映画に初めて主演した野田洋次郎と宮部みゆきのベストセラーの映画化『ソロモンの偽証』で役名を女優名として襲名し、女優デビューを果たした藤野涼子が選ばれた。【第70回毎日映画コンクール】受賞一覧日本映画大賞:『恋人たち』日本映画優秀賞:『岸辺の旅』外国映画ベストワン賞:『バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』監督賞:塚本晋也(『野火』)脚本賞:原田眞人(『駆込み女と駆出し男』)男優主演賞:塚本晋也(『野火』)女優主演賞:綾瀬はるか(『海街diary』男優助演賞:加藤 健一(『母と暮せば』)女優助演賞:長澤まさみ(『海街diary』)スポニチグランプリ新人賞:野田洋次郎(『トイレのピエタ』)スポニチグランプリ新人賞:藤野涼子(『ソロモンの偽証前篇・事件/後篇・裁判』)アニメーション映画賞:『百日紅~Miss HOKUSAI~』大藤信郎賞:『水準原点』ドキュメンタリー映画賞:『沖縄 うりずんの雨』TSUTAYA映画ファン賞【外国映画部門】:『ミッション・インポッシブル/ローグネーション』TSUTAYA映画ファン賞【日本映画部門】:『幕が上がる』田中絹代賞:桃井かおり(text:cinemacafe.net)
2016年02月17日『フツーの会社員だった僕が、青山学院大学を箱根駅伝優勝に導いた47の言葉』(原晋著、アスコム)の著者は、青山学院大学体育会陸上競技部長距離ブロック監督。2015年には、青学を史上初となる箱根駅伝総合優勝に輝いて話題を呼んだだけに、記憶に残っているという方も少なくないはずです。しかしながら、そこに至るまでの経緯は決して安泰とはいえなかったようです。というよりも、かなり遠回りをしてきたような印象すらあります。広島県三原市生まれ。世羅高校から中京大学に進学してからは、暇さえあればパチンコ屋に通い、彼女とのデートに精を出す日々だったのだとか。どこにでもいるような大学生だったということになるでしょうが、ともあれ、「このままではいけない」との思いから大学3年のときに全日本インカレの5000mで3位に入るのが精一杯だったといいます。しかも卒業後は陸上競技部第一期生として中国電力に進んだものの、足の故障により、5年目にして競技生活から引退。以後はサラリーマンとして新たなスタートを切ることとなり、電気の検針や料金の集金などの業務を経て、営業マンとして能力を開花させたのだといいます。つまり、陸上とはまったく無縁の生活を送っていたということです。ところが2003年には、長く低迷していた青山学院大学陸上競技部から、監督として来てほしいとの誘いを受けたのだといいます。かくして3年契約で監督に就任するも、3年目での箱根出場を逃して監督辞任のピンチに追い込まれることに。しかし説得の末に猶予をもらい、2009年に33年ぶりの箱根駅伝出場を果たしたというのですから、まさに綱渡りのような状態。以後もビジネスの経験を生かした「チームづくり」「選手の育成」によって陸上界の常識を破り、8年連続出場の実績を更新中だといいます。が、かなりの苦労を重ねてきたことは否めません。■オンリーワンの提案を用意ところで、そんな著者は本書において、獲得した人材の潜在能力を最大限に引き出すためには、育成プランが必要だと主張しています。具体的には、どうしても欲しい人材を獲得するためには、「オンリーワンの提案書」を用意することが効果的だというのです。たとえば新規事業や新製品は、クライアントにしてみれば、海のものとも山のものともわからないもの。だからそれを売り込むには、会社が用意したパンフレットだけでは不十分。「お客様のための提案です」とオンリーワンの提案書をつくってこそ、相手に本気で向き合ってもらえるというわけです。■数字を交えて具体的に示すそしてそれは、ほしい人材を獲得する際についてもいえること。育成プランを作成する際に意識すべきは、目標をできるだけ具体的にし、なおかつ数字に落とし込むことだというのです。たとえば著者の場合は提示する育成プランを、大学1~4年までの目標をA4用紙1枚にまとめるのだそうです。5000メートル、1万メートル、ハーフマラソン、それぞれの目標をはじめ、「1年生で関東インカレの1500メートルに出場し、2年生で5000メートルに出場、3年でユニバーシアードに出場」など、その選手に実現してほしい道筋を、数字を交えながら具体的に示すということ。■数字を道しるべにしよう!またプランにはそうした目標だけでなく、「それまでにどのような課題を克服すべきか」を書き添え、「目標を実現するためには努力も必要だ」ということを伝えているのだともいいます。そんな著者は、育成プランで大事なのは、組織、チームのビジョンをしっかり伝えながら、新入社員や新入部員が自分の成長を具体的にイメージできるようにすることだと主張しています。なぜなら道しるべがあると、その後の伸び方が大きく変わってくるものだから。つまり、そのためにも、数字で表現することが欠かせないということです。*ここからもわかるとおり、著者はスポーツの世界とビジネスの世界を柔軟に行き来して物事を考えるように見えます。もちろんそれは、直接的な体験の裏づけがあるからですが、いずれにしてもその考え方は、あらゆるビジネスシーンに応用できることでしょう。だからこそ、部下やチームの動かし方で悩んでいるビジネスパーソンに対して、本書はなんらかの気づきを与えてくれるはずです。(文/書評家・印南敦史)【参考】※原晋(2015)『フツーの会社員だった僕が、青山学院大学を箱根駅伝優勝に導いた47の言葉』アスコム
2016年01月18日ことしも1月2日と3日に大学駅伝の華「箱根駅伝」が開催されます。2015年、往路・復路ともに1位で初優勝を決めた青山学院大学(以下、青学)で2003年に監督に就任した原さんは元電力マン。ユニークな指導法で、33年間箱根駅伝に出場すらできなかった青学を7年連続出場、初優勝へと導きました。原さんの著書『フツーの会社員だった僕が、青山学院大学を箱根駅伝優勝に導いた47の言葉』(アスコム)には、会社員時代の経験を生かした目標達成のノウハウが詰まっています。その中から、箱根駅伝の優勝監督ならではの方法論をご紹介。新しい目標を立てる新年に、駅伝ファンはもちろん、目標を持つすべての人に役立つはずです。■エースを花の2区ではなく3区に配置原さんの持ち味は、常識にとらわれない発想力です。そのいい例が「『花の2区』だからとエースを走らせる必要はない。うちは『3区がエース』でもいい」というもの。箱根駅伝のコースの中でも、平坦な前半から難所の権太坂になだれ込む2区は各チームのエースが出そろう注目の区間。しかし原さんは駅伝界の常識を覆します。スピードのある選手でも、2区の権太坂の後の急勾配で失速する可能性がある。本当に速い選手は後半で平地が続く3区に配置した方が合理的だ、というのです。前例にとらわれないということは、言葉でいうほどやさしいことではありません。結果に対する責任ものしかかってくるからです。■どん底経験がチーム作りのヒントに!大学駅伝の風雲児・原さんの快進撃を支えるのは、会社員として培った経験です。しかしその道のりは平たんなものではありませんでした。高校3年生の時に全国高校駅伝大会で準優勝。しかし選手としてのピークはここまで。大学では結果を出せず、箱根駅伝にも出場していません。大学卒業後、中国電力陸上競技部に鳴り物入りで入部しますが、ここでも結果を残せず5年で退部。入社6年目で駅伝の世界から離れ、新人電力マンとして電気料金の集計などの仕事を始めますがうまくいかず、9年目に下部組織のサービスセンターへ異動。左遷でした。どん底の原さんを変えたのは、サービスセンターで取り組んだ提案営業。コネもなく、飛び込みから始めて四苦八苦するうちに頭角を現し、トップ営業マンに上り詰めたのです。その時に身についたビジネスのノウハウが、強いチーム作りに生かされているといいます。■道しるべを作ることで選手がやる気に本書で語られるノウハウには、駅伝選手ではない私たちにも役立つアイデアが詰まっています。中でも、お正月の今こそ注目したいのが「育成シート」です。これは有望な選手をスカウトするために原さんが作成するもの。オーダーメイドの成長プランを提示し「こんな風に君を育てたい」と熱烈にスカウトするのです。そんな風に誘われたら「ここでなら夢を叶えられる。ぜひ入部したい!」と思ってしまうことでしょう。それもそのはず、この育成シート、トップ営業マン時代の「提案書」がモデルだそう。原さんは、「道しるべがあると、その後の伸び方が大きく変わってくる」といいます。この“道しるべ”は、私たちが目標を成し遂げるのにも役立つもの。さっそくその中身を見てみましょう。■目標はA4用紙1枚にギュッと凝縮!ポイントは“できるだけ具体的に、かつ数字に落とし込むこと”。育成シートは、大学1~4年までの目標をA4用紙1枚にまとめます。各学年でクリアしたいタイム、出場したい大会。箱根駅伝に関しても、2年生で復路、3年生で往路を走り、4年生でエース区間、など。私たちひとりひとりに、仕事や夢、趣味、人生においてさまざまな目標があります。そこで、ぼんやりした「いつか成し遂げたい目標」を数字で具体的に、1年後には〇〇をする、そのためには来月までに△△をして……と、1年ごと、1ヶ月ごとの小さな目標に分落とし込み、A4用紙1枚に書き込んだ「マイ育成シート」を作ると、目標がすっきりと具体的になり、何から手を付ければいいのかがおのずと見えてくるはずです。*育成シートをはじめ、本書には原さんがビジネスと勝負の現場で獲得した47の方法論が紹介されています。これを今度はあなたが自身のフィールドで生かす番です。箱根駅伝に胸が熱くなった人だけでなく、ことしこそは成し遂げたい目標がある人にこそ手に取ってほしい1冊。新しい1年の“道しるべ”になってくれるはずです。(文/よりみちこ)【参考】※原晋(2015)『フツーの会社員だった僕が、青山学院大学を箱根駅伝優勝に導いた47の言葉』アスコム
2016年01月01日「ぴあ」調査による2015年7月25日のぴあ映画初日満足度ランキングは、太平洋戦争に従軍した作家・大岡昇平の代表作を塚本晋也監督が自らの主演で映画化した『野火』がトップに輝いた。その他の写真『野火』の舞台は第2次世界大戦末期のフィリピン・レイテ島。日本軍の敗戦が色濃くなった中、結核を患った主人公・田村一等兵は部隊からも野戦病院からも追い出され、空腹と孤独を抱えながら果てしない原野を彷徨う。田村を始め次第に狂気を帯びていく兵士たちの姿が、最前線の強烈な映像と共にスクリーンから迫ってくる。観客からは「戦争では何が、誰がまともかわからない。そんな状況に恐怖を抱いた」「銃撃シーンは直視するのも辛くて逃げ出したくなった」「今回で2回目の鑑賞。とにかく戦争は嫌だというのを前よりも強く感じた」などの感想が上がった。本作は塚本監督が“いまの時代に問うべき作品”という強い想いから作り上げた作品だ。しかし監督は決して、観る者に思想やメッセージを押し付けているわけではない。観客は「監督の言う通り、言葉が出るには2日かかる。単純に反戦映画ではなく、観る側の感じ方を意識して作られていて、“シンプルだけど深い”を味わった」「美しい風景は心に突き刺さり、登場人物と一緒に観ているような気分になった。生きることとは何かを考えた」など、本作を通して様々な思いをめぐらせたようだ。また劇中には凄惨なシーンも数多く登場するが、「苦手な描写もあったが、塚本監督の想いの強さを感じて色々考えさせられた」「グロテスクなものは得意ではないが、そんなことは言っていられない。本当はもっと残酷な状況だったのだから、目をそらさないで観ないといけないと思った」「原作を読んだときは、描かれる状況と現実がかけ離れすぎていると思ったが、映画を観ると、日本が今まさに置かれている状況と重ねて、自分もこの状況と向き合っていかなければならないと強く思わされた」など、目を背けず画面から何かを見出そうとした観客も多数見られた。『野火』は監督の想いに賛同したリリー・フランキー、中村達也、森優作といった共演者や多くの協力者に支えられ作られたインディーズ作品だ。しかし出演陣の圧巻の演技や、リアリティあふれる凄まじい描写は、圧倒的熱量を持って観客に届いたようで「今回で3回目の鑑賞。やっと冷静に観ることができた。戦争体験をしていない私たちには想像できないもなので、ひとりで受け止めるより他の人にも観てもらって感想を共有したいし、そうすることで救われたい」「戦争を知らない世代にこそ観てほしい」「自分と同じ20代の若者に観てもらいたい」といった熱い声が寄せられた。本作は今後も口コミで動員を伸ばすだけでなく、毎夏、どこかで上映されては新たな観客に出会う作品になりそうだ。(本ランキングは、7/25(土)に公開された新作映画7本を対象に、ぴあ編集部による映画館前での出口調査によるもの)『野火』公開中
2015年07月27日お笑いコンビ・くりぃむしちゅーの上田晋也、俳優の六角精児、プロボクサーでロンドン五輪金メダリストの村田諒太選手が18日、都内スタジオで行われた、WOWOWのスポーツ番組『パッキャオVSメイウェザー大解剖エキサイトマッチ総力戦』の収録に参加した。現地時間5月2日に、米・ラスベガスで行われることが決定したマニー・パッキャオ(フィリピン)VSフロイド・メイウェザー(米国)。ボクシング史上2人目となる6階級制覇を成し遂げたパッキャオ、無敗のまま5階級を制したメイウェザーの対戦は、最高レベルの“世紀の一戦”として注目されている。2大ボクサーが激突する一戦を前に、28日21時から無料放送する同番組では、上田、六角、村田選手が過去の名勝負を試合映像とともに振り返る。ボクシング好きの上田は、「改めて、この一戦の重みや期待感が増しました。この番組を見た上で試合を見れば、興奮の度合いが変わると思う」と熱いトークを繰り広げた収録を振り返り、「史上最もエキサイティングなボクサー・パッキャオと技巧に長けたボクサー・メイウェザー。史上最高同士の戦いが、今実現して良かった。一生の思い出になりそう」とワクワク。パッキャオは36歳、メイウェザーは38歳の戦いとなるが、村田選手は、「こんなビッグマッチは無いし、これ以上のカードはない。このタイミングで会えたのは運命だと思う」と胸を高鳴らせた。また、収録中、揃ってパッキャオを応援していた3人。しかし、「3ラウンド以降、メイウェザーが距離を読んでパンチを当てて判定勝ち」(村田選手)、「パッキャオの危険性を承知しているメイウェザーは踏み込んだ攻撃はしない。ポイントを取ったら、かわしたり休んだりして判定勝ちする」(六角)と予想した2人に、上田は、「夢の無い方々……」とガックリ。「パッキャオが5Rでものの見事にぶっ倒す」と期待を寄せる上田に対し、村田選手は、「パッキャオが勝てば、フィリピンに像が建って国民の休日になりそう。国民の期待を一身に背負う男の姿を楽しんで欲しい」と笑顔を見せていた。
2015年03月19日第15回東京フィルメックスが11月22日にメイン会場である東京・有楽町朝日ホールで開幕した。オープニングを飾ったのは、塚本晋也監督の最新作『野火』。大岡昇平氏の同名戦争文学を映画化した作品で、塚本監督は「観終わったら100%ゲンナリするのは間違いない」。それでも「暴力は映画の中だけで十分。実際に戦争が起こったら、これでは済まされない」と本作にこめた思いを熱弁した。東京フィルメックスその他の写真塚本監督が20年間温め続けた企画で、脚本、編集、撮影、製作、出演も兼ねた渾身作。第二次世界大戦末期のフィリピン戦線を舞台に、一人の日本兵の視点から戦争の恐怖を生々しく訴えかけ、今年のヴェネチア映画祭で絶賛された。2015年の日本公開を前に、フィルメックスで“凱旋上映”されることになり、塚本監督は「こうした映画が作りづらい状況で、まったく制作費がなかったが、自分とカメラ1台あればという思いだった。最終的には多くのご協力をいただき、完成させることができた」と感無量の面持ちだった。オープニングセレモニーには塚本監督をはじめ、映画に出演するリリー・フランキーと森優作、音楽を手がける石川忠が駆けつけ、「監督の長年の思いが詰まった作品」(リリー)、「今撮らないといけないという熱量が集まった作品。ぜひ目に焼きつけてください」(森)、「音響効果と音楽に打ちのめされてもらえれば」(石川)とアピールした。アジアを中心に芸術性の高い作品を多数上映し、映画ファンの熱い支持を受ける東京フィルメックス。同映画祭のディレクターを務める林加奈子氏は、「上映する25本の作品が出揃うまでは、いくつものサプライズとミラクルがあった。作り手の勇気と覚悟と愛をまっすぐ受け止めてもらえれば」と開幕を宣言した。第15回東京フィルメックス11月22日(土)から30日(日)まで有楽町朝日ホール、TOHOシネマズ日劇にて開催中取材・文・写真:内田 涼
2014年11月22日「サザンオールスターズ」の“原坊”こと原由子が来年公開のアニメーション映画『ももへの手紙』で自身5年ぶりの映画主題歌を担当することが明らかになった。原さんが作詞作曲を手掛けた主題歌には夫の桑田佳祐もコーラスで参加。瀬戸内の島を舞台に綴られる家族の愛の物語に夫婦で彩りを加える!監督デビュー作『人狼 JIN-ROH』がベルリン国際映画祭に出品された俊英・沖浦啓之の7年ぶりの新作となる本作。作画監督を『もののけ姫』、『千と千尋の神隠し』の安藤雅司が務めるほか『AKIRA』の井上俊之に『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』の本田雄、『サマーウォーズ』の青山浩行、さらに美術監督に『魔女の宅急便』の大野広司と、日本の長編アニメーションを支えてきた才能が集結。仲たがいしたまま死別した父への思いを抱える少女・ももが、母と移住した瀬戸内の島で成長していく姿を通して家族の愛が描き出される。原さんは本作のために主題歌「ウルワシマホロバ〜美しき場所〜」を書き下ろした。“マホロバ”とは「美しい場所、住みやすい場所」を意味する古語で、アコースティック中心のアレンジと原さんの透き通るような歌声が映画の舞台となる瀬戸内の美しい自然を思い起こさせる。原さんにとって映画の主題歌は『リトル・レッドレシピ泥棒は誰だ!?』の際の楽曲「大好き!ハッピーエンド」以来5年ぶり。その間にサザンの活動休止に夫・桑田佳祐の食道がんによる休養と復帰などもあり、自身は昨年6月にソロ楽曲やサザンの楽曲などあらゆる曲からセレクトしたベストアルバム「ハラッド」をリリース。翌7月には19年ぶりとなるワンマンライヴを鎌倉で行ったが、今回、1年ぶりに“原坊”が本格的に活動を開始する。原さんは「小さい頃からアニメが大好きですので、『ももへの手紙』に音楽で参加させて頂けたことはとっても嬉しく光栄です。この映画への熱い想いを語って下さった監督にも感動しましたし、監督のお気持ちに寄り添えるよう心がけたつもりです。お父さんを想うももちゃんの気持ちに、私自身の大切な人、そして美しい故郷への想いをプラスして、心を込めて歌いました。とても素敵な映画ですので、どうぞお楽しみに」とコメント。ギターの斎藤誠にベースの角田俊介、ドラムの鎌田清など長年活動を共にしてきた面々はもちろん、桑田佳祐もコーラスとして参戦!夫婦で優しい想いを歌い上げる。『ももへの手紙』は2012年GW、全国にて公開。■関連作品:ももへの手紙 2012年G.W、丸の内ルーブルほか全国にて公開© 2011『ももへの手紙』製作委員会
2011年07月11日クエンティン・タランティーノからブラッド・ピットに至るまで影響を与えたと言われる塚本晋也監督の代表作『鉄男』を、塚本監督自身が全く新しい形で蘇らせた『鉄男 THE BULLET MAN』。先日より公開されている本作だが、異例の“爆音上映”が大きな話題を呼んでいる。ロバート・ダウニー・Jr.主演の『アイアンマン2』が前作を上回る勢いでヒットを記録しているが、巷を“文字通り”騒がせているアイアンマン(=鉄男)がもうひとり。「音圧を体験する」というコンセプトの下、『鉄男 THE BULLET MAN』において、塚本監督は公開劇場に可能な限り足を運び、通常の映画作品の上映とは次元の異なる、マックスの音量レベルでの上映を展開。実際に、本作の“爆音上映”を体験した観客からは「劇場が揺れている!」、「音を浴びるライヴのようだ」といった声が寄せられている。本作の公開を記念して、現在、東京・吉祥寺の吉祥寺バウスシアターでは、旧作『鉄男』および『鉄男II/BODY HAMMER』の“爆音上映”も実施!こちらも、通常の映画上映用の音響設備とは異なる音楽ライヴ用の音響設備をフルに使い、限界まで音量レベルを上げ大音響で上映しており、ファンの熱狂的な支持を集めている。6月12日(土)の上映初日には、劇場のキャパシティ200人強のところ、およそ300人がつめかけ、会場が酸欠状態になる程の大盛況だった。わざわざ劇場に駆けつけた塚本監督も“立ち見”で作品を鑑賞したとか…。ちなみに、吉祥寺での旧作の爆音上映は18日(金)まで(※上映作品は『鉄男II/BODY HAMMER』のみ)。また『鉄男 THE BULLET MAN』に関しては、メイン館のシネマライズ(東京・渋谷)での上映は20日(日)までだが、好評を受けて26日(土)からシアターN渋谷にて続投ロングランが決定!さらに、7月以降、全国各地での公開も続々と決まっている。爆音と共にハリウッドとはひと味違う“アイアンマン=鉄男”を体験してみては?『鉄男 THE BULLET MAN』はシネマライズほか全国にて公開中。■関連作品:鉄男 THE BULLET MAN 2010年5月22日より渋谷シネマライズほか全国にて公開© TETSUO THE BULLET MAN GROUP 2009■関連記事:『鉄男 THE BULLET MAN』インタビューキャスト陣が語る塚本晋也、東京…塚本監督・鉄男から誕生した世界初映像システム初披露爆音に熱狂!鈴木京香、浅野忠信ほか各界から『鉄男』に絶賛コメント続々『鉄男』最新作にニューヨーカー熱狂!予想外の大音響に騒然『鉄男』最新作N.Y.上陸!エンディング曲にナイン・インチ・ネイルズ
2010年06月18日日本映画を新たな次元へと押し上げたと評される『鉄男』から20年。日本が世界に誇る鬼才・塚本晋也が自身の代表作を全く新たな形で映像化したのが『鉄男 THE BULLET MAN』である。男の肉体が鋼鉄に変貌していくという物語の“核”はそのまま。だが、この風変わりな設定を生かす上で欠かせないのが、俳優陣のドラマの部分。わが子を失い精神のバランスに異常をきたしていくゆり子と夫のアンソニーを演じたのは桃生亜希子とエリック・ボシックの2人。映画の公開を前に2人に話を聞いた。写真家、モデルとしても活躍するエリックは以前から塚本作品の大ファン。オーディションを経て本作への主演が決まったそうだが、そのときの経緯にふり返ってもらうとかなり興奮した口調でこう明かしてくれた。エリック:僕は、最初は『鉄男』を作るって知らなかったんです。単に塚本監督のオーディションとだけ聞いていて、それだけで「やったー!」って(笑)。台本もらったら、なんかサイボーグの話があって…でもまだ『鉄男』だって思わなかった。2回ほどオーディション受けて、それを知らされたときは衝撃でした!(役が)決まったときは信じられなかったです。「すごい!みんな知ってるシネマアイコンになるんだ」って。一方の桃生さんは、オーディションを前に初めて旧作の『鉄男』を観たという。桃生: 監督の存在はもちろん知っていましたし、その世界観に憧れも持っていましたが、自分の中で勝手に「(自分とは)ちょっと違うものだ」という感覚を持っていて…。私、ホラーやスリラーは苦手で、血とかも嫌いなんですよ。でも『鉄男』を観たらもう別格にかっこよかった。ただ、演じるとなると、それはすごいチャレンジだなと思いました。実際に監督にお会いする前は、「変態で頭の中ぶっ飛んでるんだろうな」と思ってたんですが、監督の方から「みんな、オタクとか変態とか思ってるんですが結構普通なんですよ」と先に言われました(笑)。実際に(塚本監督の)海獣シアターの工場のような場所で、いくつかセリフを言ってみたらすごくいい感覚だったんです。やってみたいという気持ちがすごく強くなりました」。では、撮影現場での塚本監督の印象は?桃生:すごく謙虚で腰が低い方なんです。状況の中でベストを探していく感じで。あ…でも、優しいんですが、目の奥に“狂気”はありますね。一度、私の撮影じゃないときにカメラをのぞいてるときの目を見たんですけど、すごいんですよ!初めて見る、色気のある目でした(笑)。初共演で2人は夫婦役を演じたわけだが、互いの印象は?また、撮影が進んでいく中での関係性の変化はあったのだろうか?エリック:脚本を読んで、ゆり子ってうつ病の暗い子を想像していたので、監督もきっとそういう重さのある女優さんを選ぶと思ってた。だから「こんなに元気なのか!」って(笑)。桃生:今回、撮影期間がびっくりするぐらい長かったんです。最初に知り合った分、お互いすごく仲良くなっちゃったというところがあって、進むうちにケンカしそうになったこともありましたよ。2人とも言いたいことを言い出して「ムカつくなぁ」って感じで(笑)。でも、そこまでできるのって逆にあんまりないですよね。だからすごく良かったと思います。エリックは、ちょっと気難しいところもあるけど(笑)、変なヤツです!ユーモアもあって、独特ですごくハマってました」。塚本作品のひとつの特徴と言えるのが“東京”の描き方。本作でも外国人の夫と日本人の妻という夫婦、そして全ての謎を包み込む街として、東京という都市そのものが独特の存在感を放っている。2人にとって東京はどんな街?エリック:それ、すごく考えたんですよ。僕はいろんな国、街を見てきたけど東京が一番好き。でも、塚本監督の作品を観ると、東京はすごい嫌なところなんですよね(苦笑)。みんなケンカしてて、男は悪いし、女の子はもっと悪い(笑)。厳しい、冷たい!塚本監督が言ってたのは「自分は生まれも育ちも東京で、ほかのところは知らないし、見るものもすることもない。だから東京の話になった」と。もしかしたら、彼にとってはどの街かは関係ないのかもしれない。自分が暮らす、狭く、暗いものを映画にしているのかな。でも、彼がN.Y.に生まれてそれを撮ったらそれはN.Y.の暗さになるわけで、ということはやっぱり東京であるということは関係ないようで、関係ある…(としばらく思案)。あと最近、街と自然についていろいろ言う人いるけど、すごく緑いっぱいあると思いますよ。塚本さんは、よく橋で撮影するけど、それはなぜかというと木や緑を写りこませないでビル群を撮りたいから。逆に言うとそれだけ木や緑があるってことなんです。桃生:すごくエネルギーの強い街だと思うので、自分のエネルギーが強くないと肯定できない部分があったりしますよね。一度外国に出て、戻ってくると感じるのは、ものすごく早い時の流れ。だから、何かしてないと不安になってしまうようなエネルギーの見えない渦みたいなものとかが絶対あると思います。ゆっくりとしようと思いつつ、気づいたら流されそうになって、ということは常にありますね。ただ、いまはその流れの中でやっていきたいとも思っていて、その中での面白さも見えてきているし、自分のスタイルを持っていれば楽しく生きられる、そういうチャンスのある面白い場所、可能性のある街だと思います。■関連作品:鉄男 THE BULLET MAN 2010年5月22日より渋谷シネマライズほか全国にて公開© TETSUO THE BULLET MAN GROUP 2009■関連記事:塚本監督・鉄男から誕生した世界初映像システム初披露爆音に熱狂!鈴木京香、浅野忠信ほか各界から『鉄男』に絶賛コメント続々『鉄男』最新作にニューヨーカー熱狂!予想外の大音響に騒然『鉄男』最新作N.Y.上陸!エンディング曲にナイン・インチ・ネイルズ塚本晋也の新たな『鉄男』が北米上陸!真田広之と共にアメリカでの栄誉の喜び語る
2010年05月21日塚本晋也監督の最新作『鉄男 THE BULLET MAN』がついに北米に上陸!第1回グリーンプラネット・フィルム・アワードにて、アメリカ映画以外で2010年に最も期待される映画に贈られる「MOST ANTICIPATED INTERNATIONAL FILM of 2010:ACTION FILM」を授与され、4月にニューヨークで開催される第9回トライベッカ映画祭への出品決定も発表された。グリーンプラネット・フィルム・アワードは2009年度に各国の映画祭および映画賞で脚光を浴び、既に世界的な話題を巻き起こした2010年公開作へ贈られる賞で、スティーヴン・スピルバーグ、ジョージ・ルーカス、マーティン・スコセッシ、オリバー・ストーンを含む7人の選出委員会が協議の上で選出、ちなみに「MOST ANTICIPATED FILM of 2010」(アメリカ映画で最も期待される作品)は『シャッター アイランド』が受賞した。授賞式に参加した塚本監督は「この映画は、流行の3DもCGもほとんど使っておらず、昔ながらのアナログの方法で撮影しました。CGでは出せない本物の迫力が出せたと思っており、本物の鉄の男が大暴れします。『アバター』とは対極のアナログ映画ですが、体が受けるインパクトは 同じだと観た人には言われます。上映時間は『アバター』の3分の1ですが、観た後の疲労度は『アバター』の3倍は間違いなくあります。どうかみなさん、期待して、体感してください」と挨拶した。『鉄男 THE BULLET MAN』は、20年前に世界に衝撃を与えた塚本監督の代表作『鉄男』を、リメイクとも続編とも違った形で、新たに描いた作品。昨年のヴェネチア国際映画祭でコンペティション部門に出品されるなど、すでに各国の映画祭で大きな話題を呼んでいる。また、この日の授賞式典のもう一つの趣旨となっていたのが「黒澤明生誕100年トリビュート」。塚本監督は「ポスト・アキラ・クロサワ」と紹介され、多くのアメリカの報道陣が訪れる中、黒澤作品への熱い思いを語った。さらに会見では、『鉄男 THE BULLET MAN』が第9回トライベッカ映画祭に出品されることも発表されたが、ロバート・デ・ニーロが創設した映画祭とあって、塚本監督は「デ・ニーロさんが観て、何を感じるかを確認したい」と期待を口にした。また、アジア人俳優に贈られる「MOST OUTSTANDING ASIANS in HOLLYWOOD(ハリウッドで最も活躍しているアジア俳優)」を真田広之が受賞。チョウ・ユンファ、ジェット・リー、チャン・ツィイー、コン・リー、渡辺謙といった錚々たる顔ぶれを抑え見事、栄誉を手にした真田さんは「自分の功績が、後に続く若い人たちのためになればと思いやってきました。この賞をもらって今後10年頑張れます」と誇らしげに語った。『鉄男 THE BULLET MAN』は5月22日(土)より全国にて公開。なお公開に先駆けて、「塚本大図鑑−SHINYA TSUKAMOTO FILM FESTIVAL 2010」と題して、5月8日(土)から5月21日(金)の2週間にわたり、シアターN渋谷にて塚本監督の過去の全作品の特集上映も開催される。「塚本大図鑑−SHINYA TSUKAMOTO FILM FESTIVAL 2010」■関連作品:鉄男 THE BULLET MAN 2010年5月22日より全国にて公開© TETSUO GROUP 2009■関連記事:マット・デイモン、主演するソダーバーグ監督の新作を携えてヴェネチア映画祭に登場!塚本晋也、深夜のヴェネチアを興奮の渦に「レッドカーペット歩けるのはすごいこと」塚本晋也最新作、ヴェネチア国際映画祭出品決定初コンペ出品の快挙!世界のツカモト、全篇英語で挑んだ21世紀版『鉄男』で“全世界同時”会見
2010年03月29日世界に“ツカモト”の名を知らしめるきっかけとなった代表作『鉄男』から20年のときを経て、鬼才・塚本晋也がその21世紀版として完成させた最新作『TETSUO THE BULLET MAN』。本作が、2日より開催中の第66回ヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門へ日本唯一の正式出品となり、5日(現地時間)、その記者会見と公式上映が行われた。同映画祭とは、1998年に『BULLET BALLETバレット・バレエ』が招待作品として上映されて以来、4度にわたる正式出品ですっかり縁深い監督の一人となった塚本監督。昼に行われた記者会見の会場には世界中から数多くの報道陣が集まり、多くの質問が飛び交った。監督は、作品について「いつかはやりたいと思い続け、今回昔ながらのやり方で自分の仲間たちと好きなように作る方法でやることにしました。結果的にシンプルで力強く、前2作(『鉄男』『鉄男II/BODY HAMMER』)のままの気持ちに、いまの新たな感情をプラスしたものができたと思います」と説明。前2作からの時間の経過をふり返り「今日の東京は戦争体験者も少なくなり、より多くの人が生と死の切実な実感が持てずにいる。それだけに暴力ももっと加速し、より恐ろしい電脳都市になってきた」と語りつつ、「サイバーパンクという言葉は、かつて『ブレードランナー』や『AKIRA』が出てきた頃に比べると、言葉自体は輝きを失っているかもしれないが、そのテーマはいまも色褪せていない」と変わらぬ作品づくりへの思いを世界に向けて発信した。また、同日深夜24:00より行われたレッドカーペットと公式上映には、塚本監督と主演のエリック・ボジックに加え、桃生亜希子とステファン・サラザン、中村優子も合流。深夜にも関わらず、報道陣と塚本ファンを中心とした観客で会場は一杯になり、上映後にはスタンディング・オべーションが5分も続く熱狂ぶりを見せた。観客のこの反応に、「これまで『鉄男』を海外で上映したときの反応とかなり違う。たくさんの拍手を聞けて良かった」と感動しきりの監督。「いまでもなぜコンペティションに入ったのか良くわからない(笑)。レッドカーペットをみんなで足並み揃えて結婚式のように歩くことは、やはりすごいことなんだと思った」と興奮ぎみに喜びを語った。また、黒のミニドレスで登場した桃生さんは、「(レッドカーペットを)長く感じました。レッドカーペットの終わりでは、みんなでこの瞬間を噛みしめなきゃね、と話しました」と感激のコメント。対照的に白の着物で現れた中村さんも、「現場で頑張った仲間たちの顔を見ながら歩くことが出来て幸せ」としとやかさの中に笑みを浮かべた。去る7月に行われたコミコンでも早くも世界の注目を集めていた本作だが、ヴェネチアでの反応やいかに?『TETSUO THE BULLET MAN』は2010年、全国にて公開。© Kazuko Wakayama■関連作品:TETSUO THE BULLET MAN 2010年、全国にて公開■関連記事:塚本晋也最新作、ヴェネチア国際映画祭出品決定初コンペ出品の快挙!世界のツカモト、全篇英語で挑んだ21世紀版『鉄男』で“全世界同時”会見
2009年09月07日