手に届きそうで届かない…眩しすぎる少年(c)Unsplash少女マンガは、めちゃくちゃおおざっぱに分類すると、「胸キュン恋愛系」と「そうじゃない系」に分かれます(ホントにおおざっぱだった!)。そうじゃない系には、ドロドロ、ノンフィクション、ミステリ、問題提起などがありますね。胸キュン恋愛系は、もう最初っから“くっつく”ことがわかってる男女がヤキモキしながら、女子が2ページに1回キュンキュンしたり、単行本1冊ほとんど泣いてたりする、そんな感じ。10ページ使って、ぽつりぽつりとポエムを詠んだりすることも。人気タレントを起用して映画になるのもこのタイプが多いです。少女漫画が好きな人でも、この「胸キュン恋愛系」と「そうじゃない系」とに分かれるように思います。しかも、胸キュン系が好きだった純粋な女子も、そのうち「あ、こりゃファンタジーなんだな」とか気付いたりして、そうじゃない系好きに移行したりします。ところがこの『溺れるナイフ』は「胸キュン恋愛系」でもありながら「そうじゃない系」の要素もたくさんあるんです。人間のどろっとした暗く汚い部分もありながら、でもドロドロ系というほど徹底してもいなくて、全体としてはポップです。適度に笑いもあって、暗くもキュンキュンにもなりすぎない。退廃的で、少女マンガにしては暴力シーンが多い。読んでいると、心がザクザクと切り刻まれるような思いがします。そしてラスト。たった一言のセリフで幕を閉じるのですが、それだけでいろんな想像をかき立てられます。たった一言で、人間の20年、30年が表現できるなんて。『溺れるナイフ』というタイトルもいいですよね。ナイフとは、夏芽のことなのか、コウちゃんのことなのか。確かに、ナイフは水につけたら溺れそうです。鋭利なナイフも、水の中なら怖くないかもしれない。コウちゃんに溺れて無力化してしまう夏芽のことなのか、世間という海に溺れているコウちゃんのことなのか。もしこのタイトルが「田舎で出会ったコウちゃんを好きになった」とか「大好きなコウちゃんはなかなか振り向かない」といったタイトルだったら、もっと中身はわかりやすかったはずです。タイトルからして「うぅむ」とうならせられます。『溺れるナイフ』はすごい作品なんです。ほんとうに。Text/和久井香菜子
2016年11月22日声優としてもアーティストとしても高い人気を誇る声優・花澤香菜が自ら作詞を務め、「ひまわりの約束」などで知られるアーティスト・秦基博が作曲を手掛けた花澤さんの11thシングル「ざらざら」。この度、本楽曲へ『君の名は。』がロングヒット中の新海誠監督よりメッセージが到着した。花澤さんは、「化物語」千石撫子役をはじめ、「デュラララ!!」園原杏里役、「青の祓魔師」杜山しえみ役、「PSYCHO-PASS サイコパス」常守朱役、「東京喰種トーキョーグール」神代利世役、「監獄学園」緑川花役、「orange」高宮菜穂役、「3月のライオン」川本ひなた役…と途切れることなく話題作にメインキャラクターで出演する、人気と実力を兼ね備えた人気女性声優のひとり。2015年には、自身初となる主演実写映画『君がいなくちゃだめなんだ』に出演し、その高い演技力を発揮。また、2012年「星空☆ディスティネーション」で歌手デビューして以来、アーテイスト活動も活発で、声優の単独公演としては8人目となる日本武道館ライブやツアーを敢行するなど、幅広く活躍する。そして、11月30日(水)よりリリースされる11thシングル「ざらざら」では、花澤さん自ら作詞を務め、作曲は秦さんが担当し、大きな注目を集めている。そんな本曲制作のきっかけとなったのが、劇場アニメ『言の葉の庭』だという。この作品では、花澤さんがヒロインのユキノ役を演じ、秦さんが作品のイメージソング&エンディングテーマを担当。花澤さんは「いつか秦さんに曲を書いてもらいたい」と思っていたそうで、念願が叶って今回のコラボレーションが実現した。『言の葉の庭』は、2016年邦洋合わせて年間No.1の動員と興収を記録し、いまだ勢いがとどまらないロングヒットをとばしている『君の名は。』の新海監督の作品。花澤さんは、『君の名は。』にも出演しているが、この度、花澤さんと秦さんの縁をつないだ新海監督よりコメントが届いた。「なんて幸せなコラボレーション!かすかにひりついた花澤香菜の言葉、それを優しく包む秦 基博のサウンド。1日を終えた後のご褒美のような」。また本楽曲のミュージックビデオ(ショートバージョン)は、「雨」というキーワードで『言の葉の庭』にもどこか通じる世界観を感じることができるような作品に仕上がっている。11thシングル「ざらざら」は11月30日(水)よりリリース。(text:cinemacafe.net)
2016年11月15日広瀬アリスが主演を務め、「Acid Black Cherry」のコンセプトアルバムを原作とする映画『L-エル-』。この度、花澤香菜や鈴木達央ら人気声優陣のナレーションによる、映画の世界観を補完するアニメーションムービーが、本日10月17日(月)より「GYAO!」にて独占配信されている。“色のない街”で生まれ、両親に愛情を注がれて幸せに育った少女エル(広瀬アリス)。ところが両親の突然の事故死により、エルの人生は一変していくこととなる。悲しみに打ちひしがれる幼きエルを得意の絵で元気づけたのは、幼なじみの絵描きの少年オヴェス(古川雄輝)だった。エルとオヴェスは互いを励ましあいながら生きてきたが、成人したエルは“ある選択”を迫られ、突然故郷から去っていき、2人は離れ離れになる。誰かを信じては裏切れられまた誰かを信じては傷つけられ、襲い掛かる運命に翻弄されながら波乱の人生を懸命に生きたエル。そして遠い故郷からエルを想い続けたオヴェス。2人の生涯を綴った壮大な物語が“真実の愛”とは何かを描き出す――。映画は、愛を探し求め続けたひとりの女性“エル”の孤独で壮絶な人生を綴った物語と、「Acid Black Cherry」の音楽が絡み合う壮大なコンセプトアルバム「L-エル-」を原作に、キャストにはエル役の広瀬さん、オヴェス役の古川雄輝のほか、高橋さん、平岡祐太、前川泰之、成田凌、弥尋、古畑星夏らが出演している。今回配信されるアニメーションムービーは、“【読み語り版】4th Album「L-エル-」Story Book”(全13話)と題した紙芝居風のアニメショーン。ナレーションには、「化物語」「デュラララ!!」「監獄学園」「orange」など数多くの作品でメインキャストを務める花澤さん、「図書館戦争」や「Free!」の鈴木さん、「けいおん!!」「妖狐×僕SS」やTV・CMのナレーションでも活躍する日笠陽子、「涼宮ハルヒの憂鬱」「響け! ユーフォニアム」や音楽活動も積極的に行う茅原実里ら人気声優陣が担当し、「L-エル-」の収録曲で構成された特別映像に仕上がっている。花澤さんは「幼少期から晩年まで、ひとりのキャラクターを演じられることは中々無いので、本当に特別な経験になりました。悲劇に見舞われながらも懸命に生きるエルと共に、私も精一杯頑張らせていただきました」とコメント。個人的に凄く好きなアルバムと話す鈴木さんは「表立って発言してきたことはないのですが、yasuさんの紡ぐ音楽や世界観は昔からとても好きなので、今回こうしてwebドラマに関わる事ができて感無量です」と喜び、「僕が演じたオヴェスは、自分の気持ちに気付き、そこから愛を学び、それを貫いた男です。彼は、自分が知った愛を、大事に、大事に、大切に、大切に抱えていった男です。そして彼は、絵描きです。そんな男です」と役について語った。映画では高橋メアリージュンが演じたアンナ役を演じる日笠さんは「男性と、そして命というものに翻弄され続けます。感情の上下も激しく、女性らしいというよりは女らしい、という感覚」と役について話し、茅原さんは「最初に本を読んだときに、あまりにも悲劇的で波乱万丈なエルの生涯に衝撃を受けて胸が苦しくなりました」これまでにないショックを受けたそう。しかし、「物語の登場人物の中では、リノは“光”。とても大切な役どころだと思いながら収録に臨みました」と語り、「聴いてくださったみなさまに、彼女の心の優しさが伝わることを願っています」とメッセージを寄せた。なお映像は、本日10月17日(月)より「GYAO!」にて開設される特設サイトで、毎週2話ずつ無料で配信。さらに、併せて「Acid Black Cherry」のライブ映像「Acid Black Cherry TOUR『2012』」と、「Acid Black Cherry 5th Anniversary LIVE Erect」を本日より無料配信開始。11月17日からは、「Acid Black Cherry“Project『Shangri-la』”LIVE」より10曲が配信される。「【読み語り版】4th Album「L-エル-」Story Book」(全13話)は10月17日(月)より毎週2話ずつ「GYAO!」にて配信。『L-エル-』は11月25日(金)より全国にて公開。(cinemacafe.net)
2016年10月17日声優・歌手として人気を博している花澤香菜が、29日(金)より放送開始される渡辺直美MCの音楽番組「NAOMIの部屋」に、6月1日(水)発売の新曲を引っさげて出演することが決定。また、本番組のスタジオに生出演することもわかった。花澤さんは、「デュラララ!!」「東京喰種トーキョーグール」「監獄学園 プリズンスクール」など話題作でメインキャラクターを務める人気声優。先月、深夜ドラマ「空腹アンソロジー」でナレーションを担当、さらにア二メ「orange」の出演も控えるなど今年も引っ張りだこだ。また、2012年から音楽活動を始めた花澤さん。これまでリリースされてきた9作のシングルと3作のアルバムは、全てチャート上位にランクインし、昨年は自身初の日本武道館ワンマンライブも成功させ、音楽活動でも高い評価を得ている。先日、花澤さんは11日(月)に行われた「シブヤノオト」と、「NAOMIの部屋」の公開収録に登場。その時点ではどちらの番組に出演するのかは未発表だった。今回花澤さんが登場する「NAOMIの部屋」は、毎回あるジャンルに特化したアーティストを紹介する生放送番組。記念すべき1回目の放送は、花澤さんほか、「i☆Ris」、蒼井翔太、入野自由、南條愛乃、早見沙織といった声優アーティストたちが出演する。また、6月1日(水)には、通算10枚目となる新曲「あたらしいうた」が発売され、本番組で披露するようだ。「あたらしいうたは」は10枚目のシングルにして初の自作詞。2月まで行われていた朗読とアコースティックセットのライヴサーキット「かなめぐり~歌って、読んで、旅をして~」で各地を巡って来て感じたことなど、これまでの経験と花澤さんの「今」の想いがつめこまれた歌詞となっている。表題曲はもちろん、カップリング2曲も花澤さんが作詞している。そして今回、「あたらしいうた」のアートワークおよび商品仕様詳細が解禁。初回生産限定盤には「あたらしいうた」のミュージックビデオが同梱される。今回が地上波音楽番組初出演となった花澤さん。そのパフォーマンス披露に期待が高まる中、今回のスタジオ生放送へのゲスト出演で、渡辺さんとのどんなトークを繰り広げるのか、ファンは見逃せない回となりそうだ。「NAOMIの部屋」は 4月29日(金)25時25分~NHK総合にて放送開始。(cinemacafe.net)
2016年04月29日迫害から逃れ、故郷に帰った火星人を待っていたのは……(c)Flóra「人は」なのか「日本人は」なのかわかりませんが、「滅びゆくもの」への強烈な思慕ってありますよね。破滅へ向かっていくことが読者にはわかっているけれど、それに立ち向かって命をかける者たち……新選組とか特攻隊とか。『スター・レッド』はまさにそれ。宙に浮いた階段————しかも途中で崩れているような————を下っていくような、ヒリヒリした緊張感があります。火星の未来を知ってしまったセイと謎の異星人エルグが、行動を共にしながら火星、ひいては宇宙の仕組みに迫り、自分たちの運命に逆らっていくのです。萩尾望都作品は全体的にアンニュイなムードなのも心奪われる理由ですね。70年代は、「超能力者を迫害する」という話がめちゃくちゃ多いです。というか、「超能力者は迫害するもの」と決まっていたかのような勢い。異端に対する畏怖の念からなのか、なにか排他的な意識を感じますね。性差別も大きかった時代ですから、男性を社会の中心と考えると、異端である女性の考えや主張は排除されるという鬱憤を、マンガで晴らしているとも考えられます。たいてい主人公は迫害される側なんで、少女マンガではひたすら「差別はいけないよ」「差別をされたら悲しいよ」と訴えてきたんですね。さすがだなあ。そして、70年代の少女マンガは、悲劇が多いんです。ラストがまた苦しくて切なくて、悲しい。エルグやセイ、そして火星人たちはこのあとどうなるの〜!? と、読むたびに本に向かって叫んでしまいます。で、ほんとどうなるんでしょうか、萩尾先生!Text/和久井香菜子
2016年04月27日あなたのすぐそばにあるかもしれないドラッグの罠(c)by bradleygeeドラッグへの第一歩は、本当に簡単なことから始まるのだと思います。私が今、そういうものと縁のない生活をしているのは、単に身近に触れる機会がなかったからです。強い意志があってその世界に入らなかったわけではありません。芸能人でなくても、飲みに行けば誘いの場所はあったのだし、若い頃はそれこそ他人に責任を負っているわけでもない。目の前に甘い誘惑があったら「試してみよう」と思ったかもしれません。ほんの軽い気持ちでたばこを吸い始めたように。そうして加奈子はドラッグを入手し、なんでもないことで人志とはうまくいかなくなり、そして売人をするまでになってしまうのです。「まとまったお金があれば人志とふたりで南の島に行ける。そしたらもう一度前みたいにうまくやれるって……。私、バカだよね……」誰だって幸せになりたい。できれば誰かと。恋人同士のふわふわとした甘い時間は、非現実的で夢をみるようでしょう。でも生きていくのに、どんなに甘い関係の二人でも、現実から目を背けてはいられないのです。生活していくお金、未来を考える力、愛情とエゴのバランス。加奈子と人志には、これらの現実に目を向ける力がなかった。だから壊れてしまったのだし、加奈子は安易なほうへ流れてしまった。ドラッグを目の前に出されて「やってみる?」と言われたとき、きっぱりと断れるほど意志の強い人はどれだけいるでしょう。安易で声の大きなものは、簡単に心の小さな傷口に入り込んでくるのだと思います。人間はそんなに強いものじゃない。だけどそれを拒まなければ、一生戻ってこられない。人はどれだけ試されているのかと思います。でも、これほど相手に溺れて、前後不覚になるような恋、してみたいですね。Text/和久井香菜子
2016年04月11日どんな環境や境遇も、本人にとって恵まれているかどうかはわからない(c)yanivbaヒースが頼ったのは、「なにかをしなければ認めてくれない」親でも、「学校の名誉のために優秀でいて欲しい」先生でもありませんでした。ヒースのすべてを受け入れてくれる近所の医師や、とあることがきっかけで知り合った中年男性のインディアン(あだ名)でした。この作品は、若い人たちの持つコンプレックス、葛藤、必死に生きるさまを描いていて、読むと胸が詰まります。人は誰でも(誰でも!です)、自立したいと思い、自分を理解してくれようとする人を求めるのだと思います。私、この作品にけっこう影響されたかなと思います。20代で結婚して、すぐに離婚を決めたあと、カラオケBOXで深夜のバイト、昼は派遣で事務、夕方はHP作成と、あれこれ仕事を掛け持ちしてました。これがヒースになった気分でものすごく楽しかったです。実家で疎外感を感じていた私には、ヒースの孤独にもたいへん共感を持ちました。インディアンは、ヒースの父親に「あなたは私よりもヒースのことを理解しているようだ」と言われて、こう返します。「理解しているわけじゃないですよ。理解しようとしているだけです」父親は、高校でトラブルがあり、長く休んでいたヒースに転校するように勧めます。「いい学校を選んでおいた」と。ヒースは、「もうたくさんだ!」と資料を破り、出て行ってしまいます。「よかれ」と思ってやることが、ヒースにはことごとく裏目に出てしまうと、父親は悩みます。何を悩むことがあるのでしょう。そんなの、簡単なことじゃないですか。「元の学校に戻るのは辛くはないか? お前はどうしたい?」って聞けばいいんですよ。でも、そんな簡単なことがわからないから、うまくいかない人がたくさんいるんですね。Text/和久井香菜子
2016年03月31日『ニセコイ』シリーズの小野寺小咲役や『咲-Saki-』シリーズの松実玄役などを務める花澤香菜と、『結城友奈は勇者である』の犬吠埼風役、『魔法科高校の劣等生』の千葉エリカ役などで知られる内山夕実がパーソナリティーを務めるラジオ番組「花澤香菜・内山夕実のクロ香菜さんとシロ夕実さん(仮)」が、日本最大級のアニメ&ゲーム系専門チャンネル「超! A&G+」にて、2016年4月9日よりスタートする。放送は毎週土曜の17時~17時30分。本番組は、花澤と内山がガールズトークを繰り広げるだけでなく、ミニゲームや対決企画などにも挑戦していくというトークバラエティー。2012年7月に放送されたTVアニメ『貧乏神が!』以来、多くの作品で共演し、プライベートでも2人で旅行に出かけるなど、親交の深いふたりだからこそできるリラックスした等身大のトークを楽しめる番組になるとのこと。なお、本放送以外にも番組のアーカイブを配信する予定という。
2016年03月29日当代随一の人気声優として活動しながら、アーティスト活動も盛んな女性声優・花澤香菜が、自身初の地上波テレビ音楽番組に出演することが決定。4月11日(月)NHKホールにて開催される「シブヤノオト」&「NAOMIの部屋」公開収録に登場するという。花澤さんは、「PSYCHO-PASS」主人公・常守朱をはじめ、「デュラララ!!」「東京喰種トーキョーグール」「監獄学園」「寄生獣 セイの格率」など話題作でメインキャラクターを多数演じる超人気声優。その活動はアニメ作品にとどまらず、映画『君がいなくちゃだめなんだ』では実写で主演を務め上げ、松井愛莉が初主演を務めた深夜ドラマ「空腹アンソロジー」ではナレーションを担当。夏からは、土屋太鳳&山崎賢人の共演で話題を呼んだ人気作のアニメ版「orange」で主人公を務める。音楽活動は2012年の「星空☆ディスティネーション」でデビュー。以来、9作のシングルと3作のアルバムはすべてチャート上位にランクインし、昨年は自身初の日本武道館ワンマンライヴを成功させた。人気と実力を兼ね備えた声優アーティストの花澤さんが、この度、地上波のテレビ音楽番組に“初”出演することが決定。これまで、情報番組への生出演はあったが、音楽番組は初めてであり、そのパフォーマンス披露に注目が集まる。花澤さんは、4月11日(月)にNHKホールにて行われる、若い世代に向けたNHK総合の新音楽番組「シブヤノオト」と「NAOMIの部屋」の公開収録に出演予定。「シブヤノオト」では、ヒットチャートを賑わす最新ナンバーを中心に、人気アーティストたちがライブパフォーマンスを繰り広げ、最先端の音楽シーンを発信する。「NAOMIの部屋」では、テーマを設けて、そのジャンルに特化したアーティストたちの楽曲が紹介されるという。花澤さんの記念すべき出演番組がどちらになるのかは、後日追って発表される。また、ファン待望の新曲10thシングル「あたらしいうた」のリリースが6月1日(水)に決定。ソロデビュー以来、花澤さんの音楽活動をサポートしてきた北川勝利(ROUND TABLE)が作曲、そして作詞は花澤さん自身が担当。花澤さん本人作詞の楽曲がシングル表題曲となるのは、これまた本楽曲が“初”。これまでに、3月24日放送のラジオ番組「花澤香菜のひとりでできるかな?」にて初オンエア、さらに3月25日~27日に開かれた「Anime Japan 2016」では試聴が実施され、ネット上では早くも「作詞すごくよかったでっせ!」「花澤さんの声も23歳感というか素っぽい女の子っぽい感じが出ていてぼくの好きな感じだった。とてもいいと思う!」「早くフルで聴きたい!」と、彼女の“あたらしい”魅力を絶賛する声が上がっている。「シブヤノオト」は4月24日(日)17時5分~、「NAOMIの部屋」は4月30日(土)25時25分~放送予定。(text:cinemacafe.net)
2016年03月28日モデルで女優の松井愛莉が初主演を務める深夜ドラマ「空腹アンソロジー」。このたび本作のナレーションに人気声優・花澤香菜が担当することが明らかになった。主人公・ミサキ(松井愛莉)は23歳。結婚が決まり式の段取りを着々と進めるが、父・タカシ(六角精児)と事あるごとに対立してしまう。そんなミサキの“結婚前夜”、タカシはミサキに手料理を作り出す。その料理「そばめし」に、ミサキは父との日々を思い出し、家族への想いを感じ取る。アイデアレシピに込められた、口にできない想いの数々。父の不器用な料理が、娘と父とのすれ違う心を溶かしてゆく…。本作は、空腹の深夜に見ているだけで食欲を刺激し、今すぐ作りたくなる簡単料理のレシピに隠された、心温まる人間模様がテーマ。主人公・ミサキ役には、結婚情報誌のCMなどに出演するモデルの松井さん。「GTO」「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」などに出演し女優としても注目を集めている。そして共演する父・タカシ役には「相棒」シリーズの米沢守役や『ヒロイン失格』では本人役で出演するなど、様々な作品に出演し印象を残していく六角さんが出演している。今回はいつも衝突ばかりしている娘の結婚前夜に父がふるまう“おやじメシ”を巡る物語、「空腹の結婚前夜」。本作のナレーションを担当するのは、幼少期は子役として活動し、現在は声優として「To LOVEる -とらぶる-」「デュラララ!!」「監獄学園 プリズンスクール」などに出演する花澤さん。父のアイデア手料理を通して、言葉にできない親子の想いがゆっくりと交わっていく様を、花澤さんのナレーションがドラマを感動へと導いていく。人気声優と注目の女優、このコラボレーションがどんなドラマを生み出すのか楽しみにしていて。「空腹アンソロジー」は3月13日(日)25時35分~テレビ東京にて放送。(cinemacafe.net)
2016年03月13日フツーの王道恋愛マンガに見せかけて、男子がド変態!?(c)『メフィストフェレスは誰?』(吉原由起/小学館 フラワーコミックスα)既刊2巻キャッキャ楽しければいいというのが娯楽。漫画はまあ娯楽ですよね。でも、なにか知的な情報があったりとか、うなるようなトリックがあったりとか、心理描写が繊細だったりとか、「単なる娯楽じゃない」と思えるものが評価を得るのだと思います。『メフィストフェレスは誰?』は、婚約者に裏切られた女の子と、牧師さんの物語です。特にキリスト教に詳しくなれるわけでもなく、深い心理描写があるわけでもなく、言ってみればフツーの恋愛マンガです。「もしかして牧師さんは人を呪い殺せる力があるとかのファンタジーなのかしら?」と一瞬考えてみましたが、そんなこともなく、超能力も悪魔も魔神も出てきませんでした。そうだったそうだった、作者の吉原由起さんが描くお話は、たいていフツーの、身近な世界が舞台の、小難しい話はいっさいナシの、恋愛マンガなんだった。でも私、彼女の作品が大、大、大好きなんです。吉原さんは元美大生とのことで、絵はすっきりしていて上手で、男子はイケメンです。でもどの作品も、そのイケメンが“ド変態”なんです。クールで冷静なんだけど、シレッとした顔で主人公を困らせます。イケメン牧師の言動は、腹立つんだか、かっこいいんだか! 『メフィストフェレスは誰?』では、主人公の奈々子が浮気した婚約者に激情して、割れたワインのビンを投げつけようとするシーンがあります。そこにものすごくタイミングよく駆けつけた牧師さんが止めに入り、ケガをしてしまいます。ちょっといい人なのか牧師さん?と思っていると、その後、ことあるごとに「あいたた誰かさんに割れたワインのビンでぶっ叩かれた傷があいたたたた」とかシレッと言って、奈々子を思い通りに操るのです。奈々子が牧師さんに告白するシーンも見どころです。その返事は「知っています」なんです。知っていますって?で、あんたの気持ちは?腹立つんだか、かっこいいんだか!その後で、奈々子に「自分の彼女のフリをしてくれ」と頼むときも、「いいですよね、あなたは僕のことが好きなんでしょう?」ですよ。腹立つんだか、かっこいいんだか!良識的で善良で、ときに強気な主人公を、変態イケメン牧師が振り回す。ホント、ただそれだけのお話なんですけど、めちゃくちゃ面白いんです。もう大人になって長いと、少女漫画に出てくるような都合のいいイケメンなんていないってわかってますよね。なので、ひたすら女に都合のいいキャラにはあまり共感できなくなっていきます。でも、吉原由紀さんの描くイケメンは、よくあるドSでもなく、クールでもオレ様でもない。他に類を見ない個性派です。絵も笑いも、すごくセンスがある感じ。ところでこの牧師さん、少女漫画によくあるトラウマ持ちなんですが、これ実は誤解なんじゃないかなーとか予想してますが、みなさんいかがでしょう?Text/和久井香菜子
2016年03月04日「津山30人殺し」の犯人が陥った“負のサイクル”(c)天人唐草山岸凉子スペシャルセレクション5先日、号泣会見で話題となった野々村元議員の裁判が行われ、これまた話題になりました。「お待ちください」「覚えていません」を繰り返し、ワイドショーを喜ばせていましたね。ああだこうだと取りざたされていますが、これ、ひと言で言えば「自分への甘さ」で済む話だと思います。カラ出張を膨大な回数繰り返したのも、「バレたときにどうなるか」が想像できなかったからでしょう。また、これまでの人生、なにか自分に不都合なことが起きたとき、「知らない」「わからない」と逃げることでなんとかなってきてしまったのだろうと想像します。人は大人になる過程で、自分の甘さから逃げてはいけないことを学ばなければなりません。その機会は誰にでも、何度も与えられるはずです。『負の暗示』は、『八つ墓村』のモチーフにもなった事件「津山30人殺し」を描いた作品です。主人公の睦雄がどのようにして、一晩で30人もの村人を殺すに至ったかを検証していきます。祖母に甘やかされて育ったものの、家が貧しく進学できなかったこと。結核を患い、徴兵免除になったこと。それ故、関係を持った女たちからの、手のひらを返したような冷遇。人生が上手く行かないことに、どんどんと彼の不満は募っていきます。確かに、身体が弱かったこと、家が貧しかったことなど、恵まれた環境ではなかったのかもしれません。けれど、だからといって人を殺していい理由にはならないはずです。先送りした逃避は倍になって戻ってくる(c)by Stephen Brace人間誰でも、自分には甘いものです。自分のした行動には、いくらでも言い訳ができます。だからこそ「自分が未熟であること」を認めることが、大人になる最初の儀式です。自分を客観視するのは辛い作業です。でも、それを乗り越えないことには、人生をよりよく切り開いていくことはできないのです。そして、他人を蔑むことや恨むことは、尊重するよりも簡単です。私たちはいつでも、何度でも、自分の行動を客観視し、自ら戒めていく必要があるのです。その辛い作業から目を背けているうちに、どんどんと大きな問題になっていきます。そうして逃げられないところまで追い詰められてしまう人を見る度に、この作品のことばを思い出します。「先送りした逃避はいづれ目の前に戻ってくるさらに倍になって」「そのまま解決せずまた先送りするとさらにさらに倍になって戻ってくる」「そのひとつひとつが小さな逃避であろうとも負は大きな口を開けていつでも我々を待っている」号泣会見の前に、裁判になる前に、解決できるチャンスはたくさんあったのではないかと想像します。小さな逃避の繰り返しが、とうとう逃げられないところまで野々村元議員を追い込んでしまったのではないでしょうか。『負の暗示』は、私が今までに読んだ少女マンガの中で、もっとも恐ろしく、そしてことあるごとに戒めとして思い出される作品です。※『負の暗示』は、『天人唐草山岸凉子スペシャルセレクション5』に収録Text/和久井香菜子
2016年02月24日「津山30人殺し」の犯人が陥った“負のサイクル”『天人唐草山岸凉子スペシャルセレクション5』(山岸凉子/潮出版社)先日、号泣会見で話題となった野々村元議員の裁判が行われ、これまた話題になりました。「お待ちください」「覚えていません」を繰り返し、ワイドショーを喜ばせていましたね。ああだこうだと取りざたされていますが、これ、ひと言で言えば「自分への甘さ」で済む話だと思います。カラ出張を膨大な回数繰り返したのも、「バレたときにどうなるか」が想像できなかったからでしょう。また、これまでの人生、なにか自分に不都合なことが起きたとき、「知らない」「わからない」と逃げることでなんとかなってきてしまったのだろうと想像します。人は大人になる過程で、自分の甘さから逃げてはいけないことを学ばなければなりません。その機会は誰にでも、何度も与えられるはずです。『負の暗示』は、『八つ墓村』のモチーフにもなった事件「津山30人殺し」を描いた作品です。主人公の睦雄がどのようにして、一晩で30人もの村人を殺すに至ったかを検証していきます。祖母に甘やかされて育ったものの、家が貧しく進学できなかったこと。結核を患い、徴兵免除になったこと。それ故、関係を持った女たちからの、手のひらを返したような冷遇。人生が上手く行かないことに、どんどんと彼の不満は募っていきます。確かに、身体が弱かったこと、家が貧しかったことなど、恵まれた環境ではなかったのかもしれません。けれど、だからといって人を殺していい理由にはならないはずです。先送りした逃避は倍になって戻ってくる人間誰でも、自分には甘いものです。自分のした行動には、いくらでも言い訳ができます。だからこそ「自分が未熟であること」を認めることが、大人になる最初の儀式です。自分を客観視するのは辛い作業です。でも、それを乗り越えないことには、人生をよりよく切り開いていくことはできないのです。そして、他人を蔑むことや恨むことは、尊重するよりも簡単です。私たちはいつでも、何度でも、自分の行動を客観視し、自ら戒めていく必要があるのです。その辛い作業から目を背けているうちに、どんどんと大きな問題になっていきます。そうして逃げられないところまで追い詰められてしまう人を見る度に、この作品のことばを思い出します。「先送りした逃避はいづれ目の前に戻ってくるさらに倍になって」「そのまま解決せずまた先送りするとさらにさらに倍になって戻ってくる」「そのひとつひとつが小さな逃避であろうとも負は大きな口を開けていつでも我々を待っている」号泣会見の前に、裁判になる前に、解決できるチャンスはたくさんあったのではないかと想像します。小さな逃避の繰り返しが、とうとう逃げられないところまで野々村元議員を追い込んでしまったのではないでしょうか。『負の暗示』は、私が今までに読んだ少女マンガの中で、もっとも恐ろしく、そしてことあるごとに戒めとして思い出される作品です。※『負の暗示』は、『天人唐草山岸凉子スペシャルセレクション5』に収録Text/和久井香菜子
2016年02月22日声優・花澤香菜の音楽活動4thシーズンの幕開けを飾る9thシングル「透明な女の子」。2016年2月24日にリリースされる本作は、空気公団・山崎ゆかり氏が楽曲、MV、アートワークまでトータルプロデュースを手掛けることでも話題を呼んでいる。空気公団といえば、かつて2009年にアニメ『青い花』の主題歌を担当。その繋がりから、『青い花』の原作者・志村貴子氏が、今回特別にショートコミックを描き下ろした。空気公団・山崎ゆかり氏がトータルプロデュースで提示している世界観とはまた違った、新たな魅力を湛えた"奇跡のコラボレーション"。花澤香菜ファンのみならず、空気公団ファン、志村貴子ファンにも楽しめる作品となっている。■空気公団・山崎ゆかり氏のコメント志村貴子さんの作品に「透明な女の子」をまた別角度からみつけてみてください。心がとっても豊かになって、弱い自分も許せるんじゃないかと思うのです。そんな特別なショートコミックを『透明な女の子』を対象店舗でお買い上げ頂いた方にプレゼント致します!【対象法人】アニメイト、ゲーマーズ、とらのあな(一部店舗除く)、ソフマップ(CD取扱店舗、ドットコム含)、タワーレコード、HMV、WonderGOO/新星堂(一部店舗除く)、TSUTAYA(一部店舗除く)、ANIPLEX+※先着特典のため、各店舗ともなくなり次第終了となる。花澤香菜のニューシングル「透明な女の子」は2016年2月24日の発売予定。そのほか詳細は公式サイトをチェックしてほしい。
2016年02月12日なくしたものを捜しにやってくる者たちの宿『うせもの宿』(穂積/小学館 フラワーコミックスアルファ)全3巻最近、死についてよく考えます。親しかった友人が突然亡くなったのが大きな理由かもしれません。人って死ぬんだ! と思いました。そして、当然のように自分には「老後」があると思っているけれど、実は人っていつ死ぬかわからないんだな、とも。看護師をしている知り合いは、「いつ死んでもいいように悔いのない人生を歩みたい」と言っていました。「老後の楽しみ」とか「×年後にやろう」なんて思っていても、そんな日は来ないかもしれないのです。今、やりたいことをやらないと、今、大切な人を大事にしないと、死んでなお引きずるようなことになるかもしれない……。『うせもの宿』は、捜し物をしている人がやってくる宿です。いろんな人が入れ替わり立ち替わり、宿にやってきます。そして、捜し物を見つけて出て行きます。なくしてしまったものは、すべてその人にとって大事なものです。どうでもいいものなら、なくしたことにすら気がつかないでしょう。「うせもの」にはその人の人生が詰まっているんです。お客が来るたびに、そこにドラマが生まれます。私たちは未練や後悔を残さずに生きられるか(c)Валентина Павлова宿に来る客は、マツウラという男性に導かれてやってきます。彼が何者なのか語られることはなく、謎のひとつです。宿の女将は、10代の少女です。宿の従業員は全員、うせものが見つからずそのまま居着いている人ですが、女将には過去の記憶がありません。彼女が何者なのか、何を探しているのかも、もうひとつの謎です。最終巻では、宿に来る前の女将の半生が語られます。彼女がなぜ「うせもの宿」にいるのか、なぜ記憶をなくしてしまったのかが、わかるんです。「うせもの宿」に来る客たちは全員、亡くなってしまった人たち。焦り、嫉妬、執着、憧憬、矜持、欲望、恋……そういったものがあると、うせもの宿に来ることになるそうです。全体に漂うムードは重く切ない物語ですが、ある意味幸せな設定です。亡くなってしまったら、言えなかった思いを伝えることはできません。誤解があっても解くことはできません。やりたかったことがあっても、もうできません。人が「死後の世界がある」と信じているのは(あるかもしれないけど)、亡くなってしまった人への後悔や思慕があるからでしょう。まったくこの世に未練なく亡くなることは難しいかもしれないけど、やるだけやって後悔を残さずに生きなきゃいけないな、と思います。現実に「うせもの宿」があるという保障はないのだし。Text/和久井香菜子
2016年01月28日声優・花澤香菜の音楽活動4thシーズンの幕開けとして2016年2月24日にリリースされる通算9枚目のシングル「透明な女の子」。そのMusic clip (short ver.)が公開された。本作は、空気公団・山崎ゆかりが、楽曲、アートワーク、ミュージッククリップまですべてを制作しているが、トータルプロデュースに際して、以下のようにコメントしている。■花澤香菜本人の印象可愛くてどこかつかみどころのない人に思えました。子供のような大人のような雰囲気を併せ持ち、素直でいながら、心の内に秘そめるような印象も受けました。作品が進行していくにつれ、がらりと変化していったのを覚えています。ひとつひとつのプロジェクトに愛情を持って、丁寧に接しているのだと感じました。■楽曲を作るにあたって意識したこと本人の印象、本人からもらった、本の中の印象深い言葉、話す時の表情、仕草を頼りに制作しました。変化したいという気持ちを感じました。そこを一番意識したかもしれません。■ミュージッククリップやジャケットのコンセプト表題曲の「透明な女の子」を見えるものにしたい、というのがありました。誰の心の中にもある、強い部分の私と、弱い部分の私。いつもの私と強気の私。その両方をはっきりと出せるようにと考えました。人はみんな弱くてもろくて危うい。だけど本当は心に芯がしっかりあるんだ、ということを表現できればと思いました。
2016年01月15日政治・経済にも踏み込んだギャグ漫画の金字塔『パタリロ!』(魔夜峰央/白泉社 花とゆめCOMICS)既刊95巻女性誌に必ずあるのは占いページ、ないのは政治・経済と言われています。まあ最近はインテリ・バリキャリ女性も増えてきたので、政治・経済を扱う雑誌も出てきましたが、少女漫画にはやっぱりなじみが薄い分野です。長期連載を誇る某古代史大河漫画は、王様がヒーローなので外交やったり政治やったりするシーンが出てきます。が、読んでみると、なんというか王様の思いつきレベルです。駆け引きとか交渉とか利害関係とか、あんまりあったもんじゃありません。それでもその他のドラマチックなところでめいっぱい楽しめるのでよしとなってるんですけどね。政治や経済といった、個人の感情というより社会目線のネタは、少女漫画にとってはおざなりにしようと思えばいくらでもできる世界のようです。さて、男性に「好きな少女漫画」を聞くと、意外に多いのが『パタリロ!』です。「お勧めしたい少女漫画」では『BANANA FISH』が上位に来たりするんだけど、実際に男性から評判がいいのは『パタリロ!』なんです。私としては、濃っ厚なホモシーンがあるので、男性にお勧めしたことはないんですが、このたび読み返してきて、気がつきました。『パタリロ!』の主人公パタリロはマリネラ王国の国王さまなので、けっこう政治や経済の話が出てくるんです。マリネラは世界有数のダイヤモンド産出国だというのも、うまい設定です。映画『ブラッド・ダイヤモンド』でも扱われたように、宝飾品だけではなく工業品としても価値の高いダイヤには、黒い陰謀が渦巻いているらしいですね。そのため、イギリスの諜報機関MI6のやり手エージェントで美少年キラーのバンコランらといったハードボイルドな人たちが登場するのも納得。たまには無茶な設定のこともありますが。『ガラスの仮面』の舞台をやるためにエージェントがマリネラに集合するとか。落語やミステリの要素も盛り込む偏差値の高さ(c)Dax Ward内容も情報たっぷりで、ぱっと思いつくだけでも「絶対零度」「ルビーとサファイアは同じ鉱物」あたりは『パタリロ!』で知りました。塩が小麦粉よりも吸湿性が高いとかね。情報の早さも尋常じゃなくて、「サブリミナル」なんてテレビで騒ぎ出す10年くらい前からすでに『パタリロ!』で読んでました。ギャグの根底に流れるのは落語のようだし、大人になって読んでみると「非常に偏差値の高い作品なんだな」ということがわかります。子供心にホモシーンが強烈だったので、なんだか男性にはお勧めしにくかったんですが、心を改めることにします。政治、経済、科学、ミステリの要素をたっぷり盛り込み、くだらないギャグやってページを稼いで、笑わせもするけど泣かせもする、すごい作品です。「泣かせる」といえば単行本10巻が有名です。『忠誠の木』『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』あたりは肩震わせて泣いちゃいます。改めて読んでみると、自分、バンコランの愛人の少年マライヒが一番好きみたい。頭の回転は速いし、抜群に身体能力は高いし、どんな危険からも守ってくれそう。たまにピエロみたいな格好してるのが気になるけど……。バンコランは実写化されたらちょっと怖いですね。あ、タマネギ部隊もか。Text/和久井香菜子
2016年01月13日声優としてさまざまな作品で活躍する一方、音楽活動にも力を入れる花澤香菜だが、音楽活動4thシーズンの幕開けを告げる、通算9枚目のシングル「透明な女の子」が、2016年2月24日にリリースされることが発表された。2012年のソロデビュー以来、8枚のシングルと3枚のアルバムをリリースする花澤。アルバムのリリースをひとつのタームとして、1st、2nd、3rdシーズンと位置づけて音楽活動を展開しており、昨年4月には3rdシーズンの結晶としてアルバム「Blue Avenue」をリリースし、5月には自身初の日本武道館ワンマンライヴを開催している。昨年11月からは、朗読とアコースティックセットという組み合わせのライヴサーキット『かなめぐり ~歌って、読んで、旅をして~』を全国9カ所で開催中だが、息づかいや空気の振動が直接伝わるような大きさの空間で、花澤香菜の「声」の魅力を存分に感じられるプレミアムなイベントとして高い評価を得ている。そんな花澤香菜がレギュラーパーソナリティーを務める文化放送 超!A&G+『花澤香菜のひとりでできるかな?』にて、「透明な女の子」の楽曲初オンエアとともにリリースがアナウンスされた。今作は「空気公団」の山崎ゆかりが、楽曲・アートワーク・ミュージックビデオまですべてをトータルプロデュース。山崎ゆかりはこれまでアーティストの作詞を手掛けたことはあったが、作曲までを含めての楽曲提供は今回の「透明な女の子」が初となる。「"透明な女の子"を見えるものにしたい。という思いがあり、誰の心の中にもある、強い部分の私と、弱い部分の私。いつもの私と強気の私。その両方をはっきり出せるようにと考えた。人はみんな弱くてもろくて危うい。だけど本当は、心にしっかりと芯があるんだ。という事を表現したかった」という山崎の想いがつまった作品で、シングルには、カップリングとしてさらに「パン屋と本屋」「雨降りしき」の2曲を収録。こちらも山崎が作詞・作曲を手掛けている。「パン屋と本屋」は、パン屋めぐりが好きという花澤のパーソナルな部分も曲に反映させたいと、パン屋が好きな女の子と、読書の好きな男の子が散歩にでかけるといった内容の可愛らしいほのぼのとした楽曲で、「雨降りしき」はピアノとストリングスのみの演奏によるしっとりした楽曲に仕上がっているという。花澤香菜の音楽活動4thシーズンの幕開けとなる9thシングル「透明な女の子」は、2016年2月24日の発売予定。初回生産限定盤と通常盤の2ラインナップで、初回生産限定盤には「「透明な女の子」のミュージックビデオを収録したDVDや撮りおろし12Pブックレットなどが封入される。
2016年01月08日日本の年間死亡原因第一位は?『透明なゆりかご』(沖田×華/講談社 KC KISS)既刊2巻評論家の斉藤美奈子さんが書いた『妊娠小説』という本があります。「望まない妊娠」を扱う小説を取り上げ、その仕組みを解明していく。その中で、産婦人科がどれだけ冷たく、暗く、そしてしめった場所として描かれているかが述べられています。こうして植え付けられてきた産婦人科のダークなイメージは、女が気軽に自分の身体について相談できる機会を大きく失ってきたと感じます。産婦人科は内科を兼ねていることも多いので、女性は身体の不調を感じたら産婦人科に受診するといいと言っている医師もいます。女性ならではの病気がある以上、産婦人科にかかった方が効率がいいんです。『透明なゆりかご』は、産婦人科でアルバイトをしていた女性が描いた作品です。女性たちが通う病院ならではの悲喜こもごもが描かれています。幸せな出産の数よりも、胸の痛む堕胎や死産といったドラマの方が圧倒的に多い。いまだに出産は命をかけた大事業なのだとわかります。作品中、「日本の三大死亡原因は、心疾患でも脳血管疾患でもガンでもない」と語られます。日本国内で年間30万もの人工中絶が行われているのだそうです。望まれない妊娠・出産があることを、普段私たちは意識しません。少子化、少子化というけれど、人工中絶の数が少しでも減ればいいんじゃないか、という気になります。“望まれない”妊娠の背景にあるもの少女漫画で必ず“愛”が語られるのは、それが一番女にとって大きな保障になるからです。セックスをして万が一自分が孕んだとしても、男の“真実の愛”があれば大丈夫。きっと自分を守ってくれるはずだから。だけど、現実はそんな上手くいく話ばかりじゃないようです。子どもさえ産めば自分のものになってくれると信じて出産した女性、不妊治療の末にようやく妊娠した女性を待っていた予想外の不幸、流産してしまったことへの罪悪感、出産がいまだに命がけであること……。この作品を読むと、妊娠が“望まれない”ことになった理由は、たいていの場合男性にあるんです。女は体と心を傷つけることだから、環境が整っていればやっぱりできれば産みたいと思うはず。ああ、現実は辛い。自分が男にとって便器でしかなかったとは思いたくない。でも、妊娠を相手と分かち合えないのなら、便器だったのと同じこと……。そういう話も、残念ながらいくつも描かれています。フワフワとした柔らかい絵柄の作品だけど、言ってることはけっこう辛い。胸キュン壁ドン顎クイもいいけど、こういう事実もちゃんと知っておかないといけないですよね。……まあホントは男性がこういう事実を知っておくべきだと思うんですけどね~。Text/和久井香菜子
2016年01月03日真剣になるほど“自分との戦い”になる競技の世界『ちはやふる』(末次由紀/講談社 BE LOVE KC)既刊29巻30歳になる頃、テニスにめちゃくちゃハマりました。中学の頃からやってはいたけど、なかなか上手になる機会がなくて、社会人になってスクールに通い始めたら止まらなくなりました。レッスンを毎日のように受け、試合は自分の欠点を知るため、レッスンは欠点を直すためと、身体と頭をフル回転させて取り組みました。生活を傾けるほどのハマりようだったけど、そこで学んだことはとても多かった。真剣に取り組めば、試合は他人とではなく自分との戦いになること。負けて悔しいのは、自分の身体が思い通りに動かなかったから。ちゃらちゃらと遊びながら試合に出ていた頃にはわからなかったことです。さて、『ちはやふる』は、競技かるたに夢中になり、青春(もしくは人生?)をかける人たちにスポットを当てた作品です。“競技かるた”という、それほど知名度の高くない種目をテーマにしたことも興味深いですが、なにより、構成や説教要素がものすごくいいんです。人生かけられるものが見つかるって、幸せなことです。そこに偶然才能があったら最高。でも、自分になんの才能があるかなんて誰にもわからないから、子どもの才能を見つけて伸ばしてやるのが親の勤めじゃないかと思っています。私が子どもの頃は、「漫画を読むと馬鹿になる」なんて言われて、めちゃくちゃ否定されてました。だけど結局、今こうやってマンガでご飯食べてるわけです。10年後、20年後にどんな職業が生まれて、今あるどんな職業が落ちぶれてしまうかなんて、誰にもわかりません。子を持つ親には、子どもがやりたがることを否定しないで、温かく見守る寛容さが欲しいですね。コンプレックスをどう活かすかが人生を左右する(c)PROmrhayata主人公の千早(ちはや)には美人の姉がいて、家族は姉のモデル業のサポートで手一杯です。でも、千早がかるたと出会ったおかげで、「千早がかるたをやっている限り大丈夫」と、親は千早とかるたを信じてくれます。きょうだいに対するコンプレックスって、きょうだいがいる限り宿命のように思います。でも、そのコンプレックスをどう活かすかが人生を左右すると思うんです。子どもの頃の自己否定は、何かに邁進する活力に変えなければいけません。千早はその最適な対象と出会ったのだと思います。私は、競技かるたはわかりませんが、勝負に対する真摯な気持ちは理解できます。真面目に練習に取り組んで試合に出るからこそ、負けて悔しいし、自分に言い訳ができないから成長するのだと思います。人生傾けるほど練習せずに、試合に負けて悔しいのとは、意味が違う。そんなことも、『ちはやふる』ではちゃんと教えてくれるんです。珍しい競技を取り上げたからでも、絵がかわいいからでも、太一がかっこいいからでもない。人として学ぶべきこと、幸せの形、そういうものが競技かるたというテーマにすべて集約されています。『ちはやふる』は作品全体のクオリティがとっても高いと思います。夏休みの指定図書なんかにしてもいいんじゃないかと思うくらい。声を上げるようなことはないけど、読んでいる最中ずーっとじわじわきて涙が止まりません。ところで、競技かるたを取り上げたマンガって、他にもいくつかあるみたい。どれも同時期に作品になっているので、もしかしたら協会が宣伝活動に励んでいたのかもしれないですね。そんな大人の事情もちょっぴり気になります。Text/和久井香菜子
2015年12月24日声優の花澤香菜と日野聡が、人気アニメ『遊☆戯☆王』シリーズ初の長編アニメーションとして、2016年4月23日に公開される劇場版『遊☆戯☆王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS』に出演することが8日、発表された。本作は、原作者・高橋和希氏自ら、原作、キャラクター、デザイン、総指揮として携わり、製作される。劇中では、武藤遊戯(風間俊介)と海馬瀬人(津田健次郎)の名コンビも復活。加えて、神秘的なビジュアルで話題を呼んでいた謎の少年・藍神を俳優の林遣都が演じる。今回発表された2人の声優は、その藍神と共に行動するキャラクターを担当。花澤は、藍神に付きそう謎の少女・セラを、日野は藍神と宿命を共にする謎の男・マニをそれぞれ演じる。花澤は、『僕らはみんな河合荘』(14年)の河合律役や『凪のあすから』(13年~14年)の向井戸まなか役などのほか、多くのアニメでヒロイン役を担当。一方の日野は、『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。続』(15年)の玉縄役や『NARUTO -ナルト-』シリーズのサイ役を務めていることでも知られる。12日からは、映画のポスタービジュアル、特報映像を公開。さらに、一部を除いた全国の劇場で、劇中において海馬が呼び出す新たな「青眼の亜白龍」(ブルーアイズ・オルタナティブ・ホワイト・ドラゴン)のカード付き前売り券の発売もスタートする。(C)高橋和希 スタジオ・ダイス/2016 劇場版「遊☆戯☆王」製作委員会
2015年12月08日戦場を渡り歩いたジャーナリストが教師に転向子どものいじめがよくニュースになっていますね。誰にも言えず、自殺するまで追い詰められてしまう気持ちを考えると切ないです。でも学校なんか、生きることよりも優先する場所ではありません。行きたくなければ行かなければいいんです。人生をやり直す機会はいくらでもあります。大学なんかいくつになってから行ったっていいんだし。『アイスエイジ』(もんでんあきこ/集英社 クイーンズコミックスDIGITAL)全10巻 『アイスエイジ』は、金八先生を地で行く熱血教師の物語です。進学校に臨時教師として採用されたエイジが、あれこれ鬱陶しいこといっぱいやって先生や生徒の信頼を得ていきます。まあ、平成少女漫画の金八先生です。そしてエイジが赴任した蓮見高には、問題児がうじゃうじゃいます。エイジをミカに殺させようとした生徒会長のマサキ。マサキの幼なじみで、恋多き母親のおかげで家に帰りづらいミカ。修学旅行中に心中しようとする麻衣と竜などなど。彼らの心の問題に、エイジをはじめ同僚の乾先生らが取り組んでいきます。この作品でいいなと思うのは、エイジが世界中の戦場を駆け巡るジャーナリストだったというところ。いろんな世界を見ていると、日本を俯瞰してみられると思うのです。エイジは、自分の戦場での経験を生徒に話してどよーんと落ち込ませたりしています。いちいち戦場では~、日本は平和だ~って言われるのは面倒くさいけど、平和ボケした人たちばっかりが教師でも困るから、たまにはこういうのがいてもいいのでしょうね。日本の先生たちにもぜひ世界中をブーラブラしていただきたい。日本の常識は世界の常識ではないから、自分の正義がもしかしたら正義じゃないと気付くかもしれません。大人になりきれない大人たちの姿も描く(c)Zephyrance Louティーンエイジャー向けの学園漫画は主人公が生徒なので、先生たちは敵だったり、たまに出てくるサポーター程度の役割だったりしますよね。でもこの作品は、先生と生徒、双方に光を当てています。エイジたち教師もまた、迷いながら生きる大人になりきれない大人たちなのです。生徒と先生の恋愛もあり、生徒にイタズラしちゃう先生あり、教師同士でくっついたり別れたりもして『ビバリーヒルズ青春白書』状態です。めんどうくせえ~!個人的には、生徒会長のマサキに一番共感を覚えます。マサキの親は過保護なくせに肝心なところで放任主義。マサキは自分を理解してもらえるあてがないから、無気力で無感動。勉強は出来るけど想像力が足りない偏った子どもだったマサキですが、次第に生きる気力を持つようになり、活き活きとして卒業していきます。そう、親の過干渉・過保護は子どもの気力を奪うのですよね。自分のことを自分で決められないなら、無気力にもなりますよ。私の親がまさにそうで、本人たちはかわいがっているつもりなんでしょうが、正直、感謝をする気にも、親として尊敬する気にもなりません。自分の足で立って、自分の意志で生活するようになってようやく、少しずつ生きる気力が湧いてきました。大人も子どもも、みんな問題を抱えて生きているんですね。熱血教師ひとりで問題が解決するとは思わないけど、人と向き合って生きたいな、とは思います。Text/和久井香菜子
2015年12月08日高橋和希原作のシリーズ初の長編アニメーション化『遊☆戯☆王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS』のゲスト声優として、このほど花澤香菜と日野聡が出演することが明らかとなった。原作者の高橋氏が原作・脚本・キャラクターデザイン(製作総指揮)を務め、アニメシリーズに引き続き主人公・武藤遊戯役の風間俊介と、海馬瀬人役の津田健次郎の出演することでも話題を集めた本作。先日追加キャストとして、謎の少年「藍神」役に林遣都が声優初挑戦で出演することが報じられ、さらなる注目を集めている。今回発表されたゲスト声優には、林さん演じる藍神に付き添う謎の少女「セラ」役に、「PSYCHO-PASS」や「東京喰種」といった話題作のほか、多くのヒロイン役をこなし、歌手としても活動する花澤さんが配役。さらに、藍神と使命を共にする謎の男「マニ」役を、「バクマン。」をはじめ「NARUTO-ナルト-」のサイ役でもお馴染みの実力派・日野さんが演じることが決定している。12月12日(土)からは、映画の本ポスタービジュアルと特報の解禁され、一部を除く全国の劇場にて、劇場版の劇中で海馬が呼び出す「青眼の亜白龍」(ブルーアイズ・オルタナティブ・ホワイト・ドラゴン)のカード付き前売り券が発売。未だに明らかになっていない「藍神」の正体や、林さん、花澤さん、日野さんの共演に大いに期待がかかる。『遊☆戯☆王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS』は、2016年4月23日(土)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2015年12月08日居場所探しは少女漫画とおひとりさま女性の共通テーマこの前、おひとりさまの女子たちで、将来についてこんな夢で盛り上がりました。田舎に家を買って共同で住み、仕事は週に2~3日。休みの日は畑で農作業をして、給料を分け合い、自給自足で暮らそうというんです。気の合う女子だけで一緒に生活出来たら、ものすごく楽しそうです。基本、自給自足だからそれほどお金もいらないだろうし。男性に迎合して生きるのに疲れてしまい、結婚に希望を見いだせない女たちの向かう夢は、共同生活でした。「自分の居場所を探す」のは少女漫画の大好きテーマのひとつですね。自分が安心できる場所、自分の存在を受け入れてくれる場所、そんな場所を求めて葛藤する話がけっこうあります。(c)『坂道のアポロン』(小玉ユキ/小学館 フラワーコミックス)全9巻+BONUS TRACKさて、『坂道のアポロン』も、自分の居場所をもがいてもがいて探していく物語です。主に男子たちがもう。薫くんは、父親が不在がちなため、伯父の家に居候していて、肩身が狭い。千太郎はハーフで父親が誰なのかわからない。彼らは、自分の住む家に自分の居場所を見つけることが出来ず、苦しんでいます。千太郎の幼なじみの律子は、そばかすにおさげのいなかっぺな感じの少女です。彼女は別に自分の居場所がどうのとかあんまり悩んでいません。ルックスが平凡なキャラに少女漫画は寛容なんです。そして、千太郎、薫、律子の3人がジャズと出会って交流を深めつつ、ほんのり三角関係でモヤモヤしていきます。さて、この作品に登場する主役級男子は薫と千太郎。この2人は対照的です。薫は、人見知りのストレスでゲロ吐いちゃうような繊細なボンで、学業優秀、スポーツはいまいちです。背は高くありませんが、眼鏡を取ると整った美しい顔をしています。パートはピアノ。千太郎はケンカ上等の不良で、ガタイが大きく二の腕もたくましく、勉強は苦手。パートはドラムです。美人に一目惚れしたりして単純です。人生とは“家族のトラウマを恋愛で昇華しようとする少女漫画”(c)thompsonwood美味しいとこ持ってってるのが淳兄。大学生で、学生運動で身を持ち崩して退学したりしてアウトローな感じ。パートはトランペット。美人の女が言い寄ってきて部屋に上がり込んでも手を出さない硬派な不良です。『キャンディ・キャンディ』で言ったらテリィですかね。さまざまなバックボーンを抱えた若者たちが、ジャズを通じて自分の居場所を確立していきます。薫と千太郎は、性格が陰と陽くらい違い、接点がなさそうなのですが、ビバ音楽の力ですね。私は、家族に対して複雑な思いを抱えている主人公の話に猛烈に惹かれるんです。少女漫画では恋愛ものと同じくらい、親や兄弟といった、家庭の悩みについて描く作品が多い。それは、作者自身が抱えている問題であり、自分の人生を左右する重要なテーマだからでしょう。家族のトラウマがあるイケメンのほうがつけいりやすいというしたたかな女のもくろみもあるんでしょうが。少女漫画では、報われない家庭での鬱屈した思いが、恋愛で昇華されていきます。でもまあ、家族に夢が持てなければ、積極的に家族を作ろうという気にならないだろうし、現実はなかなかそうはいきませんわな……。Text/和久井香菜子
2015年11月27日未来は変えられる?10年後の自分からの手紙最近、この歳になって今さらですが、「人って死んじゃうんだな」と実感しています。もちろん命が有限だということくらいは知っていましたが、親しい人を亡くして初めて、その悲しみの種類を知りました。昔から少女漫画には人が死ぬシーンはたくさんあり、そのたびに読者の涙を誘っています。アンソニー、オスカルさま、マヤのお母さん……。「人が死ぬと悲しいだろうな」ということは子どもでもわかります。だから、「人が死ぬ話を描けば読者を泣かせることができる」でしょう。でも、その「泣かせる」にどれだけ味つけができるかは、作者のセンス次第です。(c)『orange』(高野苺/双葉社 アクションコミックス)全5巻『orange』は高校の始業式の日、主人公・菜穂のところに10年後の自分から手紙が届くところから始まります。そこには、これから起こることと、いずれ後悔するからこうして欲しいという指示が細かく書いてあります。その予告があまりに当たるので、菜穂はその手紙を信頼し、その指示に従うようになっていきます。物語はとてもよく出来ていて、最初は小さな円だったものが、どんどんと周りを巻き込んで大きくなっていきます。手紙の目的はひとつ。起こってしまった、とある未来を変えて欲しいから。引っ込み思案で内気な菜穂は、手紙の指示に従ってどんどん積極的に行動していくようになります。人生とは“やらずに後悔するよりも、チャンスをつかむ勇気を”(c)LoneWolf87そうして、本来なら思いを伝えられないままのはずだった翔(かける)と、両思いになります。これはうらやましい。物語では、両思いになることが想像できるから勇気が出るのだけど、実際はそんなことはありません。でも、思いを伝えて振られて傷つくのと、思いを伝えないことで、両思いだったかもしれないチャンスを逃すのと、どちらがいいんでしょうね。チャンスを逃すことの方が絶対にもったいない気がします。恋愛だけではなく、仕事でもなんでも、チャンスはつかまなければ損です。何かをお願いされたとき、「自分には荷が重い」と思うことなら、なおさらチャレンジすべきでしょう。今の自分に出来ること、楽なことしかしなかったら、人生発展しないですもの。「自信はないけどやりたい」と言って前に進む勇気を持ちたいものです。とかいって、私は好きな人に告白したことってないんですけどね。昔は自信がなかったり、本人のいないところでキャーキャー言うのが好きだったりで。今は、わざわざどうこうする気力が出るほど好きな人が出来ないのが理由ですかね。ああ、なるほど、どうせ大人になったら、無防備に人を好きになることなんて滅多にないから、若いうちにやっとけっていうことかな。まあとにかく、「好きな人には思いを伝えよう!」キャンペーンってことで。Text/和久井香菜子
2015年11月20日昼ドラ原作の女王は、先の展開をまったく読ませない!フジテレビ系列の昼ドラが2016年3月で終了するというニュースが流れました。ドロドロ愛憎劇モノ大好きなので大変残念です。その追悼の意を表して、今回は津雲むつみさんを取り上げたいと思います。(c)『空と海と蜃気楼と』(津雲むつみ/集英社 クイーンズコミックスDIGITAL)全7巻津雲むつみさんは、昼ドラ化された『風の輪舞』『花衣夢衣』『聞かせてよ愛の言葉を』の作者で、昼ドラ原作の女王マンガ家です。その他にも、森田健作がわあわあ叫ぶ『おれは男だ!』や、岡本健一と杉浦幸の大映ドラマ『このこ誰の子?』(原作タイトルは『彩りのころ』)などがあります。たいていの少女マンガは、「読み手が嫌がる展開はしない」がセオリーなので、だいたいのとこ話の筋が読めるものです。主人公が雑魚にレイプされることはないし、ヤリ捨てられることもないし、最終的に貧乏になることもありません。主人公と主人公の友人だったら、絶対に主人公の方がいい思いをします。津雲作品に登場する男性は、ものすごくイケメンだとメンヘラで、鼻や唇が丸ければ丸いほど欲求不満の悪い男とだいたい相場が決まっています。しかし、わかるのはそこまでで、あとの展開はまったく読めないんです。主人公の女の子はバリバリレイプされるし、出てくる男はだいたいクソだし、まったく夢がありません。『空と海と蜃気楼と』は、家でいじめられてるイケメン純と、父親を嫌いな一雄と、のんきな家の瞳という、一姫二太郎な幼なじみたちの物語です。三角関係でモヤモヤするんだろうなということは想像がつきますが、あとはまったく想定外の展開でした。瞳はレイプされかかるし(未遂で終わってむしろびっくり!)、純は少年院に行っちゃうし、一雄は大したことしないけどルックスもたいしたことないしで、「いったいこの話はどこへ行くんだ!」って感じです。出てくる男が全員フツー以下!でもそこが異様にリアル(c)kaizen.nguyễn3人のうち、瞳は片方と結婚するんですが、その後の展開がまた斜め上過ぎて「えぇっ!?」と叫んでしまいました。それ絶対少女マンガではあり得ないから!!この作品では、トラウマがあって愛に飢えてるクールなイケメン純がいいかなーと思って読んでましたが、途中から「うわ……それはちょっと……」となりました。彼女の作品には、ホントにカッコイイ男子が登場しません。この作品含め、津雲作品をひと言で言い表すなら、「ドロドロ」です。それ故、どの作品も奪い合うように昼ドラ化されたわけですが、そこで気が付いたことがあります。津雲作品に登場する男性は、みなフツー以下なんですよ。ものすごく現実的なんです。自分に甘いし、約束は破るし、浮気はするし。ホント夢のカケラもありません。だからこそドロドロの展開になるんですよね。男が少女マンガのヒーローみたいに、女に一途で気が利いて頭がよかったら、女同士のゴタゴタとか起こらないんです。ヒーローがその辺うまく処理しちゃいますから。主人公が襲われそうになったって、足首捕まれる前に助けてくれるに決まってます。カッコイイ男子が出てこないのに、なにが津雲作品の魅力かって?そりゃ、男が一般のダメ男なのが、異様にリアルだからです。セクハラやレイプに近い「性に対する嫌悪感を起こす事件」って、女ならたいてい経験しているはずです。いかにも現実にありそう、こういう男いそうっていうヒリヒリした感じが、とても生々しいんです。子ども時代から老いて死ぬまでを描くので、「女の業」をつくづく感じます。「人生楽じゃない」と、しみじみ秋の夜長ってことで。Text/和久井香菜子
2015年11月13日ママがあやすと嫌がられる!?家事・育児を夫がこなす二ノ宮家『ヒモザイル』(東村アキコ)が炎上して休載になってしまいましたね。今は外資やIT系などでかなり稼ぐ女性も多いですから、男性が家事を担当して主夫になる選択は大いにアリだと思います。でも、そうした男性たちを「ヒモ」扱いして呼ぶことに批判が相次いだようです。(c)『おにぎり通信~ダメママ日記~』(二ノ宮和子/集英社 愛蔵版コミックス)既刊2巻一方で、その主夫を面白おかしく描いた作品があります。『のだめカンタービレ』の作者・二ノ宮知子さんによる『おにぎり通信~ダメママ日記~』です。子育て漫画は世にいろいろありますが、この作品は「自分がいかに子育てに参加していないか」を描いていて新鮮です。家事・育児は夫であるPOMちゃんがすべてこなしているようです。POMちゃんは早朝に起きて朝食を作り、経理などの事務仕事をこなし、保育園への送り迎え、掃除洗濯、子どもの入浴をやっています。二ノ宮さんは漫画をひたすら描いて、あとはご飯を食べて寝るだけ。二ノ宮さんが子どもをあやそうとすると、エビ反りになって「パパがいい~!」と叫ぶそうな。子どものママ好きって、DNAじゃなくて、かまってる時間なのですね……。というようなダメ母ぶりを、めいっぱい自虐的に描いています。もしかしたら、夫の子育ての非協力的なことに悩んでいる人は、読むと腹立たしい気持ちになるかもしれません(羨ましくて)。まあ、SOLOはおひとりさま向け媒体なので、そういう心配はないものとしてご紹介しております。でもぶっちゃけ私、この作品を読むまで「二ノ宮さんはダメ男と結婚したのか」と思いこんでました。本当にすみません。結婚当時、POMちゃんは定職に就いていなかったみたいだし、仕事に追われている二ノ宮さんを置いて飲みに行ったりしてたみたいだし……。人生とは“選んだものでどう幸せになるか”(c)Heidiところが、いざ子育てが始まったら、たいへん頼りになる人だったわけです。もし二ノ宮さんが「とにかく年収の高い男性と結婚したい」と思っていたら、POMさんは選ばなかったでしょうし、そのかわり家事育児を任せっきりにもできなかったでしょう。人生って、何を取るか、選んだものでどう幸せになるかってことなんだなと思います。と同時に、夫に経済力を求めなくても済んだのは、二ノ宮さんに経済力があったから。やっぱり稼ぐ力をつけるってことは、人生の選択肢の幅を広げるってことなんですよね。実録エッセイ漫画とは言っても、あったこと全部は描いていないだろうし、脚色もあると思います。でも、朝が弱ければ夫にやってもらい、夫が手に余れば手伝うしという、なんかとてもいいコンビで、ほのぼのしてしまいます。いや、漫画の中は大騒ぎしてて大変そうだし、実際は絶対こんなにおもしろくないんだと思うけど。冒頭で東村アキコさんを例に出したのは、2人ともエッセイ漫画がおもしろい作家さんだからです。東村さんも『ママはテンパリスト』という爆笑子育てエッセイを描いていて、つい思い出しました。東村さんは「面倒くさいから母乳派」で、二ノ宮さんは結果的にですがミルク派と、子育ての環境や方針がまるで違うのが興味深いです。共通しているのは、「なんだか大変そうだけど楽しそう」というところ。どんな環境にあっても、楽しく愉快に生きたいものです。Text/和久井香菜子
2015年11月10日アユートは、2015年11月7日(土)より全国で実施される花澤香菜のライブツアー「かなめぐり~歌って、読んで、旅をして~」に協賛し、特設ブースを出展する。特設ブースでは、Astell&Kernブランドのハイレゾ音楽プレーヤー「AK100II」や「AK Jr」で、花澤香菜の楽曲をCD音源とハイレゾ音源の両方を試聴・体感できるコーナーが用意される。「かなめぐり~歌って、読んで、旅をして~」の日程および詳細については特設サイトをチェックしてほしい。
2015年11月06日見た目はゴリラだけど、めちゃくちゃ純情で優しい猛男『俺物語!!』(原作:河原和音、作画:アルコ/集英社 マーガレットコミックス)既刊10巻少女マンガでは、『はいからさんが通る』『薔薇のために』『君に届け』などなど、たまに美人ではない女子が主人公になります。「私のことは外見じゃなくて中身を見てよ!」とさんざん訴えてるんです。でも、男子のことは当たり前のように外見重視です。乙女心って勝手ですね。しかし、そんなしきたりを大きく破る作品が登場しました。『俺物語!!』です。ヒーローは剛田猛男。身長推定2m、体重推定120kgの高校生とは思えない巨漢です。少女マンガは、基本的にフィギュアスケート選手の羽生結弦くんを模写したみたいな線の細い男子が活躍するものです。それが体重120kgって。青池保子さんや昔の秋里和国さんの描く男性はマッチョ系ですが、剛田猛男には遠く及びません。猛男は豪快で男気があって気は優しくて力持ち。『北斗の拳』のケンシロウから拳法と7つの傷を取り払って、もう少し不細工にした感じでしょうか。猛男には幼なじみの砂川誠というイケメンがいます。彼はクールで勉強が出来て優しくて、とんでもなく女子にモテます。猛男の好きになった女子はみな砂川を好きになってしまいます。そんなとき、痴漢から救ってあげた大和凛子に猛男は一目惚れ。「きっと大和は砂川を好きなんだろう」と思い、猛男はせっせと2人がうまくいくようにセッティングします。ところが大和は、初めて会ったときから猛男のことが好きだったのです……というすれ違い物語。とはいえ、『君に届け』みたいに、何巻も何巻も何巻もすれ違うことはなく、割とあっさり2人はカップルになります。猛男の感違いっぷりと砂川のクールな切り返しがめちゃくちゃ笑えるラブコメです。そこからは、武骨で空気の読めない、けど素直でいい人の猛男と、純粋でかわいくて、おもしろいことひとつも言えなそうなつまんない女だけどいい子の大和が、なんやかんややりながら話が進みます。クールなさわやかイケメン・砂川も、やっぱりいい男!(c)Christian Gonzalez女子からは恐れられていてモテない猛男だけど、男子からは憧れの巨漢として慕われています。しかしあまりに猛男がいい人なので、だんだんとその良さが周りの女子にもわかってきます。で、まあその頃にライバルが登場したりするんだけどね。とまあ、主要男子は猛男と砂川の2人なんだけど、私は砂川の方が好きです。クールなキャラが好きなので。少女マンガのお約束通りで本当にすみません。いえ、顔で選んでるわけじゃないですよ。砂川は毎日自宅で勉強をする努力家です。素直で善意のカタマリみたいな猛男に向かって、砂川は「勉強っていうのは人生を間違えないための智恵だから、おまえには必要ないんだろうな」と言います。勉強は目的ではなく手段だというのですから、高校生のくせになんとかっこいいんでしょう。そして猛男には「そんな努力をしなくても、お前は間違えないよ」と言っているのです。いいやつだ。ところで、猛男は巨漢で大和のことが好きで好きで大変なのに、いっさい欲情しません。大和を神聖視して最初は手も握らなかったくらい。なんででしょうか。少女マンガは「エロいっさい排除」と「作品の魅力はエロ」の大きく2パターンがあります。『俺物語!!』も、いっさい排除してなおかつ読ませる作品だと言えます。でもちょっと考えてみましょう。もし猛男が劣情にまみれて襲ってきたら……?めちゃくちゃ怖いです!いくら猛男の中身がいい人でも(いや、劣情にまみれる時点でいい人じゃないか)、女子萌えから大きく外れてアウトだったのではないでしょうか。いやー結局、一見「人は外見じゃない」「女は中身重視なの!」と言いながら、猛男には身を許さないわけで、割とやってることはシビアですな。Text/和久井香菜子
2015年10月30日形式だけで「つながった気」になっている私たち『愛蔵版 CIPHER』(成田美名子/白泉社 花とゆめCOMICSスペシャル)全7巻「年賀状に子どもの写真をプリントするのはアリかナシか」という議論があります。「子どもが欲しくてもできない人に出すのは気遣いがない」というわけです。とはいっても、「子どもが欲しいけどできない」というパーソナルな悩みはあまり人に言わないだろうから、気遣いしようにもできないかもしれません。それに、出す方も多少「幸せ自慢」的なところがあるんだろうから、そもそも気遣いと言われたら、気遣いよりも自分ってところですかね。そもそも「挨拶」って、相手との関係を慈しんでするものだと思うんです。だったら年賀状も全員に同じプリントで渡すのではなく、ひとりずつ内容を変えるべきでしょう。プリントごっこが発売になる前まではそうだったはず。私はすべて手書きが面倒くさくて、とうとう年賀状を書かなくなってしまいました。挨拶すらしないのと、形式だけのご挨拶と、どっちがいいかはわかりませんけど。『CIPHER』は、美術学校に通う双子のイケメン俳優と、男勝りの少女アニスの物語です。80年代のマンガらしく舞台はニューヨーク。完全カラー再現で電子化されたので、久しぶりに読んでみました。イケメン俳優のサイファとシヴァは、ちょっと訳ありでとんでもない秘密があります。その秘密を知っているのはアニスだけ。共依存の関係にあったサイファとシヴァですが、どえらくゴッタゴタしたあと、精神的自立と人間らしさを取り戻していきます。もともと、作者の成田美名子さんは「人との関わりは大事だよ」「友達最高!」と熱く語りかける物語を描く作家さんです。この物語でも、サイファとシヴァ、両親、家族、友人と、相手を変えて、これでもか、これでもかと「人と深く関わること」について、相手への理解や許容についてを語っていきます。人と深く関わることに向き合わせる成田美名子作品(c)Enric Fraderaサイファとシヴァをはじめ、サイファとハル、シヴァとアレックスたちの関係(全員男)は、ゲイなんじゃないかと思うほど濃厚です。マウスtoマウスでキスはするし、ハグは当たり前、ちょっと帰宅が遅くなると生娘が家出したかのように心配して探しまくる。ささやかな表情の変化も見逃さず「なにかあったのか」「なんでも俺に言え」と、つめよります。サイファとシヴァは序盤、他人を信用することなく、友人たちとも「その程度」の付き合いしかしません。いい顔を見せて、笑うべき場面で笑い、やるべきことをやる。完全に俳優として「自分を形作って見せ」ているのです。共依存の関係にある双子の相手にすら、本音を話しません。そういう考えに真っ向から対立したのがアニスで、彼女はサイファとシヴァに深く関わっていきます(そこら辺が少女マンガらしい優越感を感じる展開なんですが)。読んでいて、なんとなくSNSが頭に浮かんできました。Facebookには特に「誰に宛てたのではないけども」という公開日記が氾濫しています。旅行先の美しい景色、さっき食べた美味しい食事、友達との集合写真、そういう「見せたい自分」だけを垂れ流して、人からの評価(友達の数や「いいね!」の数)を欲しがるけれど、すべてをさらけ出せる相手がいるかどうか。「つながった気」「仲がいい気」になっているだけではないでしょうか。少女マンガがすごいと思うのは、何十年も時代を先取りして問題を提起する作品がたくさんあることです。『CIPHER』は間違いなく、現代の希薄で浮薄な人間関係に疑問を提示する、今こそ読みたい作品だと思います。また、家族関係の問題についてもいろいろと取り上げています。家族に対してモヤモヤを抱えている人は多いと思います。サイファとシヴァやその他の登場人物たちが、本音で話し合って関係を再構築したのと同じように、近しい関係だからこそ起こる不満や行き違いは、ちゃんと言葉を尽くして話し合わない限り、解決しないのかもしれません。Text/和久井香菜子
2015年10月23日