株式会社サンリオより、サンリオ初となるリアル社員によるVtuber「なつめれんげ」が誕生しました。『サンリオ社員こそエンターテイメントであれ!』という思いから、時流に合わせ、サンリオ初のリアル社員Vtuberとしてデビューした「なつめれんげ」は、サンリオのマーケティング本部バーチャル課に所属する若手社員です。活動の場は主に「なつめれんげ」の公式YouTubeチャンネルと公式Twitterとなり、世界中のファンの皆様と交流します。Vtuberとして親しんでいただくべく、日々の仕事の話や、株式会社サンリオの最新情報のお届けやゲーム実況などを配信していく予定です。記念すべき初回配信は、★2021年10月15日(金)21:00~公式YouTubeチャンネルで配信いたします。★「なつめれんげ」からのコメント皆様、初めまして!株式会社サンリオ、マーケティング本部バーチャル課のなつめれんげと申します。本日、Vtuberデビューをする事が決まりました!緊張でいっぱいですが、とてもワクワクしています!サンリオのことを知らない人にはサンリオのことを知ってもらえるように、知っている人にはもっと好きになってもらえるように頑張りたいと思います!会社のあんな話やこんな話もしちゃうかも…?ゲームや歌、料理など、いろんなことにも挑戦してみたいと思いますので、応援よろしくお願いします!★なつめれんげ公式SNSアカウント公式Twitter 公式YouTube■サンリオリアル社員Vtuber 「なつめれんげ」プロフィール▲なつめれんげマーケティング本部バーチャル課の若手社員。サンリオの魅力を多くの人に知ってもらい、サンリオのキャラクターがより輝くことを目指して活動している。チャームポイントは3段のパンケーキ。「めれんげくん」と呼ばれる。特技はモノマネ、バイオリン、謎かけ、短歌。将来の夢はエンターテイナーになること。ドーキハチミツが大好きな妖精若手社員。配信のサポーター。めれんげくんの甘い匂いに誘われてサンリオに入社。ハチミツを摂取しすぎて、最近スーツのボタンが食い込み気味。(c)’21 SANRIO著作(株)サンリオ
2021年10月12日SDGsの5つ目の目標である、「ジェンダー平等」とは、性別に関係なく、すべての人が平等に様々な機会を得られる、という考え方。それは個人の幸せはもちろん、国の発展にも繋がるといわれています。今の日本にとって、実は大きな課題です。先進国であり、経済大国といわれている日本。しかしジェンダーという指標で見ると、この国の印象はまったく違うものに。「日本は、政治家や会社経営者など、意思決定の場にいる女性の人数がとても少なく、先進国の中では最もジェンダーが不平等。男性リーダーが作ったルールで構成される社会では、自分らしく働き生きたいと思う女性の自己実現はなかなか難しいのが現実です」と話すのは、ジャーナリストの治部れんげさん。日本をより良い国にするために、若い女性にこそジェンダー問題を知ってほしい、と言います。「本来、人は、自分がやりたいことを、好きなようにできる、それが望ましい姿です。性別によって可能性を狭めることのない社会が、“ジェンダー平等のある社会”。今の仕事、ファッション、メイクなど、自分が選んでいるものは、“本当に私が好きで、やりたくて選んでいるものなのか?”ということを、ぜひ一度自問自答してみてください。もしかしたら、親や周囲の人、あるいは社会からの、“女の子だからこうしたほうがいいよ”“女の子にそれは無理だよ”という言葉やプレッシャーによって、選ばされているのかもしれません。おかしいな、と思ったら、ぜひその疑問を掘り下げてみて。みなさんのその行動が、平等な社会への第一歩になると思います」ジェンダーとは…ジェンダーとは、生まれたときに診断される生物学的な性別を示す「セックス」とは別の、“社会的、文化的に形成される性差”。男だからこうすべき、女だからこれはダメというような押し付けや、性別にまつわるカテゴリー分けのこと。ジェンダー・ギャップに関する背景を知ろう。最近“ジェンダー・ギャップ指数”という言葉を耳にするが、これは経済、政治、教育、健康の各分野で、男女差がどのくらいあるのかを示す数字。153の主要国と重要国中、日本はなんと121位。とても低い位置で、男女格差が大きい国として認識されている。「他国が国の成長に女性の力が不可欠であることに気がつき、女性の登用を増やし、“女性が自己実現しやすい国”に変わる一方で、日本はほとんど改善がなされず、他国の躍進もあり、ここ数年ますます順位を落としています。結果、人口は減り続け、経済もここ30年ほぼ成長していません。改善のためにはまずは現状を知り、世界からいかに後れを取っているか、危機感を抱くことが大切です」(上智大学教授・三浦まりさん)文化的背景女性ならきっと、今までの人生の中で“女の子なんだからするべき”という言葉をかけられた経験があるはず。「ジェンダー・ギャップが大きい場合、“性別における役割”が文化として定まってしまい、結果“その性別”であるだけで未来が狭まり、好きに生きることができません。わかりやすく言うと、“総理大臣は男がなるもの”と周りに言われたら、総理大臣になりたいという夢を抱く女の子が自然にいなくなってしまうということです」制度的背景例えば夫婦別姓を選択できない、あるいは男女に賃金格差があるなど、国の政策や企業内の制度で、予め不平等を内包しているものもある。「女性のほうが正社員への門戸が狭かったり、また“男性の靴は自由、でも女性はヒールで”という規則がある会社も。他にも諸外国に比べてピル入手のハードルが高く、女性が自分の体を自分で守れないという問題も。疑問を掘り下げると根っこにジェンダーが関わっていた、ということは案外多いんです」MISSION女性の就業率は上がったものの、女性議員やリーダーを増やすことが急務に。社会の中の問題を発見し、解決するためのルールを作ったり、あるいは改正する。それが世の中を良くするためのプロセスですが、意思決定する場所に携わる人間のうち、男性の比率が極端に高いと、女性が困っている問題に目がいきづらく、女性に寄り添ったルール作りが難しくなる。「今の日本は、まさにその状況。女性が困っている、女性がそれは違うと思っている問題を可視化し、そのためのルール作りをするには、政治だったら議員、会社だったら役職者など、リーダーといわれる席に座る女性の数を増やすことが一番の近道。女性政治家が増えたからって何が変わるの?と思うかもしれませんが、例えばDV防止法や育児・介護休業法など、女性の権利を守る法律が立法されてきたのは、声を上げた女性議員がいたからなんです」KEYWORD:ジェンダー・ギャップ指数日本は先進国で最下位…。不平等な国に生きる私たち。各国の、政治や経済などのトップリーダーが集まり、世界情勢の改善に取り組むことを目的とした国際機関〈世界経済フォーラム〉が、’06年より公表しているレポート。数値が1に近いほど、男女格差がなく、’19年12月発表データで1位のアイスランドは0.877。一方121位の日本は0.652。初回の’06年以来0.007しか上がっていない。先進国では最下位、さらに新興国を含めてもかなり低い順位。KEYWORD:マミートラック気がついたら出世コースから勝手に外されていた…?!子育てをしながら働く女性が、キャリアアップとは縁遠いコースに追いやられてしまうこと。「本人は、産休前同様バリバリ働きたいのに、責任がある重要な仕事を割り当ててもらえず、経験が積めない。例えばその後“管理職になりたい”と思っても、“経験が足りないから却下”となってしまう。“家事・育児は女性の仕事”という刷り込みをなくし男女が平等に担うようになることが、解消の第一歩」KEYWORD:ガラスの天井女性のキャリアアップを阻む、見えない壁の比喩表現。’16年、米大統領選挙でトランプに敗北したヒラリー・クリントンが、“最も高くて硬いガラスの天井は打ち破れなかった”と言い、一般的になった言葉。「女性頑張れと言う割に、男性と肩を並べようとすると、現状で利益を得ている人たちが作った見えない天井によって、押し戻されてしまう。一朝一夕で割れるものではないからこそ、少しずつみんなで力を合わせてヒビを入れていくことが大事」じぶ・れんげジャーナリスト。出版社を経て現職。著書に『「男女格差後進国」の衝撃無意識のジェンダー・バイアスを克服する』(小学館)、『炎上しない企業情報発信ジェンダーはビジネスの新教養である』(日経BP)が。みうら・まり上智大学法学部教授。女性議員を増やすためのトレーニングを提供する、一般社団法人「パリテ・アカデミー」の共同代表を務める。著書に『日本の女性議員どうすれば増えるのか』(朝日新聞出版)など。※『anan』2021年4月7日号より。イラスト・石山さやか(by anan編集部)
2021年04月03日カンヌ国際映画祭・ある視点部門に正式出品され大きな話題となるも、本国アルジェリアでは未だに公開には至っていない映画『パピチャ 未来へのランウェイ』。本日10月11日は、国連が採択する「国際ガールズ・デー」。エンターテイメント業界でも、ジェンダー・ギャップの問題などの課題に対して、女性自らが率先して声をあげる出来事も少なくない。この日に合わせ、自分なりの方法で社会や制圧と向き合っていく少女たちの姿を描くシスターフッドの物語の幕開けを告げる本作の本編冒頭映像が解禁された。本作の舞台は1990年代、アルジェリア。ファッションデザイナーを夢見る大学生のネジュマ(リナ・クードリ)は、親元を離れ大学寮で暮らしている。夜はルームメイトで親友でもあるワシラ(シリン・ブティラ)とナイトクラブに繰り出すのが楽しみのひとつ。その夜もネジュマとワシラは、寮の部屋からこっそり抜け出し、ナイトクラブに向かうために待たせていた白タクの元へと走っていく。ふたりはタクシーに乗るや上機嫌にゴージャスなドレスに着替え始めるが、運転手は「この車はキャバレーじゃないぞ」と完全に呆れた様子。ネジュマがお気に入りの曲をかけながら見るアルジェの街は、いたるところがネオンで照らされ、車や人々が行き交い、眠らない街の賑わいを感じさせる一方で、ラジオからは武装グループによる襲撃事件を伝えるニュースが流れ、イスラム教のモスクでは大勢の人が礼拝をしている様子など、この街を覆う現実も伝わってくる。そして突然、銃を携えた男たちによる検問に気が付いた運転手が「音楽を消せ」と告げると、ふたりは持っていた布で急いで身体を覆った――。ムニア・メドゥール監督は、「“あの時代を描きたい”というのが出発点だった。海外では1990年代のテロ映像を目にすることは多いけど、実際の生活は知られてない。だからこの映画ではアルジェリア社会の内側を見せたかった」と言う。「その中心は少女たちの小さな世界、繭のように心地のいい女性たちの世界。彼女たちを中心に当時の闘いを描きたかった」と本作への想いを語っている。ネジュマがタクシーのカセットデッキにかけた曲は、1989年に発表され、日本でもヒットしたテクノトロニックの「ゲット・アップ/Get Up (Before The Night Is Over)」だ。監督は「脚本を書いている時から、音楽は1990年代のものを使うと決めていた。アルジェリアの若者たちは、世界中のほかの国の若者と同じ音楽を聴いていた。彼らと同じヒット曲を聴いて踊り、お祭り騒ぎをしてた」と自身のアルジェリア時代の思い出を語る。物語が進むにつれ彼女たちを巡る抑圧が日に日に増していく中でも、ネジュマとワシラは輸入品であふれる布地店でお気に入りの服を買う。寮の部屋には好きなアーティストのポスターが並び、自由に恋もする。ほかの国の若者たちと同じように青春を謳歌しているのだ。そんな彼女たちを巡る状況を知ることができる、躍動感あふれるオープニングシーンとなっている。また、ネジュマたちのファッションショーを行うという“選択”にちなみ、日本の多くの選択を前にしている方たちに向け<自分らしく生きるための選択>をするための背中を押す一助になることを願い、本作公式noteにおいて“選択”をテーマにしたエッセイ連載企画「マイ・チョイス-わたしがした、自分らしく生きるための選択」が本日始動。筆者には、企画に賛同した各界のトップランナーとして活躍する方々が多数参加。第1弾として、2015年に「ナイルパーチの女子会」で第28回山本周五郎賞を受賞した小説家の柚木麻子氏によるエッセイ「『守りたい』の殺意」が掲載中。今後も伊藤詩織(ジャーナリスト)、北原みのり(作家・ラブピースクラブ代表)、治部れんげ(ジャーナリスト)ら10名以上による、“選択”にまつわるエッセイを掲載していくという。『パピチャ 未来へのランウェイ』は10月30日(金)よりBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2020年10月11日●男性議員の育休に批判が出る「窮屈な国」NPO法人ファザーリングジャパンは1月18日、「どうなる? 議員の育休~永田町が変われば、日本の子育て・WLBが変わる~」と題した緊急フォーラムを東京都・日本橋にて開催した。フォーラムには、育休の取得を宣言している自民党・宮崎謙介衆議院議員をはじめとして、過去に男性として育休を取得してきた成澤廣修・文京区長、青野慶久・サイボウズ代表取締役社長らが出席。国会議員の育休取得が社会にどのような変化をもたらすのかについて議論を交わした。○目立つ人が育休を取得すれば空気が変わる「少子化が進んで、女性の社会進出も進む中で、男性の育児参加をやっていかなくてはいけない。私が目指すものは、日本の風土を変えること、雰囲気を変えること、制度を充実させていきたいということ」。冒頭の宮崎議員のあいさつを皮切りに、この日開かれた緊急フォーラムは始まった。「国会議員の育休の是非を問う会ではない」という今回のフォーラムでは、参加者が、宮崎議員の育休取得宣言とその反響から読み取れる社会の現状や課題について語った。司会者からはじめに意見を求められたのは、2010年に育児休業を2週間取得した経験を持つ成澤廣修・文京区長だ。成澤氏は「育休の取得を宣言したとき、"男は外で仕事、女は家を守るべき"と批判されたことがあり、性別役割分担意識がまだこの国に根付いているのかと思った。宮崎さんの問題提起については大賛成で、子どもとママにしっかり向き合ってほしい」とエールをおくった。一方で、「大事なのは、男性議員の育休を制度化することが目的ではなくて、働き方の見直しをしっかりやって、どうしたら男性も女性も家事に取り組むことができるのか議論をすること」とも提言。子育てしやすい柔軟な働き方を考えることが大事だと訴えた。また、これまでに3度の育休を取得しているサイボウズの青野慶久・代表取締役社長は「目立つ人が育休を取得すれば空気が変わる」と自らの経験をもとに、宮崎議員の育休取得宣言を評価。「3人目の子どもがうまれた去年、半年間16時退社をしていた。社長が最初に帰宅するので、時短で働いている社員も元気良く退社できる。この会社では子育てをしてもいいんだという空気ができる」とその効果を語った。○女性はずっと直面してきた問題だ会場では、野党である民主党の議員も議論に加わった。選挙で落選し、浪人中に育児を経験したという民主党の寺田学衆議院議員は、「宮崎さんが育休を取りたいと言ったことに国会内や世の中から批判が来るのをみて、窮屈な国だなと思った。その根底に何があるのかと思うと、育児に対する社会的な地位がものすごく低くて、男性が取りたいなんていうと、そんなの女性にやらしとけばいいだろうっていう全体の空気があると思う」と分析。その上で「1カ月どっぷり育児に専念してほしいし、歳費は堂々ともらってほしいと思う。歳費をもらわなかったら、育休を取ることに対する後ろめたさの現れになってしまう」と主張した。これらの男性の意見を受けて、女性の立場から発言したのが経済ジャーナリストの治部れんげ氏だ。「日本はこれから人口を増やしたいんでしょ? 子どもを育てることが大事なことだと認められるべき。国会議員という大事な仕事より、自分の子どもの方が大事に決まっている。こんな簡単なことを議論しなければいけないということに腹が立った」と憤りをぶつけた。そして、「女性はずっと直面してきた問題だ。私より少し上の世代は、産むか仕事かの選択を迫られた。仕事を辞めるか、マタハラにあうか、子どもを産まない、家族を持たないという選択をしてきた。その立場に今、男性がさらされるようになってきた。だから男性にがんばっていただきたい。絶対に育休を取ってください」と訴えた。さらに、病児保育サービスなどを運営しているNPO法人フローレンスの駒崎弘樹・代表理事は、「試されているのは宮崎議員だけじゃない。ここで、宮崎議員の苦闘を高みの見物をして面白いねと笑っているだけでは社会はアップデートされない。男性も子育てに参加し、社会で子どもを育むことができる未来がほしいんだということを高らかに言っていきたい」と、この出来事を人ごととして捉えるのではなく、当事者意識を持ってほしいと語った。●議論を受けた宮崎議員の決意とは○育休取得は乗り越えられるリスク議論の中では、男性議員の育休取得に対するバッシングについて、登壇者から多くの意見が寄せられた。経営者としての目線でサイボウズの青野氏は、「今回の問題について批判している経営者がいるが、勘のいい経営者は(育休に理解を示す)方針転換をしている。子育て環境を整備することで人を採用しないと、事業を縮小しないといけないって気づいている。これからは頭の切り替えられなかった会社が沈没していくのをみていくことになると思う。だから今育休を取得することは、乗り越えられるリスクであると確信しています」と理解を示した。またNPO法人マタハラネットの小酒部さやか・代表理事は、「マタハラの被害者として顔や名前を出したときもすごいバッシングがあった。しかしそれ以上に応援メールも届いたし、無言の賛同がたくさんある。黙っているけれど心の中で賛同している人がたくさんいると思うので、バッシングをばねにがんばってほしい」と励ました。同じ衆議院議員である寺田氏は本質的な国会議員の仕事について意見を述べ、「国会議員はそれぞれが抱えた問題意識を解決することが求められていると思う。宮崎さんが育休をとって、育児のつらさや当事者意識を持って、制度を考えていこうと進めていくのが本質的な議員の役割だ」と訴えた。○育休取得は働き方改革の中の1つ最終的に、育休取得の議論は「子育てをしやすい働き方を考えるべき」という方向へと移っていった。少子化ジャーナリストの白河桃子氏は「日本は進撃の巨人の世界のように、3つの壁に囲まれている。性別役割分業、長時間労働、仕事こそが一番尊いという3つがあって、その中で窒息しそうになっている」と指摘。成澤文京区長は「東京都の認証保育所は13時間以上保育。そういう子育てを日本は引き続き求めていくのか。延長保育や早朝保育を使わなければ、結果的に可処分所得も増える。子育てにとって幸せな社会になるように、働き方の見直しが必要だ」と訴えた。これらの議論を受けて、駒崎氏は「男性の育休は、働き方改革のコンテクストの中の1つ。多様な働き方ができる社会を考える上で育休がある。時代時代に合わせた働き方をデザインしていくという発想がすごく必要だし、あるべき働き方は何なのかっていう議論につなげていきたい」と話をまとめた。最後に「育休を取得すると宣言したという中で、知らないこともいっぱいあった。多くの方からいろんな意見をもらい、重たい議席を預かっているということを再確認しつつ、どんな仕事をしなければいけないのかっていうことはしっかり考えてやっていきたい。皆さんと共に日本の未来につながることをやりたい」と話した宮崎議員。今回の問題が1つの騒動として終わるのではなく、子育てしやすい環境づくりにつながる機会になることを切に願う。
2016年01月20日原油価格が暴落している。1バレル100ドル以上だったのが、一年もたたず40ドル台に下降。落ち着いたかと思われたが、ここにきて遂に40ドルも割り込み36ドルまで再び急落。日本国内のガソリン価格も5年ぶりの安値だ。私は、スイス銀行時代に「NYMEX」という原油取引所でトレーダーを体験していたので、さっそく現場の後輩たちと話しをした。結局、今回の原因は、ウイーンで開催されたOPEC(石油生産国の団体)総会で、価格が下がっているのに、減産で合意出来なかったことが引き金になっています。それでも「イスラム国が、原油生産施設を狙う行動に出れば、さすがに生産に支障が生じて上がるかも」という声も聞かれる。ただ、米国はシェールという新たな原油生産が開発。いまや、ロシアと世界一を争うほどの生産国になった。中東の原油に依存する体質が劇的に変わっている。中東、ヴェネズエラ、ナイジェリアなどのOPEC加盟国は、内部分裂でそれぞれの国が勝手に増産に走っている。イラン、イラクが生産再開・増産という見通しも効いており、その結果、需要は景気がさほど良くないので伸び悩む中、生産量は増加の一途。当分、原油価格は高くならないだろう。これは一見、主婦にとっては良いニュースだが、もし旦那さんが石油関連のお仕事だったりすると、お給料・ボーナスが減ったり、はてはリストラにもなりかねない。石油会社の大型合併の話も出始めている。原油の下げも100ドルが70ドルに下がる程度なら、良い影響のほうが優るが、とはいえ程度の問題で、30ドル台まで暴落すると、企業破たん・株価暴落などの悪影響も大きく出るだろう。主婦と言えど、必ずしも、喜べない状況になるのだ。特に、原油輸出が国家財政を支える中東諸国では、原油販売収入が減ると、ただちに社会保障費も削減ということになる。社会不安・失業問題も悪化して、怖いのは、それがテロを生む土壌になってしまうことだ。金の価格も原油が下がると影響を受ける。ただ、金と原油の決定的な違いは、金は産業用素材とおカネと言う二面性があるが、原油にはおカネの側面がないこと。景気が悪いときは原油の需要が減る一方、金は資産として、景気が悪く株が下がりそうな時に逆に買われる傾向がある。更に、生産面では、原油は液体なので、海底油田でも、ドリルで穴をあければ、噴出してくれる。しかし、金鉱石は固体なので、1トンの鉱石を海底に穴を掘り、そこから陸揚げするだけでも、とほうもないコストがかかる。しかも金鉱石1トンから採れる純金量は僅か3グラム! 原油に比べて、金は生産量が容易に増えないのだ。価格も原油は一年で100ドルが40ドルまで暴落するようなことがあるが、金は例えば一年で1000ドルが400ドルまで下がることは考えられない。そんなに下がったら、赤字操業になり、鉱山会社が生産減らすか、閉山してしまうからだ。今回も原油価格急落の過程で、金は上がったり下がったり。それほど変わらず、原油より遥かに安定的に推移している。○読者アンケートにご協力ください「25歳のあなたへ。これからの貯"金"講座」では、より充実した記事作りのために、内容に関するご意見・ご要望をお聞きする読者アンケートを実施しています!→アンケートに答える←○著者プロフィール●豊島逸夫豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表。2011年9月末までワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラーとなる。豊富な相場体験をもとに金の第一人者として素人にも分かりやすく独立系の立場からポジショントーク無しで金市場に限らず国際金融、マクロ経済動向についても説く。またツイッターでも情報発信している。○【連載】25歳のあなたへ。これからの貯”金”講座25歳。仕事や私生活それぞれに悩み不安を抱える年齢ではないだろうか。そんな25歳のあなたへ、日本を代表するアナリスト・豊島逸夫とウーマノミクスの旗手・治部れんげがタッグを組んだ。経済と金融の最新動向をはじめ、キャリア・育児といった幅広い情報をお届けする特別連載。こちらから。
2015年12月11日フェイスブックCEOのザッカ―バーグ夫妻に女児が誕生した。名前はMaxちゃん。記念に彼は、保有自社株の99%を段階的に生涯かけて新設立するチャリティー基金に寄付すると発表。時価円換算でざっと5兆4千億円相当。やることが、「パネェ」というか、カッコいいね~~。まず、今後3年間、毎年10億ドル相当を基金に移すとのこと。同社株価は現在107ドルだ。同氏は、FB上で、「私の娘へ」と題する長文のレターも公開。写真つきで、娘への気持ちと、親の世代としての責任を切々と書いている。この書き込みに直ぐに反応している人たちが、マイクロソフトのビル・ゲイツ夫人やフェイスブックのシェリル・サンドバーグ女性COOなど同業の著名人たちだ。あいついで「おめでとう」コメントしている。なお、ザッカ―バーグCEOは当面、議決権は維持するとのこと。○親が子を思う気持ちは同じそこで思い出した。世界的な著名投資家ジムロジャーズ氏は、私との対談で、買っている金(ゴールド)は全て娘たちへ残すため、と明言していた (ちなみに、ジムは70歳を超して、娘二人は10歳未満! ) 。娘が成人になるころ、世界がどうなっているのか、世界に名を成すプロ投資家でも見当がつかない。だから、なにが起こっても価値が残るモノを残したいという思いがあるのだろう。私が働いていたスイスでは、娘のために、誕生日ごとに記念写真と金貨一枚をアルバムに貼る習慣があった。30歳で結婚するとすれば、30枚の成長の記録写真と金貨30枚で分厚いアルバムになる。それを、嫁ぐ前の晩に贈るのだ。「嫁ぎ先が傾いたり、嫁いびりにあったり、困ったときには、この金貨売って凌ぎなさい」という言葉を添えて。嫁ぎ先のことを、あれやこれや心配する親の気持ちは日本もスイスも同じことなのだ。インドでは、嫁ぐ娘に、大ぶりのゴールドジュエリー(重い!)一式を父から娘に、文字通り持参「金」として持たせる習慣もある。そういう文化的習慣があるので、インドは世界最大の金需要国だ。ザッカ―バーグ夫妻も、インドのお父さんも、気持ちは同じなのだと思った。ザッカ―バーグ氏のほうは、約5兆円相当をチャリティー基金として、娘が育つ社会を良くするために使いたいという発想だけどね。なにかと殺伐とした経済の世界のなかで、久しぶりに心温まる話題だった。○読者アンケートにご協力ください「25歳のあなたへ。これからの貯"金"講座」では、より充実した記事作りのために、内容に関するご意見・ご要望をお聞きする読者アンケートを実施しています!→アンケートに答える←○著者プロフィール●豊島逸夫豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表。2011年9月末までワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラーとなる。豊富な相場体験をもとに金の第一人者として素人にも分かりやすく独立系の立場からポジショントーク無しで金市場に限らず国際金融、マクロ経済動向についても説く。またツイッターでも情報発信している。○【連載】25歳のあなたへ。これからの貯”金”講座25歳。仕事や私生活それぞれに悩み不安を抱える年齢ではないだろうか。そんな25歳のあなたへ、日本を代表するアナリスト・豊島逸夫とウーマノミクスの旗手・治部れんげがタッグを組んだ。経済と金融の最新動向をはじめ、キャリア・育児といった幅広い情報をお届けする特別連載。こちらから。
2015年12月04日仕事柄、今回のテロ事件の映像をたくさん見ていると、あることに気がついた。それはIS(Islamic State)とアルカイダの違いだ。○絶句するISテロメンバーの親たちアルカイダは本部・支部が指令系統で動く中央集権的組織。資金力もあり、911のような大規模テロを綿密に計画して時間をかけ実行する。対して、ISは組織図が不明瞭で、地方分権的な集団だ。少人数のテロリストグループが無作為に各地に形成され、殺戮行為を繰り返す。標的も、サッカー場から街中のレストラン、そして民間ロシア機に至るまで、多様化している。ゆえに「次の標的」を特定しにくい。場合によっては、イスラム教徒を巻き込む可能性が高くても、無機質に実行に及ぶ。その点、アルカイダは、イスラム教徒に危害が及ぶ状況は避ける傾向があった。更に、ISは、少人数で無作為に動くので、国境警備の網をすり抜けやすい。そして、ISのテロリストは、両親が自慢の息子だったりする。家庭内で自分の部屋に引きこもり、ジハード思想に染まり、過激化してゆく過程で、家族でさえ気が付かない事例も少なくない。まさか、と絶句する母の顔が映った映像が忘れられない。息子は、親孝行な29歳だったという。家庭内の様子も、普通の中産階級の構えだ。アルカイダはというと、組織で動くので、犯行後に何らかの足跡を残す場合がある。ゆえに、アルカイダの摘発には警察機構の強化が有効だが、神出鬼没でモグラ叩きの様相を呈するIS掃討作戦には軍隊の助けが必要になる。最近は、アルカイダとISの間で、若者リクルート合戦が展開されている印象も強い。「テロリスト希望者求む」なんて洒落にもならないが、リクルート用のPRビデオを見ると、この世の楽園のごとき光景が広がるISの(自称)社会が、キレイに仕上がった映像に纏められている。貧困・差別にあえぐ若者の心に響くのだろう。今後も、この二つのテロ集団に、他のグループも混じり、テロのリクルート競争が激化してゆきそうだ。○なぜ起きた? トルコによるロシア機撃墜なお、今回のトルコによるロシア機撃墜は、ISとの関連もさることながら、両国独自の理由が背景にあるようだ。まず、現場の地形だが、トルコ領土がシリア領土に対して半島の如くつきだしている。その半島型の先端近くをロシア機が侵犯したか否かで両国の言い分が異なるわけだ。客観的に見ると、ロシア機が、その半島型の先端部を通過する時間は約17秒とされる。従って、判定も困難で、狙い撃ちもかなり難しい状況だったようだ。それでも、両国には譲れない事情があった。まずロシア側。現地近くの反政府勢力に多くの外国人傭兵が混じり、かなりの部分がコーカサス地方出身(特にチェチェン人)で占められている。チェチェン人といえば、ロシア支配に最後まで強硬に反抗したツワモノとして知られる。ロシア側から見れば、彼らをここで徹底的にたたき、かりにもロシア国内に異分子として侵入することがないように自衛措置を講じる必要があったのだろう。一方、トルコ人の同胞であるトルキスタン人が同地域に居住。トルコ側は、「いとこ」達を守る必要があったわけだ。結局、ロシア、トルコともに、今回の事件に限っては、ISの事は二の次。まずは、自国の利害優先で動いたといえる。思想的問題に民族問題、そして原油の利権などがからむことが、シリア情勢の読みを難しくしている。金も中東では相変わらず人気が高い。「無国籍通貨」として購入・保有されている。米国に対する憎しみが強いので、米ドルは持ちたがらず、敵国の通貨扱いだ。ユーロも未だ不安をかかえるので、金が選択される。シリア国内の惨状を見るにつけ、中東の人たちが実物の金に強い愛着を持つ気持ちも分かるような気がする。NYの投機筋がどれほど先物で金を売りまくっても、中東の人たちはここぞとばかり金を買い集める。金を買う余裕がない人たちは、銀を買う。銀は「貧者の金」と呼ばれ、中東でも根強い人気があるのだ。○読者アンケートにご協力ください「25歳のあなたへ。これからの貯"金"講座」では、より充実した記事作りのために、内容に関するご意見・ご要望をお聞きする読者アンケートを実施しています!→アンケートに答える←○著者プロフィール●豊島逸夫豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表。2011年9月末までワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラーとなる。豊富な相場体験をもとに金の第一人者として素人にも分かりやすく独立系の立場からポジショントーク無しで金市場に限らず国際金融、マクロ経済動向についても説く。またツイッターでも情報発信している。○【連載】25歳のあなたへ。これからの貯”金”講座25歳。仕事や私生活それぞれに悩み不安を抱える年齢ではないだろうか。そんな25歳のあなたへ、日本を代表するアナリスト・豊島逸夫とウーマノミクスの旗手・治部れんげがタッグを組んだ。経済と金融の最新動向をはじめ、キャリア・育児といった幅広い情報をお届けする特別連載。こちらから。
2015年11月27日エッフェル塔、ルーブル美術館も一時閉鎖された。今回のパリ同時テロの標的に、「ソフト・ターゲット」と言われる街角のレストランなどが含まれたことで、完全に無差別攻撃への移行が明らかになったからだ。アルカイダでさえイスラム教徒が混じる可能性を考慮して避けていた標的まで狙われたことで、テロがエスカレートした感は否めない。犯行現場近くには、「外出禁止勧告」を無視して、多くのパリジャンが「We are not afraid(私たちは恐れない)」と、花束を持ち集まった。しかし、誰かがなにかの拍子に悲鳴をあげた瞬間に、集団心理の恐怖感が伝染して、パニック的に広場を逃げ回るという一幕もあった。トラウマはまだまだ残りそうだ。更に、シリア・パスポートを所持して、ギリシャから「難民」としてEU内に侵入したとされる容疑者の事例も重い。そもそも、ギリシャの難民受け入れ体制が脆弱だ。指紋をとっても書類に残るだけで、デジタル化されデータ・ベースとして中央保管されていない。かたちばかりの尋問で、シリア出身と認定されれば、「経済的移民」ではなく「戦闘地域からの難民」として受け入れられる。国境警備の公務員数も削減されている。かねてから、テロ分子が、この実質的抜け穴を悪用する可能性は危惧されてきた。今回の容疑者も、ギリシャ上陸後、数日でセルビアに入国が記録されていると現地では報道されている。しかも、ひとたびEU内に入れば、シェンゲン協定により、域内の自由な移動ができる。とはいえ、一部の東欧諸国は難民危機の中で国境に鉄条網を敷くなどの自衛措置を講じ、今回は、フランスが国境を閉鎖した。これは、域内移動の自由というEUの根幹を揺らがす事態だ。○人口の7%を占める、フランス国内のイスラム教徒また、ベルギー・コネクションの深い関わりが明らかになったが、ベルギー当局とフランス当局の間の情報共有が充分ではなかったことも徐々に明らかになりつつある。EUにはFBIにあたる組織がないのだ。当局の体制にも限界がある。イスラム過激派とみられる人物が域内に5000人はいると見られているが、そのひとりひとりを警備することは出来ず、優先順位をつけて対応せざるを得ない。今回、既に発表されたフランス国籍の容疑者は、逮捕歴もあり、指紋がコンサート・ホールに残されていたことで特定された。いっぽう、フランス国内のイスラム教徒は、人口の7%を占める規模だが、刑務所の服役囚総数では70%にのぼるとされる。貧困、失業、差別の中で、宗教的差別感が醸成されてきた。イスラム教教徒の女性が、頭からすっぽりかぶって全身を覆い隠す衣装の「ブルカ」を公共の場で着用することを禁じる法案も、様々な議論を呼んだが依然存在する。そして、フランス政府は、さっそくシリア国内でイスラム国主要拠点のラッカのテロリスト訓練施設などに対して報復的空爆を開始した。さすがに、報復合戦のエスカレートを米国・ロシアも懸念し始めたのか。トルコのG20会場からの画像では、オバマとプーチンが珍しく片隅で座って話し込む光景が見られる。シリア停戦に向かって話し合いは始まったが、アサドの処遇を巡る対応の差が埋められるか。双方とも譲れないレッドラインだけに、楽観はできない。○難民に混じり侵入するイスラム国イスラム国も成熟化してきた。リビアが、彼らにとって、「セーフ・ヘイブン(安全な港)」となり、イタリア経由での難民に混じる可能性も指摘されている。EU,そしてG20での断固とした共同対応が不可欠となっていることは間違いない。セーフ・ヘイブンという用語は、国際金融で、米国債や金(ゴールド)・円などの「安全資産」という意味で使われてきた。マーケットへの影響としては、安全資産へのマネー逃避が顕在化しそうだ。更に、米利上げ時期が来年に延期される可能性も出て来た。テロに敏感な米国の消費者への影響が、クリスマス商戦を控え、避けられないからだ。既に米国小売の企業業績は悪化。13日に発表された小売売上高は0.1%増で市場予測を下回り、さえない。個人消費はGDPの7割を占めるので、注目されている。最後に、いま、世界中の若者たちが、大きなショックを受けている。イスラム国は、思想(イデオロギー)という無形のルートで世界中に拡散する可能性をひめるので、他人事ではないからだ。イスラム教への偏見は、益々強まるだろう。残虐なテロ行為と宗教の自由との狭間で重い課題を突き付けられた。直ぐに答えが見つかるような問題ではない。最大の犠牲者を出したコンサート・ホールで、米国ロックバンド公演を見に来ていた父と子がテレビのインタビューに出ていた。10歳前後と思われる男の子に、「死体の上を歩くなんて、どういう気持ちだった」という無神経な質問。でも、冷静な口調で「それは、怖かったよ」と語っていた。しっかりした息子を信じているからこそテレビの取材にも応じたのだろう。息子の応答をじっと見つめる父の表情が印象的だった。○読者アンケートにご協力ください「25歳のあなたへ。これからの貯"金"講座」では、より充実した記事作りのために、内容に関するご意見・ご要望をお聞きする読者アンケートを実施しています!→アンケートに答える←○著者プロフィール●豊島逸夫豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表。2011年9月末までワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラーとなる。豊富な相場体験をもとに金の第一人者として素人にも分かりやすく独立系の立場からポジショントーク無しで金市場に限らず国際金融、マクロ経済動向についても説く。またツイッターでも情報発信している。○【連載】25歳のあなたへ。これからの貯”金”講座25歳。仕事や私生活それぞれに悩み不安を抱える年齢ではないだろうか。そんな25歳のあなたへ、日本を代表するアナリスト・豊島逸夫とウーマノミクスの旗手・治部れんげがタッグを組んだ。経済と金融の最新動向をはじめ、キャリア・育児といった幅広い情報をお届けする特別連載。こちらから。
2015年11月25日フォルクスワーゲンは、米国の顧客に、プリペイドカードで1000ドルの金銭補償すると発表した。リコール(無償の回収・修理)に加えて、直接的金銭補償という異例の対応だ。慰謝料でも払っておかないと、米国では集団訴訟でどれだけの金額の損害補償を求められるか、見当もつかないので、「示談」のごとき意味合いの措置のようだ。有害な窒素酸化物NOxを吸わせてしまって、もうしわけない。これでひとつ、なんとか、というわけか。○来年いっぱいは「現状でお構いなし」いっぽう、欧州では、窒素酸化物の許容排出上限を最大100%引き上げ、排ガス試験合格を簡単にすることで、事態を乗り切ろうとしている。しかも、実験室内ではなく、実走行での排ガス試験への移行は2017年。来年いっぱいは、現状でお構いなしという措置だ。現行モデルは、許容レベルの7倍に上るNOxを排出しているので、この汚染物質により「数千人の人を殺す決断と解釈することもできる」とまで、お堅い英フィナンシャルタイムズが書いている。その背景には、「EUの遺伝子ともいえる生産者のカルテル」志向があるという。更に、VW社の特殊な企業性も問題視されている。株主構成を見ると、52.2%がポルシェ家とピエヒ家という「同族企業」だが、20%をサクソニー州が持つ「公営企業」でもある。更に17%はカタールの政府系ファンドで、オイルマネーも受け入れている。しかも、取締役の半数は労働組合出身者に割り当てられている。従って、今回のような企業の存続にかかわる一大事になっても、人員カットのリストラは出来ない。その結果、世界の自動車販売数で、900万―1000万台のレベルで、トヨタと一位の座を争ってきたのだが、VW社がトヨタの倍の従業員数をかかえる。(VW593,000人 vs トヨタ344,000人)。今回のVWスキャンダルの背景には、同社の極めて特殊な企業体質があるのだ。○異常な事態足元では、ディーゼル車からガソリン車まで疑惑が拡大して、ポルシェやアウディの高級車にも偽装があったようだ。なお、この影響で、自動車排ガス清浄化触媒に使われるプラチナ・パラジウムの価格が急落。プラチナ価格が金価格より安いという異常な事態になっている。プラチナカードのステータスがゴールドカードより低くなってしまった。これは、どうみてもおかしい。長期的には、この価格逆転現象は解消されよう。○読者アンケートにご協力ください「25歳のあなたへ。これからの貯"金"講座」では、より充実した記事作りのために、内容に関するご意見・ご要望をお聞きする読者アンケートを実施しています!→アンケートに答える←○著者プロフィール●豊島逸夫豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表。2011年9月末までワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラーとなる。豊富な相場体験をもとに金の第一人者として素人にも分かりやすく独立系の立場からポジショントーク無しで金市場に限らず国際金融、マクロ経済動向についても説く。またツイッターでも情報発信している。○【連載】25歳のあなたへ。これからの貯”金”講座25歳。仕事や私生活それぞれに悩み不安を抱える年齢ではないだろうか。そんな25歳のあなたへ、日本を代表するアナリスト・豊島逸夫とウーマノミクスの旗手・治部れんげがタッグを組んだ。経済と金融の最新動向をはじめ、キャリア・育児といった幅広い情報をお届けする特別連載。こちらから。
2015年11月17日11月11日は中国で「独身の日」。日本のバレンタインのように商業化されたイベントで、特にネット販売業者が破格のバーゲンセールを行う。今年は例年になくヒートアップして、最大手アリババ集団は、なんと1.7兆円相当を一日で売り上げた。そこで、私がアドバイザリーを務めてきた中国の大手商業銀行や取引所に勤める若手社員たちに、「独身の日」の意味を聞いたところ、二つの答えが返ってきた。まず、結婚する前に「独身時代を謳歌する日」。この意図が商業化されビッグイベントになった。次に、独身時代に終止符を打ち、いよいよ婚姻登録する日。婚姻登録所に長蛇の列が出来るという。更に、独身にサヨナラしたくても出来ない人たちのために上海市は2011年から「届婚恋博覧会」と銘打ち、いわゆる婚活イベントを開催してきた。背景には、一人っ子政策で、結婚願望はあるが独身の身に甘んじている男性が増えてきたという人口動態が指摘される。特に女性胎児の中絶が増えた結果でもある。このイベントは第一回目から数万人規模で開催され、知り合いの30代前半の若手行員も参加してきた。親同伴も目立つという。中国では男性間の競争が激しく、マイホーム購入が結婚の前提とされる。そこで彼も、住宅購入のために貯金に励んできた。結婚が決まるまでの期限付きでその資金を株で短期運用してきたが、御多分にもれず、上海株暴落局面でかなり目減りしたと嘆く。性格は至って真面目なのだが、職場結婚も日本ほど一般化しておらず、未だに伴侶に恵まれていない。「いまや独身の日といっても、アリババの株価を支える商業的手段」と、金融関係者らしいコメントで語る。友人たちもまとめ買いしているが、粗悪品を掴まされた例も珍しくないという。返品を要求しても、「粗悪品と認定される証拠書類を出せ」と挙証責任を要求され、泣き寝入りのケースが多いようだ。○「独身の日」特需の意味とは?中国政府は一人っ子政策を廃止して、二人っ子政策に切り換えたばかり。一人っ子政策は、産み過ぎで人口が多すぎて国として養えない時代の発想だが、いまや中国も少子高齢化が進み、経済成長を維持するため労働人口を増やさねばならない状況になった。とはいえ、「二人っ子政策に転換といっても、現状の婚活男女比の偏りが直ちに解消されるわけではない。結婚して第二子まで許されても、中国経済がハードランディング(バブル破たん)すれば、それどころではないだろう」と、経済知識のある銀行員は冷静に将来を見通している。独身の日セールといっても、ぜいたく消費は一部の勝ち組に限られる。普段から倹約して必要品を廉価でまとめ買いするという傾向が強い。「マクロ的に消費拡大とは言いかねる」と経済的評価も厳しい。銀行員ゆえ、国民の所得格差、企業の「デフレ・マインド」、不良債権の実態などを「知り過ぎて」いるのだろう。すなわち、「独身の日特需」の意味とは、単に将来の消費の先食い現象なのかもしれない。更に、独身の日「大バーゲンセール」は、中国経済のデフレを象徴する出来事ともいえる。10月卸売物価はマイナス5.9%。消費者物価上昇率も1.3%に留まる。一時は6%を超えてインフレ懸念と言われたが、さま変わりだ。モノの値段が上がらないと、企業の売上も増えず、生産を減らし、将来に向けての設備投資も控える。リストラも始まり、消費者の財布の紐も締まる。だから、独身の日のバーゲンセールに殺到する。住宅も売れず、在庫がたまるばかり。まさに、デフレの負の連鎖なのだ。なお、経済が悪化しても、金に対する文化的愛着は変わらないのが中国。北京の最新ショッピングモールでも、入り口の一等地に、スタバ、マクドナルド、そしてチャイナ・ゴールドという全国1000店以上の金チェーン店が並ぶ。経済が不安だからこそ、人民元より現物の金に頼るのだろう。○読者アンケートにご協力ください「25歳のあなたへ。これからの貯"金"講座」では、より充実した記事作りのために、内容に関するご意見・ご要望をお聞きする読者アンケートを実施しています!→アンケートに答える←○著者プロフィール●豊島逸夫豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表。2011年9月末までワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラーとなる。豊富な相場体験をもとに金の第一人者として素人にも分かりやすく独立系の立場からポジショントーク無しで金市場に限らず国際金融、マクロ経済動向についても説く。またツイッターでも情報発信している。○【連載】25歳のあなたへ。これからの貯”金”講座25歳。仕事や私生活それぞれに悩み不安を抱える年齢ではないだろうか。そんな25歳のあなたへ、日本を代表するアナリスト・豊島逸夫とウーマノミクスの旗手・治部れんげがタッグを組んだ。経済と金融の最新動向をはじめ、キャリア・育児といった幅広い情報をお届けする特別連載。こちらから。
2015年11月13日日本でも、テレビなどで、欧州の難民危機が報道されるようになった。内戦状態で、米国とロシアが空爆を続けてきたシリアから400万人もの難民がトルコなど隣国に流入。しかも、国内に残る国民の半分は戦闘で住む家を失っている。その難民が、トルコ→ギリシャ→東欧諸国を経て、ドイツを目指し、「民族の大移動」中だ。海を渡る途中で溺死した少年の写真は、世界中にショックを与えた。メディアでも、様々なエピソードが書かれているが、9月25日の毎日新聞の「金言」というコラムに、編集委員氏が書いた話には、心を打たれた。パリ駐在中にインタビューした、アルメニア人の著名映画監督が、難民出身だったという話だ。トルコ内のアルメニア人弾圧で多くの犠牲者が出るに及び、4歳のとき、父が亡命を決意したという。「困窮からではなく、生命が脅かされての亡命だった」と語る。いまのシリアと同様だ。以下、抜粋。出国時、トルコ政府は身の回り品の携帯しか認めず、母はお金を小さな金塊に換え、一つひとつ布に巻いて服に縫いつけ、ボタンに見せた。これがフランスのマルセイユ港についた時の一家の全財産だった。「入国事務所での光景は今も鮮明に覚えている」と言った。一家の書類を精査する係官の持ったゴム印が宙で止まっている。それを不安げに見守る両親。印が押されると入国可。そうでないとトルコに戻される。「ゴム印が押されたとき、両親の安堵のため息が聞こえたと思った」とも。後に字が読めるようになって分かったが、印は「無国籍」とあった。引用終わり○スイスにおける「金塊」とは布に巻かれてボタンに見せた金塊。金は「無国籍通貨」といわれる。おカネなのだが、紙幣と異なり発行国がない。だから、発行国がギリシャみたいに破綻しても、価値は保たれる。その価値は国境を越え、世界的に認知されている。中東のエピソードだが、砂漠で水がなくなり、通りかかったキャラバンの商人に水を求めたところ、代金を金で払ってくれれば、売ると言ったという話だ。私はスイス銀行で長く勤務したが、スイスという国は、まさに難民の国だ。宗教迫害などで隣国を追われた多くの人たちが、着のみ着のまま、金貨だけを持ってスイスに逃げてきたという。チューリッヒでスイス銀行の同僚の家庭に夕食に招待されると、食後、おじいちゃんやおばあちゃんが、「これが、ご先祖がスイスに来たとき持っていた金貨だよ」と見せてくれることが、しばしばあった。今では「家宝」として、代々受け継がれ、もし万が一、家が傾くような「家庭内有事」が起こったときには、この金貨を換金して、当座を凌ぎなさい。それ以外に、この金貨を売り払うことはあいならぬ、という先祖の言い伝えがしっかり守られてきたという。こういうエピソードが、日本の数十年後まで考えると、決して他人事とはいえない。アジアの中の日本という厳然たる事実を、私もヒシヒシと噛みしめている。まずは、日本が国際協力の一環として、難民受け入れをすることになろう。そうなると、来日した難民から、今回紹介したようなエピソードがいろいろ流れてくると思う。○読者アンケートにご協力ください「25歳のあなたへ。これからの貯"金"講座」では、より充実した記事作りのために、内容に関するご意見・ご要望をお聞きする読者アンケートを実施しています!→アンケートに答える←○著者プロフィール●豊島逸夫豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表。2011年9月末までワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラーとなる。豊富な相場体験をもとに金の第一人者として素人にも分かりやすく独立系の立場からポジショントーク無しで金市場に限らず国際金融、マクロ経済動向についても説く。またツイッターでも情報発信している。○【連載】25歳のあなたへ。これからの貯”金”講座25歳。仕事や私生活それぞれに悩み不安を抱える年齢ではないだろうか。そんな25歳のあなたへ、日本を代表するアナリスト・豊島逸夫とウーマノミクスの旗手・治部れんげがタッグを組んだ。経済と金融の最新動向をはじめ、キャリア・育児といった幅広い情報をお届けする特別連載。こちらから。
2015年11月11日安保法制の枠組みで、日本の若者が戦争に巻き込まれるリスクが現実化した。20代の男子の人生は、まだ50・60年はあるだろう。その間に、日本が周辺国で勃発した戦争の影響を直接的に受ける事態はいくらでも想定できる。現に、南沙諸島を巡る米中関係が急速に悪化してきた。南シナ海での領有権を主張し、人口島を作り、明らかに軍事目的と思われる3000メートル級の滑走路まで建設してしまう。中国は、周辺の海を「領海」と見なすが、米国は「公海」だとして駆逐艦を派遣する。なんとも危険な「瀬戸際外交」だ。偶発的戦闘状態が、まず危惧される。ただ、今ここで事を荒立てて一番困るのは当事国の米国と中国だ。米国はリーマンショックという大病の後遺症からようやく立ち直り、いよいよ金利をゼロにしてまで経済を守るという異常な政策から卒業しつつある。極めて重要な段階ゆえ、そこで中東に加え新たな戦争状態に入れば、経済的負担にとても耐えきれない。退院宣言された患者がぶり返し再入院みたいなことになる。中国は、これまでの高経済成長のツケが一挙に噴出して、公害・医療・年金など社会福祉の遅れが一般消費者を直撃している。上海株も暴落して、多くの個人投資家が虎の子を失った。そんなときに、戦争状態に入れば、自分で首を絞めるようなものだ。ただ、オバマ大統領は中東で「弱腰外交」との不名誉なレッテルを貼られている。残り少ない任期終了までに何とか「起死回生の一手を打ちたい」との思いが強い。一方、習近平中国国家主席も、自ら領海と主張する海域に、米国軍艦をみすみす通過させるようでは、面子丸つぶれとなる。国民にも示しがつかない。睨み合いが長期にわたり続きそうな情勢だ。すなわち、南沙戦争という最悪の事態も長期的に見れば絵空事と片づけることは出来ないということだ。○ランド研究所のレポートに記された”戦争”現に、軍事関係では最も権威ある米国のランド研究所が、南沙戦争についての分析を250ページにものぼるレポートに詳細にまとめている。まず、南沙諸島を巡る米中軍事能力を比較すると、2010年には米国優位であったが、2017年には、ほぼ拮抗すると結論づけている。そのシナリオは極めて具体的だ。例えば、南沙攻撃の際に使用される基地のひとつが沖縄嘉手納米軍基地。そこに、中国のDF-21Cというミサイルを6発から9発を打ち込めば、同基地の滑走路に、直径10メートルのクレーターができて、基地が8時間閉鎖される。クレーターが5メートルならば閉鎖は4時間と予測している。このDF-21Cミサイルから飛散する小爆弾群は、ロケットの力を借りずとも、超高速度でコンクリートを貫通する能力を持つ。滑走路攻撃用弾頭なのだ。南沙諸島から1300キロ圏には、中国軍が9基地を持つという。対して、米軍側の南沙諸島の滑走路攻撃と、中国軍戦闘機の駐機場攻撃の実戦的シナリオが詳細に検証されている。私は金の専門家なので、戦争が勃発すると「有事の金が買われる」ゆえ、南沙諸島の問題を詳しく調べる立場にある。しかし、読者の皆さんにしてみれば、長い人生の中でアジアの中の日本がいつ戦争に巻き込まれるか分からない状況のなかで、いかに生活を守るために、個人的な自衛措置を講じるか、考えざるを得ない時代になった。まずは、なんといっても自らの命と家族を守る手段を考えておく必要があろう。次に、生活のためには財産を守ることも必須だ。欧州の人たちは、自然な形で、金(ゴールド)を保有することで、資産保全する術を体得した。日本人にはそういう発想はないだろう。しかし、南沙諸島を巡る緊迫が尖閣諸島に及べば、いよいよ他人事ではなくなる。だから、金を買えなどと煽る気は一切ない。ただ、有事の備えについて考えてみる時代になったことだけは間違いない。戦争反対を叫び続けるだけでは、自分の生活は守れないのだ。○読者アンケートにご協力ください「25歳のあなたへ。これからの貯"金"講座」では、より充実した記事作りのために、内容に関するご意見・ご要望をお聞きする読者アンケートを実施しています!→アンケートに答える←○著者プロフィール●豊島逸夫豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表。2011年9月末までワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラーとなる。豊富な相場体験をもとに金の第一人者として素人にも分かりやすく独立系の立場からポジショントーク無しで金市場に限らず国際金融、マクロ経済動向についても説く。またツイッターでも情報発信している。○【連載】25歳のあなたへ。これからの貯”金”講座25歳。仕事や私生活それぞれに悩み不安を抱える年齢ではないだろうか。そんな25歳のあなたへ、日本を代表するアナリスト・豊島逸夫とウーマノミクスの旗手・治部れんげがタッグを組んだ。経済と金融の最新動向をはじめ、キャリア・育児といった幅広い情報をお届けする特別連載。こちらから。
2015年11月06日日本時間5日朝6時過ぎにフェイスブックの7-9月決算が、売上高、純利益とも四半期ベースで過去最高更新との結果が発表された。一株当たりの利益が事前予測の52セントを上回る57セント。絶好調ともいえるフェイスブック株だが、12年5月18日に4億2100万株もの新規株式公開(IPO)したときは、散々な結果だった。公開価格は38ドル。公開直後に瞬間タッチで45ドルまでつけたが、その後、20ドル台を低迷した。当時、投資とは無縁の大勢の人々がフェイスブックを使っていることで、株式上場に興味を持った。その結果、多くの初心者個人投資家が、フェイスブック新規公開株の買いに動いた。しかし、彼らの夢は無残にも打ち砕かれた。相次ぐ「フラッシュクラッシュ(瞬時の急落)」現象や、取引所のシステム不備の事例などで、株式市場への不信感が募った時期だったのだ。しかし、フェイスブック株価は13年後半から一転上昇を開始。現在の100ドル台の水準まで、ほぼ一直線で約4倍上がっている。そもそも、ネット関連事業はマネタイズ(収益を生む)が難しいセクターとされてきた。しかし、フェイスブックは様々な付加価値を生むアイディアを実現させ、広告収入も増やした。今回の決算発表でも、ザッカ―バーグCEOは、フェイスブックの動画プラットフォームが、今や1日80億回の閲覧数を記録していることを強調している。更に、今後の目玉はAI(人口知能)機能。目が不自由なユーザーでも、アップロードされた画像を「閲覧」できる、質疑応答会話機能を開発している。○フェイスブックと郵政上場の共通項翻って、今回の郵政上場は先端企業フェイスブックの対極にある巨大国営企業の民営化だ。しかし、郵便局という庶民層に深く浸透しているネットワークが発行する株式ということで、これまで投資とは無縁だった人たちが興味を持ったという点では共通項がある。更に、今後は持続的に収益を成長させるための事業展開が、株価の決め手になることも同じだ。いっぽう、上場時の景色は全く異なる。郵政上場は絶好調の滑り出しを見せた。しかし、フェイスブック上場は、過去最大級のIPO売買高に、取引所のシステムがパンクして、顧客からは「売買の注文がとれない」などの苦情が殺到するほどの混乱となった。IPO引き受け会社主幹事モルガン・スタンレー・スミス・バーニー社が、公開価格を死守するため、初日大引け間際の投資家からの売り注文を「全買い」で死守した。とはいえ、IPO幹事証券団は手数料として1億ドルほど得たと米メディアは報じた。個人投資家にとって「後味の悪い新規公開」となったのだ。それに比べると今回は、同じ「鯨」級の上場だが、オールジャパンの幹事証券団がスクラムを組み、国の後押しで、スムーズに事は運んだ。ただ、かんぽ生命株は初日ストップ高で終わるなど、フェイスブックとは対照的に高値圏からの展開が始まったことになる。「これまで投資とは無縁であった人たち」は、売るべきか、持ち続けるべきか、心の葛藤を経験していることだろう。首尾よく高値圏が維持され、更に巡航速度で株価水準が切り上げってゆくシナリオが長期的に見ると理想的だ。その結果は、ひとえに、成長力の実現にかかっている。初心者投資家も、企業の稼ぐ力を見抜く目を養わねばならない。○初心者がいだく不安の正体ラグビーに例えれば、ゲーム開始直後から幸いなことに「アドバンテージ」を得た。とはいえ、今後のゲーム展開は、ターンオーバーされることもあろう。ラグビーは集団競技だが、個人投資家は孤独の戦いを強いられる。幸運な初心者株主は、「アドバンテージ」を生かし、まずは、株式投資についてのお勉強に励むべきだろう。初心者のいだく不安は、殆どの場合、知識不足による「未知への不安」なのだ。じっくり学んでから、次の一手を打っても、遅くはない。「今回は乗り遅れたが、なんとか私もIPOパーティーに参加したい」と考え始めた初心者たちよ、株についての基礎知識をまず蓄えたうえで参入しても、決して遅くはない。そのことをフェイスブックの事例は示している。○読者アンケートにご協力ください「25歳のあなたへ。これからの貯"金"講座」では、より充実した記事作りのために、内容に関するご意見・ご要望をお聞きする読者アンケートを実施しています!→アンケートに答える←○著者プロフィール●豊島逸夫豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表。2011年9月末までワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラーとなる。豊富な相場体験をもとに金の第一人者として素人にも分かりやすく独立系の立場からポジショントーク無しで金市場に限らず国際金融、マクロ経済動向についても説く。またツイッターでも情報発信している。○【連載】25歳のあなたへ。これからの貯”金”講座25歳。仕事や私生活それぞれに悩み不安を抱える年齢ではないだろうか。そんな25歳のあなたへ、日本を代表するアナリスト・豊島逸夫とウーマノミクスの旗手・治部れんげがタッグを組んだ。経済と金融の最新動向をはじめ、キャリア・育児といった幅広い情報をお届けする特別連載。こちらから。
2015年11月05日郵政三社超大型上場の前評判が上々であることは承知していたが、かんぽ生命がストップ高で引けたとなると、過熱気味の印象はぬぐえない。上場初日、売り出し価格を50%以上上回る水準で、なお買い注文が続くという現象。しかも、後場は日経平均の上値が重く息切れしている。このような市場環境で、なお買い続ける「本尊」は誰なのか。少なくとも、オーソドックスな株式投資家の動きとは思えない。仕手株化の匂いが漂う。トレンド・フォローのCTA(コモディティー・トレーディング・アドバイザー)などの仕掛けが考えられる。今年は惨憺たる運用実績で今月の決算期を迎えるヘッジファンドも、一発逆転のチャンス到来とばかりに、意気込んでいる。○それこそヘッジファンドの「カモ」だ気になるのは「一日で5割以上の上げ」に惹かれて集まってくる初心者投資家集団の動きだ。これをキッカケに「コツコツ投資」を始めるのであれば、健全な流れだが、昨日講演した投資セミナーの後で質疑応答を受けた参加者たちのなかには、「一獲千金」の誘惑に駆られて郵政上場に期待を寄せる初心者たちが多かった。それもシニアだけでなく、若い世代の参加者が目立った。側で心配げに見守る妻の姿が印象的だった。「投資はそんなに甘いものではない」と思わず肩を叩いたのだが、長年の勘で、誰が何と言おうと、この人たちは変わらないだろうと思った。たぶん彼らは、「講師は諌めていたが、やっぱり旨い投資話はある」と確信してしまったのではあるまいか。それこそ、ヘッジファンドの「カモ」になるまいか。○コツコツから始めよこのような異常な熱気に包まれると、それぞれ個人の本性があらわになるものだ。用心深い性格であれば、まず、引いてしまう。しかし、「肉食系投資家」タイプは、沸々と体内から湧いてくるアドレナリンを制御できなくなるものだ。なにを隠そう、トレーダー時代の筆者が、まさにその典型だった。こんな偉そうなことを書いてはいるが、いまだに、市場が荒れると、カラダがほてってくる。まだ修業が足りないと思う。ただ、12年間NYやチューリヒの市場最前線で、相場の修羅場をくぐりぬけてきた体験があるので、リスク耐性だけは身についている。湧き出るアドレナリンを制御しつつ、努めて冷静に判断する術は心得ているつもりだ。明日以降、市場に参入してくるかもしれない「にわか株式投資家」たちには、やはり、「コツコツから始めよ」と説いてゆきたい。○著者プロフィール●豊島逸夫豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表。2011年9月末までワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラーとなる。豊富な相場体験をもとに金の第一人者として素人にも分かりやすく独立系の立場からポジショントーク無しで金市場に限らず国際金融、マクロ経済動向についても説く。またツイッターでも情報発信している。○【連載】25歳のあなたへ。これからの貯”金”講座25歳。仕事や私生活それぞれに悩み不安を抱える年齢ではないだろうか。そんな25歳のあなたへ、日本を代表するアナリスト・豊島逸夫とウーマノミクスの旗手・治部れんげがタッグを組んだ。経済と金融の最新動向をはじめ、キャリア・育児といった幅広い情報をお届けする特別連載。こちらから。
2015年11月04日経済危機のギリシャに行ってきました。さぞかし荒廃しているかと思いきや、温暖な地中海性気候でエーゲ海に太陽がふりそそぎ、これが財政破たんした国か?と疑問に感じてしまうぐらいに穏やかな雰囲気。とはいえ前回訪問したときに比べてあきらかにシャッター街が増えていました。街角には”金買い取りショップ”が雨後の筍みたいにあちこちに出来ています。日本だとデザインが古くなったゴールド・ジュエリーを換金処分してお小遣い稼ぎ……みたいなイメージがありますが、アテネは全く雰囲気が異なります。母から譲り受けた思い出の金ネックレスを明日のパンを買うために泣く泣く手離す。そんな辛い場面が多いのです。そんなところで「あ、やっぱりこの国は破産したのだ」と実感しました。なんというかこれも「家庭内有事の金」の使い道なのでしょうか。ちなみに金買い取り業が今やギリシャで数少ない成長産業だそうですよ。○ギリシャ国内は、勝ち組と負け組に残酷なほど二極化家庭訪問もしました。お父さんは英語の先生。お母さんは公務員(古美術品修復の専門家。ギリシャらしい)そして子供がなんと4人。長女が26歳で、人懐っこく英語で話しかけてきました。聞けば「ギリシャ国内では就職も出来ないから、ロンドンかフランクフルトで働くつもり」。それで英語を特訓中とのこと。「心残りはアテネに残る父母と妹弟たちです」としんみり語っていました。このままだとギリシャは国全体が過疎化しますね。ただ、国民全員が飢えに瀕しているのかといえば、そうではありません。勝ち組と負け組に残酷なほど二極化しています。イソップ物語で例えれば”アリとキリギリス”。ユーロや金を普段からコツコツ貯めてきたアリさんたちは、生活水準を引き下げて、なんとか暮らしてゆけます。どうにもならず、教会の慈善事業のお世話になる羽目になっているのが、キリギリスさんたち。将来に備え普段からコツコツ貯めていた人と、ただ漫然と生活してきた人の差がここまで厳しく現実になろうとは。正直、私もショックでしたよ。件の26歳の長女も「自分はたまたま恵まれた家庭に育ったが、それでも6人家族が生活するのは、今のギリシャでは簡単ではない」と言っていました。友達には負け組の家族も多いそうで、そういう人たちは将来の見通しが全く立たないのだそうです。○日本の若者たちも、コツコツ貯めて自分を磨き鍛えるために投資をこれは「日本にとっても他人事ではない」と思いましたね。なんせ財政赤字の比率はギリシャより日本のほうが悪いのですから。1100兆円という途方もない借金を抱えた日本。少子高齢化の中で、その負の遺産を今の20代の若者たちが引き継ぐことになります。日本は、産業基盤がギリシャとは比べものにならないくらいに堅固なので、国が沈むことはないでしょう。しかし親の作った借金の山を返済するという辛い巡り合わせになってしまったことは事実です。せめて、移民を受け入れる風潮になれば米国みたいに力強い国になれるのですが……。以前お会いした30代のワーママは、娘を敢えてインド系のインターナショナル・スクールに通わせていました。百戦錬磨のインド人と対等にわたりあえる人材になれば世界を相手にたくましく商売でもなんでもできる。その発想に共感しました。20代の日本人の若者たちにも、一度アテネに行って実態を見て肌で感じて欲しいと思ったほどです。コツコツ貯めて、自分を磨き鍛えるために投資する、という発想も必要ではないでしょうか。○著者プロフィール●豊島逸夫豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表。2011年9月末までワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラーとなる。豊富な相場体験をもとに金の第一人者として素人にも分かりやすく独立系の立場からポジショントーク無しで金市場に限らず国際金融、マクロ経済動向についても説く。またツイッターでも情報発信している。○【連載】25歳のあなたへ。これからの貯”金”講座25歳。仕事や私生活それぞれに悩み不安を抱える年齢ではないだろうか。そんな25歳のあなたへ、日本を代表するアナリスト・豊島逸夫とウーマノミクスの旗手・治部れんげがタッグを組んだ。経済と金融の最新動向をはじめ、キャリア・育児といった幅広い情報をお届けする特別連載。こちらから。
2015年05月08日「米国から逃げ出せ!(Get out of the US!)」「米国はもはやベストな選択ではない」最近、ヘッジファンドたちと話していると、しきりに聞かれるコメントです。具体例としては、カリスマ的存在のデビッド・アインホーン氏率いる大手ヘッジファンドのグリーンライト・キャピタルが米国株ショート(空売り)を増やしています。投資家向けレターの中で、「今年は米国企業の業績が縮む可能性が強い。米国株銘柄で売り対象は見つけやすいが、買い対象となると、限定的。あっても買いのタイミングが遅きに失する場合が多い」と述べているのです。欧州中央銀行(ECB)量的緩和をテコに買われてきた欧州株に高値警戒感が強まり、ギリシャ不安で売られると、米国株も引きずられるという、共倒れリスクさえ意識され始めました。そこでマネーはどこに流れるのでしょうか。足元で最も派手に上げているのが中国株ですが、なにせ、初心者個人投資家主導なので、一たび売りに走るときの集団行動パターンを考えると、やはり引いてしまいます。その点、日本株は、ROE重視・株主還元など質的向上が安心感を生んでいます。今回のミニ調整局面でも、海外マネーはTOPIX指数中心にしっかり安値を拾っていました。日経平均2万円本格突破の推進力になったことは間違いありません。長期マネーの代表格米年金基金はTOPIX選好度がお好みです。例えば、運用規模3位のカルスターズ(カリフォルニア州教職員共済年金基金)は、昨年からCIO自身がTOPIX買いを明言するほどです。そして、新興国株も、「米国株こう着状態が続く限り」という条件付きながら、買い直される傾向が見られます。米国出口戦略によるマネー引き揚げの悪影響を最も受けやすいセクターですが、既に売り切られ、買いの値ごろ感が生じています。EMEという新語も最近はやり始めました。エマージング・マーケット・エコノミーの略語です。たまたま、NY連銀ダドリー総裁の20日の講演原文を読み込んでいたら(希望的ながら年内利上げあり、との見出しが市場で材料視された講演)、「EME」という単語が20回も使われていました。ちなみに、「FOMC」は12回しかありません。。ヘッジファンドのレベルでは、トルコ・ブラジル・韓国などの国名が、見直し対象として挙がっています。かくして、短期ホットマネーは、米欧日新興国と循環的に回遊しますが、長期米国年金マネーは、米国株の運用配分を減らし国際分散運用傾向を強めているのです。日本株が上がると、個人投資家に心理的余裕が出て、「株の儲けで金でも買ってみるか」という行動が目立っています。○著者プロフィール●豊島逸夫豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表。2011年9月末までワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラーとなる。豊富な相場体験をもとに金の第一人者として素人にも分かりやすく独立系の立場からポジショントーク無しで金市場に限らず国際金融、マクロ経済動向についても説く。またツイッターでも情報発信している。○【連載】25歳のあなたへ。これからの貯”金”講座25歳。仕事や私生活それぞれに悩み不安を抱える年齢ではないだろうか。そんな25歳のあなたへ、日本を代表するアナリスト・豊島逸夫とウーマノミクスの旗手・治部れんげがタッグを組んだ。経済と金融の最新動向をはじめ、キャリア・育児といった幅広い情報をお届けする特別連載。こちらから。
2015年04月22日バンク・オブ・アメリカ・メリル・リンチ社のファンド・マネージャー調査(4月)が14日に発表され、ウオール街の話題になりました。日経平均2万円タッチの直前、4月2-9日に177名の欧米ファンドマネージャー(運用総額60兆円近く)を対象に実施された調査なので興味をひきます。○やる気ムンムンなマネージャーが倍増?気になる日本株は「お気に入り」(favorite)と表現され、既に充分日本株を買っている人たちが3月の36%から4月は38%にコツコツ増えています。更に、これから日本株を買うよ、という欧米投資家が3月の10%から、4月の22%へ倍増しました。やる気ムンムンですね。ただ、気になるのは円相場の見方。2月には、円高と見るより円安と見る人たちのほうが12%上回っていました。ところが、4月の調査では、円高と見るほうが、2%増えて、逆転しているのです。115円方向に行くという見方が、125円方向より優るという実態。たとえば、ギリシャ国債のデフォルトなどが起こると、安全通貨として円が買われやすいと見ているわけです。なお、今年最大の話題といえる米国の利上げ開始時期については、85%の人たちが、年内に利上げありと覚悟しています。但し、過半数が7-9月期前には利上げ無しと見ています。○NY株は割高に、金は割安になお、この調査に金は含まれていませんが、NYのファンドマネージャーたちと私が話していると、「NY株は十分に買われ、割高でバブルの気配さえ感じられる。一方、金は十分に売られたので、割安になっている」というコメントが増えています。ギリシャのデフォルトなど緊急事態に備えようという発想ですね。決して急がず、コツコツ割安感のある金も買い増してゆくという姿勢。世界マネーの流れの潮目に変化の兆しが見られます。○著者プロフィール●豊島逸夫豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表。2011年9月末までワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラーとなる。豊富な相場体験をもとに金の第一人者として素人にも分かりやすく独立系の立場からポジショントーク無しで金市場に限らず国際金融、マクロ経済動向についても説く。またツイッターでも情報発信している。○【連載】25歳のあなたへ。これからの貯”金”講座25歳。仕事や私生活それぞれに悩み不安を抱える年齢ではないだろうか。そんな25歳のあなたへ、日本を代表するアナリスト・豊島逸夫とウーマノミクスの旗手・治部れんげがタッグを組んだ。経済と金融の最新動向をはじめ、キャリア・育児といった幅広い情報をお届けする特別連載。こちらから。
2015年04月17日15日に中国1-3月期GDP実質成長率が前年同期比7%と、6年ぶりの低い水準まで落ち込んだことが発表されました。でも、日本から見れば7%成長なんて、夢のまた夢みたいな良い数字ですよね。ところが、現地の空気を吸っていると、その衝撃の大きさが実感できるのです。私は、2002年から、上海の金取引所や現地の大手商業銀行のアドバイザーとして招へいされてきました。その間、中国経済成長の実態を内部から見てきました。○あたかも経済が止まっているかのごとき錯覚に…そこで感じる7%を例えていえば、高速道路から一般道路に降りたときのスピード感覚とでもいいましょうか。それまで120キロでぶっ飛ばしてきたのが、スピード制限60キロの道に入ると、あたかも止まっているかのごとき錯覚に襲われます。同じように、年率10%成長に慣れきった中国人たちは、7%まで減速するだけで、生活実感としては、あたかも成長が止まったかのような感覚に陥ってしまうものなのです。そこで怖いのが消費者心理。「先行きがやばい!」と感じると、途端に財布の紐が締まってしまいます。ただでさえ、中国には年金制度などあってないも同然ですから、将来への不安で、稼いだおカネは使わずにとっておく傾向が強い。うっかり病気もできません。病院の診察券がプレミアムつきで闇取引される社会ですから。そこに輪をかけて「景気が悪い」と考えると、貝みたいに閉じこもり症候群になってしまうわけです。中国経済に限っては、コツコツ成長というシナリオは考えられません。バブルになるか、破たんするか、二者択一です。○中国人は銀行に預けずに「金」を買う皆さんが、もし、そんな状況におかれたら、どうします?多少なりとも蓄えがあれば、とにかく消費せず貯めておこうと考えるのではないでしょうか。そこで、中国人は、どのような行動にでるのか。答えは「金を買う」のですよ。これは調査や統計でも実証されています。日本人であれば、まずは銀行に預けることを考えますよね。「銀行に預けておけば安心だ」と。ところが、中国人は、銀行より金のほうが安全と答える人が多いのです。これ、実際に私が中国で最大の貴金属店「菜百」(北京)の店頭で金を買う人たちに聞いたことです。日本と比べると民族のDNAの違いとしかいいようがありません。中国は3千年の歴史の中で、支配民族・政権が変われば通貨の呼称も変わるということを繰り返し経験してきました。その過程で、価値が変わらなかったのは何かといえば、ずばり「金」。現在流通している「人民元」といっても通貨の世界では歴史はたかだか60年ほど。3000年の歴史と実績を持つ金から見れば「新参者」です。ですから、「金」は「おカネ」という感覚が沁みついているのです。北京で出稼ぎで働く地方から来た労働者たちも、故郷の仕送りに、金のジュエリーを買い込みます。○中国人の自己防衛は「金」を買うことその結果、金の需給統計を見ても、2014年中国経済の減速が加速した年でさえ、中国一か国で世界の年間金生産量3000トンほどのなかから800トン以上を買い込んでいたことが確認されているのです。ちなみに、インドも同じく800トン以上を買いました。この二か国で年間金生産量の55%を買い占めた勘定になります。経済が減速して不安な状況の中国の場合は、バブルになったり、はじけたりすると人民元という紙幣の価値など、どうなるか分からない、という気持ちが強いのでしょう。金を貯めて自己防衛することを無意識の中で実践しているのが中国人ということです。○著者プロフィール●豊島逸夫豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表。2011年9月末までワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラーとなる。豊富な相場体験をもとに金の第一人者として素人にも分かりやすく独立系の立場からポジショントーク無しで金市場に限らず国際金融、マクロ経済動向についても説く。またツイッターでも情報発信している。○【連載】25歳のあなたへ。これからの貯”金”講座25歳。仕事や私生活それぞれに悩み不安を抱える年齢ではないだろうか。そんな25歳のあなたへ、日本を代表するアナリスト・豊島逸夫とウーマノミクスの旗手・治部れんげがタッグを組んだ。経済と金融の最新動向をはじめ、キャリア・育児といった幅広い情報をお届けする特別連載。こちらから。
2015年04月15日