自閉症とは出典 : 自閉症は先天的な発達障害の一つで、社会性と対人関係の障害、コミュニケーションや言葉の発達の遅れ、行動や興味の偏りの3つの特徴があると言われています。世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)では広汎性発達障害というカテゴリーのもと、自閉症という障害名が使われています。一方、2013年に発行されたアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版)において自閉症のという障害名は廃止され、自閉症スペクトラムの障害名のもとに統合されました。そのため、今後自閉症という名称での診断は少なくなることが予想されますが、自閉症という名称は現在も一般的であり、また発達障害者支援法などの法律や文部科学省・厚生労働省などでも使用されています。以上をふまえ本記事では、下記の文部科学省の定義で示されるような概念における「自閉症」についてご紹介します。自閉症とは、3歳位までに現れ、①他人との社会的関係の形成の困難さ、②言葉の発達の遅れ、③興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害であり、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。自閉症の特徴的な3つの症状出典 : 自閉症は3歳頃までに主な症状や特性が現れ、成長するにつれ色々な症状が顕著になります。以下に3つの代表的な症状を説明します。自閉症の方は、対人関係を築くことが苦手なことが多いです。具体的な特徴としては、・目線を合わすことができない・周囲に関心がないように見える・相手の気持ちがわからない・その場の空気が読めないなどが挙げられます。自閉症の方は、会話をしていても目を合わすことが苦手です。無理に視線を合わせようとすると落ち着きがなくなったり、パニックになってしまいます。自閉症の方は環境の変化を敏感に感じることが苦手なため、このように対人関係が苦手だと受け止められてしまいます。自閉症の方はコミュニケーションや言葉の発達が遅れる傾向があります。具体的な特徴としては、・言葉を話すのが他の子と比べて遅い・人の話したことをオウム返しする・抽象的な言葉・比喩や皮肉の意味を理解できない・呼んでも反応しない・自分の話したいことだけ一方的に話すなどが挙げられます。自閉症の方は言葉を話し始めるのが遅く、言葉の意味を理解するのが困難です。言葉を話し始めても、意味のある言葉で会話をするのではなく、誰かの言葉をオウム返ししてしまう場合も少なくありません。相手に自分の気持ちがうまく伝わらず、暴れてしまうこともありますが、正しい対処法をしていれば成長と共に落ち着いてきます。自閉症の方はある一定の行動をとる傾向があります。具体的な特徴としては、・落ち着きがなく、手を動かしたり、部屋の中を行ったり来たりする・毎日決まった行動をし、予定外の行動は取れない・1つのものに執着する・自分の興味があるものに対して、とても執着する・予定外のできごと・初めての人/場所/活動などに抵抗を示すなどが挙げられます。自閉症の人は、自分の興味のあることに対してとことん熱中する傾向があります。なので、自分の興味のある物事をとことん調べ、誰も教えていないのに専門家顔負けの知識を持っている方も珍しくありません。自閉症はいつ分かる?診断の年齢は?出典 : 言語・認知・学習といった発達領域が未発達の乳児では、自閉症の特徴となる症状が分かりにくい場合があります。ですから、生後すぐに自閉症の診断がでることはありません。個人差がありますが、早ければ1歳ごろから症状が現れはじめ、3歳までに何らかの症状が出てくると言われています。一般的には3~5歳ごろに気づくことが多いようです。定期検診の時に医師から専門機関の受診をすすめられる家族も少なくありません。家族が夜泣きや睡眠障害などの症状に気づき、子どもの育てにくさを感じていることが多いです。自閉症はなんらかの症状や困りごとに直面してはじめて障害がある可能性に気づきます。そのため、軽度の自閉症や家族や本人が気付かない場合、大人になるまでわからないこともあります。また、見過ごされたまま困難を抱え苦しんでいる人もいるのです。自閉症と診断されると、対処方法もはっきりしてきます。ですからその後の生活も、様々な特性にあった工夫をしていくことで困難を解決していくことができるようになります。自閉症の診断基準出典 : 専門機関を受診し、問診とコミュニケーション能力・言語の発達を調べるための知能検査・心理検査などを行います。施設によってはMRIで脳の器質的な病気がないか調べたり、脳波を検査しててんかんなどの併存症がないか調べる場合もあります。自閉症の診断基準には、『DSM-5』(アメリカ精神医学会,『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版)や『ICD-10』(WHO, 『国際疾病分類』第10版)といった基準が使われており、検査結果から総合的に判断します。『DSM-5』では、広汎性発達障害の下にあったレット障害を除くすべての障害名が、自閉症スペクトラムという名称に統合されました。そのため自閉症は現在では自閉症スペクトラムという診断名で診断されることが多くなっています。以下はDSM-5にある自閉症スペクトラムの診断基準になります。以下の診断基準において当てはまる項目が多い場合や気になる場合は、専門機関での検査をおすすめします。A. 複数の状況で社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的な欠陥があり、現時点または病歴によって、以下により明らかになる(以下の例は一例であり、網羅したものではない)。(1)相互の対人的・情緒的関係の欠落で、例えば、対人的に異常な近づき方や通常の会話のやりとりのできないことといったものから、興味、情動、または感情を共有することの少なさ、社会的相互反応を開始したり応じたりすることができないことに及ぶ。(2)対人的相互反応で非言語コミュニケーション行動を用いることの欠陥、例えば、まとまりの悪い言語的・非言語的コミュニケーションから、視線を合わせることと身振りの異常、または身振りの理解やその使用の欠陥、顔の表情や非言語的コミュニケーションの完全な欠陥に及ぶ。(3)人間関係を発展させ、維持し、それを理解することの欠陥で、例えば、様々な社会的状況に合った行動に調整することの困難さから、想像上の遊びを他人と一緒にしたり友人を作ることの困難さ、または仲間に対する興味の欠如に及ぶ。B.行動、興味、または活動の限定された反復的な様式で、現在または病歴によって、以下の少なくとも2つにより明らかになる(以下の例は一例であり、網羅したものではない)(1)常同的または反復的な身体の運動、物の使用、または会話(例:おもちゃを一列に並べたり物を叩いたりするなどの単調な常同運動、反響言語、独特な言い回し)。(2)同一性への固執、習慣へのかたくななこだわり、または言語的・非言語的な儀式的行動様式(例:小さな変化に対する極度の苦痛、移行することの困難さ、柔軟性に欠ける思考様式、儀式のようなあいさつの習慣、毎日同じ道順をたどったり、同じ食物を食べたりすることへの要求)(3)強度または対象において異常なほど、きわめて限定され執着する興味(例:一般的ではない対象への強い愛着または没頭、過度に限定・固執した興味)(4)感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さ、または環境の感覚的側面に対する並外れた興味(例:痛みや体温に無関心のように見える、特定の音、感覚に逆の反応をする、対象を過度に嗅いだり触れたりする、光または動きを見ることに熱中する)C. 症状は発達早期に存在していなければならない(しかし社会的要求が能力の限界を超えるまで症状は明らかにならないかもしれないし、その後の生活で学んだ対応の仕方によって隠されている場合もある)。D. その症状は、社会的、職業的、または他の重要な領域における現在の機能に臨床的に意味のある障害を引き起こしている。E. これらの障害は、知的能力障害(知的発達症)または全般的発達遅延ではうまく説明できない。知的能力障害と自閉スペクトラム症はしばしば同時に起こり、自閉スペクトラム症と知的能力障害の併存の診断を下すためには、社会的コミュニケーションが全般的な発達の水準から期待されるものより下回っていなければならない。(『日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』2014年 医学書院/刊P.49より引用)専門機関での診断は受けるべき?どこへ行けばいいの?出典 : 自閉症かな?と感じることがあったとしても判断に困ったり、なかなか受診へ踏み切ることができない場合もあると思います。ですが、適切なサポートを受けられないまま生活していると、最も困りごとに直面するのは本人です。また、自閉症の症状には個人差があります。まずは、気になる症状や困りごとなどがある場合、または子育てや生活を送っていく中で何か不便を感じる場合、年齢に関係なく早めに身近な専門機関へ相談されることをおすすめします。少しでも早く本人の特性に気づいてあげれば、フォローして困難の乗り越え方を手助けすることも可能になりますし、できるだけ生活しやすい環境を整えてあげることもできるかもしれません。それには親や家族で抱え込まず、専門家や周りの人たちの協力を得ながら、その子にあったやり方で接することが大切です。特に自閉症は小さい時からその方に合った療育を行うと、才能を最大限に発揮することのできる障害であることに加えて、生活面でもちょっとしたことを気をつけるだけで、本人や家族のストレスを軽減することができます。いきなり専門医に行くことは難しいので、まずは無料で相談できる身近な専門機関の相談窓口を利用するのがおすすめです。早めに相談し、自閉症に対して正しい知識を付けることが重要です。家族で試行錯誤をして対処法を見つけていくよりも、専門機関に相談し色々な方法を教えてもらった方が、時間もかかりませんし、ストレスも少なくすみます。必要であれば医療機関を紹介してもらうこともできます。子どもか大人かによって、行くべき機関が違うので、以下を参考にしてみてください。【子どもの場合】・保健センター・子育て支援センター・児童発達支援事業所など【大人の場合】・発達障害者支援センター・障害者就業・生活支援センター・相談支援事業所など身近な相談センターに行って相談し、自閉症の疑いがあり、診断を希望すればそこから専門医を紹介してもらえます。自宅の近くに相談センターがない場合には、電話での相談にのってくれることもあります。自閉症を含む発達障害の専門の医療機関は他の病気に比べると少ないですが、発達障害者総合支援法などの施行によって年々増加はしています。医療機関での診断は、子どもの場合は、専門外来のある小児科、脳神経小児科、児童精神科などで行われることが多いです。また、18歳以上の場合は一般的に精神科や心療内科などで診断がなされます。しかし、自閉症を診療できる専門の医療機関はまだまだ少ないのが現状です。また、保健センターなどでは知能検査や適応能力を診断する検査を受けられるところもあります。医療機関で診断を受けるかどうか、決めるのは本人やご両親の判断となりますが、専門機関で相談し、すすめられた場合は、ぜひ医療機関に行き医師に相談しましょう。診断を受けて自閉症だった場合は今後どのように対応していけばいいか聞くことができますし、仮に自閉症でなくとも普段の行動を見直すきっかけになると思います。以下のリンクは発達障害の診療を行える医師の一覧です。日本小児神経学会 「発達障害診療医師名簿」診断の流れ、当日準備していくものは?出典 : 医療機関では、専門医の問診と様々な検査を総合して自閉症かどうか診断されます。何度か診察を重ね、慎重に自閉症かどうかが判断される場合が多いようです。発達障害を診断できる医療機関はまだ数が多くないこともあり、予約をして初診までに1ヶ月以上かかることもあります。それまでの間に問診票を渡されて記入し、初診の時に持っていく場合もあるので、予約を入れた時に必要なものを問い合わせましょう。基本的には専門機関の指示に従ってください。何も指示がなかった時は、どのようなことが問題だと思うのかを伝えるために、今まで記録してきた日記や、問題や気になる行動があればメモにまとめたり携帯で動画を撮って持っていくなど、普段の生活で気になることを、医師に伝えやすいように準備をしていきましょう。まとめ出典 : 自閉症の症状が出て本人が困っているのに、そのまま放置してしまうのは、本人や家族にとって一番避けたいことです。近所の子育て支援センターや掛かりつけの医師に相談するだけで道は開けます。また、保育所や幼稚園に通っているのであれば、担任の先生に相談するだけで、どこに行って相談するべきなのか教えてくれるかもしれません。家族で悩み孤立してしまうのは、誰にとってもいいことではありません。自閉症だということを受け入れるのには時間がかかるかもしれませんが、家族みんな笑顔で過ごせるように、色々な方に話を聞き、色々な方法を試すのはマイナスにはなりません。悩んでいるより行動することでストレス解消になりますし、同じ問題を抱えている方とお話ができれば、いいアドバイスがもらえるかもしれません。地域と家族が障害の特性を理解し、本人にとって生活をしやすい環境を作っていきましょう。
2016年07月18日自閉症とは?出典 : 自閉症は先天的な発達障害の一つで、社会性と対人関係の障害、コミュニケーションや言葉の発達の遅れ、行動や興味の偏りの3つの特徴があると言われています。世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)では広汎性発達障害というカテゴリーのもと、自閉症という障害名が使われています。一方、2013年に発行されたアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版)において自閉症という障害名は廃止され、自閉症スペクトラムの障害名のもとに統合されました。そのため、今後自閉症という名称での診断は少なくなることが予想されますが、自閉症という名称は現在も一般的であり、また発達障害者支援法などの法律や文部科学省・厚生労働省などでも使用されています。以上をふまえ本記事では、下記の文部科学省の定義で示されるような概念における「自閉症」についてご紹介します。自閉症とは、3歳位までに現れ、①他人との社会的関係の形成の困難さ、②言葉の発達の遅れ、③興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害であり、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。出典 : 自閉症の発現時期は分かっているの?出典 : 自閉症は生まれ持った脳機能障害により発現すると考えられています。しかし、その特徴は生まれてすぐに見られないことがほとんどです。脳や心身の成長と共に何らかの症状が出始め、3歳頃までに自閉症の症状が顕著になると言われています。家族が気づかなくても、保育園や幼稚園の先生に指摘されたり、乳幼児健診時に専門機関への受診をすすめられるケースもあります。ですが、周りや本人が症状に気づかない場合など、大人になるまで見過ごされている方もいるようです。つまり、自閉症を引き起こす脳機能障害の素因は先天的に発現しますが、自閉症の症状や特性は発達段階で現れ、それに気づいて初めて診断につながるのです。成長過程で、もしかしたら自閉症なのかも?と疑いを感じたら、身近な専門機関で相談し、必要ならば診断を受けることをおすすめします。相談ができる専門機関とは、児童の場合、各市区町村の保健センター、子育て支援センター、児童発達支援事業所等をさします。大人の場合は発達障害者支援センター、障害者・生活支援センター、相談支援事業所などへ行ってみましょう。相談してみて障害の疑いがある場合には専門医を紹介してもらえます。自閉症の原因は?出典 : 様々な議論が交わされていますが、自閉症の原因はいまだ特定されていません。しかし、何らかの生まれつきの脳機能障害であると考えられており、親のしつけや愛情不足が直接の原因ではないことがわかっています。脳機能障害を引き起こすメカニズムとして、遺伝的な要因の関与の可能性が高いと推測されています。その先天的な遺伝要因にさまざまな環境的な要因が重なり影響しあって脳機能の障害が発現するのではないかという説が有力です。関連する遺伝子や環境要因については、現在さまざまな研究が進められていますが、具体的にはまだ解明されていません。また複数の要因や組み合わせが存在すると考えられます。それらがさまざまな道筋をたどって、その人の自閉症の特性となって現れると言われているのです。そのため全ての人にあてはまる唯一の原因はないとも考えられています。参考書籍:鷲見聡/著『発達障害の謎を解く』(日本評論社,2015)参考書籍:服部 陵子/著『Q&A家族のための自閉症ガイドブック―専門医による診断・特性理解・支援の相談室』明石書店,2011年/刊自閉症は親から子どもへ遺伝するの?Upload By 発達障害のキホン自閉症に関しては、双生児研究や家族間での一致率に関する研究が活発に行われ、現段階で医学的な結論には至っていませんが、自閉症の発現に何らかの遺伝的要因が関係している可能性が高いと考えられます。一卵性双生児のうちの1人が自閉症の場合に、もう1人も自閉症である割合は、報告によって差がありますが91~96%、二卵性では0~24%と、大きな開きがあります。兄弟姉妹では、1人が自閉症と診断された場合その兄弟姉妹が自閉症である割合は一般よりも高く、5~10%くらいと言われています。(服部 陵子/著『Q&A家族のための自閉症ガイドブック―専門医による診断・特性理解・支援の相談室』明石書店,2011年/刊P.19より引用)遺伝子配列が同じ一卵性双生児で一致率が高いことが報告されていることから、やはり遺伝的要因の関与が推測されます。一方で、遺伝子配列が一致していても100%発現するのではないこともわかりました。これは遺伝要因と環境要因の相互影響説の根拠の一つとも言われています。また、これまでの研究で自閉症は単一の遺伝子が原因で起こる「メンデル型遺伝疾患」と呼ばれるタイプではなく、複数の遺伝子の変化が影響して起こる「多因子遺伝疾患」であるとも考えられています。つまり親の遺伝子が単純に子どもに遺伝して自閉症になるわけではないということです。自閉症の遺伝要因は原因の一部にすぎず、よって、親が「自閉症」だからといって、子どもにも100%同症候群が遺伝するとは限らないのです。自閉症のある親から、自閉症ではない子どもが生まれることもあれば、両親とも定型発達の場合でも自閉症のある子どもが生まれることもあるのです。遺伝する正確な確率については、現在のところ不明です。親が自閉症だった場合で子どもも自閉症である確率も、調査によって数値がまちまちで確かな結果は出ていません。このことも、遺伝要因と環境要因の相互影響が複雑で、偶然性に左右される部分が多いことを示唆していると言えるでしょう。自閉症を検査する方法はあるの?Upload By 発達障害のキホン現在の医学では妊娠中の羊水検査、血液検査、エコー写真などの出生前診断で判明することはありません。また、出生後も遺伝子検査や血液検査といった生理学的な検査では診断できません。これは自閉症の原因が完全には解明されておらず、またその原因も複雑で単一ではないと考えられるためです。生理学的な検査方法を確立するのはかなり難しいとも言われています。自閉症の人の多くが幼児の頃から12歳ぐらいの間に何らかの症状をきっかけに専門機関を受診し、医師によって自閉症だと診断されます。診断は問診と心理検査・知能検査などの様々な検査を総合的に判断して行われます。その他MRIを使い脳の器質的な疾病がないかを確認する場合もあります。検査や診察は一度ではなく、何度か行われたうえで慎重に診断が下されることが多いです。自閉症の治療法はあるの?Upload By 発達障害のキホン自閉症を根本的に治す薬や手術などの医療的な治療法は開発されていないため完治することはありません。ですが療育や環境調整を通して接し方や伝え方を工夫したり、二次障害や合併症の症状を緩和させる治療を受けることで、日常生活における本人の生きづらさを解消することができます。幼稚園や保育園、小学校に通うようになると、コミュニケーション能力が不足していることから、どうしても自分の思いをうまく伝えられなかったり、周りから孤立してしまったりと何かと不便を感じることがあると思います。上手にコミュニケーションをはかるためにも、日頃から自分の思いをどう伝えたら理解されるか、パニックにならないように落ち着いて生活するための訓練が必要になります。また、自閉症の子がのびのび生活するためには、周囲の理解と協力が必要不可欠です。パパ・ママはまず本人の性格や特性をよく理解し、根気よく周囲に説明をし続け過ごしやすい環境を整えてあげましょう。出典 : 自閉症は手術や薬などの医学的な方法で完治することはできません。しかし、小さいうちから療育センターに通うことで、精神的・身体的機能に対してある程度の効果が表れるようです。療育とは、以下のように定義されています。療育とは医療、訓練、教育、福社などの現代の科学を総動員して障害を克服し、その児童が持つ発達能力をできるだけ有効に育て上げ、自立に向かって育成することである。療育はできるだけ早く始めると効果が出やすいと言われています。療育センターに通い、お子さんの良い部分を伸ばしましょう。具体的な自閉症の療育方法は色々ありますが、一般的には「言葉や行動を理解しやすくする」「コミュニケーションをとる練習」の2つに大きく分かれます。■言葉や行動を理解しやすくする自閉症の特徴の1つとして言葉を理解するのが難しいというものがあります。この特徴を減らすために、言葉で説明するのと同時に、絵などの視覚的な手だてをつかって説明します。例えば歯磨きをして欲しい時は、「歯を磨きます」と短い言葉で説明し、歯磨きをしている絵を見せます。聴覚と視覚を同時に使うことで、自閉症の人は意味を理解しやすくなります。一度理解してしまうと、同じ時間に同じことをするのは得意なので、問題なく歯磨きができるようになります。この療育方法を繰り返すことによって、できることが増えていきます。■コミュニケーションをとる練習コミュニケーションをとる練習も効果的です。挨拶を繰り返す練習をしたり、幼稚園や小学校についたら先生のところに行き昨日のできごとを話したり、人と関わる練習をしていきます。慣れてきたら簡単な仕事を担当してもらいます。仕事をすると褒めてもらえる、喜んでもらえるなど、色々な感情も同時に感じてもらい、本人の情緒が成長できるように練習を繰り返します。自閉症はまだ原因がはっきりしていない先天性の脳機能障害です。そのため現在の医療で完治させることは難しく、治すための薬も開発されていません。薬が処方されることがありますが、これは自閉症そのものを治すための薬ではなく、不安障害を抑える薬や、パニックを抑える薬など、自閉症の症状を緩和するためのものです。その他にも医師によって個人に合った薬を処方されますので、信頼できる医師に困っている症状を相談し、服薬で改善されるのか、それとも療育方法で改善できるのかを確認しましょう。薬物療法は医師の指示のもと用法や用量を守って服用していかなくてはいけません。薬に頼り切って多用するのは避けましょう。薬の服用により特徴が緩和されている時には療育や教育の効果も上がりやすくなるとも言われています。自閉症の原因は一つではありませんUpload By 発達障害のキホン自閉症の原因はいまだわかっておらず、現在研究されています。自閉症の原因は一つではなく、人それぞれだという説が主流となりつつあります。また、母親の愛情不足やコミニュケーション不足が原因で発現はしないことははっきりしています。もし、身近な家族が自閉症と診断されても、家族の責任ではないのです。自閉症の原因やメカニズムが解明されれば、今後治療法なども発見される可能性もあるかもしれません。そのため多くの研究者が様々な研究を進めています。ですが、個々のケースにとって自閉症の原因をあれこれと考え悩むことは、子どもの成長や支援にとってはあまり有益ではないかもしれません。それよりも適切な対応法を周りが学ぶことによって、困ったことがあっても対処法も分かるようになり、本人にとって過ごしやすい環境を作ることができます。周りの人が自閉症と本人への理解を持ち、本人の気持ちに寄り添いながら、本人と一緒に最適な対応がとれるように学び、心がけましょう。
2016年07月16日自閉症とは?出典 : 自閉症(Autism)は先天的な発達障害の一つで、社会性と対人関係の障害、コミュニケーションや言葉の発達の遅れ、行動や興味の偏りの3つの特徴が発達段階で現れると言われています。文部科学省によると、自閉症は以下のように定義されています。自閉症とは、3歳位までに現れ、①他人との社会的関係の形成の困難さ、②言葉の発達の遅れ、③興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害であり、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。■ICD-10の分類における自閉症自閉症は、世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)の分類では広汎性発達障害に含まれます。広汎性発達障害のうち、知能指数が高い(IQ70以上)高機能自閉症の場合は「アスペルガー症候群」、知能指数が低い(IQ70以下)の場合は「カナー症候群」にあてはまります。自閉症の分類は分かりにくいですが、以下の図がわかりやすいので参考にしてください。Upload By 発達障害のキホン■DSM-5の分類における自閉症2013年に出版されたアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版)ではそれまでの診断基準であるアメリカ精神医学会の『DSM-Ⅳ-TR』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第4版テキスト改訂版)における広汎性発達障害の分類に変更点がありました。変更点としては、広汎性発達障害のサブカテゴリーである自閉症やアスペルガー症候群が廃止され、レット障害を除くすべての障害名が自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(Autistic Spectrum Disorder、略称ASD)に含まれるようになりました。これらは本質的には同じ1つの障害単位であると考えられており、症状の強さに従っていくつかの診断名に分類されます(そのため、spectrum=連続体と呼ばれています)。このようなことから、2013年以前に自閉症やアスペルガー症候群に分類された症状は、現在では自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害という診断名に分類されるようになりました。詳細は下の図をご覧ください。しかし『DSM-5』が未だ浸透していない場合もあり、『ICD-10』の診断基準を用いる医師もいることや、すでに自閉症の診断名を受けている人も多くいます。また、発達障害者支援法での障害名が「自閉症」であることから、この障害名を使い続けている人も多いのです。そのため本記事では文部省の定義に準拠し「自閉症」という名称を使用しながらご説明します。Upload By 発達障害のキホン自閉症の特徴的な3つの症状出典 : 自閉症の方は、対人関係を築くことが苦手なことが多いです。具体的な特徴としては、・目線を合わすことができない・周囲に関心がないように見える・相手の気持ちがわからない・その場の空気が読めないなどが挙げられます。自閉症の方は、会話をしていても目を合わすことが苦手です。無理に視線を合わせようとすると落ち着きがなくなったり、パニックになってしまいます。自閉症の方は環境の変化を敏感に感じることが苦手なため、このように対人関係が苦手だと受け止められてしまいます。自閉症の方はコミュニケーションや言葉の発達が遅れる傾向があります。具体的な特徴としては、・言葉を話すのが他の子と比べて遅い・人の話したことをオウム返しする・抽象的な言葉・比喩や皮肉の意味を理解できない・呼んでも反応しない・自分の話したいことだけ一方的に話すなどが挙げられます。自閉症の方は言葉を話し始めるのが遅く、言葉の意味を理解するのが困難です。言葉を話し始めても、意味のある言葉で会話をするのではなく、誰かの言葉をオウム返しし続ける場合も少なくありません。相手に自分の気持ちがうまく伝わらず、暴れてしまうこともありますが、正しい対処法をしていれば成長と共に落ち着いてきます。自閉症の方はある一定の行動をとる傾向があります。具体的な特徴としては、・落ち着きがなく、手を動かしたり、部屋の中を行ったり来たりする・毎日決まった行動をし、予定外の行動は取れない・1つのものに執着する・自分の興味があるものに対して、とても執着する・予定外のできごと・初めての人/場所/活動などに抵抗を示すなどが挙げられます。自閉症の人は、自分の興味のあることに対してとことん熱中する傾向があります。なので、自分の興味のある物事をとことん調べ、誰も教えていないのに専門家顔負けの知識を持っている方も珍しくありません。年齢別に見た自閉症の症状の現れ方出典 : 自閉症の症状は成長とともに変化していきます。自閉症の症状は人によって個人差が大きいのですが、大まかな年代別の症状を紹介します。自閉症スペクトラム・広汎性発達障害・アスペルガー症候群・自閉症については、以下のような共通の症状があります。これらの症状は、すべてがあてはまるわけではなく、症状の現れ方は人によって異なります。自閉症は発達障害のひとつですが、発達障害は、言語・認知・学習といった発達領域が未発達の乳児では、その特徴となる症状が分かりにくい場合があります。ですから、生後すぐに自閉症の診断がでることはありません。しかし、幼児期全体を通してみると、以下のような特徴的な行動をとっていたことが多いと言われています。以下にそれらの症状を紹介します。■周囲にあまり興味を持たない傾向がある視線を合わせようとしない子が多いです。また他の子どもに興味をもたなかったり、名前を呼んでも振り返らないことが多いです。定型発達の子が興味をあるものを指で指して示すのに対し、自閉症の子は指さしをして興味を伝えることをしない傾向があります。■コミュニケーションを取るのが苦手知的障害を伴う自閉症の子は、言葉の遅れや、オウム返しなどの特徴がみられます。会話においては、一方的に言いたいことだけを言ってしまったり、質問に対してうまく答えられないなどの特徴があります。定型発達の子が友達とのごっこ遊びを好むのに対し、自閉症の子は集団での遊びにあまり興味を示さないことが多いです。■強いこだわりを持つ興味を持つことに対して、同じ質問を何度もすることが多いです。また、日常生活においてあらゆるこだわりを持っていることが多いので、ものごとの手順がかわると混乱してしまうことが多いです。■集団になじむのが難しい年齢相応の友人関係がないことが多いです。周囲にあまり配慮せずに、自分が好きなことを好きなようにしてしまう子が多い傾向があります。人と関わるときは何かしてほしいことがあるときなだけのことが多く、基本1人遊びを好みます。人の気持ちや意図を汲み取ることを苦手とする子も多いです。■臨機応変に対応するのが苦手きちんと決められたルールを好む子が多いです。言われたことを場面に応じて対応させることが苦手な傾向にあります。■どのようになぜといった説明が苦手言葉をうまく扱えず、単語を覚えても意味を理解することが難しい場合があります。また、自分の気持ちや他人の気持ちを言葉にしたり、想像するのも苦手です。そのため説明がうまくできないこともあります。■不自然な喋り方をする抑揚がない、不自然な話し方が目立つ場合があります。■人の気持ちや感情を読み取るのが苦手上記でも述べましたが、コミュニケーション能力が乏しく、人が何を考えているのかなどを考えるのも苦手な傾向にあります。■雑談が苦手目的の無い会話をするのを難しく感じる人が多いです。■興味のあるものにはとことん没頭する広汎性発達障害の人は物事に強いこだわりをもっています。そのため、興味のあることにとことん没頭することが多いですし、その分野で大きな成果をあげられることもあります。自閉症の診断基準出典 : 自閉症について、気になる症状がある場合は医師に相談し、診断を受けることもできます。医療機関での診断は、『DSM-5』や『ICD-10』による診断基準によって下されます。医療機関での診断は、子どもの場合は、専門外来のある小児科、脳神経小児科、児童精神科などで行われることが多いです。また、18歳以上の場合は一般的に精神科や心療内科で診断がなされます。しかし、自閉症を診療できる専門の医療機関はまだまだ少ないのが現状です。各地域の「発達障害者支援センター」に相談をして、専門の医療機関を紹介してもらう方法をおすすめします。担当者との相性も大切なので、納得のいく医療機関を選ぶようにしましょう。医療機関では、診断基準に基づいたテスト、生育歴の聞き取り、その人のライフスタイルや困難についての質疑応答など、しっかりと問診をしたうえで総合的に判断されます。『DSM-5』では、広汎性発達障害の下にあったレット障害を除くすべての障害名が、自閉症スペクトラムという名称に統合されました。そのため、自閉症は現在では自閉症スペクトラムという診断名で診断されることが多くなっています。以下に『DSM-5』にある自閉症スペクトラムの診断基準をご紹介します。A. 複数の状況で社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的な欠陥があり、現時点または病歴によって、以下により明らかになる(以下の例は一例であり、網羅したものではない)。(1)相互の対人的・情緒的関係の欠落で、例えば、対人的に異常な近づき方や通常の会話のやりとりのできないことといったものから、興味、情動、または感情を共有することの少なさ、社会的相互反応を開始したり応じたりすることができないことに及ぶ。(2)対人的相互反応で非言語コミュニケーション行動を用いることの欠陥、例えば、まとまりの悪い言語的・非言語的コミュニケーションから、視線を合わせることと身振りの異常、または身振りの理解やその使用の欠陥、顔の表情や非言語的コミュニケーションの完全な欠陥に及ぶ。(3)人間関係を発展させ、維持し、それを理解することの欠陥で、例えば、様々な社会的状況に合った行動に調整することの困難さから、想像上の遊びを他人と一緒にしたり友人を作ることの困難さ、または仲間に対する興味の欠如に及ぶ。B.行動、興味、または活動の限定された反復的な様式で、現在または病歴によって、以下の少なくとも2つにより明らかになる(以下の例は一例であり、網羅したものではない)(1)常同的または反復的な身体の運動、物の使用、または会話(例:おもちゃを一列に並べたり物を叩いたりするなどの単調な常同運動、反響言語、独特な言い回し)。(2)同一性への固執、習慣へのかたくななこだわり、または言語的・非言語的な儀式的行動様式(例:小さな変化に対する極度の苦痛、移行することの困難さ、柔軟性に欠ける思考様式、儀式のようなあいさつの習慣、毎日同じ道順をたどったり、同じ食物を食べたりすることへの要求)(3)強度または対象において異常なほど、きわめて限定され執着する興味(例:一般的ではない対象への強い愛着または没頭、過度に限定・固執した興味)(4)感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さ、または環境の感覚的側面に対する並外れた興味(例:痛みや体温に無関心のように見える、特定の音、感覚に逆の反応をする、対象を過度に嗅いだり触れたりする、光または動きを見ることに熱中する)C. 症状は発達早期に存在していなければならない(しかし社会的要求が能力の限界を超えるまで症状は明らかにならないかもしれないし、その後の生活で学んだ対応の仕方によって隠されている場合もある)。D. その症状は、社会的、職業的、または他の重要な領域における現在の機能に臨床的に意味のある障害を引き起こしている。E. これらの障害は、知的能力障害(知的発達症)または全般的発達遅延ではうまく説明できない。知的能力障害と自閉スペクトラム症はしばしば同時に起こり、自閉スペクトラム症と知的能力障害の併存の診断を下すためには、社会的コミュニケーションが全般的な発達の水準から期待されるものより下回っていなければならない。(『日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』2014年 医学書院/刊P.49より引用)自閉症の疑いを感じたらどうすればいい?出典 : もし、上記の診断基準において当てはまる項目が多い場合や気になることがある場合は、専門機関での相談をおすすめします。誰かに相談することによって気持ちも楽になります。家族で悩んでいても、困難に対する改善策はなかなか見つかりません。できるだけ早期に小さい頃から自閉症に対する教育方法や療育などの対処法を始めると、その後の発育に大きな違いがみられます。はじめの一歩を踏み出すのには勇気がいるかと思いますが、一歩を踏み出すことによって色々な悩みが軽減されます。自閉症ではないと診断された場合でも、困難を乗り越えるための様々なアドバイスをしてもらえる場合が多いので、一度相談してみることをおすすめします。障害なのかな、と疑問を持った場合、いきなり自分で専門医を探すのは難しいので、まずはお住まいの地域の身近な専門機関に相談するようにしましょう。子どもか大人かによって行くべき専門機関が違うので、以下を参考にしてみてください。【子どもの場合】・保健センター・子育て支援センター・児童発達支援事業所・発達障害者支援センターなど【大人の場合】・発達障害者支援センター・障害者就業・生活支援センター・相談支援事業所など知能検査や発達検査は児童相談所などで無料で受けられる場合もありますし、障害について相談することも可能です。その他、発達障害者支援センターで障害についての相談ができます。自宅の近くに相談機関が場合には、電話での相談にものってくれることもあります。以下は小児神経学会が発表している、発達障害診療医師の名簿です。この他にも、児童精神科医師や診断のできる小児科医師もいます。まず身近な相談機関に行って、診断の疑いがあればそこから専門医を紹介してもらいましょう。日本小児神経学会 「発達障害診療医師名簿」自閉症の症状・特徴は人それぞれ出典 : 自閉症には様々な症状がありますが、その症状には個人差があります。早期にそれらの特性に気づき、一人一人に合った環境をつくること、早期療育や適切な教育を行っていくこと、苦手なことの対応方法を工夫していくことで、逆に特性を強みとして活かすこともできます。自閉症のある人の中でも、特性を活かして活躍している人がいます。特性を活かせるような環境づくりをすることで、本人の生活上の困難さを解消し、その人らしく生きることが可能になるでしょう。
2016年07月14日Appleは、世界自閉症啓発デーにあわせて、デューク大学とケープタウン大学が、自閉症の研究を進めるためにResearchKitをどのように活用しているのかを紹介した映像「ディランを紹介します。」を公開した。Appleが提供している医学・医療研究および健康リサーチ向けに設計したオープンソース・ソフトウエアフレームワーク「ResearchKit」は、早い段階で自閉症研究者の間で導入が始まった。昨年10月には、デューク大学とケープタウン大学との協同で「Autism & Beyond」というiPhoneアプリが公開されている。同アプリでは、iPhoneの前面に搭載されたFaceTime HDカメラを利用し、顔認識アルゴリズムと組み合わせ、生後18カ月の幼児のビデオに対する情緒的反応を分析することで、発達障害の可能性を検出する。子供を専門家と対面させなくても検査できるので、より早期での発見と治療を行えるという。このアプリは最初の1カ月で、その前の9カ月間にわたる実地研究を上回る参加者を集めることができたとのことだ。4月はAutism Acceptance Month(自閉症受容月間)であり、「ディランを紹介します。」は4月2日の世界自閉症啓発デーにあわせて公開された。世界自閉症啓発デーは、2007年12月18日に国連総会で採択され、以来、世界各国でさまざまなイベントが行われている。自閉症とは、脳の中枢神経の機能障害で、定型発達者と同じように周囲の物事や状況が脳へと伝わらないために、 結果として対人関係の問題やコミュニケーションの困難が生じるといったことがある。日本では、ネットスラングが膾炙するとともに、その字面から心の病気であると、間違った認識を抱いている人も少なくない。映像では、「ずっと、みんなと繋がりたいと思っていた」「でも誰も分かってくれなかった」「コミュニケーションの手段がなかったんだ」「多くの人たちが、僕に心があることを分かってくれない」「自分をコントロールできない人としてしか見てくれない」とディランが訴えかける。だが、iPadを手にしたことで、彼の人生は劇的に変化する。iPadを使い始めてから、行き交う言葉を捉えられるようになり、思考も纏められるようになったとディランは言う。「声を持つことで人生が、がらりと変わった」とも。映像の最後は中学校の卒業式のシーンで、ディランの「僕達が心で思い描いたものが現実を作っている」「だから心を開けば、何だってできるんです」というスピーチで締めくくられている。周囲の無理解、これは自閉症を持つ人々にとっては切実な問題であるが、この映像は障害を抱えるということがどのようなことなのであるかを顕在化させ、共にいられるという意識を分かち合えるよう促してくれる。彼らは決して、心を閉ざした存在ではない。周りの人々も臆断せず、理解を深めることこそが重要なのだ。他方、この映像は彼らをユニークな存在として捉えることに成功している。ディランは「僕はこの世界をユニークに体験しているんだよ」と伝えるが、自閉症であることは、その人の個性と受け止めるべきことでもあるのだ。だから、自閉症を障害として治療すべきではないと主張する人々も多く存在する。Appleが示したのは、単に克服すべき課題があるということだけではなく、そこに存在する多様性なのである。ともあれ、まずは特設サイトの映像をご覧頂きたい。ディランの生き生きとした表情はまた、我々の人生が、実り多きものであるということをも教えてくれる。
2016年04月05日2月9日(現地時間)、Microsoftは自社の雇用プログラムに自閉症者が参加し、社内で働いた結果を公式ブログで公表した。同プログラムは国連が定めた毎年4月2日の世界自閉症啓発デーに合わせて、2015年4月3日(現地時間)に発表したものだ。同社はプログラム開始後、数カ月で11人の新入社員を雇用している。Xbox Software EngineerのKyle Schwaneke氏は、アスペルガー症候群および自閉症スペクトラムの診断を受けているが、ゲームコンソール用のCortanaに関する開発に努めている。同氏は高校生時代にコンピューター技術のクラスに参加してプログラミングを学んだ時、「初めて他の人を理解する場所に感じた。そして彼らも私を理解した」と語り、Microsoftでの新しい仕事に活かされるとMicrosoft creative content strategistのJennifer Warnick氏は述べている。米疾病予防管理センターによれば、およそ68人に1人が自閉症スペクトラムと確認され、同障がいを持つ約80パーセントの人々が失業している状況にある。文部科学省が2012年に全国の公立小中学校約5万人を対象にした調査結果でも、約6.5パーセントの児童が発達障害児の可能性があることを明らかにした。だが、一部の人々は科学や数学といった特定分野に長けているという報告結果もある。阿久津良和(Cactus)
2016年02月12日2015年の世界自閉症啓発デーで、米国のオバマ大統領は「アメリカでは68人に1人の子どもが自閉症スペクトラム障害(アスペルガー症候群なども含む、わずかに自閉症の特性が見られる状態から典型的な自閉症までを幅広く含めたグループの名称)を持つ」と述べました。68人に1人とは驚きですが、日本自閉症協会のホームページによると、日本でも自閉症は100人に0.9人程の発症率で、生まれつき脳の機能になんらかの障害を持つ発達障害のひとつだといわれています。人や物との変わった関わり方をしたり、大人や同年代の子どもとのコミュニケーションがうまくとれなかったり、興味や関心が非常に偏っており、同じことを繰り返したがることが特徴。自閉症者だからといって知能に障害があるわけではありませんが、少し奇妙にみえる行動から、自閉症の内面は誤解されることが多いようです。今回、ご紹介する一冊は、自身が自閉症者である作家の東田直樹さんと、精神科医の山登敬之さんとの往復書簡のやりとりをまとめた『社会の中で居場所をつくる 自閉症の僕が生きていく風景〈対話篇〉』(ビッグイシュー日本)です。東田さんは、自閉症者であると同時に、すでに世界的な作家でもあります。彼の著書『自閉症の僕が跳びはねる理由』(エスコアール)は、20ヶ国以上で翻訳され、世界的なベストセラーになっています。一般的な会話ができない東田さんが、社会のなかで居場所をつくっていけたのは、小さいころから言葉や文字に対する興味があった東田さんを、それを活かすかたちで導いていったご家族のおかげかもしれません。しかしそれを差し引いても、本書のなかの東田さんの言葉は名言だらけです。東田さんの瑞々しい言葉を中心に、本書をご紹介していきたいと思います。■1:「自分のことを好きだと言える人は幸せです」いまの時代、障害があってもなくても、自分のことをちゃんと「好き」といえる人が少ないように感じます。また、特に恵まれない生い立ちでなくても、自己肯定感をうまく持てずに大人になってしまう人も多いですよね。東田さんは子どものころ、人と違う自分がいやでたまらなかったそうです。ですが、「自分の人生の主人公は僕でも、この世界の主人公ではない」ことを両親から学び、知識によって、世界にはたくさんの人たちが暮らしていて、それぞれ困難に向き合いながら生きていることを知りました。そして、成長していくにつれて、他人のなかにいるときに感じていた疎外感はなくなっていったそうです。その理由を、「社会の一員として僕らしく生きていこうという気持ちになれたから」だと語っています。「誰からも、そう言ってもらえなくても、自分で自分を好きになれれば、人は生きる意味を見失わないからです」「自分を好きになるためには、自分自身と向き合う気持ちも必要になってくるのではないでしょうか」まだ二十代前半の彼の言葉を、どう受け止めますか?■2:「強くなくても生きられる」東田さんは、自閉症者ということで、よく他人から励まされることがあるそうです。ところが、励ましてくれている人の意見に耳を傾けていると、だんだんと自分自身の話にすり替わっていくのがわかり、「人というのは自分のことをわかってもらいたい動物なのだと、つくづく感じる」といっています。東田さんを励ます人は、東田さんのことを弱い立場だと思って励ますのでしょうが、当の東田さんは、冷静に自分を励ます人の内面をみているということですね。少し滑稽ですが、こうなると、なにが強くてなにが弱いのかわからなくなってきます。「弱いから生きていけないのではなく、心が満たされないから生きづらいのではないでしょうか」という彼の問いかけに、はっとする人も多いのではないでしょうか。■3:「自分らしさとは、手を伸ばせば届く心地いい芝生のようなもの」「自分らしく」という言葉は、ヒットソングなどでもよく聞かれる、悪くいえば手垢のついた言葉ですが、そもそもなぜ、人は自分らしく生きたいと願うのか、東田さんは問いかけます。「自分らしさに条件や基準はいらない」と東田さんはいいます。「こんな自分ではだめだと思うのであれば、その人が追い求めているものは、自分らしさではなく目標ではないでしょうか」なるほど。外へ、外へと自分らしさを求めていっても、もしそれが手に入らなければ、つらくなってしまいそうです。「僕が考える自分らしさとは、はるかかなたの山の頂上に咲いている珍しい花ではなく、手を伸せばすぐ届く、心地いい芝生みたいなもの」という言葉に、安らぎを覚えるのは筆者だけではないはずです。*本書は10回ごとに先攻後攻が入れ替わるかたちで、東田さんと山登さんのやりとりが進みます。もともと東田さんの本のファンだったという山登さんの名キャッチャーぶりもさすがです。自閉症のイメージにとらわれることなく、生き方を模索していて砂漠でオアシスにたどりつくような東田さんの言葉に、ぜひ触れてみてください。(文/Kinkiii)【参考】※一般社団法人 日本自閉症協会※Presidential Proclamation — World Autism Awareness Day, 2015-whitehouse.gov※東田直樹・山登敬之(2016)『社会の中で居場所をつくる 自閉症の僕が生きていく風景〈対話篇〉』ビッグイシュー日本
2016年01月13日米Appleは10月15日(現地時間)、「ResearchKit」を用いたプログラムを通じて、自閉症、てんかん、メラノーマの研究が始まったことを発表した。ResearchKitは、医学・医療研究用のiPhoneアプリを開発するためのオープンソース・ソフトウエアフレームワークである。医学・医療研究の進歩は研究データの量が多いほど加速する。Appleは人々が身近なiPhoneを使って、プライバシーを保護しながら安全にデータを提供できる環境を整えることで、より多くの人たちから頻繁に健康状態や症状、活動状況などのデータを収集できるようにした。すでにパーキンソン病、ぜんそく、乳がん、心臓血管疾患、糖尿病などの研究にResearchKitが活用されており、Appleによると100,000人以上がプログラムに参加してデータを提供している。自閉症研究は、デューク大学のDuke Medicineが「Autism & Beyond」というアプリを開発した。子供たちにiPhoneでビデオを見せて、その反応を前面カメラで記録し、独自のアルゴリズムで発達障害の可能性を検出する。てんかんには、ジョンズホプキンス大学が「EpiWatch」という医療アプリを開発した。これはApple Watchアプリを用いる。発作の兆候を感じた時に、コンプリケーションからワンタッチでEpiWatchを起動し、加速度センサーと心拍センサーでデータを記録、近親者にアラートを送信する。発作が治まるまでアプリはデータの記録を続ける。アプリはまた、薬の使用のトラッキングや副作用のスクリーニングといった管理もサポートする。メラノーマについては、オレゴン健康科学大学がiPhoneで撮影したデジタルイメージから痣の大きさの変化とメラノーマのリスクの関係を調査し、早期の対処に役立てる。 研究参加者は痣の変化のデータを自身の医師とも直接共有して、治療に役立てることが可能。
2015年10月16日