アイルランド・ダブリンに住むテレンス・パワーさんが投稿した動画が人々を笑顔にしています。テレンスさんが7歳の弟であるエドワードくんと一緒に路面電車『ルアス』に乗っていた時のことです。彼らは偶然、ミック・マクローリンさんという男性と会いました。海外メディア『Dublin Live』によると、3人はこれまで何度もルアスの車内で会ったことがあり、顔見知りなのだとか。しかししばらく会うことがなく、この日は久しぶりの再会だったといいます。エドワードくんは自閉症のため、言葉でコミュニケーションをとることが難しいのだそう。そんなエドワードくんのために、ミックさんは会うといつも歌を歌ってあげるのです。この日もミックさんは車内で歌い始めます。するとエドワードくんは…。@terencepower_Busker singing to my little brother who has autism, would bring a tear to a glass eye❤️ ##fyp ##4upage♬ original sound - Terence Power弾けるような笑顔を見せるエドワードくんはとっても嬉しそう!そんな2人の交流を見ていたテレンスさんは思わず涙ぐんでしまったそうです。この動画が撮られたのは新型コロナウイルス感染症のためにマスク着用が義務化される前でした。テレンスさんが2021年3月にTikTokに投稿したところ拡散され、たくさんのコメントが寄せられたのです。・ピュアな喜びが伝わってきて、こっちまで幸せになるよ。・男の子と同じくらい、男性も楽しんでいるのが分かる。・この動画、何度見ても笑顔になっちゃう。また動画にはミックさんの歌の素晴らしさを称賛する声も多いのですが、実は彼は地元では有名なストリートミュージシャンなのです。ミックさんはエドワードくんのことを『友達』と呼び、動画が撮影された日は久しぶりに会えたことが嬉しくて「歌わずにはいられなかった」と語っています。彼が歌った曲は映画『トイ・ストーリー』の主題歌であるランディ・ニューマンの『You’ve Got a Friend in Me(君はともだち)』。まさに友達同士の再会にぴったりの曲ですね。音楽を通じて心温まる交流をする『友達同士』に多くの人が幸せな気持ちになれたようです。[文・構成/grape編集部]
2021年03月12日他の子に迷惑かけるかも?Upload By ぼさ子自閉症のあるほぺろうは他人とのコミュニケーションが苦手なので、保育園に入るまで『他の子と一緒に遊ぼう』という意思が一切ありませんでした。他の子と関わったことがないので「お友達に優しく」とか「叩いちゃいけません」といった教訓に触れたこともありませんでした。そしてこの3歳のころは癇癪が強い時期で、発語がなく自分の気持ちを伝えられないイライラをぶつけていたのか、自宅では私を叩きつけたり髪の毛をむしったりという行動が見られていたので、余計によそのお子さんに危害が及ばないか心配でした。幸い、現在お世話になっている保育園は障害児受け入れの経験が多いこともあり、ほぺろうの癇癪っぷりを見ても動じない先生たちの様子から、初めて訪問したときから園への信頼は持つことができていました。なので、ほぺろうの入園準備期間に先生たちにたくさん相談に乗っていただきました。Upload By ぼさ子ほぺろうは加配希望で入園したので、加配の先生に目配りをお願いしたのと同時に、お友達やその保護者の方が心配する様子があれば先生に窓口になってもらって私に伝えてほしいと申し入れました。そして、ほぺろうの普段の様子・発達クリニックの記録・特性・対処法などをまとめたノートを先生に渡して情報共有し、今もそれは続いています。他の子との差に心折れるかも?私はもちろん折れました。同じ歳の子のみならず、歳下の子と比べても追いついていないわが子の現実に、ほぺろうが5歳になった今でも正直凹むことがあります!実は私、過去に少しだけですが保育施設でお手伝いしたことがありまして、その経験から学んだことがあります。それは、『障害がない子も発達の差はある』『どんな子も全員、手を焼くところ・良いところが必ずある』『どんな子も漏れなく可愛い』ということ。すべてにおいてパーフェクトなんていう子は一人もいませんでした。「障害のない子だって発達の差はあるし、しっかり大人の手を焼かせている」。そう思うと気がラクになりました。Upload By ぼさ子障害児を良く思わない人もいるかも?恥ずかしながら私は、ほぺろうを産むまで障害のある人に対して『よく分からない、あまり関わりたくない』と思っていました。なので今の環境で、ほぺろうのことを良く思わない人がいたとしても不思議ではありません。幸い今は優しい方たちに囲まれていますが、お友達も保護者の方もいろんな考え方があって当然。私の『ほぺろうを受け入れてほしい』という考え方も多様性の一つ、否定的な考え方があったとしてもそれも多様性の一つ…。そんな風に考えておくと、不必要に傷つくことが減ったように思えます。以前お世話になった保育施設の先生が『ほぺろう君の存在は集団にとって必要。他の子にとって気づきや優しさの勉強になる』と仰ってくださったことがあり、その言葉とそう考えてくれる人の存在に励まされました。Upload By ぼさ子私ができることとしては、他の保護者の方に会ったら「こんにちは」など普段の挨拶は欠かさず、気になることがあったときに話してくれやすいように気をつけています。そして「いつもお子さんがほぺろうと仲良くしてくれてありがとうございます」と感謝を伝えたりしています。年中の今では保育園を楽しめるようになったほぺろう入園したものの、適応するには相当な時間と労力がかかったほぺろう。朝は私となかなか離れられず、日中もちょっとしたことがキッカケですぐに癇癪。先生にもお友達にもたくさん迷惑をかけていたと思います。それでも周りの皆さんに助けられて、1年かかってようやく泣かずに登園できるようになりました。年中の今では保育園が楽しそう!以前は私から離れられず保育園の玄関でグズっていたのに、現在は私をサッサと締め出すまでに成長しました。Upload By ぼさ子LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年03月12日息子のパニックに困り果てていた私の心に刺さった、主治医の言葉息子はもう成人していますが、幼児期、小学校低学年の一番状態が悪かったときの主治医の言葉です。「パニックを起こす理由が立石君にはあるのです。『こうしてほしい』というこだわりには応じ、小さいうちに安心できる生活環境をお母さんが与えてください。パニック起こして一番しんどいのは本人なんですから」「もし、お母さんが人の履いたスリッパがどうしても履けなかったとしましょう。『履け』と命令されたらどうですか?それを履いて落ち着いていられますか?こだわりは自分だけのスリッパと同じなんです」「人が食べたガムを食べることができますか?子どもにとって偏食は、芋虫や他人が食べたガムを食べろと言われているようなものなのです」「喘息発作も起こせば起こすほど、それを誘発させます。『普段から吸入して発作を起こさない予防をすることが肝心です。自閉症児のパニックもそれと似ています。起こさないように周りが配慮してやることです」「お母さんからすれば『なんでこんなことにこだわるんだ』と思うことも、本人にとってはとても耐えがたい嫌なことなのですから、こだわりには応じてあげてください。」Upload By 立石美津子親は安全基地になるまだ言葉を話せない赤ちゃんは不快な状態のSOSを泣いて訴えます。お腹が空いても「ミルクが欲しい」と言えない。オムツがうんちでベチョベチョになっても「不快だ、交換して」と言えない。暑くても自分では服を脱げない。かゆくてもかけない。寝ようとしてもなかなか寝つけない。だから泣いて必死に訴えます。母親はその泣き方から「なぜ泣いているんだろう?」と原因を探り、「おお、よしよし。今、おっぱいをあげるからね」、「オムツをとりかえてあげるからね」と助けてやります。そして、子どもは「この人は僕を保護してくれる人だ」と母親を認識し、親の愛情の元「この世は生きていても安全な場所なんだ」とだんだんとわかってきます。パニックが起きたときは自閉症のある子には同じ道順しか通れない、決まった服しか着られないなどさまざまなこだわりがあります。それを押し通すことを周りの大人が許してくれないとき、また感覚過敏により「この音は耐えらない」と感じるときは、“止めてくれ”とばかりに全身の力で訴えます。地面に頭を打ちつけたり、自分の腕を噛んだり、自傷(自分自身を傷つける)したりパニックを起こすこともあります。私も親として未熟だったころはパニックを起こされたときは「いい加減にして!」と私もパニック状態になりました。親に助けを求めているのに子どもの世界を理解してやらないで、押さえつけたり叱ったりする最悪の対応をしていました。Upload By 立石美津子どう対応すればいい?大人だって悲しいとき、泣きたいとき、怒りが込み上げてきたときその感情を抑え込んでしまったら八方塞がりになります。もし、パニックを起こしてしまった場合は嵐が過ぎ去るのを待つしかありません。時間が本人をクールダウンさせ解決してくれるような気がします。パニックに親が巻き込まれてしまっては、共倒れ、何もしないことが一番の解決法だと感じています。「ああ、悲しいんだね。あなたの負担になる原因はつくらないようにするからね」と安全地帯になることです。また、自傷するときは自分の身体がダメになるほど傷つけたりはしないと感じています。「これ以上やるとひどい怪我になる」のマックスギリギリのところをわかって本人はやっているように見えます。そのコントロールが難しい場合は専門医師の処方の元、抗精神病薬を使う場合もあります。できれば、パニックを起こさないように、子どもの望みを聞いてやることです。“同じ道順をいつも通ってやる”、“同じ服を着せてやる”など。「毎日同じ服を着たら汚くなってしまう」と思うのならば、同じ服を何着が買っておけば済むことです。親の忍耐が必要ですが、これを続けているうちに子どもも安定し、新しいことにチャンレンジできるようになってくるのだと思います。主治医の言葉が心に刺さってからは、息子が「これだけを着たい」と言えばそれを着せ、同じデザインの靴しか履かなければ、13センチ、14センチ、15センチと何足も買っておきました。自閉症児として生まれて数年しか経っていない幼児期に、「苦手なことを克服しなさい」と言われるのは本人にとっては酷なこと。母親として子どもが安心できるよう、まずは寄り添うことで、恐々でも新しいものに挑戦できるようになっていくのだと思います。こだわりには“それを何とか治そう”ではなく、“とことんつきあう覚悟”が親には求められているのではないでしょうか。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年02月12日自閉症を抱える作家・東田直樹が13歳のときに執筆した「自閉症の僕が跳びはねる理由」を基にしたドキュメンタリー映画化した『The Reason I Jump』が、『僕が跳びはねる理由』として4月2日(金)に日本公開決定。ポスタービジュアルが解禁となった。これまで理解されにくかった自閉スペクトラム症を抱える者の内面の感情や思考、記憶を言葉で伝えた内容が大きな注目と感動を呼び、30か国以上で出版、現在117万部を超える世界的ベストセラーとなっている「自閉症の僕が跳びはねる理由」(エスコアール、角川文庫、角川つばさ文庫)。この書籍の英語版を基にした本作は、世界最大のインディペンデント映画祭としても有名な第36回サンダンス映画祭にてワールド・シネマ・ドキュメンタリーコンペティション部門の観客賞受賞、同じく2020年に開催されたバンクーバー国際映画祭では長編インターナショナルドキュメンタリー部門観客賞&インパクト大賞をW受賞。多数の海外メディアからも「五感を刺激され自閉症者の世界を体感できる」(Backseat Mafia)、「斬新で見事なカメラワーク」(Screen Mayhem)、「感情に突き刺さるような美しさ!」(Variety)、「驚異的な作品!」(The Hollywood Reporter)など、絶賛の声が続々と上がっている。斬新な映像表現や音響効果で問いかける体感ドキュメンタリー「自閉症と呼ばれる彼らの世界」を各国の5人の少年少女たちの姿やその家族たちの証言を通して追い、明らかにしていく本作。「自閉症者の内面がその行動にどのような影響を与えるか」を斬新な映像表現や音響効果を駆使し、彼らが見たり、感じたりしている世界をあたかも疑似体験しているかのように表現した。解禁されるポスターは、澄み切った青空の下で“跳びはねる”少年を切り取ったもの。自分の気持ちの赴くままに跳びはねているように見えるこの少年の姿は「みんな同じ空の下、“普通”の君と自閉症の僕との未来はきっとつながる」というキャッチコピーをそのまま体現するかのようなビジュアルに。『クラウド アトラス』原作者デイヴィッド・ミッチェルが夫妻で英訳なお、東田氏による原作を英訳したのは、トム・ハンクス、ハル・ベリー主演の映画『クラウド アトラス』の原作者として知られるイギリスのベストセラー作家デイヴィッド・ミッチェルと、その妻ケイコ・ヨシダ。日本に滞在していた経験もあるミッチェル氏は自らも自閉スペクトラム症の息子を育てており、我が子の行動に対する疑問の答えをこの書籍の中に見つけ、「世界中の自閉症の子を持つ親にもこの本を読んで欲しい・伝えたい」という願いから翻訳、2013年に「The Reason I Jump」として出版。その後、本作にも出演しているジョスの両親(本作のプロデューサーを務めるジェレミー・ディアとスティーヴィー・リー)の目にとまったことで、本作が誕生した。ミッチェル氏は「東田直樹の『自閉症の僕が跳びはねる理由』がそうであるように、この映画は私たちに“普通とは何か?”という抽象的な疑問を改めて我々に問いかけている。自閉症と自閉症ではない人たちの世界を繋ぐ架け橋となる、優しい革命的な作品だ」とコメントを寄せている。『僕が跳びはねる理由』は4月2日(金)より角川シネマ有楽町、新宿ピカデリーほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)
2021年01月22日新年の挨拶の代わりとなる年賀状。近年では、メールや『LINE』で年賀状の代わりに挨拶をする人も多く、減少傾向にあるそうです。しかし、年賀状ならではのやりとりや、つながりがあるため、あえてハガキで挨拶をするという人もいるでしょう。自閉症の息子から届いたラブレター2020年12月16日、年賀状印刷などを運営する株式会社グリーティングワークスが年賀状のエピソードを募集した『年賀状思い出大賞』を発表しました。約900件の応募の中から選ばれたのは、自閉症の息子から届いた年賀状のエピソード。元日の朝、母親が年賀状を取りに行くと養護学校に通う息子から封書が届いており…。寝坊した元旦の朝、ポストに年賀状を取りに行くと、私への一通の封書が届いていた。息子が通う養護学校からの手紙だった。息子は自閉症。人と関わることが苦手だ。「大好きだよ」と彼に伝えると「そうだったんだ」という応えが毎回返ってくる……。だから、毎日毎日その言葉を伝えた。封書を開けると、一枚の年賀状が出てきた。墨をたっぷり付けた太い筆で書かれた文字は、ハガキからはみ出していて、すぐには読めなかった。同封されていた先生のメッセージを読むと、国語の時間に取り組んだ年賀状作りで、息子はハガキに「海」の一文字を書いたとのことだった。「海は好きなの?」と尋ねると、いつもの無表情な顔で「だってお母さんがいるから」と応え、「海」の文字の「母」という部分を指差した。その瞬間、私は真冬なのに身体中が一変に温かくなったことを思い出す。十二年前の忘れられない年賀状は、十八歳の息子からのラブレター。自閉症の息子から元日に届いたのは、年賀状という名のラブレター。『海』という文字の中に、『母』の漢字を見つけた息子は、ハガキに大きく『海』と書いたのです。きっと、元日の朝から母親の心は温かくなり、息子の想いに包まれたことでしょうね。このエピソードは、ショートムービーでも公開されています。審査員からは「親子の愛情が素直に伝わる作品」と称賛の声が寄せられていました。年賀状のいいところは、直筆だからこそ想いが十分に伝わるところでしょう。2020年は新型コロナウイルス感染症の影響で、人に会うこともままならない日々が続きました。しばらく会っていない人に、年賀状で想いを伝えてみてはいかがですか。[文・構成/grape編集部]
2020年12月20日対人関係での困難や、特定の事柄に強いこだわりがあるなどの特性を持つ『自閉症スペクトラム』。厚生労働省によると、この障がいを抱えている人は、近年約100人に1人の割合でいるといわれています。3人の子供を育てるbeth(3beth_gm)さんは、自閉症の長男・ハルくんのエピソードをInstagramに投稿。その内容に「じーんとした」といった声が寄せられました。母のこころ、弟のこころ多くの人は、接する相手との関係性によって、距離感を使い分けたコミュニケーションをしています。しかし、ハルくんの場合は距離を踏まえたコミュニケーションが難しく、知らない人に突然あいさつをしたり、初めて会う人に対して近付きすぎてしまったりすることがあるようです。自閉症は見た目では分からないため、成長するにつれてハルくんの言動に周囲が戸惑うこともあるといいます。しかし、弟のイツくんは遊びに来た友人に、「兄は普通に話せないけど、すごく面白い」と話していて、その様子をbethさんは嬉しく感じたそうです。イツくんは、お兄ちゃんのいいところをたくさん見てきたからこそ、自然に伝えることができたのでしょう。読者からは「とても素敵な家族で、じーんとした」「子供が自閉症です。いいところがたくさんあるから、みんなに知ってほしい」などのコメントが寄せられていました。自閉症スペクトラムなど発達障がいを持つ人たちは、時に『風変わりな人』と印象を持たれてしまいがちです。しかし、表面的なコミュニケーションではその人の魅力は伝わらないもの。一緒に過ごして、よく知るにつれて、素敵なところをたくさん見つけることができるのでしょう。ハルくんを見守る家族の愛情に、心が温かくなりますね。[文・構成/grape編集部]
2020年12月04日アメリカ・マサチューセッツ州に暮らす11歳のアシュリン・マクドナルドさんは、毎食食べている大好きな食べ物があります。それはスープの缶詰で知られるキャンベル社の『スパゲッティ・オー・ウィズ・ミートボール』。トマト味のソースにアルファベットの『O』の形のパスタと小さなミートボールが入っているものです。自閉症をもっているアシュリンさんにとって、スパゲッティ・オーはただの好物ではなく、精神安定剤のようなもの。海外メディア『TODAY』によると、彼女は毎食、スパゲッティ・オーと一緒にピザやヨーグルトなどを食べていたといいます。しかし新型コロナウイルス感染症(以下、コロナウイルス)対策で学校が休校になって以来、スパゲッティ・オー以外の食べ物を一切食べなくなってしまったのです。アシュリンさんにとっては学校という『ルーティン』のない生活の中で、「いつでも同じ味」のスパゲッティ・オーが安心感をもたらしてくれるのだといいます。娘の好きな缶詰が店から消えたコロナウイルスが流行するまでは、人気商品であるスパゲッティ・オーはいつでも買えたのだとか。ところがパンデミックによって人々が食料品の買い溜めをし始めたことで、スパゲッティ・オーも店頭から姿を消してしまったのです。仕方なく母親のクリスタルさんはスパゲッティ・オーの別の味や他社の似たような商品を買ってみましたが、アシュリンさんは食べませんでした。それからクリスタルさんは地元のスーパーで『スパゲッティ・オー・ウィズ・ミートボール』を探し回り、多い時には1日に20軒近くの店に足を運んだといいます。2020年8月、娘のためにスパゲッティ・オーを探しまわるクリスタルさんのことが地元の新聞に掲載されます。するとその記事を読んだ人たちから彼女のもとにスパゲッティ・オーの在庫がある店の情報や、スパゲッティ・オーの寄付が続々と寄せられ、100缶以上を確保することができたのだそう。さらにこの話がキャンベル社にも伝わり、なんと約800缶の『スパゲッティ・オー・ウィズ・ミートボール』がクリスタルさんの家に送られてきたのです。A Mass. community is helping a mother stock-up on SpaghettiO's for her daughter with Autism who looks to them as a meal...Posted by WDBJ7 on Saturday, September 12, 2020A Mass. community is helping a mother stock-up on SpaghettiO's for her daughter with Autism who looks to them as a meal...Posted by WDBJ7 on Saturday, September 12, 2020クリスタルさんはこの出来事について『TODAY』に語っています。これは私の娘と私たち家族にとって信じられないような贈り物です。おかげで大きなストレスが軽減されました。この恩恵にどれほど感謝しているか、とても言葉ではいい表せません。TODAYーより引用(和訳)有事が起きると今まで普通に手に入ったものが突然買えなくなることがあります。そんな時こそ他者のことも考える思いやりと、困っている人がいたらお互いに助け合う気持ちを忘れずにいたいものですね。[文・構成/grape編集部]
2020年10月12日新連載!3歳発達障害息子の子育て、葛藤の日々を綴る現在3歳3ヶ月の息子、1歳5ヶ月の娘を育てています。息子のいっちゃんは、中度知的障害を伴う自閉症スペクトラムです。指ちゅっちゅタオルボーイ、発語はありません。産まれた時からあまり泣かず、寝てばかりで母乳を飲むこともないので、早いうちに母乳は出なくなりました。呼びかけても反応せず、あまり動くこともなく。もしかして...と思ってからはっきりと状況がわかるまでは、黙々と検索をして調べたり、そんなはずはないと息子を信じてみたり、何故こんなことができないのかと叱りすぎて自己嫌悪に陥ったり、とても苦しい時間を過ごしてきました。Upload By かさはらあやこ『ぜんぜん普通の2歳じゃん』見えない困難に追い詰められたこともUpload By かさはらあやこ『ぜんぜん普通の2歳じゃん。しつけがされていないだけでしょう?2歳を過ぎたらもう色々わかるんだからしつけなきゃ。』私が実姉から言われた言葉です。もちろん悪気があってではなく、「発達障害があるかも...」と悩んでいる私に対し、心中を推し量っての発言だと思います。自閉症は、その言葉のイメージから誤解を受けることも多いですが、自閉症の症状の程度、知的障害の程度も人によりさまざま。見た目で障害が分かりにくいこともあり、周囲から「しつけのできていない子」と非難され、祖父母を含む親戚、夫でさえも昔は当たり前に居ただとか、個性だとか、大袈裟だとか言ってくる。実母は、どうしてこうなっちゃったんだろうねぇ?と言い放ち、挙げ句の果てに、「身体が丈夫なんだからいいでしょう」って、いや、そういうことじゃない。Upload By かさはらあやこ発達障害についてメディアが取り上げるようになったり、認知が高まってサポートしてくれる機関が増えたりと、少しずつとりまく環境は良くなってきている、とは聞きます。でも、まだこの障害について正しく診断し、適切なアドバイスのできるお医者さんは足りないそうです。相談機関も不足しています。地域によっては病院を選べなかったり、100キロ以上も離れていたり、数が少ないため診察を受けるのに数ヶ月以上待たなくてはいけなかったり。子どもを産んでからよく、「子育ては大変だけど楽しいでしょう?」と聞かれます。......楽しい?タノシイ???大変と思うばかりの毎日で、その楽しさがわからず、自分は親として何かが欠けているのではないか?と悩んだりもしました。思うようにならないことの多い子育てです。必要な支援を受けにくい環境、適切な助言をしてくれる専門家が少ない状況...しかも、親兄弟や親戚に、正しい理解をしてください!勉強してください!とも言えない。めちゃくちゃストレス!!だからせめて、自閉症児とその家族の置かれている状況や、自閉症の特性を、なんとなくでいいから知っていただきたい...そんな想いで、これまでSNSに子どもとの日々を投稿してきました。幼稚園に通い始めた息子、成長中の日々をお届けしますUpload By かさはらあやこ癇癪が強くなり、特性が目立ちはじめる2歳頃...産まれてから2年以上、毎日夜泣きでまともに眠ることができず、全く意思の疎通を図れない。息子は一体何者なのか。精神的にも身体的にもすっかり参っていた私。そんな私を支えてくれたのは、療育で関わる先生方はもちろん、担当の保健師さん、話を聞いてくれた友人、SNSで情報を与えてくださる同じ境遇の方々でした。障害を受け入れ、特性を理解し、環境を整えてあげる必要があることに気づくまで、たくさん悩んで、たくさん泣いて、たくさん時間がかかってしまいました。いっちゃんは3歳から幼稚園に通っています!SNSで投稿をするようになってからは、目撃するたびに心が痛くなっていた特性を愛おしいと思えたり、 クスッと笑えるようになったり。息子の成長を通し、うちの子も同じ!と愛おしく感じていただいたり、自閉症ってこんな感じなんだ、こんなことに困っているんだと知っていただいたり...そんな風に思ってくれる方が少しでも増えるようなコラムがお届けできればと思っております。よろしくお願いいたします!
2020年09月30日息子の友人、おじいさんに席を譲られた!息子が特別支援学校高等部の頃のことです。子ども達が同じ放課後等デイサービスに通うママ2人と私とでお茶をしました。息子(17歳)は自閉症、A君(16歳)、B君(18歳)にはダウン症があります。小学校の頃から同じ放課後等デイサービス、同じ特別支援学校高等部に通っていました。10年以上の長い付き合いなので、結構突っ込んだ会話もドンドンできる気の置けない関係です。Aママ「ちょっと聞いてよ。この間、息子がバスで立っていたら、おじいさんに席を譲られそうになったらしいの」(A君は、当時、一人で公共のバスを使って下校していました)私「それで、本人はどうしたの?」Aママ「『いいです!』って断ったみたい。この話を息子から聞いたとき『やっぱ、“世間からは障害者だから大変だ”って見えるんだ~』と思い、悲しくなったよ!」Bママ「うちの子だったら、きっと『ありがとう!』」と言って席に座っちゃうかも!」私「外見から『障害がある』と分かるのも、理解してもらいやすいと思うから、私はうらやましいよ。本人が言葉に出したり積極的に伝えようとしなくても、周囲の人がSOSに気づいて、救いの手を差し伸べてもらいやすいでしょう。うちは見た目ではわからないから、バスの中で奇声を発したり、落ち着かないと怒鳴られてしまい、それでまたパニックを起こして…」Aママ「そうなのかあ…」もちろん、ダウン症のある子にも知的重度、軽度があり、身体面でも心疾患があったり、身体が弱い子もいたりします。そんな知識があって、おじいさんは「席を譲ろう」と思ったのかもしれません。でも、A君は元気一杯の子でした。このことを実家の母(80歳)に話したら「私だったらダウン症の子がいても席は譲らない」と言っていました。人それぞれです。「普通」として扱われる見た目ではわかりにくい発達障害児は、ぱっと見は定型発達のように見えます。息子は知的障害がある自閉症(IQ37 療育手帳3度)ですので、グレーゾーンではありません。それでも、「障害があるので色んなことが難しくてできないので宜しくね」とママ友に伝えても、容姿を見て「そんなことないじゃない、普通じゃない、しっかりしているじゃない」と数えきれないくらい言われました。誤解もある・NHKの番組で放送していたのですが、成人しているダウン症のタレントさんが居酒屋でビールを頼んだら「ビール飲ませても大丈夫なのかな」と店主が悩んでいたそうです。(年齢ではなく、「ダウン症の人にアルコールは大丈夫なのか」と思ったようです)・心疾患があり、4歳の子をバギーに乗せていたママ。「まあ、立派な足があるのにお嬢ちゃん、ママに甘えないで歩かないとダメよ」と言った見知らぬ人から言われていました。・内部疾患(心臓機能障害、腎臓機能障害、呼吸器機能障害)があるため電車の優先席に座っていた若者に対して「年寄りに譲りなさい」と言わんばかり前に立っている年配者がいました。(ヘルプマークを付ける方法もありますが、まだ世間には浸透していません)障害特性はあるけれど、性格はみんな違う「自閉症の子は秘めた才能がある」だとか「ダウン症の子はピュアだ」とか「これこれこういう障害の子は○○である」と思われていることがあります。確かに障害による特性はありますが、そんな型にはまったものではないと思います。何故なら、みんな一人の人間ですから…。生まれ持った気質や育った環境で全く性格が違ってきます。そんなことを感じたママ友との会話でした。同時に、「こんな突っ込んだ話が出来るママ友がいることは幸せなことだ~」と感じたお茶の時間でした。
2020年09月22日■前回のあらすじ完母にこだわるあまり口にするものに恐怖を感じたり、息子が生きているか毎晩不安になったり…、気の休まらない日々が続くのでした…■産後の方が不安が大きい! そしてまた新たな不安が…月齢に応じて出来ることが、少しでも出来ていないととにかく不安。生後2ヶ月ですでに発達障害を疑ってしまい、ますます眠れなくなりました…。■息子の発育のことを、夫に相談してみたら…気になって仕方なく気付けばつい検索している自分に嫌気がさします…。毎日不安な気持ちを否定せずに聞いてくれる夫の優しさに救われましたが夫と話せない時間は相変わらず不安な気持ちのままでした…。私に今できることは…何かできることはないかと、発達支援センターにメールを送ってみましたがやはりこの月齢では療育を受けることができず…。しかし丁寧で親切な対応に少し安堵し、自分なりに家でできることを探してみました。次回に続きます。※発育に関しての見解は筆者個人の体験によるものです。 【同じテーマの連載はこちら】 湯本もゆのオドオド手探り育児 この連載の全話を見る >>
2020年09月18日「ひゅーちゃんが自閉症と診断されて」第2話。Twitterで人気のさばまる(@funeido45)さんの育児マンガをご紹介! ひゅーちゃんが自閉症と診断されたときのお話です。ひゅーちゃんが自閉症と診断されて 第2話 ひゅーちゃんが自閉症と診断され、療育について調べ始めたさばまるさん。 すすめられて参加した保健センターの相談会でも望むような内容を受けられず、苦労が続きます……。 さばまるさんのマンガは、このほかにもTwitterで更新されています。ぜひチェックしてみてくださいね♪監修/助産師REIKO著者:イラストレーター さばまる2017年4月息子ひゅーちゃん出産/育児漫画と版権イラストごちゃまぜ/自閉症と診断され発語ゼロ。会話してみたい
2020年08月06日新型コロナウイルス感染症(以下、コロナウイルス)の感染対策で、外出時にマスクを着用することが求められるようになりました。スーパーマーケットなどでは、マスク着用をしないと入店できない店舗もあるそうです。しかし、熱中症になりやすい子供やアレルギーを持っている人、外部からの刺激に過敏に反応にしてしまう『感覚過敏』の人など、さまざまな理由からマスクを着けられない人たちがいます。自閉症の子を持つ母親の苦悩ネット上では、ある女性の投稿が反響を呼びました。女性には自閉症の娘がおり、障がいゆえの事情から親子でマスクを着用できません。そのため周囲に誤解されてしまいがちだといいます。感覚過敏である娘さんだけでなく、母親である女性もマスクを着けられない理由とは…。最近「マスクをお願いします」といわれることが多い。 娘を連れていると「この子は自閉症でマスクがつけられません」は受け入れてもらえるけど、「母である私がマスクをつけるとパニックになるので私もつけられません」は分かってもらえず、すごく大変。自閉症のある人は、 新しいことや変化に対して強い抵抗や不安を持つ場合があります。娘さんはイメージをする力が弱く、「マスクの下にいつもの人の顔がある」と想像するのが難しいとのこと。そのため、下の絵のように、顔がマスクに隠れてると下半分の顔がない人間に見えるようでとても怖がるといいいます。女性が娘さんに説明を重ねることで、少しずつマスクを着けた人の顔にも慣れてきました。しかしそれでもやはり「母親だけはマスクをしてほしくない」という状態とのこと。以前、病院の待合室で女性がやむを得ずマスクを着けた時には、パニックを起こしてしまったそうです。母子はなるべく人と距離を取り、ひっそりと買い物をしていますが、それでも周囲から冷たい視線を浴びる時があるといいます。女性は「マスクをしてないことは本人が一番分かっています。どうぞそれを責めるために近づくのではなく、事情があるかなと距離を取ってもらえるとありがたいです」とつづっていました。女性の一連の投稿に対し、ネット上では多くのコメントが寄せられています。・教えていただきありがとうございます。「マスクをしていなくても仕方ない」と思っていましたが、こんな風にしか見えないのは怖いですね。・お嬢さんにとって、どんなに怖いか…。分かりやすい絵ですね。勉強になりました。・『マスクを着けられません』マークのキーホルダーやバッジがあるといいかもしれないと思います。・マスクができない理由があるってことがもっと周知されていくといいですね。コロナウイルス禍でマスク着用が当然のような空気が生まれていますが、『マスクをしていない=非常識』ととらえるのは、あまりに短絡的でしょう。マスクをしたくてもできない人たちがいるということを理解し、一人ひとりが思いやりの気持ちを持ちたいものですね。また、マスクを着けられない当事者にばかり『工夫』や『配慮』を上から目線で求めるのでなく、社会全体の問題として、柔軟な対応を考えていきたいところです。※許可は頂いておりますが、投稿者様のご意向により匿名で掲載しております。[文・構成/grape編集部]
2020年07月30日アメリカ・フロリダ州の森の中で、3歳の男の子が行方不明になりました。ある日の朝、マーシャル・バトラーくんは家族が気付かないうちにオムツ姿で家を出て、どこかへ行ってしまったのです。マーシャルくんは自閉症をもっていて、言葉でコミュニケーションをとることができないのだそう。パニックになった家族は近所を必死で探しましたが見つからず、郡の保安官事務所に捜索願を出しました。UPDATE: Child has been located. __________WCSO SEARCHING FOR MISSING THREE-YEAR-OLD BOY IN PONCE DE LEONWalton...Posted by Walton County Sheriff, Michael A. Adkinson, Jr. on Wednesday, June 3, 2020保安官事務所はFacebookでマーシャルくんの目撃情報を呼びかけます。すると人々から彼の無事を祈るコメントが次々と書き込まれ、「捜索に協力したい」という人たちも現れます。その1時間後、保安官事務所が新たな情報と写真を追加しました。犬が男の子と一緒にいるかもしれません。見かけた人は保安官事務所まで連絡をください。Walton County Sheriff, Michael A. Adkinson, Jr.ーより引用(和訳)Posted by Walton County Sheriff, Michael A. Adkinson, Jr. on Wednesday, June 3, 2020海外メディア『WJHG』によると、マーシャルくんの家ではバックウィートとナラという犬を飼っているのですが、2匹ともいなくなっていたのだそう。そして捜索を始めてから数時間後、マーシャルくんは自宅から約1.63離れた川の近くで発見されました。見つかった時、バックウィートとナラが彼を守るようにぴったりとそばに寄り添っていたということです。Posted by Walton County Sheriff, Michael A. Adkinson, Jr. on Wednesday, June 3, 2020マーシャルくんは泥だらけになっていましたが、ケガもしておらず元気だったそうです。彼らを発見した隣人は、「犬たちはマーシャルくんのガイドとなり、安全でいられるように守っていたのでしょう」と話しています。2匹の犬たちは1人で家を出ていくマーシャルくんを見て、心配になってついて行ったのではないかということです。犬の賢さと忠誠心には本当に驚かされます。マーシャルくんも犬たちも無事に見つかってよかったですね。[文・構成/grape編集部]
2020年06月29日家でも外でもおかまいなしに、子どもが癇癪(かんしゃく)を起こして、泣いて叫んで大暴れ…。そうなると、お母さんはどうしていいかわからないですよね。「こんなに癇癪を起こすなんて、私の育て方が間違っているのかしら…」そう不安に感じるお母さんは多いでしょう。そもそも、子どもはどうして癇癪を起こすのでしょうか。その予防法はあるのでしょうか? 子どもの癇癪について、くわしく解説していきましょう。【監修】赤坂ファミリークリニック院長 伊藤明子 先生小児科医師、公衆衛生専門医、同時通訳者。東京外国語大学イタリア語学科卒業。帝京大学医学部卒業、東京大学医学部附属病院小児科入局。東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻修了。同大学院医学系研究科公衆衛生学/健康医療政策学教室客員研究員。2017年より赤坂ファミリークリニック院長、NPO法人Healthy Children, Healthy Lives代表理事。著書・共著に『小児科医がすすめる最高の子育て食』など。テレビ番組「林修の今でしょ!講座」などに出演中。二児の母。■癇癪(かんしゃく)とは癇癪(かんしゃく)を起こすとは?「癇癪」とは、激しい感情を抑えきれず、大きな声を出したり怒ったり泣いたり、時には物を投げたり暴れたりすることです。英語で癇癪は「temper」、特に幼児期の癇癪は「tantrum」、癇癪持ちは「hot tempered」「short tempered」「quick tempered」といいます。hot、short 、quickといった形容詞が、癇癪を起こした時の様子をよく表しているといえるでしょう。【癇癪(かんしゃく)を起こしている子どもの様子】癇癪を起こしている子どもは、突然叫び声を上げたり、泣いたり、怒ったり、手足をバタバタさせたりします。感情が高ぶりすぎると、大きな声で泣きながら床に寝そべってゴロゴロ転がったり、手足をバタバタ振り回したりすることも。外出先で子どもが癇癪を起こすと、お母さんは本当に困ってしまいますよね。▼癇癪(かんしゃく)パターン1: 嫌なことを取り除こうとしている子どもは、癇癪を起こすことで「嫌なことを取り除こう」としています。例えば、公園で遊んだ後、「もう遅いから帰ろう」と子どもに声をかけると、「まだ帰らない! 遊ぶ!」と子どもが泣いて叫んで帰られない…というのはよくありますよね。これは、「嫌なこと=遊びをやめて帰る」を取り除こうとして、お母さんに訴えているわけです。▼癇癪(かんしゃく)パターン2: 困っているサイン子どもが癇癪を起こすもう一つの原因に、「何か困っているサイン」があります。例えば、ブロックが組み立てられない、服のボタンがうまくとめられないなどで、キーッと癇癪を起こし何もかも投げ出してしまう時がこれに当てはまるでしょう。子どもの癇癪(かんしゃく)の原因子どもが癇癪を起こす原因は、大きく分けて次の2つが挙げられるでしょう。▼生理的なもの子どもの癇癪は、欲求不満があったり、疲れていたり、おなかが空いていたりといった、「生理的なもの」が原因というケースが多いでしょう。例えば、おもちゃ売り場で「これ買って!」とダダをこねて、最後には泣いて暴れて…というのは、よくある子どもの癇癪のパターンです。しかし、実はこの癇癪の本当の原因は、「おもちゃが手に入らないこと」ではないことも。疲れていたり、眠かったり、おなかが空いていたりなどの生理的な原因がもともとあり、「おもちゃが買ってもらえない」をきっかけに感情が爆発する場合もあります。▼コミュニケーション手段になっている子どもが癇癪を起こす原因のもう一つには、「コミュニケーションを取るため」というのが挙げられます。親にかまって欲しい、人の注意を引きたいという気持ちから、癇癪という形であらわれるのでしょう。「上の子は聞き分けが良かったのに、下の子は癇癪持ちで…」とこぼすママは少なくありません。上の子に比べ、2番目、3番目以降の子どもは、親を独り占めできることが少ないですよね。もしかしたら、気を引こうとして癇癪という表現方法を取っているのかもしれません。癇癪は、子どもが親に気持ちを伝えるコミュニケーション手段の一つといえるでしょう。癇癪(かんしゃく)が始まるのは1歳になる少し前から?子どもの癇癪を起こし始めるのは、1歳になる少し前くらいからといわれています。ちょうど、少し言葉が出始めた頃ではないでしょうか。赤ちゃんの頃は泣くことしかできなかったのに、言葉という伝達手段を手に入れ、親子でコミュニケーションが少しずつ取れるようになり始めた1歳前後。しかし、子どもは当然、言葉ではまだうまく気持ちが伝えられません。そのジレンマが、癇癪を起こすという行動に結びついているのかもしれません。その証拠に、言葉でうまく感情を伝えられるようになる5歳頃から、ほとんどの場合、癇癪の頻度は少なくなっていきます。■子どもが癇癪(かんしゃく)を起こすのは育て方のせい? 発達障害なの?癇癪(かんしゃく)を起こすのは育て方のせいではない子どもが癇癪を起こすと「私の育て方が悪いのかな…」と心配になったり自分を責めたりするお母さんも多いでしょう。しかし、子どもの癇癪は、お母さんの育て方というより、子ども自身の性格や、その時の状況、環境、子どもの成長の過程とが複雑に絡み合って起こるものです。ごくまれに、心理学的、医学的などの理由で癇癪を起こす場合があります。一度の癇癪が15分以上続く、1日に何度も癇癪を起こすようなら、その可能性が考えられます。癇癪(かんしゃく)持ち=発達障害とは限らない次の3つに当てはまる子どもの癇癪は、その子の性格や環境、成長過程によるものが多いといえます。発達障害と安易に関連づけることはできないでしょう。▼ほかの人と関わるのが苦手子どもは、行動範囲が広がるにつれて、さまざまな人とコミュニケーションを取るようになります。最初はお母さん、お父さん、きょうだいといった家族だけ、次に一緒に遊ぶ同年代のお友だちやその家族、幼稚園・保育園に通い始めたら先生や違う年齢の子どもたち…。関わる人が多くなる過程で、子どもはほかの人とコミュニケーションをとる練習をし学んでいきます。ただし、それも子どもの性格や環境によって、得手不得手の差は出てくるもの。ほかの人との関わりが苦手な子どももいるでしょう。例えば、お友だちとおもちゃの取り合いになった、ブランコの順番を待っていたのに抜かされたといった子ども同士のトラブルは日常茶飯事ですね。そういった時、相手に合わせる、相手と交渉するというのが苦手な場合は、癇癪を起こしてしまうでしょう。▼言葉が遅い言葉がまだうまく使えず、思ったことが伝えられない。また、何か言われても十分に理解できない。そういった時、子どもは自分の気持ちが伝わらず、状況も理解できなくて不安に感じます。それが、癇癪という形であらわれるのです。ほかの子より言葉が遅い子は、同じ年齢のお友だちと遊んでいても、うまく気持ちが伝えられません。そのため、泣いて怒って、時には手が出てしまうこともあるのでしょう。▼気持ちをまだコントロールできない子どもと比べて、大人が感情のコントロールをできるのは、その経験値からです。不快なことが起こらないようにあらかじめ準備をして避ける、嫌なことがあっても人に話すなどして鬱憤(うっぷん)を晴らす、別の楽しいこと思い出して気持ちを切り替えるなど、これまでの経験から自分の気持ちや行動をコントロールする術を知っているわけです。しかし、子どもはまだそういった経験が浅く、感情を抑えることも下手です。嫌なこと、不快なことがあったら、泣く、大声をあげる、怒る、暴れる…。でも、そういった激しい感情の起伏で癇癪を起こすことで、子どもも大きなストレスを感じているに違いありません。それを何度か繰り返すことで、感情のコントロールを学んでいくのでしょう。今は、その途中なのではないでしょうか。発達障害の子どもに見られる症状の一つに、癇癪を起こしやすい傾向があるということで、心配になるお母さんも多いでしょう。たびたび癇癪を起こすからといって、すぐに発達障害と結びつけることはできません。ただし、あまりに頻度と程度のひどい癇癪を起こすようなら一度、専門の小児科医に相談することをおすすめします。■子どもの癇癪(かんしゃく)への対処法癇癪(かんしゃく)が起こる前にできること癇癪は一度始まると、子どもの気持ちが高ぶっている間は、何を言っても通じません。きつく怒ったり、無理やり連れて行こうとすると、火に油を注ぐ結果にも。そうなる前に、先回りして対処し、癇癪を起こさせないようにできると良いですね。▼環境を整える子どもがスムーズに気持ちを切り替えられるような声がけを心がけると良いでしょう。例えば、急いでいる時に子どもが公園で遊びたいと言った場合。「急いでいるからダメ」と言うと、子どもは癇癪を起こしてしまうでしょう。そんな時は、「急いでいるから、滑り台3回だけね」と声がけすることで、子どもはもっと遊びたい気持ちはあるけれど、急いで移動しなければいけないことも理解し、滑り台3回の間に、気持ちをある程度切り替えられるのです。この時、注意したいのは「じゃあ、ちょっとだけね」という曖昧(あいまい)な表現を使うこと。子どもには「ちょっと」「少し」の感覚がわかりにくいので、回数や時間で伝えるようにしましょう。▼子どもに伝わりやすいツールの用意先に紹介したように、子どもに曖昧な表現は通じません。「ちょっと」「少し」といった大人の表現をわかりやすく伝えるツールを用意しておくと良いでしょう。例えば、時計を見せて「長い針がここまできたら終わりね」とか、ゲームやテレビなどはタイマーを使って時間の制限をわかりやすく伝えるなどで、子どもにわかりやすいツールを活用するのも一つの方法です。また、言葉がうまく伝えられない子どものために、気持ちを視覚で表せるツールもあるといいでしょう。例えば、「イライラしている」「怒っている」「落ち着いている」といった感情を表せるイラストを用意して、それを使って子どもが気持ちを伝えられるようにするのも一つの手です。癇癪を起こすきっかけとなる「気持ちをわかってもらえない」という子どものフラストレーションが解消できるでしょう。同様な効果が期待できるコミュニケーション支援アプリなどもあるので活用してみてください。▼癇癪(かんしゃく)が起こった時のルールを子どもと決めておくどんなに予防線を張っても、子どもは何をきっかけに癇癪を起こすかわかりません。いざ癇癪を起こしたら、どう対応すればいいか子どもと話し合っておきましょう。「イライラしたり怒ったりした時は、どうしたらいいかな?」と子どもに聞いて、子どもに決めさせるのです。例えば、一人になれる場所へ移動する、気持ちが落ち着くような言葉をつぶやく、好きなアイテム(ぬいぐるみや毛布など)を触るなど決めておくと、その行動=気持ちの切り替えとなって、感情がクールダウンするきっかけとなるかもしれません。▼食生活を見直す偏食がひどい子どもに、癇癪を起こしやすい、情緒不安定、不安障害といった症状が出る場合があります。青魚に多く含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)や、たんぱく質、鉄分を積極的に取り入れ、糖質、添加物を控えるバランスの良い食生活によって改善する場合もあります。食生活から見直してみるのもおすすめです。癇癪(かんしゃく)が起こったら1: クールダウンさせる子どもが癇癪を起こした時、落ち着かせるために昔から取り入れられている方法に、「タイムアウト法」があります。タイムアウト法は、次の手順で進めます。1.子どもが癇癪を起こして、泣いて暴れたり人に迷惑をかけたりしたら、まずはそれがいけないことだと説明します。2.一定時間いすに座っているように伝えます(必要ならいすまで連れて行きます)。3.年齢の数だけの分数、例えば4歳なら4分間、子どもをそこに座らせます(最長5分間)。ただし、途中で子どもが立ち上がったら、時間はリセットして最初から始めます。4.時間になったら、どうして叱られたのかを子どもに質問します。理由を答えられない場合は、もう一度教えて、思い出させるようにします。このタイムアウト法は、癇癪を起こすことは悪いことだと理解しているのに感情が抑えられない子どもには有効な方法です。そのため、良い悪いがまだ判断つかない2歳未満の子どもには効果がない場合もあります。ただし、癇癪を起こしている真っ最中の子どもを、言い聞かせていすに座らせること自体が難しいですよね。そうなる前に、あらかじめ癇癪を起こした時にはどうするといったことを子どもと話し合っておくといいでしょう。癇癪(かんしゃく)が起こったら2: 感情的に叱らないようにする子どもが大きな声をあげたり暴れたりすると、お母さんもついつい感情的になってしまいますよね。子どもよりさらに大きな声をあげて、なんとか抑えこもうとしてしまいがちです。すると、子どもはそのお母さんの声や態度にさらに興奮してしまいます。感情的に叱るのは、子どもの癇癪には逆効果となります。癇癪(かんしゃく)が起こったら3: ご褒美で釣るのはNGもし、子どもが「お菓子買って!」とスーパーで床に寝そべって泣いてねだったら…。お母さんは恥ずかしくて早く立ち去りたいから、「まあ、いいか…」と買ってしまいそうですよね。特に外出先で子どもが癇癪を起こした時は、なんとか早くなだめようといつもはダメと言っていることも「いいよ」とお母さんは許してしまいがちです。しかし、それを繰り返していると、子どもは「癇癪を起こす=ご褒美がもらえる」と覚えてしまい習慣化します。難しいことではありますが、どんなに癇癪を起こしても、ダメなものはダメと筋の通った態度を見せることは大切です。■子どもの癇癪(かんしゃく)に引きずられないためにまずは大人が落ち着けるようにする子どもが癇癪を起こすと、お母さんも冷静でいるのは難しいですね。しかし、大人同士でも、お互いが感情的になってしまうと「売り言葉に買い言葉」でケンカがヒートアップしてしまいがちです。逆に片方があくまで冷静な態度を崩さなければ、感情的になっている相手もだんだんとクールダウンするもの。「子どもの不機嫌と自分の感情は別のもの」と割り切って、子どもの激しい感情に引きずられないのが肝心。お母さんは常に冷静を心がけ、フラットに淡々と対応するのがいいでしょう。イライラしたらその場を離れるのも◯癇癪を起こしている子どもを目の前にすると、「自分が何とかしなきゃ」とお母さんは焦りますよね。でも、癇癪が長引いてくると、お母さんもイライラしてしまいます。お母さん自身がストレスをためないためにも、子どもの安全を確認したうえで、その場から少し離れるのもいいでしょう。気配は感じられるくらいの距離、例えば隣の部屋やトイレなどに一時避難すると、子どもの姿が見えないだけでも気持ちがリセットできます。その場を離れられない時は耳栓も有効まだ小さくて目が離せない、物を投げたり暴れたりして危ないなどの時は、子どもから離れることは難しいですね。そんな時は、耳栓をするだけでも効果があります。お母さんが一番イライラするのは、子どもが叫んだり大泣きする声ではないでしょうか。それが聞こえないだけで、ずっと気持ちは楽になります。■大人にも癇癪(かんしゃく)持ちっている?大人の癇癪(かんしゃく)持ちとは? 子どもとどう違う?大人でも、子どもほど激しくはありませんが、怒鳴ったり叫んだり、場合によってはつい手が出るなど癇癪を起こしてしまう人はいます。子どもと大きく違うのは、大人は「癇癪を起こすことは悪いこと」と理解していること。大人はこれまでの経験値から、コントロールできない感情は周りの人に迷惑をかける、悪いことだと理解しています。それでも、癇癪を起こしてしまうのが、子どもと大きく異なるところでしょう。大人の癇癪(かんしゃく)への対処法自分自身が「怒りっぽい」「子どもや夫にきつく当たってしまう」「人前でも怒りが抑えられない」といった癇癪持ちの自覚があるなら、次のことを試してみましょう。・その場から離れ、刺激の少ない静かな場所へ移動する。・耳栓をして、耳からの刺激を減らす。・深呼吸をしたり、瞑想する。・自分の怒りを数値化する。・イライラした原因を紙に書き分析する。 など上記の方法で、怒りをコントロールしましょう。もし、夫やきょうだい、父母など近い関係の大人が癇癪持ちの場合、自分自身や子どもに被害があることもあるでしょう。対処法は、子どもの癇癪の場合と似ています。・イライラしていることを自覚させる。・一人にしてクールダウンさせる。・話し合いは落ち着いてから。上記に加え、大人ならではの対応法は「伝えたいことは紙に書いて伝える」こと。直接話すと感情的になってしまうことも、手紙なら冷静に受け取ってもらえるでしょう。■子どもの癇癪(かんしゃく)に悩んだら早めに相談しよう子どもの癇癪で悩んだら、お母さん一人で抱え込まず、次の機関に相談してみましょう。子育て支援センター主に乳幼児の子どもを持つ家庭を対象に、市区町村ごとに公共施設や児童館などで地域に根ざした子育て支援サービスを行っています。自治体ごとに内容はさまざまですが、育児講座や親子で参加するイベントの開催、遊び場スペースの提供、子育て相談、保育サービスの案内などを行っています。詳細は、お住いの市区町村のホームページをご確認ください。児童発達支援事業所・放課後等デイサービス子どもの特性や、心身の発達の遅れ、障害などに合わせた支援を行う福祉施設です。児童発達支援は、主に就学前の子どもを対象に、日常生活に必要な動作の指導、知識や技能の教示、集団生活への適応訓練などを行っています。一方、放課後等デイサービスは、小学生〜高校生が対象。生活訓練や社会交流などの療育プログラムを放課後や夏休みなどの長期休暇を利用して実施しています。事業所によっては言語聴覚士や理学療法士、作業療法士などの専門家による支援も受けられ、子どもの発達や子育ての相談にも対応しています。発達障害者支援センター年齢に関係なく、発達障害を持つ方とその周囲の方(家族や教師など)の支援を行っている施設です。子どもはもちろん大人の発達障害や、その周囲の悩み、困りごとなどの相談もできます。■まとめ心の成長に必要な過程の一つだとわかっていても、子どもの癇癪は、困るし悩むし疲れますよね。あらかじめ、癇癪を予防する方法や、クールダウンの仕方、周囲の適切な関わり方を知っておくと安心ですね。もし、子どもの癇癪があまりに頻繁であったり、長引いたり、激しいもので心配があるようなら、ご紹介した子育て支援機関に一度、相談してみましょう。参考資料:・国立特別支援教育総合研究所 発達障害教育推進センター 「かんしゃくを起こすのですが・・・」 ・国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター 「こんなときどうする?」 ・日本小児精神神経学会 「応用行動分析 ─子どものパニック・癇癪への対応─」 ・国立教育政策研究所 「非認知的(社会情緒的)能力の発達と科学的検討手法についての研究に関する報告書」 ・厚生労働省 「障害児支援の強化について」
2019年11月27日自閉症に特徴的な3つの症状自閉症とは、現在は自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)と呼ばれることが多い、先天的な発達障害の一つで、社会性と対人関係の障害、コミュニケーションや言葉の発達の遅れ、行動や興味の偏りの3つの症状が発達段階で現れるといわれています。今回のコラムでは、この3つの症状について具体的にみていきましょう。出典 : 社会性・対人関係の障害自閉症のある人は、対人関係を築くことが苦手な場合が多いです。社会性・対人関係の障害として具体的な特徴は、・視線を合わせることができない・周囲に関心がないように見える・相手の気持ちが分からない・その場の空気が読めないなどが挙げられます。自閉症のある人は、会話をしているとき等でも目を合わせることが苦手な場合が多くあります。無理に視線を合わせようとすると落ち着きがなくなったり、パニックになってしまうこともあります。このような症状から、対人関係が苦手だと受け止められてしまいます。コミュニケーションや言葉の発達の遅れ自閉症があると、コミュニケーションや言葉の発達が遅れる傾向があります。具体的な特徴としては、・言葉を話すのが他の子どもと比べて遅い・人の話したことをオウム返しする・抽象的な言葉・比喩や皮肉の意味を理解できない・呼んでも反応しない・自分の話したいことだけ一方的に話すなどが挙げられます。自閉症がある人は、言葉を話し始めるのが遅く、言葉の意味を理解するのが困難な場合もあります。言葉を話し始めても、意味のある言葉で会話をするのではなく、誰かの言葉をオウム返しし続ける場合も少なくありません。相手に自分の気持ちがうまく伝わらず、暴れてしまうこともありますが、適切に対応をしていれば成長と共に落ち着いてきます。行動と興味の偏り自閉症のある人は、ある一定の行動をとる傾向があります。行動と興味の偏りについての具体的な特徴としては、・落ち着きがなく、手を動かしたり、部屋の中を行ったり来たりする・毎日決まった行動をし、予定外の行動は取れない・1つのものに執着する・自分の興味があるものに対して、とても執着する・予定外のできごと・初めての人/場所/活動などに抵抗を示すなどが挙げられます。自閉症のある人は、自分の興味のあることに対してとことん熱中する傾向があります。そのため、自分の興味のある物事をとことん調べ、誰も教えていないのに専門家顔負けの知識を持っている人も珍しくありません。自閉症をもっと詳しく知るリンク集「もしかして自閉症?」お子さんの発達等について、気になる症状があるときには、次のコラムが参考になります。自閉症の症状は、お子さんの年齢・発達によって目立つ症状が変わってきます。年齢別の症状について詳しくは次のコラムでご紹介しています。その他にも、自閉症に関連するコラムを出しています。ぜひ参考にしてみてください。
2019年10月28日年齢別に見た自閉症の症状の現れ方とは?出典 : 自閉症(自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD))は、先天的な発達障害の一つです。社会性と対人関係の障害、コミュニケーションや言葉の発達の遅れ、行動や興味の偏りの3つの特徴が発達段階で現れると言われていますが、その症状は成長とともに変化していきます。自閉症の症状は人によって個人差が大きいのですが、大まかな年代別の症状を紹介します。なお、これらの症状は、すべてがあてはまるわけではなく、現れ方は人によって異なります。幼児期(0歳~小学校就学前)自閉症は発達障害の一つですが、発達障害は、言語・認知・学習といった発達領域が未発達の乳児の場合、症状が分かりにくいことがあります。ですから、生後すぐに自閉症の診断がでることはありません。しかし、幼児期全体を通してみると、特徴的な行動をとっていたことが多いと言われています。以下にそれらの症状を紹介します。自閉症がある場合、視線を合わせようとしないことが多くあります。また他の子どもに興味をもたなかったり、名前を呼んでも振り返らないといった場面も目立ちます。定型発達の子が興味をあるものを指でさして示すのに対し、自閉症の子は指さしをせず興味を伝えない傾向があります。知的障害を伴う自閉症のある幼児は、言葉の遅れや、オウム返しなどの特徴がみられます。会話においては、一方的に言いたいことだけを言ってしまったり、質問に対してうまく答えられないなどの特徴があります。定型発達の子どもが友達とのごっこ遊びを好むのに対し、自閉症の子は集団での遊びにあまり興味を示さないことも多くあります。興味をもつことに対して、同じ質問を何度もする子どもも多くいます。また、日常生活においてさまざまなこだわりをもっていることが多く、ものごとの手順が変わると混乱してしまうこともあります。児童期(小学校就学~卒業)年齢相応の友人関係がもてない場合があります。周囲の状況にかかわらず、自分が好きなことを好きなようにしてしまう傾向があります。人と関わるときは何かしてほしいことがあるときなだけのことが多く、基本的に1人遊びを好みます。人の気持ちや意図を汲み取ることを苦手とする子どもも多くいます。きちんと決められたルールを好み、場面に応じて臨機応変に対応することが苦手な傾向にあります。言葉をうまく扱うことが難しく、単語を覚えても意味を理解できない場合があります。また、自分の気持ちや他人の気持ちを言葉にしたり、想像したりすることも苦手です。そのため説明がうまくできないことがあります。思春期~成人期(小学校卒業~)出典 : 抑揚がない、不自然な話し方が目立つ場合があります。コミュニケーション能力が乏しく、人が何を考えているのかなどを想像するのも苦手な傾向にあると言われています。目的のない会話をするのを難しく感じる人が多いです。自閉症の人は物事に強いこだわりをもっています。そのため、興味のあることにとことん没頭することが多いですし、その分野で大きな成果をあげられることもあります。自閉症についてもっと詳しく知るリンク集「もしかして自閉症?」お子さんの発達等について、気になる症状があるときには、次のコラムが参考になります。自閉症がある人には、「社会性と対人関係の障害」「コミュニケーションや言葉の発達の遅れ」「行動や興味の偏り」の3つの症状が発達段階で現れます。具体的にどんな言動として現れるのかについては、次のコラムが参考になります。その他にも、自閉症に関連するコラムを出しています。ぜひ参考にしてみてください。
2019年10月28日「何が食べたい?」「ラーメン!」長男の希望通り車で向かったのですが日曜日の朝、我が家はだいたい長男の「ラーメン!ラーメン!」のリクエストで始まります。ラーメンが好きなのです。「今日はラーメンないよ」というと不満そうな顔をします。「今日は夜、ラーメン食べに行くよ」と言うとニコニコご機嫌。Upload By シュウママその日は朝から約束していたので、出かける際長男は嬉しそうに車に乗りました。お気に入りのラーメン屋さんへと家族で向かいます。ここじゃない!店内へ入る前に長男大パニック!車を走らせていると次男が「今日は、ラーメンだけじゃなくて、から揚げも食べたい!」と言い始めました。すると夫が「じゃあ、みんなが好きなものを食べられるように中華食べに行こうか」と言いました。車は某中華料理店へと方向転換します。その時点で長男は向かう方向がラーメン屋さんではなくなったことに気づいたのか、「あれ〜?あれ〜?」と不安そうな声を出し始めました。でも長男はその中華料理店も大好きです。なので、まあ、かまわないだろうと思い車はそのままお店に到着しました。すると...長男は駐車場で泣き叫んだのです。「ラーメンない!ラーメンない!」すさまじい荒れ方です。とてもお店に入れる状況ではありませんでした。Upload By シュウママ「ここにもラーメンあるよ」と伝えても、納得しません。ここで食事は無理だな...そう思ったので、結局その日は長男の希望していたラーメン屋さんへと向かいました。いつものラーメン屋さんに向かい始めると長男は落ち着きはじめ、到着後はさっき泣いていたのが嘘のように、嬉しそうにラーメンを食べたのです。何が長男の機嫌を損ねたのか...忘れていた特性帰ってきてから、夫と次男とで話し合いました。いったい何が長男の気に障ったのだろう。「シュウはあそこの中華料理店、好きだよね~」と次男は不思議そうに言いました。「やっぱり、ラーメンと約束したら、ラーメン屋じゃなきゃダメなんじゃない?」これは夫の意見。そして落ち着いた結論は、シュウの場合「ラーメンを食べに行く」=「お決まりのラーメン屋さんに行く」ことであって、「ラーメンを食べられればどこのお店でも良い」という訳ではないということ。私たちは某中華料理店でもラーメンは食べられるからいいのではと思いましたが、それではシュウの見通しやこだわりに添わなくなってしまうのでしょう。もしいつものラーメン屋さんでない場所に行くのであれば、「今日は、ラーメンを食べに行くけれど、お肉とかお魚とか、他のものもいろいろ食べたいから、○○(中華料理店の名前)に行くよ」と、理由をつけた事前の説明が不可欠なのでは?ということになりました。Upload By シュウママこの日以降、前もって理由もつけて予定を伝えておけば、長男が想定と違うことでパニックに陥ることはなくなりました。主治医に相談。長男との関わり方についてこういった本人のこだわりにどこまで付き合っていいのか、主治医の先生に質問したことがあります。すると先生は、「本人の想定と違ってパニックになりそうなときには、無理に状況を変えて、周りに合わせるよう促すよりも、周りが自閉症の特徴を理解してシュウくんの意思に添ってあげてください」という回答でした。「何よりも、お母さんが楽でしょ?」Upload By シュウママ確かに、出先でのパニックは本人も辛いし、家族も対応に困ってしまいます。「ときには周囲の状況に合わせなさい、空気を読みなさい」という一般的な子育ての必要はないという先生の言葉に肩の荷がおり、ほっとしました。先生とのお話以降、今わが家で実践しているのは、基本的にその日の予定、特に本人にとってイレギュラーなことは事前に説明し本人に納得してもらうこと、そしてそれでも出てくる想定しきれていなかったこだわりは、その場では無理に矯正せず本人が安心できるやり方に合わせることです。Upload By シュウママ障害のある子どもの育て方に一般論は当てはまらないことが多くあります。それぞれのご家庭で合ったやり方で安心できる環境をつくっていくとよいのかなと思いました。
2019年09月23日ジンベイザメを金魚と言っただけで『発達障害に生まれて』(松永正訓著/中央公論新社)ノンフィクションのモデルとなった立石美津子です。自閉症の息子は、特別支援学校高等部に通っていた頃、学校で制作したこのTシャツを持ち帰ってきました。Upload By 立石美津子私は赤い魚が描いてあったので、「可愛い金魚だね」と言いました。すると…「違う!ジンベイザメだ!違う!違う!」とスイッチが入りパニック!朝食にいつもは食パンなのに、ロールパンを出した。私が「お薬飲んで」を「お薬食べて」と言い間違えた。そんな些細なきっかけで、パニックや自傷は始まります。息子は家の床を蹴り、トイレのドアを思い切り「バーーーーン!」と閉めました。私は「そんなことすると家が壊れて、引っ越しすることになるよ!」と傷口に塩を塗るような言葉をぶつけてしまいました。その朝、息子は折れて黙って登校していきました。家で禁止された息子、外で自傷をその夜、腕に酷い噛み痕があることに気づきました。「この怪我どうしたの?」と聞いたら「登校中、噛んで自傷した」と答えました。その日の朝、私から「家が壊れるよ」「引っ越しすることになるよ」と脅されたので、おそらくものすごく自分の感情をコントロールして、それ以上パニックを起こさないよう、つとめていたのだと思います。でも、結局外で自傷していました。私だって悔しくて泣いているとき「泣くな!」と言われたら、気持ちの持っていき場がなくなり、かえって苦しくなります。泣くことで、少し気持ちも落ち着きます。自閉症のある子にとって、パニックはそれと同じように、自分の気持ちを落ち着かせるためにしているものなのかもしれません。でも、この日の朝、私に強く言われたことで息子は”気持ちの持っていき場”を奪われてしまい…私が見ていないところで自傷をしました。言葉でうまく気持ちを伝えられないとき赤ちゃんは、「お腹すいた」「オムツが汚れて気持ち悪い」「暑い」「寝たいのに寝られない」など、不快な状態を泣いて訴えます。そんなとき、「泣くんじゃない!」と叱ることなく、親はその泣き方から「なぜ泣いているんだろう?」と原因を探り、「おお、よしよし。今、おっぱいをあげるからね」「オムツを替えてやるからね」と不快を取り除いてやります。この体験を通して子どもは「この人は僕を保護してくれる人だ」と母親を認識し、「この世は安全な場所なんだ」とわかってきます。私は保育園や幼稚園で長年仕事をしてきましたので、こうしたことを理解していたつもりですが、息子にはなかなか対応できないでいました。自傷を禁じることしかしていなかった息子は5歳になるまで言葉を話しませんでした。自分の思いがなかなか親に伝わらないとき、こだわりが通らないとき、床に頭を打ちつけ自傷することで伝えるしかなかったのでしょう…。でも、自傷する息子をみることはつらいものです。またそのことで近隣トラブルにつながってしまうこともあり、そのころの私は「やめなさい!」と叱ってばかりいました。息子の行為の背景にある思いまですべてを理解してやれず、叱ってばかりいたことで、「これがいやなんだ!」という気持ちが伝わらず、さらに叱られてしまうことでよりひどく自傷するという悪循環に陥っていたのです。どうすれば良かったのか息子がパニックを起こしたときは、赤ちゃんが泣いたときと同じように、「息子のパニックの原因はどこにあるんだろうか」と探り、「お前の負荷になる原因をなくしてあげるからね」と安全地帯を作ってやらなくてはならなかったのです。でも、大パニックを起こしている息子を目の前にした私に、そんな心の余裕なんかありませんでした。さらに、息子の場合は一度パニックを起こしてしまうと、嫌な原因(例えば「音を消す」)を取り去っても、もう収まりませんでした。パニックを起こしたきっかけを忘れてしまったかのように、今度は息子自身の泣き声に反応して大騒ぎをするのです。そんなときは、そっとしておくしかありませんでした。そして、15分くらいしてから、お風呂の湯船につからせました。すると息子は気分が変わるのか急速に自傷行為は収まってきました。今、私が心がけていることは、「頭ごなしに叱らない」ということです。指摘しなくてはいけないことがあるときも、叱るのではなく共感。そして、説得です。共感も説得もなく、ただ叱っても、息子の気持ちがおさまるどころか大きなパニックにつながってしまうからです。大怪我をするほど自傷していない…!?何度も起こすパニックと自傷に途方に暮れていた私でしたが、息子は、「これ以上やるとひどい怪我になる」のギリギリのところで踏みとどまっていることに気づきました。例えば、外出時パニックを起こして、道路上でスライディングすることもありましたが、大怪我をしない凸凹が少ない道路を選んでいるようにみえました。また、身体を触って抱きしめ「よしよし」となだめる行為自体が、感覚過敏の息子には不快なことで、パニックが増幅されていくことにも気がつきました。さらに1時間も続くように感じましたが、パニックを起こしている時間を測ってみると、一番長くても20分程度でした。修行中Upload By 立石美津子自傷やパニックを起こすのは精神のバランスを保つためにやっている行為。だから、嵐が過ぎ去るのを待ち、余計な手出し口出しをしない方がよいのかもしれません。時間が本人をクールダウンさせてくれます。親が巻き込まれるのは“火に油状態”となります。何もしないことが一番の解決のような気がします。太陽光の角度によっては赤く見えるジンベイザメもいるようです。まだまだ修行中の私です。
2019年08月13日無事、仕事が決まったものの...乗り越えなくてはならないハードルがたくさんありました昨年春から仕事をしている私ですが、仕事を始めるにあたり一番心配だったのはやはり子どもたちのことでした。けれど定型発達の次男は幼さが抜けてしっかりしてきているし、自閉症の長男は平日、放課後等デイサービスに通っているので帰宅時間はだいたい18時。間に合うよう働けば問題ありません。ありがたいことに、かつてお世話になっていた会社で事務のパートが決まりました。平日の10時から16時までの勤務なので、長男の帰宅時間にも間に合う。ほっとしました。けれど、気がつきました。しまった!夏休みをどうしようかと。Upload By シュウママダメもとで聞いてみよう・・放課後等デイサービスに聞いてみました長男が通っている放課後等デイサービスは、学校のある日は学校に直接お迎えに行ってくれ、18時に自宅まで車で送ってくれます。けれど、春休みや夏休みといった長期休暇の期間は、10時から15時30分までになります。Upload By シュウママ私の勤務時間は10時から16時。これでは夏休み中は、放課後等デイサービスを利用したとしても私の出勤時間にも長男の帰宅時間にも間に合いません。一度は仕事を諦めようかと思ったのですが、藁にもすがる思いで、通っている放課後等デイサービスに相談してみることにしました。放課後等デイサービスから、意外な返事が!放課後等デイサービスの責任者の先生に仕事のことと夏休みのことをお話しすると、先生はしばらく考えて「それなら、長期休みの期間だけ預かり時間を延長しますよ」と言ってくださいました。「息子さんの他にも、実は同じように働いているお母さんから、時間を延長できないか相談を受けてます。大丈夫ですよ」そう笑顔を見せてくださったのです。Upload By シュウママそんな先生の言葉は、働く私の背中を押してくれるようで、とてもあたたかかったです。働くことを諦めないで。相談してみることで克服できることがあるかもしれませんもちろん、放課後等デイサービスによっては時間の延長に対応できないところもあるかと思います。けれど、もし私と同じように長期休みの問題で働くことを躊躇している方がいるのなら、すぐに諦めるのではなくて、一度放課後等デイサービスに相談してみて欲しいなと思います。もしかしたら解決することもあるかもしれません。仕事を始めてちょうど1年たちますが、こうした支援があるおかげでなんとか続けてこられています。もともと出不精なこともあって家庭内でストレスを溜めがちだった私ですが、仕事を始めてからは外に出て働くことで気分をリフレッシュすることができるようになりました。そして夏休みを放課後等デイサービスで過ごすことは、長男の成長にもプラスになりました。通っている放課後等デイサービスでは、夏休みはプラネタリウムに行ったり、広い公園を走り回ったりして、家庭で過ごす以上に日々さまざまな活動に取り組むことができます。そのおかげで夜もぐっすり眠り、ご飯もたくさん食べ、元気に過ごしていました。放課後等デイサービスが働く私の背中を押し、長男の成長もサポートしてくれたのです。周囲の人に支えられ、さまざまな問題を乗り越えることができたことを痛感した1年でした。Upload By シュウママ
2019年06月27日サンちゃん、食べ方を工夫する4歳ごろ、麺をすすることが出来るようになったサンちゃん。ちゅるちゅるっと麺が口に吸い込まれていく様が見ていて爽快で、母はとても好きでした。しかし、しばらくしてサンちゃんは麺をすすらなくなりました。どうもその原因は、麺ではなく麺とともについてくるアレだったようです。さて、サンちゃんはアレを回避すべく新しい食べ方を考えたようですが…Upload By たなか れもんUpload By たなか れもんUpload By たなか れもんちなみに、汚れた手はすぐにふきたがってテーブルにこすりつけたりするので、目下お手ふきでふく練習中です!2019年6月28日発売、たなかれもん初の著書『つま先立ちのサンちゃん』。サンちゃんと弟のワッくん、ママ・パパの4人の毎日が描かれています。描きおろしの漫画に加え、療育園の仕組みなども紹介されています。監修は小児科医で医学博士の平岩幹男先生。
2019年06月21日「はじめて履いた靴」へのこだわり『発達障害に生まれて』(松永正訓著/中央公論新社)ノンフィクションのモデルとなった立石美津子です。どんなにかわいいわが子であっても、子育てには苦労はつきもの。自閉症など障害のある子の子育ては、その特性からさらに大変なことが多くあります。その一つがこだわりに付き合うことではないでしょうか。Upload By 立石美津子「僕が歩き始めたとき、人生で最初にお母さんが買ってくれた僕の靴。それは10㎝のベージュ色の可愛い靴でした」何だか歌の歌詞のようですが、そんな淡く美しいものではありませんでした。「これが靴という物だ」と本人は思ったのでしょう。それを履くことが心地よくなります。そこまではOKでした。ところが、毎日これを履いていることで次第にパターン化し、「このデザイン以外の物は僕は受けつけません!」となってしまい、こだわりが誕生しました。息子が、1歳のときのことです。まさか、はじめて買ってやった靴にここまでこだわることになるとは…買った当時は想像もしていませんでした。10.5㎝に。足が少し大きくなったけれど…Upload By 立石美津子しばらくの間、10㎝の靴を履かせていましたが、成長と共にきつくなってきました。そこで全く同じ色、デザインの10.5㎝の靴を買ってやりました。ここで私が違うデザインのものを与えていたら、結果は違っていたのかもしれませんが…たまたま私が同じ靴を続けて買ってしまったことで完全にパターン化し、「この靴でなければならない」となってしまいました。11㎝の靴を求めて子どもの足はドンドン大きくなります。10.5㎝の靴も次第にきつくなりました。そこで、同じ店に買いにいったところ、同じデザインのものはありましたが、11㎝の青色の靴しかありませんでした。それを買い、家に帰って履かせようとしたところ断固拒否、火のついたように泣き叫びました。翌日のお出かけのとき、ベージュの靴を見せて「これはもうきつくなったから、今日からははかないの。青いこっちの靴よ」と言い聞かせましたが通じず、暴れて履いてくれません。仕方なくきついベージュの靴を履かせたら機嫌が直り、きつい靴を履いて出かけました。私はメーカーに問い合わせし、他の靴屋に行き、サイズ違いの11㎝、11.5㎝、12㎝の同じデザインのベージュの色を買い置きしました。生産終了!さあ、どうするところが、息子の足がさらに大きくなり、12㎝ではきつくなりました。メーカーに問い合わせると、すでに生産は終了したとのこと。仕方なく、少しでもデザインが似ている色もベージュの物を買いました。ところが、前と同じく断固拒否!でも、私が頑張ってもないものはなく、その靴を用意することはできません。息子がどんなに暴れても、自傷しても、どうしてやることもできません…。お気に入りの靴はきつくなってしまっているので、息子はかかと部分を潰し、サンダルのような履き方をするしかなくなってしまいました。ゴミ箱に捨てた!?でも、これではやはり歩きづらかったのでしょう。ある日、ふと台所の生ゴミ用のゴミ箱を開けてみたら…そこに“ベージュの12㎝のこだわりの靴”が捨ててありました。私が捨てたのでもなく、本人に「捨てなさい」と命じたわけでもありません。自分で納得して、捨てたのです。「ああ、自分で自分をやっと納得させたんだな」と思いました。捨てた場所は「生ゴミ」のゴミ箱でしたが、それをとがめることはせず、「履けなくなったから、辛いけど自分で捨てたんだね」と褒めました。どんなデザインの靴でも受け入れられるようにこのことがあってからは、靴に関しては足が大きくなって違うデザインになっても、受け入れてくれるようになりました。今、振り返ってみると、洋服については衣替えのときは苦労したものの、それ以外は「ボタンが付いているものはダメ」というくらいで「この服でなければ着ない」というこだわりはなく、与えたものをすんなり着ていました。私は、息子の靴へのこだわりにばかりスポットを当ててしまい、必要以上に悩んでいたのかもしれません。あれだけこだわっていた息子自身、成長する中で折り合いをつけ、どんな靴でも履けるようになりました。子どもが幼いころには周りが“本人のこだわり”に応じてやり「お母さんは僕の嫌がることはしない」「自分に心地よいことを周りが認めてくれる」「大人は自分を守ってくれる人間である」このように安全基地を脅かさないことで、幼いころ、安心できる日が続くと大きくなったとき、我慢もできるようになるのだと、今は思っています。Upload By 立石美津子27.5㎝の靴を見てUpload By 立石美津子どんな靴でも履けるようになった今…「僕が歩き始めたとき、人生で最初にお母さんが買ってくれた僕の靴。それは10㎝のベージュ色の可愛い靴でした」ようやく、はじめての靴は懐かしい思い出となりました。現在、18歳の息子の足のサイズは27.5㎝。大人の男の、少しすっぱい臭いがする靴が玄関に並んでいます。
2019年06月18日空まで飛んで行きたいな小さい子向けの箱ブランコが窮屈になってきたサンちゃん。大きい子向けのブランコに乗ってみるも、なかなか姿勢を保って乗り続けることが難しい様子で、すぐずり落ちてしまうから、お腹をのせてユラユラしていたり。やっぱり、ビュンビュン勢いよく揺らせる、いつものブランコが楽しいよね…。そんなサンちゃんをそっと見守る大きい子向けのブランコくんがいました。果たしてサンちゃんとブランコくんは仲良しになれるのでしょうか…?Upload By たなか れもんUpload By たなか れもんUpload By たなか れもんサンちゃんはこれくらいのことではへこたれないよ!これからもよろしくね、ブランコくん。
2019年05月20日自閉症の長男が10歳になった年に、小さな妹が誕生しました。年が近い上の妹と双子のように育ってきた長男にとって、小さな妹は初めて「自分が守ってあげたい」と思う存在でした。 今回は、下の子の誕生によって長男に初めての感情が生まれたこと、その感情が大きな成長につながり、兄妹の絆が深まったエピソードを紹介します。 年の近い妹に依存していた自閉症の長男わが家の長男に障害があることを知ったのは、長女が生まれてすぐの2歳のころ。年齢相応のことが難しく、幼いころから兄妹は双子のように育ってきました。しかし、成長とともに長女が長男を追い越すことが増え、気が付けば兄妹の関係はすっかり逆転! 「しっかり者の妹に甘える兄」。それが当たり前になり、ますます自立から遠のいていく長男の将来を親として不安に感じていました。そんななか、わが家に新しい家族が誕生したのです。 「お兄ちゃんが守ってあげるよ」家族全員立ち会いのもと生まれたのは、とても元気な女の子。8歳の長女は、待望の妹だったため大喜びでした。しかし、10歳の長男は、どうしていいのかわからず戸惑っている様子。 うれしいけれどうまく言葉にできない長男に、「あなたの妹よ」と声をかけると、少し考えて生まれたての妹にこう話しかけました。「はじめまして、赤ちゃん。これからお兄ちゃんが守ってあげるよ」。長男が初めて自分から誰かを守りたいと思った瞬間だと感じました。 次女の誕生で深まった兄妹の絆次女が生まれてから、長男は立派なお兄ちゃんになろうと一生懸命でした。そんな兄の姿を見た長女は、自然と長男を兄として頼ることが増えてきたのです。もちろんうまくいかないこともたくさんありましたが、小さな妹にとって、自慢のお兄ちゃんになりたかったのだと思います。「これは俺にまかせて!」そう言って、何度失敗してもめげずに、2人の妹を引っ張っていこうとする姿を見せてくれるようになりました。 長男の障害のことがあり、長い間、3人目の子ども産む勇気が持てませんでした。しかし、小さな妹の誕生が兄妹みんなにいい変化をもたらしてくれたことで、改めて「勇気を出して産んでよかった!」と思えました。これからも兄妹3人がなかよく育ってくれることを願っています。著者:戸塚麻心発達障害のある長男、長女、年の離れた次女の三児の母。保育園・アパレルなど幅広い業種を経験し、結婚・出産。子育て中に2級FP技能士を取得し、コンサル会社に勤務。現在は不定期でアシスタント業務をしながら記事を執筆中。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。
2019年05月04日自閉症の長男と、定型発達の次男。わが家の「翌日の準備」風景わが家の双子の息子たちは、4月から小学5年生になります。今思うと、これまで本当にあっという間でした。子どもたちが低学年のころ、私は毎晩2人のかばんの中身を点検していました。Upload By シュウママ定型発達の次男の場合、低学年のうちは先生が翌日の予定を細かく板書してくれていたようで、連絡帳を見れば次の日の必要なものがすぐわかりました。私は、連絡帳を確認して「あれを持っていって」「これを忘れないで」と次男に指示していました。そして自閉症の長男の場合は、連絡帳を見ながら私が必要なものを準備していました。中学年になってくると、次男は「習字の墨汁がないから補充してほしい。それから明日は4時間授業で、給食はないよ」というように、必要なことや予定など自分から私に伝えてくれるようになりました。しかし長男の方はまったく変わらず、今日あった出来事も明日の予定も、自分から教えてくれることはなかったのです。Upload By シュウママ明日は6年生の卒業式。連絡帳をチェックしていたら...。つい先日、6年生が卒業式を迎える日の前夜のこと。私は、いつものように長男の連絡帳を確認していました。「明日は、在校生はモノトーンの服で登校してください」という先生からのコメントを読み、それに合った洋服を出していたところ、長男が横から連絡帳を覗き込んできました。そして何を思ったか、私の服の袖をぐいぐい引っ張るのです。Upload By シュウママ母の袖をつかみ、長男が何度も繰り返した言葉「どうしたの?」と聞くと、長男は切羽詰った表情で繰り返しこう言いました。Upload By シュウママ「何のこと?」と思った私が首をかしげていると、長男はいら立ったように再び「あした、おべんとう!あした、おべんとう!」と大きな声で言いました。その瞬間「あっ!」と思い、私はあわてて学校から配布されている1週間の行事予定表を確認しました。すると…そこには、こう書かれていたのです。Upload By シュウママ前日の連絡帳には書かれていなかったけれど、1週間の行事予定にははっきり「お弁当が必要」だと書いてある!きちんと確認していなかった!私は大慌てで炊飯器のタイマーを設定し、冷蔵庫の中身を確認しました。大丈夫、お弁当の材料はある...。ほっとして振り返ると、長男がにんまり笑っていました。ゆっくりかもしれない。でも、確実に成長しているんだね「明日、お弁当の日だったんだね。教えてくれてありがとうね。ママ、忘れてたよ。」そう言うと、長男はうれしそうにどや顔をしていました。Upload By シュウママおそらく先生から、「明日はお弁当ですよ。おうちの人に伝えてね」などと言われていたのでしょう。それを長男は覚えていて、きちんと伝えてくれたのです。長男が学校からの連絡事項を教えてくれたのは、初めてのことでした。長男も、もうすぐ5年生。小さな成長が見えて、なんだかとてもうれしい1日でした。
2019年03月29日ご飯が熱い!癇癪をおこした長男ある日、夕飯を食べていたときのことです。炊きたてのご飯をほおばった長男は、思いのほか熱かったのでしょうか。私が目を離したすきに、あろうことかご飯の入った茶碗をテーブルにひっくり返しました。Upload By シュウママ振り返ると、長男は怒ったような顔をしながら固まっていました。長男は、癇癪をおこすとよく物に当たります。やってしまった直後はだいたい硬直しています。衝動的に動いてしまって、後で反省するというのがパターンですが、そもそもひっくり返しちゃダメです。私は長男に向き合って叱ろうとしました。叱ろうとした瞬間、長男が発したひとことすると長男は大きな声で言いました。Upload By シュウママ私は一瞬耳を疑いました。先に食べ終わって本を読んでいた次男も一瞬意味がわからず、ぽかんとしていましたが「いや、オイラやってないし」と抗議しました。ところが長男はさらに「おとうとくん、やったねえ」と言うではありませんか。一度ならず二度までも…。バレバレではあるものの長男が初めて嘘をついたのです。初めての嘘に感心…している場合じゃなかった!そのとき、私が一瞬思ったのは、「嘘をつけるようになるなんて、成長したな…!」でした。ついこの間まで、単語もろくに言えなかった長男が、自分の行為について考えを巡らせ、自分を守ろうと言葉を選んで話したということが、なにか感慨深かったのです。イヤイヤ!もちろん、自分を守るためとはいえ、他の人がやったことにするのは、ついてはいけない嘘です。ここはきちんと説明して叱らなければいけません。けれど説明して長男に伝わるだろうか…?どうやったらわかってもらえるだろうか…。そう考えたとき、ふとある考えを思いつきました。どうやって「それはダメ」を伝える?私は次男にこっそり耳打ちしました。Upload By シュウママ私が作戦を説明すると次男もノリノリで参加してくれました。そして、私は次男に向かって「ご飯をひっくり返すなんて、なんてことするんだ!」と言って次男を叱っているふりをしました。「えーん。オイラやってないよ」と次男が泣き真似をしても「嘘だ。認めてちゃんと謝るんだ!」と、続けて怒りながら横目で長男の反応をうかがいました。Upload By シュウママ効果てきめん!反省した長男すると長男は自分がついた嘘で弟が理不尽に怒られている…という状況を理解できたのでしょうか。口を開けてすくみあがっています。Upload By シュウママ私は長男の方に向き直り「茶碗ひっくり返した人は誰?」と聞きました。すると長男は泣きながら手を挙げました。Upload By シュウママ十分反省しているように見えました。「嘘をついたらいけないよ」と私が言うと、長男はこくりと頷きました。その日以来、長男が自分でやったことを次男のせいにしたことはありません。子どもの心や言葉の表現力が成長していくことはとても幸せなことです。けれど、発達障害であってもそうでなくても、悪知恵も同時に育っていくので、気をつけていかないとな…と思った出来事でした。
2019年02月28日スパルタ特訓時代『発達障害に生まれて』(松永正訓著/中央公論新社)ノンフィクションのモデルとなった立石美津子です。わが子がしゃべらない…、言葉が少ない…、変な言葉遣いをすると、周りの子が上手にしゃべっているのを見て焦ったり、比べてしまったり。つい「言葉」だけにスポットを当ててしまい、「わが子の言葉を増やそう!」と必死になってしまうのではないでしょうか?かつての私もそうでした。でも、言葉を増やそうとすればするほど、やたら“オウム返し”が増えるだけでした。母「これは葉っぱよ、葉っぱ」子「これは葉っぱよ。葉っぱ」母(怖い顔になり)「そうじゃなくて、葉っぱ!」子「そうじゃなくて、葉っぱ」母(更に怖い顔になり)「葉っぱ!」子「葉っぱ」母は「やっとできるようになった」とホッとします。しかし!この訓練により、オウム返しが定着してしまい…。母「お名前はなんですか」子「お名前はなんですか」母「お名前はなんですか。立石勇太でしょ!」子「お名前はなんですか。立石勇太」(質問者の言葉までセットで言ってしまう)となってしまい、ガッカリ。そんな経験ありませんか?母「お名前を教えてください」子「…(無言)」という風に、質問の仕方を少し変えるだけで、途端に固まってこともあります。以前、息子とタクシーに乗ったときのことです。運転手さんに、「僕のお名前は?」と聞かれた息子は、「山田太郎※」とタクシーの運転手のネームプレートを読み上げました。オウム返しが減ってからも、会話がなかなか噛み合いません。※ここでは仮名にしています言葉を話す意味よく考えてみると、言葉って単語が増えるだけではダメで、「相手と関わりたい」という強い動機があって発達していくもの。電車の型番、国の名称、リンゴの銘柄を「王林、ジョナゴール、シナノスイート、世界一、富士…」と唱えていても…「ママ、今日は電車に乗ってお出かけしたい」とか「「お母さん、このリンゴ美味しそうだね。買って~買って~」とはなかなか言ってくれないものです。英語だって英単語を山ほど知っていても、「外国人と話したい」という動機がなければ、英会話は上達はしません。これと少し似ているのではないかと思います。息子がしゃべりはじめたきっかけUpload By 立石美津子息子が5歳、うどん屋に行ったときのことです。私と息子は、うどん屋さんで昼食をとっていました。そのとき、あと一本、うどんの切れ端が残っている器を、店員さんが下げようとしました。息子は”まだ、この一本を食べたいのだ!器を下げないでくれ!”という状況に追い込まれました。そして「まだ、食べる!」と叫んだのです。店員さんは慌てて器を戻しました。この経験をきっかけに「要求を叶えるためには言葉という便利なものがあるんだ」と理解したのか、徐々に、例えば「カレーライス食べたい」としゃべるようになってきました。オウム返しでも、心がこもっているUpload By 立石美津子オウムに「おはよう」と声をかけると「おはよう」と答えてくれます。でも、そこに心はこもっていないでしょう。人間が「おはよう」と言っても、オウムは「おはよう。今日の予定は?」「昨晩は良く眠れた?」と言う風には反応はしてくれないので、会話が続きません。息子は現在、18歳。今でもオウム返しをします。母「行ってらっしゃい」と見送ると息子「行ってらっしゃい」と元気に手を振りながら玄関から出ていきます。でもオウムとの決定的な違いは、言葉はオウム返しでも心がこもっていることです。オウム返しの「行ってらっしゃい」でも、ちゃんと意思表明してくれます。そこに心があるのが感じられます。こんな息子を毎朝、笑顔で「行ってらっしゃい~」と見送っている、親バカな私です。親が望む言葉に囚われないで私の身近に18歳になっても言葉がない子がいます。その子は自閉症ではありません。でも、その身振り手振り、表情でしっかりコミュニケーションが取れる子です。「これも言葉の一つなんだな」と感じています。ある自閉症のお子さんは、いつもは“要求語”しか発しないのに、先日はじめて、美しい満月を見あげながら「つき…」と言ったそうです。満月をきれいだと思った感性や、それを伝えようとしたこと(共感)を感じて、お母さんはすごくうれしかったそうです。息子は、要求があるときはたくさんしゃべりますが、会話のやりとりを続けることはまだなかなか難しい状況です。でも、あまり「言葉!言葉!」と焦らないで、その人にとってのそれぞれの言葉、親として見守ってやりたいと思っています。日本語って、難しい?息子のオウム返しがのり移ってしまい、息子が帰宅した時、つい私のほうから母「ただいま」と声をかけてしまい…息子「ただいま」オウム返しを予測して、息子が言うべき言葉を私が先回りして言ってしまうことも多く、なかなか学習できない息子です。でも、よく考えると「おはよう」「おはよう」「こんにちは」「こんにちは」「おやすみなさい」「おやすみなさい」なのに、「行ってらっしゃい」と言われたときは「行ってきます」、「おかえり」と言われたときは「ただいま」と、置かれた状況により言い回しを変えなくてはならない日本語って、実はすごーーーーーーーく難しいのかもしれませんね。2018年9月10日、医師・松永正訓氏が立石親子を取材、書き上げた新刊が発売に。発達障害がある子と母の、幼児期から今までに渡る育児について綴られています。
2019年02月07日次男のランドセルから出てきた、1枚の人権作文ある日、双子の次男が学校から帰ってきたときのこと。ランドセルを放り出して遊びに行く次男を見送った後、私は「学校からのお便りはないかな〜」とランドセルを開けて連絡帳ケースを取り出しました。すると中には連絡帳と一緒に1枚の原稿用紙が。Upload By シュウママ開いてみるとそれは学校で書いたと思われる次男の人権作文でした。「ぼくのお兄ちゃんは自へいしょうという病気です」「いつも見ている」というタイトルで書かれたそれは「ぼくのお兄ちゃんは自へいしょうという病気です」という書き出しで始まっていました。原文をそのまま全て載せることはできませんが、それは人権作文というより、長男に対する自分の感情を綴ったものでした。「見たいテレビをやっていないと怒ってテレビを叩くお兄ちゃん」「そんな姿を見るとぼくはとても腹が立つ」…Upload By シュウママなかなか普段本人から聞くことがない素直な思いがずばりと書かれていました。けれど次男はこうも書いています。「でも本当はお兄ちゃんはとても苦しいのかもしれない」人の気持ちを受け止めるレーダー自分でわかっていて、わざと人に意地悪したり叩いたりする人は、いつかバチがあたる。「でもお兄ちゃんには悪気がない」Upload By シュウママそう書いてあったのです。怒りをうまくコントロールできない兄への理解、行動の裏にある感情や理由を考えて寄り添う力が、私が思っていたよりもずっと育っていたことに驚きました。兄の自閉症のことを自分で考えられるようになっていた次男私は学年が上がるにつれて、なんでも話してくれるわけではなくなった次男が今、発達障害の兄をどう受け止めているのか、本心がわかりませんでした。次男の置かれている環境が本人を苦しめていないだろうかとも思っていました。長男は気に入らない音楽が流れると耳をふさいで叫んだり、手当たり次第に物を投げたりします。日常的にそんな兄の姿を見るのは、やはり特殊な環境だと思うからです。発達障害のある子どもがいると、どうしても身近にいる家族は戸惑ったり、苦しい思いをすることもあります。けれど、次男の作文を見て、長男のことを対等に見ている部分があったり、気持ちを想像して思いやったりしていることもわかりました。小さいころと変わらず、まっすぐに兄を受け止めていました。そして、きょうだい児として障害のある兄の心の声に気づき、その気持ちを汲み取り、寄り添う力が育まれているのではないか、そう思ったのです。偶然見つけた1枚の人権作文が次男の成長を教えてくれ、心にほっと温かい明かりを灯してくれました。Upload By シュウママ
2018年11月23日自閉症やダウン症など、親とは違う性質を抱えた子をもつ300組以上の親子を取材した『FAR FROM THE TREE』。世界中で50以上の賞を受賞した作家、アンドリュー・ソロモンの同作は、同じような境遇にいる親子に勇気を与えると共に、あらためて家族の本質について問う内容で瞬く間にベストセラーとなり、24か国語に翻訳されるまでの反響を呼んでいます。ドキュメンタリー映画『いろとりどりの親子』は、この原作の映画化。作品では6組の親子を取材しています。ここで映し出されることは、ひとりの人間としてひとりの親として考えさせられることばかり。ちょっと大げさかもしれませんが、「これまでの社会通念をガラッと変えるようなこと」が示されているといっていいかもしれません。■親の考える「普通」と子どもが違っていたら…そもそもアンドリュー・ソロモンが本著を書くきっかけになったのは、自身がゲイでそれに対し苦悩する両親の姿を見てのこと。自分の両親と同じような状況に置かれたほかの親たちは“どう向き合ってきたのだろう?”ということから、いわゆるマイノリティに属する子のいる家族を取材するようになったといいます。彼はろうの子のほとんどは健常の親から生まれ、親は子どもを治療しようとするけれど、子どもは思春期になると、「自身のコミュニティ」を発見することに気づく。すると同時に、親から子へ受け継がれる「縦軸のアイデンティティ」と、周囲の仲間から学び、養われる「横軸のアイデンティティ」が存在することに気づいたそうです。そして、自閉症、ダウン症、LGBTに関わらず、親の「普通」と、子どもが成長とともに発見するアイデンティティが異なると、両者がその違いを認め、受け入れるまでには時間がかかることがわかったといいます。この親と子の「違いの受容」こそが本作の大きなテーマといっていいでしょう。■親の気持ちが子どもを追い詰めるこの作品には6組の家族が登場します。1組は、原作者で映画のストーリーテラーでもあるアンドリュー・ソロモンと、その父のハワードの親子。2組目は、かつてダウン症の人々の可能性を示す代弁者になるほどの知名度を得て、テレビ番組『セサミストリート』にも出演していたジェイソンと、母親の脚本家、エミリーの親子。3組目は、自閉症のジャックと彼のためにあらゆる治療を試したというエイミーとボブのオルナット夫妻。ほか3組も、直面した問題や抱えた困難はそれぞれに違いますが、最終的に彼らがたどり着いたのは「受容」の心にほかなりません。親としては「普通」の子との違いをそう簡単には認められない。先のエミリーもオルナット夫妻も「この子ならば」と一般的な子に近づけ、普通の学校に通えるように、あの手この手を打つ。でも、そのことが逆に子どもを追い詰めて、関係が悪化してしまう。最終的に行き着くのは、互いに認め合うこと。他の子との違いをきちんと認めてあげたとき、ここに登場する家族は思わぬ世界と未来が開けていくのです。■他人とわが子を比較していたら、親の愛情は伝わらないこれはなにもマイノリティに属する子をもった親に限ったことではないと思います。私自身を含め、一般的な親というのは、どうしても他人の子とわが子を比較しがちとなっているように思えます。「●●君はできるのに、なんであんたはできないの!」とか、「その歳で、この程度のことはできないと恥ずかしいよ」なんて、ついつい口から出てしまう。ほかの子より勉強が遅れているように思えると、やみくもに追いつかせようとしたり、不得意なことがあると、人並みぐらいにできるよう求めたりしがちとなってしまったり。「十人十色」という言葉があるように、子どもによって個性も違えば得意なことも違う。性格も違えば、考え方も違う。そんなことは言われなくてもわかっている。でも、実際は子どもがほかより劣っていることがあると敏感に反応してしまう自分がいることに気が付き、愕然とします。そうしてついつい冷たく、厳しく当たってしまう。でも、それは残念ながら、どんなに愛情があっても一方通行。まずは、互いの意思を尊重して認め合う。子どももひとりの人格者。そこからはじめないと親の愛情が伝わらないことを本作は教えてくれます。そして、違いを認めることで子どもを楽にできれば、じつは親の気持ちも楽になることを教えてくれます。■「自分たちには直すべきところなんてない!」心を自由にただ、この作品は、そうした親と子の関係で大切なことを伝えながら、そのさらに一歩先のメッセージをわれわれに届けます。それは、いまの社会にある固定観念のチェンジといいますか。ある意味で世の中の意識改革を求めるメッセージです。低身長症のリア・スミスとジョセフ・A・ストラモンドはこう言います。「自分たちには直すべきところなんてない」と。続けて、ジョセフはこう言います。「俺があんたなら自殺すると言い放ったやつがいる。身体が不自由なら、心も不自由だと?」。自閉症で話すことのできなかったジャックは、ある医師によりタイピングで自分の言葉を伝えることができたとき、「僕はがんばっている。僕は頭がいい」と言います。また、アンドリューは以前「同性愛は異性愛より劣ったもの」とずっと感じていたそうです。ただ、ここにきて性的マイノリティに対する見方が大きくかわってきました。病気だとみなされていた同性愛が、いまでは個性として認められることになった。ちょっと視点を変えただけで見方がかわる。そう彼は伝えます。障がい=かわいそう。こういったマイノリティに対するネガティブな社会的なイメージは、そろそろ払拭(ふっしょく)したほうがいいかもしれません。障がいがあっても、マイノリティであっても、ごくごく一般の人間と変わらない。別に自分の境遇を恨んだり、悔やんだりしているだけではない。自分なりに喜びも幸せも感じている。「違い」はけっして闇ではない、考え方によっては大きな光になりうることを、ここに登場する親子のそれぞれの生き方は物語ります。このマイノリティや障がい者に対する意識の改革は、これからの社会を考える上で、非常に重要になってくる気がします。少し飛躍した話にもなりましたが、よりよい親子関係のヒントを与えられるとともに、これからの社会の在り方について見つめるいい機会になることでしょう。ドキュメンタリー映画『いろとりどりの親子』11月17日(土)新宿武蔵野館ほかにて全国順次公開自閉症、ダウン症、低身長症、LGBTなどの子どもを持つ6組の家族を取材したドキュメンタリー映画。困難を抱える子どもと、彼らと向き合う親たちが、自分たちのたどってきたこれまでの山あり谷ありの道のりと、決して苦難ばかりではない歓びの日々について語る。作品中に出てくる言葉、考え方をひとつ変えるだけで「しあわせの形は無限に存在している」ことがほんとうに実感できる心温まる映画です。公式サイト:
2018年11月16日Q. 自閉症スペクトラム障害(ASD)とは?A. 自閉症の特徴のある障害概念のグループです。それまで自閉症やアスペルガー症候群など様々な名称で呼ばれていたものが、「DSM-5」という診断基準で「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」として統合されました。Upload By 井上 雅彦アメリカ精神医学会が策定した最新の診断基準「DSM-5」で、それまで、アスペルガー症候群、高機能自閉症、早期幼児自閉症、小児自閉症、カナー型自閉症などさまざまな名称で呼ばれていたものが、この診断名に集約されました。診断や支援において、これらには明確な線引きがないことから、それぞれの障害に明確な境界線を設けない考え方が、医療の現場で使われることが多い「DSM-5」で採用されたことが経緯としてあります。そして、「連続体」という意味の「スペクトラム」という言葉が使われることになりました。これからこの概念が一般化していくと考えられています。「DSM-5」では、自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害について、主に以下が特徴として挙げられます。■アメリカ精神医学会の診断基準の「DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル第5版)」A. 社会的コミュニケーションの障害B. 限定された反復的な行動様式C. 症状は発達早期に存在している診断ではA、Bの2つの症状を3段階の重症度で評価していきます。(精神障害の診断と統計マニュアル第5版)について詳しく知るもっと詳しく知る自閉症スペクトラム障害(ASD)とは?年代別の特徴や診断方法は?治療・療育方法はあるの?広汎性発達障害(PDD)とは?年齢別に症状の特徴を解説!アスペルガー症候群(AS)とは?症状と年齢別の特徴を詳しく解説します。カナー症候群(カナー型自閉症)とは?アスペルガーとの違い、症状、年齢別の特徴、子育て・療育法を紹介!自閉症 | 文部科学省
2018年10月25日自閉症の息子が5歳のとき――初めて意味のある言葉を発した!Upload By 立石美津子『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』著者の立石美津子です。あれは、息子が5歳のときでした。デパートの讃岐うどんのお店に連れて行ったときのこと。息子が食べていたうどんの器には、あと1本だけ、うどんが残っていました。その器を、店員が「お下げいたします」と持って行こうとした瞬間、大きな声で「まだ食べる!」と叫んだのです。そのころの息子は、まともな単語すら出ていませんでした。それなのに、いきなりの2語文!しかも自閉症らしからぬ、自分の意思をはっきりと示し、まっすぐと相手に届く言葉でした。言葉は単独では発達しないと、主治医に諭されて出典 : 息子は2歳から国立の子ども病院の心の発達科に通っていました。この病院ではソーシャルスキルトレーニングのほか、さまざまな訓練があったので「言葉が話せるようになるトレーニングをさせたい」と申し出ました。ところが担当医は、「お母さん、いくら言葉を教えても、それは単に単語を覚えるだけに終わります。言葉を操ってコミュニケーションをとれるようにはなりませんよ!」ときついことを言うのです。「ソーシャルスキルトレーニングを受けさせたい」と申し出ても、「周りに関心を持つことができてはじめて、社会のルールを学べるのです。○○君(息子の名前)は、排泄・着替えなど自分の身のまわりのことも全くできていないじゃないですか!何を考えているの?」と厳しく言われました。更に、診察室の床に落ちているゴミを口に入れている息子を見て、「ほら、ごらんなさい。ゴミを口に入れているじゃないですか、この段階では“社会性を育てる”なんてずっと先の話ですよ。まだ早い、まだ早い」と言いました。5歳過ぎてもオムツが外れない息子を心配し、「なんど教えてもトイレでおしっこができない。どうしてもオムツを取りたい」と訴えた時も…「オムツだけをとっても、オムツとれた赤ちゃんのままです」と言われる始末。「言葉も、オムツがはずれることも、全部発達の中でできるようになっていくものです」と厳しく諭されました。自閉症の息子、リンゴの銘柄は言えても「買って」とは言わない…出典 : 幼いころ、息子はリンゴの銘柄にこだわりがあり、スーパーに行くと、リンゴの棚の前で「ジョナゴールド・津軽・紅玉・シナノゴールド・秋映・王林…」と覚えている銘柄を順に言っていました。けれども、「ママ、このリンゴ美味しそうだね。買って~買って~」と言うことはありませんでした。息子は、スーパーの中だけでリンゴの銘柄を唱えていたのではありませんでした。動物園など、リンゴなんて目の前にない場所でも、銘柄名をお経のように唱え続けるのでした。これは言葉を使ったコミュニケーションとは言えません。「伝えたい気持ち」があるかどうかUpload By 立石美津子言葉だけのトレーニングをしても単語を単に覚えるだけ。言葉を使ってしゃべるようには、なかなかなりません。息子が意思のある言葉を発したきっかけは、「うどんを最後の1本まで食べたい、器を下げようとしている店員に何がなんでも伝えたい」という強い動機があったからです。「どうしても言葉を使って伝えたい」という動機。この動機づけこそが、言葉を話すようになるための第一歩です。本人が「そうしたい」という気持ちになるまで待つしかないのです。おもちゃで遊んでいるときに、友達に奪われそうになって「嫌だ」と言う。カレーライスが食べたいとき「カレーライス」と叫ぶ。結果、自分の希望が通る。こうして「自分の気持ちを伝えるためには便利な“言葉”というものが、存在するんだ」ということを体験させるしかないのです。それまでは、周りの人たちは、ただ単語をインプットさせようとするのではなく、「思いを伝えるための言葉」で語りかけ続け、ときが来るのを焦らず辛抱強く待つしかないのだと思います。5歳ではじめて意味のある言葉を発した息子。その後、少しずつ、伝えたい気持ちも言葉も発達していきました。今、18歳になった息子は悪い言葉も覚えて、私があまり構い過ぎると「まじ、しつこい」と連発します。母として眉をひそめながらも「友達の真似をして、母親に言葉で感情をぶつけられるようになったなんて、昔に比べたら成長したなあ」と心ではひそかに喜んでいます。2018年9月10日、医師・松永正訓氏が立石親子を取材、書き上げた新刊が発売に。発達障害がある子と母の、幼児期から今までに渡る育児について綴られています。
2018年09月11日