こんにちは。コラムニストの鈴木かつよしです。エコノミストによって想定される“程度の差”こそあれ、「必ずやってくることだけは間違いない」と言われているのが“東京オリンピックが終わった2020年秋以降の不景気 ”です。五輪特需の終了で雇用が減り、建築・不動産バブルが弾け、五輪までに目いっぱい世界に発信した“和のテイスト”商品が市場にあふれて飽和状態になります。今回、筆者は経済学士(慶大)の端くれとしてパパとママのみなさんに、「避けることのできない2020年からの不況にいかに備えたらいいのか」についてお話ししたいと思います。一緒に考えましょう。目次備え1:急激な雇用の減少に備え“手に職”をつけ磨いておく備え2:磨いた職人技もAIが奪おうとするなら、技術に人間的付加価値を加えましょう備え3:投資よりも貯蓄重視で堅実に●備え1:急激な雇用の減少に備え“手に職”をつけ磨いておく筆者がこの原稿を書いている2017年の9月現在、東京の周辺にはたしかに仕事はあります。その多くが非正規の仕事であることは別にしても、雇用がないよりは全然マシな状況であることは言うまでもありません。雇用があるのはそれもそのはずで、森記念財団・都市戦略研究所が試算した“東京五輪開催までに新たに生み出される延べ121万人の雇用”がいよいよその“宴もたけなわ”の状態になりつつあるからです。ほんの6~7年前はとにかく仕事そのものがなくて困っていた若い人たちも、今ならホテル・観光・不動産・建築・飲食・接客・交通・運送・和装・土産物など、どの分野であっても職に就くこと自体で困ることはありません。現政権の支持率のポイント数がピーク時の半分以下に下がった今でも、18歳から29歳までの若者の間でだけは68%の高水準を維持しています(6月3日・4日実施のJNN世論調査より)。この理由は、自分たちより6つ7つ年上の先輩たちと違って「自分たちは“就職だけはある”状況にいる」ことへの一定の評価に由来するものだろうと筆者は考えます。その雇用が、オリンピックの終了と同時に消える ことになるわけです。そしてさらにめぐりあわせの悪いことには、2020年は国民の4人に1人が45歳以上になる年だと言われています。主に若い人たちが就く“現場の仕事”が減ると同時に、45歳以上になってきたパパ・ママ世代の人たちが本来受け持つべき“管理職”のポストも奪い合い の状況になります。こういった状況に直面するのが明らかな2020年に備えて働くパパ・ママのみなさんが特に身につけておくべき能力は、統率力とか人を束ねる力といった空気をつかむようなものではありません。「英語と中国語でお客様とコミュニケーションができる」とか「物流倉庫のようなロジスティックなシステムのメンテナンスや設計ができる」などといったような、具体的に何かができる“腕前”であり、簡単に言うなら“手に職をつけておく”ということだろうと思うのです。●備え2:磨いた職人技もAIが奪おうとするなら、技術に人間的付加価値を加えましょうしかしながら、そうやってパパ・ママ世代が必死になって磨いてきたいろいろな分野における“技術”や“腕前”をも、人工知能(AI)がだんだんと凌駕する ようになってくる。2020年はそういう年だとも言われています。名人芸のように早く正確にレジを打つスーパー・パートのママの職人技も、2020年には相当程度まで電子式の自動レジに取って代わられていることでしょう。卸・小売業におけるカリスマ営業マンや販売員の仕事なども、膨大な量の情報を瞬時にディスプレイしてみせるAIにはいずれ敵わなくなり、奪われるであろうと言われています。そこでせっかく腕を磨いてこられたパパ・ママのみなさんへの筆者からの提言は、「磨いてきた職人技のような優れた技術に、さらに“人間的”な付加価値を加えて AIも追いつけないレベルにまで機能展開しましょう」というものです。レジの達人ママであれば、「自動レジなんてあたしにはムリ」と言う高齢者のお客様たちが、ホッとし安心するような気配りと話術を磨いて数少ない“人力レジ”の担当の座を死守しましょう。カリスマ営業マンのパパであれば、情報量の部分はむしろAIに任せてしまって「それでも私はこちらの商品を推す」的な感性と哲学で業績をさらに伸ばすことにチャレンジしてみてください。●備え3:投資よりも貯蓄重視で堅実にさて、そうはいっても“それでも抵抗しきれない”のが五輪終了後の2020年問題です。ここ最近のオリンピックは開催都市が大会終了後にほぼ“必ず”深刻な経済不況に陥っています。これは経済ジャーナリストの荻原博子さんが折に触れて指摘していることでもあるのですが、唯一の例外が1996年に開催された米国・アトランタでのオリンピックです。そのころの米国は1990年代のIT革命の真っ最中で“五輪後不況”の負の影響をカバーして余りあるほど“次の時代の基幹産業”が暴れまくり、米国経済を根っこのところから押し上げていたのです。残念ながら今のわが国にはそこまでパワフルな次世代産業も成長戦略も存在しません 。であるとするならば、2020年以降に必ずやって来る深刻な不況に備えてパパとママがやっておくべきことは何でしょうか。筆者は荻原さんが近著『10年後破綻する人、幸福な人』の中でおっしゃっていることにそのヒントがあるような気がしています。荻原さんはこの本を通して概ね次のようなことをおっしゃっています。・2020年秋以降の“東京五輪後不況”の到来は残念ながら不可避・そのとき、急激な雇用減で一時的に職を失うリスクは誰にでもある。現金の備えが大事である。・リスク回避の手段としての“投資”はあまり奨めない。このままデフレが続くにせよインフレになるにせよ、最も堅実なのは現金による貯蓄である。デフレが継続するのであればお金は現金で手元に持っておくのが一番得 であるし、現時点でわが国に近々ハイパーインフレが到来する確率は低い。・不動産は“投資”を目的には購入しないこと。東京五輪後のマンションなどの相場価格の暴落を想定すると、投資目的の不動産購入は一般の庶民が手を出すべき分野ではない。ざっとこんなところですが、いかがお感じになられますでしょうか。ちなみに筆者の場合は大筋において荻原さんと同意見です。パパ・ママ世代にはこれからも子どもを育てていく責任がありますから、荻原さんが警鐘を鳴らしているような点を心の片隅にとめて、必ずやってくる2020年秋以降の不景気に備えていただきたいと思います。【参考文献】・『10年後破綻する人、幸福な人』荻原博子・著●文/鈴木かつよし
2017年09月26日「『貯金しても利息はほぼゼロですが、○○なら運用利回り3%以上ですよ』。そんな勧誘を受けたことはありませんか。銀行や郵便局は、今盛んに、投資を勧めています。政府が『貯蓄から投資へ』と言い始めてから、10年以上がたちました。私は常々『デフレの今は、現金が一番』と声を大にして言っていますが、『投資信託』の運用額は増加傾向です(’17年7月・投資信託協会調べ)」 そう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。こうした風潮のなか、「老後の生活も考えると、やっぱり投資したほうがいいの?」と悩んでいる人に向けて荻原さんが書いたのが、『投資なんか、おやめなさい』(新潮新書)だ。その内容をぎゅっと濃縮して、荻原さんが「投資をやめたほうがいい理由」を解説してくれた。 【1】貯金と投資を比べるワナ 「冒頭のセールストークは、本当なのでしょうか。最近よく勧められる『外貨建て生命保険』(積立金を外貨で運用する生命保険)を例に、見ていきましょう。まず、貯金の利息ですが、今や多くの銀行の普通預金金利は0.001%です。10万円を1年預けても、利息はわずか1円。10万円未満なら利息はゼロです。いっぽう、『外貨建て生命保険なら運用利回り3%以上』は、たとえば、利回り2.79%のアメリカ国債(30年もの・9月14日現在)と、6%超の利回りが続くインド国債などを組み合わせると、実現可能です。つまり『貯金しても利息はほぼゼロ』『外貨建て生命保険なら運用利回り3%以上』はどちらも本当です。しかし、両者の比較は本来、できないのです。貯金と保険は、まったく違う商品設計だからです。 貯金は、毎月1万円ずつ積み立てると、1年後には12万円、2年後には24万円と確実に増えますが、大金にするには時間がかかります。ところが生命保険は、毎月1万円の保険料を、たとえ数カ月しか納めていなくても、被保険者が亡くなったら死亡保険金が満額支払われます。ただし、生きて受け取る満期金は、支払った保険料総額を下回ることが多く、高利回りをうたう商品でも得とは限りません。詳しくは2で説明します。それをあえて両者を比べるのは、超低金利で貯金が増えない不安感を利用して、保険が有利だと思わせるためでしょう。そんなイメージ戦略に、惑わされてはいけません」 【2】金融機関は手数料でもうけている 「『運用利回り3%』と聞くと、支払った金額が3%で運用されると思いがちですが、実際は、そうではありません。先の外貨建て生命保険なら、保障のための手数料が、支払った保険料から差し引かれ、残った金額が運用に回ります。手数料は保険の商品設計や年齢・性別によって異なります。なかには、初回保険料の1万円から、加入時手数料など4,000円が引かれて、運用に回るのは6,000円という商品もあります。運用利回りが高くても、お得とは言えません。金融機関にとっては、手数料がもうけになります。これを稼ぐために、私たちに投資を勧めているのです」 【3】外貨建て商品は損得がわかりにくい 「日本は超低金利なので、利回りのよい外国で、その国の通貨に両替して運用する『外貨建て』商品が人気です。外貨建て商品では、私たちが日本円を支払ったとき、また、満期金など日本円を受け取るときに、両替が必要です。そして両替には、為替の手数料がかかります。日本国内で運用する商品には必要のない為替手数料が、外貨建て商品には上乗せされ、手数料が高くなる傾向があります。いくら利回りがよくても、2と同様、運用に回る資金が減ればお得ではありません。金融機関は、手数料をより多く稼げる商品だからこそ、販売に力を入れているのです。 また、外貨建てだと、たとえ米ドルだとしても、損得がよくわからなくなる弊害もあります。日本円なら、本当に得をしているのか自分で計算できる人も、営業マンにすべてを委ねてしまいがちです」 荻原さんは、「投資に疎くて人のいい小金持ちを、彼らは狙っているのです」と言う。 「もし投資するなら、生活に支障のない余剰資金で、自己責任でやりましょう。『何に投資すればいいですか』は絶対にダメ。金融機関のカモになるだけです。『投資はコワイ』『難しい』と感じる方は、投資なんかおやめなさい。『投資しなくちゃいけない』呪縛から、早く解放されましょう」
2017年09月22日「今年は平年より涼しく過ごしやすい気候ですが、値上げの予定が目白押し。家計的には厳しい秋になりそうです。たとえば、鰹節。世界的な不漁などの影響で、9月出荷分から、はごろもフーズは5〜25%、マルトモは7〜11%、にんべんは10月から10〜25%、値上げします。はごろもフーズは、カツオを原料とするツナ缶も、9月から6〜7%値上げしました。日清オイリオは、10月からオリーブ油を10%以上値上げします」 そう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。今年の夏は関東や東北地方でも、記録的な日照不足に見舞われた。東京では21日連続、仙台では36日連続で降雨が観測され、農作物への影響が心配されている。 「野菜はすでに、値が上がり始めているものもあります。8月の最終週は、レタスが前の週より22%値上がり。平年と比べても18%高くなっています(農林水産省発表)。米は、’17年産の早場米は『平年並み』か、平年より『やや良い』収穫量(同省発表)ですが、9月下旬からの収穫しだいでは、高騰につながる可能性もあります」 ため息が漏れる状況だが、荻原さんは「家計は工夫して、やり繰りしていきましょう」と話す。秋の値上げラッシュに対抗する術を荻原さんが教えてくれた。 【1】ストック品のチェック 「値上げ目前だからといって、やみくもに“買いだめ”に走るのはよくありません。特に、鰹節やツナ缶、オリーブ油など、賞味期限の比較的長いものは、ストックのあるご家庭が多いと思います。まずストック品をチェックし、今あるものから、ムダなく使いましょう」 【2】買い物にはメモを持って 「『まだあるのに、買っちゃった』。そんなムダを防ぐためにも、買い物メモは大切です。買い物をしたら、レシートを冷蔵庫に貼りましょう。レシートには、買った商品が記載されていますから、使い切ったものには線を引きます。つまり、線が引かれていない商品は在庫あり。レシートを見れば、買った日もわかりますから、急いで消費するものも一目瞭然です。そして、このレシートが在庫リストになっています。これを見ながら買い物をすれば、ムダな重ね買いが防げます。レシートを持ち歩きたくない方は、携帯電話で写真を撮って出掛ければいいでしょう」 【3】ネットショッピングの利用 「アメリカのマサチューセッツ工科大学では、日米中など10カ国を対象に、ネットと実店舗との価格差を調査しました(’14〜’16年に実施)。その結果、日本はネット価格が実店舗より平均13%安いことがわかりました。価格差が10%以上あったのは、10カ国中、日本だけです。割安なネットショッピングの利用は、年々増えています。総務省の調査によると、ネットショッピングを利用した世帯は全体の34.9%。前年同月より6.8ポイント増えて過去最高です(’17年9月発表)。ネットショッピングは、家で在庫を確認しながら買い物ができることもメリットです。何より、自宅までの配送は、高齢になるほどありがたいサービスだと思います。買い物がつらくなる前に、一度試してみてはいかがでしょう。ただし、ネットショッピングには送料が必要です。送料を含めた料金を、必ず確認してください」 値上げはきびしいものだが、ストックの見直しや適正な買い物量を再検討するなど、買い物習慣を見直すチャンスにしたいものだ。
2017年09月15日「10月から、改正育児・介護休業法が施行され、育児休業の期間が延長されます。これまで、育児休業は原則子どもが1歳になるまでで、保育所に入れないなどの理由があれば、最長1年半まで取得できました。10月以降も原則は変わりませんが、最長期間を2年までに延長します」 こう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。現在、女性の育児休業取得率は81.8%と、比較的浸透しているといえる(’17年7月・厚生労働省発表)。とはいえ、あいかわらず保育所は不足している。今年の待機児童数は4月時点で2万6,081人。昨年より2,528人増加した。3年連続の増加だ(’17年9月・厚生労働省発表)。 「保育所探しに苦しんでいるママたちにとって、育児休業期間の延長は、選択肢を広げるメリットがあります。保育所は4月入所がほとんどです。これまでは4月に入所するために、1歳未満で育児休業を切り上げ、復職する人も多かったと思います。たとえば8月生まれの子は、翌年4月にはまだ生後8カ月です。ここで復帰せず最長の1年半休んだとすると、2月に育休期間が終わり、まだ保育所に入所できない3月に復職しなければなりませんでした」(荻原さん・以下同) 会社によっては休暇を延長できるが、育児休業給付金はもらえない。生後8カ月でも入所しか選択肢はないと考える人もいただろう。 「育児休業期間を2年に延長すると、子育てに専念できる期間が長く持てます。さらに、生まれ月にかかわらず、休業中に4月が2回ありますから、保育所に入所できるチャンスも増えるでしょう。待機児童の減少も期待されています。育児休業は、正社員だけのものではありません。1年以上雇用されているなどの要件を満たせば、パートや契約社員でも取得できます。『非正規だから』と遠慮せず、会社と交渉してみてください」 また、育児休業中は育児休業給付金が支給される。 「給付金は、最初の6カ月間が給料の67%。それ以降は50%です。10月以降は、育児休業の延長に伴って、給付金も最長2年間支給されます。育児休業給付金は、雇用保険からの給付です。昨年10月から、従業員501人以上の会社で働く年収106万円以上のパートなどは、健康保険と厚生年金、雇用保険の3つの社会保険に加入することが義務になりました。あとは雇用期間などの条件をクリアすれば、パートでも派遣社員でも育児休業給付金の対象です。忘れずに申請しましょう」 一方、介護休業は、介護される人1人につき、93日間取得できる。今年1月からは、期間を3分割して、取得できるようになった。 「休業中は介護休業給付金が支給されます。以前は給料の40%でしたが、昨年8月からは、給料の67%に引き上げられています。今年からは分割して介護休業を取得しても、その都度、給付金を受け取れます」 確かに、制度自体は利用しやすく改正されてきた。しかし、荻原さんはこう続ける。 「しかし、介護休業は認知度の低さが問題です。介護休業を『知らない』『聞いたことはあるが内容まではわからない』を合わせると、82.5%の方が『よくわからない』と回答しています(’16年11月・オリックス・リビング調べ)。政府は、『介護離職ゼロ』や『待機児童ゼロ』を掲げています。そのためには、地道な制度の周知・宣伝活動と合わせて、利用しやすい企業風土をつくるよう、企業への指導も徹底してほしいものです」
2017年09月08日「がん治療に明るい光が見えています。がんと診断されてから5年後に生存する人の割合を示す『5年生存率』が、昨年より0.9%上昇。65.2%になりました(’17年8月・国立がん研究センター発表)。そのいっぽうで、がん患者へのアンケートから『働くがん患者の年収は、平均2割減少した』ことがわかりました。減少の理由は、休職、業務量のセーブ、退職がトップ3です。なかには『収入ゼロになった』人が18%もいて、『半分以下になった』人が47%に上ります(’17年8月・ライフネット生命保険調べ)。小林麻央さんなど、がんで命を落とす方もいて、がんへの恐怖はなかなかぬぐえません。しかし、経済的なことに限定すれば、制度を知って賢く利用することで、不安を軽減することができます」 こう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。ただし、それらの制度は自己申告制。知らなかったために生活が困窮することのないよう、荻原さんが“がんの不安を軽減することができる”制度を解説してくれた。 【1】高額療養費制度 「医療費は収入や年齢によって、月々の負担上限が決まっています。たとえば、70歳未満の年収370万〜770万円の方なら、自己負担は月約9万円。それを超えて支払った医療費は、申請すれば返金されます。入院の場合は『限度額適用認定証』を受けておくと、医療機関への支払い自体が限度額になるよう計算してくれ、大金の支払いや返金手続きは不要です。詳しくは、病院窓口にお問い合わせください」 【2】医療費控除 「1の高額療養費制度での返金や民間保険の給付金などを差し引いても、年間の医療費が10万円を超える場合は、確定申告して医療費控除を受けましょう。医療費控除は、5年間さかのぼって申告することができます。体調が落ち着いてからでも間に合いますから、領収証はきちんと保管しておきましょう。先のアンケート調査でも、1の高額療養費制度は病院からの指導もあるようで、利用率が92%ですが、2の医療費控除の利用率は58%。忘れずに申告したいものです」 【3】傷病手当金 「会社員の方なら仕事を休んでも、給料の約3分の2が、最長1年半の間、傷病手当金として支給されます。パートの方なども、社会保険に加入していれば支給対象です。また、1年半を超えても病状が思わしくなく働けない場合は、障害年金が受給できることもあります」 これら公的支援を利用すると、医療費の自己負担はかなり抑えられる。東北大学・濃沼信夫氏の’10年の調査では、がん患者の医療費は平均101万円かかるが、公的支援や民間保険などの給付が平均62万5,000円あった。これを差し引くと、実質負担の平均は約40万円。思ったより負担が少ないと感じる人も多いのでは。 「昨年12月に、改正がん対策基本法が成立し、がん患者が働き続けられるよう配慮することが、事業主の責務として盛り込まれました。がんになったからといって、すぐに辞めないことが大切です。身近にも、がん治療をしながら働いている方が増えてきたように思います。制度などは企業の方針を待たねばなりませんが、私たちはできるだけの応援をしていきたいものです。日本人の2人に1人はがんになるといわれている時代です。お互いさまの精神で、助け合っていきましょう」
2017年09月01日今月3日、今年上半期の特殊詐欺による被害状況を警察庁が発表した。それによると、「振込め詐欺」などの特殊詐欺は、この半年間で8,863件(未遂を含む)。昨年の同じ時期と比べると、2,421件も増加しており、約1.4倍になった。被害額は186億8,000万円で、’14年をピークに減少傾向ではあるが、依然として莫大な金額だ。 「こうした詐欺の被害は、高齢者に集中しています。特殊詐欺被害者の71.9%が、65歳以上の高齢者です」 そう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。特に、発生数のもっとも多い「オレオレ詐欺」では、被害者の95.9%が高齢者。発生数第3位の「還付金詐欺」でも、95.0%が高齢者だ。 「つまり、高齢者を特殊詐欺から守ることが、全体の被害減少にもつながるのです。警察と金融機関は連携して、高齢者への声かけや、注意アナウンスを流すなどの対策をとっています。なかでも、最近ではATMの振込み制限を行う金融機関が増えてきました。これらの取り組みが功を奏し、今期は、8,833件の詐欺を未然に阻止しています。実際にお金をだまし取られた8,338件を上回り、年々、阻止できるケースが増えています。とはいえ、まだ8,000件以上が被害を受けていますし、昨年より、被害件数は増えています。私は、最近のタンス預金の増加が、一因ではないかと思っています」(荻原さん・以下同) 第一生命経済研究所によると、今年2月時点のタンス預金は43兆円。3年間で約3割も増加している。 「超低金利時代で、銀行に預けても利息はすずめの涙ほど。それなら手元にあるほうが安心、便利と考える方も多いのでしょう。しかし、多額の現金が手元にあると、詐欺電話がかかってきた場合でも、金融機関に出向く必要がありません。誰とも会わず、自分一人の判断でお金を渡せるので、被害防止がむずかしくなります。多額の現金は、金融機関に預けましょう。盗難や悪質な訪問販売などのリスクもあります。ご高齢の親御さんがいる場合は、話し合ってみてください」 また、内閣府の調査(’17年3月発表)では、「自分は詐欺被害にあわない」と回答した人が39.6%。「どちらかといえば、被害にあわない」を含めると80.7%の人が、自信を持っているという結果が。 「年代別に見ると、30代以上では高齢になるほど自信のある方が増えていき、70歳以上では50.7%が『被害にあわない』と回答。どの年代よりも多くの方が、詐欺被害は人ごとだと思っています。子ども世代は高齢者のこうした実態をよく知って、マメな連絡を心がけたいものです。なにより大切なことは、高齢者が一人で判断しないこと。何かあったら、信頼できる人に必ず相談してください」
2017年08月25日「相続に関する民法規定の見直しが検討されています。古い民法の規定を、今の時代に合った内容に変えようとする動きです。来年の国会で議論される予定ですから、注目しておきましょう。いっぽう、相続税はすでに’15年1月から、引き上げられています。課税対象者は’14年の4.4%から、’15年には8%に増加しました(国税庁調査)」 そう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。とはいえ、約9割の人が相続税とは無縁。「たいした財産がないから相続の心配なんて必要ない」と思う人が多いのでは。 「ですが実は、相続でもめるのは遺産が少ない家庭が多いのです。裁判所に持ち込まれ、調停成立した相続事案のうち、32%が遺産1,000万円以下です。遺産5,000万円以下まで含めると、全体の約8割を占めます(’15年度・裁判所調査)」 親戚が集まるお盆は、相続を話し合うには絶好のチャンスだという。そこで、“争族”に陥らないように、少しずつ話し合っておくべきポイントを、荻原さんが解説してくれた。 【1】資産をまとめる 「元気な親に、面と向かって相続の話を持ち出しづらい方は、親の資産をまとめて保管することから始めましょう。親は、複数の銀行預金通帳や保険証券、自宅の権利書などを持っています。また、貴金属や子どもに内緒の金融資産などもあるかもしれません。親が亡くなった後、それらを探し出すだけでもひと苦労。『盗難にあうと危険だから』と説得して、金融機関の貸金庫の利用を勧めましょう。資産の中身を聞かなくても、一括して保管していれば、もしものときに役立ちます」 【2】親の意向を聞いておく 「相続について世間話ができそうなら、それとなく意向を聞いておくことが大切です。たとえば、持ち家はついのすみかとして住み続けたいのか。あるいは、自宅を売って老人施設への入居を考えているのかなど。元気なうちに聞けば、意向に沿った形で、早めに対策をたてられます」 【3】先祖のお墓問題 「先祖のお墓についても、ぜひ相談してください。お墓が遠方の故郷にある場合などは、親の代で、お墓の引越し問題を解決してもらうととても助かります。子ども世代は、新しいお墓について情報を集めるなど、サポートしましょう」 【4】「財産は土地だけ。相続税を払う現金がない」場合 「広い土地を所有している、あるいは都心にある持ち家の土地が高騰している場合などは、相続税を納付するケースもあるでしょう。相続税は原則、死後10カ月以内に現金で納付します。現金がすぐに用意できない方も多いので、課税対象者は早めからの準備が必要です」 実の親子といえども、なかなか言い出しづらい相続問題。親が若くて元気なうちから、長期計画でゆっくり進めていこう。
2017年08月18日「10月1日から、ヤマト運輸の宅急便料金が上がります。原因となったのは、今年の春先に発覚した、配達員の長時間労働問題。ヤマト運輸は労働環境の改善を余儀なくされ、大口顧客への値上げ交渉や、配達時間指定のうち12〜14時枠の廃止などを先行実施しました。そしてついに、一般顧客の料金値上げに踏み切ります。消費税増税以外では27年ぶりのこと。140〜180円上がりますが、今回はやむを得ないと思います」 こう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。とはいえ、家計にとっては痛手に違いない。だが実は、値上げと併せて新しい割引サービスも導入される。そこで、荻原さんが新しい割引サービスと、その賢い使い方を解説してくれた。 「まずは『デジタル割』です。ヤマト運輸の営業所にある『ネコピット』というタブレット端末などで送り状を作成すると、50円引きになります。次に、『宅急便センター直送サービス(仮称。以下、直送サービス)』です。荷物の受取り場所として、営業所を指定すると50円引きです。荷物は、指定した営業所まで引き取りに行かねばなりません」 これまでも、コンビニなどの取扱店や営業所などに荷物を持ち込むと、100円引きになる「持込割」があった。これは継続され、先の新割引サービスと併用できる。 「営業所に荷物を持ち込み(持込割)、ネコピットで送り状を作成し(デジタル割)、配送先に営業所を指定すると(直送サービス)、3つの割引合計は200円。値上げ分を超える割引になります。客側が荷物を取りに行ったりすることで、集配業務は効率化されます。手間をかけた分、料金の割引につながるので、工夫して活用しましょう」 ほかにも「クロネコメンバー割」がある。 「登録料無料の『クロネコメンバーズ』になると、プリペイドカード機能を持つ会員カードが送られてきます。カードに5,000円以上チャージして、料金をカードから支払うと、10〜15%引きになるというものです。これは従来からある割引サービスですが、さらに10月からは、クロネコメンバーズが営業所に荷物を持ち込むと「持込割」がメンバーズ以外(100円)より優遇されて150円になります」 一般的に企業は顧客を囲い込むため、会員の優遇や割引を行う。「クロネコメンバーズも同様です」と荻原さん。 「離れて暮らす親や、一人暮らしの子どもに定期的に荷物を送る人など、宅急便をよく利用する人には、お得なサービスです。逆に、利用する機会が少ない人は、チャージ金が余ってしまうとムダです。どれくらい利用するかを考えて、判断してください」 また、佐川急便も11月21日から、60〜230円値上げすると発表。割引制度がどうなるか、注目したい。
2017年08月04日「’16年、自己破産件数は13年ぶりに増加して、約6万5,000件ありました(最高裁判所調べ)。借金の原因は遊興費の使いすぎを想像しがちですが、最近は違います。金融庁の調査でも、銀行カードローンの利用目的は“生活費の補てん”が41.8%で最多、次いで“クレジットカードの支払いを補てん”が24.9%と続いています(’17年3月に発表)」 そう話すのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。たとえば、リストラや病気などで、一家の大黒柱が職を失う。親の介護が始まり、妻がパートをやめざるをえなくなる。そうした状況で困窮し、借金をする人が増えているのだと荻原さんは言う。 「以前、個人がお金を借りる先は消費者金融が中心でした。しかし、多重債務が問題になり、’10年6月には改正貸金業法が施行。年収の3分の1を超える融資を禁じる『総量規制』などが始まり、消費者金融は衰退しました。ところが、当時、融資額の少なかった銀行カードローンは、総量規制の適用を免れたのです。その後、マイナス金利政策などを受け、銀行は厳しい局面を迎えています。企業融資や住宅ローンが伸び悩むなかで、銀行はカードローンに傾倒していきました」(荻原さん・以下同) なかには、カードローンの獲得口座数や融資額を行員の評価対象にし、事実上のノルマとして営業していた銀行もあると、朝日新聞は報じている(’17年7月12日付)。 「銀行という安心感と、CMでよく目にする親近感、収入証明書なども不要で、スマホなどから短時間でカードが作成できる手軽さもあり、銀行カードローンは融資を伸ばしています。総量規制前の’10年3月には3兆2,000億円だった融資残高が、’16年3月には5兆6,000億円と、1.75倍に増加しました(日本銀行調べ)。また、先の金融庁の調査では、銀行カードローン利用者のうち、3年以内に貸金業者からもお金を借りた経験のある人の割合が63.7%に上ることが判明。このうち18%が貸金業者からの借入残高合計が年収の3分の1を超えています。自己破産や個人再生など、借金苦にあえぐ人の増加は、銀行カードローンが一因ではと問題視されています」 今後は、「規制が強化されると思います」と荻原さん。では、もし今、生活苦に陥ったら、どうすればいいのだろうか。荻原さんは次のように語る。 「カードローンやリボ払いには手を出さない。カードローンの利息は約15%です。大手銀行の普通預金利率0.001%と比べると、1万5,000倍もの差があります。どんな事情があっても、預金があるのにカードローンに手をだすなどもってのほか。また、クレジットカードのリボ払いは万年借金のもと。安易に使ってはいけません。そして、2枚目のカードローンは、絶対に作らない。『カードローンを返済するために、新たなカードを作る』。これが借金地獄の始まりです。そうなる前に、弁護士か司法書士に相談して、適切な債務整理を行いましょう」
2017年07月28日格安SIMを使うスマホに対抗し、今月14日から始まったauの新料金プラン「auピタットプラン」が注目を集めている。大々的に“最安1,980円”とうたっているが、本当にお得なのだろうか?経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれた。 「新プランでは、5分以内の通話がかけ放題の『スーパーカケホ』を利用していて、データ利用量が月に1GBまでの場合、月々の通話・通信料は3,480円が基本です(※2年単位での継続利用契約で基本料金が割引になる『誰でも割』適用時、以下同)。この料金から、固定電話などとのセット割があれば500円引き。さらに、今年中に新機種を購入してピタットプランに加入すると、1年間、1,000円引きになります。これらすべての割引が適用されてはじめて、最安料金の1,980円は成立するのです」 とはいえ、先の条件で従来は4,900円だったものが、新プランでは割引前の3,480円でも、約3割の値下げとなる。また、データ利用量に応じた通信料金を、自動的に適用されるのも大きな特徴だ。 「従来はデータ利用量を“3GB”などと設定したら、実際の利用量に関係なく“3GB”の料金が必要でした。新プランでは、たとえば0.9GB利用した月は“1GBまで”の料金が、2.8GB利用した月は“3GBまで”と、自動的に最適な料金が請求されます。設定したデータ利用量を余らせていた方は、通信料の節約につながるでしょう」 これらのメリットはあちこちで語られているが、実は、隠れた問題点が2点あると荻原さんは言う。 【1】iPhone購入者は適用外 「新規や機種変更でiPhoneを購入した人は、ピタットプランを選べません。ただし、すでにiPhoneを使用中のauユーザーは、その機種を使い続けるなら、ピタットプランへ変更ができます」 【2】機種代金の毎月割は対象外 「機種代金は24回の分割で、毎月の通信料などと一種に支払う方が多いと思います。従来は、機種代金の一部が『毎月割』として値引きされていました。たとえば、『機種代金は月々3,600円ですが、毎月割で1,500円引いて、実質負担は2,100円です』などと説明されたと思います。しかし、新プランには毎月割がつきません。代わりに『アップグレードプログラムEX』(利用料は月390円)が導入されます。機種代金を48回分割にし、2年を過ぎて機種を買い替える際は、残金の支払いが不要です。25カ月目に買い替えると、機種代は半額ですむというものです」 ただ、2年ごとに機種を買い替えたい人はともかく、長く機種を使いたい人には、割引がなく負担が増える。 「結論として『ピタットプランは得なのか』との問いに答えるのは、難しいといわざるをえません。割引の適用状況や機種代金との関係などで、一概には答えられないのです。サービスセンターなどに問い合わせて、機種代金まで含めた料金を、現状とよく比較してご判断ください」
2017年07月21日「政府が期待するように投資をする人が増えないためか、あの手この手の投資商品が登場します。なかには初心者向けのものもあります」 こう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。「貯蓄から投資へ」といわれ始めたのは、’00年前半。それから15年ほどたったが、今も、投資は伸び悩んでいる。投資を敬遠する人たちも多いが、理由の1つは「元本割れがイヤだから」ではないだろうか。そんな中、初心者に向けた「元本防衛型」ともいえる新しい投資信託の販売受付けが開始。荻原さんが解説してくれた。 「三井住友銀行の『あんしんスイッチ』も初心者向けの1つです。今月3日から販売受付けが始まりました。大きな特徴は『プロテクトライン』を設けたことです。投資信託が元本保証ではないので、買った時点より値下がりすることもあります。そこであんしんスイッチは当初の基準価格(投資信託の値段)・1万円に対して、9,000円をプロテクトラインと設定しています。値下がりして9,000円を下回ったときは、即時売却されます。つまり、損が一定以上、膨らまないので、安心だというのです」 また、値上がり基準価格が1万600円になったら、プロテクトラインは1万円に。さらに1万1,111円以上になると、最高額を更新するたび、プロテクトラインは最高額の90%に上昇する。 「いったん上がったプロテクトラインは下がりません。ですから、基準価格がある程度、上昇すると『元本保証』状態になることもあるでしょう。そのため『元本防衛型』といわれることもあります。実際には、手数料がかかり、100万円を投資すると90万円になる可能性もあります。注意してください。プロテクトラインを導入した仕組みは、実は、むずかしいものではありません。投資する人が『損はいくらまで』『○円より下がったら売る』と自分で決めて、実行するのと同じだからです。とはいえ、人間は迷いが生じ、タイミングを逸することがありますが、先のあんしんスイッチは、コンピュータによる自動売却なのでプロテクトラインは必ず守られます」 しかし、自動売却がよくないケースも。 「たとえば1万円で買った投資信託が値上がりして、1万5,000円になったとします。プロテクトラインは、その90%、1万3,500円まで上昇します。その後、値下がりし1万3,000円になったら、プロテクトラインを下回ったということで、自動的に売却されます。でも、元々は1万円で買った投資信託です。まだ3,000円の儲けがありますから、売らずに様子見を続けたほうが得だと考える方も多いのではないでしょうか。こういった投資信託は、値動きをチェックする暇もないほど忙しく、大きく損はしたくない方には向いているかもしれません。ですが、根本的には、誰でもできる防衛策を、システム化しただけです」
2017年07月13日郵便局、とくにゆうちょ銀行が変わろうとしている。ゆうちょ銀行は、今年7月以降、投資信託を取り扱う拠点を大幅に増やしていく。 「現在、投資信託を販売する『投資信託取扱局』は、全国に1,315局。これを100局増やして、1,415局にします。また、投資信託の販売はできないものの、相談に乗り、ニーズがあれば投資信託取扱局を紹介する『投資信託紹介局』が、現在は805局。これを、約20倍の1万6,686局に増やす予定です。合わせると約1万8,000局。全国にある直営の郵便局は約2万局ですから、9割に相当する郵便局が、投資信託を取り扱うことになります」 そう話すのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。ゆうちょ銀行は、比較的低リスクといわれる「バランス型投資信託」を中心に扱うとうたっている。だが、荻原さんは次のように語る。 「現在扱っている58銘柄の投資信託のうち、約3割にあたる17銘柄が、基準価格を下回っています。つまり、販売開始時より、値を下げている状態です。また、投資商品の1つとして、『変額年金保険』も扱っています。これも、現在、扱いのある10本のうち、6本は新規募集を停止するほど、運用成績が悪化しています。ゆうちょ銀行が扱う投資商品にも、決して低リスクとはいえないものが含まれていることは、ぜひ覚えておきましょう。どんな投資商品でも、リスクは避けられません。『郵便局だから安心』といった思い込みは捨てましょう」(荻原さん・以下同) いっぽうで、郵便局は、顧客の利便性を向上させる新たなサービスを広げている。 「今年4月、宮崎銀行のある支店が閉鎖されました。このとき全国で初めて、支店近くの郵便局内に、地方銀行である宮崎銀行のATMが設置されることになりました。7月から運用が始まります。また、9月には、東京の新宿郵便局に、北海道銀行など地方銀行25行の手続きができる窓口が設置されます。地方の銀行口座を持っていても、支店が近くにないため、住所変更などの手続きができずに困っていた方には、便利なサービスといえます」 さらに、生命保険の手続きを、郵便局に設置したテレビ電話を通じて行えるようにする実証実験も始めるという。 「多様なサービスを提供して多くの人に利用してもらうことで、郵便局自体の活性化もはかりたいのだと思います。もともと、ゆうちょ銀行は24時間365日ATM手数料が無料ですし、ATMを使ったゆうちょ銀行同士の振り込みは月3回まで無料など、ほかの銀行にはないメリットがたくさんあります。加えて、’19年からは、引き落としなどの際、口座残高が不足していても、50万円までなら自動融資されるサービスも始まるようです。私たちにとって、メリットとなるサービスは十分活用しましょう」
2017年06月29日「『買ってしまった自分が悪い』と泣き寝入りしていませんか?悪質業者への対策として、消費者契約法が改正されました」 こう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。6月3日から施行された「改正消費者契約法」は、高齢者を悪質業者から守ることを、大きな目的としている。また、当初は想定されていなかった新しい被害のケースにも対応できるように、見直された。改正のポイントを荻原さんが解説してくれた。 【投資まがい商品】 「将来、値上がり確実」などと、国内では換金がむずかしい外国通貨や仮想通貨を購入させるなどのケース。 「“値上がり確実”な投資商品はありません。確実でないことを、確実と断定した勧誘を受けて、契約した場合は取り消せます」(荻原さん・以下同) 【過量契約】 一人暮らしでは必要のない量の寝具などを売りつけるなどのケース。 「業者が一般的に考えて、その顧客には多すぎる量だとわかっているのに、販売や契約させた場合は取り消せます」 【事実と違う重要事項を示す】 「この装置を付ければ、電気代が安くなる」などと勧誘し、実際には効果がない装置を取り付けさせるなどのケース。 「業者から事実と違う重要な情報を告げられ、信じて契約した場合は取り消せます」 【都合の悪い重要事項を示さない】 日照などを害する恐れのあるAマンションの建設計画があるのに、説明せずに「日照良好」などと言って、Bマンションを販売するなどのケース。 「都合の悪い情報も開示しなければなりません。顧客側は何でも聞く気があるのに、業者が教えず契約した場合は取り消せます」 これらの契約は取り消せるが、期間の制限がある。これまでは6カ月だったが、改正法になって1年に延びた。しかも、「間違った契約だ」「取り消したい」と認識した時点から、1年間だ。契約した日から、ではない。 「たとえば、久しぶりに実家に帰ったら、新しい布団が山積みになっていたとします。親に聞くと、『1年以上前に買った』と言います。高齢の親の判断能力が乏しいようなら、身内が『おかしい』と気付いたときから1年間が、取り消し可能な期間です。また、契約書に『一切責任を負いません』『いかなる理由があってもキャンセルできません』などの契約条項があっても、その条項自体が無効です。キャンセルできる場合もありますので、お問い合わせください。『この契約はあやしい』と感じたら、まずは、消費者ホットラインに電話して相談しましょう」
2017年06月15日タレントで歌手の森口博子が13日、49歳の誕生日を迎え、アメブロオフィシャルブログを開設。「ずっとずっと歌い続けられるよう日々を丁寧に生きます!」と抱負をつづった。ブログのタイトルは「MORI MORI BLOG」で、森口はこの日、「感謝のハッピー バースデー」と題して初投稿。「いつも心強いエールを届けてくれている温かいファンのみなさん! 初めましてのみなさん! お元気ですか? 今日からこのアメーバさんでブログをお届けさせて頂く事になりました」とファンに報告。「日常のニコニコやドキドキキュンキュンやジ~ンを通じてみんなと繋がる事ができれば嬉しです よろしくお願いします」と意欲を記した。また、家族からのサプライズ誕生日会をしてもらったことにも触れ、「博ちゃん♪お誕生日おめでとう!」のお祝いメッセージや、花でデコレーションした誕生日ケーキと一緒に撮影した写真などを公開。ブログでは「本日13日 、40ホニャララ歳の誕生日を迎えました」と年齢をごまかしていたが、ケーキについて「あれ? ロウソクの数…沁みる(笑)」とコメントしたり、22年前に撮影された27歳の誕生日の写真も公開して「ちなみに27歳の時の私です ポーズが一緒やん(笑)」とツッコミを入れた。そして、芸能生活32年となる森口は「ファンのみんな、そしてスタッフの方々、出会って下さったすべてのみなさんの愛で生かされています ありがとうございます」とあらためて感謝。「年齢は、ここまで歩いてこれた刻印労いと未来への叱咤激励が込められているのだと神様は変化する体力と引き換えに味わい深さをプレゼントしてくれました ずっとずっと歌い続けられるよう日々を丁寧に生きます!」と、気持ちを新たにした。ファンからは「よっしゃ よっしゃ。楽しみ増えたー」「アメブロ嬉しい」と開設を喜ぶ声や、「Happy Birthday」「お誕生日おめでとうございます!」と誕生日を祝うコメント。さらに、「本当に美人で羨ましいです♪」「これからも、若々しく綺麗に。」「22年間変わらない可愛さ!!」と、容姿を絶賛する声などが寄せられている。
2017年06月13日「介護保険関連の改正法が5月26日に成立しました。今回の改正の柱は、所得の高い高齢者の介護サービス利用料を、現行の『2割負担』から『3割負担』に引き上げることです。来年8月から実施されます」 そう話すのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。介護保険制度は’00年、1割の自己負担で介護サービスを利用できる公的保険として始まった。介護サービスの利用者は、当初149万人だったが、’15年には511万人と約3.4倍に増加。また、介護にかかる総費用も、’00年の3兆6,000億円から’15年には10兆4,000億円と、2.9倍に増加している(’16年・厚生労働省)。 「そんななか、’15年8月から『2割負担』が導入されました。年金収入だけで280万円以上ある比較的所得の高い方などが対象で、介護保険加入者の約20%にあたります。それから2年で、今度は『3割負担』の導入が決まりました。対象は、年金収入だけの単身世帯では344万円以上など“現役並みの収入”の方で、約12万人が該当します」 実際の負担額について、「要介護5」で、現役並みの収入があるAさんを例に、荻原さんが解説してくれた。 「Aさんが、介護保険を要介護5の限度額いっぱいまで利用したとします。支払いは、1割負担のときは約3万6,000円でした。これが、2割負担になって約7万2,000円。さらに、3割負担になると約10万8,000円に増えます。いくら所得が高くても、3割負担は厳しいと思います。しかし実は、『高額介護サービス費制度』(以下・高額介護制度)という、負担を抑える仕組みがあります」 これは、介護サービスの利用料に一定の限度額を設け、それを超えた分は返金される制度だ。収入によって5つの区分があり、それぞれの限度額が決まっている。 「先ほどのAさんの場合、月の限度額は4万4,400円です。とすると、現在の2割負担でも限度額を超えていますから、返金を受け取れます。3割負担になっても、高額介護制度の限度額は同じなので、毎月の自己負担額は変わりません。また、高額介護制度は、同じ世帯であれば合算できます。高齢の夫婦世帯などにはありがたい制度ですから、覚えておきましょう。このように、3割負担が導入されても、あわてる必要がない方が多いと思います。ただし、高額介護制度の利用には申請が必要です」 家計にとって影響が大きい高額介護制度だが、その限度額は、今年8月から一部、引き上げられる。 「引き上げの対象は、“現役並み所得”の次の区分である“一般的な所得”の方です。住民税が課税されていて(年金のみの収入で280万円以上など)、現役並みに達しない方(単身世帯で年収383万円未満など)が対象です。月の限度額は3万7,200円から、4万4,400円に上がります(一部、緩和措置あり)。毎月の負担が7,200円増えると、対策が必要な方もいるでしょう。ただ、介護サービスを減らすと、生活が維持できなくなることもありますので、慎重に考えてください。医療費も多い方は、医療費と介護費を合算して『高額介護合算療養費制度』が利用できるかもしれません。お住いの自治体にご相談を」
2017年06月09日「最近、リボルビング払い(以下・リボ払い)についてのトラブルが増えています。’16年度、国民生活センターには、過去最多となる806件の相談が寄せられたといいます。また昨年は、自己破産件数も13年ぶりに増加しました。この背景として、『近年、利用者が増加した、銀行系カードローンのリボ払い問題もあるのではないか』と指摘する専門家もいます」 そう話すのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。リボ払いとは、クレジットカードでの買い物やキャッシングが何件あっても、利用限度額内であれば、毎月一定額を返済する方法(一定額+利息の場合も)。一括払いではかからない利息が、リボ払いでは「手数料」として15%ほど付くのが一般的だ。荻原さんがリボ払いの危険性を解説してくれた。 「一度に50万円の買い物を、支払いが月1万円・利率15%のリボ払いで支払うと、返済総額は78万9,557円。返済回数は79回に及びます。リボ払いは、返済期間が長くなるほど利息がかさむので、利用額を少しずつ積み上げて50万円に達するほうが、一度に50万円の買い物をするより、返済総額は多くなります。これがリボ払いの危険性です。それでもリボ払いがやめられず、別会社でカードを作ってリボ払いを続け、自己破産に陥るケースもあります」 ただ最近は、「一括払いのつもりだったのに、実際はリボ払いだった」という相談も、国民生活センターに寄せられているという。 「これは、リボ払い専用のクレジットカードや、事前登録型のカードでリボ払い設定になっていた場合に起こります。『リボならポイント○倍!』などと勧誘され、リボ払い設定に注意を向けないまま契約してしまう方も多いようです」 こうしたカードでは、店頭で一括払いを指定しても、自動的にリボ払いになってしまうそう。 「クレジットカードの利用明細書は、毎月必ず目を通しましょう。リボ払いを利用した場合でも、一括返済は可能です。できるだけ短期間で完済し、今後、リボ払いは利用しないことをお勧めします。リボ払いとは、ようするに“借金”です。ポイント還元率などに惑わされず、お金は堅実に使いましょう」
2017年06月02日「今年8月から『10年短縮年金』が始まります。これまで、公的年金を受給するには25年以上の納付期間が必要でしたが、8月以降は10年に短縮されます。昨年11月に改正法が制定されました。実際に、年金が受給できるのは9月分からで、入金は10月です。対象者の約74万人には、順次、手続き書類が郵送されています。受給には、年金事務所などでの手続きが必要ですから、早めに済ませましょう」 こう話すのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。これまで年金をもらえなかった人でも、要件を満たせば年金を受け取れるようになる、10年短縮年金。ただし、「国の思惑は、年金問題の解消とはまた別のところにある」と荻原さんは言う。そこで荻原さんが、10年短縮年金を解説してくれた。 「国民年金の受給額は、年金保険料を納めた期間によります。40年間保険料を納めた人は、現在、満額の月約6万5,000円を受け取っています。これに対し、納付期間が10年の方は、満額の4分の1、月約1万6,000円の受給となります。存命中はずっと受給できますから、まったくないよりはいいでしょうか。もちろん、納付期間が15年、20年などと長い方は、納付した期間に応じて年金額が増えます。さらに、厚生年金に加入していれば、その分、上乗せされます」 反対に、納付期間内に免除や猶予があった人は、もっと少額になることも。加えて、納付期間が10年に満たない人でも、未納分の後納や免除分の追納など、今からでも納付期間を増やして受給できる方法が見つかる場合もあるので、年金事務所に相談を。 「今回の年金改正は一部で『無年金対策法』と呼ばれてきました。まさに今、“無年金”が問題になっています。昨年末時点で、国民年金の納付率は61.5%(厚生労働省)。約4割の未納者には、“無年金予備軍”も含まれるでしょう。また将来、『118万人が無年金になる』との推測もあります(’08年・厚生労働省)。無年金で老後資金が尽きると、生活保護を受給するしかないケースも多いと思います」 現在、生活保護を受けているのは約164世帯だが、その半数以上は高齢世帯だ(’17年2月・厚生労働省)。 「政府は、多少なりとも年金を支給することで、生活保護の増加に歯止めをかけたいのでしょう。というのも、生活保護にかかる国の予算は’16年度で約3兆8,000億円と大きいものだからです。財政が厳しいなか、支出を抑えたい気持ちはわかりますが、切り詰めるべき予算は、ほかにあるのではないでしょうか。生活保護費は、命や生活に直結するお金ですから、むちゃな締め付けを見逃してはいけないと思います」 年金財政の逼迫を受け、これまで(1)年金保険料の引き上げ、(2)受け取る年金額の引き下げ、(3)社会保険加入者の増員、(4)支給年齢の引き上げなどの対策が取られてきた。 「先週、自民党は、年金支給を遅らせて受給額を増やす『繰り下げ』を、現行の70歳までから、71歳以降も可能にするよう提言しました。また、今年初めには、日本老年学会が、現在『65歳以降』とする高齢者の定義を、75歳以上とするよう求めたことも話題になりました。外堀から埋めて、年金の支給年齢を現行の65歳から67歳、あるいは68歳へと引き上げたい、という政府の思惑が見え隠れしています」
2017年05月26日「最近、『トンチン年金』と呼ばれる新しい年金保険が登場しています。考案したイタリアのトンティ氏にちなんで、こう名付けられています。トンチン年金とは、契約時に決めた支給開始年齢を超えて存命の場合に保険金が受け取れ、長生きするほど多くの保険金が得られる年金です。反対に、支給開始年齢までに亡くなると、払い込んだ保険料より少ない金額しか受け取れません。残った保険料は、長生きした方の年金支払いに回し、加入者全体の保険金をやり繰りする仕組みです」 そう話すのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。今、日本の平均寿命は女性が87.05歳、男性が80.79歳。女性の2人に1人、男性の4人に1人は90歳まで生きる時代(’15年・厚生労働省)。いっぽう、老後の生活費は公的年金だけでまかなえない人が多く、『長生きしたら貯金が底をつくかも……』と不安になる人も。そこで、荻原さんが「トンチン年金」について解説してくれた。 「こうした『長生きリスク』を解消しようと、トンチン年金の考え方を活用して設計されたのが、日本生命の『GranAge(グランエイジ)』や、第一生命の『ながいき物語』です。たとえば、50歳女性が『ながいき物語』(10年保証期間付終身年金)に加入、70歳まで保険料を月3万円支払い、70歳から年金を受け取る契約をしたとします。この場合、20年分の保険料総額は720万円です。いっぽう、受け取る年金は毎年30万4,300円なので、94歳になれば払い込んだ保険料の元が取れます。95歳以降は長生きするほど得になり、100歳まで生きると、払った保険料の1.3倍を受け取れるというのがポイントです」 ただし、70歳までに亡くなったり、中途解約した場合は、支払った保険料の70%以下しか戻ってこない。保険料を70歳まで払い続けられるか、よく検討を。荻原さんは、“トンチン性”を高め、長生きリスクに備えることは公的年金でも可能だと語る。 「公的年金は65歳からの受給ですが、受給開始を66歳以降に『繰り下げ』ると、1カ月につき0.7%受給額が上乗せされます。最長の70歳まで繰り下げると、42%の上乗せになります。公的年金の受給額が年200万円の方が、70歳からの受給とした場合、年金額は年284万円になります。しかし、本来受け取れるはずの70歳までの年金5年分、1,000万円は受け取れません。どちらが得かを計算すると、82歳以上の長生きだと70歳からの受給に繰り下げると得になり、82歳までに亡くなる場合は通常どおり65歳からの受給が得です。また、公的年会は66歳以降なら月単位で繰り下げを終了し、受給を始めることも可能です。寿命は予測できませんが、65歳を過ぎても年金に頼らずに生活できる方は、考えてみてもいいと思います」
2017年05月24日「一般の方がアパート建設に踏み出すのは、相続税の節税が目的です。相続税は’15年の改正で、課税対象が広がりました。相続税を払わねばならない人が増え、節税ニーズも高まっています」 そう話すのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。今、特に地方で増えている賃貸アパートの建設。貸家の建設数は5年連続の増加で、’16年は8年ぶりに40万戸を超えた(国土交通省)。アパート建設の増加は、従来の業者ではない一般の人の参入が一因と考えられるという。銀行でお金を借りることで資産額が相殺され、相続税対策になるといわれるが、そんなにうまくいくものなのか?荻原さんが解説してくれた。 「節税の仕組みは、次のとおりです。まず、相続税はすべての資産を評価し、現金に換算して課税されます。5,000万円の現金はそのままの金額で評価されますが、周辺地価から5,000万円とみなされた土地は、その70~80%、3,500万~4,000万円と評価されます。つまり現金より土地のほうが、相続税の基になる評価額が低くなり、そのぶん納税額が安くなります。また、『土地に建物がある』『賃貸物件がある』などの場合、さらに評価は下がり、節税になります。加えて、アパート建設のためにローンを組むと、負債であるローン残高は相続財産と相殺できます。1億円の資産があっても、ローン残高が5,000万円なら、相続財産は5,000万円とみなされるのです。こんな説明を受け、『超低金利の今がチャンス』などと言われれば、前向きになる方もいるのではないでしょうか」 年初からの金融庁の調査で、一部の地方銀行が、顧客を建設業者に紹介している実態が明らかになった。契約が結ばれると、銀行は建設請負金額の0.5~3%を手数料として受け取るという。 「とはいえ、アパート経営など初めてという方は不安が大きいでしょう。これに対し建設業者は、建てたアパートを一括で借り上げ、空室があっても一定の家賃を保証する『サブリース契約』を提案します。面倒な手続きや管理はすべてお任せで、家賃が保証されるなら……と心が動き、アパートローンは安定した家賃収入があれば返済できると判断する方もいるでしょう。しかし、ここに落とし穴があります。家賃保証は多くの場合、一定期間ごとに見直され、空室が多いアパートは保証額が引き下げられます。家賃収入がローン返済額を下回って、困窮する方もいます。また、リフォームなども指定業者が行うことが多く、費用が割高になる場合もあります。建設請負契約の際に、さまざまなコストについてきちんと説明していないケースも見受けられます」 だが、荻原さんは「アパート経営そのものが悪いわけではない」と語る。 「ただ業者任せにするとコストがかかり、儲けは減っていきます。決して人任せにせず、自分自身でアパートを“経営する”という覚悟が必要なのです。相続税対策は、アパート経営のほかにもさまざまな方法が考えられます。税務署や税理士などにも相談し、幅広い選択肢を集めたうえで、じっくり検討してください」
2017年05月11日直木賞作家・荻原浩の小説「神様からひと言」が、「神様からひと言 ~なにわ お客様相談室物語~」として6月10日(土)よりNHK総合にてドラマ化されることが決定。また主演には小出恵介を迎えることも分かった。主人公・佐倉凉平(33)は、曲がったことが嫌いな熱血漢だが、ときどき正義感が溢れすぎて上司と衝突してしまうことも。それが原因で大手広告会社からここ「珠山食品」に転職してきたばかりだが、着任早々の大きな会議の席、また上司とケンカをしてしまう。失敗続きの彼が新たに配属されたのは、「お客様相談室」。昨今話題のモンスタークレーマーたちに対応する社内では最前線の部署だ。はじめはふてくされていた涼平だったが、「相談室」には癖はあるけれど面白おかしい面々が。遅刻魔でだらしない先輩が、実はクレーム処理の達人だったとか…。「自分は会社組織には合わないのではないか」と感じていた凉平は、やがて、「相談室」で個性豊かな面々に囲まれ「クレーム処理」のスキルや精神を身につけ、人間的にも成長していくのであった…。原作は、「海の見える理髪店」で第155回直木賞を受賞した荻原氏の「神様からひと言」。本作は、食品メーカーの「お客様相談室」に望まず配属された会社員が、個性あふれる仲間たちとクレーム処理に奮闘する中で、自分の人生を見直していく姿を描いていく。今回は、ネット炎上対応など現代的要素を織り交ぜ、連続テレビ小説「マッサン」の羽原大介が脚本化。2006年には伊藤淳史や陣内孝則出演でWOWOWにてドラマ化もされたが、今回、7月配信開始のNetflixオリジナルドラマ「Jimmy~アホみたいなホンマの話~」で、明石家さんま役を演じることでも話題の小出さん主演でドラマ化となった。小出さんのほかにも、岸井ゆきの、三宅弘城、吉沢悠、小泉孝太郎、市毛良枝、草笛光子、段田安則らが出演する。土曜ドラマ「神様からひと言 ~なにわ お客様相談室物語~」は6月10日(土)より毎週土曜日20時15分~NHK総合にて放送(全6回)。※翌週土曜0時55分~再放送(cinemacafe.net)
2017年04月25日「先日、新聞各紙で、’12年12月に始まった『アベノミクス景気』が戦後3位の長さになった、と報じられました。景気は緩やかながら、52カ月間も回復局面にあるといいます。『どこの国の話?』と首をかしげた人も多いでしょう」 そう話すのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。戦後3位とは、あのバブル期を抜く長さということ!本当に経済はよくなっているのだろうか。私たちの実感とはかけ離れた数字の背景について、荻原さんが解説してくれた。 「この景気回復は、震災復興などの公共事業と、円安による企業収益の増加に支えられています。利益を得ているのは企業ですが、その利益を設備投資や人件費アップに使わず、もうけをため込む『内部留保』ばかり増やしています。’15年度の内部留保は、企業全体で前年より約23兆円増えて約378兆円。アベノミクス景気の4年間で、約80兆円も増えています(財務省)」 反対に、「家計は厳しくなるいっぽうです」と荻原さんは語る。 「収入はほとんど増えないのに社会保険料などの負担が増え、結果的に手取り額は減っています。実際に使った生活費を示す今年2月の『消費支出』は、前年より3.8%減って約26万円。12カ月連続の減少です(総務省・2人以上の世帯)。つまり、アベノミクスの恩恵を受けたのは企業や一部の富裕層だけ。ほか大勢の一般庶民は、さらに厳しい生活を強いられ、『二極化』が進みました。日本は、ますます格差社会になってしまったのです」 アベノミクス景気は’20年の東京オリンピックで終わり、その後には大不況がくると予想する専門家も。「今でさえ厳しい家計が、もっと困窮するかもしれません」と荻原さんはいう。 「私たちは、今のうちに家計をスリム化して、余計なお金は使わない、リスクのある投資はしない−−つまり今後も『借金減らして、現金増やせ』でいくしかないでしょう」
2017年04月24日「小泉新次郎氏を中心とする自民党の若手政策集団が、先月『こども保険』の創設を提言しました。提言によると、こども保険は公的保険で、介護保険と似ています。介護保険は、介護にかかる費用を介護保険料とし、健康保険に上乗せして徴収して、集めた資金で介護サービスの利用料を補助しています。こども保険も同様に、社会保険に上乗せして保険料を徴収し、集めた資金を就学前の子どもがいる家庭に支給するようです」 こう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。与党若手グループ提言の「こども保険」は、社会保険料を0.1%上乗せして、就学前の子ども1人当たり月5,000円を支給するという構想だ。荻原さんは、そんな「こども保険」に疑問を呈する。 「根本には『社会全体で子どもを育てる』という考え方があるようですが、それ自体に異論はありません。しかし、『社会全体で』というなら国民全員が負担する税金でまかなうのが本筋でしょう。増税は世論の反発が大きいので、社会保険なら実現しやすいと考えたのではと、うがった見方をしてしまいます。なにより、必要な資金を国民から徴収しようと考える前に、国は天下り問題をはじめとするムダを排除するなど、やるべきことがあるはずです。安易に“取りやすいところから取る”政策は言語道断です」 そうでなくても、子育てには莫大なお金がかかり、特に女性は働くことも制限されがちだ。場当たり的な対策では未来は開けないと荻原さんは言う。 「『自分の人生を犠牲にしてまで、子育てはしたくない』と考える若い世代も現れており、私たちは説得するすべがありません。国の教育費負担は、OECD加盟国の中で最下位レベルが続いています。政府には『国立大学を無償化する』くらいの大ナタを振るっていただきたい。待機児童問題にも、抜本的な改革が必要です」
2017年04月17日「13年間も続いた年金保険料の段階的引き上げですが、やっと今年で終わります。国民年金は当初予定の1万6,900円、厚生年金は保険料率18.3%で固定。つまり、これ以上は上げないと法律に明記されています」 そう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。また、’18年度からは年金額の改定ルールが変わる。昨年12月に成立した“年金カット法”によるもので、変更点は2つ。1つ目は「マクロ経済スライド」の強化だ。 「マクロ経済スライドとは、支え手である現役世代の減少と受給世代の寿命の伸びを加味して、物価が上がったときに年金額の上昇幅を抑えるものです。ただ、逆に物価が下がった場合に発動すると年金受給額は減ってしまうため、実際に実施されたのは’15年度だけです。来年度からは、物価下落時には減額分をためておき、物価が上がった年にまとめて年金の上昇分から差し引くことになります」(荻原さん・以下同) 2つ目は「物価・賃金スライド」の見直し。 「現行では、物価も現役世代の賃金も下がった場合、物価に合わせて年金額が決まります。しかし’21年度以降は、年金額は賃金の動きに合わせます。たとえ物価が上がっても賃金が減ると、年金は減額されるのです。もう年金は増えない時代になったといえるでしょう」 年金財政のひっ迫が叫ばれてから、政府は主に4つの策、『年金保険料の引き上げ』、『年金カット法などによる年金額の抑制』、『年収106万円以上のパートを社会保険に加入させるなど支え手を増やすこと』、『支給年齢の引き上げ』を講じてきた。 最近は、国民年金未納者への徴収も強化されている。強制徴収の対象は、’14年度には年所得400万円以上で13カ月以上の未納者だったが、’16年度には年所得350万円以上で7カ月以上の未納者になり、さらに今年度からは、年所得300万円以上で13カ月以上の未納者へと広げる方針だ。 「こうした性急な取り立て強化にもかかわらず、『これ以上保険料を上げない』という説明は、たいへん疑わしいものです。いずれ支給年齢の引き上げも議論されるでしょう」 それほど年金資金が苦しいなら、「年金資金をもっと大切に扱ってほしいものです。積立金をリスクの大きな株で運用するなどもってのほか」と荻原さん。 「ですが、すでに株式市場は多大な年金資金が流入しています。これをやめると、日本株の大暴落につながる恐れもあり、年金の株運用は残念ながら引き返せません。年金そのものは、破綻することはないでしょう。ただ、安心できる老後を約束してはくれません。現在の年金額は、現役世代の賃金の約60%です。政府は安定的な年金制度を継続するために、50%水準を目指していますが、今の30〜40代の方の年金は40%程度になるかもしれません」 ’18年度の年金保険料は今年度より150円引き上げられる。物価下落、デフレの影響だ。 「ならば現金第一、コツコツ貯金に励みましょう。私たちは自助努力で、老後資金を作るしかありません」
2017年04月13日「大手銀行の定期預金金利が0.01%と超低金利が続くなか、あらためてクレジットカードなどの『ポイント』が注目されています。ただ、ためることには熱心でも、たまったポイントには無頓着な方もいます。ポイントはお金と同じ。上手に活用することを考えてみましょう」 こう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。カードのポイントは「お金」と同じだという。そこで、荻原さんがカードポイントの仕組みと、よりお得な活用方法を解説してくれた。 【1】有効期限を過ぎると失効 「ポイントの有効期限は2年間が一般的ですが、例外も多くあります。また、“最後にポイントを獲得した日から○年間有効”などと規定するカードもあります。当然、いずれも有効期限を過ぎると、ポイントは失効します。ポイントの失効時期は、カードの利用明細書に書かれていますので、ご確認を」 【2】大切なのは還元率 「カードがどれくらいお得かは『還元率』で比較します。還元率とは、カードをいくら利用して(利用金額)、リターンとしていくら戻ってくるか(ポイント還元)、その割合を示すものです。実際に計算してみましょう。まずは1ポイントの価値、つまり1ポイントが何円に相当するかを調べます。『1ポイント=1円』などと明示されているものもありますが、そうでないものは、価格のはっきりわかる商品券などにポイント交換する場合、何ポイント必要になるかを調べます。たとえばカードAが、2,000ポイントで1,000円相当の商品券と交換できるなら、1ポイントは1,000円÷2,000ポイント=0.5円となります。還元率は0.5〜1%が多く、高いほどお得だといえます」 【3】還元率は一定ではない 「還元率は、交換する商品によって変わります。一般的に、商品より金券類のほうが還元率は高めでお得なものが多いようです。ただ、金券類でも還元率はさまざまですから、お得で利用しやすいものを選んでください」 【4】ポイントで代金を支払う 「代表的なものは、Tカードなどの共通ポイントや、クレジットカードなら楽天カード。たまったポイントを、支払いの全額や一部に充てられます。まさに“ポイントはお金と同じ”が実感できます」 【5】ポイントで投資信託 「セゾンカードはポイントで投資信託の運用ができます。選べる投資信託は、外国株中心にハイリターンを目指すアクティブ型と、国内債券中心で安全運用のバランス型の2種類。100ポイントから運用でき、手数料はかかりません。また、いつでも運用をやめて、ポイントを取り出し利用できます。投資信託に興味のある方は、練習として、ポイント運用を体験してみるのもいいでしょう」 たまったポイントは、ムダなく活用しよう!
2017年03月31日「4月から、パート勤務の社会保険への加入対象がさらに広がります。もともと昨年10月、従業員501人以上の企業で、週20時間以上働き、年収が106万円以上などの条件を満たす方に、社会保険の加入が義務化されました。これが今年4月からは、従業員500人以下の企業でも、労使(企業と労働組合など)が合意すれば、社会保険に加入できるようになります」 そう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。社会保険に加入するかどうかの境界線は“106万円の壁”と呼ばれる。4月以降は、パートなら誰もが直面するかもしれない壁となった。 「とはいえ、社会保険料は、企業と働く人が折半で支払います。負担を増やしたくない企業もあり、ただちに社会保険の加入を迫られる方は、それほど多くないと思います。ですが、いざというときのために、加入した場合の保険料などを試算してみましょう」 そこで、荻原さんがパート勤務で年収106万円を得ているAさんを例に解説してくれた。 「パート勤務で年収106万円を得ているAさん。夫は会社員で、Aさんの年収は130万円以下ですから、社会保険は夫の扶養に入り、Aさんは保険料を払っていませんでした。昨年10月、Aさんは40歳から社会保険に加入しました。保険料は月々、厚生年金が8,000円と、健康保険が4,400円。40歳以上なので介護保険が750円かかり、合計1万3,150円です」 手取り月収は8万8,000円から、7万4,850円に減った。痛いマイナスだ。 「ですが、メリットもあります。まず、老後の年金額が増えること。Aさんが60歳までの20年間、年収106万円のまま加入し続けたとすると、厚生年金を国民年金に上乗せして毎月9,700円受け取れます。20年間に払った厚生年金保険料の総額は192万円。保険料アップも年金カットも物価上昇もなければ、82歳からは“もらい得”になるでしょう。次に、企業の健康保険に加入すると、病気やけがで働けないときに『傷病手当金』がもらえます。月収の3分に2相当が最長1年半支給されるので、大きな備えになります。目先の保険料負担と、将来の年金額アップなどを比べ、それぞれ考えてみてください」 いっぽう、社会保険に加入場合には。 「社会保険に加入すると、自営業者の妻やシングルマザーなど、現在、国民年金・国民健康保険に加入している方は得になります。社会保険は先述のとおり、企業が保険料の半分を負担しますから、個人の負担は今より減ります。おまけに、将来の年金も手厚くなるので、迷わず加入するといいでしょう」 しかし、最近、女性が働く環境は目まぐるしく変わっており、もはや「103万円以下が得」「社会保険加入は損」などと一律に語れる時代ではないと荻原さんは言う。 「それぞれ個別の条件で考え、結論を出しましょう。ただ、社会保険の財政は逼迫しています。政府のねらいは、加入者を増やし、保険料徴収を増やすこと。社会保険の加入対象は今後も広がると予想されています。それなら、働けるうちはどんどん働き、現金と、勤務実績を蓄えることが、私は大切だと思います」
2017年03月29日最近、テレビCMなどで「実費型医療保険」という言葉を耳にする機会が増えた。実費型医療保険は「実際にかかった医療費」を保障する保険。保険料は安く、合理的に見えるが、本当に安心でお得な商品なのだろうか? そこで、実費型医療保険のメリットとデメリットについて、代表的な実費型医療保険であるソニー損保の「Zippi(ジッピ)」を例に、経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれた。 【1】入院治療費の3割を保障 「受け取る保険金は、入院治療費の3割負担分です。通院治療費は対象に含まれません。保険金は、医療費の領収書にある『診療報酬点数』を基に計算されます。自己負担の上限額を超えると払い戻しなどが受けられる『高額療養費制度』を利用した方も、70歳以上で自己負担が2割や1割の方も、保険金は3割相当額で変わりません。ただし、保険金には、1カ月に20万円まで支給などの上限があります」 【2】保障対象は公的健康保険の範囲 「差額ベッド代や、先進医療などの保険外診療は対象外です。別途オプションに加入すると、保障対象が広がります」 【3】5年定期保険 「保険料は従来型より比較的安めに設定されています。ただ5年定期ですから、更新のたびに保険料は上がります。たとえば20歳女性の保険料月額は975円ですが、50歳になると2,052円に、60歳では3,305円、65歳では4,871円と、中年以降は急激に値上がりします」 実費型医療保険は、損害保険会社が提供している。なので、火災保険や自動車保険で被害額に応じた保険金が支払われるのと同様に、“実際にかかった医療費”が保障される。いっぽう、入院日額を設定する従来型は、生命保険会社が提供している。医療費を含めた生活全般を支えることが目的だ。 「両者を比較すると、損害保険会社は保障を限定する分、保険料は安く抑えられます。ある意味、合理的な考え方だといえるでしょう。とはいえ、先述のように中年以降は保険料負担が重くなりがちです。医療保険は月々の保険料だけに注目せず、解約までに払う保険料総額を、電卓をたたいて計算することも大切です」
2017年03月20日「自営業には退職金がない」と嘆く人もいるが、諦めてはいけない。実はあまり知られていない「小規模企業共済」で、自営業者でも退職金は作れるという。そのメリットを経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれた。 【1】目的 「確定拠出年金(以下・確定拠出)と国民年金基金(以下・基金)は『年金づくり』が目的ですが、小規模企業共済(以下・共済)は『退職金代わり』が目的です」 【2】所得控除 「3つとも、掛け金全額が所得控除の対象ですが、控除の上限が決まっています。確定拠出と基金は同じ年金目的なので、合わせて月6万8,000円まで。共済は単独で月7万円まで控除されます」 【3】節税効果 「節税効果はどれも同じで、税率と掛け金で決まります。たとえば所得税率10%の方の掛け金が月5万円の場合、所得税、住民税合わせて年約12万円の節税になります」 【4】受け取る時期 「“体が資本”といわれる自営業は、いつまで働けるのか、不安な方も多いでしょう。確定拠出は原則60歳から、基金は65歳からの受け取りですが、共済は年齢と関係ありません。廃業や、事業を引き継いだときに、何歳からでも受け取ることができます」 【5】掛け金の払い込み 「逆に、自営業の強みは“生涯現役”でいられることです。掛け金は、確定拠出は60歳まで、基金は最長で65歳までと制限がありますが、共済は働いている間、何歳まででも掛け続けられます。また、定年退職後にシニア起業した方も、共済は利用できます」 【6】利回り 「確定拠出は、自分で選んだ運用の成績で利回りが決まり、ハイリターンも望めますが、元本割れの危険性もあります。基金の予定利率は1.5%ですが、死ぬまで受け取る終身年金は、何歳まで生きるかによって受取り総額が変わります。長生きするほどお得ですが、早く亡くなると元が取れない可能性もあります。共済は、掛け金の払い込みを終了した時点で、受取り総額が確定します。予定利率は1%で、途中解約しない限り、払い込んだ総額を下回ることはありません」 【7】契約者が亡くなった場合 「確定拠出と共済は、遺族が残金を受け取れます。特に共済では、終身働いて掛け金を払い続け、遺産として残すことを希望する方もいます。基金は、保証期間内に契約者が死亡した場合、遺族に一時金が支払われます。しかし、保証期間のないタイプでは、遺族一時金は1万円のみです」 【8】事業資金に困ったら 「共済は貸付制度があり、また途中解約して事業資金に回すことができます。しかし、確定拠出と基金は、契約者死亡など以外の理由で受給年齢前の払い出しはできません」 比較してみると、年齢に関係なく早く受け取ることも、死ぬまで掛け続けることも可能な共済が、自営業には使い勝手がよさそう。備えを万全に、元気に働いて、楽しい老後を迎えたい。
2017年03月10日来年度から始まる給付型奨学金が話題だが、貸与型では、その返済に苦しむ人がまだ多いのが現状。そこで今回、新たに始まる予定の救済策を経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれた。 【1】’17年度生向け所得連動型 これまでも、奨学金を借りた本人の年収が300万円以下の場合、申請すると返済額をゼロに猶予してもらえる仕組み自体はあった。だが、返済方法は毎月決められた一定額を返す『定額返済』しかなかった。 「無利子奨学金を来年度から受ける学生を対象に『所得連動型』と呼ばれる返済制度が始まります。本人の年収から各種控除を除いた所得の9%を返済額とするものです」 たとえば、月5万4,000円の無利子奨学金を4年間借りるAさんのケースで見てみると、返済総額は259万2,000円となり、従来の定額返済では15年間、月々1万4,400円を返済することになる。 「Aさんが所得連動型を選んだとします。年収が200万円だと各種控除後の所得は約62万円です。1年間の返済額は所得の9%ですから、約5万5,800円。月に換算すると約4,650円と、定額返済よりかなり楽な返済額です。Aさんが年収300万円に昇給すると、月々の返済額は約8,900円に増えます。さらに、年収が500万円になると月々の返済額は約1万8,500円になり、定額返済の月1万4,400円を超えます。そのまま所得連動型を続けることも、途中で定額返済に変更することも可能です。逆に、Aさんの年収が100万円に下がって、各種控除後の所得がゼロになっても、月2,000円は返済しなければなりません。もちろん、申請すれば、年収300万円以下の猶予制度は利用できます」 【2】既卒者向け減額制度 すでに卒業している人は「所得連動型」が選べないため、文部科学省は来年度から、従来の返済額減額制度を拡充する予定だ。 「現在の減額制度は、最長10年間、返済額を2分の1に引き下げるものでした。来年度からは、最長15年間、返済額を3分の1か、2分の1に引き下げることができます。減額制度は、年収325万円以下なら、有利子奨学金でも無利子奨学金でも利用できます。有利子の場合、期間が延びると利子がかさみ返済総額は増えるものですが、増えた分の利子は国が負担し、本人の返済総額は変わりません」 しかし、これらの制度は返済の免除ではない。本人が亡くなるか、障害などで返済ができないと認められるまで、返済は続く。荻原さんは奨学金について、こう語る。 「奨学金とはいえ、貸与型は“教育ローン”と認識しましょう。借金と考えると、日本学生支援機構の利率は、昨年3月の卒業生で0.16%(基本月額にかかる利率固定方式)。『国の教育ローン』の1.81%と比べても相当低いです」
2017年03月06日「今月10日、三菱東京UFJ銀行とみずほ銀行の’16年4〜12月決算で、預金利回りが0.00%と発表されました。決算では、小数点第3位以下を切り捨てるのでゼロ表記になりましたが、実際の普通預金利率は多くの銀行で0.001%。マイナス金利の導入から1年、銀行の業績も悪化し、預金利率は史上最低です」 こう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。ついに預金利回り0.00%時代に。しかし、ATM手数料など各種手数料は値上げ傾向にある。預金してもお金は増えず、手数料だけがかさむ現状は、実質的な“マイナス金利”だ。そこで、荻原さんが手数料をカットする裏ワザを教えてくれた。 【1】大手銀行の優遇サービス 「大手銀行には、みずほ銀行の『みずほマイレージクラブ』のように、登録して一定の条件を満たせば、手数料が優遇されるサービスがあります。おもな条件は、インターネットバンキングの登録や、給与振込口座の指定、提携クレジットカードの利用など。これらの利用ポイントに応じて、コンビニATMや振り込み・時間外などの手数料を最大月4回まで無料にできます」 【2】ゆうちょ銀行の活用 「ゆうちょ銀行ATMは365日いつでも無料で、同行間の振り込みは月3回まで無料です。さらに便利なのは家族カード。1つの口座で複数のキャッシュカードが発行できます。一人暮らしの大学生と親、単身赴任の夫と妻、離れて暮らす老親と子どもがそれぞれカードを持つと、仕送りなどが同一口座の入出金ですむので、手数料はかかりません」 【3】コンビにATM手数料が無料のネット銀行 「ネット銀行は、実店舗を持たず人件費もかからないので、預金利率などは比較的高め。各種手数料も割安です。なかでも新生銀行は、各都市銀行のほかイオン銀行、およびコンビニATMなどを、24時間いつでも、回数制限なく無料で利用できます。使い方としては、たとえば給与振込口座から1カ月分の生活費だけをネット銀行に預け替えると、手数料無料の範囲内で自由に引き出せます。ネット銀行の預金=予算内でやりくりすることになるので、節約にも効果的でしょう」 【4】無料の自動入金サービス 「『預け替えが面倒』という方には、無料の自動入金サービスがあります。これは、他行の口座から、毎月決まった日に一定額を自動で引き出し、ネット銀行の口座に入金するサービスです」 【5】定額自動振込サービス 「家賃や月謝などの振り込みも、毎月決まった日に一定額を登録口座に振り込む『自動振込サービス』が便利です。ネット銀行は使い勝手のよい点が多いのですが、『この投資商品に契約すれば、金利が○倍!』などというキャンペーンも頻繁に行っています。これらに惑わされず、無料サービスだけを賢く利用しましょう」
2017年02月24日「会社員やパートの方も、確定申告することで、還付金が手に入るかもしれません。申告漏れはもったいないですよ」 そう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。今月16日にスタートする確定申告。今回はその直前対策として、新たに導入される制度の注意点や、特に注目したい控除について、荻原さんが解説してくれた。 【1】マイナンバー導入元年 「マイナンバーの運用は昨年1月から始まりましたが、確定申告での導入は今回が初めてになります。昨年までとの違いは、申告書に12ケタの個人番号を記入すること。また申告書提出の際、マイナンバーカードやコピーの提示が必要になったことです。とはいえ、マイナンバーカードを作っていない方も多いと思います。その場合は、マイナンバーの通知カードと、運転免許証や健康保険証などの身元確認書類が必要です」 【2】クレジットカード納付 「今年1月から、所得税や法人税、消費税などの国税がクレジットカードで納付できるようになりました。カードによっては分割払いも可能です。ただし、インターネットの『国税クレジットカードお支払サイト』からの決算に限定されています。税務署や金融機関の窓口では、カード納付はできませんのでご注意ください」 【3】住宅ローン控除を受ける 「昨年は、日銀によるマイナス金利政策の影響もあり、住宅ローン金利は過去最低レベルでした。ローンの借り換えを行った方も多いと思います。住宅ローン控除は、ローン残高の1%、最大40万円が10年間控除される大きなもの(’14年4月以降の借り入れの方)。ほとんどの場合、借り換えても控除対象になります。ただし、借り換え後のローン期間が10年未満だと、控除は受けられません。ローン期間は、新しいローン単独で10年以上が条件です」 【4】リフォーム減税で戻るお金 「空き家問題が深刻化するなか、政府は中古住宅のリフォームを推進しています。そのため、リフォームの種類別に所得税の控除を設けています。このうち昨年4月に新設されたのが、3世代同居を目的とした住宅リフォーム減税です。ほかに耐震や省エネ、バリアフリーなどがあり、ローン利用の有無や期間によって控除額が決まっていて、併用できるものもあります」 【5】被災された方は控除申請を 「昨年は熊本や鳥取で大きな地震があったほか、北海道や岩手では台風による被害など、自然災害の多い1年でした。こうした災害による損害は、『雑損控除』か『災害減免法による控除』のどちらか有利なほうを選べます。損害額や年収、保険金額によって控除額は異なりますから、税理士にご相談ください」 【6】ふるさと納税と確定申告 「話題の『ふるさと納税』をした方も多いでしょう。従来、ふるさと納税で寄付金控除を受けるには確定申告が必要でしたが、’15年4月からは『ワンストップ特例制度』が始まりました。ふるさと納税以外で確定申告の必要がない会社員などは、寄付先の自治体が5つ以内であれば、確定申告が不要になったのです。ワンストップ特例と確定申告とでは、控除される税金がことなります。ワンストップ特例は、すべての控除額がこれから支払う’17年分の住民税に充てられます。これに対して確定申告では、控除の一部がすでに払った’16年分の所得税に充てられますから、還付金が戻ります。少額でも現金がうれしい方は、確定申告のほうがいいでしょう」 【7】退職・転職した方の注意点 会社員の方で、転職や退職などのため昨年の年末調整を受けていない場合は、確定申告が必要です。転職後に年末調整を受けていても、前職の源泉徴収票を提出していない場合、1年を通じた計算になっていないからです。そもそも毎月、源泉徴収される税金は、前年1年間の給与を基準に算出しています。働いていない期間があれば、その分収入が減るので、税金も安くなります。つまり、税金を払いすぎている可能性がありますから、ぜひ確定申告で取り戻してください」 【8】医療費控除も要チェック 「医療費控除を、『10万円は超えないから』とあきらめる方がいますが、実は医療費を“ためる”コツがあります。まず、医療費は家族分を合算できます。次に、たとえば人間ドックなど、病気予防のための検査費用は医療費に含まれませんが、もし病気が見つかって治療が始まると、人間ドックの費用も医療費と見なされます。また、子どもの歯科矯正も医療費として扱われます(成長を阻害する可能性があるため)。大人でも、医師が『機能的に問題がある』と診断すれば、医療費に含められます。さらに今年1月から『セルフメディケーション税制』が始まりました」
2017年02月16日