意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「中枢中核都市」です。地方の都市に集中させる目論見だが、理想通りには…。昨年12月18日に内閣府は82の市を“中枢中核都市”に選びました。人口が東京、神奈川、千葉、埼玉の東京圏に集中するのを抑えるためになされた地方創生政策のひとつです。2018年に東京圏に転入したのは約14万人。2020年時点で、東京圏と地方の転入・転出が均衡を保てるようになることを目標にしています。選ばれたのは、北海道ならば、札幌、函館、旭川。福島県では福島、郡山、いわきの3市。1県に1市のみのところも数多くあります。東京圏以外の、政令指定都市や県庁所在地、中核市。つまり、ある程度大きな街です。自治体の財政が厳しいいま、地方全体を活性化させるのは難しい。そこで、“地方創生推進交付金”の上限を引き上げ、企業誘致や住宅団地の再生などを支援し、地方のなかで、潜在的な成長が見込める都市に、人も仕事も集めて活性化させようという計画なのです。しかし、日本には792の市、東京都の特別区が23、743の町、183の村の合計1741の自治体があります。そのうち東京圏を除いた約1500からたった82市に絞り込んだわけですから、将来的には、数多くの田舎町が切り捨てられることになるでしょう。しかし、この政策を成功させるのは難しいのではないかと僕は思います。同じ県内でも、習慣や言葉、文化が異なります。いくら交付金を出し、「さあ、ここに集まってください」とお膳立てしても、あくまで東京目線。地方創生は、地方発信で進めないかぎり、壁にぶち当たるのではないでしょうか。平成の中頃までは地方分権の機運があり、地方は自分たちで支え、国と県とは対等の立場で緊張関係を持とうとしていました。そんななか、大阪府では橋下徹知事が出てきました。しかし、安倍政権になり霞ヶ関の中央官庁出身の配下を地方の知事に据えたため、地方と国のパイプが強くなり、中央主導が基本の関係になってしまいました。各州が独立して独自の法を持ち、その土地の文化を守っているアメリカのように、北海道や九州が独立して、“日本合衆国”になるくらいドラスティックに変わらないと、本当の意味での地方創生は実現しないのかもしれません。堀潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2019年2月27日号より。写真・中島慶子題字&イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2019年02月26日「2月19日にブログで舌がんを公表する前に、堀は堀越学園の同窓生で’82年デビューの同期である早見優に会っていました。堀は早見に病気のことを告げるとともに、82年組のほかの同期生たちにも病気のことを伝えてもらうこと、そして同窓会を開いてほしいということを頼んだのです」(芸能リポーター)ステージ4の口腔がんであることを公表した堀ちえみ(52)。同じく“花の82年組”である早見優(52)は元シブがき隊の薬丸裕英(53)に相談し、手分けをして親しい同期生たちに連絡をとることになった。そしてがん公表後、連絡を受けたメンバーたちは堀に次々とエールを送っていた。「’80年代当時は歌番組も多く、控室も大部屋だったりで、若いアイドルたちが仲良くなる機会もいまより多かったのです」(前出・芸能リポーター)ただ82年組メンバーのなかでは昔からアーティスト路線で、一時期芸能活動も休止していた中森明菜(53)の連絡先を知っている者はいなかったという。「しかし薬丸から連絡を受けた小泉今日子(53)が、『もしかしたらたどれるかもしれない』と、明菜への連絡役を買ってでたのだとか。2人は’93年にスペシャルドラマ『瞳に星な女たち』でW主演もしており、仲も良かったのです」(前出・芸能リポーター)早見は“堀が会いたがっているにちがいない同期”という条件で、連絡網を敷いたようだが、堀と明菜の交流についてはあまり知られていない。だが’80年代アイドルにも詳しいフリーライターの堀越日出夫さんは言う。「’82年9月に発売された堀ちえみさんの著書には『親友』と題された章があります。そこには、ファーストコンサートで小泉今日子さんからメッセージカード付きの花籠をもらったと書かれています。著書には《(今日子ちゃんは)お仕事の上ではライバルだけど、2人がいい意味で競争し合えたら最高だと思います》という記述もあります。きっと堀さんは小泉さんとの縁で、その親友である明菜さんとも交流があったのだと思います」舌がんが発覚する前は、82年組ネットワークの中心を担っていた堀は、ずっと明菜のことを気にしていたようだ。堀は’10年のブログで『明菜ちゃん、ガンバレっ』というサブタイトルの記事を書いていた。「明菜は’10年10月に体調不良により、芸能活動の無期限活動休止を発表しています。その当時、堀はその3年前にテレビ局で明菜と出会ったエピソードを披露し、《元気になった明菜ちゃんと、会いたいな私は明菜ちゃんの笑顔を、いっぱい見てきたから》などと、つづりました」(前出・芸能リポーター)それから8年、いまは逆にエールを送られる立場になった堀。芸能リポーターの城下尊之さんは言う。「明菜は堀の病状を聞いて絶句したそうですが、連絡をくれた小泉に《私も応援しています。強いちえみちゃんのことだから、絶対に病気に負けずに頑張ってくれると信じています》というメッセージを託したと聞いています」手術日当日には、同期たちが空に向かって手術の成功を祈ったというが、明菜も堀との再会の日を待ちわびているに違いにない。
2019年02月26日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「水道民営化」です。水道管の再整備が必要な時期。不透明なところも。昨年12月に「改正水道法」が成立しました。これにより、上下水道事業が民営化されやすくなります。改正の動きは数年前からありました。地方の自治体の財政基盤が弱っており、全国隅々まで水道インフラを維持するには、効率よく経営できる民間に任せたほうがいいという判断からです。日本の水道インフラは、主に高度成長期に整備を進めていきました。水道管の耐用年数は約40年のため、いままさに再点検が必要な時期なのです。昨年6月に起きた大阪北部地震では、老朽化した水道管が破裂し、高槻市や箕輪市で約9万戸が一時期断水に追い込まれました。今後こういう被害は増えていくだろうといわれています。実は水道料金は全国一律ではありません。破損した水道管を修理するにも、住民の数により負担額は変わります。平成28年4月の水道料金を見ると、全国平均は月額3227円。最も安いのは兵庫県赤穂市の853円で、最も高いのは北海道夕張市の6841円と、約8倍の格差があります。水道法の改正により、「コンセッション方式」といい、水道施設の所有権は自治体にあり、運営権のみを民間に売却できる仕組みを取り入れることになりました。民営化した場合の問題は、水道料金が高くなること。フランスは1980年代にコンセッション方式で水道民営化を実施しましたが、3か月後には水道料金が値上がりし、25年間で倍以上に高騰したため、2010年に公営化に戻りました。民営化でもうひとつ懸念されるのは、インフラの維持・管理。災害などが発生した場合に復旧されるのか?日本には、水メジャー(上下水道事業を担う巨大な国際企業)はありませんから、フランスのヴェオリア社やスエズ社、アメリカのGE社などが参入することになるでしょう。それらの海外企業が、災害で水道管が破損した際の費用負担をするのか。そもそも老朽化した水道管をまず整備しないことには、商売も始まらないのでは?という疑問も。ヨーロッパでは公営化に戻す動きが主流ななか、日本のこの、水道民営化に移行しようとする流れは、実は不透明なところもあるのです。ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2019年2月20日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2019年02月15日きょうだいの多い親としての悩みの種は「きょうだいゲンカ」。きょうだいだからこそケンカすることもありますね。友達とはケンカなんてめったにしないわが子たちも、家ではきょうだいという甘えもあって小さなケンカは絶えません。特に小さい時期やケガをしそうなときは、親が仲裁や注意をしていますが、最近のわが家では、親は話は聞くけれど「ノータッチ」をベースに対応しています。きょうだいケンカの仲裁は、年齢や年齢差にもよるので、わが家の場合のうまくいった対応を紹介します。3歳までの対応…落ち着くまで引き離す3歳までのきょうだいケンカはモノの取り合いが圧倒的に多かったのですが、そんな時に有効だったのが「気をそらす」こと。3歳以下同士の場合、落ち着くまで引き離すのが一番。どちらに味方することなく、まさしく「仲裁」ということで、「まぁまぁ、まぁまぁ、落ち着いて」と間に入ってなだめることが多いです。結果、子どももその方が安心するようです。幼稚園児時期の対応…状況の確認と解説幼稚園時期の子どもの場合、「状況を確認して、解説する」ようにしました。まずは子どもの話を聞きますが、うまく伝えられないことの方が多いです。細かいことは置いておいて、状況をざっくり把握したら、「こうだったんだね」と状況を確認し、その上で「相手は痛いんだよ、相手はほしいんだよ、相手はこうだと思うんだよ」と相手の思いを説明するようにしています。3歳以下と幼児の場合は、上の子にお兄さん、お姉さんとしての対応をお願いしてみることも多いです。まだ、下の子は幼稚園にも入れないくらい小さい子なんだということを説明します。幼児同士の場合も、年長と年少の場合は、下の子はまだ「幼稚園に入ったばかりの〇〇組さんなんだよ。〇〇組さんのほかのお友達だったら、そういうことしていいのかな」と「年齢差」があるということを特に上の子に自覚してもらうようにお願いしてみます。その時は納得できなくても、あとで「〇〇(下の子)ちゃんはまだ小さいもんね!」と思いやりの言葉や態度につながることもありますよ。小学生時期の対応…本人たちに任せる小学生になれば、わが家の場合「ノータッチ」が基本です。話は聞いて「アドバイスはする」けれど、仲裁や親の判断を告げるようなことはほぼありません。といっても、言い合いが多いので、「うるさい」と伝えることはありますが。幼児と小学生の場合は、幼稚園時代と同様、上の子に下の子はまだ小さいのだということを認識してもらいます。また、小学生同士の場合は学年は違っても「本人たちに任せる」ようにしています。それは、小学生になればすでにお互いに学年の違いを認識しているということに加えて、私自身が上の子で「お姉ちゃんだから我慢しなさい、お姉ちゃんが悪い!」とケンカは上の子が折れるべきという親の対応で傷ついてきた経験もあるからです。小さい時は差が激しく、上の子に譲歩してもらわないと仕方がないことも多くあります。だからこそ、下の子が小学生になったなら、両成敗もしくは、どっちの味方もせず、本人にお任せを貫いています。こうすることで、今のところ上の子は「いつも自分ばかり叱られている感」は持っていないようです。年の差による対応の違い1歳差の場合は対等な対応になることも多いでしょうが、2‐3歳差の場合、この子は下なんだという意識を持ってもらうことで、上の子にお兄さん、お姉さんな対応を「お願い」してみることが多いです。4‐5歳差の場合は、未就園児と小学生ほどに離れているので、やっぱり上の子を「諭す」ことになります。6歳以上の年の差の場合になると、ケンカというより「モノを取られて返してくれない」「いたずらされた」という上の子の被害の訴えが多くなります。わが家では、あらかじめ、きちんと下の子が届かないところに自分が管理するべき・配慮するべきと教えていますので、上の子への注意となります。もちろん下の子にも、「ダメなこと」として教えますよ。きょうだいケンカへの親の介入は、後々に子どもの心にわだかまりを残すようなこともあると思うので、わが家では必要最低限にしています。ママ友同士できょうだいゲンカについて話してみると、いろいろとナイスな対応を聞くことができるかもしれませんね。<文・写真:フリーランス記者小柳結生>
2018年12月15日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「自己責任論」です。仕掛けられた議論。大衆の意識の低さにも問題が。3年4か月にわたり、シリアで武装勢力に拘束されていた、フリージャーナリストの安田純平さんが無事解放されました。ところが帰国後、テレビやネットなどの日本のメディアで多くとりあげられたのは、シリアの情勢や安田さんがどんな取材活動をしてきたのかよりも、“自己責任論”でした。危険な地域での人道支援やジャーナリストの取材に対して、“自己責任”という言葉が使われるようになったのは2004年、3人の日本人の若者が、イラクで武装勢力の人質になったときです。「危ないといわれているところにあえて行くのは、自分自身の責任の部分が多い」と、当時の小泉政権の閣僚が言い、広まっていったのです。自衛隊のPKO派遣と重なった時期で、3人の行動により国の政策を変えるわけにはいかず、政府批判が高まらないように政府が作った官製用語でした。安田さんの帰国以降、日本のメディアでは主に、「自己責任なのだから、危険地帯に行った人は死んでも仕方がない」という話か、それゆえ「危険な地域には行くな」という2元論しかされていません。しかし、「危ないから取材には行かない」ということだと、日本にとって情報の空白地帯が生まれてしまいます。「シリアなんて遠い国の話は日本に関係ない」と思う方がいるかもしれませんが、それは違います。中東が混乱し、石油が手に入らなくなったら、私たちの生活は根底から覆される可能性があります。また、日本は貿易国。輸出で収益を得ており、世界中とつながっていますから、情勢を知らなくていい地域などないと思います。自己責任論のなかには、「国に迷惑をかけるな」という意見も挙がりましたが、国が邦人を保護するのは当たり前の話。それは、急性アルコール中毒で倒れた人を“自己責任”だからと、救急車が乗車拒否をすることはないのと同じことです。今回の自己責任論は、メディアによって仕掛けられた議論でした。本来伝えるべきシリア情勢よりも、感情に訴えかける大衆受けのするコメントを流し、議論をショーアップしていきました。しかし、メディアは社会を映す鏡です。メディアにそうさせたのは、果たして誰なのでしょうか。ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2018年12月12日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2018年12月05日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「パワーハラスメント」です。職場のパワーハラスメント(パワハラ)とは、同じ職場で働く人に対して、地位や人間関係などの優位性を使い、適正な範囲を超えた精神的・身体的苦痛を与える行為をさします。2010年からの5年間で、過労が原因でうつ病などの病気を発症して労災が認められたケースが2000人。そのうちの368人は過労自殺でした。2000人のうち、30代が3割以上。20代も加えると5割以上になります。少子高齢化で労働不足になっている日本にとって、若い世代が心を病んだり自殺に追いやられているというのは、もはや国難です。2017年度に「心の病」が労災認定された506人のうち、パワハラが原因の人は88人。前年度より14人増え、2年連続で原因別の最多となりました。パワハラは、起こしている本人にその自覚がないケースが多く、トラブルになっていますが、受ける側もそう捉えていないことに根深い問題があります。僕自身、今にしてみれば、上司からパワハラを受けていたと思うことがあります。しかし、当時の僕は、「厳しく指導してもらったおかげで成長できた」と思い込んでいたのです。手に震えが出るなど、体に変調を来していたのに、上司も自分も、それが問題だとは感じていませんでした。上司の失点になってはいけないと、部下が自らタイムカードを適度な時間に打刻し、帰社したことにして、会社に申請せずに長時間残業をする。部内全体で、それを無言のうちに強いるというのも、一種のパワハラです。「受けている本人がパワハラと認識しなければ、パワハラではない」とされていますが、それは違います。業績を上げることや効率を最優先する会社の価値観に染まり、知らないうちに負担を強いられ、心を病むこともあります。あなたの会社の常識は、世の中の常識とは違うかもしれません。厚生労働省は、企業にパワハラ防止措置を義務付ける、法の整備を検討し始めました。嫌だなと思うことに、NOと言える環境や、その職場に問題があれば、我慢せずに、20代30代でもほかの職に移ってもいいという風潮も、広げていく必要があると思います。堀潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2018年11月28日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2018年11月24日シリーズ累計55,000足を突破したアンジェの冬の大定番、北欧エルクのもこもこスリッパが今年も届きました!「あれ?でも去年とちょっと違うような・・・」そうなんです。これまでもマイナーチェンジをしていましたが、今年はさらに手を加え、アンジェ限定のスペシャルアイテムへと進化したんです。ファンの皆様からのお声を反映したのはもちろん、担当するバイヤー自身もこのシリーズの愛用者。毎日使っているからこそ分かる細かなこだわりも盛り込みました。よりインテリアに馴染みやすく、より使い勝手よく。さらにオリジナルの新モデルも登場!ますます選ぶのが楽しくなった今年のエルクたちをご紹介します。足元に温もりを。北欧エルクのもこもこスリッパ&ブーツ朝ベッドから出た時のフローリングの冷たさや、台所仕事中の足元の冷えが気になってきたら、北欧エルクのルームシューズの出番です。内側のもこもこボアが足をふんわり包み込み、素足で履いてもポッカポカ。素朴なエルクの刺繍がワンポイントになって、使わない時でも置いている姿が絵になります。定番のスリッパタイプは、甲の高いところまでしっかり暖か。さっと脱ぎ履きできるのでお子様でも使いやすく、家族でお揃いにしたり、来客用にも◎です。冷え性でお困りの方は、足首まで暖かなブーツタイプはいかが?ボタンを外して折り返せばショートブーツとしても使え、2wayでお楽しみいただけます。どちらのタイプも、内径を少し小さくしているので足を入れた時にしっかりフィットし、動いても中がズレにくい仕様です。また丸洗いできるので、気になる汚れもお家でサッと対処して、清潔感をキープできます。<コーデュロイ素材が仲間入り!>従来のマイクロファイバー素材に加え、今年はコーデュロイ素材が新登場。ユニセックスな風合いなので、可愛らしいものが苦手な方や男性にも選んでいただきやすくなりました。ここに注目!アンジェだけの3つのこだわり<こだわりその1.カラーはすべてangersオリジナル>従来のマイクロファイバー素材では、普段使いしやすいニュアンスカラーを厳選。新登場のコーデュロイ素材の方は、ベーシックなカラーの他に挿し色もセレクトしました。視覚からも温もりを感じられインテリアにも調和しやすい、アンジェだけのカラーバリエーションです。<こだわりその2.さりげないエルクの刺繍>トレードマークのエルクの刺繍は、昨年よりサイズをやや控えめに。少しの違いですが、これによって可愛さが随分と抑えられ、さりげない仕上がりになりました。<こだわりその3.ソールの機能性がアップ>裏側全体を滑り止め仕様にし、階段でも使いやすくしました。さらにソールの色を、汚れの目立ちにくいブラックに変更。「長く快適に使っていただきたい」というバイヤーの想いから生まれた改良点です。⇒ moz北欧エルクあったか「ボアスリッパ」アンジェ別注 ⇒ moz北欧エルクあったか「ボアブーツ」アンジェ別注 はじめまして!アンジェ限定、大人顔のムートン風モデル誕生北欧エルクシリーズに今年誕生したのが、ちょっぴり大人顔のムートン風モデル。こちらもアンジェの限定品です。従来品の暖かさはそのままに、けれどボリュームをおさえて、クタッと軽い履き心地を実現しました。特にアンジェがこだわったのがサイドの切り替え部分。これによって履き方のバリエーションが広がり、履き口を立てて履く、折り返す、かかとを踏んで履く、という3wayが可能になったんです。寒いあいだは足首まで暖かくして、春先になったらかかとを踏んで開放的に。そんな気候に合わせた使い方も思いのまま。また、この切り替えがアクセントになって見栄えがすっきりするという効果も。機能性だけでなく、ファッション性でも存在感を発揮します。ワンポイントの刺繍にはベースの素材に馴染む同系色のラメ糸を使用し、エルクがふんわり浮かびあがるようなデザインに。またソールは、スリッパやブーツタイプと同じく滑り止め加工を施し、汚れも目立ちにくいブラックを採用。ここでもバイヤーのこだわりは健在です。⇒ moz北欧エルクムートン風ルームシューズアンジェ別注 進化した北欧エルクシリーズを購入できるのはアンジェだけ。もこもこ優しくフィットするルームシューズで、冬の寒さを足元からポカポカ解決しませんか? ■暮らしのはなし 文・池田奈未好きなものは、まち歩き、カメラ、淹れたてコーヒー。収納の少ない家で3人暮らし。すっきり心地よい暮らしを目指しています。【ご紹介したアイテム】スウェーデン生まれの「FARG&FORM」が手掛ける「moz」から届いた、ふわふわ履き心地のルームシューズシリーズ。今年はアンジェ別注モデルに進化して登場です。⇒ ルームシューズ moz 北欧エルク あったかボアスリッパ アンジェ別注 1,998円(税込)⇒ ルームブーツ moz 北欧エルク あったかボアブーツ アンジェ別注 2,538円(税込)⇒ ルームシューズ moz 北欧エルク ムートン風 アンジェ別注 1,998円(税込)
2018年11月18日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「日ロ平和条約」です。70年以上平行線だった問題。いま何を選択するか?9月にウラジオストクで開かれた東方経済フォーラムの席で、プーチン大統領はいきなり「日ロ平和条約を年末までに、前提条件なしに締結しよう」と発言し、波紋を呼びました。1951年、第二次世界大戦を終結させるサンフランシスコ講和条約にソ連(現ロシア)は調印しませんでした。その後、1956年の日ソ共同宣言により国交は回復したものの、ロシアとの間では、戦争は終わっていないことになっています。平和条約締結を阻んでいるのは、領土問題。日本は、歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島の4島返還を条約締結の条件にしています。ところが、ロシアは歯舞、色丹の2島のみ返還という姿勢を崩していません。鳩山一郎内閣のとき、2島返還、平和条約締結ののちに残りの2島の交渉を続けるという方針で決まりかけましたが、いったん返還を認めてしまうと、残り2島は二度と戻らないかもしれないという強い反対意見があり、条約締結は棚上げされました。このとき、アメリカのダレス国務長官が「2島返還を認めるなら、アメリカは沖縄を領土とする」と脅したともいわれています。返還する島には米軍基地を置かないことなどの条件があり、交渉が進まない理由にもなっていましたが、今回は「前提条件なし」。ロシアは日本との平和条約締結に焦っているのです。ロシアの国内経済は落ち込み、プーチンの支持率も下がってきているため、ここで日本の支援を受け、経済成長を狙いたい。日本にとっても、ロシアと協力体制をとることは安全保障面からも大きな意味があります。唐突に感じられたプーチンの年内締結の提案ですが、僕は、これまで何度も首脳会談を行っている仲の安倍首相との間で、すでに話がなされていたのでは?と考えています。4島返還に固執するのか。まず2島、で手打ちにするのか、日本は選択を迫られています。世界的にみると、ロシアは、クリミア半島に侵攻したり、シリアに激しい空爆を仕掛けるなど、非人道的な行為を重ね、経済制裁を受けています。自国の利益のためにロシアと手を組むとなれば、アメリカや欧州から日本が孤立する可能性も実はゼロではありません。ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2018年10月31日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2018年10月27日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「災害とインフラ」です。被災後に想定されるリスクを平時から確認して。西日本豪雨、北海道地震と災害が続いています。先日は台風が日本を縦断し、停電や交通機関がストップするなど各地で混乱をきたしました。インフラがストップすると、台風や地震がおさまっても、生活の不都合は続きます。まず、長期間停電が続くと、充電もできないのでスマートフォンが自由に使えなくなります。北海道地震で被災したある地域では、携帯基地局の電力災害がダウンし、エリア一帯が圏外になりました。そうすると、どこで何が起きているのか、被害の大きさや支援の状況もまったく把握できなくなります。断片的な情報により、デマにのせられることも。こういうとき唯一頼りになるのが、乾電池で動く防災ラジオです。また、学校や公民館が被災してしまい、避難所を開設できなくなるというケースもしばしば起こっています。近所の避難場所に指定されている施設と、そこまでの経路は2つ以上、チェックしておいたほうがよいでしょう。大きな災害時には、人命救助や消火活動を行う緊急車両が円滑に動けるように、交通規制が敷かれます。東京の場合、環八から都心方面は交通抑制。環七から内側方向へは通行禁止、首都高、主要な国道などの幹線道路は緊急自動車専用路になります。車で都外には出られなくなると思ってください。いま、関東で30年以内に震度6弱以上の地震が起こる確率は、千葉市85%、横浜市82%など各地で高い数値が予想されています。また、富士山の噴火リスクも高まっており、神奈川、山梨、静岡の3県では合同で定期的に避難訓練をしています。もし火山灰が数cm積もったら、それだけで東海道新幹線、東名高速、飛行機はストップしてしまいます。雪と違い、灰は撤去しないかぎりなくならないので、長期間、東京への物流はストップしますし、家に閉じ込められるような状況になります。いつ、どこで何が起きるかわかりません。被災しても自力で生き延びられるよう、最低1週間分の水や食料を蓄えるようにしておきましょう。普段、当たり前にしていることができなくなります。スマホや電力、コンビニに頼れなくなったら、どうなってしまうか、みなさんも想像してみてください。堀潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2018年10月24日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2018年10月20日発達障害のある子と定型発達の子の子育ては、天と地ほどの差がある私は息子が生まれてすぐに、発達障害のある子どもと定型発達の子どもの子育てには天と地ほどの差があると知りました。・抱っこしても海老反りせず身を任せてくる・発語のない0歳の時でもこちらの言っていることは解っている・長時間泣かない・外出時、自ら手を握ってくる定型発達の子どもを育てている親御さんには当たり前のことでも、1人目の子どもが発達障害だった私にはすべてが新鮮でした。そして「世間一般の人が体験する子どもの夜泣きや迷子、発語の遅さはこの程度なのか。何て楽なんだろう」と感じたものでした。まだ小さいのに、気遣いができるなんて!息子にとって「お姉ちゃん」は生まれたときから「傍にいて当たり前」の存在でした。小さいころはゲームの取り合いなどで喧嘩もよくしましたが、自分より知識があり色々なことを教えてくれる姉を尊敬していました。息子が小学校に上がったころからでしょうか、娘が近くに来ると、それまで私の横に座っていた息子が遠い席に移動するようになりました。後で理由を聞くと、「僕とお母さんが仲良くしているとお姉ちゃんが寂しく思っちゃうから」と言いました。小学校低学年なのにそんな気遣いをするものなのかと、驚いたものです。息子8歳、高校生の娘は反抗期真っ盛り娘が高校生だったころ、何を言っても全否定!という時期がありました。いつものように、私と娘がバトルをしていたときのこと。息子が険悪な母娘の横で、お笑い番組をつけたのです。Upload By 荒木まち子息子がテレビをつけたことで、娘は気持ちの転換ができ、落ち着いたのでした。息子に話を聞くと…Upload By 荒木まち子息子10歳、深刻そうな顔をして…息子が深刻そうな顔をして、話しかけてきました。息子「今日、学校で友達が『障害者ってウザいよね』って言ったんだ。その言葉がすごく嫌だったんだけど、俺そのとき、黙っちゃったんだ」私「そうなんだ」息子「ムキになって『そんなことない』って言うのもどうかと思ってさ。でも友達のその言葉が心に突き刺さってホント嫌な気持ちになったんだ」私「うん、その気持ち分かるよ」息子「…お姉ちゃんってさ、障害あるんだよね?検査とかしてるの?」私「発達検査のこと?しているよ」息子「してたんだ。診断名は何?」私「自閉症だよ」息子「ふうん、自閉症か。俺、実は本とかで調べたんだ。いつからそうなの?」私「生まれたときからだよ。小さいころから周りの子と違うと感じてたんだ」息子「へぇ、お母さんは分かってたんだ?俺、ずっと気づかなかったよ。何が原因なの?」私「脳の伝達機能の問題らしいけど、まだはっきりとは解明されていないんだよ」息子は娘が病院に通っていることを知っていましたし、私が娘と進路や将来のことなどを話すのを聞いていました。でも生まれてからずっと一緒に暮らしてきた彼は・計算は苦手だけど絵が得意・本が好きで色々なことを知っている・泣いたり怒ったりもするけど、一緒に笑ったり冗談を言い合える・不器用だけどサボらず真面目・寂しがり屋で優しいという“個性”を持つ姉として彼女を受け入れていました。成長するにつれ、姉が自分や周りの友達と違うことに気づき始めた息子は、内緒で図書館やネットで姉の症状について調べたのでしょう。思春期の入り口に立った息子に私は息子の話を聞き彼の気持ちを受け止めます。質問に答えます。でも私は娘に関することについて「息子にはこうして欲しい」などの要望は言わないようにしています。なので、この日私は息子に「5、6年になると、そういうこと口にする子もいるよね」「それってどうなんだろうね」とだけ言いました。初めての発達障害児の子育ては分からない事ばかりです。それは、きょうだい児の子育ても同じです。私がしていることが正しいのかは分かりません。先日私は会話の中で息子にあるヒントを出しました。「私が『障害者の親の会』に参加しているのは知ってるでしょ?そこで私は経験した人にしか分からない悩みや情報を共有したり、笑い話をしたりして元気をもらっているんだ。世の中には他にも『認知症の親を持つ子の会』とか『がんの当事者会』とかいろいろな会があるんだけど『きょうだい児の会』っていうのもあるんだよ」障害がある子の親がそうであるように、きょうだい児にはきょうだい児にしか分からない悩みや苦労があるはず。苦しくなったり、壁にぶち当たったり、一人で抱え込めなくなったとき。そこに足を運べばきっと気持ちが楽になる、そんな場所があるんだよ、と。これから本格的な思春期を迎える息子の悩みが少しでも軽くなれば良いな、という願いを込めて。
2018年10月19日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「北朝鮮の実情」です。予想外に開かれた平壌。互いに知ることが重要では?8月に平壌を視察してきました。想像以上に発展しており、現地の新聞や雑誌には、新しい工場建設の見出しが日々躍っていました。また、街なかでは外国人が多く歩いていました。北朝鮮と国交を断っている先進国はアメリカとフランスと日本のみ。世界の98%の国とは交流があるので、決して閉ざされた国ではないんですね。北朝鮮の人たちの話を聞くと、彼らの希望はとにかく経済発展させること。これまで国家予算は核開発にあてられ、国民は厳しい生活に耐えてきましたが、核兵器が完成して、ようやく生活や科学技術の向上を望めます。農村部との格差をなくすために、AR(拡張現実)技術を使って遠隔操作で教育を施すなど、教育にも力を入れていました。非核化に関しては、「アメリカが核を持っているかぎりは難しい」とコメント。ただ、9月9日の軍事パレードで大陸間弾道ミサイルの展示はなく、それは、米朝間交渉を円滑に進めるための配慮だといわれています。経済制裁のダメージは受けていて、ある女子学生は「おしゃれな雑貨が入ってこなくなった」と話していました。最新医療現場では日本やドイツ製の医療機器も置かれており、すべてを自国製で賄うのは難しいため、一刻も早い国際社会との連携を願っています。拉致問題について学生に意見を聞いてみると、そんなことが自国であったことに衝撃を受けた、と話していました。でも彼らの主張は、それよりもまず戦時賠償解決のほうが先立つんですね。交流を断っているため、お互いに50年くらい前のイメージのまま止まっています。これは両国政府の反日、反北朝鮮プロパガンダが浸透しているといえます。北朝鮮の方々は、過去の日本に対しては厳しい認識を持っていますが、日本の国民性や技術力に対しては期待を抱いており、互いに協力したいという声もたくさん聞きました。北朝鮮も日々変化しています。外交官同士が雑談レベルで話せる関係を持ち、互いの最新のニーズを知ることが大事だと思います。韓国や中国との間にある問題と同様、対立する道具にするのではなく、知恵を出し合って、解決する機運を高めていきたいですね。堀 潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2018年10月17日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2018年10月14日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「エドテック」です。教育格差や不登校、地方創生など、諸問題の解決にも。エドテック(EdTech)とは、Education(教育)とTechnology(科学技術)を組み合わせた造語で、教育分野にイノベーションを起こそうと、世界中に広がっている取り組みです。アメリカでは、貧困問題、教育格差を解消するために、10年以上前に政府が貧困地域にノート型パソコンを配布し、授業カリキュラムを配信しました。現在では、スタンフォード大学やハーバード大学がインターネットで授業を公開するなど、遠隔地に高等教育を届ける仕組みを作っています。エドテックの最たるものとして、人気を集めているのが、アメリカのミネルバ大学。この学校にキャンパスはなく、全寮制なのに授業はすべてオンライン。サンフランシスコを皮切りに、学期ごとに学生は世界の7都市を巡って授業を受けます。世界中の教師が参加し、オンライン・ミーティングの形で授業を進行。学生の発言はすべて記録され、AIによって個々の弱点などを検出。一人一人に適切な指導が行われるのです。教室内で生徒のレベルに差があることや、不登校や引きこもりの問題は日本でも深刻化しています。平成28年度の不登校を含む引きこもりは、小学生で約7万人。中学生は約14万人、高校生は約8万人です。ニートの大人の2割は元引きこもり児だったという統計もあり、減少する労働人口を補う上でも、インターネットを使って、家にいながら安心して学べる仕組みを作ることは重要です。ネット環境さえ整えば、都市の学校に行かずとも、離島でもどこでも最新の授業を受けられますから、地域による格差もなくなり、地方創生にも一役買うことができるでしょう。これからは単純な仕事はAIやロボットが担いますから、暗記した知識より、それらに適切な指示を与えられる、そんな人材が必要になります。そこで、経済産業省はIT企業やNPOと協力し、「未来の教室」という名を掲げ、効率的な知識習得と、課題の発見・解決能力を育成する学習プログラムの開発を行っています。エドテックは学校教育にとどまらず、人生100年時代のリカレント教育、ITや医療などの専門分野の学習にも生かされています。ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2018年10月10日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2018年10月09日「発達障害の子に手がかかって、きょうだいに我慢を強いているのではないか?」「障害のあるなしに関わらず、きょうだいで平等に扱わなければいけないのに、それができてない」など。発達障害児と健常児のきょうだいを持つお母さんで、健常児のきょうだいとの関係に悩んでいるお話を時々耳に挟みます。発達障害児の子育てでは、発達障害児とお母さんにスポットが当たることが多いのですが、最も近しい存在である、発達障害児のきょうだいはどう感じているのか? また、きょうだいへの対応はどうしたらいいのか?きょうだい児(=病気や障害を持った子のきょうだいのこと)について考えるべく、法人マーブル代表・国沢真弓さんにお話をうかがいました。国沢さんは、健常児の娘と自閉症の息子、2人のお子さんのお母さんでもあり、ご自身の経験やさまざまな相談事例をもとにお話してくださいました。■発達障害児よりも難しい?「きょうだい児の対応」――今回は、発達障害児への対応法ではなく、発達障害児をきょうだいに持つ、きょうだい児の対応法についてお伺いしたいと思います。国沢真弓さん(以下、国沢さん):発達障害児については、その子の特性がわかれば、ある程度、接し方のコツを学ぶこともできるのですが、きょうだい児の場合はそう簡単にはいきません。きょうだい児のタイプ、発達障害児のタイプ、きょうだい児の性別・順序・年齢差・人数、友人関係、両親の性格、家庭環境などで対応もガラリと変わるので、むしろ、発達障害児への対応よりも難しさがあるかもしれません。どんなお子さんにも効く「魔法の杖」のような回答はないという前提で、私の経験や相談事例などをもとにお話させていただければと思います。――本当、その通りだと思います。ただ、それでも、きょうだい児について共通に浮かび上がってくる課題のようなものがあるようにも感じます。例えば、私の周囲では「発達障害児に手がかかり、きょうだい児に我慢を強いてしまっているのでは?」と、お母さんがきょうだい児に罪悪感を持ってしまうことが多いように感じています。国沢さん:そのように感じてしまうお母さんは多いと思います。こういうお悩みは、きっと専門家に相談すると、「きょうだい児とだけの時間を持つようにしてください」とか「きょうだい児に『あなたのこともちゃんと見ているよ』というメッセージをしっかり伝えてください」などとアドバイスをされると思います。もちろん、そのアドバイスは正しいですし、私も同じように思います。ただ、お母さんの立場を考えると、少し心配な思いもあります。――心配な思いというのは?国沢さん:お母さんの課題がどんどん山積みになってしまうという点です。発達障害児の子育てだけでも、専門家などから「こうした方が良い」という課題で日々大変なのに、きょうだい児の子育てまで専門家からアドバイスをもらうことで、山積みの課題を前に疲れ果ててしまう…。「そうした方が良い」と頭ではわかっていても、お母さんも一日24時間しかない。これは私も経験ずみなのでよくわかるのですが(苦笑)、「あれもやらなくちゃ、これもやらなくちゃ」と奮闘し過ぎて、燃え尽きてしまうお母さんも少なくないのです。――確かに、日々の忙しい暮らしの中で、専門家のアドバイスを忠実に実践していくのはなかなか簡単ではありませんよね。国沢さん:たとえ時間が取れなくても、「あなたの〇〇なところがすごい良いと思うよ」とか「いつも〇〇してくれてありがとう。すごく助かっているよ」などと、きょうだい児の存在意義や感謝の気持ちを言葉や態度で伝えることだけでもずいぶん違ってくると思います。また、「ママが時間とれたらどこに行きたい?」と、きょうだい児の希望を3つくらい聞いて書きとめておき、時間がある時に実践するのもおすすめです。この時、書きとめておく姿をきょうだい児に見せることがポイント。お母さんは聞き流さず、ちゃんと気にしていることが伝わると思います。そして、お母さんの「時間」と「気力」と「経済面」などがすべてOKになった時に、「ずっと待たせてごめんね! 今日この3つの中で〇〇だったら行けるかも!」と誘ってみてはどうでしょう?――課題の山に追いたてられるのではなく、「時間がある時に実践する」くらいのゆるさが必要ということですね?国沢さん:きょうだい児のケアはもちろん必要ですが、お母さんが余裕のないなか無理して時間を取ると、敏感なきょうだい児は「お母さん、本当に楽しんでいるのかな?」「休みたいんじゃないのかな?」と気にしてしまう子もいるようです。きょうだい児のケアと同じく、お母さん自身も「自分の時間」をとって、自分をケアし、ねぎらってあげることも必要です。そして、そのことに罪悪感を持たないこと! 頑張っている自分にご褒美をあげるつもりでいいと思いますよ(笑)。また、最初は難しいかもしれませんが、障害がわかってから何年か経っていくと、専門家や周囲のアドバイスのいいとこ取りができるようになり、自然ときょうだい児との時間も取りやすくなってくると思います。そして、きょうだい児もいろいろな意味で成長して、また違った関係性になっていくのだと思います。■きょうだいの発達障害「友だちにからかわれた」親はどうする?――国沢さんは自閉症の息子さんの5歳上に健常のお姉さん(現在は成人)がいますが、お姉さんが子どもの頃はどんな風に感じていたのでしょう?国沢さん:今回、きょうだい児の取材を受けるうえで、娘の意見も聞いてみました。娘によると、そもそも「きょうだい児に我慢させている」なんて思わないでほしいとのこと。そう思われるのは、自分の存在が負担になっているようでイヤだと言われました。――お母さんが罪悪感を持つこと自体が、子どもにとって負担になるということですね?国沢さん:娘が8歳の頃、よその人から「お姉ちゃんは弟君に障害があって大変だね。お姉ちゃんはいっぱい我慢していてえらいね」と言われたことがあります。その時、娘は「我慢しているとか、そういう言い方はしないでください。私はかわいそうな子じゃないから」と言って、相手をドン引きさせたことがあります(汗)。きっと、相手は親切心から言ってくださったのだと思いますが、娘にとって、こういった言われ方は、自分が哀れに思われているようで、イヤだったそうです。――頼もしいですね(笑)。そんなしっかり者のお姉ちゃんでも、つらかった時はあったのでしょうか?国沢さん:娘が子どもの頃、一番つらかったのは、弟がパニックになっている時だったそうです。お父さんとお母さんが弟のパニックをおさめるために集中していて、周囲の人が冷たい目で見ているのに、自分はなにもできずに傍観者となっている時。成長して、一緒に弟のパニックを抑える側になってからは、楽になったと言っていました。ちなみに、娘の方が息子のパニックを収めるのは、私より上手かもしれません(笑)。社会人になった娘は今、「弟のおかげで、私はリスク管理能力が半端ないほど身についた」と自負していましたよ。強い…(笑)。――自分が協力者側になってから、つらい思いがなくなったのですね?国沢さん:きょうだい児について、たくさんの相談を受けてきた中で感じたことがあります。きょうだい児には、私の娘と同様、気持ちが強いタイプと、ナイーブなタイプと、2パターンあるということです。ナイーブなお子さんの場合、例えば、発達障害児のきょうだいのことを、お友だちにからかわれたことがきっかけになり、学校に行きづらくなったり…。あるいは、「お母さんに甘えたい」という思いを伝えられず悩んでいたことが、あとでわかる…といった相談もよく聞きます。――発達障害児のきょうだいのことをお友だちにからかわれてしまった時などは、親はどう対処したらいいのでしょう?国沢さん:娘も、学校でお友だちに弟のことをからかわれて、泣いて帰ってきたことがあります。入学式のシーンとした状況で、弟が大きな声で歌ってしまって、お友だちから「おまえの弟うるさかった」と言われてしまって。私の場合は、その日の夕方、娘の担任の先生にお話しに行きました。先生への伝え方で気をつけたのは、まず、お友だちが言ったことは事実なので、その子を責めるつもりではないということ。ただ、セレモニーなどで緊張すると大きな声を出してしまう子がいるということ、また、たとえ事実だとしても指摘されるときょうだい児は悲しく思うこともある、ということをわかってもらえたら…と伝えました。――わが子を守るためと思うと、親はついヒートアップしてしまいがちですが、非常に冷静であたたかい対応ですね。国沢さん:余談ですが、娘が泣いたのは、言い返せなかった自分に腹が立ったからだそうです。その後も、同じ学校の支援学級にいる弟のことで、時々からかわれることがあったようですが、たくましく言い返していましたよ(笑)。――頼もしいですね(笑)。でも、お姉ちゃんのように言い返すことができない子はどうしたらいいのでしょう?国沢さん:ひとつの方法として、「きょうだい児の会(きょうだい児を支援するための団体)」に参加してみることをおすすめします。同じような立場のきょうだい児と出会って話をすることで、なんらかの解決法が見えてくるかもしれません。「自分だけじゃない」と孤立感を減らしたり、「自分の気持ちを素直に言っていいんだ」と思えるようになったり、そういった経験の中で「感情表現」のスキルを磨いたり、日常生活の工夫を学んだり…そうしているうちにプクプクと浮上してくる子もいます。また、障害児がいると普段は行きにくいようなアミューズメントパークなどに連れて行ってもらうなど、きょうだい児の体験不足を補う活動をしているところもあります。■発達障害児のこと「きょうだい児になんと説明したらいい?」――きょうだい児が小学生くらいになると、自分のきょうだい(発達障害児)について疑問に思うことも出てくると思うのですが、親はどう説明したらいいのでしょう?国沢さん:わが家には子ども向けの専門書もたくさんあったのですが、そういった学説が文字で書かれたものより、娘は、『光とともに…』(自閉症児の育児を描いた漫画。全15巻。戸部けいこ著/秋田書店)という漫画が一番わかりやすかったと言っていました。ヒカル君という人物像や日常生活での困りごと、パニック時の突飛な行動、お父さんとお母さんの苦労、周囲の人たちの言動など、発達障害の特徴を抽出して説明するような専門書と違い、発達障害児を取り巻く生活全般がつかめて、すごくわかりやすかったみたいです。また、小さい頃は、発達障害児の苦手な部分だけではなく、得意な部分とセットで伝えていくと、悪いイメージだけに引っ張られないと思います。ついでに、「あなたもここは得意だけど、ここはちょっと苦手だよね」などと、みんな同じように凸凹があるということを認識してもらう。そして、「その困りごとを少なくするために、今、療育で練習しているんだよ」と、なにもしてないわけではないことも伝えると、「お母さんも、〇〇も頑張っているんだな」と感じてもらえると思います。――程度の差はあれど、誰もが凹凸を抱えていることは知っておいてほしいですね。国沢さん:きょうだいに発達障害児がいるのは、大変なことも多いかもしれません。ですが、娘を見ていると、大変なことだけではなく、良い面もあると感じています。きょうだい児は親よりずっと小さい頃から、発達障害児と一緒に育ちます。きっと親以上に、多様な「価値観」や「対処の力」が育まれるでしょう。また、障害にとらわれずに人を見ることができたり、自分のきょうだいだけでなく、ほかの障害を持つ人たちにも寛容な心が育ったり…。それは「効率」や「生産性」ばかりが優先されがちの今の世の中で、とても大切なことだと思います。わが家にも、国沢さんと同じきょうだい構成の、きょうだい児がいます。娘が成長していく中で、弟の障害をどう受け止め、自分との関係を整理し対応していくか、そして困難をプラスに変えていける心を育てるために、親として家族として何ができるか、模索し続けたいと思います。国沢真弓さん プロフィールフリーアナウンサー、自閉症スペクトラム支援士、一般社団法人 「発達障がいファミリーサポートMarble」 代表理事<役職>ペアレント・メンター、三鷹市相談支援事業「ママサロン」相談員 、三鷹市知的障害者相談員、三鷹市発達障害児親の会「モンブランの会」会長、社会福祉法人「清陽会」評議員、社会福祉法人「みたか福祉会」評議員、児童発達支援施設「すこっぷ」家族支援アドバイザー、「三鷹市教育支援推進委員会」委員、「三鷹市社会福祉協議会」地域支援部会長。<経歴>都立新宿高校、聖心女子大学文学部歴史社会学科を卒業。富士通株式会社を3年勤務後、アナウンサーに転向。NHKテレビ「きょうの料理」「婦人百科」等の進行を約10年務めたほか、多数のテレビ・ラジオ番組に出演。海外特派員、番組企画構成も担当。ナレーション・司会は各500回以上務め、厚生労働省主催「世界自閉症啓発デイシンポジウム」の総合司会を毎春担当。「3歳までの子育ての裏ワザ」「こんな時どうする?子どもの友達・親同士」(PHP出版)など共著多数。<現在の活動>一般社団法人「発達障がいファミリーサポートMarble」代表理事として、「発達障害」や「伝える力UP」といったテーマでの講演を、全国で行っている。また、「ペアレントメンター」として保護者や支援者の相談に応じるほか、障害児の家族が気軽に参加できるイベントやお喋り会の開催等を行い、家族の元気を応援している。(詳しくはホームページをご覧ください)。取材・文/まちとこ出版社N
2018年10月02日堀未央奈×スパイス最前線。ビビッとくる刺激がクセに。美容に◎のスパイスに夢中。胡椒の辛みが吹き抜ける、爽やかな刺激との出合い。“胡椒”をテーマにした店があるという噂をたよりに、堀未央奈さんが今回訪れたのがこちら。『アパッペマヤジフ』なる謎めいた名前の店で、できあがりを待っているのは、ラム肉の胡椒壺炊き。「スパイスを使ったお料理はとても興味があります。よく食べに行くのはインドカレーですが、スパイスって食べれば食べるほど好奇心が湧きますね。種類や味だけでなく、女子目線では美容にいいという点が気になるところ。体調をアップさせたい時も無性に食べたくなるんですよね」堀さんの目の前に運ばれてきたのは、鍋の縁をパンで密閉した土鍋。パンをはずしたら、いざ、蓋をオープン。湯気とともに現れたのは、胡椒など数種のスパイスを加えたトマトスープで、ラムの肩ロース肉を2時間以上煮込んだ料理。さらに、塩漬けの胡椒をたっぷりトッピングしてから食べる。「クミンやカルダモンなど、いくつものスパイスがスープから香りますね。ずーっと飲んでいたいくらい♪あとのせした胡椒を噛むと、プチッとはじけて爽やかな辛さが通り抜ける。辛いけどあとを引かないから、口の中で何度も破裂させたくなる。今までに味わったことのない初体験の刺激です!ほろっと崩れる柔らかさのラム肉も、ほっくほくのインカのめざめも甘くてとろける~」食べ終わった感想は?「とにかくエキサイティング!カラダが目覚めるような感覚で、胡椒の魅力にはまりそう!」堀未央奈1996年10月15日生まれ、岐阜県出身。ナンと一緒に食べるインドカレーが大好き。「スパイスをきかせた母秘伝のカレーを自分も作れるようになりたい」ブラウス¥30,000(テラ/ティースクエア プレスルームTEL:03・5770・7068)アパッペマヤジフスリランカに出向き探しあてた生の胡椒を、自社工場で塩漬けにして輸入。メニューに用いるほか、瓶詰にして販売も。胡椒壺炊きはラム肉のほか、豚、合鴨も選べる。東京都港区麻布十番1-6-7F1プラザビル2FTEL:03・3479・668718:00~23:30(22:30LO)日曜休※『anan』2018年10月3日号より。写真・清水奈緒スタイリスト・高垣鮎美(LOVABLE)ヘア&メイク・yumi(Three PEACE)取材、文・池田祐美子(by anan編集部)
2018年09月26日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「災害支援とボランティア」です。確実な支援には、的確なニーズを知るのが肝要。熊本地震の経験をふまえ、西日本豪雨では、安倍政権は「プッシュ型支援」を取り入れました。災害が起きたとき、これまでは地元の自治体からの要請を受けて、必要物資を送っていましたが、自治体や職員が被災した場合、どうしても後手に回ってしまいます。そこで今回は、要請を受ける前に、国のほうから業務用エアコンやスポットクーラー、簡易トイレ、無線機などを必要と思われるところに送りました。ただ、愛媛県大洲市では、送られてきた仮設トイレの管理方法が決まらず使われなかったなど、一部ミスマッチが生じました。こういう問題は試行錯誤しながら徐々に整備していくものなので、多少の齟齬は仕方ないと思います。今回は、自衛隊も現地の情報収集・連絡専門要員を約200人派遣。災害直後は混乱していますから、具体的なニーズを把握することがとても大変です。専門要員がいたことで的確、迅速な支援につなげることができました。ニーズを把握することは、ボランティアをする上でも重要です。「なにか助けになれば!」と災害発生直後に駆けつける方がいらっしゃいますが、被災地側はまだ指示できる状況ではなく、手持ち無沙汰になることも。もしもボランティアをしたいと思ったら、まず地元の災害ボランティアセンターか、社会福祉協議会に問い合わせましょう。現状を知り、ボランティア保険に入り、心構えのレクチャーを受け、県外の人も募集しているかなど条件を確認してください。ボランティアは誰でも歓迎されるとは限りません。駐車場の確保の問題もありますし、「地域の人のみに限る」というところもあります。ボランティアの車が渋滞を引き起こし、自衛隊や救急車両が入れなくなるというトラブルも起きます。また、泥かき要員だったら、基本的には道具は持参しなければいけません。不衛生な環境もあるため、マスクやゴーグルも必須です。社会福祉協議会では、ボランティアの作業マニュアルを作り、道具や服装について明記していますので、ぜひ参考にしてください。善意の押し付けにならないためにも、被災地に迷惑をかけないボランティアのあり方を知る必要がありますね。ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2018年9月26日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2018年09月19日セブン-イレブンの人気スイーツのひとつに、「もこ」シリーズがあります。簡単にいうと、シュークリームに似たスイーツです。そんな人気シリーズから、このたび新たなフレーバーが登場しました。新フレーバーは「さつまいも」9月4日に発売されたのは、「宮崎紅のさつまいもこ」(税込140円)。「もこ」シリーズでは、これまでも様々なフレーバーが販売されていて、過去には「メロンパンもこ」や「いちごもこ」、「ティラミスもこ」といったものも。どれもSNSを中心に話題になった商品ばかりです。そして今回は、新たに「さつまいも」フレーバーが仲間入り。じつは、以前にもさつまいもを使用した「もこ」が販売されていたことがあるそうで、好評だったのだとか。前回の好評を受け、満を持して登場した「宮崎紅のさつまいもこ」。スイーツに最適なブランド芋「宮崎紅」を使用したさつまいもクリームは、さつまいもを5%も増量し、より濃厚に。さつまいもに見立てた紫色の皮も相まって、まるで本物のさつまいものような姿をしています。期待しすぎないほうがいいかも…?人気シリーズの新作とあって、やはり食べてみないわけにはいきません。さっそく購入してきました!ふんわり&もちもちの生地は、これまでの「もこ」と変わりなし。さつまいもクリームはなめらかで口当たりはいいのですが、「さつまいも5%増量」と聞いてイメージしていたよりは、さつまいもの味がちょっと弱い印象…。たしかに、ほんのりさつまいもの味は感じますが、「もう少し濃厚でもいいのでは?」というのが、正直な感想です。あえて厳しくいうと、最近はほかのコンビニでも栗やかぼちゃ、さつまいもを使ったスイーツがどんどん発売されていて、それらに比べると“素材本来の味わい”や“濃厚さ”はイマイチ。ただ、これはあくまでも個人の意見。ネット上では、「早く食べなきゃ」と発売を待ち望んでいた人は多く、実際に食べた人からは、「おいしい!」とおおむね好評のようです。筆者は前回販売されていた「さつまいもこ」を食べたことがないので、もしかしたら「さつまいも5%増量」という言葉に、過剰な期待をしてしまったのかもしれません。とはいえ、さつまいもはともかく、スイーツとしてはとってもおいしくて、ペロッと完食。「さつまいもこ」ファンは多いようなので、気になる方は早めにチェックしておくとよさそう?(文・三軒茶屋すみ子/考務店)
2018年09月05日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「高度プロフェッショナル制度」です。6月、8つの法律から成る働き方改革関連法が成立。長時間労働をなくすため、残業時間の上限が原則月45時間、年間360時間に定められました。上限を超えると使用者側に6か月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科せられます。また、「同一労働同一賃金」を導入。同じ企業で同じ仕事内容の場合、正規雇用と非正規雇用の待遇格差を是正することになりました。8つの法律の一つが「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」です。年収1075万円以上の専門職は、残業や休日、深夜労働などの割増賃金の支払い対象から外すというもの。証券アナリストや医薬品開発の研究者、経営コンサルタントなどが対象とされています。残業せずに自分の裁量で効率よく働けばいいという制度なのですが、現実問題、自分の仕事が終わったからと、残業せずに帰ることができるでしょうか。上司に新たな仕事を頼まれ、サービス残業を強いられるのではないか。家族が過労死した遺族らはこの法案に反対していました。優秀で責任感の強い真面目な人こそ、過労に至ります。本来、法律はそういう働き手を守るためにあるべきなのに、「高プロ」はそうではないと肩を落としていました。実はこの法案、第1次安倍内閣のころにも「ホワイトカラー・エグゼンプション」という名で推し進められましたが、猛反対にあい、潰されました。安倍内閣が、なんとしてもこの法律を通したかった背景には、アメリカからのリクエストがあります。「日米投資イニシアティブ」という、経済的にパートナーシップをとろうという交渉のなかで、アメリカは日本の雇用環境を、従来の終身雇用型の家族的なあり方ではなく、成果主義ですぐに首を切れる外資系スタイルに変えることを要望。そうして、日本企業でアメリカ人の雇用を増やすことを望んでいるのです。高プロは、労働者側に、拒否する権利を与えています。しかし、有給休暇の申請さえしづらい日本の職場環境で、対象者は拒否できるのか。また、現在は一部の高所得者、専門職のみが適用対象になっていますが、それも将来もっと広げられるのではないかと、危惧する声も上がっています。堀潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2018年9月5日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子
2018年09月04日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「政治家と官僚」です。間接的には国民も官僚の人事に関わっています。森友学園をめぐる文書改ざん、自衛隊の日報隠蔽、加計学園の獣医学部新設など、政治家と官僚にまつわる問題が度々起きています。ここで政治家と官僚の違いについて改めて整理すると、政治家は、国民が選挙によって選んだ、「私たちの代表」です。これに対し官僚は、各省庁ごとに採用された公務員で、国民の代表ではありません。基本的には、政治家が官僚に対して指示を出し、官僚はそれを実行する立場にあります。なにか不祥事を起こした場合、政治家ならば、次の選挙で当選させない、ということができますが、官僚については国民が人事に関わることはできませんでした。しかし、官僚機構のなかだけで人事を決めることで、官僚と民間の癒着構造ができ、天下り問題が取りざたされるようになりました。省庁のトップに上がれなかった人たちの受け皿として、機能していない公益法人を作り、無駄な税金が使われた。そこで、第1次安倍政権は「官民人材交流センター」を内閣府に設置。国家公務員の再就職先を民間企業と相談しながら支援するというもの。その後、民主党政権になり、官僚の勝手にはさせないと、政治主導にしようとしたのですが、うまくいきませんでした。第2次安倍政権になり、平成26年に国家公務員法の一部を改正。「内閣人事局」を作って、国家公務員の幹部の人事を政府が行うことになりました。主に官房長官に一任されており、最大の人事権を持つのは内閣総理大臣です。こうして、間接的ではありますが、国民は官僚の人事に関われるようになったんです。ところがそこで起きたのが、出世したい官僚が、人事権を持つ政治家に擦り寄り、忖度するようになったということ。その結果、冒頭のような問題を引き起こました。官僚の指揮命令系統は大変整っているため、あってはならない文書改ざんまで、上司の命令が通ってしまいました。裏を返せば、よいこともスムーズに処理されているということですが…。原因は内閣人事局の設置ではないと、僕は思います。問題再発を防ぐには、各省庁に適切な人材を配置できる政治家を、私たちが選ぶということなのではないでしょうか。ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。新刊『堀潤の伝える人になろう講座』(朝日新聞出版)が好評発売中。※『anan』2018年7月11日号より。写真・樽木優美子(TRON)スタイリスト・有咲ヘア&メイク・尾口佳奈(KOHL)インタビュー、文・菅野綾子(by anan編集部)
2018年07月08日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「公文書」です。明確なルールが不十分。国民の財産という意識を。森友学園や自衛隊の日報など、公文書にまつわる問題がたびたび取りざたされています。公文書とは、国や地方公共団体などの機関、公務員が作成する文書を指します。日本では長い間、公文書についての明確なルールが決められておらず、「公文書管理法」という法律が整備されたのも2009年、麻生内閣のとき。年金の納付記録漏れなどが発覚し問題になった時期でした。公文書管理法の第1条には、「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るもの」と記載されています。公文書は国民の大切な財産。のちに政策や意思決定の経緯を検証するための重要な資料となります。日本には、太平洋戦争で敗戦が濃厚になったときに、軍が書類を焼却処分したという苦い過去があります。たとえば、満州で陸軍の731部隊が、生物兵器の人体実験を行ったのではないかといわれている件も、関係資料が残っていないために実証ができておりません。現在、公文書は内容に応じて最長30年保管され、その後も歴史的に必要と判断されたものは、国立公文書館に移されます。公文書にするかどうかは各役所の判断に委ねられており、公文書にすると決まったら、文言もいろいろ整えてから作成されるのだそうです。短期で目的を終えると担当者が決めたら「1年未満文書」として、管理簿へ記載されず、審査を受けることなく廃棄できます。自衛隊の日報があとから見つかったという問題も、日報を公文書とするかどうかの意識にズレがあったからではないかといわれています。アメリカには国立公文書記録管理局があり、誰でも自由に閲覧できます。僕もサンオノフレ原発事故について調べたときに、民間企業の担当者の連絡先まで辿ることができました。「不都合になりそうなことは隠す」のではなく、公益性を考え、社会にとって必要な情報は公開する。民主主義国としてアメリカは先輩格だなと実感しました。徹底した管理をするには、人員が足りていないという問題もあります。今後の公文書のあり方、情報公開と保存についてしっかりと整備し、ルールを作り上げていくことが望まれます。ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。新刊『堀潤の伝える人になろう講座』(朝日新聞出版)が好評発売中。※『anan』2018年6月6日号より。写真・中島慶子題字&イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2018年06月10日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「18歳成人」です。少年法や保護者の責任期限など、要検討事項も多々。3月の閣議で、政府は成人年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正案を決めました。それに合わせ、結婚できる年齢を女性も18歳に変更、2022年4月の施行に向けて、現在、細かな法律の整備を進めています。成人年齢引き下げのきっかけとなったのは、4年前に憲法改正の是非を問う国民投票の投票年齢を18歳としたことです。続けて一昨年、選挙権も18歳に引き下げられました。今回、飲酒や喫煙、公営ギャンブルができる年齢は20歳のまま据え置きになりますが、親の承諾なしにクレジットカードを作ったり、ローンを組むことが可能になります。高校を出たての若者が悪徳商法に引っかかるなどの被害が出ないかと、心配の声も上がっています。一番懸念されているのは、少年法の適用年齢を引き下げるかどうかです。現在、未成年の犯罪の場合は少年院に送られ、更生指導を受け、一般社会に戻されます。ところが、もしも18~19歳でいきなり刑務所に送られることになれば、社会経験のないまま、更生の機会も得られず、再び社会に放り出されることにもなりかねません。刑期を終えたあと、2年以内の再犯率は11.5%。この数字が増えてしまうことになるかもしれません。未成年でも凶悪事件は刑法で裁かれる場合もあるので、20歳のままの年齢設定でもよいのではという意見も出ています。また、成人年齢引き下げでしっかり議論すべきなのが、保護者が責任を持つ年齢です。児童養護施設にいられる年齢、養育費の支払い義務は何歳までになるのか。18歳から成人となれば、大学費用の負担がシングルマザーやファーザー家庭で増えたり、あるいは子ども本人に負担が及ぶでしょう。世界では、成人年齢を18歳に定めている国がほとんどです。世界のスタンダードに合わせ、自立する年齢が早まるのはよいことですが、そのかわりに、税金や労働法、経済の仕組みやリテラシーなど、社会に出て必要とされることの教育プログラムを作る必要があると思います。ブラックバイトの問題が後を絶たないのも、それらが違法だという知識が、雇われるほうにないのが一因なんですね。ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。新刊『堀潤の伝える人になろう講座』(朝日新聞出版)が好評発売中。※『anan』2018年5月30日号より。写真・中島慶子題字&イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2018年05月23日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「死刑制度」です。世界は廃止が主流。加害者の人権をどう捉えるか。1989年~‘95年に起きた一連のオウム真理教事件。関連する刑事裁判がすべて終結し、麻原彰晃死刑囚をはじめ、死刑が確定した13人の刑の執行もまもなく行われるといわれています。日本の死刑の歴史は古く、5世紀の仁徳天皇時代からあり、現在の刑法に定められたのは明治40年です。しかし、世界では死刑制度は廃止の方向に進んでいます。1990年時点で、死刑制度のあった国は96か国、廃止国は80か国。2009年には死刑存置国は58か国に減り、廃止国は139か国に増えました。イギリス、フランス、ドイツなど、ベラルーシ以外の欧州諸国や南米諸国は廃止。アフリカでも廃止国が増えており、アメリカで死刑が存置されているのは一部の州のみです。中国も国際社会からの批判を受け、適用を厳格化することにしました。多くの国が死刑制度を廃止にした主な理由は、人権的な問題と、実は死刑が凶悪犯罪の抑止力にはならないと証明されたからです。国連人権理事会は、日本政府にも死刑制度の廃止や一時停止の勧告を行いましたが、政府は世論が求めていないからと、検討する構えを見せていません。平成26年度の内閣府の世論調査によると、80.3%の人が「死刑もやむを得ない」と答えました。「死刑は廃止すべき」が9.7%、「わからない、一概にいえない」が9.9%。「やむを得ない」と答えた人のうち5割以上の人が、その理由を「被害者やその家族の気持ちがおさまらない」「凶悪な犯罪は命をもって償うべき」としています。そして、「死刑を廃止すると、凶悪犯罪が増える」と考える人が57.7%いました。しかし一方で、袴田事件や名張毒ぶどう酒事件といった死刑判決が確定した事件が、再審でのDNA鑑定により冤罪だったことなど、問題も複数起きており見過ごせません。日弁連は、人権擁護の観点から死刑制度廃止を訴え続けていて、再来年、国連犯罪防止刑事司法会議が日本で開催されるまでに、進展を見せたいと考えています。加害者とはいえ、人が人を殺してもよいのか。終身刑ではなく、死刑でなくてはならない理由は何か?みなさんはどう思いますか?堀潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。新刊『堀潤の伝える人になろう講座』(朝日新聞出版)が好評発売中。※『anan』2018年5月23日号より。写真・中島慶子題字&イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2018年05月16日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「仮想通貨の現状」です。仕組みが不安定。投資目的の購入はリスクが高すぎる。今年1月、仮想通貨交換業者の大手コインチェックで、ハッキングにより仮想通貨「NEM(ネム)」580億円分が流出する事件が起きました。仮想通貨の技術を支えるのはブロックチェーンという仕組み。世界中の複数のサーバーで情報を共有。互いに監視、管理するシステムなので安全だと言われていました。なので流出後のNEMも追跡できていましたが、遂には、ダークウェブといわれる、一般ではアクセスしづらいインターネット最深層部にある闇の取引所で取引され、細かく分散、換金されてしまいました。そのため、全てのNEMの追跡は実質不可能に。流出したお金の最終的な行き先は、独裁国家の可能性も高いと言われています。仮想通貨の取引に関して、取り締まる法がなかったため、金融庁は、昨年4月に改正資金決済法を施行。仮想通貨交換業者に登録制を導入しました。コインチェックは、まだ申請段階の「みなし業者」だったんですね。この事件を受け、他のずさんな業態の交換業者にも処分命令を出し、登録審査の基準も厳しくしました。またZaif(ザイフ)という仮想通貨取引所では、2月にビットコインが0円と表示され、ある利用者が21億BTC(時価総額2246兆円)をタダで購入するというトラブルが起きました。翌日それは無効になり、後にZaifはシステムエラーによるものと謝罪。ただ、そもそも発行総量が2100万BTCと決まっているビットコインが、なぜ総量を上回って購入できたのか、ネット上では疑問の声が上がりました。最近は「ICO」といい、株のように仮想通貨を発行して資金を調達する仕組みも出てきました。様々な仮想通貨が生まれましたが、変動が大きすぎて安定した売買ができず、もはや通貨ではなく、ただの投資のためのデータになってしまっているものもあります。仮想通貨はまだ過渡期。勉強のための少額購入ならよいですが、まとまったお金を投資するにはリスクが高すぎると思います。先日、コインチェックはネット証券のマネックスグループに買収されました。仮想通貨はあくまで、ブロックチェーンという技術を世界に浸透させる先導役なのだと思います。堀 潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。新刊『堀潤の伝える人になろう講座』(朝日新聞出版)が好評発売中。※『anan』2018年5月2・9日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2018年05月07日ジュリー・アンドリュース主演で1964年、世界的大ヒットを記録したディズニー映画として知られる『メリー・ポピンズ』。2004年には、パメラ・トラバースの原作小説をもとに、ディズニーと『オペラ座の怪人』『レ・ミゼラブル』などのサー・キャメロン・マッキントッシュがプロデュース、ディズニー映画版の楽曲も使用し、マシュー・ボーンが振付けを担当しミュージカル化された。このミュージカル『メリー・ポピンズ』が2018年3月に、日本初演を迎える。「チム・チム・チェリー」「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」など、誰もが口ずさめる名曲に彩られ、バンクス家にやってくるナニー(子守)の"メリー・ポピンズ"が一家に影響を与えていく物語は、濱田めぐみ、平原綾香、大貫勇輔、柿澤勇人といった現在のミュージカル界を引っ張る俳優陣によって届けられる。この作品の魅力はどこにあるのか、ホリプロ・堀義貴社長に話を聞いた。○ホリプロではなかなかないハッピーな作品――堀社長がロンドンで『メリー・ポピンズ』を観たときにどのような魅力を感じたんですか?観た後に、つい歌を口ずさんでしまうんですよね。僕は子供の頃に映画を観ていましたし、観たことがない人でも、曲はどこかで聞いたことがあると思うんです。劇場を出た後に、軽くステップを踏みながら鼻歌を歌いたくたくなって、魔法にかかってしまう作品なんです。ホリプロでこんなハッピーハッピーな作品、なかなかないですからね! 『デスノート THE MUSICAL』のように大体死ぬか、周りから総攻撃されるかですから(笑)。『ピーター・パン』以来のハッピー感ですよ。ウォルト・ディズニーの「人はみんな始めは子供だった」という言葉がありますけど、ディズニーランドに行くといい年齢でもあの"耳"をつけたくなるのは、あの世界にガラッと自分を変えられるからですよね。劇場って、どこか頑なでスノッブな雰囲気もあると思うのですが、この作品は大人が見て「自分が子供だった」ということを再認識すると思います。自分が会社と家の往復だったことに気がつかされるでしょうし、世界の色彩が見えてくると思いますよ。子供目線でも、大人目線で観ることができて、誰が観ても面白いものになっているはずです。――映画を見直して、改めて「こんな話だったのか」と思わせられました。深い話なんですよね。ファミリーで観に来たら、子供が楽しくてきゃあきゃあ言ってる横で、親の方が感動して泣いている、ということは起きると思いますよ。○キャストがなかなか決まらない苦労――今回の公演にたどり着くのに大変だったのはどのような点だったのですか?……キャストオーディションの結論が出ない(笑)。劇場はおさえてしまっているし、今更「やれない」と言えないですし、発表も遅くなりました。いざ稽古に進めばプロばかりですから心配していないんですけど、大変だったのはキャメロン・マッキントッシュの求めるキャストがなかなか決まらない。それに尽きます。――バート役の柿澤勇人さんも不安になりながらオーディションに臨んでいたとおっしゃってました。逆に言うと、「"もう中学生"さんをミュージカルに」なんて発想は、僕らにはありませんでしたから(笑)。異分子ですよね。また日本の感覚ですと、だいたいWキャストは似た雰囲気の人を選ぶものですが、そういう発想がなく、全く違う2人を選ぶんです。――でも、そこまでの時間をかけて選ばれたキャストには、大満足ということですよね。それは間違いないはずです。歌と踊りに関して、特にタップダンスに関しての要求はものすごく高いものでした。ダンサーとして活躍する大貫(勇輔)も今までタップをそんなにやっていたわけじゃないので、ずいぶん前から練習をしていました。――演出面よりも、キャストオーディションの方が大変でしたか?フライングは『ピーターパン』で30年以上やっていますので、自信があります。でもキャストがいないとどうしようもないので、そこが大変でしたね。――ぜひこのシーンに注目して欲しいというところを教えてください。やはり、群舞です。泣けるバラードや、歌いあげる曲も魅力かもしれないけど、ミュージカルの醍醐味といえば、全員が一糸乱れずバチっと決まるところ。群舞のシーンは、観終わった後に本当に幸せな気分になります。普通のミュージカルでもすごいのに、ディズニーの作品はフィニッシュが決まった時の心地良さが格別なんです。ディズニーランドのパレードの最後も気持ちいいじゃないですか。――ディズニーランドに行くような気持ちで観に行けるんですね。あまりミュージカルになじみのないという方にもわかりやすいし、大人が観ると深いし、子供は楽しめるし、どっぷり世界に浸かっていただけると思います。『レ・ミゼラブル』のキャメロン・マッキントッシュが何十年もミュージカルにしたがっていた作品で、天才振付師のマシュー・ボーンが振り付けを行っていて、大変な作品なんです。ディズニー、マッキントッシュ、マシュー・ボーンと、作り手のアベンジャーズのようなこの作品を楽しんでいただければと思います。○ミュージカル『メリー・ポピンズ』出演:濱田めぐみ・平原綾香/大貫勇輔・柿澤勇人/駒田一・山路和弘/木村花代・三森千愛/島田歌穂・鈴木ほのか ほか東京公演:東急シアターオーブ3月25日〜5月7日 ※プレビュー公演:3月18日〜24日大阪公演:梅田芸術劇場メインホール5月19日〜6月5日(C)Disney/CML
2018年03月13日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「平昌五輪と北朝鮮」です。五輪を機に募る南北融和ムード。問題は閉会後。新年早々、約2年ぶりに韓国と北朝鮮の南北閣僚級会談が開かれ、北朝鮮は平昌オリンピックに参加することになりました。女子アイスホッケーは南北合同チームで出場するなど、南北融和ムードが広がってきています。会談は、北朝鮮がリードする流れになり、「朝鮮半島の問題は2国間で話す。核やミサイルは、アメリカがこちら側に銃口を向けているから身構えているだけ。我々の問題に水をさしているのはアメリカだ」というメッセージを国際社会に打ち出しました。金正恩体制の一番の脅威はアメリカ。友好関係にあるアメリカ、韓国、日本の分断を狙っているといわれています。北朝鮮にとっては、慰安婦問題や竹島問題など、日本と韓国の間も火種を抱えていたほうが都合がいいんですね。韓国の文在寅大統領は、公約で、南北問題に関しては融和政策をとると宣言していました。しかし、日本やアメリカとの良い関係は保ちたく、国内世論も気にしています。以前、取材で、韓国の退役軍人数名に北朝鮮についての思いを聞いたところ「アメリカ軍と行動を共にするけれども、北には自分らの親戚も住んでおり、かつての同胞なんだ」と、複雑な表情で本音を漏らしていました。もし、ここで北朝鮮が平昌オリンピックに参加しなかったら、国際的な緊張関係はますます高まったでしょうし、北朝鮮は交渉のカードを1枚失うことになります。また、北朝鮮国内に対しても、国際社会の一員であることを示すために参加は必須でした。問題はオリンピック後でしょう。核兵器やミサイルの問題が解決されないまま、韓国と北朝鮮の友好ムードが吉と出るか凶と出るか。鍵を握るのは中国、ロシア、アメリカです。最悪のシナリオは、このまま北朝鮮の核の保有を世界が認めるということ。そうなれば、日本と韓国は安全保障を根本から見直さなければなりません。また、他の国々も核の保有を主張しだすかもしれません。いずれにせよ、北朝鮮にとって、いま平昌オリンピックが開催されたことは、自国を優位に持っていくための絶好のチャンスだったんですね。堀 潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2018年2月28日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2018年02月25日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「ICAN」です。昨年、ノーベル平和賞に輝いた「ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)」とは、101か国468団体が参加している国際NGO。「核兵器禁止条約」が国連で採択されるよう働きかけた功績が認められ受賞に至りました。ICANは、核戦争防止国際医師会議という組織を母体とし、2007年にオーストラリアで発足し、2011年からジュネーブに国際事務所を置いています。日本からはNGO「ピースボート」が参加し、幹部を担っています。ピースボートは被爆者の方々とともに船で世界中を回り、各国で核廃絶を訴えてきたんですね。国際条約では、地雷や毒ガス、化学兵器などが使用を禁止されており、違反すれば国際刑事裁判所で処罰されます。核兵器もそれらに加え、開発や保有も禁止しようというのが、核兵器禁止条約。昨年7月の国連で122か国の賛成を得て採択されました。ところが、肝心の常任理事国やNATOに加盟するヨーロッパの国々、インド、パキスタン、イスラエルら核保有国、そして日本もこの条約の交渉会議に参加しなかったのです。日本はアメリカの核の傘に守られているため、核兵器保有も禁止する条約には反対の立場。より現実的な対策として「核兵器廃絶決議」を24年間連続して国連総会に提出しています。この決議案は、核の保有は認めながらも段階的に減らして、「核兵器不拡散条約(NPT)」を完全に実施しようというもの。中国、北朝鮮、ロシア、シリアが反対しているものの、アメリカや欧州諸国など156か国の賛成を得て採択されました。しかし、ICANのベアトリス・フィン事務局長は1月に来日し、「世界唯一の被爆国である日本こそが、核兵器禁止条約に賛成し、核廃絶のリーダーシップをとるべき」と訴えました。核兵器は絶対に使われてはなりませし、被爆者のみなさんのメッセージは後世まで広く伝え続けなければいけません。けれど、大国同士が核を保有していることが抑止力となり、戦争を回避できているという現状も否めません。もし世界から核兵器がなくなったとしたら、何が抑止力となるのでしょうか。みなさんはどう思いますか?堀潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2018年2月14日号より。写真・中島慶子題字&イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子
2018年02月12日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「マイナンバーカード」です。普及率の伸び悩みは、利便性の実感がないから。マイナンバー制度が始まって、今年で3年目になります。ところが、マイナンバーカードの普及がなかなか進まず、政府は頭を抱えています。交付開始前に政府が掲げた目標交付枚数は2019年3月末で8700万枚。実際には、昨年8月末の時点で1230万枚、人口比でいうと普及率は9.6%にすぎず伸び悩んでいるのです。住民票や基礎年金、健康保険被保険者証などにはそれぞれに番号があり、個人の特定に労力を費やしていました。マイナンバー制度はそれらを一本化して、「社会保障、税、災害対策」の分野で活用するために始められましたが、いまはまだ過渡期にあり、マイナンバーカードでできることといえば、コンビニで住民票の写しや印鑑登録証明書が取れるくらいです。法務省は、今後マイナンバーを使い、婚姻届やパスポートの発給申請、老齢年金請求に必要な戸籍証明書が不要になる、戸籍法改正案を来年の通常国会で提出する方針を発表しました。地震災害が発生したときには罹災証明書が発行されるのですが、世帯ごとに1通のみ。2世帯以上で住んでいた大家族が、被災して一つの家に住めなくなったとき、子供や孫の世帯は罹災証明書を受け取れないという問題が熊本地震で起こりました。これも、マイナンバーカードで個人を特定して証明書を出すという案が検討されています。マイナンバーカードには、生体認証にも使えるICチップが入っています。この認証機能が活用できれば、健康保険証や銀行のキャッシュカード、転売不可のチケットなどに有効活用される可能性を秘めています。ただ、これからの時代に「カード」という形態がふさわしいのか。総務省は、マイナンバーカードを持ち歩かなくても、スマートフォンにカード情報を取り込み、本人確認ができるような実証実験も進めているそうです。しかし、これには対応する端末を開発しなければならないため、企業側の努力も必要になります。いまは、住所や名前に加えて、マイナンバーの記入を要請されますが、今後、マイナンバーカードひとつで全てこと足りるくらいになったら、便利さを実感できるのかもしれませんね。ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2018年1月24日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2018年01月22日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「2017年3大トピックス」についてです。今年もさまざまな出来事がありましたが、まず僕が注目したのは、AI本格化時代の到来です。AIは、金融業界でいち早く取り入れられ、ゴールドマン・サックスのニューヨーク本社の現物株式取引では、600人いたトレーダーがいまや2人。あとはAIに取引は任されています。日本でも、みずほ、三菱東京UFJ、三井住友のメガバンク3行で3万2000人超分の業務削減を発表。リアル店舗は縮小し、AIの担う業務が増えていきます。メディアでも、映像の粗編集やラジオパーソナリティのアシスタント業務、専門用語の文章チェック作業などはAIができるようになりました。そんななか、今秋Google、Amazon、LINEがAIスピーカー(スマートスピーカー)を発売。AIスピーカーに話しかければ、調べものも家電操作も、雑談の相手までしてくれる。AIの波はついに家庭にまで押し寄せてきたんですね。2つ目は仮想通貨。第4次産業革命といわれる、金融とITの融合、フィンテックが大きく前進したのを実感した一年でした。象徴的なのがビットコインです。中国は「貨幣として認めない」と宣言し、ゴールドマン・サックスは「リスクが多大なので社員に取引を禁じる」と発表。ビットコインを使ったVALUも盛り上がりました。4月には、情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する、通称「仮想通貨法」が施行されました。三菱東京UFJは独自の仮想通貨「MUFGコイン」を発行。今後、お金革命が本格化しそうです。3つ目は、訪日外国人旅行者の増大。観光庁は欧米豪に照準をあて、訪日プロモーションを強化しました。LCC整備を受け入れ、専用ターミナルを作り、Airbnbのサービスも広げた。それらが功を奏し、2016年の訪日客数は2400万人になり、増え続けています。政府は2020年に4000万人の観光客誘致という目標を掲げました。富裕層向けの旅行誌『コンデナスト・トラベラー』の読者投票で、「世界で最も魅力的な都市」に東京が2年連続1位に選出。異文化が入り、日本の様相も変わっていきそうです。堀潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2018年1月3・10日号より。写真・中島慶子題字&イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子
2017年12月31日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「NPO」です。社会問題の数だけ必要とされるのが非営利団体・組織。NPOとは、Nonprofit Organizationの略で非営利団体のこと。よく混同されるNGOはNon‐Governmental Organizationで、非政府組織。どちらも社会的問題に対応した事業を行い、営利目的ではない民間団体という意味では同じです。日本では、一般的には、街づくりや子育て、教育など国内の課題に対して活動を行っている団体をNPO、人道支援や紛争解決など、国際的な取り込みをしている組織をNGOと呼び分けています。日本でNPOの活動が注目されるようになったのは、阪神淡路大震災がきっかけといわれています。ボランティア組織だけでは支援が足りず、たくさんのNPOが立ち上げられました。NPOは非営利団体と訳されますが、利益を生んではいけないわけではありません。NPO職員にも給与は必要ですし、事業も継続させなければいけません。株式会社のように、利益を再分配したり、それを元に資金運用などをしてはいけないということなんです。平成10年には特定非営利活動促進法が施行され、特定非営利活動を行う団体を法人化できるようになりました。「特定非営利活動」とは、保健医療、福祉、社会教育、人権擁護など、国が定める20の分野に該当する活動を、社会全体の利益増進のために行うこと。欧米に比べ、社会的信頼の低い日本のNPO。法人化することで信頼が高まり、社会貢献活動がしやすくなります。子どもの貧困、虐待や自殺対策、高齢者の移動支援、環境問題…。お金よりやりがいを重視して、NPOを立ち上げ、それらの社会的課題を事業により解決しようとする若い世代も増えています。ある官僚は、いま日本が直面している社会問題のリストを公開しました。国や自治体でも補助金を出して、すでに問題解決に取り組んでいるNPOに手を挙げてもらい、代わりに活動してほしいと考えているのです。すばらしい活動をしているNPOはたくさんありますが、世に知られていません。NPOと一般市民をつなぎたくて、僕は「GARDEN」という場(会社)を作りました。NPOの活動は今後もっと必要になってくると思います。堀潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年にニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。※『anan』2017年12月27日号より。写真・中島慶子題字&イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2017年12月20日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「投票率」です。有権者の約半分の意見しか反映されてない!?10月の衆議院議員選挙の自民党の圧勝は、投票率の低さにも大きく起因しています。日本の投票率は現在50%台。先日の衆院選は、台風という悪天候も影響しましたが、戦後2番目に低い53.68%でした。約30年前、昭和の時代の投票率は70%前後でした。ところが、平成2年を境に急降下します。リクルート事件や東京佐川急便事件など、政治家の汚職事件が相次いで起こり、国民の政治不信が募ったからです。2009年に民主党政権が誕生したときには一瞬盛り上がり、69.28%に上がりました。しかし、民主党政権は実行力が伴わず、マニフェストはただの理想にすぎないことを思い知らされます。国民の政治離れは進み、投票率は再び下降しました。政治腐敗は中選挙区制にあると、1994年に小選挙区比例代表並立制が導入されました。選挙自体は簡単にはなったのですが、与党の自民党と野党第1党の社会党が絶妙なバランスでいた「55年体制」が崩壊し、小政党が乱立。国民は、どの政党を選べばよいのかが、わからなくなってしまいました。大学生などに、投票に行かない理由を聞いてみると、政治に関心がないわけではなく、将来を託せる政治家がいない、自分の一票がダメな政治家の後押しをしてしまうのが怖いと言います。問題はあるものの、トランプ大統領ともいい関係を築き、経済面でもそれなりの成果を出しているという点で、やはり自民党に、と今回の圧勝につながりました。世論調査では、「自民党は支持するが、安倍さんは支持しない」という回答も多く上がっています。選挙のたびに投票率の低さが話題になりますが、その前に、票を入れたくなるように政治家ももうちょっと公約を実現させてください、という気持ちにもなりますよね。また、選挙はゴールではありません。当選後、その政治家が国会でどんな発言をしているか。公約を法案にまで進められたか。それらをチェックするのも国民の務めです。前にも言いましたが、他人が決めたルールで生きてよいなら、選挙に行かなくても構いません。でも、自分の望む未来があるのなら、それを作るために投票するべきだと僕は思います。ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2017年12月13日号より。写真・中島慶子題字&イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2017年12月07日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「『保守』と『リベラル』」です。政策で見ると両者は矛盾だらけ。二分はできない。衆議院選挙は自由民主党の圧勝に終わりました。選挙のニュースなどでもよく使われた「保守」と「リベラル」ですが、実は「保守」の対義語は「リベラル」ではなく「革新」なんです。そもそも保守派とは、受け継がれてきた慣習や伝統、地域のルール、家族を重んじ、慎重に歩みを進める姿勢を指します。対して、革新派は、古いものを打破して新しいものを作り上げていく姿勢。1970年代の学生運動のころは、まさに革命を求める人たちが革新派と呼ばれてきました。時代とともに、いつの間にか「革新」は「リベラル」と言い換えられるようになりましたが、「リベラル」は、個人の自由を尊重するという主義ですから、意味合いが少し違うんですね。政党でいうと、自由民主党が保守の政党とされています。伝統を守り、昔ながらの家父長制度、家族観を大事に守ります。農家や企業を守り、地域地盤を固めることに腐心します。それに対して、家族や企業、地域を優先するのではなく、あくまで個人の幸福追求を基本にして成り立つ社会を目指すのが「リベラル」。共産党や社民党、立憲民主党はリベラルといわれていますが、ひとつひとつの政策を比べてみるとまた、矛盾が生じてしまうんです。たとえば原発。原子力発電というエネルギー自体は、石油をベースにするエネルギーからすれば革新的なものです。自民党は賛成しており、その他の政党は反対しています。TPPを自民党は推進していますが、TPPを進めれば、海外の安いものがたくさん日本に入ってきて、従来の日本の農林水産業は脅かされる恐れもある。地域産業を尊重する自民党のスタンスとは真逆になりますよね。つまり、「保守」や「リベラル」は、政党をわかりやすく色分けするためにメディアが使っている言葉。実際には明確に分けることはできません。自民党員に聞くと「党内には保守の人もリベラルの人もいる」と話しています。わかりにくいと思われるかもしれませんが、最も大事なのは政党ではなく政策。自分が賛同できる政策をうたっているのは誰なのか、有権者はそれを見極める必要があるんですね。堀 潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2017年11月15日号より。写真・中島慶子題字&イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2017年11月10日