特別なニーズにもこたえる、通信制サポート校「しんあい高等学院」って?出典 : 今春から大阪府大阪市に設立される通信制サポート校「しんあい高等学院」。日本でもまだ珍しい発達障害のある子どもたちの受け入れに特化した通信制サポート校です。これまでの通信制サポート校と、一体どのような違いがあるのでしょうか。しんあい高等学院/明蓬館SNEC 大阪・玉造入学試験には作文と心理検査結果の提出、そして子どもと保護者それぞれの面談があります。事前に障害特性・認知特性・学習特性などを見極めたもとで授業カリキュラムを作成していきます。入学前から生徒ひとり一人のニーズを見極め、万全な受け入れ態勢を作っています。もし心理検査を受けたことがない場合は、見学や入学相談とあわせて専門職員による検査を受けることも可能です。SNEC(スペシャルニーズ・エデュケーションセンター)とは、特別支援教育のための通信制サポートシステムです。このシステムは、「自閉症の僕が飛び跳ねる理由」で有名な東田直樹さんや、学習障害の理解を広げる活動を行っている講演家の南雲明彦さんなど社会で活躍している人たちを輩出した、福岡県にある明蓬館高等学校の日野校長によって発案されました。専門職員による面談・心理検査を通じ、入学前の検査結果をもとに個別のニーズにあわせて支援・指導計画を作成し、学習面を中心に身辺自立や人とのかかわり方、就労観など将来を見据えた訓練を含めてサポートをしていきます。また、進級にともなう試験も点数評価だけでなく各自にあわせた提出課題をつくることで着実に学習の定着をおこなっていけるようにしているのも特徴です。学習環境に関しても、通信制なので年1回(4日間)のスクーリング以外はサポート校への通学と自宅学習を自由に選ぶことができます。ひとクラスで一斉授業を行うのではなく、本人の望む環境で課題に集中することができる点は魅力的です。ただ高校に通うのではなく、それぞれの個性を生かせるような教育を目指しているのです。東田直樹オフィシャルウェブサイト南雲明彦オフィシャルウェブサイトそして何より注目したいのは、高校には臨床心理士・社会福祉士・特別支援の知識を持つ専門スタッフが常駐している点。学力面だけでなく生活支援もあわせたサポートを目的として動いてくれるので、思春期特有の問題があったとしてもすぐに相談できるところが魅力的です。気になる卒業後の進路もしっかりとバックアップする体制をつくっています。大学や専門学校への進学支援はもちろんのこと、就労の際は連携先の企業とのインターンシップ制度を用意していたり就労継続支援へつなぐこともできるようになっているのです。明蓬館高等学校品川・御殿山SNEC(スペシャルニーズ・エデュケーションセンター)学院長にインタビューしました学校を運営するのは法人事業で福祉に15年携わってきた真田明子学院長。今回、発達障害に特化した通信制サポート校を開設するに至った経緯について、発達ナビ編集部がインタビューを行いました。Upload By 発達ナビニュース―なぜ「しんあい高等学院」を設立しようとお考えになったのでしょうか?真田明子さん(以下、真田さん):わたしたちは15年間、福祉事業に携わってきました。2006年からは児童デイサービスを開始し発達障害のお子様や親御様と接する機会が増える中で、高校以降の進路があまり用意されてない現状に気付いたんです。そんなとき、明蓬館高等学校のSNECを知り、ぜひ関西でも同じような高校が作れないかと思いたちました。―これまで関西にはSNECのような発達障害のお子さんをサポートするような高校はなかったのですか?真田さん:実は、関西は全国で比べても通信制高校が多い地域なんです。発達障害や不登校のお子様は自然と通信制高校に進学する流れができていたので問題があまり表面化しなかったんですね。ですがその裏で、進学後に最後まで通えずまた不登校になってしまったというケースも、多く発生していたのです。その大きな要因は、お子様の障害ケースに合わせられる専門家がおらず、適切なサポートを受けられなかったからではないかと推測しています。―だから、SNECサポートシステムの通信制サポート校の設立が必要だったんですね。真田さん:そうですね。しんあい高等学院には、臨床心理士や社会福祉士などの専門資格を保有した職員を常に配置しています。教育面だけでなく生活面のサポートも行っており、お子様が困っていればすぐにこちらからフォローを入れられるようにしています。―とても手厚いサポートが受けられるようになっているんですね。なぜ、ここまで万全のサポート体制を敷いているのでしょうか?真田さん:SNECサポートシステムを考案した明蓬館高等学校の日野校長から、以前こう言われました。「多感な思春期こそ大切にしなくてはならない」と。10代に受けた考えや環境は後々大きな影響を及ぼします。この時期をしっかりサポートすることにより生徒たちが安心して社会に出られるようにしたい、と。この考えに非常に感銘を受けまして、本校でもその精神を大切にするため発達障害に詳しい専門スタッフをおくようになりました。今後も本校のように遠隔授業を用いてサポートできるような通信制サポート高校が全国に広がり、より多くの支援を必要としている子どもたちに届けばと考えております。これからの新しい通信制サポート校のカタチに期待出典 : 真田学院長にインタビューした際、このようなこともおっしゃられていました。「海外では不登校という概念自体がない国もあるんです。」学校に通うということ自体を目的とせず、どういう学び方ができるかを本質的に探っていくという考え方が根付いていれば、子どもが「不登校」かどうかを問題とする必要もなくなるのでしょう。しんあい高等学院のように「それぞれの発達にあわせた学び方」を掲げる高校が全国に広がり、新しい学びの選択肢として定着していけば、子どもたちの進路にも新しい道が開けていくのではないでしょうか。しんあい高等学院、入学についての詳細はこちら
2017年03月23日興味のあることしか覚えられない娘。嫌いな「社会」、どう勉強する?出典 : 視覚優位の傾向があるけれどそれが生かせるのは興味のあることだけ。これが、当時小学3年生だった娘に対する私の認識でした。実際、形を覚えて書き写すのは得意ですが、興味のないことはなかなか覚えられません。小学校の科目の中でも、「社会」が嫌いだという娘。そんな娘がが日本の都道府県を覚えられるようになるまでのあの手この手を、このコラムではご紹介します!娘の視覚優位を生かそう!ケータイアプリを駆使してみるも…社会の科目が嫌いな娘がまずは地図に慣れ親しめるよう、早くから地図のアプリなどを使わせていました。「あそんでまなべる日本地図パズル」は、日本地図の型に都道府県のピースをはめ込んでいくもので、視覚優位の娘はあっという間にスラスラと解くようになりました。Upload By SONOあそんでまなべる日本地図パズル(Android版)あそんでまなべる日本地図パズル(iOS版)それならと、姉妹品の「あそんでまなべる日本地図クイズ」も勧めてみました。こちらは都道府県名と県庁所在地がクイズ形式で出てくるのですが、こちらは嫌だと拒否。嫌なものは仕方がありません。あそんでまなべる日本地図クイズ(Andoroid版)あそんでまなべる日本地図クイズ(iOS版)スラスラ解けるようになったものはつまらないそうで、日本地図パズルも使わなくなりました。ゲーム性の高い「地図エイリアン」を勧めてみましたが、こちらはゲームのノリに合わず拒否…。周りの子たちが楽しそうにやっていても見向きもしませんでした。「とりあえず日本地図パズルができるってことは、結構覚えているってことだよね、形を覚えるのも得意だし…。」そう思って一旦地図学習は幕を閉じた娘小3の春でした。地図エイリアン(Andoroid版)地図エイリアン(iOS版)興味のないことは、やっぱりなかなか覚えられない!思考錯誤の末、辿りついた勉強法は…出典 : しかし小4冬休みの宿題で「(都道府県名を)5個しか書けなかったー」という結果に。やっぱり興味のないことは覚えないんだね…と思いつつ、対策を考えました。「またアプリで地図の勉強をやってみようよ~」と言ってみるものの、娘は「ヤダ」の一言。5個しか書けなかったということは、覚えるまで毎回何十個も分からないものがあるということだよね…。娘が日本地図を覚えるまでの苦痛を考えると、毎回分からなかったところを調べさせたり書き写させたりするのも心苦しい。しかもそれって効果あるのかな…?というよりますます地図嫌いになっちゃうかも!?私はしばらく考えました。そうだ!沢山じゃなくなればいいんじゃないの?私「地方に分けてやってみようか」娘「いいけどどうするの?」私「白地図を探してみるよ」調べてみると、地方別に印刷ができる白地図のページがありました。テクノコこれだと北海道は東北地方とは別の用紙、沖縄も沖縄と先島諸島で一枚で九州地方には入ってないけれど、ひとまずはこれでいいかな…娘に話すと「北海道と沖縄だったら1問だけで満点だね。キャッキャッキャ」と笑っていましたが、まんざらでもない空気になってきたので、東北地方からプリントしてあげました。Upload By SONO結果は6問中4問正解。宮城県は何とか思い出しましたが、静岡はそんな寒いところじゃありませんよ。都道府県記憶術、番外編。好きなもので覚えるのがイチバン!?そうそう、実は娘はお笑いコンビの「ラーメンズ」が好きなので、ちょっと各都道府県に失礼なところはありますが、「不思議の国のニポン」を何度も見ておりました。娘は「主食さくらんぼ、おかず西洋梨、おやつ…」と聞くと「将棋の駒!」と即答できるのに、「山形県」は覚えられないんですね。エピソード記憶の方は、しっかり残っているというのに…どの形の県がどこにあるかも覚えているようなので、あとは何県かを覚えればいいことになります。地方別にプリントしながら、エピソード記憶を結び付けていこうと思いました。いまや嬉々として県庁所在地を覚える娘。大切なのは子どもに合った勉強法を探すことUpload By SONO漢字への取り組みでも分かったことですが、なかなか覚えられないことでも何度も出会ううちに記憶が定着してきます。そして、定着できた記憶はそう簡単には消えません。娘は定着するまでに時間がかかるので、毎日少しずつ取り組むことがいいようです。定着したものが増えることによる負担の軽減と、少しずつ取り組むことによる負担の軽減が効果的でした。日本を一周するころには、北海道・東北地方、九州・沖縄地方のまとまったプリントのサイトも見つけました。最近リニューアル公開されて見やすいページになっています。小学校社会科問題集都道府県暗記用無料白地図&ミニテスト娘に見せたところ、「答え書くところが別でやりにくい」とのことでしたが、「学校で問題解く時も、地図の上じゃなくて回答欄に書くよね。その力も必要だよ。」と言うと納得してくれました。ワーキングメモリの少ない子は、問題の場所と回答欄が違うと解き辛いそうです。コグトレ(認知機能強化トレーニング)の「あいう算」などをしてみると、苦手さが分かったりトレーニングができたりするそうですよ。コグトレ研究会こうして年末から取り組むこと1月ちょっと。漢字まで完璧にとはいきませんが、娘は全ての都道府県を覚えました。そして、できるようになったことの嬉しさから「県庁所在地も覚える」といい1週間足らずで覚えています。県庁所在地を覚えようという時には工夫も見られました。「都道府県と同じ名前のところはどれくらいあるかな?」と、地図にマーカーで印を付けていました。苦手だからとあきらめていたら見ることは出来なかった娘の楽しそうな姿に、苦手を感じずにできる形の勉強法を探すことの大切さを学びました。
2017年03月19日療育センターを舞台にした演劇、「わたしの、領分」わたしの、領分療育センターを舞台に、発達障害がある子どもにかかわる「心理士」の視点で描く、演劇『わたしの、領分』。2年前の初演で好評を博し、このたび再演が決定しました(3/28~4/2 東京・下北沢/小劇場楽園)。LITALICO発達ナビでは、公演に先立って、演出の松澤くれはさんにインタビューを行いました。Upload By 平澤晴花(発達ナビ編集部)松澤 くれは(まつざわ くれは)脚本家・演出家。1986年、富山県生まれ。早稲田大学第一文学部演劇映像専修卒業。演劇ユニット<火遊び>代表。芥川賞作家・中村文則氏『掏摸[スリ]』の舞台化にはじまり、『殺人鬼フジコの衝動』『天帝のはしたなき果実』『くるぐる使い』など、人気小説の舞台版を手がける。オリジナル作品では「あなたとわたしが[We]に近づく物語」をテーマに、言葉で分かり合おうとしながらも分かり合えないことを受け入れる、人間の生き方を一貫して描く。現実のような生々しい会話劇で、観客の日常につながるラストシーンを目指している。大学院を卒業し、都内の療育センターに配属されたばかりの心理士・萩野は、発達障害児を中心に面談を行っている。「いつか治りますよね?」「うちの子を障害者にする気か!」 親たちは口々に言いながら、救いを求める眼差しを彼女へ向ける。認識の齟齬から生じる軋轢に悩みつつも、萩野は実直に、進むべき道を探してゆく。ある日。定期面談を終えたはずの青年が、センターにやってくる。勤務先での生活を嬉々として語る彼に、まとわりつく悪意の存在。青年が起こした傷害事件は社会を巻き込んだ「自閉症をめぐる問題」 へと発展し、偏見と差別が膨らみ続けるなか、萩野は一人「こころ」と対峙する。世界のあいまいさを許容して生きるための。はるかから、わたしの物語。療育センターの心理士が紡ぐストーリー誕生のきっかけ出典 : 編集部(以下、編):はじめまして。今回療育センターを舞台にしたお芝居『わたしの、領分』再演ということで、ぜひお話を伺えたらと思います。まずはじめに、このお芝居を作るそもそものきっかけは何だったのでしょう。松澤くれはさん(以下、松):もともと、僕の知り合いに療育センター勤めの心理士がいたんです。その人から現場サイドの悩みや葛藤を知る機会がありました。そのときはじめて「支援する側にも葛藤や悩みがある」ということを知りました。療育施設という場所には常々舞台として関心があったのですが、そこでの話というと、既存のものはどうしても親御さんや子ども当人からの視点で描かれがちで。療育施設には心理士さんもいます。知人の話を聞いて「心理士の視点から書きあげることで新しい作品がつくれるんじゃないか」と思ったのです。もともと僕は作品を創るときに「視点を変える」ということにこだわってきました。別な角度、いわゆるニッチな視点ですね。うちが手掛けた他の作品でも、例えばオリンピックを描く時、ドーピング商品を選手に売るバイヤー視点でつくるなど取り組んできました。視点を変えて紡ぎだすことによって、新しい問題提起が何かみえてくるのではないかとは常に考えて素材を選んでいます。今回の作品の着想もその範疇(はんちゅう)で生まれました。「当事者意識」の境界線は?発達障害の子どもとその周縁をどう描いてゆくのか出典 : 編:既存のイメージから視点を変えて芝居を紡ぎ出すということですが、今回、療育センターの職員と発達障害の子どもという題材の中で、どのようなテーマを持たれていたのでしょうか。松:「当事者意識」というものに対する興味関心です。「当事者」という言葉はよく使われますが、一体、どこからどこまでが当事者なんだろう、と。たとえば発達障害のある本人がいて、その親御さんまでが当事者なのか、それとも支援にかかわるすべての人もふくめるのか…。実際、劇中でも「あなたに足りないのは当事者意識だ」というシーンがあるんですが、じゃあ、あなたはどうなんですか?と、問い返すこともできる。何があれば「当事者だ」と言えるのか…心の持ち方なのか、血が繋がってることなのか、本当は誰も定義できないからこそ、難しいのだと思います。本人がどれだけ相手を思って行動しても、「いや、あなたは部外者だ」と言われてしまえばそれまで、何もできないというもどかしさがある。その、定めきれない「当事者意識」の境界線を作品で描くには、なるべく広く関係性を作るべきだと思ったんです。子どもと子どもの親がいて、民間のセラピスト、センターの人、ドクター、心理士の夫、などなど。自分は当事者なのか?と悩みながらも相手にかかわっていく、あるいは、この人は当事者ではないと相手に思いながらも頼っている、この状態やそんな関係性そのものを描きたいと思ったのです。編:なるほど…では、劇中の登場人物たちがその人なりの「当事者性」を追求していくような形で物語が進んでいくのでしょうか?松:いえ、自分が当事者と思っているか思ってないかは、バラバラに設定しています。それぞれのシーンで、観る人が「『当事者』というものを考えることに直面する」ように演出しています。たとえば、「息子を障害者にするつもりか!」「あなたに足りないのは当事者意識だ」といった台詞を聞いたときに、ハッとする人もいるかもしれないし、疑問を持つ人もいるかもしれない。観る人それぞれが考える余地を残して、シーンを描いています。編:「これが当事者だ」と答えを出すというより、当事者性そのものを”考える”ために劇がすすむようにしているということですね。松:そうですね。基本的に答えを出したり作り手のメッセージを出していくタイプの劇は作っていないんです。登場人物の悩みそのものを持ち込み、悩みと悩みがぶつかり葛藤がおきる、人間関係のうまくいかなさ、その場面をそのまま提示していこうと。その中で、互いに争わず、妥協ではない前向きな折り合いをつけるにはどうするか、今この瞬間の現実の悩みをどうするかを、描いていきたいと思っています。そもそも80分の劇で人間の悩みなんて簡単に解決できないとも思っていますしね。稽古中、セリフにつまづいて黙ってしまう役者を褒めます。その訳は…Upload By 平澤晴花(発達ナビ編集部)編:役者さんとは普段どのようなコミュニケーションをとりながら稽古をしているのですか?松:「嘘はつかないでほしい」と、まず最初に言っています。セリフがあるからって言わないでほしい、言えないのに言わないでほしいと言っています。セリフを覚えてないわけでなく、うまく出なかった。そんな時には立ち止まって、なぜ出なかったのかを考えてほしいと伝えています。なんでその演技ができないのかということを考えてほしいんです。とりあえずで無理やり話を進めないで、セリフを言うきっかけを探してほしいって言っています。ピンとこないセリフがあったら、じゃあ今どんな気持ちになっているのかを共有して前段階から演技を考えていきます。なるべくお互いにごまかさない、その代わり稽古なんだから失敗していきましょうと。そう伝えると、ホントにセリフ言わない人も出てくるんですよ。そこからは、この人物がセリフを言う動機はどこにあるのか、どれくらいのイメージを持ってやっているのか、お互いのイメージをすり合わせるようにして進めていきます。編:松澤さんが今のような演出スタイルをとることになったきっかけはなんですか?松:そうですね。人はそれぞれ違う、という意識がそうさせたかもしれません。自分と他者という違いに少しずつ気付いてきた時期があって。昔は男主人公でやっていましたが、一挙手一投足が気になりすぎてしまって、役者にも細かく指摘し過ぎてしまうんですね。だんだん、「このままじゃ駄目だ」と思うようになって、女主人公の芝居にチャレンジしたんです。そしたら、女性のしぐさに対してなかなか想像が及ばず、わからないことだらけだったんです。そこで気づいたんです。そもそも演出家も役者も、芝居に挑むバックボーンが違うし、みんなバラバラの意思や体を持っているのだということに。でもそれは、一緒に芝居を作っていく上では、実は大した問題ではないんですよね。大事なのは同じ目標を持って、ひとつのことに向かうこと。そこに至るまでに各々が違う役割を全うすればいいだけ。そこから今のような演出スタイルや、役者とのコミュニケーション方法が築かれていきました。編:人はみんなバラバラで、違った意思を持っている。当たり前のことなのに、人はつい自分の信念や、一般的な社会通念にとらわれてしまう…発達障害のある人の中には、そんな周囲からのプレッシャーに苦しんでいる人も少なくないと思います。演出家、役者、監修者、一人ひとりの「ちがい」を前提として芝居をつくりあげていくスタイルは、きっとこのテーマにぴったりの手法なのだと感じました。自分のフィルターは、視点が異なる他者との密なかかわりで、外していけるUpload By 平澤晴花(発達ナビ編集部)編:今回の作品の話に戻りますが、創作していくうえで、松澤さんの築いたスタイルはどう生かされましたか?役者さんにとっては、発達障害のことや心理士の仕事は未知の世界でしょうし、イメージしにくいところからのスタートだと思うのですが。松:初演の稽古の際、きっかけになったできごとがあります。くまさんがいて、うさぎさんがいて、箱にビー玉を入れるという、子どもへの発達検査のシーンでのことです。最初は、検査で子どもが間違えてしまったことで生じた、発達障害の可能性に対して、両親が失望するという台本にしていたのです。しかし、父親役の役者の意見からは「間違えてしまった子どものことは、僕には正常に見えた。子どもだから複雑な指示に従えないのは当たり前だと思います」といったのです。そこで活路が見えました。こうなるから、こうとこだわらず、なるべく自分のフィルターをはずして、バラバラにして組み立てていくようにしたんです。実際に演じる役者さん、監修をしてくれた心理士、自分と視点が異なる他者の視点を取り入れていくことで、リアリティが生まれていきました。そんななかで、たとえば観客席の最後列から聞くと声が聞き取れない役なども出てきました。登場人物のテンションもそれぞれ違うので、役ごとにバラツキをもたせたのです。普通のお芝居だと、なるべくはっきり、後ろまで声が通るようにしますよね。でも今回、それをやらなかった。あと、余談ですがうちは円陣も組みません。そしたら同じテンションになっちゃうから。それではリアリティを消してしまいます。そこまですると演出がバラバラに見えることもあるかもしれません。しかし、現実では同じテンションはありえないんです。揃えてしまうことではリアリティは生み出せないことになります。なるべく誰かのペースに巻き込まれないでと、役者には言ってます。ストーリーばかりを勝手に進めないようにと。正しいと思ってなくても言ってほしい。自信のなさでもいいので、なるべく決めつけずに進めてほしい。だから達成感がない芝居だと役者から言われることもあるんですけどね(笑)。伝わりにくい「生きにくさ」の正体。観客に「いたたまれない…」と思わせる、ぎりぎりの表現を生み出すには出典 : 編:テーマにかかげてある「生きにくさ」を身体表現と会話劇で繰り広げるのは大変だと思いますが、どういう点で苦労しましたか?松:一般的には芝居って筋書きが決まっているものなので、稽古すればできるようになるじゃないですか。出来不出来はともかく、とりあえずストーリーは追えると思うんですよ。でも、それだけでは安定してしまう。だからぎりぎりを攻めてほしいと、役者さんに伝え続けました。セリフをとちってほしいというわけではないんですが、ぎりぎりまで忘れているんだけどぽろっとセリフが出てくる、それぐらいの状態でいてほしいと。そこでリアリティがでてくるので。矛盾と戦い続けることで出来るようになっていくことですよね。稽古していることを稽古していないことのようにやること。100回練習したことをはじめてやるかのようにやる。「生きにくさ」とは、「うまくいかなさ」ですからね。たとえば、ここで突然御二方(発達ナビ編集部員)に怒られたとするじゃないですか。インタビュー受けなきゃよかったな、早く帰りたいなぁ、言ったこと間違ってたのかなという気持ちになって、ここにいにくくなると思うんです。「いたたまれなさ」です。そのあり様をそのまま舞台上に、その気持ちで立ってもらいたいと思っています。やっぱりお芝居って、自分の出番で自信を持って体を大きく動かしてセリフをバシッということができるほうが気持ちいいんですよ。自分も役者だったんでわかるんです。そっちのほうがある種の安心感があるというか。でも目指すのはそっちじゃない。ここ全然うまくいってない、相手との掛け合いがうまくいってない、っていうときほど「今日よかったですね」って僕は言いますし、逆に役者が「今日は調子いいぞ」と思っているときほど駄目で、「今日は予定調和でした」と言いますね。演劇によっていろいろなジャンルがあるので、秒単位で筋書きが決まってるようなものでこういうことをやるのは駄目ですが、「わたしの、領分」のようにありのままを見せるような芝居では、その人自身がちゃんと傷ついてその場にいたくないという気持ちになることが大切だと思ってます。心のどこかで本当に「ここにいたくない」と思うことが大事なんです。そういうところが身体表現の大事なところなんじゃないかと思います。いるとき、いなくちゃいけないときの境目を分けてふるまうことも大事です。いなくていいときはすぐ舞台上から去ることも大切ですね。編:戸惑うお客さんもいるんでしょうね。松:芝居に親しんできた人は斬新にみえるらしいですね。現代口語演劇の延長線でやってきているので、それに親しんでいる人は受け入れられると思います。アンケートで、「私がいつも観ている帝国劇場より声がでてない」とか(笑)、「結論がない、結論を出せ」といわれることもあります。もともとある価値観を変えることはなかなかむずかしいし、それこそ多様性を認めろというのも押しつけでありエゴでもあります。でもこういう人がいるんだということを知るというのはいいと思っています。登場人物にどこか自分と共通した変なところが見えてくるといいと思います。たとえば、作中に登場する心理士も変な人が多くて、ちょっとずれてるところを持っていることが多いように描きました。登場人物の荻野もシャーペンのカチカチする音がきらいで、年の離れたドクターにおもわず切れてしまうことがあったり。それをお客さんもみて「ここわかる」「ここわからない」と自分の中にもある変わったところと重ねながら観てもらえたらと考えています。相模原殺傷事件の匿名報道への憤り。少しずつ歩き続けようと、すぐ再演を決めたUpload By 平澤晴花(発達ナビ編集部)編:少し話を社会的な事象の時系列から掘り下げて、作品の真相に迫っていきたいと思います。2015年に初演があって、その後、相模原障害者施設殺傷事件がありました。そして今2017年に再演することになったわけですが、松澤さんの中であの事件は偶然の重なりといえますか?どう事件を咀嚼して再演するにいたったのでしょうか?松:誤解を恐れずに言うと…ついに起きたかと思ったんですね、相模原は。ヘイトスピーチや優生思想が最近増えており、それに賛同する人が増え一定の共感を得てしまい社会に浸透しつつあったところでこの事件が起きました。その中での匿名報道、やっぱりそうなったかと思いました。遺族に配慮した、と言って19名全員の被害者名を警察が伏せたというのがそのような社会になってしまっていることの表れで。伏せざるを得ないのが社会の在り方なんだなと思いました。19名全員の遺族が出さないでくれといったわけではないのに、とっさにそのような判断がくだってしまうという。そこには顔がないと思うんですよ。命を奪われて、そのあとに冥福を祈るというときに「個」をはく奪されてしまう。被害者たちは、19という数字になってしまう。まだそういう社会なんだ、平気でそういう判断を下して「悲惨な事件でしたね」という感想で終わってしまう。その近くにいた人だけが解決しないまま問題意識を持っている状態になってしまう。それで、すぐ再演を決めたんですが、再演を決めた後もすぐに批判されたんですよ。「あなたが芝居して何が変わるんですか?」「お金儲けしたいだけでしょ」と言われて。そこに当事者意識の違いを感じました。被害者じゃなければ語れないのであれば、何も変わらないと思うんですよ。結局見て見ぬ振りを続けていく、ひどい事件が起きたね、終わり、にするわけにはいかない。何よりああいう犯人を出さないようにするためにも、あまり議論が尽くされない中での匿名報道などにも待ったをかけるように働きかけていかないといけないんじゃないかと思ったんですよね。そこで再演に関してですが、まず相模原事件が起きたあとに設定を変えたんです。現実に起きた事件をないがしろにできないので、名前は出してないのですがその事件の後だとわかるようにしています。なので時系列は2016年にしました。あとは、ラストシーンを変えました。初演を見た人はびっくりするくらいの全く別物になると思います。まったく見え方が変わるはずです。タイトルも変えたんです。「わたしの、領分。」だったのを「。」をとったり。この違いからこの作品の意味がわかってもらえたらと思います。初演は、立ち止まることが大事、というイメージでしたが、再演は、少しずつでいいから歩き続けよう、というイメージにしています。これは初演から2年たって変わった心境と思ってもらえるといいかもしれません。編:これまでお話を聞いていて、松澤さんが手掛けるお芝居は、非日常の娯楽というよりは、むしろ日常の延長の中にある芝居というような印象を受けます…松:芝居のラストシーンがお客さんの日常につながっていってほしいんですね。家に帰った時にじわじわ効いてきてほしい。演劇は新しい視点をお客さんにあたえることができると思ってます。芝居をみて、「心理士っていう仕事があるんだ」くらいの感想でもいい。あるいは、街中で発達障害かもしれないなという人を見かけたら、見て見ぬふりではなく「あ、昨日のお芝居で…」と思い出してもらえるなら嬉しい、ほんの一歩でもいいので、今まで自分の中になかったものを受け入れるキャパシティが広がれば、と願います。日常忙しい親御さんにも、肩の力を抜いて楽しんでもらいたい出典 : 編:発達ナビは発達が気になるお子さんの保護者の方向けメディアです。何か直接伝えたいことはありますか?松:ここで今、取り立てて伝えたいことはないんですよね。というのも、この芝居は終わる物語ではないので、メッセージも答えもないありのままのものなので。親御さんたちは、ご自分やお子さんに引きつけて見られる部分もあるとは思いますが、一方でまた別のお話、別の人生であると、少し離れて肩の力をぬいてみてもらえたらと思います。こういう生き方もあるんだ、こういう人もいるんだ、というふうに感じ取ってもらえたらいいなと思ってます。編:普段育児に忙しくしている方々も、少し肩の荷をおろせる時間になるといいですね。松:そこまで言い切れるかどうかはわからないんですが、きっと日常で悩みやご負担も多いと思うので、普段なかなか自分のことにかまえずにいるなかで、演劇を純粋に物語として見てもらい楽しんでもらえたらと思います。心理士と親御さんの面談シーンを第三者として見るってのもあまりないと思うので。編:本当に楽しみな舞台ですね。本日はお話ありがとうございました!インターネットを通じて様々なプロジェクトへの活動サポート・寄付ができるクラウドファンディングのプラットフォーム「CAMPFIRE」にて、「わたしの、領分」の公演規模拡大、地方公演の実施に向けた資金を募るプロジェクトを実施中です!わたしの、領分クラウドファウンディングUpload By 平澤晴花(発達ナビ編集部)わたしの、領分松澤くれはプロデュース『わたしの、領分』2017年3月28日(火)~4月2日(日)@小劇場 楽園作・演出松澤くれは出演者善知鳥いお岡村いずみ江幡朋子尾﨑菜奈倉冨尚人今駒ちひろ野下真歩早山可奈子坂内陽向宮川智司柴田淳(ブラックエレベータ)室田渓人(劇団チャリT企画)濱田龍司(ペテカン)スタッフ舞台監督:吉倉優喜舞台美術:小林裕介音響:葉暮呉一郎照明:タカハシカオリ小道具:定塚由里香宣伝美術:イラスト…谷川千佳/デザイン…milieu design制作:森永たえこ協力:特定非営利活動法人アートシアター株式会社アイビー・ウィーウォーターブルー株式会社大沢事務所株式会社スチール・ウッド・ガーデン株式会社パワー・ライズ(有)No.9UTYリベルタ(五十音順)製作:「わたしの、領分」製作委員会公演日程2017年3月28日(火)~4月2日(日)タイムテーブル3/28(火)19:303/29(水)19:303/30(木) 15:0019:303/31(金)19:304/1 (土) 14:0018:004/2 (日) 13:0017:00※上演時間は約80分を予定しています。※受付開始・当日券販売は開演の40分前、開場は30分前からです。※開演10分前までにお越しいただけない場合、キャンセル扱いとなる場合がございます。チケット前売り4,000円 / 当日券4,300円(全席自由席・日時指定)お問い合わせpro.watashi@gmail.com050-5319-3493(森永)
2017年03月16日日本音楽著作権協会(JASRAC)が、音楽教室などから著作権料を徴収する方向で検討していることを受け、大手音楽教室などの企業や団体はこの方針を反対するための「音楽教育を守る会」を結成しました。その他、アーティストや作詞家からも、「子どもには無料で使ってほしい」と言う声があがっています。実際に音楽教室に通わせている人もいる親の意見を聞いてみましょう。Q.音楽教室への著作権請求、どう思う?1.請求すべきだと思う 9.9%2.請求すべきではないと思う 61.4%3.わからない・どちらとも言えない 28.7%過半数以上の人が請求すべきではないと思うと回答しました。カラオケなどの営利目的での使用で著作権請求するのはいいとして、音楽教室での使用まで含むのはどうなの? そして、なぜ今になって? という疑問があるようです。■楽譜からも取っているのにさらに取るなんて!ピアノ教室などで使用する楽譜にはすでに著作権料が含まれています。当然子どもが習うときにもその楽譜を買っているわけですから、さらに著作権請求をするというのが理解できないという人が多数派。「楽譜には著作権料発生してますよね。さらに、それを使用する教室から取るんですか? 二重取りではないんでしょうか?」(千葉県 40代女性)「演奏するための著作権といった感じでしょうか。確かに音楽教室は恩恵受けてますが、レッスン料に上乗せされるのはどうかなと」(広島県 40代女性)「楽譜で払ってるのに。なんだかんだお金が欲しいだけなのに、もっともらしい理由をつけようとしてあさましいと思います」(神奈川県 40代女性)■なぜ今さら? JASRACへ不信感を抱く人も今まではよかったのになぜ今さら徴収するのか、ということを疑問に思う人もいました。急に「それ違反ですから、お金払ってください」なんて、お金目的と思われても仕方ないのかもしれません。「なぜ今さらこういうことが問題になるんでしょうか? 請求すべきなら、もっとずっと以前からされるべきじゃないんでしょうか」(東京都 40代女性)「ちょっとせこくないですか」(愛知県 30代女性)「今さら徴収するなんて、お金目当てと思われても仕方がない気がする」(千葉県 30代女性)■音楽教室は演奏ではなく練習営利目的での演奏に著作権料が発生するのはいいとして、教室での演奏にまで発生してしまうというのはおかしいという冷静な意見を言う人もいました。音楽教室での演奏は、あくまで練習ですよね。「音楽をはじめ、著作物には著作権があり、お金がかかることは当然だと思います。しかし、教室での演奏、つまり練習にも著作権料が発生するというのは違和感を感じます。教室では『著作権のある音楽』に対して授業料を払うのではなく、先生の指導に対して支払うのですから」(神奈川県 40代女性)Q.音楽教室への著作権請求、どう思う?アンケート回答数:7090件 ウーマンエキサイト×まちcomi調べ
2017年03月07日「子どもの習い事」と聞いて、まず何を思い浮かべますか?『ケイコとマナブ.net』が900人のママたちに行った調査によると、実際に子どもに習わせているお稽古で多かったのは1位水泳、2位英語、3位ピアノ。子どものお稽古ごととしては何十年も前からある、馴染み深いものばかりが並んでいます。確かに水泳では基礎体力をつけることができますし、英語は今や小学校でも必要な知識。ピアノは情操教育にいい習い事のナンバーワンですよね。でも、意識の高いママたちはそういった昔ながらのお稽古ごとだけでは満足できません。常にアンテナを張りめぐらせ、他人とは一味ちがうお稽古ごとを探しているようなんです。今回は、そんなワンランク上のママたちが狙っている、「これからやらせてみたいお稽古」について聞いて回りました。そんな習い事が存在するの!?というようなラインナップです。どうぞご覧ください!●(1)プログラミング教育熱心なママたちがこぞって名を出したのが、こちら。子どもにプログラミングなんて!と驚いていると、こんな理由を聞かせてくれました。『ご存知ないですか?プログラミングは、2020年から小学校で必修授業になるんですよ。我が子はまだ幼稚園児ですが、先を見越して早めに学ばせようと思っています。既に体験用ソフトで何度かトライさせてみたのですが、親が説明しなくても感覚的に操作してすぐコツをつかみ、熱心に取り組んでいました』(30代女性/4歳男の子のママ)『ママ友に誘われて、説明会に行きました。「プログラミングを学ぶということは、論理力と忍耐力をつける ということ。それは将来どの分野に行っても必要な力です」という塾長先生のお言葉が強く心に残りました。就学前にはスクールに入れるつもりです』(40代女性/3歳男の子のママ)●(2)キッズヨガ大人にとってはお馴染みのヨガスクール。最近では子ども向けのプログラムもあるそうなんです。『キッズヨガの中でも、外国人インストラクターが英語で行う プログラムに興味があります。頭も体も柔らかいうちから体験させることで、多くのものを吸収してくれると思います』(30代女性/小学生女の子のママ)『ヨガって、子どもがやってもリラックス効果などがあるそうです。また、ほかの運動ではあまり使わないような体幹の筋肉を鍛えることで、フラフラ・グニャグニャせず、授業中にしっかり座っていられる子になると説明されました』(30代女性/小学生男の子のママ)●(3)つみき教室子どもの遊び道具として古くからある“つみき”。現代では、こんなものもスクールで教えてくれるんですね。『有名なブロック教室に通っていたのですが、プラスチックの人工的な手触りや、原色のカラーリングにゲンナリでした。子どもにとって本当にいいもの、いい環境って何だろう?そう考えていた時にみつけたのがつみき教室。シンプルな白木のつみきは、ブロックよりもずっと子どもの創造力 を刺激する はずです』(30代女性/4歳男の子ママ)『つみきには無限の可能性があり、どんなものでも作れます。おまけに絵画とちがって立体物なので、空間認識力なども向上するのではないかと思っています』(20代女性/2歳女の子ママ)●(4)歌舞伎スクール最後に紹介するのはこちら。とてもレアなお稽古、歌舞伎スクールです。いったいどんなことを学ぶのでしょうか……。『歌舞伎ファンの義母が勧めてきました。断るつもりでしたが、大人気ですぐ定員になってしまうと聞いて興味がわき、見学に行ったんです。出迎えてくれたお子さんたち、みんなあまりにもピッとして美しいのでビックリしました。正しい立ち振舞い、しっかりした挨拶や言葉遣いなど、礼儀作法をかなり厳しく教えてくれる そうです。ちょっと高額だけど、そのうち申し込んでみるつもりです』(30代女性/2歳男の子ママ)----------普段耳にしないような、珍しいお稽古が名を連ねた今回の調査。いかがでしたか?ありきたりなお稽古ごとに飽きてきたら、こんなスクールに目を向けてみるのもいいかもしれません。ちょっと体験してみると、お子さんの秘めたる才能に気づいてしまうかもしれませんよ。【参考リンク】・ケイコとマナブ.net | RECRUIT()●文/パピマミ編集部●モデル/REIKO(SORAくん、UTAくん)
2017年03月06日発達障害とは?出典 : 発達障害とは、先天的な脳機能の障害で、想定される時期に年齢相応の発達が見られない、または年齢相応のスキルが獲得できないことで日常生活に様々な困難が生じ、それらが持続する状態を指します。その症状は、通常低年齢の発達期において発現します。発達障害はいくつかのカテゴリーに分類され、診断基準によって異なりますが、主なものとして「広汎性発達障害(PDD)」「ADHD(注意欠陥・多動性障害)」「学習障害(LD)」があります。広汎性発達障害には自閉症やアスペルガー症候群などのコミュニケーションの障害が含まれますが、アメリカ精神医学会の診断基準である『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)では自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)という障害名に統合されています。また『DSM-5』ではADHDは注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害、学習障害は限局性学習症/限局性学習障害という診断名となります。これらは互いに重なり合っている場合もり、また知的障害が併存する場合もあります。出典 : 発達障害の診断・検査は受けるべき?出典 : 発達障害のある人が苦手とする年齢相応のスキルとは、言葉やコミュニケーションのスキルや、学習面での読む・書くなどの能力、集団生活でのルールを守るなど、一人ひとり多種多様ですが、それらの獲得が難しいことによって社会で暮らしていく上での困りごとが生じることがあります。身体障害などと違い、このような障害はなかなか第三者からわかりにくいことがあり、「見えない障害」と呼ばれることもあります。発達障害の症状や特性、困りごとは一人ひとり違います。そして周りからは困りごとが見えにくいこと、また発達障害自体が日本で広く知られるようになったのもここ20年ほどであり、誤解されてしまったり理解を得られないこともあるのです。ですが、専門機関に相談することで、それらの特性に気づき、早期にサポートをすることで困りごとが軽減できる場合もあります。持続的な支援のためには、検査や診断があった方が本人の状態がより専門的に把握でき、密な支援が受けられる場合があるのです。また、近年、発達障害者支援法をはじめ様々な法や制度も整備されつつあり、診断や検査を受けることによってそれらの支援や治療法の幅が広がります。本人の障害について理解し、困難に合わせた適切な支援につなげるために、検査や診断は有効な手段の一つだといえます。どのように診断・検査が行われるのか、くわしくご説明します。発達障害はいつ分かる?診断・検査の前の発症年齢は?出典 : 発達障害は、症状や困りごとが現れて初めてわかる疾患です。そのため、障害の種類や程度、性別によっても発症年齢や特徴は異なると言われています。また、必ずしも医療機関による診断がなくても受けられる支援もありますし、検査やアセスメントを受けることで困りごとや特性が把握できることもあります。医療機関を受診するかどうかや、そのタイミングを決めるのは本人や保護者の判断となります。なんらかの症状や困りごとが現れていないか、早期に気づき相談・診断を受け、適切な支援を受けることで、二次障害などを予防しやすくなります。発達障害は、その種類や症状にもよりますが、乳幼児期頃に疑われ始めることが多いと言われています。3~4歳頃には、保育園や幼稚園での集団生活も始まり、ことばやコミュニケーション面など、特徴的な行動や発達の遅れが目立ち始めます。地域の3歳児検診で指摘されたり、園から相談機関を紹介される場合もあります。乳児期の頃であっても、表情が乏しさや視線のあいにくさ、集団の遊びができなかったり、言葉に遅れが見えるなどといった症状から、何らかの違和感に気づくこともあります。また、学習障害(LD)の場合は、読み書きや算数といった学習が始まってから症状が明らかになるため、就学前後の年齢になってから気付く場合がほとんどです。乳幼児期は成長に従い症状や困りごとが軽減したり大きく変わりやすいこともあり、一度出た診断が見直されたり変わることもあります。以前よりは発達障害の認知度があがったものの、見えにくい症状の人もいて、支援の得られない状況で悪化したり、診断が遅くなったりしがちです。周りが障害に気づかず、見逃されている場合も少なくありません。大人になってから初めて判断が下る場合もあります。参考:東戸塚こども発達クリニック発達障害の診断・検査、医療機関での診断基準は?出典 : 発達障害の診断には、アメリカ精神医学会の診断基準である『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)やWHOの診断基準である『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版といった国際的な診断基準が使われている場合が多くあります。『DSM-5』と『ICD-10』では診断名や診断基準が異なる疾患も少なくありません。例えば、『ICD-10』でアスペルガー症候群という診断名は『DSM-5』にはなく、同じような症状を持つ場合、自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害という診断名に当てはまります。そしてカルテや診断書に使用する名称にどちらの診断基準のものを使用するかは医療機関や医師によって差があります。そのため、医療機関の適用する診断基準によっては、診断名が変わってくることもあります。また上でも述べましたが、最初の診断名から成長につれて診断名が変わる場合もあります。参考:『日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』2014年 医学書院/刊発達障害の診断・検査方法出典 : 発達障害の症状は、先天的な脳機能障害が原因となって生じますが、その詳細なメカニズムや、なぜその脳機能障害が引き起こされるのかは遺伝的要因と環境要因が相互に影響して脳機能障害が起きると考えられており、まだはっきりとは解明されてはいません。また、発達障害の症状は様々であり、原因も多様であると考えられ、全ての人に当てはまる唯一の原因はないのではないかとも言われています。このような中、現在の医学では妊娠中の羊水検査、血液検査、エコー写真などの出生前診断で判明することはありません。また、出生後も遺伝子検査や血液検査といった生理学的な検査では診断できません。今後も生理学的な検査方法を確立するのはかなり難しいとも言われています。また、症状の有無について、今のところ数値化された基準がありません。そのため、医療機関で診断を受ける場合、現れる症状について医師が問診や行動観察を行い、次に、問診で得た情報をもとに、心理検査や発達検査などを行います。それらの結果から、『DSM-5』や『ICD-10』などの診断基準を満たしているかどうか、また日常生活・社会生活に著しい不適応を起こしているかどうかなどを総合的にみて診断されます。診断に際しては、その症状が一定期間以上持続することが条件となっているため、何度か検査や経過を見て診断されることもあります。以下に具体的な検査法・診断方法をご紹介します。本人にどのような症状があり、どんな困りごとがあるか行動観察を行ったり、生育歴について問診を行います。子どもの場合は保護者に聞き取ることが多いです。■行動観察遊びの空間で子どもを遊ばせ、それを注意深く観察することと保護者の方へのインタビューに基づいて行われます。■生育歴生まれてから今までの社会性や対人コミュニケーション、言葉の発達、幼稚園・保育園での様子や1歳半健診・3歳児健診での様子などをヒアリングします。発達面で知的障害の疑いがありそうか、発達にどんな特性がありそうかなどを見立てていきます。発達検査とは、子どもの心身の発達の度合いを調べる検査のことです。本人にどのような発達の特性があるか、どこに困難があるかを客観的に見るために、用いられることが多い検査です。様々な側面から子どもの発達度合いを評価し数値化することによって、助けが必要な部分を見つけることができます。発達検査にはさまざまな種類があり、検査ごとに検査結果の表現方法や評価の仕方が異なります。現在、日本では「新版K式発達検査」や「遠城寺式乳幼児分析的発達診断検査」などが使用されることが多い発達検査です。さらに詳しく特性を調べる場合や支援の方法を探りたい場合、このほかの発達検査が用いられることもあります。発達障害には知的障害、てんかん、感覚過敏、鈍麻などのさまざまな合併症を伴う場合があります。合併する障害があるかアセスメントを行ったうえで検査する場合が多いです。また、ほかの障害や疾患によるものかどうかを鑑別するための検査が行われる場合もあります。■知能検査知能検査は心理検査のひとつであり、精神年齢、IQ(知能指数)、知能偏差値などによって測定されます。一般的には、ウェクスラー式知能検査、田中ビネー知能検査などがよく使われています。知能検査を行うことで、発達障害と知的障害の合併の有無を調べます。■脳波検査発達障害の中にはてんかんとの合併リスクがあるものもあるため、場合によっては脳に器質的な疾患や以上がないかどうかCTやMRIをとったり脳波検査を行うことがあります。自閉症スペクトラム障害の子どもの場合は狭い空間に入るとパニックになることもあるので、検査をする際には注意が必要です。■鑑別のための検査発達障害の症状と似ている障害と見分けるため、遺伝子検査や血液検査、その他の様々な検査を行う場合があります。また、精神疾患との合併症の疑いがみられる方には精神病に関する検査を行う場合があります。知能検査や発達検査などは児童発達支援センターや療育機関といった医療機関以外でも、検査を行っているところもあります。これらの検査だけでは確定診断は出ません。診断は、あくまで医師が問診や様々な検査結果から総合的に行います。発達障害の診断・検査をうけるには、どこへ行けばいいの?出典 : いきなり専門の医療機関に行くことは抵抗があるかもしれません。まずは無料で相談できる身近な専門機関の相談窓口を利用するのがおすすめです。子どもか大人かによって、行くべき機関が違うので、以下を参考にしてみてください。【子どもの場合】・保健センター・子育て支援センター・児童発達支援事業所など【大人の場合】・発達障害者支援センター・障害者就業・生活支援センター・相談支援事業所など自宅の近くに相談センターがない場合には、電話での相談にものってくれることもあります。まず身近な相談センターに行って、より専門的な相談や受診の必要があればそこから専門医を紹介してもらいましょう。発達障害者センター一覧|発達障害情報・支援センター【子どもの場合】小児科・児童精神科・小児神経科や発達外来などで受けることができます。たいていは大学病院や総合病院などで診断できます。子どもが通い慣れているかかりつけの個人病院で「発達相談」と記載があれば、まずは相談に行ってみても良いでしょう。【大人の場合】大人になって検査・診断を初めて受ける場合には、精神科や心療内科、発達障害専門の医療機関を受診することが一般的です。児童精神科・小児神経科の中にも大人を見てくれるところもあります。地域にもよりますが大人の発達障害を診断できる病院はまだ数が多くありません。問い合わせてみたり、上記の相談機関で紹介してもらったりするとよいでしょう。発達障害の専門機関は他の病気に比べると少ないですが、発達障害者支援法などの施行によって年々増加はしています。以下のリンクは発達障害の診療を行える医師の一覧です。日本小児神経学会 「発達障害診療医師名簿」診断に必要な持ち物は?出典 : 乳幼児期からの育成記録から特徴を確認するので、その頃の様子が記載された物や、大人の場合は過去の記録が分かるものや、自身で記録したもの、1日のスケジュールとその時の心理的な状況などをメモして持参します。日常生活で困っていることや、気になることもメモしておくとよいでしょう。子どもの場合、気になる行動などがあれば、動画をとっておいてもよいでしょう。以下は子どもの場合、問診の際にあるとよい資料になります。・母子手帳・成績表(通信簿)・保育園や幼稚園時代の連絡ノートなど・学校のプリント・ノートなど(学習障害の疑いのある場合)受診の際には保険証を持参します。問診票の記入が必要な場合もありますので、持ち物や準備は事前に受診する医療機関に確認しましょう。十津川市「発達障害の診断について」まとめ出典 : 発達障害は見過ごされ適切な支援を受けないままだと、症状や特徴的な行動によって誤解を招いたり、人間関係を構築できずに本人が悩むこともあります。また、うまくいかないことが続いたときに、叱咤・非難されるようなことが多ければ、自尊心を失ったり、やる気がなくなることで、本来できていたことも困難になってしまいます。これらを避けるためにもなるべく早めに対応法を考えたいものです。適切な治療やサポートを受けられない場合、思春期以降、上で述べたように知的障害の主症状とは異なる症状や状態を引き起こしてしまうことがあります。このような症状や状態を、一般的に「二次障害」と言うことがあります。二次障害が現れた場合には、それらに対する治療を行うことが必要となります。また、このような症状を引き起こさないためにも、発達障害の早期発見と、早期からの対処が理想です。“障害の検査・診断”というと身構えてしまう保護者もいるでしょうが、子育てをしている中で、子どもの気になる行動や強い困り感があった時には、ぜひ身近な相談機関に相談してみましょう。相談機関では、その行動の理解や対処法を教えてもらったり、必要に応じて専門機関や医療機関を紹介してもらったりすることも可能です。専門機関や医療機関では専門家の検査や診断を通じてお子さんの症状や特性、困りごとをより客観的に知ることができます。これらの情報をもとにお子さんに合った対応をすることで、お子さんの能力をより発揮させ、自信を高めることにもつながります。最初は不安もたくさんあると思いますが、一歩ずつ歩んでいきましょう。参考:岡明/著『発達障害とは何か』(『日本医師会雑誌第145巻・第11号』)日本医師会・2017年/刊参考:古荘純一/編『神経発達症(発達障害)と思春期・青年期』(明石書店・2014年/刊)
2017年02月28日発達障害があると「生きづらい」?出典 : 歳の発達障害の息子を育てていると、ごく当たり前のように「この子が生きづらくないように」と考えている自分がいます。「生きづらさ」という言葉は、発達障害児を育てていると頻繁に見聞きするものではないでしょうか。大人になっても「生きづらさ」を感じている人は沢山います。発達障害でなくても「生きづらさ」を感じている人は沢山います。でもやはり、発達障害の息子を見ていると、私はいつも「この子は生きづらいだろう」と感じてしまうのです。そして、「どうやったらこの子の生きづらさが取り除けるだろう」とそればかり考えています。では一体、発達障害児の「生きづらさ」って何なのでしょうか。発達障害特有の困難さは、支援で克服できることも増えてきた出典 : 息子には発達障害児特有の様々な困難があります。言葉の使い方が変わっているのでお友達に不思議がられたり、お友達の輪に入るのが好きではなかったり、聴覚や触覚が過敏だったり、運動が苦手だったり、手が不器用だったり…。これらの困難のために、息子は集団の中で様々な苦労をしているようですが、それは息子が自己肯定感を落とす直接的な原因になっていないようなのです。今は、支援方法がかなり確立されています。運動が苦手だったり、手先が不器用だったりしても、先生方や私たち親の工夫次第で結構頑張れてしまうようです。例えば息子は運動会で足が遅いことをずっと気に病んでいましたが、今は発達障害児専門のスポーツ支援の本などが結構出ています。先生方はそれに基づいて、息子に走り方の指導をしてくださいました。おかげで、運動が苦手なことで息子がひどく落ち込むようなことはありません。また、気にして見ていると、発達障害児向けの学習支援グッズなども沢山発売されています。私はそのようなグッズを探して購入したり、自分で作ってみたりしました。ですから、息子が手先の不器用さでひどく生きづらさを感じているようなことはありませんでした。また、私も幼稚園の先生も決して息子に友達の輪に入ることを強制しませんでした。周りが「この子はこういう子だ」と淡々としていれば、本人はそれほど気に病まないのです。運動や手先の不器用さなどについては支援で克服できることは結構多く、それが即息子の「生きづらさ」に繋がるわけではないように思いました。では何が「生きづらさ」につながっているのだろう。私が息子を見ていて気付いたこと出典 : けれども、どんなに支援をして息子の困難を取り除いても、私はやっぱり「この子は生きづらいだろうなあ」と感じてしまう瞬間があるのです。それは何かといえば、息子の「認知のズレ」です。例えば、息子とのやり取りで以下のようなことが毎日のように起こります。・誰かが息子の言ったことが可愛くて笑った。→「僕のことをバカにして笑っただろう」と激怒orパニック。・何かについて「ダメだよ」と注意された。→ 「この人は僕を嫌っている」と激怒。・何かの問題が難しくて解くことができなかった。→「僕はどうしようもないバカなんだ」と落ち込んで立ち直れない。・先生に「これはいけないよ」と注意される→「僕はいつも先生に叱られているダメな奴だ」と思う。・誰かが息子をからかう。→「みんなが自分を嫌っている」と落ち込む。このように、息子には認知のズレがあり、物事を過度に一般化したり、そうかと思えば突然自責の念にかられたりするところがあります。また、物事を白黒極端に捉える傾向もあり、「え?どうしてそんな風に考えちゃうの??」ということが頻繁にあります。その思考を助長するのが、相手に否定語で何か言われたり、ちょっと笑われたりということなのです。「認知のズレ」は支援することが難しい。私が息子に接するときに心がけていること出典 : 息子の生きづらさの根本的な原因について考えたとき、この「認知のズレ」が大きいのではないかと思うのです。そして、こういった認知のズレは、支援することがとても難しいです。手の不器用さや学習上の困難などは、支援グッズを使いながらなんとか解決の糸口を見つけ出すことができました。けれども、「認知のズレ」だけは、長い時間かけて手探りで修正していくしかないのです。支援グッズを使うでもなく、支援方法が確立しているでもない。私たち親ができることは、ただただ失敗したり落ち込んだりしている子どもに辛抱強く語りかけていくことだけです。だからこそ、認知のズレは親にとっても子ども本人にとっても「生きづらさ」へとつながっていくのかもしれません。けれども、だからこそ、発達障害の子には、なるべく大きな失敗をしないように環境調整をすることに意味があるのだと思います。私は息子の生きづらさを知ったうえで、人間関係や学習などで大きな失敗をさせない、挫折をさせない、本人が乗り越えられるハードルをうまく設定しながら成功体験を増やすことに集中しています。なかには、それは過保護だという人もいます。けれども、認知にズレがあるからこそ、ひとたび大きな挫折でボッキリと折れてしまうと、それを立て直すのに大変な労力がいるのです。また息子の場合、大きな失敗をすることで、他者への不要な憎しみや恨みが長いこと心に残ります。大きな失敗や挫折の体験は、発達障害の子どもの生きる糧にはなりづらいと私は思います。私は失敗を乗り越えさせることに力を振り絞ることよりも、成功体験を積ませることに力を使っていきたいです。発達障害の子どもにとって、小さな成功体験の積み重ねが心の体力になっていきます。心の体力があれば、多少の認知のズレがあっても、自分で態勢を立て直すことができるはずです。認知のズレそのものを修正するために躍起になるよりも、小さな成功体験を増やしていくことに重点を置いていくほうが、親も前向きに取り組むことができるのではないでしょうか。生きづらさは、心の体力で克服できるものだと私は信じています。
2017年02月23日こんにちは、親子でADHD(注意欠陥・多動性障害)をやっています、ママライターの木村華子です。息子の発達障害を疑ったのは、小学校へ入学してすぐのこと。夏休み前に行われた担任と保護者の二者面談で、私は息子の発達障害を疑っていること、 そして受けることのできる支援や相談窓口があれば教えてほしい旨を伝えました。ところが担任の口から発せられたのは、「発達障害だなんて!お母さん、そんなに思いつめなくても大丈夫ですよ」という慰め(?)の言葉。結局その後一年間、何のアプローチもないまま息子の不得意は放置 されてしまいました。当時の私は、「どんな支援があるのか分からない」「どこに相談すれば良いのか分からない」「そういう機関を利用する際には、学校を介さなければいけない気がする」などの疑問や思い込みから、「担任が気付いてくれなければ何もできない……」と動き出せずにいたのです。今考えると、その時点で親としてしてあげられることがあったのだと分かります。今回は、早期療育の大切さと、発達障害の相談窓口についてをお話しします。「うちの子もしかして……」と思い始めたパパ・ママへ、いち早くお子様へのアクションを起こすヒントにお役立てください。●早期療育の大切さ〜放置は二次障害の原因に!〜2年生になったばかりのころ、新しい担任から療育センターへ行くことを勧められ、ようやく息子への支援が行われるようになりました。発達障害を受け入れ支援に踏み切ることは、多くの親にとって勇気のいる決断ですが、息子の凹凸を考慮したアドバイスや指導により、私たち親子がこれまでの育児で乗り越えられなかった課題や問題が日々改善されていく様子 には、「もっと早く相談すれば良かった!」と思わせるだけのメリットがありました。と同時に、カウンセリング・検査・相談等の過程で相談員の方や支援学級の先生から何度も聞かされた「早期療育が大切」という言葉に、親としての反省と後悔も感じています。発達障害を放置し、適切な対応をせず過ごしていると、・できないことを友人になじられたり・先生や両親から怒られたり・いくら頑張っても成功しなかったり……という失敗経験を重ねて自己評価が低くなり、高い確率で別の障害(不安障害やうつ病、統合失調症など)を引き起こす原因になってしまう のだそうです。これを“二次障害”と言い、思春期の引きこもりや不登校、家庭内暴力、犯罪行為などにもつながると言われています。カウンセリングで「“もう手遅れ”ということはないけれど、療育をはじめるのは早いに越したことはありませんよ」というアドバイスを受け、私は子どもが1年生の段階で気が付いていたのに……と少し後悔しました。きっと、担任の動きを待つあいだにできることがあったはずです。発達障害の特性でつらい思いをするのは本人。二次障害を予防するためにも、ぜひ「うちの子もしかして……」と気が付いた段階で適切なアクションを起こしてあげたいものですね。●「うちの子もしかして……」と感じたときに相談できる窓口4つ「発達障害の支援を受けるには学校との連携が不可欠なのだから、相談も学校を介さなければいけない気がする……」と、特に行動をしないまま息子の1年生を過ごしてしまった私。しかし後になって、ダイレクトに相談できる機関がいくつも存在していることを知りました。もちろん、普段の様子を知っている学校や幼稚園、保育園の担任に相談することも大切です。しかし、私のように不安がうまく伝わらなかった場合や、「どこに相談すべきか……」とお悩みであれば、ぜひ以下の窓口で支援や相談の第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。●(1)発達障害者支援センター発達障害を持つ大人や子どもへの支援を総合的に行う専門機関。“発達障害”と名が付いていますが、「まだ診断されたわけじゃないんだけど……」という方でも相談や支援を受けることができます。●(2)児童相談所虐待児保護の印象が強い児童相談所ですが、業務には“児童に関するさまざまな問題について、家庭や学校などからの相談に応じる”という項目があり、0〜17歳の児童 を対象に発達障害の心身障害相談も行われています。●(3)市町村保険センター地域の母子保健・老人保健の拠点を担う施設。未就学児や小学生だけでなく、高校生や大人の発達障害にまつわる相談 も行われています。相談は予約制となるケースが多いので、利用の際は前もって問い合わせを。●(4)子育支援センター乳幼児(0歳〜就学前)のいる親子の交流や育児相談、情報提供などを行う子育支援センターでは、教育不安などの相談・指導を受けることもできます。発達障害児のサークル活動が行われているケースも。●早期発見で、二次障害を食い止めて!お子様の様子を誰よりも見ているパパ・ママが感じる「もしかして……」には、わが子からのSOSが隠れているのかもしれません。もしそうなら、一刻も早く最適な対応を施してあげたいものですよね。お子様を取り巻く環境をより良いものにするためには、周囲の大人が動きだすこと が必須です。ぜひ早期発見・早期養育をして、二次障害の予防につなげてあげてください。【参考リンク】・相談窓口の情報 | 発達障害情報・支援センター()・平成28年度全国児童相談所一覧 | 厚生労働省()●ライター/木村華子(ママライター)
2017年02月22日・ 【第1回】発達障害の子育てに「療育」よりも大切なこと ・ 【第2回】発達障害の子どもが、充実した人生を送るために必要なこと ・ 【第3回】発達障害の子育てを「辛い、苦しい」と感じたら のつづきです。「発達障害」をもっと理解するために必要なことを、『療育なんかいらない!』の著者であり、独自の理論で放課後デイサービスを展開する「アイム」の佐藤典雅さんにインタビュー。今回は、「発達障害の子育てを楽しむコツ」についてお話を伺った。佐藤典雅(さとう・のりまさ)さん川崎市で発達障害の子どもをサポートする放課後デイサービス「アインシュタイン放課後」「エジソン放課後」を運営している、(株)アイムの代表。自身の自閉症の息子さんの療育のために、息子さんが4歳の時に渡米して、ロサンゼルスで9年間過ごす。前職は、ヤフー・ジャパンのマーケティング、東京ガールズコレクションとキットソンのプロデューサーという異色の経歴の持ち主。福祉という範囲を超えた目線で、自身の息子さんの成長を見守りながら、発達障害児が社会で幸せに生きるための道を広げる挑戦をしている。著書: 『療育なんかいらない!』 (佐藤典雅・著/小学館 ¥1,296 税込)※放課後デイサービス(= 放課後デイ):6~18歳までの障害のある子どもが放課後や学校休業日に利用できる、就学時向けの福祉サービスのこと。■子どもの障害は親のせいではありません―― この連載もいよいよ最終回。いろいろ伺ってきましたが、ずばり、佐藤さんが思う発達障害の子育てを楽しむコツって何でしょうか?佐藤典雅さん(以下、佐藤さん): まず、親自身がハッピーであること、充実した楽しい人生を送ることです。人が他人を幸せにするのは無理。幸せって自分が作り出す状態だから。状態である以上、自分で作り出すしかないんですよ。―― 子どもの障害に対して、親は自分の人生すべてを捧げるべきという風潮がありますよね。そういう中、親は自分のことを優先しにくいのかもしれませんね。佐藤さん: でも、親が療育に必死になって、「子どもには充実した人生を送ってほしい」ってボロボロな状態になっていたら、それを見た子どもがうれしいわけがないよね? こんなの、子どもにとっては重荷でしかない。―― 自分を犠牲にしてまでがんばってしまうのは、もしかしたらお母さんは「自分に責任があったのでは?」と感じてしまうからかもしれません。「妊娠中に無理したのが良くなかったのかな?」とか「早くから預けて働いたのがいけなかったのかな?」とか、いろいろ考えて自分を責めてしまうのかもしれません(※)。※もちろん発達障害の原因にそんな根拠はありません。佐藤さん: 子どもの障害は親のせいではありませんよ。僕は、それぞれの人にはそれぞれの生まれ持った宿命と人生があるのだと思っています。そして、その子どもが自分の人生の使命をまっとうできるようにサポートするのが親の役割。後は、親自身が自分の人生を楽しむのが、親の仕事だと思っています。―― 障害者の親って他の保護者より制限があるように思えるのですが、人生を楽しむことってできるのでしょうか?佐藤さん: 大切なのは、子どもに障害があろうがなかろうが、いかに、自分が今の状態を楽しめるか? なんですよ。お母さんが自分の人生を謳歌していれば、子どももその姿を見ていて楽しくなるでしょう。もちろん、普通の子育てより大変なことは多いですよ。でも、地獄で幸せになれない人は、天国にいっても絶対幸せになれませんから!―― どういう意味でしょうか?佐藤さん: 地獄で「暑い、暑い」って言ってる人は、天国に行けったら、絶対「暇だ~、なんかつまんない~」とか言い出すから。―― おもしろい考えですね(笑)。また、お母さんが生き生きとするためには、お父さんの存在も欠かせませんよね?佐藤さん: もちろんです。でも、残念ながら、うちの放課後デイに親子が面談にやってくる時、夫婦そろって来られるのは一割以下。平日の昼間、お父さんは仕事だから仕方がないにしても、お母さんの話からお父さんの存在が見えない家庭が多いのです。―― 療育センターなんかでも、付き添いはお母さんばっかりですものね。佐藤さん: 父親がちゃんと関わってくれないと、母親のストレスは2倍になります。日々の小さいことまでフォローする必要はないのかもしれないけど、重要なことには決断を下し、時々、お母さんの頭の中を整理してあげてほしいと思います。それに、話を聞いていると、お父さんの意見は結構合理的で的を得ているんですよ。なので、お母さんたちも、もう少し素直にお父さんの意見を聞いてあげてほしいと思います。■先輩お母さんとつながろう。人脈をどんどん広げよう―― 旦那が一緒になって考えてくれる、それだけでお母さんは十分心強いと思います。あと、私が心強かったのは、同じ悩みを持つお母さん仲間とのつながりです。佐藤さん: ただ、療育センターでは同じ年頃の子どもを持つ親同士でしか接点がないよね? 特に、就学前は一番不安な時期だし、子どもの先の姿が想像できない。だから、同世代だけで集まると不安を交換しあって、不安だけが増幅してしまうという難点もあります。―― 確かに。いつも同じメンバーで、ぐるぐると同じ話になってしまいがちなところもありましたね。佐藤さん: 一番有効なのは、発達障害をもつ未就学児のお母さんは、同じ発達障害を持つ中学生の親から話を聞くこと。すでにいろいろ経験してきたお母さんたちは、いろいろな情報を持っているので役立つアドバイスをくれます。わが子の将来のイメージもつかみやすいので、お母さんもあんまりパニックにならないですむ。違う世代とつながりを持つことをおすすめします。―― でも、なかなか違う世代とつながる機会がないのですが……。佐藤さん: うちの放課後デイに遊びにいらっしゃい! いろんな先輩お母さんがいるから。みんな仲が良くて、よくバーベキューやクリスマスパーティーしたり、頻繁に交流会をしていますよ!ただ、おもしろいんだけど、うちのお母さんたちが集まっても、みんな誰も子どもの話をしないんですよ。子どもそっちのけで、爆笑トークで盛り上がってるの(笑)。でも、これこそが健全な姿だと思うわけ。―― みなさん、佐藤さん同様、笑い飛ばす力を持っているんですね!佐藤さん: 発達障害の子育てをする親は、特に、開かれた視点で物事をみつめなおす必要があります。療育に通うのに夢中になっていると、気づいたら、接するのは療育センターの先生か学校の先生かママ友だけになってしまいますよ。意識的に努力して、開かれたマインドをもっておかないと。―― 人脈もどんどん広げるべきなんですね。佐藤さん: 例えば、子どもが興味のある業種に人脈を作って、その企業にインターンできるようにするとか、どうでしょう? うちの長女は将来ゲームクリエイターになりたいと言っているので、僕はプロが使うAdobeのフォトショップを覚えさせたり、夏休みは友達の会社でインターンさせたりしています。もちろん、中学生だからたいしたことはできないんだけど、興味ある業界で普段接することのない大人と過ごすことができるのは刺激的でしょう。それができたのは、僕に人脈があったから。―― なるほど! 子どもの興味があることにつながる人脈力か……。佐藤さん: 世の中にはいろんな人います。いろんな人と会って話して、どんどん外の世界に出て行ってほしい。自分の親とか同じ学校とか、同じマンションとか、同じ世帯年収とか、そういう狭い世界だけでみて、こうあるべきだと決めつけないでほしい。臨機応変に考えられるように、いろいろな情報収集をしてほしいと思います。 ■運命を受け入れることも、大切―― ところで、ここの子どもたちはとても自由に寛いでいますね(取材中の様子を見ながら)。図鑑に没頭している子もいれば、ボール遊びをしている子もいるし、寝ている子もいれば、カラオケで熱唱している子もいる(笑)。佐藤さん: 僕は、自分の放課後デイを「川崎のNASA」と呼んでいます。なぜなら、発達障害の子は宇宙人みたいなものだから。僕の役割は地球側の外交官みたいなもので、彼らの地球滞在が充実したものとなるように努めること。そして、いつか彼らが宇宙船に乗って地上に降りてきた時に、「あの時はありがとう」と言ってくれればいいな、と妄想しています(笑)。―― その妄想、素敵です(笑)。佐藤さん: 発達障害はガンダムのニュータイプみたいなもんで、既成概念の外にいる子どもたちなのだから、親の方も子どもに常識を求めるのはナンセンス。期待すればするほどドツボにはまるだけ。そしてもっというと、親自身も「こうあるべき」「こう育つべき」っていう規制概念の呪縛から出る必要があります。―― そう考えると、発達障害の子どもたちは、親に、子育てで忘れがちな、とても大切なことを教えてくれているのかもしれませんね……。佐藤さん: ちょっと話それるけど、みんなよく「結婚して幸せになりたい」とか言うじゃない? でも、結婚したって離婚する人もいるし、結婚は幸せを保証するものじゃない。「結婚すれば老後がさみしくない」っていう人もいるけど、うちのお祖母ちゃんはお祖父ちゃんが早く死んじゃったから、30年間ひとりだったわけ。結婚はさみしくない老後も保証しない。つまり、人生は何が起こるかわからない。だから、一生懸命人生の方程式を作ったって無駄なんですよ。―― では、どこを目指したらいいのでしょうか?佐藤さん: 死ぬときに本人が充実した人生だったと納得して死ねるか、そこしかないと思うんです。だから、子どもに障害があっても、お母さんは自分の人生を思いっきり生きるべきなんですよ! ―― 「やりたいことがあったなら、とりあえずやっておけ!」と?佐藤さん:そう。そして、運命というのか宿命というのかわからないけど、ある程度、受け入れることも重要だと思っています。自分にそういうカードがまわってきたということは、巡り合わせだと。―― 佐藤さんがまったくの異業種から福祉の世界に入ったのも、運命なのですね。佐藤さん: 福祉が大嫌いだった僕が、今福祉の世界で仕事をしているのも、きっと何か理由があるから(笑)。だとしたら、グダグダ文句言ってないでしっかりやりきろう、と。今目の前のことをやりきらないと、次のステージは見えてきません。それに、僕は一生福祉の世界で生きていくつもりはないので、せめて「他の福祉施設よりも結果を出してから辞めてやる!」と思っています(笑)。長時間にわたり、自身の熱い思いをしゃべり倒してくれた、佐藤さん。時に、厳しい指摘もあったが、ユーモアたっぷりの話しぶりで、発達障害の子育ての凝り固まった偏見や閉塞感を気持ちよくブチ壊し、勇気を与えてくれた。そして、著者は何より、佐藤さんのポジティブな姿勢と、常に息子さんの幸せな人生を考え、全力で取り組んでいる行動力に深い感銘を受けた。「この子なりの楽しい生き方ってなんだろう?」「この子が充実した人生を送るために、親として何ができるだろうか?」発達障害の子育てで、本当に親が悩むべきところは、そこにあるはずだ(もちろん、普通の子育てだって変わらない)。そして、大切なことは「子育てを楽しむ」ということを、常に忘れないでいたい。取材・文・撮影/まちとこ出版社 【大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界】 全4回・ 【第1回】発達障害の子育てに「療育」よりも大切なこと ・ 【第2回】発達障害の子どもが、充実した人生を送るために必要なこと ・ 【第3回】発達障害の子育てを「辛い、苦しい」と感じたら ・ 【第4回】発達障害の子育てを楽しむコツ
2017年02月18日・ 【第1回】発達障害の子育てに「療育」よりも大切なこと のつづきです。わが子の発達が気になり、「もしかしてうちの子は発達障害なのでは?」と不安に思ったことがあるかもしれない。発達障害をもっと理解するために必要なことを、『療育なんかいらない!』の著者であり、独自の理論で放課後デイサービスを展開する「アイム」の佐藤典雅さんにインタビュー。今回も引き続き、「療育よりも大切なもの」についてお話を伺った。佐藤典雅(さとう・のりまさ)さん川崎市で発達障害の子どもをサポートする放課後デイサービス「アインシュタイン放課後」「エジソン放課後」を運営している、(株)アイムの代表。自身の自閉症の息子さんの療育のために、息子さんが4歳の時に渡米して、ロサンゼルスで9年間過ごす。前職は、ヤフー・ジャパンのマーケティング、東京ガールズコレクションとキットソンのプロデューサーという異色の経歴の持ち主。福祉という範囲を超えた目線で、自身の息子さんの成長を見守りながら、発達障害児が社会で幸せに生きるための道を広げる挑戦をしている。著書: 『療育なんかいらない!』 (佐藤典雅・著/小学館 ¥1,296 税込)※放課後デイサービス(= 放課後デイ):6~18歳までの障害のある子どもが放課後や学校休業日に利用できる、就学時向けの福祉サービスのこと。■いろいろなものに肌で感じる接点を持たせること―― 引き続き、佐藤さんが発達障害の子育てにおいて、療育よりも大切だと感じていることについて伺いたいと思います。佐藤典雅さん(以下、佐藤さん):いろいろなものに接点を持たせることだと思っています。「こんな場所があるんだ」「こういう大人もいるんだ」と、肌で感じさせること。それ自体がその子の人生を変えるわけではありませんが、肌で感じることの重要性はあると思っています。だから、うちは遠足でアップルストアとかに連れて行ったりしています。―― それは楽しそうですね! でも、子どもたちの高価な電子機器の扱いに不安はありませんでしたか?佐藤さん: それが、スタッフの心配をよそに、みんなちゃんとテーブルについて、iPadが配られると指示に従って操作していたんですよ! 普段教室ではみんな全然人の指示を聞かないのに(笑)。これには本当に驚きました。アップルストアも発達障害の子を受け入れるのは初めてだったらしいけど、「普通の子たちとまったく変わらないペースで体験プログラムができましたよ」って喜んでいました。―― 発達障害があってもなくても、子どもはみんなiPadやスマホをいじるのが大好きですよね。佐藤さん: 僕は、障害者だろうが健常者だろうが、子どもの頃から電子機器にどんどん触わらせるべきだと思っています。これからの世の中、仕事をするときにPCスキルがないことは致命的。だから、うちは電子機器がすごく充実しています。パソコンが8台にiPadも数台、それに最新のVRも。子どもたちがVRのゴーグルとつけると、みんな大興奮して遊んでいますよ。―― でも、子どもが電子機器やゲームに夢中になることに、否定的なお母さんも少なくないように思いますが?佐藤さん: うちに通っている親にも、子どもにパソコンやiPadをやらせることを嫌がるお母さんはいますよ。でも、そういうお母さんには、いつも「ビルゲイツが1日30分しかパソコンさわっていなかったら、マイクロソフトを作っていませんよ」と言っています。昔、「漫画を読むとバカになる」とか「ビートルズを聴くと不良になる」などということも言われていたけど、それと同じで、どの時代にも常に新しいものに対するアレルギーはあるものなんです。―― 私も息子を見ていて、電子機器との相性の良さを感じています。「いつどうやって覚えたの?」とビックリするほどiPadやスマホをスラスラと操っていたり、勝手に新しい知識を仕入れてきたり。でも、一人でiPadに没頭している姿を見ていると、ちょっと不安を覚えてしまうことも。やはり、子ども同士で交流を持って遊んでほしいという願望が湧いてしまうのですが(苦笑)。佐藤さん: うちに通う親からも、よく「同じ年頃の子どもと交流させたい」って言われるんだけど、うちの子たちにWiiを与えると、同世代の子たちが集まって遊びますよ。しかも、誰にも言われなくても、ちゃんと順番とルールも守って(笑)。それに、NHKスペシャルで東田直樹君(※)も言ってたじゃない?「大人は友達作れって言うけど、僕、いなくても幸せです」って。うちに通っている子どもたちも、一緒に遊んだりしなくても友達の名前は憶えているし、だいたい一緒にいるのが嫌だったら違う部屋に逃げるから。遊んでいないから交流してないというわけではない。それは、全部大人の既成概念の押しつけなんですよ。 ■子どもの将来を心配する前に、まず目の前のことに全力で取り組もう。―― その子なりの距離感があるはずだし、友達の定義だって人それぞれ違うはずですものね。自分の既成概念の枠の中で子どものことを見てしまう、この癖は意識して外す努力をした方がよさそうですね(苦笑)佐藤さん: 僕が放課後デイをやるようになって感じるのは、やればやるほど、日常の積み重ねでしかないということ。日々のトライ&エラーです。でも、僕は、小さいことの積み重ねが大きな奇跡を起こすと思っています。みんな、「ここの療育に通っていれば良くなる」って大きな奇跡を期待するけど、そんなのはない。いろいろやってきて、1年間振り返った時、「あれ? なんか最近言葉が増えた?」というふうに、奇跡って振り返って実感するものだと思っています。―― 発達障害の子どもも、スピードはゆっくりだけど成長します。今の子どもの姿がすべてではない。……でも、頭ではわかっているはずなのに、先のことばかり考えて不安になってしまうときも(苦笑)。佐藤さん: 子どもの将来に対して、そりゃ、僕だって不安はありますよ。でも、わからないこと悩んだって仕方ないでしょう? それは、独身の女性が「将来の私の旦那さんは……」って言っているのと同じだよね(笑)。人生には順序があって、AをクリアしなければBはこないんですよ。それをすっとばしてZのことを考えても仕方ない。まず、目の前のことをしっかり考えましょうよ!―― 先のことがわからないのは、発達障害の子育ても普通の子育ても一緒ですね。佐藤さん: そうです。親は、今自分の子どもには何ができるか? 何だったら期待していいか、また期待できないか? しっかり精査すること。例えば、動物が好きだったら動物図鑑をそろえてあげたり、パソコンが好きだったらある程度の環境設定をしてあげたり、その子が興味を持っている環境をそろえて、その子の進歩を促すことが大事だと思います。―― がっちゃんはもうすぐ高校生ですよね? 息子さんのために、今、佐藤さんが取り組んでいる目の前の課題は何ですか?佐藤さん: 僕は、アメリカから帰国した時、がっちゃんを通わせたいと思える施設がなかったから、自分で作ろうと思って、たまたま放課後デイから事業を始めました。だから、うちの子の成長に合わせて、フリースクールや就労支援の事業も計画しています。今年の4月には、フリースクールもオープンしますよ!―― 常に、息子さんが充実した人生を送るにはどうしたらいいのか、ということを考えて行動している、佐藤さん。その行動力、見習いたいものです!佐藤さん: 今は、普通に就職することが難しい子たちに対して、その受け皿は就労支援という一つしかない。だったら、うちでその受け皿も作ろう!と。もっと儲かりながら楽しい就労支援を計画しています。―― 確かに、今の就労支援で得られる報酬はほんのわずかです。このシステムでは障害者の自立は難しい……。佐藤さん: みんな、福祉は感動とか想いだと思っている。でも、そんなのは働き手の都合であって、僕は、福祉で一番重要なのはシステムだと思っています。例えば、駅で車いすの人が電車に乗りやすいように、エレベーターをつける。このエレベーターというのはシステム。やった人の感動や気分の問題ではないんです。社会の多くの一般の人と障害を持っている人とのギャップを埋めるシステムをどうやって福祉で作っていくか、そこを考えていきたい。発達障害と就労支援はとても難しいテーマだ、という佐藤さん。でも、もうすでに、具体的な就労支援の計画を3つも持っていた!(ただし、計画段階なのでまだ記事にはできません)ぜひ、この難題に対する答えを開拓し続けてほしいと思う。次回、第3回は、「発達障害の子育てにおいての親の心の持ち方」についてお伺いします。※東田直樹くん 「自閉症の僕が跳びはねる理由」 (エスコアール)や絵本、詩集など多数執筆。2016年12月11日(日)のNHKスペシャル「自閉症のきみがおしえてくれたこと」で出演されました。取材・文・撮影/まちとこ出版社
2017年02月13日発達障害の専門的医療機関が不足している!?出典 : 年1月20日、総務省は、文部科学省と厚生労働省に対し、発達障害者支援に関する行政評価と監視の結果に基づく勧告を行いました。この調査は、保育所・学校現場を含む、都道府県・市町村における発達障害者支援の実態を初めて調査したものとなります。これまでの記事では、①早期発見について、②発達障害発見後の支援と引継ぎについて、それぞれ総務省による調査の結果と勧告内容についてお伝えしてきました。今回の記事では、発達障害の専門的医療機関の確保に関する調査・勧告内容についてご紹介します。調査対象の18.5%で発達障害の専門的医療機関が確保出来ておらず出典 : 各都道府県において、専門的に発達障害の診断及び発達支援を行うことができると認める病院又は診療所を確保しなければいけないことは、発達障害者支援法に定められています。「都道府県は、専門的に発達障害の診断及び発達支援を行うことができると認める病院又は診療所を確保しなければならない。 」発達障害者支援法第19条(専門的な医療機関の確保等)では実態はどうでしょうか。今回総務省が19都道府県及び8指定都市の計27団体に関して調査したところ、専門的医療機関を確保していたものは22団体(81.5%)で、残る5団体(18.5%)は確保できていなかったことが明らかになりました。また、専門的医療機関を確保済みの22団体の管内に所在する専門的医療機関から、27機関を抽出し、発達障害に係る初診待機者数及び初診待機日数も調査しました。その結果、約4割の医療機関で初診待機者数が50人以上となっており、その中には最大316人が待機している例も存在しました。加えてその初診待機日数は、半数以上の医療機関で3か月以上となっており、その中には最長で約10か月の例もみられるなど、専門的医療機関の更なる確保が必要な状況がみられたとのことです。なぜ発達障害を診ることができる医者は少ないのか?出典 : 総務省の調査した医療機関の中からは、以下のような意見があがったとのことです。①小児科医が発達障害を診断する場合、風邪等の診察と違って、幼児期の状況や成育歴などを聴き取る必要があり、手間と時間を要するため、診療報酬上のメリットを与えてほしい。②発達障害児に対する精神科医による診察は、その特性上、1 人に対し1 時間から 2 時間費やすことが多く、30 分を大幅に超えるため、現行の「通院・在宅精神療法」の時間区分(30 分未満の場合は 3,300円、30分以上の場合は 4,000 円の 2区分のみ)のうち30分以上を細分化し、その時間区分に見合った診療報酬にしてほしい。③発達障害児に対する小児科医の診察による診療報酬では、「小児特定疾患カウンセリング料」(月の1回目は5,000円、月の2回目は 4,000円)が算定可能であるが、発達障害という特性上、長期にわたり通院が必要であるにもかかわらず、2年を限度にしか算定できないことから、2年という期限を設けないようにしてほしい。太字は引用者注発達障害の専門医となるのは難しい上に、診療の旨味も少ないため、医師にとっても魅力を感じにくい領域なのかもしれません。市町村によっては不安解消のため独自の取り組みを行っています出典 : この度総務省が調査した都道府県及び指定都市の中には、初診待機者の不安解消を図るための取り組みを実施しているところもあったとのことです。ひとつは市町村が医療機関と連携して小児科の診察優先枠を毎月1日設定し、保護者の了解のもと県職員も医療機関の診察に同席、医師、保護者及び県の三者で情報の共有を図っている事例です。そしてもうひとつは、医療機関の受診前や療育前に、市町村の主催で臨床心理士等による親子小集団活動、保護者同士のグループワーク等を「にこにこ教室」として実施している事例です。医療機関の受診などを待っている保護者の不安感の解消が図られていることがメリットとして挙げられています。総務省は専門的医療機関の確保を勧告こういった現状に対し、総務省は厚生労働省に対し、発達障害が疑われる児童生徒が専門的医療機関を早期に受診できるよう、専門的医療機関の確保のための一層の取組を行うことを勧告しました。また専門的医療機関の受診までの間、保護者の不安解消を図る取り組みを都道府県等に示し推進するようにも勧告しています。以上、いかがだったでしょうか。発達障害者支援者法は施行されてからまだ10年と少し。発達ナビではこれからも国の取り組みと状況についてお伝えしていく予定です。
2017年02月02日総務省による、発達障害者の支援に関する実態調査。その結果は?出典 : 年1月20日、総務省は、文部科学省と厚生労働省に対し、発達障害者支援に関する行政評価と監視の結果に基づく勧告を行いました。この調査は、保育所・学校現場を含む、都道府県・市町村における発達障害者支援の実態を初めて調査したものとなります。前回の記事では、早期発見に関する実態の調査報告と総務省の勧告内容についてお伝えしました。今回の記事では、発達障害がある子どもへの支援状況と情報の引継ぎに関する調査・勧告内容についてご紹介します。発達障害児に対する支援「個別の教育支援計画」「個別の指導計画」とは出典 : 発達障害を含む障害のある児童生徒の指導について、学校等では、児童生徒それぞれに「個別の教育支援計画」(以下「支援計画」)と「個別の指導計画」(以下「指導計画」)を「必要に応じ」作成し、指導と支援を行っていくこととされています。(4) 関係機関との連携を図った「個別の教育支援計画」の策定と活用特別支援学校においては、長期的な視点に立ち、乳幼児期から学校卒業後まで一貫した教育的支援を行うため、医療、福祉、労働等の様々な側面からの取組を含めた「個別の教育支援計画」を活用した効果的な支援を進めること。また、小・中学校等においても、必要に応じて、「個別の教育支援計画」を策定するなど、関係機関と連携を図った効果的な支援を進めること。(5) 「個別の指導計画」の作成特別支援学校においては、幼児児童生徒の障害の重度・重複化、多様化等に対応した教育を一層進めるため、「個別の指導計画」を活用した一層の指導の充実を進めること。また、小・中学校等においても、必要に応じて、「個別の指導計画」を作成するなど、一人一人に応じた教育を進めること。特別支援教育の推進について(通知)なお、2016年の改正発達障害者支援法においても、発達障害児が年齢及び能力に応じ、かつその特性を踏まえた十分な教育を受けられるようにするために必要な措置として、これらの支援計画及び指導計画の作成を推進することが具体的に明示されています。法律第六十四号(平二八・六・三) ◎発達障害者支援法の一部を改正する法律支援計画や指導計画、実際にどれくらい作成されているの?その効果は?出典 : しかし支援計画に関していうと、必ずしも発達障害のある児童全員に作成されていないのが現状のようです。この度の総務省の調査で調査対象となった111の保育園および幼小中高校において、発達障害児(発達障害が疑われる児童生徒を含む)は計2,431人でした。そのうち支援計画作成が「必要」と判断された児童生徒は829人であり、さらにそのうち支援計画を作成済みの児童生徒は690人でした。支援計画作成が「必要」と判断されたものの、未作成の生徒が139人いることが明らかになりました。未作成の理由としては、教員の業務が多忙で作成する時間の確保が困難であるため、保護者の同意が得られないため、などとされています。また、支援計画作成が「必要」と判断する範囲に関して、111の調査対象のうち19の保育園および幼小中高校では、医師の診断がある児童生徒のみなど、計画の作成対象をかなり限定した範囲にとどめている例がみられました。そしてこうした計画作成対象が限定されていたことの結果として、支援計画や指導計画が作成されていなかった生徒の中には、不登校等の二次障害が生じている例がみられたとのことです。問題行動の度合いが高くない生徒には支援計画及び指導計画を作成することとしていないため、発達障害の診断を受けているにもかかわらず、両計画とも作成されず、結果として、学習障害等で授業についていけずに、平成22年度から26年度までの間に、不登校4人、休学1人、退学1人が発生した。一方、調査した保育所及び学校において、支援計画又は指導計画を作成したことにより、特別支援学校など関係機関による助言や保護者との連携等が図られ状態が改善するなど効果的な支援が行われている例が30事例みられました。総務省は文部科学省と厚生労働省に対し、保育所及び学校において、一律の基準によって支援計画及び指導計画の作成対象を限定するのではなく、個々の児童生徒の特性や状態を踏まえ、支援が必要な児童生徒に対して着実に作成されるよう、作成対象とすべき児童生徒についての考え方を示すことを勧告しました。継続的な支援のために欠かせない、進学先等への情報の引き継ぎ。しかし現状は…出典 : 支援計画や指導計画の作成だけでなく、支援の前提となる子どもに関する情報の引き継ぎ共有も重要です。こうした情報共有の実態についても調査がなされました。具体的には、・乳幼児健診の結果として発達障害の疑いがあるとする情報を保育所へ渡す取り組み・保育所や幼稚園で作成された支援計画等に適宜資料の追加等を行った上で、障害のある児童生徒等に関する情報を一元化し、支援計画や相談支援ファイル等として小・中学校等に引き継ぐ取り組みなど、関係機関同士の情報の引き継ぎ・共有が十分ではないという勧告がなされています。しかし、情報共有が十分に進まない背景には、個人情報保護の観点からの障壁もあるようです。そのことが明らかになったのは、調査対象となった31市町村が実施した乳幼児健診結果の引き継ぎ状況の調査からです。平成26年度に実施した乳幼児健診の結果の、進学先(保育所、幼稚園等)への引き継ぎ状況をみると、30市町村で「引継ぎを行うこと」という方針を立てているものの、個人情報保護の観点から、保護者の同意が得られた場合であって、保育所等から情報提供の依頼があった児童のみ引き継ぐとしている自治体が14市町村にのぼりました。つまり、半数近くの市町村では、保育所等からの働きかけがなければ引継ぎが行われない状況であるということです。調査した市町村の中には、乳幼児健診の結果の進学先への引継ぎ時における保護者の同意取得については、次のような取組を行っている例がみられたとのことです。乳幼児健診の問診票の中に、健診結果等について、保育所等の関係機関と連絡を取り合う場合がある旨をあらかじめ記載し、これに同意するか同意しないかを選択させることとしている。児童が幼稚園に入園する前に、心配事のある保護者に「保護者との連携シート」の記載を依頼しており、同シートにより、幼稚園が保健師等の関係機関等から情報を入手する旨の同意を得ている。また、乳幼児健診の結果が引き継がれなかったことにより、対応が困難になった例もみられたとのことです。市外からの転入により入所した児童について、転出元の市町村での乳幼児健診結果(発達障害の疑いあり)を把握できなかったため、支援計画の作成、個別の配慮、小学校への引継ぎ等を行わなかったところ、小学校で集団行動になじめない状況となり、急遽支援が必要となった歳児健診及び3歳児健診で紹介された親子教室において、軽度な知的障害を伴う発達障害の疑いを指摘されたが、それらの結果が、入園先の幼稚園に伝わらず、児童の知的障害の把握が遅れた。その結果、児童は、特別支援学級へ入級したが、知的学級ではなく、自閉・情緒学級へ入級することとなり、児童に対する教育的配慮や課題設定を行うのに数箇月要した同様に、進学の際や転校の際における引き継ぎの不備も指摘されており、総務省は厚生労働省に対して、市町村に乳幼児健診の結果等の進学先への引継ぎの重要性を周知し、積極的な引継ぎを促進することを勧告しました。他にも総務省は、厚生労働省と文部科学省に対して、保育所・幼稚園から大学・就労先までの各段階において、発達障害児に対する必要な支援内容等が文書により適切に引き継がれるような呼びかけを行なっています。都道府県、市町村、都道府県教育委員会及び市町村教育委員会に対しては、・具体例を挙げて支援内容の引き継ぎを周知すること・支援計画及び指導計画については、引継ぎまでの適切な保存・管理を求めるとともに、具体的な引継方法を提示し、確実に引き継がれるよう徹底を図ることを勧告しました。「切れ目のない支援」を実現するための課題は出典 : 情報の引き継ぎは、切れ目のない支援を推進する上で不可欠だと言われています。そして文部科学省でも障害のある子どもに対して小学校から高校まで一貫した支援ができるよう、進学先の学校へも引き継げる「個別カルテ(仮称)」の作成を学校に義務付ける方針を固め、推進しています。また逆に保育所から専門機関に相談するようすすめられる場合もあるようです。現在、4歳の男の子を持っていますが、引越しして、2ヶ月前ほどから、転園した先の、保育園の先生から、落ち着きがなく、みんなと一緒のことができない、話す単語が少ない、との指摘を受けて、療育センターに問い合わせをするように、言われました。保育園で発達障害を疑われました。3歳1ヶ月の男児です。保育センターの心理相談の結果、問題はなさそうでした。しかしモヤモヤと心配が晴れず、何か息子のためにできることはないかなと焦っています。親や支援者が発達障害をどう理解するか、そして個人情報保護や当事者、家族の不安に配慮する仕組みの構築が、実際に切れ目のない支援を実現するためには必要なのではないでしょうか。
2017年01月30日子どもの発達障害診断が終わった直後、「お母さんも、あるね」出典 : 8年前に、子どもを連れて初めて精神科を訪れた日のことでした。予約時に「受診日には母子手帳を持ってくるように。」と言われていたのに、言われていたことすら忘れてしまい、母子手帳を持参しませんでした。子どもの診察が終わり、子どもには発達障害があると診断をした次の瞬間、病院の先生が私に言いました。「お母さんも、あるね」そしてこう続けました。「息子さんと貴女は似てところが沢山あるでしょう?お母さんもありそうだから、診察受けてみたらどう?お薬も出すよ。楽になるよ。」あまりに軽々しく言う先生の言葉を信用できずにいました。当時の私には、「楽になるよ。」と言う言葉が悪魔の囁きにすら聞こえたのです。発達障害の診断を受けることは、「逃げ」だと思っていた出典 : 子どもたちが発達障害と診断を受けて、通院しながらお薬飲んでいるのを見ると、私は羨ましく思う気持ちが生まれ、「私も子ども達のお薬を飲んでみたい」と何度も思いました。私は幼少期から忘れ物や宿題忘れが酷く、先生にきつく叱られた時には「明日は必ず忘れ物しないようにしよう。宿題は必ずやろう。」と決意するのですが、帰宅すると宿題の存在自体を忘れたり、さらには学校に勉強道具の忘れ物をする始末。数学や社会なども、教科書の文字全部が飛び込んでくる感じがして、どうしても覚えるということができませんでした。結婚して家事をするようになって困ったのは、片付けられないこと。1つのことに集中して片付ける、ということがどうしてもできませんでした。1番困ったのは鍋に火をかけたまま忘れること。いったい何度鍋の中身を真っ黒に焦がしたか分かりません。他にも財布をなくす、鍵をなくす、保険証をなくす、いろいろありました。探し物をするだけでクタクタに疲れてしまう日々でした。それなのに受診を拒んだのは、「私には診断が必要ない」、「診断を受けるのは、頑張ることから逃げることだ」という風に思えてしまったから。本当は、日常生活にたくさんたくさん困っていた。私は、それを認めたくなかったんだと思います。それでも、子ども達のカウンセリングを通じて少しづつ自分を知っていきました。子ども達が成長し、子育ての手が少しづつ離れてくると、ようやく自分と向き合ってみようかな?と思うようになってきました。そこである日、思い切って精神科での検査を受けてみることにしたのです。「忘れ物をするのは、あなたのせいじゃないんだよ」精神科で受けたのは、特性を見るための様々なテストです。そこで再確認したのは「私って覚えておくことが本当に苦手なんだな。」ということでした。次に感じたのは「子ども達はこんなしんどい検査を受けてたんだな。」ということ。子どもが経験した事を私も体験する事ができて嬉しく思いました。そして、私を検査した心理士さんからは心強い言葉を沢山いただけました。出典 : 心理士さん「あなたは人当たりやさしく気を使えるので、周りと上手くやっていけるタイプ。でも、本当の気持ちを言えているかは疑問。言いたい事を言えるようにしていきましょう。でも、自分の中に入ってくる情報が多過ぎるので、どうしても抱え込んでしまいがちになります。うまく休養をとっていきましょう。湧き上がるやりたいという衝動は、創造性が豊かということです。それからあなたのような人は、アイデアがポンポン出てくるあまり、あれもやりたいこれもやりたいとやり過ぎる傾向があります。そういう人は、なんでも自分でやろうとするのではなく、プロデュース業を仕事にすると良いです。貴女の創造性と人との関わりは素晴らしいところです。その素晴らしいところは消す必要はないですよ。ただ、少し荷を下ろす必要はあると思います。5つあるとしたら、3つにするとか。少し整理すると良いでしょう。忘れ物することは貴女のせいじゃないからね。そこは周りに助けてもらいましょう。後は周りに気持ちを伝えられるように、頼ったり甘えたりできるように、少し言葉を工夫して伝えていきましょう。自分が思う自分と、周りが思う貴女とでは、大きなギャップがあるように思います。そのギャップが、少し人間関係を難しくしてるようです。でも、お子さんを通して自分と向き合ってきて、おおよそ私から言われる事が予想できているようですから、今回のことは『あぁ、やっぱりそうか』と納得するのではないでしょうか?今回、テストを受けて自分と向き合うと決めたことは良いことですよ。それと、処理能力が遅いのもあり、仕事を失敗しないように丁寧にしようとすることで仕事の能率が悪くなりやすいようです。苦手なことはどんどん人に委ねていきましょう。」などなど…私の特性を説明するだけでなく、その活かし方まで伝えてくださる方でした。後は、日常生活での具体的な対応の仕方や言葉遣いの工夫なども教えてくれました。カウンセリングでの言葉を聞きながら「あぁそっか!そう言えばいいのか!」と納得しました。知ることって大事だと再確認できました。1番安堵したのは「忘れ物をするのは貴女のせいじゃないからね。」という言葉。努力だけでは乗り越えられないものがあると分かり安心しました。今回の心理士からの言葉から、やりたいという衝動が多い末っ子の「学校がつまらない」という言葉を意味を初めて理解しました。末っ子にとっては、自分の衝動性を満足させるものが学校にはなかったのだということに、初めて気付きました。自分の特性を知ることは、子ども達の発達障害の特性を理解するのにも良い参考材料となったのでした。診断を受けても変わらないもの出典 : テストの結果とその後の医師の診断から、私も子ども達と同じように発達障害があることが分かりました。結果が出たとして、私という存在は変わりませんし、これからも変わりません。変わるとしたら社会の目かもしれません。でも、今回の結果から、分かった事を利用して生活を豊かに過ごすことはできます。苦手を少し楽に過ごす工夫もしやすくなりました。得意なことはより自信を持って進んでいけます。診断を受けるまで長い年月がかかりましたが、今は勇気を出してテストを受けてみて良かったなと思っています。
2017年01月26日もっと自由に、もっと気軽に、語り合える場所にしていきたい。Upload By 発達ナビ編集部本日1月26日、LITALICO発達ナビはオープン1周年を迎えました!オープンから今日まで、たくさんのユーザーさんからの応援の声やアドバイスをいただきながら運営して参りました。1年間、本当にありがとうございました!記念すべき1周年の日に、発達ナビから新しい機能をリリースしました!【新機能はこちら】発達ナビトップページからオレンジ色のボックスをチェックしよう!「発達障害にかかわりのある発達ナビユーザーさん同士だからこそ、共に語り合えることがある」という趣旨のもと、気軽に投稿し、交流できる新たな機能です。発達ナビの新コーナー「みんなのアンケート」って?Upload By 発達ナビ編集部気になる新機能の名前は「みんなのアンケート言いたい!聞きたい!」というアンケートコーナーです!現在、発達ナビのトップページである「タイムライン」には、FacebookやTwitterのようにフリーテーマで気軽にだれでも投稿ができるようになっています。今回の新機能は、「発達ナビユーザーさん同士だからこそ、他のみんなにも意見を聞いてみたい、考えや工夫を教えてほしい!」という具体的なテーマを設けて、みなさんから投稿を募集するというものです。これまでのようなフリーテーマでの投稿だけでなく、発達ナビユーザーさん同士で、同じテーマに紐付けて子育ての考えや出来事を共有していくことができます。笑いあり、涙あり、学びあり…!と様々なテーマを考えておりますので、ぜひみなさんも参加してみてくださいね。例)・これってADHDだから?何年たっても変わらない「わたしあるある」を募集!・子どものかんしゃくはいつ起こる?!発生エピソードを5・7・5で大募集「かんしゃくカルタ」・療育手帳の取得、家族でどんな話しをした?みんなの体験談を教えてください「みんなのアンケート言いたい!聞きたい!」はどこにあるの?「みんなのアンケート」の募集テーマは、タイムライン上に以下の図のようなオレンジ色のボックスで掲載されています。テーマは一定期間で次々と変更していく予定です。Upload By 発達ナビ編集部「みんなのアンケート」にはどうやって投稿するの?オレンジ色のボックスをクリックしていただくと、アンケート投稿の一覧ページにうつります。一覧ページにある投稿フォームを使って、投稿内容を書き込んでいただく仕様になっています。Upload By 発達ナビ編集部投稿していただいた内容は、タイムライン上、アンケート投稿一覧、ご自身のマイページの3つに表示されます。タイムライン上は、新着の投稿から表示されるようになっていますので、マイページの投稿履歴からの確認がおすすめです。タイムライン上かご自身のマイページから、アンケート投稿のグレーボックスをクリックしていただくと一覧でみることができます。Upload By 発達ナビ編集部マイページの投稿履歴にはこのように表示されます。Upload By 発達ナビ編集部タイムライン上かご自身のマイページから、アンケート投稿一覧へ移動します。そこにある投稿フォームより再度入力をお願いします。Upload By 発達ナビ編集部みなさんの投稿、お待ちしております!さっそくアンケート投稿をしてみるご利用上の注意事項のご案内 利用規約・ガイドラインについて投稿いただく際の注意事項は以下の通りです。【1】タイムラインの投稿は、誰にどこまで公開されるの?・ログインをしていないユーザーさんも一部閲覧可能です・コメントや♡を出来るのは、会員ユーザーさんのみとなります【2】 テキスト・画像を投稿するときの注意事項は?タイムラインにご投稿いただく際は、他者の著作権を侵害することの無いよう、以下の点にご留意ください。◇テキストについて書籍や記事等で他者が執筆した文章を投稿する場合、"引用符"で区切った上で出典を明記するなど、引用の要件に注意して、無断盗用・剽窃の無いようご注意ください。気軽な日常の投稿はじめ、ご自分で書き下ろしていただいた文章はお気軽にご投稿いただいて大丈夫です。◇画像について他者の著作物である画像の無断転載はご遠慮ください。・ご自分で撮影された写真など、ご自分に著作権がある画像・フリー素材サイトの写真など、自由利用が許可された画像などはご投稿いただいて大丈夫です。文化庁: 「著作権なるほど質問箱」【3】利用上の規約やガイドラインはあるの?LITALICO発達ナビ全体で、ユーザーの皆さまに守っていただくルールとして、「利用規約」がございます。一人ひとりの権利を守り、サービスを安全に維持・運営していくための、運営会社である株式会社LITALICOと、お客様であるユーザーの権利義務関係を定めた大切な「お約束」です。こちらも併せてご確認の上、タイムライン投稿をご利用ください。りたりこ)発達ナビ利用規約また、医療情報を含む投稿に関しては、以下のガイドラインもご参照ください。ユーザーさまによる医療情報に関する投稿の取り扱いについてこちらは2017年1月26日時点の仕様となっており、以降デザインや機能などの変更をする場合もございます。ご理解のほどお願いいたします。
2017年01月26日子どもの特性にもいろいろありますが…Upload By 荒木まち子Upload By 荒木まち子悩みの尽きない障害児の子育て。その中でも大きな決断となるのが…出典 : 障害がある子どもの親は、たくさんの不安を抱えています。周りの子どもたちとの成長の違いが気になったり、友達との接し方にハラハラしたり、親亡き後のことが心配になったり…。周りに協力者や理解者がいなくて、親自身が孤独を感じる場合もあります。そんな中、子どもの困りごとの解決のため、親は様々な決断を強いられます。今回はその中でも特に親が悩む決断の1つ「服薬」についてのお話です。娘が二次障害になったきっかけは「いじめ」や「からかい」だった出典 : 私には発達障害の診断が出ている高校生の娘がいます。娘は物をすぐに失くしたり、何度も同じ間違いを繰り返したりします。手先は不器用、計算も苦手ですが、興味があることには並外れた記憶力と集中力を発揮します。家族や親しい人とはよく喋る反面、他人とは上手くコミュニケーションをとることができません。受動型のADD(注意欠陥障害)の特性を持っているので、困っていることが見過ごされやすいタイプです。娘は小学校高学年の時に、学校で冷やかしやいじめの対象になったことがありました。その頃の娘はよくイライラし、自宅で物を投げては壊したり、弟に当たったりしていました。後からわかりましたが、娘は二次障害に陥っていたのです。発達障害ということに気づかなかったり、気づいていても適切なサポートを受けられずにいると、周囲に理解されず叱咤や非難を受けたり、失敗体験を積み重ねるなどして、本人の自尊心ややる気が失われ、新たな障害が生じることがあります。これを、いわゆる「二次障害」ともいいます。いじめへの対応に奔走した日々出典 : このままではいけないと思った私は、色々なところに相談をしました。以前から通っていた療育センターや病院、スクールカウンセラーや特別支援コーディネーターの先生…。新たに発達障害専門の塾や家庭教師も探しました。娘の障害の理解のために第三者にも立ち会って頂き、校長先生との話し合いもしました。いじめへの対応と環境改善の具体例を示すため、それまで学校との連携がなかった療育センターのスタッフさんに学校訪問もしてもらいました。娘自身も専門家によるSST(ソーシャルスキルトレーニング)を受け始めました。SSTでは、●イライラした原因やその後どうしたかを書き留める●言葉で表現できない気持ちを絵で表現する●スポーツで体を動かすなど感情のコントロールの方法やストレスの発散方法を学びました。ソーシャルスキルトレーニング(SST)とは、人が社会で生きていくうえで必要な技術を習得するための訓練のことです。それでも辛そうな娘の様子を見て、医師から処方されたのが「お薬」だった出典 : 学校の環境は徐々に改善されていきましたが、いじめや冷やかしが陰で行われることもあり、家での娘のイライラはまだ続いていました。しばらくして、娘の状況を知った担当医から、ごく少量のお薬が娘に処方されました。「好きで暴れている訳ではない。自分でも嫌だ。でも抑えられない。」そう訴える、娘の辛い気持ちを汲んでの処方でした。「何よりも環境を整えることが大切です。お薬はとても少量の処方です。幼児が飲む量ですよ。」処方の際、私達親子は医師からこう説明を受けました。娘はその薬を「イライラ止めのお薬」と呼んで、毎日服用しました。その後も、娘が少しでもストレスなく過ごせるよう、私はスケジュールボードを利用したり、不要なものに目隠しをしたりするなど、環境作りを積極的に行ってきました。娘を理解し、寄り添ってくれる指導者に出会ったこともあり、彼女のイライラは徐々に減っていき、お薬は10ケ月で服用を終えたのでした。使ってみて気づいた、お薬との付き合い方出典 : 一口にお薬と言っても種類、飲む量、飲み方(頓服など)様々あります。また、発達障害で処方されるお薬には、種類や人によって「合う」「合わない」があるかと思います。副作用で眠くなったり、食欲が落ちたり、逆に過食気味になることもあるかもしれません。でも、服薬することで本人や家族の困り感が減り生活の質が向上するのであれば、そのメリットはとても大きいと私は考えます。合う薬に出会うまでは様々なSSTを試すのと同様で、医師の指導の下、あきらめずに探すのも1つだと思います。子どもが大きくなると、服用したときの調子の良さ・悪さが本人にもわかってきます。親亡き後のことも考えると、本人の意思を尊重した病院との付き合い方を考えていくことも、きっと大切になってくるでしょう。また、成長と共に合う薬の種類が変わったり、適量が変わったりすることもあるでしょう。どれも「成長の証」と考え、その時々で臨機応変に対応する柔軟さも、親には必要なのだと思います。あふれる情報の中で、何をどう受け取るのか?冷静さを持って選びたい出典 : 服薬に不安を抱いたとき、まずは医師等の専門家にとことん相談してみましょう。また、親御さんを悩ませる原因の1つに、インターネットの普及も関係していると思います。良い情報も悪い情報も玉石混交で、誰もが簡単に手に入るようになりました。他方SNSでは、周囲に同じ境遇の友達や家族がいなくても、同じ悩みを共有したり励まし合ったりして、元気をもらうことができます。不安な時や悩んでいる時こそ、その情報が正確かそうでないかを冷静に見極め、全てが自分の子どもに当てはまるわけではないということを念頭に置きつつ。その情報を試してみるか、参考までに留めておくのかをしっかりと考えることが、大切なのだと思います。
2017年01月15日音楽に合わせて身体を動かしたり、音を楽しんだりするリトミックは、小さい子どもをもつママたちから人気の高い習い事のひとつです。「子どもが生まれたら、まずリトミックを習わせたい!」「音楽が好きな子になってほしいからリトミックに通うことを考えている」という方へ、リトミックの効果からお教室選びのポイントまで“リトミック”情報をまとめてご紹介します。リトミックって何? リトミックとは、音楽教育法のひとつです。もともとは作曲家であり音楽教育家でもあったスイスのエミール・ジャック=ダルクローズ(1865〜1950)が生み出したものでした。欧米では広く取り入れられている教育法で、日本では、小さい子どもの習い事として“音楽で何かする”イメージで知られています。ピアノなどでさまざまな音を鳴らして、その音に合わせて子どもたちが動き回る様子を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。そもそもリトミックは、リズム遊びや歌などを通して音楽に親しむことを目的としており、楽器が弾けるようになったり上達したりするのではなく、感受性を豊かにするための教育方法です。目に見えて何かができるようになるものではありませんが、心の成長や表現力が豊かになるといわれているため、子どもの習い事として人気が高いのも納得ですね。リトミックの効果リトミックを行うことで得られる効果には、感受性が豊かになる・身体全体を使った表現力が身につくというものがあります。まず音に親しみ、それから楽器へと移行していくことで“音楽”そのものを楽しむことができるようになるといわれているため、リトミックを行うときには、“楽しめる”ことが大きなポイントとなっています。なかには「リトミックをやっても、音感はよくなっていない気がする」「リトミックをやってもやらなくても、ダンスのうまさには関係ないのでは?」という懸念を抱く方もいらっしゃるかと思います。しかし、リトミックは“絶対音感が身につくように指導する”ものでも“リズム感を鍛えてダンスがうまくなるようにする”ものでもありません。リトミックも段階をおっていくと、音感指導といえることまで行うケースもありますが、小さい子どもたちが習うレベルでは、音に親しむ程度で本格的な指導や教育は行われないのが一般的です。音楽的センスが磨かれることよりも、“思いっきり表現する”“心を開放していく”“音を楽しむ”ことに重きが置かれているため、こうしたリトミックの基本の考えを押さえたうえで、効果についてチェックしていくようにしましょう。他にも、リトミックで“運動能力や集中力が身につく”といわれることがあります。これは、音に合わせて身体を動かすことが運動に必要なリズム感につながることや“音”を聞こうとすることで集中することを理由として挙げられている効果です。これらは、リトミックを楽しむことで、思ったとおりに身体を動かせるようになったり、音を聞こうとする姿勢が自然と身についたりすることが“運動能力や集中力が身につくという効果”と結びつけられていると考えられます。リトミックをやれば、速く走れるようになったり、静かに絵本を読んでいられるようになったりといった直接的な効果がでるとはいえないため、その点は注意しておきましょう。リトミックをやってみよう! ▼何歳からできる? リトミックには、“○歳以上から”という規定はありません。ベビーリトミックであれば、0歳から始めることができ、リトミック教室では0〜1歳・2〜3歳・3歳以上でコースや教室開講時間をわけているケースが多く見られます。0歳からのベビーリトミックでは、首すわり前の赤ちゃんから受け入れているところもあれば、首がすわってから・腰がすわってから、といった条件が設けられている教室もあります。一緒に楽しむということを考えると生後3〜6ヶ月以上になってから習い始めるのがママやパパも落ち着いて楽しめそうです。また、リトミックは小さい子ども向けのものと思われがちですが、最近では、高齢者向けのリトミックというのもあり、介護施設などでリトミックが行われていることもあります。“リトミック”という看板だけでなく、対象年齢もしっかり確認してから申し込むようにしましょう。▼どんな方法があるの? 基本的に0〜1歳のリトミックではママやパパと一緒に行います。まだ自分ではうまく身体を動かせない時期から、抱っこをして音に合わせて揺り動かしてあげるなどのリトミック方法もあります。お座りや立っちができるようになると、手遊びでママやパパとスキンシップを図りながら行う方法が多くなっていきます。2〜3歳以上のリトミックでは、ピアノなどの楽器で音を鳴らし、それに合わせて身体を動かして、音のイメージと表現を結びつけていくようになります。たとえば、低くゆっくりとした音であれば、大きな動物が歩いている様子を表現する…といったように、身体全体を使っていくのが特徴です。また、音を楽しめるようになってくると、さまざまな楽器を好きに鳴らすリトミック方法も取り入れられていきます。タンバリンやカスタネットなどのカンタンに音が出る楽器を中心に、決まったタイミングで音を出すのではなく、好きなように鳴らすことで幅広い“音”を楽しむことができます。▼どこで習える? リトミックは、各地に大小さまざまな教室があり、どこでも習うことができます。保育所や幼稚園の保育・教育方法としてリトミックを取り入れているところや課外活動としてリトミックが習えるところもあります。教室を探すこと自体は難しくはないでしょう。また、ママやパパ自身がリトミックを学びたいと思ったときには、リトミック講師や指導員の資格を取得できる講座もあります。通信講座もあるため、気になった方は探してみましょう。▼資格や教材は必要? リトミックは、各スクールから認定される民間資格はありますが、絶対に必要な資格というものはありません。教室を開講するときにも、資格は必要ないため誰でも開くことができてしまいます。資格をもっているからいいリトミックができるわけでも、資格がないからダメなわけでもありませんが、資格を取得するためにはある程度勉強をしなければならないため、ひとつの指標として見てみるとよさそうです。また、教材も特に必要はありません。ピアノでリトミックを行うケースも多いですが、ピアノがなくてもリトミックはできます。また、他の楽器でもリトミックを行うことは可能です。おうちでもできるリトミック▼ピアノがあるときはリトミックはおうちでもできます。ピアノが自宅にあるときにはぜひ活用しましょう。長くピアノから離れてしまい指が思うように動かない方や家族のピアノで自分は習ったことがないという方でも、カンタンなリトミックであればピアノを使ってできます。たとえば、ピアノの左側、低い音を3音(鍵盤3つ)順番にリズムをつけて弾く・低い音と高い音(ピアノ右側)を交互に弾く、などカンタンな音を出し、その音に合わせて子どもに動いてもらうのもひとつの手です。▼楽器がなくてもできるリトミックは楽器がなくても行うことが可能です。CDやDVDなども販売されているため、リトミックがどんなものかわからない状態でも始めることができます。おうちでリトミックを取り入れるときには、CDやDVDを購入してみるのもよさそうです。▼おうちでリトミックを行うときの注意点リトミックは、“楽しむ”ことが大切です。教室に通っていると、プロである先生がいてママやパパは見守るだけだったり、一緒に楽しんだりできますが、おうちで行うときには「こうしてほしい」「こうしなきゃいけないのに」とついつい理想を押し付けてしまいがちです。おうちで行うときには「音を楽しみながら、一緒に身体を動かす」ことを特に意識して、遊びのひとつとして取り入れるようにしましょう。リトミックの教室に通うときの注意点▼なるべく体験から始めようリトミックだけに限りませんが、習い事を始めるときには、なるべく体験から始めるようにしましょう。いい習い事だとママやパパが思っていても、子どもが楽しめるかどうかは別問題です。子どもがどんなものに興味をもつかは、やってみなければわからないところもあります。また、体験前には積極的ではなくとも、やってみたら楽しくて通いたくなるケースも考えられます。特にリトミックは楽しめるかどうかが重要なため、体験を通して子どもの好みに合わせた教室を選ぶようにしましょう。体験をすることで、教室自体の雰囲気を知ることができるため、通わせるママやパパにとっても安心です。他の子どもたちの動きや表情、先生の声掛けなどを見て、通わせても大丈夫かどうかをチェックし判断するのがおすすめです。▼子どもが楽しめそうかを見るポイントはじめて行く場所や人に会うときに、ママやパパに隠れてしまう場所見知り・人見知りをする子どももいます。体験したものの、その場ではほとんど動くことができず「やめたほうがいいのでは…」と感じる可能性もあります。おとなしく、人見知りをしてしまうタイプの子どもが、楽しめそうかどうかは表情を見てチェックしてあげましょう。ママやパパの後ろに隠れていても、他の子どもがやっていることをジッと見つめていたり、チラチラと見るときの目がキラキラしていたりするときには、時間をかけて通うことでリトミックを楽しめるようになる可能性が高いです。また、先生が子どもの扱いに慣れているかどうかも重要なポイントとなります。はじめからみんなと一緒に楽しめる子どもにも、おとなしい子どもにも、それぞれに合った声掛けをしてくれる先生であれば信頼して子どもを預けることができます。体験や数回通ってみて子どもに「リトミック、どう?」と問いかけたときに「楽しい!」と返ってくる教室を選ぶと長く続けられる習い事になるはずです。リトミック本来の目的を忘れずに、子どもが楽しめるような環境を整えてあげるようにしましょう。参考: リトミック研究センター
2017年01月10日発達指数とは出典 : 発達指数とは、日常生活や対人関係などにおける子どもの発達の規準を数値として表したしたものであり、DQ(Developmental Quotient)とも言います。子どもの成長には個人差があり、一人ひとり異なる特性を持っています。しかし個人差がある一方で、発達の道筋や順序には共通して見られる特徴があります。子どもは成長するにつれて、視野を広げ、認識力を高め、まわりの人との関わりを深めていきますが、その経験が次の成長のステップにつながります。子どもが成長していくには、それぞれの発達段階に合った生活を送ることが大切です。そのため、発達を客観的に知るものさしの一つとして発達指数が使われています。発達指数は発達検査と呼ばれる検査によって知ることができます。発達検査で分かる「発達年齢(発達の状態がどのくらいの年齢に相当するか)」を「生活年齢(実年齢)」で割り、100を掛けて算出します。発達年齢と実際の年齢が同じ場合、発達指数の値は100と計算できます。そのため平均は100前後とされていますが、発達指数の値だけで子どもの発達状態を判断をすることはありません。あくまでものさしの一つであり、発達検査から分かる能力のバランスや日常生活の様子などを総合して子どもの発達状態を把握します。参考:子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題|文部科学省参考:発達検査とは?|てんかん情報センター発達指数を知ることができる年齢は?出典 : 発達指数を計ることができる検査としては、主に「新版K式発達検査」と「遠城寺式乳幼児発達検査」の2つが挙げられます。新版K式発達検査であれば生後100日後から成人まで、遠城寺式乳幼児発達検査であれば0歳0ヶ月から4歳8ヶ月まで、発達指数を計ることができます。適用年齢は幅広いですが、主に就学前の子どもが発達検査を受けることが多いです。小学生以上であれば、発達状態を計るよりも、知能検査によって知能を計るほうが一般的だからです。ただし知的障害がある場合など、知能検査だけでは発達の状態や障害の度合いを把握することが難しいケースでは、成人でも発達検査を受けることがあります。参考:発達障害児支援とアセスメントに関するガイドライン|厚生労働省発達指数を調べる目的出典 : 発達指数を調べる主な目的は、1. 子ども一人ひとりの発達状況を理解すること2. 発達段階に合った適切な学習指導や支援を受ける際のヒントを知ることの2つです。注意点として、乳幼児においては、検査を受ける際の子どもの状態や環境に左右されるため、発達指数の値は変動しやすいといったことが挙げられます。そのため1歳6ヶ月健診などにおいて、発達指数の値が低く出てしまったために、軽度の知的障害の可能性を指摘される場合もあるようです。しかし知的障害があるかどうかの判断は、発達検査や知能検査の結果を長期的に把握しながら行う必要があります。発達指数はあくまで発達状態を知るものさしの一つです。発達指数だけでなく、発達検査から分かる発達の特徴、検査を受けている時の様子、日常生活の様子を総合して発達状態を判断することが大切です。発達指数の値だけにこだわるのではなく、定期的な検査結果から分かるお子さんの発達のペースや発達の特徴に注目するようにしましょう。発達指数と知能指数の違い出典 : 発達指数が子どもの発達の基準を数値化したものであるのに対し、知能指数とは人の知的能力(認知機能)の基準を数値化したものです。ここではそれぞれがどのように使われているのか、適用年齢に差はあるのか、検査内容の違いについてご紹介します。・目的発達指数は一人ひとりの子どもの発達状態を知る、知能指数は知的能力の発達に遅れがあるかどうかを知るために使われるものです。適切な学習指導や支援を受ける際のヒントを知るという目的はどちら検査にも共通していると言えます。知能指数と発達指数のどちらを用いるかは、年齢や障害の程度、疾患の種類などによって変わってくるため、専門家の判断によります。また知能検査と発達検査の両方を受ける場合もあります。・適用年齢発達指数は0歳から成人まで計ることができます。就学前の子どもが発達検査を受けることが多いですが、成人でも発達や障害の程度を知るために発達検査を受けることがあります。一方、知能指数は2歳から成人まで計ることができます。子どもに発達障害がある場合、乳幼児期からその兆候が表出することも少なくありません。しかし発達初期の乳幼児の発達状態を、通常の知能検査によってとらえることは困難だとされています。乳幼児は心理的、身体・運動的、社会的側面の発達が十分でないため、知能のみを検査によって測定することは難しいからです。・検査内容発達指数は発達検査によって知ることができ、知能指数は知能検査によって知ることができます。発達検査はガラガラや積木、ミニカーといった乳幼児にとってなじみのある材料を用いた検査です。それに対して知能検査は主に小学生以上を対象としているため、言語や書字などを用いて回答する問題が多くあります。知能指数も発達指数もその数値だけで、障害や疾患の確定診断をすることはありません。発達検査や知能検査を受けたとしても、診断を受けるかどうかは、本人や保護者の希望によります。乳幼児健診などにおいて、発達の遅れの可能性を指摘された場合も一度の検査だけでなく、定期的な発達検査の結果によって疾患や障害を見分けたり、診断していく場合が多いようです。さらに2歳からは知能検査を受けることができるため、だんだんと知能検査を中心に受けることになります。障害や疾患によっては、年齢が上がらないと見分けられない場合もあるため、長期的にお子さんの成長を把握していくことが大切です。発達検査を受けることで広がるメリット出典 : 発達指数と発達検査から分かることを組み合わせてどのようなメリットがあるかご紹介します。・相談機関で子どもの成長に対するアドバイスをもらえる児童相談所などの相談機関では、「検査報告書」をもとに今後のお子さんの成長に対してアドバイスをもらえます。「検査報告書」は発達検査を受けたあとにもらえるもので、検査結果や今後日常生活において注意すべきことが記載されています。発達指数の値は「数値結果」欄にあります。相談機関によるアドバイスによって、例えばお子さんの苦手な部分に対し、「なぜ苦手なのか」を知ることができます。また苦手なことだけでなく、お子さんの検査に取り組む姿勢やプロセスなども教えてもらえるため、「総合的にどう成長しているか」を把握することができます。・小学校就学のヒントを得ることができる発達検査から分かることを小学校就学の際に活かすことができます。家庭では特に気になることがない子どもでも、幼稚園などで集団生活に参加することで困りごとが現れる場合もあります。そのような場合、小学校就学を前にして不安になる保護者の方も少なくないようです。お子さんの発達に気になる点があれば発達検査を受け、早めにお子さんの得意・不得意を把握しておくことで、小学校就学後にもどのような支援をしていけば良いか、検討しやすくなるでしょう。さらに発達検査の結果や発達指数の値によっては、療育手帳をもらえる場合があります。療育手帳があることで、特別支援学級といった就学の選択肢を広げることができます。療育手帳については、記事の後半で詳しくご説明します。発達指数を知りたい時は?出典 : 小さいお子さんの場合は、乳幼児健診の際に相談してみましょう。乳幼児健診では、お子さんの身長・体重測定や診察のほかに、日頃の疑問点や悩みごとについて質問できます。特に保健センターで受ける場合は、医師、保健師、心理士などの専門のスタッフに相談することができます。また乳幼児健診では、発達の遅れの可能性を見極める精密検査が必要かどうかを判断するスクリーニングが行われます。スクリーニングにおいて気になる兆候が見られた場合は、保健機関での相談、発達検査の受検、医療機関での2次スクリーニングなどをすすめられることがあります。そのほかで発達検査の受診を検討する際は、まずはお住まいの地域にある身近な相談窓口に行くと良いでしょう。子どもか大人かによって、行くべき相談機関が違うので、以下を参考にしてみてください。【子どもの場合】・保健センター・子育て支援センター・児童相談所・発達障害者支援センターなど【大人の場合】・発達障害者支援センター・障害者就業・生活支援センター・相談支援事業所など自宅の近くに相談機関がない場合には、電話での相談をすることができる場合もあります。発達検査は、公的病院や民間病院で受けることができます。精神科や臨床心理士による検査が受けられる病院を受診すると良いでしょう。「児童発達支援センター」などで受けることもできます。発達検査の受け方、費用は、検査内容や病院によって異なります。検査は基本的に誰でも受けることができますが、特に発達に関して気になる点がないと医師が判断した場合は自費となります。検査を受ける際は、まず病院に問い合わせてみましょう。さらに発達検査の結果を受けて、専門機関で確定診断を受けたい場合は発達検査を受けた機関に問い合わせるか、もしくは改めて相談機関(保健センター、子育て支援センターなど)に問い合わせてみてください。発達指数を知ることができる発達検査の内容出典 : 発達検査にはさまざまな種類がありますが、この章では主に発達指数を知ることができる2つの検査について紹介します。これらの検査は、任意で受検することも可能ですが、基本的には相談機関や病院ですすめられて受検することが多いです。適応年齢:生後100日後~成人検査項目:328項目(「姿勢・運動領域」、「認知・適応領域」「言語・社会領域」の3領域で構成)それぞれの年齢において、一般的と考えられる行動や反応と、対象となる方の行動や反応が合致するかどうかを評価する検査です。検査は、「姿勢・運動」(P-M)、「認知・適応」(C-A)、「言語・社会」(L-S)の3領域について評価されます。なお、3歳以上では「認知・適応」面、「言語・社会」面の検査に重点が置かれます。検査結果としては、この3領域の「発達指数」と「発達年齢」が分かります。適応年齢:0歳0ヶ月~4歳8ヶ月検査項目:151項目(移動運動、手の運動、基本習慣、対人関係、発語、言語領域)「運動」「社会性」「理解・言語」の3領域6の質問項目から構成されています。上記の発達検査は発達指数や発達の全体像を知る検査です。これらの検査結果をふまえたうえで、特定機能の発達を計る検査と組み合わせることもあります。なぜなら発達指数の値が正常だった場合でも、異なる検査によって発達における課題を見つけることができるからです。例えばIPTA言語学習能力診断検査であれば、学習障害や言語発達の遅れを見つけることができます。発達検査を受けてもお子さんの発達に心配な点がある場合は、他の検査を検討してみても良いでしょう。発達指数の値によって療育手帳をもらえることも出典 : 発達指数の値だけで受けられる支援はありませんが、発達指数の値は療育手帳の取得判定の際に参考とされます。療育手帳は、児童相談所または知的障害者更生相談所において知的障害であると判定された場合や、知能指数が75以下(自治体によっては70以下)の場合にもらうことができるとされています。乳幼児の場合は、知能指数の代わりに発達指数を指標とすることができます。療育手帳を貰う流れとしては、まず発達検査を受けて発達指数を知り、指定された医師による診断書を用意する必要があります。注意点として、知的障害の程度は年齢とともに改善が見られることがあるため、療育手帳の更新ごとに障害の等級が変わるということが挙げられます。特に乳幼児においては、発達指数の値は変化しやすいので、更新期限までに必ず再判定を受け、適切な支援を受けられるようにしましょう。障害の判定は発達指数に加えて、日常生活における能力を総合して行われます。療育手帳の基準は地域によって異なりますが、参考までにここでは東京都が交付している「愛の手帳」の例をご紹介します。◇判定基準知能測定値、運動、社会性、意思疎通、身体的健康、基本的生活の6項目を0歳~6歳の子どもの判定基準としています。知能測定値として、知能指数や発達指数を用います。◇区分知能指数や発達指数の値と日常生活における能力を総合し、最重度~軽度の4区分に判定されます。参考:愛の手帳|東京都福祉保健局療育手帳を貰うことで以下のようなメリットがあります。・保育園入園時など保育・教育面での援助・公共交通機関などの割引・レジャー・スポーツ施設などの割引・給付・税の減免や控除に役立つ・就労に向けての支援さらに療育手帳を持っていることで特別支援教育を受けたい際に役立ったり、特別児童扶養手当を貰えたりする場合もあります。自治体によって異なるため、地域の相談機関に相談してみることをおすすめします。まとめ出典 : 発達指数はあくまで発達の度合いを計るものさしの一つです。発達指数の値が低いからといって障害があると決めつけることはできませんし、年齢によって改善されることもあります。そのため発達指数の値だけを見て思い込みをせず、発達検査から分かるお子さんの得意・不得意にも注目し、サポートにつなげることが大切です。客観的、総合的に成長を捉えることで、お子さんに合った学習指導や支援を見つけることができるでしょう。お子さんの発達が気になる場合は、児童相談所などの相談機関に相談し、長期的にお子さんの成長を把握していくようにしましょう。岩﨑 清隆・岸本光夫/著『発達障害の作業療法実践編』2015年三輪書店小山正/著『乳幼児臨床発達学の基礎』2006年培風館/刊
2017年01月09日子どもが学校に通っているときに悩ましいこと出典 : 発達障害児の子育てで悩むことの1つに、学校や先生とどう付きあっていけば、子どもが安心して通えるのか?という悩みがあると思います。私は先日、ちょうどこの悩みを取り上げたテレビ番組を視ていました。12月2日に放映されたNHK・Eテレ「ウワサの保護者会~子どもの発達障害Part3学校とのつき合い方」です。ご覧になった方も多いのではないでしょうか。番組では、学校との関係に悩むたくさんの保護者の声が紹介されていました。その中で代表的だったのが「学校が子どもの発達障害を正しく理解してくれない」というもの。理解のない先生に叱られ続け、学校に行けなくなってしまったお子さんの話や、逆に「障害がある」と決めつけて子どもの悪いところばかりを指摘する先生のお話が紹介され、そこには「学校への不信感」が強く表れていました。でも子どもが安心してのびのびと学校生活を送るためには、「先生が悪い!」と責めるだけ、あきらめるだけで終わらせるわけにはいきませんよね。先生になんとか理解してもらうには、協力してもらうには、どうしたらいいのでしょうか? Eテレ「ウワサの保護者会」14年前、私も教員だった。まだ発達障害そのものが知られていなかった頃…出典 : この番組を見て、自分が教員だった頃のことを思い出しました。今から14年ほど前は、まだ「ADHD」「発達障害」などという言葉は教育現場でさえほとんど知られていない時代です。私が受け持っていたクラスに「ADHD」の診断を受けた男の子がいました。4月の家庭訪問でその子のお母さんから「これ読んでください!」とある本を渡されたのです。それは、当時出版されたばかりの『のび太・ジャイアン症候群』という本でした。お母さんからはその他に、子どもの特性と一緒に「このように配慮してほしい」とたくさんの説明を受けましたが、小学校に赴任したばかりの新米教師だった私は正直、いっぱいいっぱいでした。特性や配慮事項についてはなんとなく認識しましたが、さすがに本を読む余裕はありませんでした。その子に対し、あまり手をかけてあげられなかったのが、今とても悔やまれます。新版 ADHD のび太・ジャイアン症候群 司馬 理英子 (著)両者の立場がわかるからこそ、できることがあるはず出典 : 私は元教員という立場と、発達障害児の母という両方の立場を経験し、両者の葛藤や考えがわかるようになりました。その経験を生かし、自分が母として学校の先生と関わっていくとき、心がけていたことをご紹介したいと思います。一番最初にしたことは「まずは先生に感謝を伝えること」でした。教員経験があるからわかるのかもしれませんが、先生は想像以上に多忙です。子どもの指導だけではなく、大量の事務仕事や様々な会議に追われています。そのため、まず親としてそのことに感謝し、労わりの言葉を先生には伝えていました。また、ほんの小さなことでも子どもの成長が見られたら、それを先生に伝えて「ありがとうございます!」と感謝しました。たとえその成長が直接先生の指導と関係なくても、子どもの成長は先生にとっても嬉しく、親に感謝されたら尚更だと思うのです。それが、「この子をもっと伸ばしてあげよう」という、教師のやる気につながることも多いのです。出典 : 感謝を伝えた上で、「この子はこのようなところがあるので、このような配慮をして頂けるとありがたいです。」ということを丁寧にお願いしていきました。その際には、病院や教育相談でこのようなアドバイスを受けたので、と、親の主観ではなく専門的な知見からのお願いであることを強調していました。そして、家で用意できるものは用意します、など、学校任せではなく家庭でも最大限の努力をしました。もちろん、全員の先生が、子どもの特性や配慮事項を理解してくれた訳ではありません。宿題への配慮を「みんなと同じでないと困るので」と断られたこともあります。それでも、このような先生への対応を続けていったことで、いつでも話ができ、できる範囲での配慮をして下さる関係を、保ち続けることができました。先生と親は、共に子どもを見守っていく同志でありたい出典 : 最後に、「ウワサの保護者会」の中で、面白い!と思ったエピソードがあります。あるお母さんが子どものことで朝の7時半に学校に電話をしたら、ちょうど担任の先生が出たとのこと。その先生も子育て中だと知っていたので「朝早くから大変ですね~」と言ったのだそうです。そうしたら、その先生が「そうなんですよ~!」と、いつもの声と違った素の声で返してきたのだとか。それ以来、そのお母さんと先生はフランクにお話ができるような気さくな関係になれたのだそうです。先生に、子どもに寄り添ってもらいたい、と思ったらまずはこちらが先生に寄り添ってみる。「子どもを見守っていく」という同じ目標に向かって協力する同志になるためには、先生と人間的な心のつながりを持てるよう、関係を築くところから始めるのも、1つの方法なのですね。子どもを守るためには、先生と保護者とで一緒に考えていくことが大事!番組もそう言っていましたが…保護者だけではなく、学校や先生方にも、子どもや保護者に寄り添おう、一緒に考えよう、という姿勢になっていってほしいと願います。
2016年12月19日ナチスとスターリンに引き裂かれた国エストニアを舞台に、秘密警察に追われる元フェンシングのスター選手と子どもたちが希望を取り戻すまでを描く『こころに剣士を』。実話から生まれた本作から、主演を務めたマルト・アバンディのコメントとともに、子どもたちとフェンシングとの“出会い”のシーンをとらえた本編映像がシネマカフェに到着した。舞台となったエストニアは、第二次世界大戦中はドイツに、その末期からはソ連に占領され、2つの国に翻弄された人々は鬱屈した生活を強いられていた。父親がいなくなり、母親は働きに出て子どもたちは放っておかれ、誰もが下を向いてひっそりと暮らしている。そんな日常に、まっすぐに相手と向き合い、必要とあれば立ち向かっていくフェンシングというスポーツが、元フェンシング選手のエンデル・ネリスによってもたらされる。息の詰まる生活をしていた子どもたちはたちまちフェンシングに夢中になり、そこに希望が芽生え始める。さらに、秘密警察に追われるエンデル自身も、いつしか剣士のこころを取り戻していくが…。あるフェンシングの指導者の実話をもとにした本作。監督は、『ヤコブへの手紙』などで知られるフィンランドの名匠クラウス・ハロ。長編監督作全5本のうち、本作を含む4本がアカデミー賞外国語映画賞のフィンランド代表作品に選ばれている。2004年にはスウェーデンのアカデミー賞「イングマール・ベルイマン賞」を受賞。また、2016年の第73回ゴールデン・グローブ賞外国語映画賞にもノミネートされた。そんな本作から届いた映像は、1人で壁に向かい、フェンシングの練習をするエンデル(マルト・アバンディ)に、地元の少女マルタが声をかける本編シーン。エンデルの人生も、子どもたちの人生も変わり始める“出会い”のシーン。「なにをやってるの?教えてください。バレエを習いたいけど教室がないの」とお願いするマルタの健気な様子が印象的だ。エンデルを演じたマルト・アバンディは、「この映画が大好きです。出演作だからではなく、客観的にみてもいい映画だと思います。誠実さがこの映画のいいところです。正直でまっすぐなのです。本作の強みである誠実さが、皆さんにも伝わるはずだと思います」と力強いコメントを寄せている。『こころに剣士を』は12月24日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2016年12月18日子どもの遊びでよくあるトラブル。夢中になるのはわかるけど…Upload By モンズースー子どもはおもちゃなど同じ種類の物を規則的に並べる遊びが好きですよね。発達の遅れのある子の中には特にこの遊びが好きな子が多いと聞きます。そんな発達の遅れのある子ども達が集まる場所で、毎回のように起こっていたトラブルが「並べる」と「積む」の争いでした。このブロック、どこの遊び場でも見かけるのですが、部屋に入るとまずこれを並べる子がいつも現れるのです。彼らは全部のブロックを並べたいのですが、我が家の長男を含む数人の子は「積む」遊びが好きなので別の場所から積んでいってしまいす。長男たちの目標は全部のブロックを上に積むこと。最初は相手の行動が見えていないのでお互いのブロックを崩しては並べたり積んだりを繰り返すのですが、なかなか完成せず途中で自分と違う行動の相手に気づきバトルに…。人数が多いと「積む派」と「並べる派」とで乱闘…なんてこともありました。年齢が上の子を見ていると、相手の考えを少し理解できるようになり、譲ったり言葉で交渉したりすることもできるようです。我が家の長男はまだ言葉での交渉が苦手で、相手の考えを理解できても自分の考えを変えられず、争ってしまう時もあります。しかし、人と自分の考えが違うことに気づき、どうすればいいのか考えられるようになった分、少しづつ成長しているのかな…と思いました。そんな経験も、長男にとっては大切な勉強なのだと思います。
2016年12月16日発達障害で働いている人はどのくらいいる?出典 : 発達障害とは、先天的な脳機能障害によって、発達に何らかの遅れや偏りなどの症状が、通常低年齢において発現する障害です。日本における発達障害の定義は平成16年に制定された発達障害者支援法によって定められており、世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)の基準に準拠しています。発達障害者支援法における発達障害の定義は以下になります。この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。そもそも発達障害のある大人が日本にどのくらいいるか、はっきりした統計的なデータはありません。文部科学省の2012年の調査によると、通常学級に在籍する児童・生徒の中で発達障害の特徴を示す子どもは全体の約6.5%、つまり約15人に1人の割合でという結果になりました。これは、診断を受けている人の数ではありませんが、障害の傾向のある人まで含めると、社会の中にもかなりの数の発達障害のある人がいることを示唆しています。発達障害がある人の中には成人して特性を生かした職業に就いたり、能力にあう職業を選び、雇用されている人もたくさんいます。2011年の障害者職業総合センターの調査によると、- 障害者を積極的に雇用している特例子会社105社のを対象にしたアンケートで、特例子会社で働く療育手帳(知的障害のある方が取得する手帳)所有者が1798人、精神障害者保健福祉手帳を所有している人が198人いて、両者の中で発達障害があると把握されている人は203人という報告があります。ですが、発達障害のある人の中には療育手帳や精神障害者保健福祉手帳を取得していない人や、障害を開示しないで働いている発達障害の人が多いと考えられます。そのため、実際にはより多くの発達障害のある方が、様々な仕事に携わり、様々な職場で働いていると言えるでしょう。出典:「 発達障害者の企業における就労・定着支援の現状と課題に関する調査研究」(2011年)|障害者職業総合センターHP大人の発達障害、いつ診断された?きっかけは?Upload By 発達障害のキホン発達障害は発達期(~18歳)に発症するとされていますが、障害に気づくタイミングはそれぞれです。子どものころから診断結果が出ている人や、大人になってから何かをきっかけに診察を受け、気づいたという人もいます。母は私が小さい時から「おかしい」と思っていました。小学1年生の時、担任に「学習障害」を相談しましたが「違う」と言われ、中学でも担任に相談しましたが違うと言われました。私自身も、小学生の時点で自分の「変さ」には気づいていました。辛かったです。でも、「発達障害」という言葉自体なく診断されませんでした。近年、発達障害が広く知られるようになってきましたが、かつてはあまり理解を得られず、見過ごされていた人も多いようです。大人になって発達障害に気づくきっかけになるのは、例えば仕事上のミスや、社会人として生活する上で人間関係がうまく築けないなどの悩みなどです。これらのストレスからうつ病などの二次障害を発症し、精神科などを受診して発達障害に気づく人も少なくありません。ですが、大人になってからでも専門家の支援を受けることで自分の特性に気づけたり、対処法を学ぶことは十分にできます。もちろん、日常で問題や障害を感じずに社会に適応している発達障害の人もいますし、現在発達障害の根本的な治療法もないため、必ずしも診断を受けなければいけないわけではありません。私は13年前にうつ病と診断され、6年後に双極性障害と再診断されました。現在は双極性障害2型とパーソナリティー障害が病名になっています。解離性障害で入院していた時期もあり、過去10人以上の医師に診てもらいましたが誰1人私の「発達障害の可能性」を指摘しませんでした。今までのどの診断名も自分にしっくり合わず間にあわせ的な違和感を感じていた私が自ら調べた結果、「根底にあるのは発達障害で双極性障害その他はその二次障害である」という結論にたどり着き、医師にそれを相談したところ診断に「発達障害疑いあり」が加わりました。このように大人になってから新たに発達障害だと医師から診断されることもあります。大人になってからでも、なんらかの困りごとに直面したり、疑いを持った場合はまず専門機関に相談しましょう。発達障害者支援センター・一覧検診で子供の発達障害の疑いを指摘されたことをきっかけに、自分もWISC検査と診察を受け、自閉症スペクトラムグレーゾーンと診断されました。お子さんの発達障害をきっかけに、自分の障害に気付いた方もいるようです。大人の発達障害、特性に合った仕事・難しい仕事は?出典 : 注意欠陥/多動性障害(ADHD) の人の特徴は、集中力が長時間保てなかったり、落ち着きがない、物忘れをしがちといった行動が目立つため、周囲からやる気がないというような誤解を受けがちです。仕事上では、不注意から同じミスを何度もしてしまうこともあります。また「臨機応変に対応を」と言われ、本人は工夫したつもりが、やりすぎてしまい相手の意図とそぐわないことをしてしまうこともあるかもしれません。しかし、一方ではアイデア力、行動力や独特の感性を発揮し、営業職や企画・開発などで評価され活躍している人もいます。ADHDの人全員に当てはまるわけではありませんが、一般的にミスが絶対に許されないような作業などは不向きともいえます。一方で、ADHDのある人は以下のような強みがある人も多いのです。・興味のあることに対して情熱を持ち、高い集中力を発揮する・アイデアが豊富で、固定概念にとらわれず自由に考えられる・行動力がある・素晴らしいひらめきをすることができる・独特の感性をもち、考えることができるなどどちらかというと、芸術家・音楽家やデザイナー、CGアニメーター、ゲームソフトやコンピューターソフトの製作者、研究・開発者などクリエイティブな仕事が向いています。また行動力を活かしセールスマン・営業職や起業家・企業家として活躍する人もいます。自分の特性に合った職業に就くことができれば、注意欠陥/多動性障害(ADHD) の人も強みを活かして活躍しやすくなります。時間や仕事のリズムにも自由度が高く、うっかりミスも取り返しがつくような、新しいアイデアや変化を問う仕事が向いています。自閉症やアスペルガー症候群などを含む、広汎性発達障害(PDD)・自閉症スペクトラム(ASD)の人は、相手の気持ちや場の空気を読んだり、コミニュケーションをとるのが苦手ということが多いです。また、イレギュラーなことやはじめての経験にスムーズに対応するのが難しいこともあります。これらはあくまで傾向にしかすぎず、全ての広汎性発達障害の人がこの特徴に当てはまるわけではありません。併存する知的障害の重さや一人一人の特性にもよりますが、対人関係が苦手な人は接客業はストレスが多いでしょう。現場で臨機応変な対応が求められる職業は向いていないかもしれません。広汎性発達障害の人の中には、こだわりを持ち、パターン化されたものを好む人が傾向としては多いそうです。そのため、同じ作業を繰り返すルーティンワークで強みを発揮する場合があります。一度仕事のやり方を覚えると効率よくこなす人も多く、職場で高評価を受ける人も多いのです。また、自分にしかわからないような強いこだわりを持っているので、研究や創作などでは群を抜いた能力を発揮することも多いのです。具体的にはデザイン関係の仕事やプログラマー、コンピュータ関連の仕事で力が発揮できると思われます。集中力があり、普通の人では集中力をきらしてしまうような細かい仕事もコツコツと続けることができ、物事を深く追求したりルールに基づいて整理・分析したりするエンジニアや研究者といった仕事、校正者や職人などの特殊技能を必要とする仕事などに向いています。学習障害は、能力の凸凹や特性の偏りが多く、苦手なことにかなり個人差がある障害です。そのため、向いている仕事、向いていない仕事も人によって様々であると言えます。本人の特性を理解し、得意な分野を活かせる仕事につけることが理想ですね。向いていない仕事は一概には言えませんが、苦手な業務が多い仕事内容だと、困難な場面も増え、ストレスを感じることも多くなるかもしれません。一方、別の手段で代替できたり、職場の理解や協力があれば乗り越えられる可能性も大いにあります。たとえば、算数障害(ディスカリキュリア)のある人の場合、日々、多くの計算が業務に必要な仕事は苦手かもしれません。ですが、計算機で解決できる場合もあります。同じ小売業でも、暗算が苦手な場合、お釣りを計算しなければいけないお店の会計業務は向いていないと言えますが、バーコードを読み取るだけのレジであれば、問題ないこともあるでしょう。また、書字障害のある人は、文字を書く業務が苦手かもしれませんが、パソコンでタイプしてプリントすればよいこともあります。読字障害のある人も、音声読み上げソフトを使用したり、録音することで困難が解消できることもあります。苦手な分野を避けることは働き続ける上で大切ですが、テクノロジーや手段を替え工夫することでうまくいくこともあるので、「この仕事は無理」と決めつけてしまう前に検討するのがよいでしょう。実際に、様々な障害特性を乗り越えて作家、映画監督、発明家、俳優など様々な職業で活躍している人もいます。障害特性と向き合いつつも、自分が希望する仕事に目を向ける、という進路も選択肢の一つかもしれません。人のストーリー|発達ナビ大人の発達障害、仕事の探し方は?Upload By 発達障害のキホン発達障害に関する就労支援は、現在、よりよい対応体制を整えている状態です。特別支援学校などでは、卒業後に就職できる企業の紹介もあります。通常学級でも高校、大学ともに進路指導の先生に相談することも可能です。まず、最寄りのハローワークでの相談をおすすめします。障害者雇用の窓口もあるので、そこでご自身の発達障害の特性について伝え、仕事を探していること、仕事をする上で不安に感じていることなどの相談をすることができます。障害者を対象とする障害者合同就職面接会などの情報を得ることもできます。障害者向けの支援を希望しない場合でも、ハローワークできめ細やかな相談・支援を実施してくれます。適職があれば求人に応募してもよいでしょう。「若年者コミュニケーション能力要支援者就職プログラム」として、発達障害などでコミュニケーションに困難を抱えている場合の支援も行っており、不安がある場合には、発達障害者支援センターや医師との連携をとってもらうことができます。適職を自分では探すことが難しい場合には、適職を探す方法や調べてもらえるところも紹介してもらえます。就職に不安をかかえている場合には、就労移行支援という方法で就職をすることもできます。これは障害者総合支援法に基づいた支援で、就労移行支援事業所が各都道府県や政令都市の認可を受けて民間が運営しています。この就労移行支援は手帳を取得していなくても医師の診断書や意見書など、支援の必要性を示す情報があれば利用することができます。まずは最寄のハローワークや就労移行支援事業所に連絡をとってみましょう。ハローワークでは、発達障害のある人が就職された場合、その事業主に対して助成を行う「発達障害者雇用開発助成金」という制度を設けています。他にも「障害者トライアル雇用奨励金」という短期間の施行雇用を行い、仕事に慣れることで実際の雇用につなげる制度もあります。詳しい情報は以下のリンクを確認してください。実際に働いてみると仕事が想像していた仕事内容と大きく異なった、と離職を希望される場合も少なくありません。仕事を探す際には、似たような職種で職務経験を積んでいく方法や、希望の会社でまず一定期間働くことが可能なのか、聞いてみる方法もいいでしょう。より自分の得意・不得意を理解し、どの仕事ならこなせるか、やりがいを持てるかどうかを把握するヒントになるかもしれません。発達障害者支援センターでも「就労支援」を行っています。本人や家族からのあらゆる相談ができ、必要に応じた施設や医療機関の紹介もしてくれます。就労に関しては特性や障害の状況に適正な就労先を紹介してくれたり、雇用後にも個人の必要に応じて支援を行ってくれます。発達障害者支援法第3章第14条に基づき、都道府県・指定都市に設置されています。就職後も相談に乗ってほしい場合はジョブコーチによる支援を受けることもできます。これは、就職後、職場にジョブコーチが出向き、職場でうまく仕事をしていくための支援をしてくれる制度です。若年コミュニケーション能力要支援者就職プログラム発達障害者支援センター・一覧参考:障害者就業・生活支援センター療育手帳や精神障害者福祉手帳を取得している場合はいわゆる「障害者雇用制度」の対象となります。・手帳所持者を事業者が雇用した際の、障害者雇用率へのカウントの対象となり、障害者雇用枠での就職ができる・障害者職場適応訓練を受けられるなど、就職への支援が受けられます。実際に障害者雇用制度を利用して就労する人の数は年々増加しています。ですが、希望している職種や企業が障害者雇用枠で募集しているとは限らないこと、賃金などの面で希望と合わないこともあるでしょう。一般の求人に応募したい場合などには、手帳を持っているからといって必ずしもこの制度を利用しなくてもよいですし、手帳取得者であることを報告する義務はありません。制度を利用するかどうか、よく考え、支援機関などと連携し、相談しながら進めていくとよいでしょう。障害者雇用対策|厚生労働省障害者雇用対策|厚生労働省大人の発達障害、会社や同僚へ開示・報告はした方がいいの?自身に発達障害があることを職場に伝えた方が良いかどうか、迷う方が多いのではないでしょうか?会社へ障害があるということを報告するかどうかは、一人ひとりの状況によるので一概には決められません。診断のみでは雇用上「障害」としては認められない現状があることも考慮したほうがよいでしょう。そのため診断とともに障害者手帳を取得しているかどうかでその意味合いが変わってくる場合もあります。一般就労をしている場合、会社に報告するか否かは、障害に理解のある会社であるかどうか、報告することで仕事をしやすくなるかなどを考慮して決めた方が良いと言われています。会社に報告する人が多くなってきていることは事実ですが、周りや会社には報告しないことを選択している人も少なくありません。一方、報告することによって周りからの理解が得られ、離職率が低下するということも考えられます。報告した際のメリットとしては、サポートを受けやすくなったり、フォローしてもらえるようになるということがまず挙げられます。また業務の相談もしやすくなると思いますし、以前より職場環境を快適に感じることにつながるかもしれません。2016年4月に障害者差別解消法が施行され、不当な差別的取扱いを行ってはいけないこと、企業や行政はできる範囲で合理的配慮を行う努力義務があることが定められました。このため、職場でも合理的配慮をお願いしやすくなりました。しかし中には偏見を持ったり、あまり障害に対して理解をしてくれない人がいないとは限りません。発達障害について詳しい知識のある人は少ないので、仕事上での困難や起こりうる問題と、要望などを伝えるようにしましょう。また、障害があるという報告をする場合は人を選んで報告し、仕事のどういうところで具体的にフォローが必要かを伝えるのが良いと思います。デリケートな問題ですので、迷ったら自分だけで決めずに、発達障害者支援センターなどの専門機関に相談することをおすすめします。一方で、発達障害を開示・報告した場合でも、職場や周囲に偏見が無理解があれば、職場で差別・虐待を受けてしまう可能性もゼロではありません。こうした深刻なケースでは、本人から周りに助けを求めるのが難しい場合もあるので、周囲の人が虐待に気づいた場合、各市町村の障害者虐待防止センターなどの専門機関に虐待の存在を知らせましょう。本人からの申告も可能性です。またこの虐待は就業場に限らず家庭内の虐待も含みます。障害者虐待防止センターに虐待を相談すると、支援・指導を受けることができ、問題の糸口を探す手伝いをしてくれます。強制的に仕事や家族から隔離されたりすることはありませんので、安心して相談することができます。発達障害の仕事での困りごと・よくあるミスと対処法出典 : 発達障害のある人の中には、社会的な「暗黙のルール」というものに気づきにくいという特性も持っている方も多く、周りの人が忙しくしている時や、助けを必要としている状況に気づかず、手伝うことができない場合があります。また決められたこと以外のイレギュラーなことが苦手な特性のある場合、指示をされないと動かない・自分の仕事が終わったら他のことは何もしようとしない、などと周りから見られてしまうことがあります。【対処方法】具体的な指示があると動きやすいという特性を伝え、「具体的に今時点で何を手伝ってほしいのか」指示してもらうようにします。その仕事を終えたら、次の仕事をまた具体的に指示してもらうようにします。複数の仕事を同時に並行して行うことや、脳と体の複数部を同時に動かすことが苦手なこともあります。一つの業務の間には、わずかな時間でも休憩を挟み、終わった仕事に対して評価をしてから、次の仕事をするといった工夫をするとよいでしょう。時間の管理が苦手で、遅刻しがだったり、仕事の手順が就労時間で計画できない場合があります。スケジュールの調節、優先順位だけでなく、仕事に対して熱心に取り組んではいても、こだわりが強すぎて自分の納得いくまで作業を終わらせることができずに、納期が守れないといったこともあります。【対処方法】仕事の完成度が高いことも重要だが、納期を守ることも大切だということを理解しましょう。「納期」とはなにか、具体的にして再確認し、作業のスケジュールを「見える化」すると良いでしょう。またスケジュールは自分だけでなく、複数の人に管理してもらうなどがあります。具体的には以下のような工夫をするとよいでしょう。・作業内容を細分化して書き出し、それを見えるように張り、作業終了目標時間の5分前にアラームをセットする。・終わった作業にはチェックをし、終わった作業への充実感を感じられるようにする。・仕事の計画や優先順位を決めることが苦手な場合、スケジュールをほかの人に管理してもらい、ひとつの仕事を終えたら、次の仕事を具体的に指示してもらうようにする。周りが気になってしまって、やるべき仕事に対しても集中力が続かない場合があります。また、興味がない仕事の場合、会議中などの大事な席でも居眠りしてしまうことも。頼まれていたことを忘れてしまったり、集中力が続かないことが原因で、仕事がスムーズに終わらなかったり、やる気のないような印象を与えてしまい、接客などで様々なトラブルを起こしてしまうことも少なくありません。【対処方法】怠けているという訳でもなく、集中力が続かないという特性を持っている場合は、周りの人に自分の特性を説明し、理解してもらえるようにつとめます。何か別の考えごとをしているな、と感じたら、声をかけてもらえるようお願いしてみましょう。他のことを考えはじめたことに気付いてもらい、今やるべきことがあるのに他のことを考えてミスしてしまうのを防ぐためです。指示を忘れないようにメモの習慣をつけましょう。集中力低下時の居眠り防止には、睡眠不足にならないように心がけることも大切です。またデスクワークなどで気が散ってしまうときは、集中できるよう環境調整をすることも効果的です。デスク周りを片づけて集中できるようにしたり、聴覚過敏がある場合は相談してイヤーマフなどの使用許可をお願いするのもよいでしょう。「想像力の障害」や「コミュニケーション能力の障害」により、敬語の使い方が困難な場合もあります。本人が正しいと思って使っていた言葉使いが、仕事の上では失礼にあたったということに気づけないことがあります。また距離感をうまくつかめないという特性もあり、近くにいるのに声のボリュームが大きすぎて相手を驚かせてしまうこともあります。【対処方法】自分中心の話ばかりでなく、相手が話しているときは意識的に相づちをうつようにするとよいでしょう。場所やその場の雰囲気、相手に合った会話の内容や態度、表情などを意識するということを、ひとつずつクリアしていくようにします。相手のお世辞を正直に受け止め過ぎてしまうことがあるので、注意しましょう。まとめ出典 : 参考:『発達障害者と働く』(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)発達障害のある人が就業する場合、多少の困難はもちろんつきものです。職場の方から偏見を受けたり誤解されてしまうこともあります。発達障害は、一見して外からは見えにくいため、他人には障害があることが理解されにくい場合があります。自分でも自覚が少なく、仕事ができないと他人と比べて落ち込むこともあるかもしれません。しかし、自分の障害特性を理解することで適切な支援も受けられますし、必要な配慮を周囲の人に伝えやすくなります。発達障害だということを職場に告白し理解してもらうのは勇気のいることですが、仕事の円滑さやストレス軽減のための手段のひとつであるとも言えます。仕事がスムーズにいかないのは、本人の能力不足や怠け心があるというのではありません。今勤務している職場環境を改善したり、適職を見つけることのできる相談機関が全国にありますし。それによってサポートを受けながら、働きやすい仕事の環境で継続的に働いていくことも可能なのです。深呼吸し、ひとつずつ課題をクリアしていくように、業務の手順や対人関係の工夫を身につけていきましょう。自信をもって働ける職場環境をつくったり、より適切な職場を見つけたりすることで、仕事や生活全体の充実が得られるようになるでしょう。頑張り過ぎず、自分のペースでいられる時間を持つことで、バランスをとっていきましょう。参考:法令データ提供システム「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」2012年
2016年12月15日ことばの教室ってどんなところ?出典 : 小学校や中学校には、子どものさまざまな障害や困難に合わせた支援を行う、通級指導教室や特別支援学級が設置されています。「ことばの教室」とは、そのなかでも言語に障害のある子ども向けに設置された、通級指導教室と特別支援学級の通称です。また、ことばの教室は、「言語障害通級指導教室」、「言語障害特別支援学級」と呼称されたり、地域によっては「ことばときこえの教室」と呼ばれ、言語障害の支援と聴覚障害の支援が両方受けられる場所もあります。それは、言語を獲得し、言葉を発するのに聴覚(きこえ)が重要な役割をはたすためです。どちらか片方に障害があると、もう片方にも問題が生じる場合も多く、言葉を発することと聴覚に対する困りごとを同時に支援していく必要があります。通級指導教室や特別支援学級として設置されていることばの教室では、言語障害のある子どもへの支援を行っています。例えば言葉のおくれ、吃音(きつおん)などの話し言葉におけるリズムや声を出すための器官に障害がある構音障害に対して支援が行われます。また、障害の改善以外にも言葉に関する教科(例えば、国語、英語、音楽、算数、数学)の指導も行っています。通級指導教室とは、おおむね通常の学級の授業についていけるが、通常の学級の中で一部、特別な支援を必要とする子どもを対象に設置されている少人数教室です。通級指導教室に通う子どもは通常の学級に籍を置き、学習したり、給食を食べたりと通常学級でほとんどの時間を過ごします。そして、週に数時間、障害に合わせた個別の支援を受けるために通級指導教室へ通います。Upload By 発達障害のキホン一方、特別支援学級とは心身に障害があったり、発達に遅れがあったり、より手厚い指導・支援をより多くの時間必要とする子どもを対象に設置されている少人数学級です。特別支援学級へ通学する場合は、籍は特別支援学級に置きます。そして、体育や生活、道徳、課外活動をはじめ、一部の授業を通常学級の子どもと一緒に受けることが通例です。Upload By 発達障害のキホンどんな子どもがことばの教室に通うの?出典 : 言語障害のある子どもがことばの教室へ通います。言語障害と一口にいってもさまざまな種類があります。ここでは医学的言語障害ではなく、ことばの教室が対象としている言語障害について説明していきます。言語障害とは、話すため・言葉の発声のために必要な一連の動きに障害があることを言います。例えば、人は話す時にまず、頭の中で話す内容を考え、文章にします。次に音を出すための筋肉に脳から信号が出され肺による空気量の調節や声帯筋が運動し音がでます。次に音を声として発する鼻や口、舌の動きが調節され声となります。声は耳の聴覚によって感じられ、そして脳で言葉を言葉として理解します。言葉を話し、人とコミュニケーションをとるためには上記のような発声に関わる機能だけでなく、思考や社会性の発達、心理的問題や自己観の形成も深く関わってきます。そのため、言語障害は話すことに必要な器官の障害というだけでなく、話すことまた聞くことに問題がある障害を指します。ことばの教室は、言語障害のある子どもを対象にしていますが、通級指導教室と特別支援学級で、その対象が少し違います。ではどのように違うのでしょう。参考書籍:ピーター・B.デニシュ (著), エリオット・N.ピンソン (著)『話しことばの科学―その物理学と生物学』東京大学出版会/刊通級指導教室のことばの教室も、特別支援学級のことばの教室も以下のような子どもが対象となります。1. 唇の断裂(口蓋裂)や、音を発声させる器官(構音器官)のまひなどによる機能的障害のある子ども例) 声が鼻にかかったり、鼻に抜けてしまう。”さかな”の発音が”たかな”になってしまうようにサ行やカ行がうまく発音できないなど。2.b吃音などの話し言葉におけるリズム障害のある子ども例) ”きんぎょ”を”き、ききんぎょ”と言葉を繰り返してしまったり、”き...んぎょ”など言葉が詰まってしまうなど。3. 話す、聞くなど言語機能の基礎的事項に発達の遅れがあり、言葉の順序や表現に偏りのある子ども4. その他に上記のような障害に当てはまる子ども5. 言語障害の原因が上記でなく、他に原因がある子ども■「通級指導教室」のことばの教室に通う場合通級指導教室へ通う子どもは、多くの時間を通常の学級で過ごします。つまり、通常級に籍をおきながら、支援が必要な課題(ある特定の困りごとや、その困りごとから来る学習上の問題)だけを改善するために通級指導教室へ通い、そのほかの授業や活動は通常の学級で行います。そのため、通常の学級での集団行動や教員からの指示の聞き取りがある程度できる子どもに向いているでしょう。■「特別支援教室」のことばの教室に通う場合特別支援学級へ通う子どもは、逆に大半の時間を少人数の特別支援学級で過ごします。通級指導教室に通う子どもは一部の困りごとに対して支援を受けますが、特別支援学級に通う子どもは、困りごとへの支援に加え、国語や算数、社会などさまざまな教科の授業をうけます。特別支援学級に通うのは、通級指導教室に通う子どもに比べて、個別の支援の必要性が比較的大きい子どもです。また、通常の学級が1クラス35~40人に対し、特別支援学級は8人と少人数の編成です。ですので、落ち着いた環境で心理的な安定を保ちながら指導を受けたい子どもに向いているでしょう。ことばの教室で受けられる支援は?出典 : ことばの教室ではさまざまな支援や教育を受けることができます。通級指導教室と特別支援学級で共通した支援もあれば、異なる支援もあります。それらの点について詳しく説明していきます。通級指導教室や特別支援学級では、個別指導計画と個別の教育支援計画を作成してもらうことができます。個別指導計画とは、子ども一人ひとりの困りごとや障害に合わせ、各教科の学習や、集団行動・生活の指導目標や指導内容・方法を示した計画です。この指導計画に基づき、さまざまな教員・関係者が共有し連絡を取り合いながら指導・支援が行われます。具体的には、担任の教員を中心に保護者や、特別支援教育コーディネーター、専門家といったさまざまな人が、子どもの障害の状態や課題、優先事項などを話し合い作成します。一方、個別の教育支援計画は、個別指導計画より長期的な視点に立ち、学校のみならず、家庭や余暇活動も含めて、具体的な支援の計画を示した計画書です。医療、教育、または福祉、就職などさまざまな機関に引き継がれ、一貫した支援が受けられるようになります。通級指導教室では、子ども一人ひとりの言語に関する困りごとを改善するための支援が受けられます。一方、特別支援教室では、言語に関する困りごとの改善とともに、言語障害を考慮しながら各教科の授業を手厚く行います。具体的にどんな支援かご説明していきます。■通級指導教室では?通級指導教室では、学習の遅れや補充をするのではなく、子ども一人ひとりの困りごとに合わせた教育や指導が行われています。言語障害があるために学習が進まない場合には、学習指導も行われます。例えば次のような指導が行われます。・発音に誤りのある子ども正しい発音を身につける練習、音を聞き分ける練習、唇や舌の動きをよくする練習、コミュニケーションの力を育てる指導などが行われます。・吃音のある子ども吃音について正しく理解する学習、吃音の友達と出会ったり、気持ちを話し合ったりする学習(グループ指導)、発達・認知面の力を育てる指導、コミュニケーションの力を育てる指導などが行われます。・言語発達遅滞のある子ども子どもの実態に合った教材を使って言語理解・表出する力を育てる指導、発達の評価、コミュニケーションの力を育てる指導などが行われます。国立特別支援教育総合研究所■特別支援学級では?特別支援学級では、通常学級で過ごす交流学級という時間もありますが、特別支援学級に通う子どもは多くの時間を特別支援学級で学びます。子ども一人ひとりの困りごとに合わせた指導・支援はもちろんのこと、各教科の学習についても指導や支援が行われます。たとえば、国語や算数ではどのような支援が受けられるのでしょうか。・国語読むことに対する支援として、言葉の意味や概念の理解を深めるために絵や写真を使いながら話したり、動作を実際にやってみて説明したりします。また、辞書を活用し、意味を調べ自分でまとめた辞書を作ったりすることもあります。聞くことに対する支援では、話す内容についてそのポイントや重要な部分をあらかじめ説明し、子どもが聞き取るべき部分がわかるようにします。書くことや話すことに対しての支援は、教員との会話のなかで実際に子どもが体験したことを口頭で文章化したり、作った文章をさらに書き起こしてみたりするなどの練習が行われます。・算数文章題などを解くとき、文章の内容や意図を理解することが難しい場合があります。そのような場合は、単語の意味を確かめたり、図や絵を通して理解を促していきます。また、類似の問題に繰り返し取り組んだり、逆に類似の問題を作ってみることで理解をより深めていきます。ことばの教室のクラス編成はどうなっているの?出典 : ■通級指導教室通級指導教室ではほとんどの場合一対一で指導が行われます。ですが集団の中での困りごとやコミュニケーションでの困りごとがある場合は集団で行われることがあります。■特別支援学級特別支援学級ではクラス定員は8人までと決まっています。ですので少人数学級で授業を受けられます。ことばの教室にはいろいろな人が関わっています出典 : ことばの教室では、通級指導教室や特別支援学級の教員だけでなく、保護者、医療スタッフなどさまざまな人が子どもの教育、指導、支援に関わっています。通級指導教室でも特別支援学級でも、必要に応じて、口腔外科医、言語聴覚士、歯科衛生士などの専門家から正しい発音の基礎となる口腔の状態について助言を受けることができます。一方で、保護者や教員は、通級指導教室と特別支援学級では子どもとの関わり方が少し違います。保護者通級指導教室の場合、多くは保護者が付き添いをし、時には一緒に授業に参加することもあります。一方、特別支援学級の場合は、保護者が希望しない限り一緒に授業を受けたりすることはありません。しかし、通級指導学級も特別支援学級もお住まいの学区以外の学校へ行く場合は保護者の送り迎えが必要となります。教員通級指導教室の場合、担任の教員と指導の教員が異なるため、連絡ノート交換、指導報告等を通して、子どもへの共通理解を図ってゆきます。一方、特別支援学級では担任の教員が指導を行う場合が多いので一貫した支援が受けられます。ことばの教室にはどうやって入るの?出典 : 未就学児で来年度からことばの教室を検討している場合未就学児で来年度からことばの教室を検討している場合、就学相談に行く必要があります。就学相談とは、通級指導教室や特別支援学級を含めた特別支援教育を受けるためにお住まいの教育委員会と話し合いの場をもうけ、子どもにとって最適の学びの場を考える機会です。一般的に就学相談は早い地域で幼稚園・保育園の年長の春から、遅くとも秋ごろには始まります。就学相談については、お住まいの教育委員会の窓口まで問い合わせてみましょう。就学していて言語障害が気になり、ことばの教室を検討している場合まずは担任の教員に相談してみましょう。そこから教育相談をすすめられたり、特別支援教育コーディネーターを紹介してもらったりします。そして、一般的にはことばの教室の指導員の方などと面談をし通学の必要性が検討されます。まとめ出典 : ことばの教室では言語障害のある子どものサポートをしています。言語障害といってもさまざまな困りごとや課題を抱える子どもがいます。通級指導教室と特別支援学級の特徴をとらえながら、子ども一人ひとりにあった学びの場を考えてみましょう。
2016年12月15日LITALICO初の書籍が発売!Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)発達ナビの運営会社である株式会社LITALICOの代表、長谷川敦弥の新著が発売されました。SB新書から、『発達障害の子どもたち、「みんなと同じ」にならなくていい。』というタイトルでの発売です。LITALICOがこれまで学習支援や就労支援のサービスの中で出会ってきた方々のエピソードを中心に、それぞれ違った個性を持った方たちが、どのように自分にあった学び方、働き方を見つけていったのかをご紹介するとともに、多様な個性が活かされる「障害のない社会」とはどのような社会なのか、私たちのビジョンや想いを記した書籍です。発達ナビ編集長である私も、この書籍の構成・編集に携わりました。これまで、発達が気になる子どもたちの学習支援教室や就労支援センターの現場スタッフとして、また自分自身の特性に悩んだ日々も思い出しながら、同じようにご自身やお子さんの将来について悩める方々に届けられるようにと編集させていただきました。『発達障害の子どもたち、「みんなと同じ」にならなくていい。』新著の構成と見所は?以下では、書籍の構成とともに、各章の見所をご紹介します。『発達障害の子どもたち、「みんなと同じ」にならなくていい。 』第1章:ADHDはぼくの強み第2章:子どもが一番の先生だ!第3章:子どもの心に火をつける第4章:「多様性」を力に変えていく働き方第5章:障害のない社会をつくる-------------第1章は、LITALICO代表である長谷川敦弥自身の人生のエピソードです。ADHDの特性を強く持つゆえに、周囲との関わりに悩んだ幼少期の学校生活。人生の転機となる焼肉屋の店長夫妻との出会い。上京後、自身のADHD的特性を活かして働き、LITALICOを運営するに至るまでの歩みをお伝えします。第2章は、発達支援の教室「LITALICOジュニア」で出会った子どもたちのエピソードです。「困った子だ」「問題児だ」と言われているその子自身が、実は一番困っている。お子さんの特性を理解し、その子が過ごしやすい環境づくりをしたり、その子ならではの学習方法を探して成功体験を積み重ねることの重要性などについてお話します。第3章は、IT×ものづくり教室「LITALICOワンダー」で出会った子どもたちのエピソードです。学校で決められた「枠」からはみ出る子どもたちが、自分の「好き」や「得意」を伸ばしていくことで、苦手を克服したり、新たな進路を切り開いていったエピソードをご紹介します。第4章は、働くことに障害のある方を支援する「LITALICOワークス」の利用者さんのエピソードです。困難と直面しながらも自分らしい働き方を諦めずに探し続け、一人一人違う自分だけの「天職」を掴み取るまでの過程をご紹介します。ご自分の特性や働き方に悩まれている大人の発達障害当事者の方だけでなく、お子さんの将来について悩まれている保護者の方の姿を思いながら、執筆・編集いたしました。第5章は、こうした取り組みを続ける中でLITALICOが大切にしている思い、発達ナビなどのメディア発信や、研究・政策提言活動を通して、「障害のない社会」をどのように実現していきたいかを記しました。発達ナビ読者のみなさまにも、ぜひお読みいただきたい内容となっております。書店やネットショップで手に取っていただけると幸いです。『発達障害の子どもたち、「みんなと同じ」にならなくていい。』立ち読みページ『発達障害の子どもたち、「みんなと同じ」にならなくていい。』
2016年12月12日子どもの発達が気になるとき、「おやじ」達には何が出来る?出典 : 発達が気になるお子さんの子育てについて、父親の立場からの視点や体験談はまだまだ世の中に少ないのが現状です。・発達障害がある子どもの子育てにおいて、父親が果たせる役割にはどんなものがあるの?・子どもの発達が気になるきっかけやその後の反応は、父親と母親ではどのように捉え方が違うの?・夫婦(パートナー)間でのお互いのサポートはどうすれば良いの?そんな悩みを抱えられているご家庭も多いのではないでしょうか。そこで今回は、ご自身のお子さんにも軽度知的延滞を伴う自閉スペクトラム症があり、同じく発達障害のある子どもを持つ父親同士のネットワーク「おやじりんく」を立ち上げた金子訓隆さんと、長年、発達障害のある子どもの家族支援の実践と研究を重ねてきた、鳥取大学大学院の井上雅彦教授のお二人にお話をいただきます。お子さんの発達が気になるご家族、特に「おやじ」の皆さんのご参加をお待ちしております!平日の夜、仕事終わりにも参加しやすい時間帯です。他にも、この分野に関心のある方々は大歓迎です!ご参加いただける方は、以下の概要を確認の上、申し込みフォームをご提出ください。ゲスト①: 金子訓隆NPO法人「おやじりんく」代表理事Upload By 発達ナビ編集部■金子訓隆(かねこのりたか)NPO法人おやじりんく代表理事10歳の息子、真輝君が軽度知的延滞を伴う自閉スペクトラム症であることから、発達障害支援について我が子の子育てを通じて学んでいく。その後、ブログやSNSを通じて交流し、発達障害児を抱える父親たち10人で2012年11月に特定非営利活動法人おやじりんくを設立。現在は父親視点から障害児・者の自立・就労に向けた支援活動を行っており、同団体で放課後等デイサービス「輝-HIKARI-」を埼玉県内で4か所を運営。精力的に支援活動を行っている。NPO法人おやじりんくホームページ >> 法人「おやじりんく」ホームページゲスト②: 井上雅彦鳥取大学大学院教授Upload By 発達ナビ編集部■井上雅彦(いのうえまさひこ)鳥取大学大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授LITALICO研究所 所長(アドバイザー)応用行動分析学を理論的基盤として「環境」と「個人」の相互作用から「行動」を捉え、さまざまなレベルでの「障害」や「不適応状態」について、「環境」と「個人」の両方向からの心理的支援や教育を研究。『家庭で無理なく楽しくできる生活・学習課題46―自閉症の子どものためのABA基本プログラム (2008年,学研)』、『8つの視点でうまくいく!発達障害のある子のABAケーススタディ―アセスメントからアプローチへつなぐコツ(平澤紀子・小笠原恵共著,2013年,中央法規出版)』など著書多数。研究所ホームページ対談イベント「発達障害のある子どもに父親ができること」概要【日時】2016年12月22日 (木)18:30 開場19:00 開始【場所】株式会社LITALICO東京本社〒153-0051東京都目黒区上目黒2-1-1中目黒GTタワー15F株式会社LITALICOアクセス【定員】80名【参加費】無料※別途、実費1,000円で任意参加いただける懇親会も予定しております。【タイムテーブル】18:30開場19:00開演のご挨拶、諸連絡19:10金子訓隆さん・井上雅彦教授対談〜発達障害のある子どものために、父親ができること〜20:30質疑応答20:45懇親会※タイムテーブルは現状の仮予定です。開始時間は変更しませんが、講演と質疑応答の時間配分を多少変更する可能性がございます。【備考】※1 お申し込み多数の場合、先着順で申し込みを締め切らせていただく場合がございます。※2 遠隔地のためご出席できない方向けのネット中継も予定しております。配信チャンネルは、発達ナビ会員様向けのメールマガジンにて、イベント前日にお知らせいたします。配信観覧ご希望の方は、事前に発達ナビ会員へのご登録をお願いします。※3 先着順、人数が上限に達した時点で応募〆切となります。ご応募いただいた方には参加の可否を1週間以内にご連絡いたしますので、h-navi.jpドメインからのメールを受信可能なメールアドレスでのご登録をお願いいたします。※4 当日、会場での託児サービスはご提供しかねますので、ご了承ください。発達ナビ対談イベント「発達障害のある子どもに父親ができること」申し込みフォーム発達ナビ新規会員登録ページQ&Aコーナーで、ゲストへの質問を募集します!今回の企画に連動して、発達ナビのQ&Aコーナーでは、ゲストのお二人に対する質問を募集します!皆さま、ふるってご投稿ください!※いただいたご質問や体験談は、事前にゲストのお二人にお読みいただきますが、時間の関係上、対談の時間中に全てのご質問にはお答え出きかねますこと、ご了承ください。発達ナビQ&A 金子さん・井上教授への質問大募集!
2016年12月07日息子は来年小学生。主治医から就学に向け、言われたアドバイスは出典 : 私の息子には発達障害の診断が降りています。息子が2歳頃まで、私には気持ち休まる時間がありませんでした。多動で動き回り、癇癪で泣き続ける声にどうしたら良いのか分からず、思わず「うるさい!!」と泣いてしまったこともありました。そんな息子が、来年度いよいよ小学校に入学します。自由保育の幼稚園で先生方にしっかりと支えて頂きながらのびのび育ち、困りごとは今でも形を変えて継続していますが、大変さの度合は以前と比べものにならないほど和らぎ、6年間で別人のように成長しました。しかし、就学について発達外来で相談したとき、ずっと息子を診てくださっていた医師の先生からこんなことを言われたのです。「普通級でも支援級でも、お母さんのお考えに任せます。ただ1つだけ言えることは、小学校に上がると上からガツーンと押さえつけられるような叱られ方で、一気に二次障害に陥ってしまう子もたくさんいるんです。息子君がここまで成長できたからこそ…気を付けてあげてください。」このときの先生のやるせなさそうな顔を、今でもふっと思い出すことがあります。そして迎えた就学時健診。じっとしていられない息子の衝動性はピークに達し…出典 : そして、就学時健診で小学校に息子を連れていったとき、私はこの先生の言葉を噛みしめることとなりました。ほとんどの先生たちが来年入ってくる可愛い小さな子どもたちに、穏やかでわかりやすい指示を心がけていらっしゃいました。うちの息子は、学校に貼ってあるポスターを見て先生を質問攻めにし始めたかと思えば、教室に置いてある本を読み始め、返事もせず…という場面が何度かありました。そのとき、恐れていたことが起こりました。私が受付をする間、衝動性がありじっとすることのできない息子は、健診で使う道具をパッと手に取ってしまったのです。出典 : それを見ていた受付の先生は、大きな声で「さわるな!!!」と怒鳴りました。あまりの大きな声に、私ですらビクッとしてしまいました。息子はその先生の大きな声にパニックに。その拍子にまた別の器具を触ってしまいました。先生はさらに畳みかけるように大声で「おい!!さわるな!!!」と怒鳴りました。息子の顔を見ると真っ青。その直後、体育館の床にうずくまってしまったのです。「小学校って最悪」「ぼく怒鳴られた」「怒鳴る先生がいるなら僕は小学校なんて行きたくない」帰り道、息子は真っ青な顔をしながらそう言ったのでした。子どもの成長を阻まないで…!発達障害児と関わる先生に知ってもらいたい、3つの大事なこと出典 : 健診で起きた事件を振り返り、私は学校の先生にも知っていてほしいな、と思ったことがあります。それは、発達障害児に怒鳴っても、百害あって一利なしということです。発達障害児を特別扱いしろ、優しくしろと言っているわけではないですし、発達障害児の逸脱行動を無条件に受け入れて欲しいと思っているわけでもありません。まずは発達障害児に厳しく怒鳴ると、どんなことが起こるのか?私の息子を例に挙げ、詳しくご説明したいと思います。■1. 多くの発達障害児は耳に入る音や身体に触れられることに敏感です息子の場合は聴覚・触覚・味覚に過敏性があります。女の人の甲高い声や男の人の大声は、耳元でドラを鳴らされたかのように大音量に響いているようです。耳元で大音量で聞こえる人間の声にパニックになると、指示はほとんど聞き取れないそうです。こうなると、冷静に行動することは難しくなります。■2. 気持ちの切り替えが苦手です息子は気持ちの切り替えが苦手で、怒鳴られて不快な気持ちになってしまうと、そこからなかなか抜け出すことができません。不快な気持ちをなんとかするため、パニックになるのだそうです。また、嫌な記憶は数年経っても鮮明に残り、フラッシュバックとなって本人を苦しめ続けます。息子はこのフラッシュバックの影響で、新しいことにチャレンジしようという気持ちがなかなか起こらないようでした。■3. 極端な考え方をする傾向があります発達障害の子は極端な白黒思考の子が多いようです。息子も1度嫌なことがあると、「ここは嫌な場所だ」とか「先生に怒鳴られた自分はダメだ」という考えになり、後からどれだけ励まそうが説明しようが、辛い記憶に引きずられて一気に思考がネガティブな方向へ傾いていきます。それまで「この場所は楽しいところだ」と思えるよういろいろな準備や工夫をしていても、1回嫌な体験をしたら、その思い出は嫌な記憶になるようです。このネガティブ思考を、程よいところまで戻すためには、たくさんの励ましと成功体験が必要になってきます。怒鳴るより簡単!発達障害児に伝わる、指示のコツ出典 : 発達障害児に指示をする場合、怒鳴って言い聞かせるよりもずっと簡単な方法があります。それが、CCQというテクニックです。CCQとは、C(Calm) = 穏やかな声でC(Close) = 子どもに近づいてQ(Quiet) = ゆっくりと話してというものです。うちの息子も、このテクニックを使えばすぐに理解し、サッと指示を聞いてくれます。私たち親が発達障害児を育てる中で、怒鳴りたくなることは日に1度や2度ではありません。でも、怒鳴ったところで自分も子どもも辛いだけだとわかっているので、「どうしたら怒鳴らずに、育てていけるか?」ということに日々頭を悩ませています。子どもの笑顔と成長を促すため、必死に悩み、育ててきました。だから正直、簡単な気持ちで怒鳴らないで欲しいな…と思うのです。学校の先生、どうかパニックになっている子どもたちを、行儀が悪いと睨みつけないでください。適切な方法で指示を出せば、子どもも落ち着いて行動できるでしょう。もし指示がわからなかったとしても、穏やかに話しかけられれば、パニックになることはグッと減るはずです。子どもの成長を願うのは、親も先生も同じ。そのための方法は、1つとは限らないと思います。
2016年12月01日発達障害とは出典 : 発達障害とは、先天的な脳機能の障害で、想定される時期に年齢相応の発達が見られない、または年齢相応のスキルが獲得できないことで起きる障害を指します。その症状は、通常低年齢の発達期において発現します。2005年4月に制定された発達障害者支援法では発達障害は以下のように定義されました。この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。発達障害はいくつかのカテゴリーに分類され、診断基準によって多少異なりますが、大きく分けて「広汎性発達障害(PDD)」「ADHD(注意欠陥・多動性障害)」「学習障害(LD)」の3つに分類されます。広汎性発達障害には自閉症やアスペルガー症候群などのコミュニケーションの障害が含まれますが、アメリカ精神医学会の診断基準である『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)では自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)という障害名に統合されています。また『DSM-5』ではADHDは注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害、学習障害は限局性学習症/限局性学習障害という診断名となります。これらの発達障害の中には知的障害が併存する場合もあります。Upload By 発達障害のキホン発達障害の原因は?出典 : 発達障害の症状は、先天的な脳機能障害が原因となって生じます。ですが、その詳細なメカニズムや、なぜその脳機能障害が引き起こされるのかははっきりとは解明されてはいません。研究が進み、発達障害の一部について証明された事実であったり、関連が指摘された要因については少しずつわかってきました。ですが発達障害の症状は様々であり、原因も多様であると考えられ、全ての人に当てはまる原因はないのではないかとも言われています。一方で、かつて言われていた「親のしつけ方・育て方が悪い」「親の愛情不足」といった心因論は現在では医学的に否定されています。以下に、現在考えられている発達障害の原因とそのメカニズムをご紹介します。発達障害の原因はまだはっきりとは解明されていないものの、発達障害を引き起こす脳機能障害には遺伝的要因が関連している可能性が指摘されています。例えば、広汎性発達障害に関しては、1970年代から盛んに双生児研究が行われ、一卵性双生児間では発現率が5~7割ほどという研究結果が多くあります。この数値は二卵性双生児の場合より高いと言われています。一卵性双生児は遺伝子情報が同じです。その一卵性双生児で一人が広汎性発達障害だと二人とも広汎性発達障害になる可能性が高いという結果が出たことは、何らかの遺伝子要因が広汎性発達障害と関連があることを示唆しています。また現在では、遺伝子研究が進み、染色体の一部分の重複により生じる発達障害があることや、それに関連する遺伝子がいくつか発見されています。ですが、一卵性双生児間での一致率が100パーセントではないことなどから、発達障害が単純な遺伝的要因だけで発現するわけではなく、現在では関連する遺伝子が複数あることもわかってきました。また、「親の育て方」という説や、MMRワクチンの接種が原因とする説など、研究の結果否定された環境要因もありますが、子どもの心身は、胎児期から発達期にとる睡眠や栄養、周りの人との関わりといった様々な要因によって支えられ、発達していきます。そのため、環境要因が全く関わりがないと考えることはできません。これらのことから、現在、発達障害にはなんらかの遺伝的要因が関わっているが、その他のさまざまな環境要因と複雑かつ相互に影響し合って発現するという考えが主流になっています。つまりある特定の遺伝子があれば必ず発症するというわけではなく、また遺伝的な要因と言っても親から子へ単純に遺伝するという意味ではないのです。さらに発達障害は、1つの原因による1つの道筋ではなく一人ひとり違った道筋を経て発症すると考えられ、全ての人にあてはまる要因を解明するのは難しいのではないかとも言われています。発達障害はどうやって発症するの?出典 : 発達障害が発症し、それが明らかになるまでには以下のようなステップがあります。1. 発達障害のもととなる脳機能障害が生じる発達障害はなんらかの遺伝的要因をもつ、つまり発達障害になりやすい体質が先天的にある人が、胎児期や出生後に脳や心身が発達する中で様々な要因の影響を受け、脳機能障害を生じることで起こると言えます。2. 脳機能障害により認知や感覚の偏りを引き起こされるそうした脳機能の障害や偏りによって、認知の方法や感じ方に違いが生まれ、それが様々な行動特性を引き起こすのではないかと言われています。例えば、情動を認知したりコントロールをする前頭葉や扁桃体などの機能に障害があり、そのために気持ちのコントロールやコミュニケーションをとるのが難しいのではないかという説もあります。また、発達障害のある人は記憶の仕方に特性があるといわれています。そのために非常に記憶力が高かったり、ワーキングメモリと呼ばれる情報の処理や記憶の仕組みにトラブルがあったりする人がいます。刺激を認識する機能になんらかのアンバランスが生じる人もいます。たとえば刺激を感じやすい感覚過敏や、逆に刺激を感じにくい感覚鈍磨がある場合もあります。3. 発達の遅れなどの症状が現れ、問題や困りごとが明らかになる発達障害の症状の発現時期は人によって異なります。最近では早期にそのリスクを発見するため、特に自閉症スペクトラムや広汎性発達障害などではアイ・トラッキング・システムなどを使い、初期症状を見つけるための研究も進められていますが、一般的には症状が顕著に発現するのは幼児期頃からと言われています。乳児期には周りの子どもとコミュニケーションをとったりすることもあまりなく、また個人差も大きい時期なので、はっきりとはわからないことも多いのですが、集団参加や社会的な機能が要求される時期になると、行動面や対人関係・社会性の側面でなんらかの症状が目立ち始めると言われています。きっかけとしては以下のような場合に、発達障害がある可能性に気づき、なんらかの支援を受けることが多いようです。・1歳半や3歳健診などの乳幼児健康診査や小児科などで発達の遅れを指摘される・園や学校に進んで集団生活がはじまり、コミュニケーションなどで困りごとが起きる・子育ての悩みを相談するまた、学習障害の症状の発現時期については、目立った症状が見られるようになるのは読み書きを覚え始める就学前の年齢になり、学習を開始してからだと言えます。また、幼少期の特性の偏りは単にその子どもの苦手や不得意に分類される可能性があり、区別が難しいため診断が遅れる傾向があります。障害が軽度の場合や特に困りごとが起きなかった場合など、見過ごされてそのまま成長することもあります。中には子どもの頃に気づかず、大人になってから広汎性発達障害と診断された方もいます。不安障害やうつ病などの気分障害・睡眠障害などのいわゆる二次障害と呼ばれる症状や状態となり、その検査を通して発達障害に気づく人もいます。発達障害の理解とl対応広汎性発達障害/自閉症スペクトラム・ADHD・学習障害、それぞれの原因は?出典 : 自閉症スペクトラム(ASD)や広汎性発達障害に含まれるグループについては、現段階では正確な原因は解明されていませんが、脳機能の障害により症状が引き起こされるといわれています。その脳機能障害は、先天的な遺伝要因と、様々な環境要因が複雑かつ相互に影響し合って発現するというのが現在主流となっている説です。最も中心的な関連遺伝子と考えられているのが、シナプスの形成とシナプスの機能にかかわるタンパク質をつくるために必要な情報にかかわる遺伝子です。たとえば、シナプスの形成に関与する遺伝子であるNLGN3やNLGN4、これらと機能的にかかわりの深いSHANK3などが自閉症スペクトラムとの関連が指摘されています。つまり、シナプスにおける神経伝達の軽微な異常によって、自閉症スペクトラムに見られる精神発達に障害が引き起こされると考えられています。(飯田順三/編・著『アスペルガー症候群の子どもたち』合同出版,2014年/刊p.95~96より引用)上記を含め、自閉症スペクトラムの関連遺伝子が数多く報告されています。ですが、さまざまな遺伝子が複雑に関連しているため、現時点では、原因となる遺伝子を完全に特定することはできてはいません。かつて広汎性発達障害に含まれていたレット障害(レット症候群)についてはX染色体上に存在する遺伝子の突然変異が原因だということが発見されました。1999年にMECP2という遺伝子が主な原因遺伝子であることが発見され、その後2004年にCDKL5、2008年にFOXG1という原因遺伝子も発見されています。そのため自閉症スペクトラム障害の概念から除外されました。また、広汎性発達障害や自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害の症状を引き起こすと考えられる脳機能の偏りとしては以下のような説があります。1. 脳領域間の機能的連結低下脳内のネットワークの連結機能がうまくいかず、定型発達の人の場合と比べて機能が低下していることから自閉症スペクトラム障害になるのではないかという説があります。2. 社会的な活動をするための脳の部位の機能異常人の脳には部位ごとに役割があります。その中に社会的な活動をするために使う部位もあり、以下のような部位に異常が起きたり働きが弱かったりするため、うまく人の表情や感情が理解できないのではないかと言われています。・扁桃体(へんとうたい)…人の表情を認識し感情を読み取る部位です・紡錘状回(ぼうすいじょうかい)…紡錘状回は人の顔を認識する部位です・上側頭溝…人の目や口などの部位の動きを認識する部位です・前頭葉…前頭葉にはミラーニューロンと呼ばれる神経が存在しており、人に対する「共感」の感情に関わっています3. 小脳の異常小脳は、平衡感覚や強調運動などに関わっていると言われています。そのため小脳に異常が起きると、バランス感覚をあまり持てなくなると言われています。ほかにも、小脳に異常が起きると感情や認知にも影響があるのではないかと報告されていますし、自閉症スペクトラム障害の中には実際に小脳への異常が見られた人もいます。4. 脳内物質の異常自閉症スペクトラム障害では、脳内物質に異常があるという報告があります。普通の人と比べて、血中オキシトシンが低い、セロトニンが高い、血中グルタミン酸が高いという違いが見られたという研究があります。ADHDの症状が起こる確かな原因はまだ解明されていませんが、ADHDには複数の関連遺伝子が素因としてあり、それらが様々な道筋をたどって、このような特有の脳機能の偏りを引き起こし、ADHDの症状につながるのではないかと言われています。現在有力だとされている素因は脳の前頭野部分の機能異常です。近年の研究から、ADHDの人は行動等をコントロールしている神経系に機能異常があるのではないかと考えられています。前頭葉は脳の前部分にあり、物事を整理整頓したり論理的に考えたりする働きをします。この部位は注意を持続させたり行動などをコントロールさせたりします。ADHDの人は、この部分の働きに何らかのかたよりや異常があり、前頭葉がうまく働いていないのではないかと考えられています。前頭葉が働くためには、神経伝達物質のドーパミンがニューロンによって運ばれなくてはいけません。しかしADHDの人の場合ニューロンによってドーパミンがうまく運べず前頭葉の働きが弱くなってしまい、それが原因で「多動」「衝動」「不注意」の3つの特徴が現れると考えられています。ADHDの人は五感からの刺激を敏感に感じ取ってしまう傾向がありますが、それも前頭葉の働きが弱いからだと言われています。思考よりも五感からの刺激を敏感に感じ取ってしまい感覚を過剰に感じてしまうので、論理的に考えたり集中するのが苦手となると考えられています。出典 : 学習障害の症状を引き起こす具体的な脳機能障害としては、中枢神経のトラブルが仮説の中でも最も有力と言われています。脳は無意識に感覚器官から入ってきた情報を処理し、整理して記憶します。そして必要に応じてその情報を取り出します。文字を読んだり書いたり、計算をしたりといった学習にはこれらの働きが必要です。中枢神経は脳や脊髄、体の様々な部分の働きを指令する部分であり、これらの情報処理を担っています。そのため、この機能のトラブルが学習障害の困難を引き起こすのではないかと考えられています。この説の検証が難しい理由は、医学的に検査を行っても分からないほどの小さな異常が原因とされているからです。発達障害を検査する方法はあるの?出典 : 現在の医学では妊娠中の羊水検査、血液検査、エコー写真などの出生前診断で判明することはありません。また、出生後も遺伝子検査や血液検査といった生理学的な検査では診断できません。これは、発達障害の原因が完全には解明されておらず、またその原因も複雑で単一ではないと考えられるためです。今後も生理学的な検査方法を確立するのはかなり難しいとも言われています。発達障害の人の多くが幼児の頃から12歳ぐらいの間に何らかの困りごとや症状をきっかけに専門機関を相談・受診し、医師によって発達障害だと診断されます。診断は問診と心理検査・知能検査などの様々な検査を総合的に判断して行われます。その他MRIを使い脳の器質的な疾病がないかを確認する場合もあります。検査や診察は一度ではなく、何度か行われたうえで慎重に診断が下されることが多いのです。発達障害は治療できるの?出典 : 発達障害を完全に治療する薬や手術などの医学的な方法は現在ありません。しかし、障害の特徴を緩和させたり、本人の困りごとを改善する方法はいくつかあります。例えば環境調整を含めた心理・社会的アプローチや症状を和らげるための薬の使用などです。早期からの療育は症状改善に大きな効果があるとされています。各都道府県に設置された「保健福祉センター」などで相談すると、適切な医療機関や児童発達支援なども紹介してもらえます。療育的支援では、苦手な部分をサポートしたり得意なことを伸ばすような訓練を受けることができます。適切なコミュニケーションの取り方や自己コントロールを学び、苦手な部分に対する対処法を身に付け自信をつけることで、困りごとを減らし二次障害の予防に繋がります。二次障害とは、適切な治療やサポートを受けられない場合に、うつや不安障害、不登校やひきこもりなど障害の主症状とは異なる症状や状態を引き起こしてしまうことを指します。ペアレントトレーニングと言って、発達障害の子どもを持つ親のためのトレーニングを実施している機関もあります。親が適切に接することで、子どもが日々感じている困難を軽減し、症状の改善に繋げます。また、特別支援教育や通常の教育のなかでも環境調整や合理的配慮を行いながら、一人ひとりに合わせた支援が行われます。発達障害の人の中には、こだわりや集中力を活かして高い専門性を身につけたり、優れた才能を持っている人もいます。才能・いいところを伸ばせるような教育が求められます。多動性や衝動性が強い子どもの場合、服薬を取り入れることもあります。脳内の神経伝達物質の不足を改善する働きがあり、症状がやわらぎます。症状が緩和することで、衝動的な行動で周りの友達と関係が築けず、孤立してしまう悩みなどが要因ともなる二次障害も予防できます。薬の服用で困難さが軽減されることで、本来の能力を発揮できるようになり、自分に自信が持てるようになるケースもあります。薬を服用している間は落ち着いて話を聞くことができるので、その間にスキルトレーニングを行い、本人の能力を高められるように親は努めましょう。しかしながら薬には合う合わないもあり、副作用が働いてしまう場合もあります。薬の利用は主治医とよく相談し、納得した上で用法・用量を守って進めるようにしましょう。また薬を利用したとしても、行動面や学習面での親や教育者からのサポートは引き続き必要です。まとめ出典 : 発達障害の原因を探ることは、治療法の開発・研究のためにはとても大切であり、世界中の研究者が日々、研究を進めています。その成果が少しずつ明らかになってはいるものの、いまだにわからないことが多いのが現状です。また、発達障害が発症する道筋は一つではなく、複雑な要因が絡み合っていると考えられるため、すべての人に当てはまるたった一つの原因は今後もわからないのではないかという考え方が主流となっています。ただ、ひとつ確かなことは、発達障害は、親や本人のせいで起きるものではないということです。目の前の子どもにとって大切なことは、どうしたら本人の困りごとがなくなるか、特性を生かしていけるかという対応方法を考えてみることです。一人ひとりの子どもの発達障害の特性は様々なバリエーションがあります。保護者や支援者が一人で悩み考えるのではなく、地域の相談機関や専門家と繋がりながら解決していきましょう。地域情報|発達ナビ日本小児神経学会 「発達障害診療医師名簿」参考文献:鷲見聡/著『発達障害の謎を解く』日本評論社/刊参考文献:日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル 』医学書院/刊参考書籍:宮本 信也 , 竹田 一則 /編著『障害理解のための医学・生理学』明石書店/刊参考書籍:服部 陵子/著『Q&A家族のための自閉症ガイドブック―専門医による診断・特性理解・支援の相談室』明石書店,2011年/刊飯田順三/編・著『アスペルガー症候群の子どもたち』合同出版,2014年/刊せせらぎメンタルクリニック 「アスペルガー症候群の原因。アスペルガー症候群はなぜ生じるのか」松浦こどもメンタルクリニック 「ADHD」参考書籍:中山和彦・小野和哉/著『図解よくわかる大人の発達障害』ナツメ社,2011年/刊
2016年11月25日発達検査とは?出典 : 発達検査とは、子どもの心身の発達の度合いを調べる検査のことです。検査結果から子どもの発達の特徴が分かったり、普段の接し方のヒントを得ることができたりと、子どもの育ちに関する参考情報を得ることができます。発達の遅れや凸凹からくる困難に応じて子どもをサポートする療育支援なども、発達検査の結果をもとに計画を立てられることが多いです。一般的には、幼稚園や保育園などの教育機関で発達の遅れがあることを指摘されたり、乳幼児健診や医療機関にかかった際に、検査をすすめられることが多いです。もちろん、家庭での様子から、子育て支援センターなどの相談機関に問い合わせて検査を受ける方もいらっしゃいます。発達検査は発達障害の確定診断を行う検査ではありません。発達障害の確定診断に際しては、生育歴や行動観察などの臨床診断と、発達検査・知能検査などの専門診断の結果を経て、総合的に診断されます。よって、発達検査の結果のみで発達障害だと診断されることはありません。確定診断の判断要素として発達検査の結果を参考にしています。発達検査にはさまざまな種類が存在していることから、検査ごとに検査結果の表現方法や評価の仕方が異なります。さらに医師や医療機関ごとに取り扱っている検査も異なるため、受けたい検査がある場合は、お近くの受診機関が対応しているかどうかを事前に問い合わせるとよいでしょう。ここでは発達検査に最も使用されている「新版K式発達検査」と「乳幼児精神発達診断法」について、主に紹介していきます。発達検査って具体的にどんな検査をするの?出典 : 発達検査にはさまざまな種類があります。・新版K式発達検査・乳幼児精神発達診断法・日本版Bayley-III乳幼児発達検査・ASQ-3・KID乳幼児発達スケール・ブラゼルトン新生児行動評価法・日本版デンバー式発達スクリーニング検査など、多種多様な検査があります。この中でも現在、日本で使用されることが多い検査は「新版K式発達検査」と「乳幼児精神発達診断法」です。年齢において一般的と考えられる行動や反応と、対象児者の行動や反応が合致するかどうかを評価する検査です。検査は、「姿勢・運動」(P-M)、「認知・適応」(C-A)、「言語・社会」(L-S)の3領域について評価されます。なお、3歳以上では「認知・適応」面、「言語・社会」面の検査に重点が置かれます。検査結果としては、この3領域の「発達指数」と「発達年齢」が分かります。また乳幼児向けの検査用具には、振ると音が鳴るガラガラや積木、ミニカーといった乳幼児にとってなじみのある材料が使われています。このような検査用具を使うことによって、子どもの自然な行動が観察しやすい検査となっています。検査者は検査結果だけでなく、言語反応、感情、動作、情緒などの反応も記録し、総合的に判断します。■適用年齢:生後100日後から成人■時間:約15~60分程度■形式:1対1(検査者と被検査者)の個別式検査■料金:公的病院でおおよそ840円(保険診療・3割負担の場合)乳幼児精神発達診断法は、上記と同様に年齢と発達の度合いの比較を行い、実際の年齢とどのくらい差があるかを評価する検査です。新版K式発達検査と異なる点は、面接者が保護者に対して子どもの様子を個別に面接し、各項目について尋ねることで行われる点です。乳幼児精神発達診断法では検査した項目と月年齢を軸にした図である「発達プロフィール」を作成します。子どもに直接検査を実施する方法に比べて、子どもの状態や障害に左右されることがなく、普段の生活の状況に基づいて判断されることになります。なお「津守・稲毛式乳幼児精神発達診断法」と「遠城寺式乳幼児精神発達検査」のふたつがありますので、追って説明していきます。■津守・稲毛式乳幼児精神発達診断法「運動」「探索」「社会」「生活習慣」「言語」の5領域の438の質問項目から構成されています。適用年齢別に「1~12か月まで」「1~3歳まで」「3~7歳まで」の3種類の質問紙を用いて検査・面接を行います。なお5領域ごとに「発達年齢」が算出されます。・適用年齢:生後1ヶ月から7歳まで・時間:約20分程度・形式:母親など子どもの養育者に個別面接■遠城寺式乳幼児精神発達診断法「運動」「社会性」「理解・言語」の3領域6の質問項目から構成されています。0歳0ヶ月から検査を受けることができます。・適用年齢:0歳0ヶ月~4歳8ヶ月まで・時間:約15分程度・形式:母親など子どもの養育者に個別面接国立特別支援教育総合研究所発達検査の結果から分かること出典 : 発達検査の検査結果から子どもの発達の度合いが示された「発達プロフィール」と「発達年齢」「発達指数」などの数値結果を知ることができます。発達検査の中でも乳幼児精神発達診断法では検査項目と月年齢を軸にした「発達プロフィール」が作成されます。発達プロフィールは下記の例のように折れ線グラフのように記され、このプロフィールの発達の全般的な遅れや、発達障害の特徴を把握することが可能です。発達障害がある子どもの場合は、一定のプロフィールパターンがあることから診断の参考に使用されています。発達検査の中でも、乳幼児精神発達診断法では検査項目と月年齢を軸にした「発達プロフィール」が作成されます。発達プロフィールは折れ線グラフのように記され、発達の全般的な遅れや、発達障害の特徴を把握することが可能です。発達障害がある子どもの場合は、一定のプロフィールパターンが見られる傾向があることから、診断の参考に使用されています。また津守・稲毛式乳幼児精神発達診断法では「発達年齢」が分かります。新版K式発達検査では「発達指数」と「発達年齢」の2つの数値結果が分かります。「発達指数(Developmental Quotient:DQ)」は認知面・社会性・運動面などのいくつかの観点から発達の度合いを示していて、「発達年齢(Developmental Age:DA)」は、検査を受けた方の精神年齢を示すものです。のちにADHD(注意欠陥・多動性障害)と診断された3歳2カ月の女の子の検査結果の例です。次女の検査結果は次の通りでした。(1)「姿勢・運動領域」発達指数:96(発達年齢:3歳1ヶ月)(2)「認知・適応領域」発達指数:101(発達年齢:3歳3ヶ月)(3)「言語・社会領域」発達指数:75(発達年齢:2歳5ヶ月)(4)「全領域」発達指数:88(発達年齢:2歳10ヶ月)結果は、検査時点での発達状況を換算した『発達年齢』と、生活年齢と『発達年齢』との比率である『発達指数』で表されます。『発達指数』は、その年齢の平均を100で表されますが、実際にはある程度幅があるそうです。各項目ごとに発達指数と発達年齢が分かります。しかし、これらの数値が分かっても具体的に家庭や学校などで、どのような配慮や療育、学習を行えばいいのか分かりませんよね。そのような具体的な接し方などを示してくれるのが「検査報告書」です。発達検査には検査後にやるべきことを示してくれる「検査報告書」というものを受け取ることができます。「検査報告書」を依頼すると1. 検査結果の数値2. 検査結果からいえること3. 日常生活上配慮していただきたいことなどが記載された報告書を作成してもらえます。子どもに対して、日常的にどのような配慮をしたり、療育支援を行っていくのが良いかの参考となるでしょう。無料で「検査報告書」を発行してくれる機関もありますが、有料で発行している機関もあります。検査形態や「検査報告書」の費用は機関によって異なりますので、詳しくは受診する病院への問い合わせが必要です。「数値結果」欄は「発達年齢」や「発達指数」の数値が記載されています。「検査結果から言えること」欄では、発達の遅れの度合いや理由が下記のように詳しく記載されています。検査者が言った数字を同じ順番で繰り返す課題では、1つの数字を繰り返すことが限界である様子が見られています。このように、相手からことばのみで働きかけられる状況では、検査者のことばに注目を向けること自体が難しい、または「何が求められているのか」がわからないと考えられます。「日常生活上配慮していただきたいこと」欄も、下記のように記載されています。大人が見ている物に(次女)さんの注目を向けて貰うのではなく、(次女)さん自身が”今・現在””その時に”目にしているものや耳にしているもの、手に取っているものなどに対して、「◯◯があったね」「◯◯と聞こえるね」というように要点をまとめた簡潔なことばをつけていく。このように、大人に関心を合わせてもらうのではなく、(次女)さん自身が関心を向けている物に大人が寄り添い、ことばをかけていくことで(次女)さんにとって、把握しやすく、覚えやすい状況となるよう意識していく。発達検査と一緒に知能検査を受けるように言われたけど、なぜ?出典 : 場合によっては、発達検査と知能検査の両方を受けることを勧められる場合もあります。発達の遅れと知能の遅れの両方が疑われている場合など、子どもの発達を多角的に捉えるために使用されます。また医師による発達障害の確定診断を行う際の参考情報として、またその人に合った支援や学習指導の方向性のヒントを得ることを目的として、発達検査と知能検査などの結果は使用されます。現在日本でよく使用されているのは新版K式発達検査、ウェクスラー知能検査、田中ビネー知能検査、K-ABC知能検査などです。では、発達検査と知能検査の具体的な違いはなんでしょうか。知能検査は、知能を精神年齢、IQ(知能指数)、知能偏差値によって測定するための検査です。これに対して発達検査は、被検査者の精神年齢を示す発達年齢(DA)と、認知面・社会性・運動面などのいくつかの観点から発達の度合いである発達指数(DQ)を調べます。要するに知能検査は子どもの知能がどのくらいあるのかを計測し、発達検査は年齢と発達年齢の差がどのくらいあるのかを計測する検査なのです。子どもに発達障害がある場合は、乳幼児期からその兆候となるような特徴が表出することが多いです。しかし、発達初期の乳幼児の発達状態を、通常の知能検査によってとらえることは困難だと考えられています。なぜならば乳幼児は心理的、身体・運動的、社会的側面の発達が十分でないため、知能のみを検査によって測定することは難しいからです。発達検査の適用年齢は早いもので0歳0カ月から設定されており、乳幼児期から検査を行うことができます。これに対して知能検査の適用年齢はおよそ2歳から設定されています。両者とも、発達障害の確定診断や、その子の療養支援に役立てるために利用されますが、受検可能な年齢に違いがあることに注意しましょう。なお、どんな場合にどんな検査が適切であるかどうかの判断基準は、専門家の判断によります。発達検査と知能検査のどちらを受けるべきか、まずは専門機関に相談して判断しましょう。発達検査を受ける前にまずは専門機関で相談を!出典 : お子さんやご自身の発達検査の受診を検討する際は、まずはお住まいの地域にある身近な相談窓口に行くといいでしょう。事前に予約が必要な機関もありますので、相談機関に問い合わせてみてください。また、子どもか大人かによって、行くべき相談機関が違うので、以下を参考にしてみてください。【子どもの場合】・保健センター・子育て支援センター・児童相談所・発達障害者支援センターなど【大人の場合】・発達障害者支援センター・障害者就業・生活支援センター・相談支援事業所など自宅の近くに相談機関がない場合には、電話で相談できる場合もあります。発達検査や知能検査は、公的病院や民間病院で受けることができます。精神科や臨床心理士による検査が受けられる病院を受診するといいでしょう。「児童発達支援センター」などで受けることもできます。発達検査の受け方、費用は、検査内容や病院によって異なります。また診断書もしくは報告書を書いてもらう場合には、別途料金がかかります。こちらの料金は病院ごとに異なりますので、直接病院に問い合わせてみてください。一方、個人のクリニックや診療所で検査を受ける場合には、すべて自費での診療となります。検査は基本的に誰でも受けることができますが、特に発達に関して気になる点がないと医師が判断した場合は自費となります。こちらの料金設定も各病院ごとに設定されていますので、受診する病院に問い合わせてみてください。発達検査の結果を受けて、専門機関で確定診断を受けたい場合は発達検査を受けた機関に問い合わせるか、もしくは改めて相談機関(保健センター、子育て支援センターなど)に問い合わせてみてください。発達障害の診断はなくても療育は受られるの?出典 : 発達障害の確定診断がなくても、子どもに対して何らかの療育支援の必要性が認められた場合には、児童福祉法に基づく児童発達支援を受けることができます。児童発達支援は障害児通所支援の一つで、小学校就学前の6歳までの障害のある子どもが主に通い、支援を受けるための施設です。日常生活の自立支援や機能訓練を行ったり、保育園や幼稚園のように遊びや学びの場を提供したりといった、障害のある児童への支援を目的にしています。療育手帳や身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳を持っていなくても、障害児通所給付費支給申請を専門家の意見書などと一緒に提出し、児童発達支援利用の必要が認められれば、受給者証が市町村から発行されます。この受給者証を取得することで通所の申し込みができ、1割負担でサービスを受けることができます。発達検査によって子どもの発達の遅れや凸凹が比較的大きいと分かったけれども、発達障害の確定診断は出なかった、という場合もあります。また、発達検査は受けさせてみたけれど、確定診断を受けに病院で受診させる気持ちにはなれないといった方もおられるでしょう。実際に確定診断を受けるかどうかは、ご家庭ごとの自由な選択です。しかし、診断を受けなくても、子どもの日常生活上の困難さを緩和させるために、早期から療育支援を受けるということ、選択肢として検討してみることをお勧めします。まとめ出典 : 発達検査は、それ自体が発達障害の診断を行うものではなく、確定診断を行う上での判断要素にすることや、発達が気になる方の特性を理解して療育支援などに役立てることが目的の検査です。発達検査を受けたのちに、専門機関で確定診断を受けるか否かは、自由に選択することができます。また、確定診断を受けなくても、発達の遅れや凸凹による困難を解消するために、療育支援を受けることは可能です。また、発達検査後に発行してもらうことができる「検査報告書」も、子育てや療育のヒントとして活用することができます。発達が気になる点があれば、まずはお近くの専門機関に相談して、発達検査や知能検査を受けてみることをお勧めします。
2016年11月24日私がいなくなってもーシングルマザーの私が子どもたちに遺したいもの出典 : 私は、子ども4人を育てるシングルマザーです。4人の子どもたちは、下は11歳から、上は18歳まで。4人中3名に発達障害や難病があり、本人に告知もしています。自分の特性ゆえに悩んだり、学校環境とうまく合わず不登校になったりもしましたが、子どもたち一人ひとりが、それぞれの方法、それぞれのペースで育っていってくれているのを見守るとともに、母である私も色々学ばせてもらっています。一方で、シングルマザーの私がいつも考えるのは、親亡き後ー私がいなくなった後のこの子たちの人生のこと。過去に出産時の事故で軽い脳梗塞も経験し、現在も後遺症が残るなか、いつ、また倒れるかも分かりません。常に「死」を意識しながらの子育て。そんな私がわが子に遺したいと思っているもの。今日はそんなお話をしたいと思います。私があなたに遺すもの: 「他人に相談する力」出典 : 私が子ども達に残したいもの。それは、「困った時には他の人に頼る、相談する力」です。人生は思いのほか短い。その人生を少しでも幸せに生きる為にも、頑張りすぎないようにすること。そのためには、上手に他の人の力をお借りすることが大事だと思っています。困ったことを誰にも相談せずに1人で解決しようとすると、もの凄く多くのエネルギーを使い消耗してしまいます。結果、体調を崩してしまう事もあるかもしれません。「自分は〇〇で困っています。助けてください。(手伝ってください)」と言えるように。子ども達には「困った時には周りの人に聞きなさい。困った時は頼っていいんだよ。」と伝えています。そのためにも、まず私から子どもたちの手本になるように実践しています。「お母さんは、風邪ひいて体調悪いからゴミ出ししてくれたら助かる。お願いできる?」「お母さん1人で外出は寂しいから付いてきてくれる?」と伝えたりして、母自らがわが子に頼ることを通して、見本を見せるようにしています。私があなたに遺すもの: 「あなたをよく知る支援者たち」出典 : 私が次に子ども達に残したいものそれは、「子どもたちの存在を知っている人たちと、支援者」です。私は、子ども達の発達障害を隠さずに、周りにどんどん伝えています。それには意味があります。発達障害のことをどんどん話して伝えていくことで、発達障害のある人への偏見を減らしていくことと、発達障害について知りたいと思う人を増やすこと、そして、発達障害のある人たちへの支援方法を知ってもらうことです。発達障害のことを伝えるのに、血液型を伝えるぐらいの感覚で伝えられるようにする事が私の希望です。それから、私がいつかこの世を去った後、子ども達が困って誰かを頼った時には、誰かが子ども達の支えになってもらえるようにと願ってのことです。いつまでも私が側で見守ることはできません。いつかの日の為にその体制を残したい。お陰様でこの地域では、子ども達の理解者は増えてきました。「気にかけてもらえている」これはとても大切な事だと思っています。私があなたに遺すもの: 「一人ひとりへの遺言書」出典 : これから私が子ども達に残したいもの。それは「子ども達一人一人に当てた遺言書」です。私は元々、文章を書くのは好きでした。幼い頃には、定期で家族新聞を書いて子ども部屋に張っていたぐらいでした。見たこと聞いたこと、感じたことを言葉にして残しておくのが好きな子でした。遺言といっても暗いものではなく、生きるための力が湧くような言葉集のようなものです。自分で生きていく上で胸に留めておいてほしいことを、一人一人の特性に合わせて、書き残しておきたいと思っています。いつか辛い時に読んでくれたら嬉しい。それは発達障害のある子ども達を育てているからこそ、私の中に心配する気持ちが大きいからこそなのでしょう。これから少しづつ、子ども一人一人に向けた言葉をノートに書いて残しておこうと思っています。私があなたに遺すもの: 「自分を認めて生き抜く力」出典 : 最後に、子ども達には何があっても自分たちで「生き抜く力」を、今から育んでいってほしいと思っています。そのためには、まず何より「自分を認めていくこと」が必要になると考えています。時に人生は、予期せぬことが起こります。私もまさか自分が脳梗塞をして、そこから鬱病になるとは思ってもいませんでした。その後にまた鬱病を再発した時には一家心中をしようかと考えてしまうほどに追い詰められました。そんな時に助けになったのは、周りの支えでした。辛いという自分を認め、「私は辛いので助けてほしい」と言えたことが良かったのです。子ども達に身につけてほしい、「生き抜く力」とは、「とにかく頑張る」ということでは決してありません。辛い時にこそ、どこかに味方は必ずいると信じられる心。そして、自分の気持ちを周囲に伝え、助けてもらいながらしなやかに生き抜いていく力を持つことが大切です。生きていれば、心配すること、不安なことは沢山ありますし、それがゼロになることはありません。だからこそ、むやみに心配したり、やみくもに頑張るのではなく、いい意味で諦めること。自分の現状をあるがままに認め、必要があれば周りに頼ってでも生き抜いていってほしい。そう願います。---子ども達と過ごせる残りの時間も先が見えてきました。だからこそ、発達障害のある子ども達の子育てを楽しみながら、子ども達に遺せるものはまだまだあると、私も生き抜いていきたいと思います。
2016年11月24日発達障害のある5歳の娘。だんだん周りの子との違いが目立ってきた広汎性発達障害がある5歳の娘は、言葉の発達に少し遅れがあります。3歳ぐらいまでは周りのお友達との差も少なく、少し接したぐらいでは娘に障害があることはわからなかったと思います。でも4歳を過ぎると、初対面の人でも娘のしゃべり方や雰囲気に違和感を感じたり、「あれ…?」と思われることが増えてきました。Upload By SAKURA誰に、どこまで、どんなふうに話せばいいのだろう?Upload By SAKURA相手が娘に対して「あれ…?」と思った時、私も外から見ていてそれに気づきます。その相手が初対面の人や、それほど親しくない人の場合…娘の障害について話すべきなのかとても迷います。いきなり「娘には障害がある」と話したら、どうリアクションしていいか困ってしまうのではないか。そして困ったリアクションをされたら、私もなんと言っていいかわからなくなってしまう。実際娘の障害のことを話してみて、「あ、言わなきゃよかった」と思うことがよくあります。Upload By SAKURA試行錯誤の結果、私が実践しているやり方は…Upload By SAKURAいろいろ試した結果、今は…「あ、うちの子、言葉に遅れがあってね~聞き取り辛かったらごめんね!」とさらっと明るく話し、そしてすぐに話を変え、相手にリアクションする隙を与えないようにしています。それ以上聞きたくない人は、そのまま話を流してくれますし、「え?どういうこと?」と思った人は、聞き返してくれます。そういう人にだけ、障害のことや詳しい話をするようにしています。娘のことを、いろんな人にわかってほしいから私は娘の障害のことは、恥ずかしいと思っていませんし、障害について話すことは苦ではないです。むしろ娘のことを理解してもらえるためなら、いくらでも詳しく話したいと思っています。ただ、それを聞いた相手を困らせたくないという想いがあります。今は幼稚園の3年間でできたお友達や、ママ友にはうまく伝わり、娘のことを理解してもらっています。しかし来年は娘も小学生…。新しい出会いもあり、娘の障害について話す機会がどんどん増えていくでしょう。娘のことを理解してもらえるよう、私自身努めていきたいと思います。Upload By SAKURA
2016年11月23日息子の障害は言えない…周囲からの批判的な目に怯えていた私出典 : 皆さんは、子どもに発達障害があるとき、入園予定の幼稚園や保育園、習い事などで、障害についてカミングアウトしますか?私は必ず、「うちの子は発達障害があります」という話を、一番最初に言います。けれども3年前、息子に診断が下りたばかりの頃、私は息子に何をやらせるにも、発達障害ということを周囲に隠していました。その理由は、「発達障害と知られたら断られるかもしれない」「周りから差別されるかもしれない」「私の育て方が悪いと言われるかもしれない」といった恐怖心があったからでした。そして、息子の特性が絶対にバレないように…ということに集中し、常に気を張っていました。ただでさえ息子が発達障害であるとわかり、自分自身がそれを受け入れるのに必死になっているときです。その上他人からこれ以上傷付けられたら、自分がどうなってしまうかわからなかったのです。私は、私と息子を守るため周囲に診断の結果を隠していました。でもそれは、私たち親子を逆に傷つける結果になったのです。障害を隠して入会したトランポリン教室。しかしパニックを起こした息子は先生に叱られ…出典 : 私は診断名や特性を隠したまま、近所のトランポリン教室に息子を連れていきました。発達障害の子にはトランポリンが良いと聞いていたからです。ところが、息子は連れていくたびにパニックになりました。プロ仕様のトランポリンは、かなり高く飛ぶことができるのですが、重力不安のある息子には異常な恐怖だったようです。そこで、先生が息子の体を支えて一緒に飛ぶようにしてくれたのですが、息子は触覚過敏があるため、他人に身体を触れられることをひどく嫌います。終いには苦痛のあまり、ぎゃーぎゃーと泣き出してしまったのです。こうして息子は、パニックになるたびに先生に叱られていましたが、それも仕方ない話です。息子の特性がわかっていなければ、この様子はただの我儘な子にしか見えないからです。先生に「ちゃんとやりなさい!」と叱られるたびに、息子はパニックになって部屋中を駆け回り、物を割ったり落としたり。教室内では、「とんでもない問題児が来たよ…」という冷えびえとした視線が突き刺さりました。ある日息子が大暴れし、教室を辞める決意をした私。思わず口から出た本音に先生は出典 : 回目のトランポリン教室で、息子は先生から身体を触られた途端にパニックになり、大暴れした拍子に鼻血が出て止まらなくなってしまいました。1時間のレッスンのうち、50分以上を鼻血の処置をしながら息子をクールダウンさせる時間に費やしました。私は頑張っていた心がポッキリと折れ、帰り際に先生に教室を退会する旨を伝えました。「この子にはとても無理そうなので退会させて頂きます。実はこの子、自閉症スペクトラムの診断がおりてまして…。ここで一緒にやらせて頂くのは難しかったようです。すみませんでした。」そう私が謝ると、先生は「えっ!」と驚いた顔をし、そして言ったのです。「どうして最初に自閉症スペクトラムだと教えてくださらなかったのですか。知っていれば、ちゃんと対処法がわかったのに。うちの教室、自閉症の子をたくさん見た経験あるんですよ。声のかけ方だって、変わってきたのに。」私はそのとき始めて診断名を隠していたことで息子のことも自分のことも無用に傷つけ、先生にも迷惑をかけてしまっていたということに気付きました。入会前にカミングアウトしていれば…!!私はそのとき、初めて自分のミスに気付いて、涙が止まりませんでした。そのときにはもう、息子はトランポリン教室に恐怖心を持っており、これ以上続けることができない状態になっていました。断られる恐怖はまだある。しかし、障害をオープンにすることで合う場所もきっと見つかる出典 : トランポリン教室での失敗を踏まえ、今では幼稚園や習い事に入るときだけではなく、小さなイベントや病院での診療などのときでも、必ず「この子は発達障害があります」ということを最初にお伝えするようにしています。それでも、「断られたらどうしよう」という怖さはいつもあります。でも、断ってくるところに無理して参加させても、もっと傷つくことになるだけだと思うのです。利用サービスの中には、他の子と区別をせずに指導する習い事もあります。けれども、息子がパニックになったときなどに、指導者があらかじめ「この子はこういうことでパニックになりやすい」と知っていてもらうことで、私も息子も十分救われるのです。傷付くことを怖がって隠していても、もっと傷付くことはたくさんあります。それよりも、カミングアウトしても「大丈夫、一緒に頑張りましょう」と言ってくれる人や環境を見つけることの方が、発達障害児の育児はずっと実りあるものになります。
2016年11月17日