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自転車のルール違反に対して、これまでより厳しい措置が取られることをご存じでしょうか? 2026年4月に改正道路交通法が施行されます。■改正道路交通法(自転車)主な違反内容と反則金(2026年4月施行)例えば「スマホを使用しながらの走行」は1万2,000円、「信号無視」や「逆走・歩道通行」などの通行区分違反には6,000円、「指定の場所で一時停止しなかった場合」は5,000円の反則金が課されます。違反内容と反則金に関しては以下の通り。ぜひこの機会にルールを確認しておきたいものです。罰金が設定された理由は?今回、ルール違反に対して、新たに反則金が取られるようになった背景には、自転車による事故がなかなか減らないことが要因の一つです。自転車関連事故(※1)は、全国的には10年前と比べて約6割に減少し、2024年は67,531件となりました。しかし、交通事故全体に占める割合は23.2%と、10年前より4ポイント以上増加しています。また東京都内に限っていうと、件数は3割増。死者数こそ減っているものの、交通事故の全死者数の17.1%を占めるなど、自転車にまつわる事故は看過できない状況であることは間違いありません。街なかでは、自転車の走行により、歩行者も自動車のドライバーも、ヒヤッとした経験があるのではないでしょうか。 自転車が急激に増えた背景には、東日本大震災で電車が止まり帰宅困難者が出たことにより、通勤に自転車を利用する人が増えたことや、コロナ禍で「密」を防ぐために満員電車を避けるための手段となったこと、あるいは純粋に健康志向への高まり、若い世代を中心とした自動車の運転免許を持たない世代の増加など、いくつかの要因があります。免許不要の自転車だからこその問題点どれも個人の選択として尊重すべきことですが、その際、やはりルールはしっかりと守らなくてはなりません。その一方で、自転車は「軽車両」なので、基本的には自動車と同じ車道を走ることや、例外を除き、自動車のルールが適用されることは、実はあまり認知されていないともいえます。その理由の一つには、自転車には運転免許制度がないため、しっかりとルールを学ぶ機会が少ないことが挙げられます。「免許」がないことで、ルール違反に対しての取り締まりも、なかなか難しいとされてきました。反対に、「免許」がないからこそ、誰でも気軽に利用できることは、自転車の利点ともされてきました。とはいえ、人の命に関わるような事故は防がなくてはいけません。これまでも、罰則を伴わない専用のカードを使用した「警告」や、悪質な違反には刑事罰の対象として検挙される例もありましたが、ほとんどが起訴されず、罰則の対象にはなりませんでした。そこで、「反則金」、いわゆる「罰金」を課すことで、取り締まりの実効性をあげ、悪質なルール違反をなくそうという法律に改正したことが、今回の大きなポイントです。 全部で113の違反行為が対象に…反則行為をチェック冒頭挙げた例も含め、全部で113の違反行為が対象です。自転車は軽車両として、13歳未満の子どもや70歳以上の高齢者、どうしても車道通行が困難な場所などを除き、基本的には車道通行をしなければなりません。しかし、そもそも都市部では自転車の走行空間の整備が不十分で、車道でも歩道でも「迷惑がられる」という利用者の不満もあります。とはいえ、限られた道路空間。譲り合いや安全は自分で確保するものという姿勢も大事です。まずは、ルールをしっかり把握するためにも、警察庁のホームページから確認してみましょう。反則金が課されるのは、来年2026年4月からの予定です。現在、パブリックコメントも募集中のため、この機会に、自転車を安全に利用するために、親子で話し合ってみても良いかもしれませんね。取材・文/政治ジャーナリスト 細川珠生政治ジャーナリスト 細川珠生聖心女子大学大学院文学研究科修了、人間科学修士(教育研究領域)。20代よりフリーランスのジャーナリストとして政治、教育、地方自治、エネルギーなどを取材。一男を育てながら、品川区教育委員会委員、千葉工業大学理事、三井住友建設(株)社外取締役などを歴任。現在は、内閣府男女共同参画会議議員、新しい地方経済・生活環境創生有識者会議委員、原子力発電環境整備機構評議員などを務める。Podcast「細川珠生の気になる珠手箱」に出演中。 道路交通法施行令の一部を改正する政令案」等に対する意見の募集について 募集中(5月25日まで) 自転車反則行為一覧 ※1 警察庁「自転車は車のなかま〜自転車はルールを守って安全運転〜」 警視庁「自転車の交通人身事故発生状況(令和6年中)」
2025年05月19日お米騒動や猛暑の影響もあって、昨年から、野菜は高いし、もちろんお米も高いし、そしてガソリンも…。食料品だけでなく、あらゆることが高くなったと実感する今日この頃。そこに、トランプ関税も加わったら、一体、この先、どこまでモノの値段が上がり続けるのかとビクビクしている人も多いのでは?(私もです)各党の税金に対する政策は?各政党も、物価高対策の政策を打ち出し始めました。その中で、注目すべきは消費税を中心とした減税。私たちの負担軽減にはどれくらい効果があるのでしょうか。 今、各党が出している案を整理すると、主に次のような減税策です。 参照:第50回衆議院総選挙公約ほか、各党提出法案等各党の政策を見てみると…石破政権としては、2025年度の予算として、課税最低限を160万円(学生は130万円)まで引き上げ、実質的に一人あたり2〜4万円の税負担軽減や、ガソリン・軽油は5月22日から10円引き下げるなどの物価高対策を実施しています。しかしながら、国民の負担感はとてもそれでは拭えないということで、各党が上記のような政策を出してきました。各党共通していることは、食料品への軽減。消費税の減税は、ものを買うときに支払う額が、自分の、いわば「目の前で」減ることもあり、「安くなった」と実感しやすいという効果は大いにあります。食料品は、毎日必要なものでもあることから、値段が高くなると日々、負担を感じるだけに、減税効果は実感しやすいと考えられています。 実際に消費税の減税効果は、食料品などの生活必需品に適用されている軽減税率8%をゼロにした場合、標準世帯(夫・専業主婦・子2人)で、年間6.4万円の負担減、一律5%にした場合、14.1万円の負担減となるという試算が出されています。※1国としては、消費税1%の税収は、約2.4兆円ですが、軽減税率分に限定すると0.6兆円。もちろん、これは減税すれば、国としては税収減となります。しかし、他の税目や将来的な景気との、いわば相殺の形でその分を充てるということも可能という考え方もあります。日本の消費税はどうすればいい?消費税の減税には、このところの物価高には一定の効果はあると見込んでいる識者も多く、それが各党の政策にも反映されていると考えてよいでしょう。あとは、時限的(1年や2年限定)か、食料品限定か、軽減税率適用分か、あるいは、一律の減税や廃止などの違いを、どう判断するのかといったところでしょう。ちなみに海外でも、食料品を含む生活必需品は、軽減措置や一定額は非課税とされている国は、珍しくありません。例えば、米国は州によって税率は違うものの、生活必需品(主にスーパーマーケットで購入するようなもの)は、一回の購入が175ドルまで非課税という仕組みがある州もあります。そんなことも参考にしながら、どのような軽減策が妥当か、私たちもしっかり考えたいですね。 ※1(株)第一生命経済研究所 取材・文/政治ジャーナリスト 細川珠生政治ジャーナリスト 細川珠生聖心女子大学大学院文学研究科修了、人間科学修士(教育研究領域)。20代よりフリーランスのジャーナリストとして政治、教育、地方自治、エネルギーなどを取材。一男を育てながら、品川区教育委員会委員、千葉工業大学理事、三井住友建設(株)社外取締役などを歴任。現在は、内閣府男女共同参画会議議員、新しい地方経済・生活環境創生有識者会議委員、原子力発電環境整備機構評議員などを務める。Podcast「細川珠生の気になる珠手箱」に出演中。
2025年05月07日この20年で約10万人の人口が増えた港区。その増加率は約6割にものぼります。地方創生が至上命題でもある日本にとって、羨ましい限り。それでも港区も、子どもの数は減っています。税収を維持しながら、無償化政策を進めていけるのか、再開発が今も続き、街としての「キラキラ」度が増している中、どんな港区を目指しているのか、清家港区長にお聞きしました。お話を聞いたのは…港区 清家愛区長1974年生まれ、港区東麻布生まれ。青山学院大学国際政治経済学部、国際政治学科卒業(現代ロシア論・袴田茂樹ゼミ)。産経新聞の記者として7年、主に社会部で事件、行政取材を担当。結婚・出産と仕事の両立に悩み、退社。フリーランスになるも、待機児童のため西麻布で子育てに専念。保育園にも幼稚園にも入れない港区の現状はおかしい!と、ブログ上で現場の声を集め、行政に提言する「港区ママの会」を発足。2011年4月、港区議会議員選挙5位初当選。3期連続トップ当選で、4期13年区議を務め、2024年6月港区長初当選。 >>港区・清家愛公式ページ ―この20年、港区は人口が増えましたが、それでも一番のボリュームゾーンである40代と比べると、10歳未満はその約2分の1。少子化は止まりません。今後の税収などを考えると、無償化を始め、港区の手厚い行政サービスを維持できるのか疑問があるのですが、その点はどうお考えですか。清家区長:持続可能な社会をつくるために、子育てや少子化対策は投資として必要だと思い、無償化を進めているところです。とはいえ、今の状況だと、やはり子どもの数は減っていく一方なので、少子化対策の効果を検証して、政策立案に反映していかなければならないと思っています。―具体的にはどのような方法で?清家港区長:EBPM推進担当というのを新たに設置しました。Evidence-Based Policy Makingですね。客観的根拠に基づくデータの利活用によって、今後の政策を推進していくというものです。―港区は、再開発があちらこちらで進んで、便利になる面と、住環境の変化をネガティブに捉える住民もいます。街の魅力としての再開発、それに伴う流入人口の増加などのメリットと、住民のQOLは、必ず一致するものでもなく、この二つのバランスは都市整備をする上で一番難しいところだと思います。この辺りはどのようにお考えですか。清家区長:ターニングポイントなのかなと思っています。再開発はこれからも続きますが、歴史的な価値や文化を守るということが、港区の豊かさであり魅力だと思うんです。全て経済市場原理の中で、そういうものを失うと、何か心の喪失に繋がるのではないかと。―私もそう思います。住んでいる人にとっては、再開発はもういい、って思っているケースもあるかと。清家区長:今年度から、歴史的価値ある建造物や樹木を守る仕組みづくりというものについて、歴史的な文化財についての有識者などにも委員に入ってもらって、景観審議会の中で、歴史的、文化的価値を守っていけるような仕組みづくりを検討したいと思っています。―港区は歴史的な建造物も結構多いですからね。清家区長:そうです。あと、「港区緑を守る条例」で、敷地面積250平米以上の建築計画がある場合、敷地面積、延べ床面積などに応じて緑化をしてもらうというのを進めています。それによってエコロジカルネットワークを形成して、生物多様性の向上などに貢献する緑の保全創出を誘導しているので、今、緑被率は22.62%で23区中では3位と高い水準なんですね。―新しい緑地と以前からある緑地では生物多様性の継承が可能なのかは、また議論のあるところだと思いますが。清家区長:緑を増やす、ということだけではなくて、ある緑を守る、あるものを守るという心の価値観が豊かであることこそが民度の高さ、言い換えればシビックプライドに繋がることだと思うんです。港区だからこそ、やっていかなければいけないことだと思っています。―心の価値観、いいですね。清家区長:生きているもの、身の回りのもの、愛している者たちを守っていくっていうこと、大切にしましょうということを、子どもの教育でも言っているのに、大人がやっていることが違うのなら、嘘をついていることにもなる。ここは、私が今、一番大事にしているところです。取材・文/政治ジャーナリスト 細川珠生政治ジャーナリスト 細川珠生聖心女子大学大学院文学研究科修了、人間科学修士(教育研究領域)。20代よりフリーランスのジャーナリストとして政治、教育、地方自治、エネルギーなどを取材。一男を育てながら、品川区教育委員会委員、千葉工業大学理事、三井住友建設(株)社外取締役などを歴任。現在は、内閣府男女共同参画会議議員、新しい地方経済・生活環境創生有識者会議委員、原子力発電環境整備機構評議員などを務める。Podcast「細川珠生の気になる珠手箱」に出演中。
2025年05月02日区内の子どもの私立進学率が高いことが特徴でもある港区。区内10校の区立中学校では、英語学習や海外体験として、海外への修学旅行に約4億円の予算を組んでいることについて賛否があるなか、公教育の役割とは何か、また港区はどのような公教育を目指しているのか、清家港区長にお聞きしました。お話を聞いたのは…港区 清家愛区長1974年生まれ、港区東麻布生まれ。青山学院大学国際政治経済学部、国際政治学科卒業(現代ロシア論・袴田茂樹ゼミ)。産経新聞の記者として7年、主に社会部で事件、行政取材を担当。結婚・出産と仕事の両立に悩み、退社。フリーランスになるも、待機児童のため西麻布で子育てに専念。保育園にも幼稚園にも入れない港区の現状はおかしい!と、ブログ上で現場の声を集め、行政に提言する「港区ママの会」を発足。2011年4月、港区議会議員選挙5位初当選。3期連続トップ当選で、4期13年区議を務め、2024年6月港区長初当選。 >>港区・清家愛公式ページ ―港区は、小学校の私学進学率は約30%、中学校では65%(※1)となっています。その中で、公教育の役割については、どのようにお考えですか。清家区長:受験そのものは、その時期一生懸命勉強するとか、親子で目標に向かって頑張るなど意味はあるのだろうと思います。でも、そうではない充実した教育環境が同時にないといけないと思うんです。みんながするからということだけで、したくもないのに受験する、というような流れはなくしたいと思っています。公立学校に求められることとしては、教育内容や教育環境の充実に取り組み、学校で友達や先生とともに学び、高め合うことだと考えます。 ―その中で港区ならではの教育とは、どうお考えですか。清家区長:多様性だと思います。幼稚園、小・中学校には様々な国籍の幼児・児童・生徒がおり、インターナショナルスクールのように国際色が豊かです。国籍だけではなく、家庭環境や障害の有無も含めて、多様な子どもが在籍しています。そういった子どもたちの声を聴き、区内の大使館や企業などと連携した取組を推進していることが、港区ならではの教育につながっていると考えています。 ―逆に、多様性が豊かになって、課題はありますか。清家区長:障害や発達、学校生活への適応について言えば、年々支援が必要なお子さんが多くなっています。学習場面や学校生活において、個に応じた支援を行う「スペシャルニーズアシスタント」を、今年度全校に配置し、多様なお子さんの状況に寄り添っていけるような体制づくりのため、約4億円の予算を計上しました。―外国籍のお子さんについては、いかがですか。清家区長:日本語を母語としないお子さんのための、「みなとにほんごふれあいスペース~ことばの宝箱~」という、子ども向けの日本語教室を、今年度から本格的に始めます。簡単な日本語の勉強と、あとは交流ですね。日本語学習支援ボランティアや、高輪にある東海大学国際学部の学生さんにも関わってもらいます。 ―私も大学院の授業で区内小学校に、外国籍のお子さんの授業の様子を見にいったことがありますが、九九の教え方も全然違いますし、先生だけでやり切るにはとても大変だと思いました。他に、港区ならではの国際教育としては、どんなことがありますか。清家区長:「MINATOまるごと留学」を今年度から始めます。今、円安もあって、なかなか留学ができない中で、外国の文化に触れる機会を創出していきます。 ―港区の中で?清家区長:区内在住の外国人のご自宅にホームステイをしたり、外国人とまち歩きを体験するなど、外国語とその国の文化に直接触れて国際理解を深めてもらえればと思っています。港区の新たな魅力の発見にもなったらとも思っています。―港区は外国人居住率も高いですし、意外に身近なところに、自然と外国人と触れ合う機会があるということですね。清家区長:港区には、全国の約半数にあたる80カ国以上もの在外公館があり、外国の方も多く住んでいるので、その国の方々と交流できることは、港区の強みだと思っています。その強みを生かしていきたいです。(※1) 7歳児(小1) 区立小学校在籍者1,837人/全区2,588人、13歳児(中1)区内中学校在籍者738人/全区2,146人(いずれも2025年2月現在)取材・文/政治ジャーナリスト 細川珠生政治ジャーナリスト 細川珠生聖心女子大学大学院文学研究科修了、人間科学修士(教育研究領域)。20代よりフリーランスのジャーナリストとして政治、教育、地方自治、エネルギーなどを取材。一男を育てながら、品川区教育委員会委員、千葉工業大学理事、三井住友建設(株)社外取締役などを歴任。現在は、内閣府男女共同参画会議議員、新しい地方経済・生活環境創生有識者会議委員、原子力発電環境整備機構評議員などを務める。Podcast「細川珠生の気になる珠手箱」に出演中。
2025年04月25日再開発が進み、この20年で10万人もの人口が増えた港区。「キラキラ」とした街がたくさんある一方、今やマンション住民が9割にも上る中、それはそれで子育てには大変な面もあります。清家愛港区長に、港区の子育て支援について、お聞きしました。お話を聞いたのは…港区 清家愛区長1974年生まれ、港区東麻布生まれ。青山学院大学国際政治経済学部、国際政治学科卒業(現代ロシア論・袴田茂樹ゼミ)。産経新聞の記者として7年、主に社会部で事件、行政取材を担当。結婚・出産と仕事の両立に悩み、退社。フリーランスになるも、待機児童のため西麻布で子育てに専念。保育園にも幼稚園にも入れない港区の現状はおかしい!と、ブログ上で現場の声を集め、行政に提言する「港区ママの会」を発足。2011年4月、港区議会議員選挙5位初当選。3期連続トップ当選で、4期13年区議を務め、2024年6月港区長初当選。 >>港区・清家愛公式ページ ―まずは、港区の基本的な子育て施策の方針からお聞きできますか。清家区長:『世界一幸せな「子育て・教育都市」』を重点施策の一つに掲げています。親の就労の有無に関係なく、また子どもに障害があるなしに関係なく、そしてどの国籍の子でも、等しく良質な保育サービスと教育にアクセスできる環境を整備したいと思っています。―具体的にはどのようなことを進めているのですか。清家区長:例えば、今年1月に、病気回復期等のお子さんをお預かりする病児保育室を、新たに麻布十番に開所しました。また、一時保育なども、なかなか必要な時に見つからないという状況があることから、今年度からマッチング型のベビーシッター利用料の補助を開始します。港区では、乳幼児の一時預かりの「お断りゼロ」を目指しています。 ―港区議会議員時代も含め、そのあたりは、区長ご自身の「お母さん目線」で取り組まれているのですか。清家区長:そうですね。自分が港区議会議員になったきっかけでもあるのですが、子育てをするようになって、「地域に戻る」というのがありますよね。今、高校3年生の娘の子育ての中で、港区の場合は再開発が進み、タワーマンションが増えて、ほとんどが核家族、そして区外から来た人で、「実家」がない状態。当然のことながら保育園も不足していましたし、まずは、「実家のような子育ての体制」が必要だと思いました。 ―私にも20歳の息子がいて、生まれた当時は本当に保育のサービスが少なくて、私のようなフリーランスはほとんど使えないものでした。清家区長:今は、女性も働くことが当たり前になっていますが、仕事の事情だけでなく、母親は、子どもの預け先がないと病院にも歯医者にも、美容院にも行けないということにもなりますよね。 ―本当にそうです。自分のことは後回しで、歯なども相当痛くなって、やっと歯医者に行く、みたいな。清家区長:そういう人は多いと思います。区議会議員の時も、母親の目線での保育サービスの制度を作ってきましたが、結局のところ、制度はあっても使い勝手が命だったりするんです。―利用者目線で制度を作っていくということですね。清家区長:そうですね。私は麻布で育ちましたが、麻布でも外に出れば、子どもたちが自由に遊んでいるところを近所の人たちが見てくれるような豊かな環境がありました。でも、今はそういうものがない中で、雨の日なんか本当にどうやって遊ばせればいいんだろうみたいな感じですよね。それだけで、お母さんたちは追い詰められられてしまう。昔と子育ての環境が違うんだっていうところから、制度を組み立てていく必要があると思っています。お母さんが辛くなったら子育てが辛くなってしまう。それは子どもの育ちにも影響が出てしまうんです。 ―今は、子育て支援といえば、無償化がトレンドとなっています。港区は平均所得も、全国の約3倍で、高所得者も多い中、それでも所得制限なしの無償化施策を進める理由についてはいかがですか。清家区長:児童や生徒が安心して学習に取り組み、学びを深め、個々の能力を大きく伸ばせる教育環境を整備するために、所得制限を設けないことにしていますが、「子どもが安心して学べる環境」は義務教育として、憲法でも保障されています。ですから、ここは本来、国としてやるべきことだと思っています。一方、港区も、やはり少子化は進んでいて、色々対策をやるのも、個人的には遅すぎると思っていますが、しかし、少しでも少子化のスピードを下げるためにも、やらなくてはいけないことだと思っています。その中で、子育てのコストが、そのリスクにならないようにしたいと思っているのです。 ―子育てには確かにお金がかかりますが、高所得者にとっても、リスクにならないようにということですか。清家区長:若い人たちは、それでも今、精一杯なんだと思うんです。経済的な安心感がないと、子どもをもとうとなかなか思えないですよね。港区は確かに、子どもを私立に行かせるご家庭も多く、それはそれぞれでいいと思っていますが、それでも、誰でもが、この先何が起こるかわからない。シングルマザーになるかもしれないし。そういった時にも、子どもはちゃんと育つよ、という仕組みを、社会がきちんと持っていないといけないと思っています。取材・文/政治ジャーナリスト 細川珠生政治ジャーナリスト 細川珠生聖心女子大学大学院文学研究科修了、人間科学修士(教育研究領域)。20代よりフリーランスのジャーナリストとして政治、教育、地方自治、エネルギーなどを取材。一男を育てながら、品川区教育委員会委員、千葉工業大学理事、三井住友建設(株)社外取締役などを歴任。現在は、内閣府男女共同参画会議議員、新しい地方経済・生活環境創生有識者会議委員、原子力発電環境整備機構評議員などを務める。Podcast「細川珠生の気になる珠手箱」に出演中。
2025年04月23日世界に衝撃を与えた、トランプ米大統領による全世界に向けた追加関税のニュース。“あの日”以降、株価は乱高下を繰り返し、市場は大混乱。そして、世界中がトランプ大統領から発せられる言葉に、ビクビクするような毎日…。日本への影響、ある?なし?私たちの生活はどうなってしまうのでしょうか。「トランプ関税」とも呼ばれている、今回アメリカから発せられた追加関税は、アメリカの現地時間4月2日(日本時間4月3日)に発表されました。その内容は、世界中のどの国対しても、その国からの輸入品に10%の追加関税をかけるというもの。ほかにも、国別に追加の関税かけること(4月9日発動)、自動車・自動車部品、鉄鋼・アルミに対しては、追加関税とは別の枠組みとして25%を現状の税率に上乗せする形で関税をかけることも発表しました。アメリカが関税率を上げた理由は?まず一般的に、関税をかける理由は、2つあります。ひとつは自国の産業を守るため、もうひとつは、税収として国の収入を増やすためです。その点から言うと、本来ならアメリカ国内にとっては歓迎されることであるはずが、そうなっていない理由は次の2つにあります。ひとつ目に、税金を負担することになるアメリカの企業の経営が厳しくなることが予想されるからです。ものを輸入するアメリカの企業の税負担が増えることになるので、今までと同じように利益を出そうと思えば、その分、アメリカ国内で売る商品に価格転換することが予想されます。アメリカ国内の消費者も、これまでより高額になり、そうでなくても物価高に悩まされているアメリカ国内の人たちには、今より生活が苦しくなることに猛反発しているのです。ふたつ目は、1つ目の理由の構造として、今や何かものを作るにも、自国内で完結できることの方が少なく、アメリカ国内でモノを製造しようと思っても、世界中からさまざまな部品を輸入しており、そのコストが上がることで、商品の値段を上げざるを得ないということにつながるからです。そもそも関税はどうあるべき?本来関税は、自国の産業を守るために、他国から安くて良い商品が「こないよう」するためのものです。ただ、自国の国民にとっては、良いものが安く手に入れることは悪いことではありません。お互いに、経済的に支障がない範囲で関税率を設定し、国際的なルールのもと、モノや経済が循環し、自由な経済活動が可能となる「自由貿易体制」は、それぞれの国の豊かさにつながるものと考えられてきました。特に、アメリカのような大国は、発展途上にある国々には低い税率を設定し、その国の経済発展を後押ししてきたという経緯もあります。日本も、第二次世界大戦の敗戦後、軍事力はアメリカの傘の中に収まることも含め、低い関税により経済的に豊かになることができたという事実もあります。今回、トランプ大統領がこのような判断をした理由は、他国からの安くて良い商品が低い税率によってアメリカ国内に流通することで、自国の産業が衰退することに怒り、「不公平だ」と考えているからのようです。自分の国のことだけを考える「保護主義」という発想からきたものだとわかりますね。関税発動からわずかで90日間停止…なぜ?しかしながら、アメリカを代表するような商品であっても、自国内ですべて製造できるわけではなく、さまざまな国から部品を輸入しています。自動車やスマホはわかりやすい例ですが、この先の生活への不安、国への信頼の低下などが、株価や為替に表れているということです。結局、発動からわずか半日で、報復関税を課した国(中国など)を除き、追加分の発動は90日間停止、スマホ関連の半導体などの重要部品についても、追加分を適用せず、新たな枠組みを検討すると発言するなど混迷を極めています。アメリカは半導体の多くを中国から輸入しており、現在アメリカは中国に145%、応酬した中国はアメリカに125%の税率を課して、その結果、アメリカ国内での価格上昇が見込まれ、テック関連の企業が反発したことが理由とされています。日本の企業にとっても、高い税率により、アメリカの企業から値下げ要求がきたり、購入そのものが減ったり、業績に影響が出る恐れがあります。関連する企業で働く人にとっては、大問題。そしてアメリカに輸出できなくなった分、日本でモノが余っていく可能性も。そうなると売れるために価格を下げるようなことになれば、さらに企業の利益は小さくなる恐れもあります。日本国内が物価高で苦しいことも事実ですが、モノの値段が上がることで企業の利益が大きくなり、そこで働く人の給与も上げられることを見込んでいるとすれば、それに逆行することにもなりかねないということでもあります。これから、日本も、追加関税の撤廃を目標にアメリカと交渉をすることになります。日々、新たな方針を出すトランプ大統領の発言には目が離せませんが、日本政府の毅然とした交渉を期待したいですね。※この記事は2025年4月14日現在の情報をもとに記載しています。取材・文/政治ジャーナリスト 細川珠生政治ジャーナリスト 細川珠生聖心女子大学大学院文学研究科修了、人間科学修士(教育研究領域)。20代よりフリーランスのジャーナリストとして政治、教育、地方自治、エネルギーなどを取材。一男を育てながら、品川区教育委員会委員、千葉工業大学理事、三井住友建設(株)社外取締役などを歴任。現在は、内閣府男女共同参画会議議員、新しい地方経済・生活環境創生有識者会議委員、原子力発電環境整備機構評議員などを務める。Podcast「細川珠生の気になる珠手箱」に出演中。
2025年04月14日東京都議会議員、武蔵野市長時代にさまざまな、生活者目線での施策を実現した松下玲子衆議院議員。そのご経験から、今回は、日本の教育政策には何が必要か、「無償化」にとどまらない政策についてお聞きしました。お話を聞いたのは…立憲民主党 松下玲子議員1970 年生まれ、実践女子大学文学部卒業後、サッポロビール入社。2004年 早稲田大学大学院経済学研究科修了、松下政経塾での研修を経て、2005 年・2009 年 武蔵野市選挙区で都議会議員選挙に当選。2017年 市民の要請により武蔵野市長選に立候補して当選、2021年に再選、2023年11月末退任。現在、立憲民主党東京都第18区総支部長。 >>松下玲子公式HP ―子育て支援の一環として、「無償化」がトレンドとなっている教育ですが、本質的には教師の負担軽減が重要だと思います。その点についてはどのような施策が必要と思われますか。松下議員:教師の負担軽減をどう解決するかといったら、お給料を上げるか、仕事を減らすか、どちらかしかないんです。武蔵野市長時代、私は仕事を減らす事に注力しました。―子どもの多様化、多国籍化、はたまた親対応で、教師の仕事が減らないのですが、どのようにされたのですか?松下議員:小学校の担任の先生って、実は全教科教えてるってご存じですか。―公立の学校は、基本的にはそうですね。松下議員:私は、担任が全部教える必要はないと思ったのです。例えば、図工などは、大学で教員免許を取るために単位を取ったという先生より、美大出身の人とか、音楽なら音大出身とか、より専門性の高い先生に教えてもらった方が、子どもたちも楽しいし、その教科自体が魅力的になると思うんですよ。担任の先生自身も、授業の持ち時間が減らせるので、子どもと向き合う時間が取れるようになるんです。―いわゆる教科担任制は、主要教科を、高学年は専科の先生が教えるようになっていると思います。でも、主要教科ではない先生を1人増やすのは、その分の予算が必要で、そう簡単ではないですよね。どのように実現されたのですか。松下議員:市が雇う専科の先生を1人入れたいって言ったら、最初は「超反発」でした(笑)。武蔵野市で入れて、担任の先生の持ち時間を減らしても、他市では減らない。先生たちは東京都内で異動があるので、専科の先生がいないところへ行ったら、また持ち時間が増えてしまう、と。それでは意味がないんだということを言われました。東京都内の公立小中学校の設置は区や市ですが、教員は全て都の職員なのです。―それでも諦めなかったのですね。松下議員:市長になって1年目は引き下がったのですが(笑)、2年目も「まず、試しに図工、やってみません?」「音楽、やってみません?」と言ってみたら、指導課長(都からの派遣)が変わったこともあり「やってみましょう」ということになって。―まず、一校からですか?松下議員:手を挙げてもらいましたが、その後からは「もっと増やせ」って。だからね、って思いましたよ。子どもたちも、音楽の授業だったら、音楽の専門の先生に教えてもらえた方がイキイキするんです。―増やすといっても、東京都の場合、先生方は都の採用で、都内での異動もあるので、東京都が専科の先生をたくさん採用していく必要がありますよね。松下議員:本来はその通りだと思います。武蔵野市の場合は、市の講師として直接雇用したんです。それもあって、うまく時間割を作れば、市内の全ての小中学校を廻っていただけるんです。その後、国も都も教科担任制を進めましたから、武蔵野市ではそれを先取りしたということになりますね。 参照:武蔵野市独自任用の講師の配置 ―残念ながら先生たちのお給料が上がらなくても、負担が軽減されれば、先生たちもやる気になるのではないでしょうか。松下議員:モチベーションが上がるし、教育的効果が高いと思います。別の例ですが、専門性の高い先生によって、子どもたちの作る作品もすごく良くなるんですね。東京都教育委員会から派遣された先生だったのですが、産休代替教員として来てくださった図工の先生が涙が出るほど素晴らしくて、作品もですが、子どもたちも図工が楽しいって。子どもって、引き出しをいっぱい持っているので、それを上手く引っ張り出してくれるような機会があれば、無限の可能性が拓く。その経験から今の日本の教育って子ども供の可能性を押し込めたり、駄目にしてる気がするって思いましたね。―日本の教育の根源的な問題ですね。一律一様というか画一的というか。他にも教育として変えていかないといけないことについて、どのようにお考えですか。松下議員:正解は一つじゃないっていうことを、子どものときから身につけた方がいいと思ってるんですね。例えば、ディベートなんかはもっとやった方がいいと思うんです。意見が違う人の人格否定したり、打ち負かすことが良いような傾向が、最近特に強いと思うのですが、そうではなくて、反対の意見の人が、なぜそう考えるのかを考えてみる、というのは非常に大事だと思っています。教育もそうですが、人生も、正解って、ないですよね。子どものうちから、議論をしたり、自分の頭で考えたり、ディベートをして反対の立場に立ってみたりとか。今の教育の中では、そういう経験に欠けるのかなという気がしています。―相手の立場に立って考えてみるというのは、とても大事なことだと思います。それ以前に、自分の頭で考えるということも、日本には少し足りないのかなと、私も思いますね。正解は一つじゃないというのは、松下さんが、子どもの頃からお父様のお仕事の関係で、全国規模でたくさんの引っ越し、転校をされた経験が活きていますか。松下議員:そうだと思います! 例えば中学1年まで住んでいた横浜市は、中学も、公立はお弁当なんですね。その後、北海道に転校したら、給食だったんですよ。横浜の時のお友達が餞別に、可愛いお弁当箱をたくさんくれたのですが、使う時がなくて(笑)。高校になったら、家族だけ三重県に引っ越し、私は高校生活があと1年だったということもあって、北海道に残ったんですね。その時、いわゆるホームステイというか、地元のご家族にお世話になったり下宿したりという経験をして、とても鍛えられたと思っています。―そういう多様な経験が、政治家としても活きてきますね。松下議員:都議選では2回落選するという経験もしましたが、元来、あまりくよくよしないんです。母の影響だと思います。それこそ命を失うようなことはしてはいけない、自分も他人も傷つけてはいけない、でもそれ以外は何だっていいのよってよく言ってました。―これからキャリアを積む女性たちに一言お願いします。松下議員:私は、意外と怖いもの知らず、冒険心が旺盛なので、変わることへの不安があまりないんです。失敗することは、怖くないですかって言われると、怖くはないんですね。失敗するのを恐れるよりも、挑戦をしないで後で後悔する方が嫌なんです。失敗も、何が失敗かなどというのは、後にならないとわからないなと思います。だから、失敗を恐れることなく、むしろ失敗も楽しみながら自分の限られた人生を生きていきたいし、できれば人の役に立って、自分の人生だけど自分のためだけではなくて、困っている人や弱い立場にいる人を助けるため、社会にとって、他の人にとって役に立つようなことだったらいいなと思っています。取材・文/政治ジャーナリスト 細川珠生政治ジャーナリスト 細川珠生聖心女子大学大学院文学研究科修了、人間科学修士(教育研究領域)。20代よりフリーランスのジャーナリストとして政治、教育、地方自治、エネルギーなどを取材。一男を育てながら、品川区教育委員会委員、千葉工業大学理事、三井住友建設(株)社外取締役などを歴任。現在は、内閣府男女共同参画会議議員、新しい地方経済・生活環境創生有識者会議委員、原子力発電環境整備機構評議員などを務める。Podcast「細川珠生の気になる珠手箱」に出演中。
2025年04月13日東京都議会議員や武蔵野市長など、地方自治体で取り組んだ経験を持ち、現在は国政の立場から、子育て支援や介護の政策に取り組む松下玲子議員。武蔵野市長時代には、18歳までの医療費や給食費の無償化を実現された松下議員が考える、国の政策として必要な子育て支援や介護の政策とは…?お話を聞いたのは…立憲民主党 松下玲子議員1970 年生まれ、実践女子大学文学部卒業後、サッポロビール入社。2004 年 早稲田大学大学院経済学研究科修了、松下政経塾での研修を経て、2005 年・2009 年 武蔵野市選挙区で都議会議員選挙に当選。2017 年 市民の要請により武蔵野市長選に立候補して当選、2021 年に再選、2023 年11 月末退任。現在、立憲民主党東京都第18区総支部長。 >>松下玲子公式HP ―子育て支援では、自治体が競うように「無償化」に取り組んでいます。その一方で、自治体の財政力によって差が出ることから、子育てに関わる費用は国が責任を持ってほしいという声も聞こえます。自治体の長も務められたご経験から、どのようにお考えになりますか。松下議員:歴史的な経緯で見ると、子育て支援は、国も含めて現金支給より現物支給だったんですね。まずは、保育園の整備や、学校の教育環境をよくするなど、行政による「現物」を提供して、子育て支援の環境を整えようという時代があったと私は認識をしています。それが一定程度落ち着いたら、やっぱりそれでも子どもを育てるのにはお金かかるよね、親だけではなく、社会全体で支えようね、ということで、まずは医療費の無償化ですね。武蔵野市長時代に、高校卒業するまで所得制限も自己負担もない無償化を実現しました。次は、給食費の無償化の道筋をつけました。現物での支援が整ったら、次は現金つまり社会で支えていくことが、子育て支援にとって重要なことだと思っています。―無償化というと、子どもがない家庭などから、「関係ない」と思われてしまうことがあると思います。あるいは、親なんだから、お金がかかっても、それが出せるように努力するのは当たり前じゃないかという声も聞こえますが、そこはどのようにして、市長時代も実現に漕ぎ着けたのですか。松下議員:市長選挙の時に、演説をしていると、独身の女性に怒られたんですね。「私は独身です。子どもはいません。あなたの政策には腹が立ちます」って。その時、私は落ち着いて「お気持ちはわかります」と。「でも、そんなあなた様の老後はどなたが見られますか。よそ様が産んだ子が、あなた様の老後を支える将来の介護の担い手になるんです。どうかご理解ください」と言って訴えました。―反応は変わりますか。松下議員:そう簡単ではありませんが、既に子育てを終えた方たちも含め、社会全体で支えるという意味ではやはり現金給付なんです。それを粘り強く訴えました。―周囲の自治体の反応はどうでしたか。松下議員:武蔵野市は財政力が豊かなので、18歳までの医療費の無償化はできましたが、当時周囲の自治体は、「やっと就学前まで」や「中学まで」というところが多かったですね。でも、私が武蔵野市で18歳までの医療費無償化をした翌年に、東京都が半額補助を出すようになって、他市もできるようになりました。ただ、子どもの医療費無償化はリスクの分散なんですね。怪我や病気のリスクをみんなで支えるというのを、私は子どものうちは国が支えるようにしたいんです。所得制限も自己負担もなく。―武蔵野市長時代に、所得制限を設けずに、無償化されたのも素晴らしいと思います。松下議員:親の所得に限らず子どもは子どもで見るべきなんです。制限を設けることで、一番の弊害は、子どもの中に分断と格差が生まれることです。例えば、今までも就学援助援制度で、所得の低いご家庭は給食費が無償でした。払っている人とそうでない人、結構子どもの世界は残酷で、わかってしまうんです。こういうことは起きてはいけないと思っています。子どもは親を選べませんから。それに、親の所得に関わらず、子どもは平等であるべきだと思っています。―子どもは平等であるべきではありますが、全てのことを無償化にするのも難しいと思います。その中で優先するのは、やはり医療費ですか。松下議員:そうですね。私は市長時代に、医療費を優先しました。―給食費はどうですか。松下議員:憲法で義務教育は無償となっていますが、原材料費だけ長年保護者負担でしたが、やはり無償であるべきだと思います。―修学旅行費の無償化も流行りですね。松下議員:基本的には義務教育期間は、無償で良いと思っているのですが、ただ、学校の独自性もなくなってしまいますね。無償だと決められたプランしかできないとか。ですから、ナショナルミニマムを作って、そこは国が負担するけれど、自治体や学校の独自性を出す観点からは応分の負担は必要だと思います。―今は、子育て支援として、「無償化」を進めていくことが、ある種トレンドのようになっています。そこも否定はしませんが、根本的なことを言えば、教員の働く環境の改善、例えば、親対応や多様な子どもたちへの対応などとても大変で、その負担軽減策が必要だと思うんです。保育士さんのお給料の低さなども、保育士不足の原因にもなっています。子どもの成長に一番大事な時期に、それを担う人たちの労働環境が悪いのは、子どもにとっても良くないことと思いますが、その点はどうお考えですか。松下議員:そこは本当に問題で、「やりがい搾取」とも言えてしまう。ただ、保育士の報酬は公定なので、自治体レベルだと、市長時代には、例えば、保育士さんの家賃補助をしましたが、そのくらいしかできなかったんですね。―公定であれば、国が行うことなので、それは国会議員としても取り組んでいこうとお考えですか。松下議員:はい。保育士もですが、介護士も給与面などの理由で人材確保が難しくなっていることもあり、現場ではさまざまな問題が起こっています。もともと、専業主婦の女性が、家庭で担っていた分野の保育や介護が、異様に低い報酬で設定されているんです。保育も介護も社会が支えていく時代ですから、しっかり取り組んでいきたいと思っています。取材・文/政治ジャーナリスト 細川珠生政治ジャーナリスト 細川珠生聖心女子大学大学院文学研究科修了、人間科学修士(教育研究領域)。20代よりフリーランスのジャーナリストとして政治、教育、地方自治、エネルギーなどを取材。一男を育てながら、品川区教育委員会委員、千葉工業大学理事、三井住友建設(株)社外取締役などを歴任。現在は、内閣府男女共同参画会議議員、新しい地方経済・生活環境創生有識者会議委員、原子力発電環境整備機構評議員などを務める。Podcast「細川珠生の気になる珠手箱」に出演中。
2025年04月09日女性の姓(氏)の問題、いわゆる「選択的夫婦別姓(氏)制度」については、国会で議論されることも難しく、もう30年も続いているテーマです。石破総理は、「別姓に前向き!」と期待した人も多かった中、ちょっと後退気味になったかのような印象も…。武蔵野市長も務めた立憲民主党・松下玲子衆議院議員に、「選択的夫婦別姓」議論をどう進めていくか、お聞きしました。 お話を聞いたのは…立憲民主党 松下玲子議員1970 年生まれ、実践女子大学文学部卒業後、サッポロビール入社。2004 年 早稲田大学大学院経済学研究科修了、松下政経塾での研修を経て、2005 年・2009 年 武蔵野市選挙区で都議会議員選挙に当選。2017 年 市民の要請により武蔵野市長選に立候補して当選、2021 年に再選、2023 年11 月末退任。現在、立憲民主党東京都第18区総支部長。 >>松下玲子公式HP ―立憲民主党としては、今、どのような「選択的夫婦別姓制度」をご検討されていますか。松下議員:今、一つの制度の土台となるのは、法務省がこれまで2度、民法の改正案として準備していたものがあると思います。こちらは、子の氏を、婚姻時に決めるというものです。立憲民主党は、旧民主党時代から、子の氏は、出生時に決めるという制度として、法案を何度か出しています。ただ、30年も、この問題、進んでこなかったので、とにかく「別姓制度」を通したい。そのために、これまでの法案ではなく、多くの党と協議して、できるだけ多くの議員が賛同する制度として、法案を作りたいと思っています。―子どもの氏の選択は、選択的夫婦別姓論議で、大きなポイントになります。松下議員:婚姻時に決めるということにはどうかなと思うのは、結婚は出産が前提ではないし、子どもはやはり授かりものですから、子どもがほしくても授かれない人も多いですよね。個人的な、そして非常にナーバスなことについて決めることには、やはり抵抗がありますね。それに、これからはシニア婚も増えてきますから、そういう人たちにも、子どもの氏を決めておくのかといえば、まあ、必要はないですよね。 ―他には、子どもは全員同じ氏か、後から変えることができるか、変えるとすればどういう方法かなどがありますね。松下議員:法制審の案は、子どもは全員同じ氏で、未成年であれば家庭裁判所の許可が必要としています。子どもの氏を出生時に決めるとすると、そんな短期間で決められるのかとよく言われますが、決められますよ。下の名前だって決めているんですから。 ―そうですね。下の名前も、実際には事前に考えている人も多いと思いますが、氏だってその意味では同じですね。松下議員:そうです。祖父母まで口出してきて色々揉めても、ちゃんと折り合いをつけられるのですから、それと同じだと思います。ただ、とにかく、この制度、成立させたいので、子どもの氏についても、できるだけ多くの人が賛同できる案を作って、柔軟にしていこうと思っています。―この議論、長いですよね。ちょうど私がこの仕事(ジャーナリスト)を始めた頃からありました。それでも、夫婦別氏制度が必要だと思われる理由は何ですか。松下議員:氏(姓)と名前があって、初めて個人として識別能力が高まるんです。「松下」といっても、いっぱいいますよね。「玲子」といったって同じです。「松下玲子」でもちろん同姓同名もいるかもしれないけれど、格段に識別能力が高まります。議事録なども、名前が変わったら、一貫性というものも担保できなくなる。事業継承とか、家の名前を残したいとか、本当に困っている人が、現実にいるんです。別氏制度がないと、事実婚のままの人も増えてきました。そういう方たちは、配偶者が病気になったり、亡くなられたりしても、何の保障もないんですね。困っている方の困りごとは、ちゃんと解決したい。政治の責任と思っています。 ―石破総理は、自民党総裁選で別氏制度には前向きに捉えていらっしゃいました。しかし、総理になったら、少し後退しているかなと思う発言も見られます。まずは議論を、といったことですが、国会での議論、ぜひして欲しいと思っています。子どものアンケート調査結果などもありますが、制度について正しく理解するには、まだ国民の理解ももう少し深めないといけないとも思います。松下議員:経団連が提言したのは大きかったと思います。今まで、どちらかというと反対だったのが、経団連に加盟する企業の女性たちが、特に海外で困っているという実例があったからだと思います。それに加え、男性の中にも、実は改姓や通称使用で苦労している人も増えているんですよね。当事者が増えるというのは、とても大事だと思います。 ―そうはいっても石破総理は、今までの政権より前向きに見えますから、ぜひ進めて欲しいですね。松下議員:この機を逃したら、また30年、できないと思うのです。ですから、できるだけ多くの人が賛同できる案として、立憲民主党も柔軟に対応していきたいと思っています。 取材・文/政治ジャーナリスト 細川珠生政治ジャーナリスト 細川珠生聖心女子大学大学院文学研究科修了、人間科学修士(教育研究領域)。20代よりフリーランスのジャーナリストとして政治、教育、地方自治、エネルギーなどを取材。一男を育てながら、品川区教育委員会委員、千葉工業大学理事、三井住友建設(株)社外取締役などを歴任。現在は、内閣府男女共同参画会議議員、新しい地方経済・生活環境創生有識者会議委員、原子力発電環境整備機構評議員などを務める。Podcast「細川珠生の気になる珠手箱」に出演中。
2025年04月04日女性活躍のフロンティアでもある小池百合子都知事のインタビュー4回目。小池都知事が構想する、女性と東京の未来とは? お話を聞いたのは…小池百合子 東京都知事1952年兵庫県生まれ。92年参議院議員初当選、93年衆議院議員初当選。以降、環境大臣、内閣総理大臣補佐官(国家安全保障問題担当)、防衛大臣、自民党総務会長など歴任後、2016年東京都知事当選(現在、3期目) >>都庁総合HP「知事の部屋」 ―男女雇用機会均等法が成立して、今年で40年。1期生も還暦を超え、女性が働き続けることが当たり前の時代になりました。一方、さまざまな慣習が、女性たちを苦しめている実情がなかなか改善されません。その一つが、私は女性の「姓」の問題、いわゆる「夫婦別姓」の議論が遅々として進まない点にあると思っています。この議論は、小池都知事が国会議員になられたころに始まったと思いますが、石破政権でいよいよ動くのかなと期待しているところです。小池都知事はこの点、どうお考えになりますか。小池百合子都知事:現実の動きとして、数年前から、パスポートに旧姓を併記できるようになったと聞きました。 ――私もパスポートに括弧書きで旧姓を入れていますが、「Hosokawaがミドルネームか」と聞かれることが多いです。「違います」というと、「では何か」と。小池百合子都知事:そうなのですね。ほかにも、研究論文などさまざまな業績が結婚して名前変わることで引き継がれないといったことも聞きます。結婚・離婚の際にも、金融機関でどんなに苦労したかという話を、色々な方がなさっているので、そこはやはり工夫すべきだろうと思っています。―そもそも、法的に担保されていない、いわゆる「通称」で印鑑を押すとか、意味があるのかなと思うことも多いです。小池百合子都知事:名前がいくつもあるというのも、整理すべきときなのだろうと思いますね。 ―最高裁は、夫婦別姓を認めない民法や戸籍法の規定を「合憲」とする判決(決定)を、2度も出しています。一方、15人の最高裁判事のうち、5人は、憲法24条2項(個人の尊厳と両性の本質的平等)に反することなどを理由に、違憲であるという意見を出しています。小池百合子都知事:夫婦の姓に関する制度について、最高裁は「国会で論ぜられ、判断されるべき事柄」としています。結局、国会としての不作為が問われているということだと思います。議論は色々とあると思いますが、議論を深めて、そして結論を出していく時期なのではないかと思います。 ―わかりました。ところで東京都は最近、「100年後の東京の予測」を「2050東京戦略新聞」として出したそうですね。小池百合子都知事:はい(笑)。元々、報知新聞が、明治34年、1901年ですけれども、20世紀のスタートの1月2日と3日に、「20世紀の豫言」という記事を出しているんですね。馬車に代わって車が普及するとか、遠くの人と話ができるようになるとか。これらが何もない時に予測していて、今は、その通りになっていますね。それを参考に、今度は生成A Iを使って、「22世紀の予言」として100年後の東京を予測してみました。従来の発想の延長線上ではなく、これまでにない発想で果敢に挑戦し続けることが重要だと考えたのです。―「地球外へお引っ越し」や「ゴミが消えるゴミ箱」、「住所は竜宮城」など、とても面白いですね。小池百合子都知事:「健康で120歳まで死ねない」とかもね(笑)。人生設計を改めて考えなければなりません。東京都が出した「2050東京戦略新聞」。 2050東京戦略 ポケット版 ―女性の100年後はどうでしょうか。小池百合子都知事:100歳でも子どもを産めるようになるかはわかりませんが、やはりダイバーシティは大事で、それぞれの持っているものを生かして活躍するような社会になってほしいと思いますね。私は、「男女平等」というのはあまり好きではなくて、男女ともに自己実現ができる社会にしていきたいと考えています。100年後と言わず、今すぐにでもなってほしいくらいです。今回策定した東京都の新たな戦略「2050東京戦略」には、都民の皆様からいただいた「もっと東京をこうしたい!」という想いを詰め込んでいます。同時に、人口減少や人材育成など大きな課題に向き合い、今後私たちが進むべき道のりも示しています。要点をまとめたポケット版もありますので、たくさんの方にご覧いただきたいと思います。 最後に、「わ」と書かれた色紙の傍らに、新たに東京のランドマークとして外国人に大人気の渋谷スクランブル交差点を模したハンコが。女性も男性も、誰もが自己実現ができることにより、活躍する。私も100年後を待たず、そんな社会を心から願うが、小池都知事には、その道筋をつける役割を大いに期待したい。取材・文/政治ジャーナリスト 細川珠生政治ジャーナリスト 細川珠生聖心女子大学大学院文学研究科修了、人間科学修士(教育研究領域)。20代よりフリーランスのジャーナリストとして政治、教育、地方自治、エネルギーなどを取材。一男を育てながら、品川区教育委員会委員、千葉工業大学理事、三井住友建設(株)社外取締役などを歴任。現在は、内閣府男女共同参画会議議員、新しい地方経済・生活環境創生有識者会議委員、原子力発電環境整備機構評議員などを務める。Podcast「細川珠生の気になる珠手箱」に出演中。
2025年03月28日当事者として、そして首長として、子育てと子育て支援の施策に取り組む文京区・成澤廣修区長。2回にわたって「子ども起点」で考える区長の施策についてお聞きしましたが、第3回は、文京区の教育施策について。教育機関が集まる文京区で、どのような教育を進められているのでしょうか。 お話を聞いたのは…文京区 成澤廣修区長文京区本郷出身。暁星学園幼小中高、駒澤大学法学部卒業、明治大学公共政策大学院修了、修士(公共政策学)。当時全国最年少の25歳で文京区議会議員に初当選、第37代・第40代文京区議会議長、2007年、文京区長に就任。 >>文京区 区長の部屋HP ―文京区といえば、「教育」。国立の教育機関もあり、人気や期待も高いのではないでしょうか。成澤区長:文京区で教育を受けさせたいという人がすごく多いんです。テレビ等で取り上げられたことで、文京区の特定の小学校に行くと中学受験に成功するというような「神話」が勝手に作られたんですね。全く根拠はないんですけどね。その近隣のマンション価格が上がるなどの現象も起きています。それはそれとしても、教育を考えるときには、世界で活躍できる人材をどう育てていくのか、ということが求められていると思っています。その一つが探究学習と思いますが、他区でもなかなか苦戦していますね。―文京区では違う方策ですか。成澤区長:文京区では2024年度に国際バカロレア機構(IBO =International Baccalaureate Organization)と協定を結んで、今後、IBメソッドを教員研修に取り入れていきます。探究型の思考方法が、世界で羽ばたく青少年たちを育成するために大切だということ、また、インターナショナルスクールも含め世界の高校ではIBスコアをもとに、世界の優秀な大学に行く人たちが増えていることも周知の事実ですね。でも、文京区ではIB認定校を作るのではなく、公立学校の先生たちのマインドセットを変えていくため、まずは教員研修に取り入れることにしました。―それは小学校と中学校の先生が対象ですか。成澤区長:そうです。探究学習というのは、学習指導要領にもある「対話的な深い学び」につながるものですね。それをまず教員のマインドセットからしていこうと。 ―都内でも都心の区では、中学生となるとそもそも私立や国立の学校に行く子どもが多いですね。文京区もその傾向があると思いますが、その点についてはどうお考えですか。成澤区長:文京区は、区立小学校から国立私立などの中学校に進学する子が52%で、区立は48%。区立の中学校に行く子どもが少ないという点においては、23区でトップです。以前は、この傾向を止めるためにどうするのかということが問われましたけれども、そこは本人も含め保護者の選択でもあって、国立私立に行くことが「悪」ではないと思うんです。東京都では、高校への授業料の補助なども始まっていますが、公教育としては、経済的な理由で私立などに行かれなくても、例えば、IBのようなことも取り入れるなど、しっかりとした教育が担保されるように、引き続き考えていきたいと思っています。―今の子どもたちは、将来に向けて、いろいろな能力を身につけることが求められています。例えば、「対話的深い学び」に必要な思考力・判断力・表現力、それから批判的思考や主体性など学習指導要領に明記されていますし、従来から言われている英語力なども引き続き求められていると思います。これらに加え、将来世代を担う小学生が、低学年から身につけていくこととしては、どのようにお考えですか。成澤区長:よく「ディベート力」が必要だと言われますが、本当かな、と思うんですよね。―なるほど。それはなぜですか。成澤区長:ディベートって、相手を打ち負かす話法ですよね。例えば、営業マンが、自社の製品を売ろうとして、打ち負かしちゃったら、売れないと思うんですよね。今、特に高校や大学でディベートの授業をやっていますが、私はそれより、合意形成能力とプレゼンテーション能力が必要だと思っているんです。 ―それには私も同意します。成澤区長:自分の思ってることを正確に伝えられる力と、それによって合意形成力を高めていくということですね。相手を批判するよりも、自分の「好き」をちゃんと人に伝えられる力がある方が、将来、どこに行っても通用できると思うんです。そのためにプレゼンテーション能力の授業を課外活動でやったりしています。そういう流れの中でIBO との連携も出てきました。具体的なカリキュラムは教育委員会で考えることですが、大きな枠組みという意味で、IBOとの協定を結ぶことにしました。 ―新しい教育などは、なかなか学校単体や、ましてや教師一人ができることではないので、区長が「合意形成能力を育てる」というようなことを掲げることはとても大きいと思います。それによって、区の方針になりますから。成澤区長:先日、徳川宗家第19代当主の徳川家広さんにお会いしたときに、一番美しい日本語は「平和」だとおっしゃるんです。「平」はNo War、つまり戦争がない状態。ポイントは「和」である、と。英語のpeaceは、No Warなので、どちらかというと「平」。ですから、「和」こそが日本的であるということなんですね。それは「合意形成」につながることだと思いました。私も学生の頃は大学対抗のディベート大会なども出たりしていましたけれど、社会人になって一度も、使ってないですから(笑)。 ―成澤区長には、「お人柄」によって、ディベート力は必要ないですね(笑)。教育へのリーダーシップも期待しています。成澤区長:ありがとうございます。「子ども起点」の教育をしっかり考えていきます。取材・文/政治ジャーナリスト 細川珠生政治ジャーナリスト 細川珠生聖心女子大学大学院文学研究科修了、人間科学修士(教育研究領域)。20代よりフリーランスのジャーナリストとして政治、教育、地方自治、エネルギーなどを取材。一男を育てながら、品川区教育委員会委員、千葉工業大学理事、三井住友建設(株)社外取締役などを歴任。現在は、内閣府男女共同参画会議議員、新しい地方経済・生活環境創生有識者会議委員、原子力発電環境整備機構評議員などを務める。Podcast「細川珠生の気になる珠手箱」に出演中。
2025年03月26日全国の首長で初めて育休を取った文京区の成澤区長。当時、ゼロだった文京区役所の男性職員の取得率も、今や77.8%%にまでに上昇。しかし、成澤区長は長時間労働の是正こそが、最大の子育て支援といいます。そんな成澤区長の考える、文京区の子育て支援策とは? お話を聞いたのは…文京区 成澤廣修区長文京区本郷出身。暁星学園幼小中高、駒澤大学法学部卒業、明治大学公共政策大学院修了、修士(公共政策学)。当時全国最年少の25歳で文京区議会議員に初当選、第37代・第40代文京区議会議長、2007年、文京区長に就任。 >>文京区 区長の部屋HP ―文京区の子育て支援策の基本的な考え方はどのようなものですか。成澤区長:「子ども起点」であるということですね。長時間労働と長時間保育のバランスをどう取るのか、という問題があります。文京区の共働き世帯の場合、子どもが小学生ですと、公的な学童、さらに民間の学童が迎えに来て、そこでお弁当を食べて、夜9時とか10時に帰って、また朝は学校があるので8時くらいには家を出てしまうというケースがあるんですね。そういう働き方しかできないのはどうなのだろうか、と思っているんです。子どもを大切にする子育てのために、親がどう働き方を変えるのかを考える。こういう考えが、社会で共有されないといけないと思っています。もちろん国や都の補助制度を使って他に選択肢がないギリギリの子育てをしている人への支援は検討しますが、これ以上の長時間保育がベストとは思わない。―手厚い学童の提供は、起きている時間のほとんどを家で過ごせないことになってしまいます。それは子どもにとってはとても大変なことだと、私も思ってきました。成澤区長:週休二日制にするときもでしたが、さまざまな働き方の改革は公務員の世界から始まっているので、そういう意味でも、文京区役所が率先してやっていくという姿勢でいます。いくつかの自治体でも行うようですが、この4月から職員を対象に、現在、子どもが小学校3年生まで認めている育児時短勤務を、6年生までと拡大します。フルスペックで働くより、給料は少し下がるかもしれないけれど、パパとママで交代で取るなどして、少しでも子どもと向き合う時間を作っていくことは、この拡大でできるようになると思っています。―長時間労働の是正につながりますよね。成澤区長:そうですね。あと勤務間インターバル制度ですが、時差勤務制度の活用や年次有給休暇の取得などにより、終業後翌日の始業までに12時間のインターバルを取ることを原則とすることが、今年の2月から義務化されています。 ―時短勤務は少子化対策のためというのもあると思いますが、私は子育て世帯の男性の時短勤務を進めないと、結局女性の家事負担が減らなくて、女性のキャリアパスにも影響が出てきてしまうと思っているんです。男女共同参画っていっても、公平ではない。ただその時に、2つ問題があるという話になります。一つは、男女共ですが、短い時間の勤務ではキャリアとして経験が積めない、例えば、責任ある仕事を任せられないということですね。もう一つは、早く帰ることに対しての周囲への遠慮。この2つがあって、時短勤務はなかなか取りづらいといわれています。成澤区長:時短勤務といっても、午前中丸々休んだりするわけではないので、キャリアロスにつながるということは、私はないと思っています。勤務時間インターバルも義務化するということは、それが一般的になるので、問題ないと思っています。ただ、役所の仕事はどうしても繁忙期があるので、そういうときはテレワークに振り替えるということもできます。それが決してキャリアロスにならないというメッセージを、雇用する側がしっかり出していくことが大切だとも思っています。 ―文京区民の方は、職住接近の方が多いのではないかと思いますが、子育て支援策に何か影響はありますか。成澤区長:制度としてあまり影響ないと思いますが、長時間保育へセーブをかける理由にはなると思います。子どもが熱を出したなど、何かあっても、職場から1時間もあれば戻れる距離ということだと思いますので。 ―子育て支援策の検討は、どのような体制でなさっているのですか。成澤区長:区の条例で定める「子ども・子育て会議」で、毎年ニーズ量の策定結果を示して、ニーズ量にどうやって事業を当てはめていくかという作業を、毎年更新しています。ただ、子育て支援のメニューというのは、もう出尽くした感があるんです。―もうかなりやっている、と?成澤区長:というよりは、「子ども支援」と「子育て支援」は違うんですね。子育て支援というのは、えてして親支援なんですね。保育園を作ることも、親の両立支援です。心理的負担感の軽減という意味では相談機能の強化としての、「地域の子育て支援拠点」づくりとか。あとは金銭的負担の軽減、最近でいうと給食費の無償化とか。 ―給食費や修学旅行の無償化は、ある意味、トレンドですよね。成澤区長:どれも財政との関係もあるので、この先の少子化の状況次第では税収も減るので、今より支援ができなくなることもあるかもしれませんが、今は、その支援も必要だということでやっています。その中で、子どもそのものに対する支援って、何があるんだろうというと、実はあまりないのです。今後「子ども支援」をどう作っていくのかということは考えています。 ―それこそが、先ほど区長がいわれたような、「親子が一緒にいる時間」ではないかと思います。子どもは学校や学童も、もちろん楽しんでいるとは思いますが、子どもなりに「外の顔」で過ごしていると思うんですよね。家でリラックスできる時間を作ってあげるという意味でも、親が早くに家に帰るということは大事だと思います。成澤区長:そうですね。支援は、負担とのバランスでもあるので、「子ども起点」の視点を大事にして、これからも施策を考えていきたいと思います。取材・文/政治ジャーナリスト 細川珠生政治ジャーナリスト 細川珠生聖心女子大学大学院文学研究科修了、人間科学修士(教育研究領域)。20代よりフリーランスのジャーナリストとして政治、教育、地方自治、エネルギーなどを取材。一男を育てながら、品川区教育委員会委員、千葉工業大学理事、三井住友建設(株)社外取締役などを歴任。現在は、内閣府男女共同参画会議議員、新しい地方経済・生活環境創生有識者会議委員、原子力発電環境整備機構評議員などを務める。Podcast「細川珠生の気になる珠手箱」に出演中。
2025年03月20日2010年に全国の首長で初めて育休を取られた文京区の成澤廣修区長。その後、各地で首長や議員が男女問わず産休や育休をとるようになり、大きく社会が進展するきっかけとなりました。しかし世の中全体を見渡すと、男性の育休取得率は約3割(30.1%。厚労省令和5年度雇用均等等基本調査)にとどまっています。男性の育休取得のパイオニアでもある成澤区長、男性の育児参加について、どう思っているのでしょうか。お話を聞いたのは…文京区 成澤廣修区長文京区本郷出身。暁星学園幼小中高、駒澤大学法学部卒業、明治大学公共政策大学院修了、修士(公共政策学)。当時全国最年少の25歳で文京区議会議員に初当選、第37代・第40代文京区議会議長、2007年、文京区長に就任。 >>文京区 区長の部屋HP ―首長さんとして初めて育休を取られてから15年。この15年の変化をどうご覧になりますか。成澤区長:父親の育児参加はこの15年で加速度的に進んだと思います。僕は制度としての育休ではないので(※特別職なので、特別休暇として。筆者注)、「なんちゃって育休」と言っていますが(笑)、当時は区役所でも男性職員の取得者は1人もいませんでした。それが、令和5年度は、77.8%。出産時に取得する「出産協力休暇」は有給ですが、これはほぼ100%なので、男性の育児参加は当たり前になっているといえますね。 ―77%というのは、男性の取得率としては高い方ですね。成澤区長:そうですね。ただ、女性は、取得期間が平均1年なのに対して、男性は、1日でも10日でも1年でも、カウントとしては「1」で変わりないので、取得率にこだわるのはあまり意味がないと思っています。とはいえ、男性の育児参加を社会が必要とし、それに社会がきちんと対応しているということは大きな変化かなと思っています。 ―育休の取得は、日数もですが、タイミングも重要ですよね。成澤区長:出産協力休暇に加え、「パパ・ママ育休プラス」で取りたい時に取れるようになっているので、ママが復職するタイミングや保育園に通い始めるタイミングで、短期で取るケースもありますね。ママが早めに復職するためにパパが長期で取るケースなど、それぞれのご家庭でカスタマイズしているように思います。 ―成澤区長が期待する男性の育休のあり方はありますか。成澤区長:僕は、育休より、長時間労働の是正が重要だと思っているんです。親のニーズに応えると、1時間でも長く預かって下さいということになるのですが、それは子どもの成長からすると、必ずしも望ましい形ではない。お父さんにせよお母さんにせよ、1時間でも早く会社から家に帰るという社会にしないとダメだと思うんですよね。育児時間と2人目出産へ向かう場合に相関関係があることは、厚労省のデータでも示されているのに、社会全体が、長時間労働是正に本気で取り組む方向にいっていないということは大きな疑問です。 ―子育て支援が子育て放棄支援になる、と私も都内の自治体で教育委員をしていたときに、議員さんからよく指摘されていました。成澤区長:長時間保育の方に議論が行きがちになるのは、卵とニワトリかもしれませんが、僕は、長時間保育の方に進めば進むほど、長時間労働は解決されないと思っています。公的なコストとしても、早く家に帰り、長時間保育にならない社会の方が、安くなるんです。―男性の育休取得が進まない理由に、「男が取るのか」とか、男性自身も自分の仕事とのタイミングなどで、「今、取れない」というような意識があります。仕事とのタイミングでいえば、本来、女性も同じ。そういった「意識」や「組織文化」のようなところで、成澤区長が育休を取られたことによって、区役所が変わったということはありますか。成澤区長:僕の取得後に、「男性職員の育児休業等取得促進実施要綱」というのを作りました。ポイントは、所属長である課長、あるいは部長が、部下に子どもが生まれるという話を聞いたら、その部下には育休を取る権利があるということを伝えるというところですね。取る方は「なかなか言い出せない」という悩みを聞いていたので、上司が勧めるという制度設計にしました。希望者は取りやすくなっていると思います。 ―他にも、ご自身で経験されたことによって得られた育児の知見というのはありますか。成澤区長:これまでもよく言ってきたのですが、自分が育休を取るときに、せっかく家にいるからと思って、本や役所の資料をたくさん持ち帰ったのですが、結局、育休の2週間の間に、一枚も読めませんでした(笑)。育児は四六時中、やることがあるというのは、体験によってわかりましたね。 ―お子さんや奥様に対して、経験されていなければわからなかったことだろうということで、よかったなと思うことはありますか。成澤区長:生後2カ月の子どもの成長を間近で見て、子どもとの接し方がマインドセットできたかなと思います。妻に対しては、自分ごととして考えることができるということが、一番違うのではないかなと思いますね。誰か(妻)から聞いて学んだことというのではなくて、当事者として参加できたということは重要だったと思います。―成澤区長は、当事者として子育て支援策を考えるお立場にありますが、当事者ではない首長さんや経営者の方が多いと思うんです。その場合はどうしたら良いと思われますか。成澤区長:男性が産婦人科医になってはいけないかといえば、そうではないですよね。事例を学び、経験を積むことで、立派な男性の産婦人科医になられている方はたくさんいます。それと同じだと思っていて、首長1人が政策を作るのではないので、当事者の意見に耳を傾け、先輩、後輩の話にも耳を傾け、その中にあるさまざまな気づきを積み上げていくことが大事だろうと思います。ただ、先ほどの長時間労働と長時間保育の話になると、対立を生んでしまうこともあるので、そうならないよう、両者の意見にちゃんと向き合うということは、政策を作る者として大事なことだと思っています。 ―育休取得も、決して強制はしない、とおっしゃっていましたね。成澤区長:取得した当時は、よくそう言っていました。子育てと、例えば住宅ローンを抱える時期が同時だとすると、育休によって給料が減るというのは当事者にとって大変だと思ったからです。今は、取りたいときに取れるなど、各家庭でカスタマイズすることができる環境を作ることと、そういう社会の風土造りが大事だと思っています。取材・文/政治ジャーナリスト 細川珠生政治ジャーナリスト 細川珠生聖心女子大学大学院文学研究科修了、人間科学修士(教育研究領域)。20代よりフリーランスのジャーナリストとして政治、教育、地方自治、エネルギーなどを取材。一男を育てながら、品川区教育委員会委員、千葉工業大学理事、三井住友建設(株)社外取締役などを歴任。現在は、内閣府男女共同参画会議議員、新しい地方経済・生活環境創生有識者会議委員、原子力発電環境整備機構評議員などを務める。Podcast「細川珠生の気になる珠手箱」に出演中。
2025年03月12日3月8日は、「国際女性デー」。女性のエンパワーメントをテーマに、世界中でイベントがたくさん開催されています。その中で、1995年に世界189カ国が採択した、「北京宣言」と、貧困、教育、健康、暴力など、女性の地位向上とエンパワーメントを達成するために優先的に取り組むべき12の重大問題領域が「行動綱領」として採択され、今年でちょうど30年。この宣言と行動綱領が採択された「第4回世界女性会議」に当時、衆議院議員として出席していた小池百合子東京都知事に、日本における女性のエンパワーメントの30年、そしてこれからについて、お話をお聞きしました。お話を聞いたのは…小池百合子 東京都知事1952年兵庫県生まれ。92年参議院議員初当選、93年衆議院議員初当選。以降、環境大臣、内閣総理大臣補佐官(国家安全保障問題担当)、防衛大臣、自民党総務会長など歴任後、2016年東京都知事当選(現在、3期目) >>都庁総合HP「知事の部屋」 ―1995年の「北京宣言」から30年となりましたが、当時、会議に出席されていた小池都知事として、日本、そして世界の変化をどうご覧になっていますか。小池百合子都知事:はい、この会議に出席していました。日本の政府代表が、当時の官房長官で、代表が男性でいいのか、と議論になったのをよく覚えています。この会議の成果としては、日本が世界の流れに取り残されないように、日本もやっとお尻に火がついた、やっと一歩前に進める、そんな節目の会議になったように思います。―今の世界の女性リーダーのラインナップを見ていると、この30年の間に、きちんとキャリアパスを作ってきたんだなと思うんです。リーダーとして登用されるための経験を当たり前のようにできている。その点、日本はどうなんだろうと思います。小池百合子都知事:意思決定の場に女性が存在すること、そしてそれが当たり前になれば、女性が社会の中で活躍する舞台も格段に広がっていきます。日本の場合は残念ながら、ジェンダーギャップ指数も146カ国中118位。「去年(125位)よりいく分上がって、下がらなくてよかったね」といった反応はどうかと思いますね。日本は国会をはじめ、多くの会議で、景色は真っ黒な背広ばっかり。この光景は、世界から見たら、非常に特殊に見えますね。国内にいると、こうした光景が当たり前になっています。1人女性がそこに加わっただけでニュースになり、しかも、ああよかったねというゆるい反応で終わってしまう。こういう状況が、残念ながら長年繰り返されています。―ジェンダーギャップ指数を押し下げている要因の一つが経済と政治分野です。経済ですと企業での管理職、役員の登用率が低いということですが、政治も女性の政治家が残念ながら少ないですね。昨年の衆議院選で少し増えて15.7%、参議院の方は25.4%となりましたが、政治分野のジェンダーギャップ指数を改善しない限り、この順位が上がらないのですが、どういうことが必要だと思われますか。小池百合子都知事:女性自身もリーダーシップはもちろん、同時にフォロワーシップの両方を学んでいく必要があると思います。昔から、意思決定の立場である女性閣僚をもっと抜本的に増やすべきと考えているのですが、なかなか相応しい人はいないと思われているみたいなんですよね。―いないですか?小池百合子都知事:チャンスが与えられれば、しっかり活躍する方はたくさんいます。でも、間違いを起こしてはいけないからと、女性を選ぶことがリスクになると考える人がいるみたいで。―リスクですか?小池百合子都知事:むしろ女性が登用されない方がリスクだと思いますね。―その通りです。その中で、小池都知事は、「女性初」と言う冠がつくようなご経験を多数されてこられましたけれども、そのことについてはご自身ではどう思われていましたか。小池百合子都知事:私は、自分が選ぶというより、周りの方に認めていただいて選ばれるケースが多いですね。閣僚にしてもトップが選ぶわけで。選ばれた時はとてもありがたかったですし、いただいたチャンスですから、思い切ってやりたいことをやろうと。環境大臣の時に始めたクールビズも、キャッチコピーまで自分で考えたんですよ。当時の新聞の全面広告で「夏、男性がネクタイをはずせば、女性のひざ掛けがいらないオフィスになります。」と呼びかけました。―クールビズは、夏場、男性が軽装になることによって、女子はエアコンで過度に体を冷やすことがなくなるという効果は、やはり女性大臣だからこそ気づくことなのかなと思っていました。小池百合子都知事:省エネのため、ももちろんありますが、私、もともとエアコンが苦手でして。今でも、エアコンの向きを考えて座る席を選んだりするくらいです。でも、これは環境大臣だからこそだと思います。繊維産業を管轄している経産省では、ネクタイ業界などから反対されてしまい、前に進むのが難しかったと思います。―省エネにも、女性にも、そして軽装になって楽なのは、男性もですよね。「よかった」と思う人は、意外に多かったと言うことでもありますよね。小池百合子都知事:やはり「共感」ですね。大義ある政策を進めるには、受け手となる方の「共感」を得ることが大切です。ネクタイ業界にはだいぶ怒られましたが(笑)―こうして女性が活躍して色々な視点から政策が考えられることは、すごくいいなと思うのですが、そもそも女性活躍の目標は、私は「自立」ということだと思うんです。経済的自立が精神的自立にもつながる。その観点から、都庁で取り組まれていることはありますか。小池百合子都知事:都庁の職員も、男女で昇進のチャンスは同じ。いま女性管理職の比率は約2割ですが、これを2035年までに30%に引き上げる目標を掲げています。まずは、女性職員にできるだけ管理職試験を受けてほしいと思っています。家庭と仕事の両立に悩む職員も少なくありません。こうした職員が気軽に利用できるキャリア・メンター制度もつくりました。また、東京都では、「Women in Action」の頭文字をとり「女性活躍の輪(WA)」を掲げていて、企業の経営層と女性経営者、女性首長など、多様な主体を一つにつなげる取組を行っています。その一つに、政治分野の女性参画を進めるための「女性首長によるびじょんネットワーク」があり、全国の女性首長に参画いただいています。風向きは確実に変わっていて、知事就任時、東京23区の女性区長はお一人だけでしたが、現在は7名にまで増えました。今日は記念に色紙に文字を書いてきました。「わ」は、リングの「輪」と和をもって尊しとなす、を意味する「和」の2つをイメージしています。落款印は東京の象徴とも言える渋谷スクランブル交差点をモチーフに―小池都知事はもともと、女性の自立ということを目指して人生の選択をされてきたのですか?小池百合子都知事:私の場合は母が、結婚しても、いつ何が起こるかわからないから、自分で生きていけるようにしないといけない、と言われてきました。そのためには自分が好きなことをしなさい、好きなことじゃないと長続きしないから、と。好きなことで自立して、自分の人生を歩んできた、ということです。―キャスターから国会議員になられて、その先に、都知事というお立場があって、これは想定されてきたことなのですか。小池百合子都知事:全然想定してなかったですね…。―どのあたりまでを目標とされてこられたのですか?小池百合子都知事:目標という意味では、海外、世界でしょうか。視野を広く持つことを常に意識してきました。―では具体的なキャリアは、何かご縁、みたいなものですか。小池百合子都知事:全部、ご縁ですね。節目、節目で声をかけていただいて。―その時に、やってみよう、と思われるのは、どうしてなんですか。小池百合子都知事:面白そうだから(笑)。それに、人のご縁を大事にしてきた結果かなとも思います。―なるほど。日本の女性は管理職にどう?と言われても、「いえ、私なんて」と奥ゆかしく遠慮する方が多いのですが、ここは、せっかく声をかけていただいたということに感謝しつつ、頑張ってみる、という意識も必要ですね。小池百合子都知事:私の場合、最初に声をかけていただいた時はテレビ番組のアシスタントとしてでした。生放送の番組で私が自分の考えを言うと、視聴者から「生意気だ」と苦情の電話がくるんです。実際に、自分でも抗議の電話を受けました。―ご自身で?小池百合子都知事:そうです。当時、女性は、大体「は行」で返せばいいと言われました。「はい」って聞いて、「ひ」はないですが、「ふうん」「へえ」「ほう」。それでいいって(笑)。「は」行ですませる。今じゃ考えられませんよね。―そんな経験を経て、メインのキャスターになられたときは、思いっきりご自分の色を出せる、って思われたのですね。女性の場合は、子育てを経て、新たなことにチャンレジして復職を目指すと言う人も多いのですが、それに限らず、女性だからこその自立へ向けた支援策は何かご検討されていますか。小池百合子都知事:再就職支援やリスキリング、最近では「年収の壁」問題への対応など、都の支援メニューを年々充実させています。根底にあるのは、女性のキャリア形成と、妊娠・出産といったライフイベントとの両立を支えたいという思いです。2年前に卵子凍結に向けた支援を始めました。説明会への申込者は累計1万5千人を超えるなど、大きな反響をいただいています。産みたい時期と産める時期にはギャップがあり、出産を遅らせている間に加齢をしてしまう現実があります。色々課題はあるのですが、ニーズにしっかりと応えていきたいと思っています。来年度の予算規模は今年度の倍の4,000件を予定しています。―選択肢を増やすということですね。小池百合子都知事:自分のキャリアメイクと、出会い、そして妊娠・出産といったライフイベントの間で、何を優先するか、何とか両立できないか、悩まれる方が大勢います。そのために卵子凍結は一つの手段だと思います。加えて、プレコンセプションケアは、若いうちから、将来の妊娠・出産に関する正しい知識を身につける点で大事です。それぞれの年代に合わせた支援策や普及啓発を行うことで、皆さんの自己実現を支えていきます。取材・文/政治ジャーナリスト 細川珠生政治ジャーナリスト 細川珠生聖心女子大学大学院文学研究科修了、人間科学修士(教育研究領域)。20代よりフリーランスのジャーナリストとして政治、教育、地方自治、エネルギーなどを取材。一男を育てながら、品川区教育委員会委員、千葉工業大学理事、三井住友建設(株)社外取締役などを歴任。現在は、内閣府男女共同参画会議議員、新しい地方経済・生活環境創生有識者会議委員、原子力発電環境整備機構評議員などを務める。Podcast「細川珠生の気になる珠手箱」に出演中。<東京都の女性活躍推進の取り組み>▼女子中高生向け女子大学生との座談会日時:3月16日(日)13:00~16:30開催場所:東京ウィメンズプラザ(東京都渋谷区神宮前5-53-67)参照URL: ▼女性活躍推進状況を確認・課題を分析できる「女性活躍推進度診断ツール」参照URL: ▼ライフイベントや働き方の変更による生涯収支への影響を簡単に試算できるシミュレーター「イフキャリ」参照URL:
2025年03月07日女性活躍と子育て支援について、国としてどんな政策を考え、実行しているのかを、2回にわたってお聞きしてきた内閣府副大臣の辻清人衆議院議員。4歳から17歳まで海外(カナダ、フランス)で生活し、日本で大学を卒業した後も、大学院とシンクタンク勤務で米国に滞在。人生のほとんどを海外で生活した、正真正銘の"グローバル人材"である辻副大臣の目に映る日本という国、そして日本の若者とは?お話を聞いたのは…辻清人 内閣府・こども家庭庁 副大臣1979年9月7日東京都出身、45歳。4歳から17歳までをカナダで、25歳から32歳までをアメリカで過ごす。京都大学経済学部卒業、米コロンビア大学公共政策大学院修了。米戦略国際問題研究所(CSIS)研究員。TOKYO自民党政経塾7期生。※辻の表記は一点しんにょう。 >>辻清人公式HP ―海外生活の長い辻さんには、日本というのはどんな国に映っていますか。辻副大臣:日本に来て感じたのは、特に政治や経済の分野ということになるかもしれませんが、社会問題に相対するときに、個人的な問題を、そのまま公的な問題に膨らます人が多いということですね。―どちらかというと、海外の方が、個人の問題から発展して社会の制度が変わるという印象を持ちます。辻副大臣:私の場合、海外と言っても西洋になるので、その観点からすると、個人の考えから結社してムーブメントを起こすというのは、確かにあります。しかし、社会のシステムや法律を作るときには、感情論と制度論はうまく切り分けられていると思います。「私が苦しんでいるから、周りもみんな苦しんでいるはず」という前提は、やはり西洋の場合はないかなと思います。―対して、日本は?辻副大臣:法律ではないけれど、みんながこう思ってるいから、こうしようという社会的な圧力があって、誰も決めてはいないけれど、それに従わざるを得ない空気があるような気がしますね。例えば、結婚とか、服装とか、あと何時に集まるとか。―空気を読むことが大事と考えられているところはありますよね。辻副大臣:そう。出社時間は9時なのに、8時半には集まるのが「普通」みたいな。8時50分に来る人はなんかちょっと変わってるというような、個人の感情が集まって集団心理になって、その集団心理っていうのは、結局、ともすればムラ社会とかいろんな言葉で形容されますけど、少なくとも私が経験した西洋の場合も、個人の考えはもちろんあるんだけれど、それと制度は切り離しているんですよね。始業は9時だから8時59分59秒に来ても、ちょっと遅いなとは思うけれども、間違ってはないはずなのに、99人が8時半にきて、1人だけ59分に来ると、何かの査定の時に、「あの人、ちょっとね」というような集団心理で誰かが傷ついてしまうことっていうのもあると思うんですよね。―それ、私もよくわかります。会議開始の10分前に行って、私以外みんな席についていて、会議の時間には決して遅れてないのに、「遅くなってすみません」と言うことに、すごく違和感を覚えました。辻副大臣:何となく周りの常識に合わせることで無駄な争いごとがなくなったり、何も議論をしなくても、1日が終わるというのは、まさに日本が良しとする「和」ということなんでしょう。ただ、法律でも戒律でもない、ある種の慣習というものをたくさん作っていて、それが制度とは別のところで動いているというのは、悪い部分もあるのではないかと思うんです。―いわゆる「同調圧力」のようなものだと思いますが、やはり多様性が尊重されていくのは、日本では難しいのかなと思ってしまいますね。辻副大臣:多様性のあるところでは、集団でもいろんな考え方があって、それに依拠するとまとまらないから、一つのルールがあると思うんです。ただ今回の大統領選を見ると、アメリカも、多様性のあり方を強烈に示してきた一方で、それに対して「どうなの」という思いに共感すると、それで勝ち抜くこともできた。そう考えると、日本もアメリカも、結局みんな同じ人間なので、現象としては同じことが起こりうるんだと思います。―政治家として、日本社会にいるからこそ感じることはありますか。辻副大臣:今、法律を作る仕事をしている身としては、日本のそれぞれのコミュニティにある自前のルールみたいなものを吸い上げるプロセスというのは、当初は面倒なことと思いましたが、日本は日本の文化があるので、それはとても大事なことだと、今は思います。ただ、それゆえに時間がかかってしまうことは、AIやサイバーなど、日進月歩で世界が動いている時に、ボトムアップ型より、国が主導して意思決定を速くして、国民を守らないといけない分野もあると思います。―若い世代には、政治との向き合い方として、どのようなことを期待しますか。辻副大臣:政治に対して、恐れずに議論し、参加してほしいですね。普段から議論や考えることをせずに、いきなり選挙のときにキャッチーな言葉を聞くと、それに流されてしまうと思うんですね。最終的に、国民は納税者、タックスペイヤーとしての責任として選挙に行ってほしいと、そう思っています。―最後に、辻さんは政治家としては、どのようなことを心がけたいですか。辻副大臣:我々のように現役の子育て世代の議員は、同じ世代の方々の意見を手厚く聞くということを心がけたいと思っています。今を生きる人たちに、より幸せになってほしい。稼いで、子育てもして。そのためにも、政治に興味を持ってほしいと思っています。取材・文/政治ジャーナリスト 細川珠生政治ジャーナリスト 細川珠生聖心女子大学大学院文学研究科修了、人間科学修士(教育研究領域)。20代よりフリーランスのジャーナリストとして政治、教育、地方自治、エネルギーなどを取材。一男を育てながら、品川区教育委員会委員、千葉工業大学理事、三井住友建設(株)社外取締役などを歴任。現在は、内閣府男女共同参画会議議員、新しい地方経済・生活環境創生有識者会議委員、原子力発電環境整備機構評議員などを務める。Podcast「細川珠生の気になる珠手箱」に出演中。
2025年03月07日こども政策・少子化対策、若者活躍を担当する、辻清人内閣府副大臣。ご自身も2人の小学生のお子さんを育てる現役子育て世代。子育て支援策は、市区町村がメニューの充実を加速させていますが、自治体の財政力の差に影響されることも懸念されています。地方からは、「本来、国の役割では?」という声も聞こえます。そこで、辻副大臣に、国が進める子育て支援策について伺いました。お話を聞いたのは…辻清人 内閣府・こども家庭庁 副大臣1979年9月7日東京都出身、45歳。4歳から17歳までをカナダで、25歳から32歳までをアメリカで過ごす。京都大学経済学部卒業、米コロンビア大学公共政策大学院修了。米戦略国際問題研究所(CSIS)研究員。TOKYO自民党政経塾7期生。※辻の表記は一点しんにょう。 >>辻清人公式HP ―辻副大臣はこども政策もご担当されていますが、今、国として子育て支援策の柱というのは、どこに置かれていますか。辻副大臣:まずは全体としての底上げですね。こども家庭庁を設立した理由にもなりますが、昨年、こどもに対する政策経費を、2028年度までの3年間で3.6兆円を投じることを決めました。「こども未来戦略」で掲げた3年間の集中的な「加速化プラン」を実施していくことになります。 ―これまでに比べてかなりの増額ということになりますね。辻副大臣:そうですね。スウェーデンは、GDPの16%程度を使っているので、それに比べるとまだまだかもしれませんが、日本も10%の大台に上げるということにしています。子育ての中心は家庭であり、地域や学校だと思いますが、国としては、困窮家庭へのセーフティネットも必要という認識の上、それだけではなく、中間層の方々でも子育てはやはり大変だと思うのです。出産から始まって、育児休業を取得するのも保育園を探すのも大変ですよね。そういったライフステージごとに、こども家庭庁を中心にしっかり支援していくことが必要だと思っています。社会も生活スタイルも変わり、子育ても100年前とは違いますから。―具体的にはどのような内容ですか。辻副大臣:児童手当支給の所得制限を撤廃し、また、従来中学生までであった支給対象年齢を高校生年代まで拡充するとともに、3人以上のこどもを養育する家庭への第3子以降を対象とする多子加算額を月額3万円に増額しました。ひとり親家庭を対象とした児童扶養手当についても、就労収入の上昇等を踏まえた所得制限の見直しを行うとともに、生活の安定のため特に支援を要する多子世帯への多子加算額を拡充しました。令和7年からは、こども3人以上の世帯への大学等の授業料等の無償化の拡充を行うべく、令和7年度予算案を提出しています。―地域によってばらつきがないように、子育て世帯全体に関わる政策の実施ということですね。辻副大臣:私の選挙区は東京ですが、地方から「東京は財源があるからできるけれども、我々は財源がないからできない」とよく言われます。その不公平感がないように、国が一定程度水準をしっかり上げることは必要だと思っています。一方、地方が独自の政策をやりたいということに対して、他との足並みが揃わないからやめてくださいとは、もちろん言いません。むしろそれをやっていただいて、例えば東京や大阪が独自のことを試みて、それが国全体でやるべきことというふうに横展開するベストプラクティスの政策が今後出てくるかもしれないとも思います。ですから、地域の創意工夫というのは、国としては奨励したいと思っています。例えば、医療費は、色々な自治体でいち早く無償化の促進をしていますが、国としての政策とぶつかりませんし、仮にぶつかったとしてもそちらを優先するということはやっていこうと思っています。―医療費を無償化は、子育て世帯には大きいですよね。こどもって、本当によく病院にかかるし、予防接種も自費だと結構高いですからね。辻副大臣:そうですね。例えばこども政策に手厚い北欧などでも、こども政策に必要な経費がどこかというと、やはり医療なんですね。ただ、今、国の施策として足りないところには重点的に行っていきますが、それ以降、国がどこまでやっていくかということについては、社会のあり方を見ながら、常にその時々のニーズを把握していかなければと思っています。 ―子育ては確かに大変で、財政的にも時間的にも苦しい時もありますが、その一方で、子育てに専念することも含め、女性が社会にいることの方が優先され、そのための子育て支援をあまりやり過ぎてしまうと、では親の役割は何かとか、親子を離す方向へ持っていくことで良いのかということに疑問を感じることもあるんです。その中で、国が行う子育て支援が、国の考え方を表す一つになると思うのですが、その点はいかがですか。辻副大臣:こども家庭庁を作ったのは、まさに「こどもまんなか」で、こどもにとって良いことをしようということです。例えば、待機児童が発生しない体制づくりや、男性の育児休業取得率、これは最近3割を超えましたけれども、最終的に8割超えにするといった目標を設定しています。しかし、行政側として、人間がこうあるべきだっていうことを押し付けたいわけでもありません。社会はこうあるべきとか、家族のありようにまで国が口を出すことは極力やりたくないんです。一方で、「こうしたい」ということに関しては、なるべく実現できるようにしたい。私も公職に就く人間ですが、1人の親としては、「こどもと一緒にいたい」という親の気持ちはやっぱりあるんですよね。―政治家だとプライベートは犠牲になって当たり前のように思われてしまうところもありますが、子育て現役世代の政治家の方は、今は、積極的に子育てに参加しているという話も聞きます。辻副大臣:職業に関係ないと思いますが、24時間、こどもをどこかに預けて、では親として楽しいかといったら、決してそうではないと思うんですよね。朝早く起きることも面倒かもしれないけれど、その面倒なことを全部取り除くようなことに国が手を出すのはやはり良くないと思うんです。―私も20歳になったこどもをこれまで育ててきましたが、こどもから学び成長させてもらうこともとても多かったと思っています。そういう部分をもっと声を大にして言わなければ、と思います。辻副大臣:人って、誰かを助けたい、誰かのために役に立ちたいという気持ちがあると思うんです。その対象の一つがこども、とも言えるのではないかと思っています。 子育て現役世代の辻副大臣だからこそ、リアルタイムで感じる親としての思い。それを政策に反映されることを期待したい。取材・文/政治ジャーナリスト 細川珠生政治ジャーナリスト 細川珠生聖心女子大学大学院文学研究科修了、人間科学修士(教育研究領域)。20代よりフリーランスのジャーナリストとして政治、教育、地方自治、エネルギーなどを取材。一男を育てながら、品川区教育委員会委員、千葉工業大学理事、三井住友建設(株)社外取締役などを歴任。現在は、内閣府男女共同参画会議議員、新しい地方経済・生活環境創生有識者会議委員、原子力発電環境整備機構評議員などを務める。Podcast「細川珠生の気になる珠手箱」に出演中。
2025年03月05日トランプ氏が大統領に復帰した米国では、多様性を重視する社会のシステムにブレーキがかかろうとしています。そんな中、日本はまだまだ多様性を進める途中段階。その一つが、女性活躍です。リーダー層にもっと女性を増やすためには、仕事と両立できるような子育て支援策は欠かせません。そこで、第2次石破政権で、こども政策・少子化対策・若者活躍・男女共同参画等を担当する副大臣の辻清人衆議院議員に、お話をお聞きしました。お話を聞いたのは…辻清人 内閣府・こども家庭庁 副大臣1979年9月7日東京都出身、45歳。4歳から17歳までをカナダで、25歳から32歳までをアメリカで過ごす。京都大学経済学部卒業、米コロンビア大学公共政策大学院修了。米戦略国際問題研究所(CSIS)研究員。TOKYO自民党政経塾7期生。※辻の表記は一点しんにょう。 >>辻清人公式HP ―責任あるポストへの女性の登用率をみると、少し足踏み状態です。女性のための施策だけではなく、男性への施策も必要ではないでしょうか。辻副大臣:女性活躍の推進には、内閣府ではもう四半世紀も取り組んでおり、男性の理解を得るための施策の必要性も以前から指摘されてきました。これにどう取り組むかというと、大きく3つあると思います。―男性の真の理解がないと、本当に進みません。どのような「3つの方法」でしょうか。辻副大臣:1つは、政府として数値目標を掲げて、見える化をしていくということです。もちろん政治の分野も同様です。もっといえば、男女隔てなく、色々な職業に就くということに対して、社会が受容することが必要だと思います。「管理職には男性が就くもの」という偏見がまだあるんですね。これは私の体験ですが、小学生の娘に、「社長ってどんな人」って聞くと、「男性」と言いました。「何でそうなの?」と聞いたら、読んでる本や漫画に出てくるからだと。―社会のイメージがまだまだ固定化しているということですね。辻副大臣:日常生活の中で、このポストにはこの性別の人が就く、という凝り固まった常識を変えていかないといけない。数を増やすこともですけれど、男女の隔てなく誰でも色々な職業に就けるという社会を作らないといけないと思っています。―女性の登用という数を増やすだけでも、現状の多くは男性側が登用するので、男性の意識改革も必要だと思うのですが。辻副大臣:方法の2つ目は、女性を増やすことによって、男性にとっても働きやすさにつながるなどのプラス面があるということを強調していくことだと思います。50年前に比べても、女性の社会進出って飛躍的に増えていますよね。それによって社会にはさまざまな変化が起きていますが、日本の社会が崩れたかというと、私はそうではないと思っています。むしろ諸外国と比べてもまだまだ少ない状況なので、ライフステージによって制限されるものを撤廃することも必要ですが、男女ともにバランスよく仕事をすることによって、男性にとってもよい部分、働きやすさにつながる部分を伝え、各界のリーダーが男性の理解を促進する、これが実はすごく大事だと思うんですね。―各企業でもエンゲージメント調査の方法を工夫して、良い部分をアピールすることは大事ですよね。男性側も、「数少ないポストを女性枠で取られてしまう」と被害者意識を持つケースもあります。辻副大臣:8割、9割男性のところが5割女性になったら(自分たちは)どうなっちゃうんだっていう、まるで自分たちが追い払われてるような被害者的な立ち位置でこの議論をしても平行線だと思うんですね。私も決して一方の肩を持つのではなく、いわゆる人間の生き方として、社会全体の中で、働きたい人が働きたい場所で働いて、それが国全体としてもプラスになるっていうことが当たり前であるべきだと思っているんです。エビデンスを示しながら、恐れる必要がないことを伝えていけば、身構えている男性たちとも協力していけると思っています。―政治の分野ではどうですか。辻副大臣:政治家の候補者として色々な女性に声をかけることも必要ですが、圧倒的に男性比率が高い現職の議員にも、理解を促進していただく働きかけをしないといけないと思うんです。双方が何か気まずい感じになると、女性議員も大変な状況に陥ってしまいます。―私も企業で、執行役員以上で女性一人という状況で取締役をやっていましたが、そんな感じでした。常に、会社にとって「異物」でしかないような…。辻副大臣:意図せず目立ってしまうんですよね、紅一点と言われながらやるっていうと。細川さんも苦労されましたか。―強くないので、精神的にボロボロになりました(笑)。辻副大臣:本当にお疲れ様です。あとは、方法の3つ目になりますが、やはり教育だと思います。誰もが、自分のしたいことを見つけて、そのしたいことを行っていくという人生ですね。健康寿命という観点からいくと、生きている間に自分がインプットしてアウトプットできる期間って意外と短いんですよね。その期間に、いかに日本人として生まれた人に充実した生活を送ってもらうかっていうこと。「私はこうだからこれができない」、世の中の事情が原因で前向きになれないというようなことは、なるべく取り払いたいと思うんです。男女の問題もその中の一つだと考えています。偉そうな言い方に聞こえるかもしれないけど、国や地域が、そういうものをなくして、世界に羽ばたいていってほしいって思っています。これは国益の観点からも、個人の観点、親の観点からも、大事なことだと思っています。男女に平等に門戸を開くことは、国の仕事でもあり、地域の仕事、教育の仕事でもあるんだと思うんですよね。次回は、辻副大臣の考える子育て支援・こども政策についてです。取材・文/政治ジャーナリスト 細川珠生政治ジャーナリスト 細川珠生聖心女子大学大学院文学研究科修了、人間科学修士(教育研究領域)。20代よりフリーランスのジャーナリストとして政治、教育、地方自治、エネルギーなどを取材。一男を育てながら、品川区教育委員会委員、千葉工業大学理事、三井住友建設(株)社外取締役などを歴任。現在は、内閣府男女共同参画会議議員、新しい地方経済・生活環境創生有識者会議委員、原子力発電環境整備機構評議員などを務める。Podcast「細川珠生の気になる珠手箱」に出演中。
2025年02月03日「日本はケアラーに冷たい国」という働くママの伊藤たかえ議員。「ヤングケアラー支援法」を成立させて後、「ダブルケアラー支援法案」を国会に提出した。お話を聞いたのは…伊藤たかえ参議院議員1975年生まれ、名古屋市出身。1998年に金城学院大学文学部を卒業後、テレビ大阪に入社。報道記者として事件取材やドキュメンタリー番組を制作。2006年、資生堂を経てリクルート入社。2016年リクルートでの育休中に参議院議員選挙に初出馬。子育て世帯のリアルを日々永田町で訴え、個人の問題と捨て置かれてきた課題を、それは社会の課題・政治が取り組むべきと“これまでの国会にはなかった”政策提言に努めている。 >>伊藤たかえ公式HP ―日本はケアラーに冷たい国、というのは?伊藤議員:日本において育児や介護は未だに “家庭内で完結させること”ですが、イギリスでは1970年代から家族ケアラー支援が注目されていました。ヤングケアラー支援に早くから着手出来たのもその為です。1999年には「ケアラーを支援する事こそが、ケアを必要とする人を支援するための最良の方法のひとつ」と政府が表明し、ケアラーが心身の健康やキャリア、自由時間等、自身の資源を枯渇させることなくケアを全うするには、社会的な支援がどうしても必要になると訴えました。あの自主自立の国アメリカですら、コロナ禍におけるビルドバックベター法※1を成立させる過程では、「ケアラーをケアしなければ、やがて社会は崩壊する」との共通認識が、政治家たちの間にはあったと聞きました。日本はケアラー支援後進国です。―それは、なぜなんでしょう。伊藤議員:日本の“男は仕事、女は家庭”という固定的性別役割分担意識だけが理由ではありません。女性が家の中で家事や育児、介護も全部引き受けてくれれば、家庭内での福祉は完結します。自助が効いていれば、共助や公助に染み出てこないので、行政は福祉予算を使わなくていい。高度経済成長で人口増加フェーズ、働き手も事欠かない時代はそれが合理的だったのかもしれませんが、今は違います。どこも人不足で、女性の力が必要なのであれば、自助に頼るモデルは成立しません。私はケアに着目した法律を書いているのは、そんな課題感からです。―「ヤングケアラー支援法(子ども・若者育成支援推進法改正案)」を今年(2024年)6月に成立させましたね。伊藤議員:2019年から国会で28回質問して、ようやく、です。ヤングケアラーとは育児や介護、障がいのある兄弟のケアや日本語の理解が不十分な親の通訳等を日常的に過度に行っている子どもや若者のことです。日本の“家族の形”には変化が起きています。ケアを必要とする人が増える人が増える一方で、家族の中にそれが担える人は減少し、子ども達にそのしわ寄せがいっている現実があります。国会質疑を始めた当初は「ヤングケアラーなんて名前つけたって、それはお手伝いのことでしょう? 自分たちも子どものころはお手伝いをしてきたし、そうやって大人になっていくものだ。子どもを甘やかしちゃいけない」と、わざわざ注意しに来て下さる先輩議員もいらっしゃいました。ようやく今、ヤングケアラー状態にある子ども達を自治体間格差なく支援するための、法律上の明確な根拠規定を手に入れました。―家族の世話をするのは当然だという考えがある中で、特に子どもだとなかなか言い出せないですよね。伊藤議員:ヤングケアラーは、生まれた時からそれが当たり前だったから、自分がヤングケアラーだと気付いていなかったり、思春期特有の羞恥心から自身の窮状を隠していたりします。自治体に相談窓口があっても、そこに辿り着く情報も交通費もありません。ヤングケアラー支援法は、子どもが子どもらしい時間を過ごせるよう、友達と遊んだり、勉強したり部活に打ち込んだり。それに、ヤングケアラーを放置すれば、介護等の長期化を背景にそのままビジネスケアラー、ダブルケアラーに移行していきます。介護離職が社会問題化している中で、ヤングケアラー問題を放置するわけにはいかないんです。―たしかに入社した会社でいきなり『家族のケアがあるので時短とります』って、なかなか言えない風土がありますよね。伊藤議員:入社したばかりのころって、自分の居場所をつくることに誰だって必死です。われわれの世代は“ワークライフコンフリクト”世代。会社の中で大事な仕事を任されたり、部下が出来たりするタイミングと、家の中に育児や介護が生まれるタイミングが重なる。その両方とも大事で、どちらも頑張りたいからこそ、肉体的にも精神的にも時間的にも衝突が生まれる。まさにわが家がそうでした。この生々しい記憶をもとに先般、育児と介護の両立を支援するための『ダブルケアラー支援法案』を参議院に提出しました。実態把握のための調査を義務付け、それに基づく具体的施策を行うよう政府に求める内容です。―実は私もダブルケアでした。父が脳梗塞で要介護者になった翌年に、息子が生まれて、亡くなるまで6年半、身体介護。その後、母が認知症になって、私の子育ては介護と共存していました。当時は「ダブルケア」という言葉もなくて。伊藤議員:それは本当に過酷だったと思います。そういったダブルケアの経験をした人の感覚が、もっと政策立案の現場にあればいいのですが…。ダブルケアラーは2012年(2016年公表)時点で25.3万人だったのが、2017年には29.4万人と、5年間で約4万人増えています。そしてその9割が30~40代の働く世代です。政府に対応を問うと、育児はこども家庭庁で、介護は厚労省。所管省庁がないから答えられないというのです。社会で起きていることを政策化する力が足りない人たちが意思決定の場にいるのは、社会にとって深刻です。―親の介護のことなども、人に話すと「実はうちも…」と、悩んでいる方が結構多いこともわかりましたね。伊藤議員:色々な人に(外に向かって)話してもらうことで、社会変革をしようと思っています。介護や、あと(子どもの)反抗期もですが、‘世の中ごと(よのなかごと)’にしていくには、みんなが喋った方がいいんです。第1世代の人たちがね、あまりに頑張りすぎちゃったと思うんですよね。「やれます、できます、元気です」って。―そうしないと、仕事が回ってこないって思っていました。私も。伊藤議員:そういうことですよね。それによって、よりスティグマ化してしまう。顕在化しないと、それに対する政策や制度ってできていかないんです。でも今は逆。噴出させる方にバネを利かせていかないといけない。今国会の中で起こっていることも、私一生懸命お伝えします。『違うんです、聞いてください』って。(国会の)外に向かって言いますので、外の方協力してくださいって。ぜひ、よろしくお願いします!子育てや、親の介護のこと、子どもの反抗期、そして自分自身の体の変化ーその中でも仕事をやり続けることに歯を食いしばってきた世代から、苦しいこと、困っていることはなんでも口に出して、みんなで解決する方向へ知恵を絞り、社会の制度やあり方を変えていくことこそ、共助であり公助であろう。伊藤議員は、政策立案における実体験の重要性と、社会制度改革の必要性を繰り返し強調していたが、政治の側にそのような受け皿があるのは、心強い。※1ビルドバックベター(Build Back Better)法: ※参照資料 イギリス更年期革命 イギリスの「更年期革命」は、ダイアン・ダンゼブリングさんという一人の女性が始めたメイク・メノポーズ・マター(Make Menopause Matter)「更年期を社会課題に」という運動。15万人が賛同し、2021年10月には議会ではじめて更年期症状への対策を盛り込んだ法案が審議され対策室が設置された。治療費の補助や企業の対策への働きかけのみならず、更年期症状に対する正しい知識を得るべく中学校で更年期症状を教えることが義務化されるに至った。(伊藤議員のHP の記載内容を筆者が編集)。取材・文/政治ジャーナリスト 細川珠生政治ジャーナリスト 細川珠生聖心女子大学大学院文学研究科修了、人間科学修士(教育研究領域)。20代よりフリーランスのジャーナリストとして政治、教育、地方自治、エネルギーなどを取材。一男を育てながら、品川区教育委員会委員、千葉工業大学理事、三井住友建設(株)社外取締役などを歴任。現在は、内閣府男女共同参画会議議員、新しい地方経済・生活環境創生有識者会議委員、原子力発電環境整備機構評議員などを務める。Podcast「細川珠生の気になる珠手箱」に出演中。
2025年01月20日首都・東京には、多くの外国人が訪れ、また外国人の居住者も増えています。グルーバル人材の育成は、日本が注力するテーマの一つ。「東京は国際都市として、世界の大都市と競争できる人材育成を進めたい」という小池百合子東京都知事に、東京都が進めるグローバル人材育成について伺った。お話を聞いたのは…小池百合子 東京都知事1952年兵庫県生まれ。92年参議院議員初当選、93年衆議院議員初当選。以降、環境大臣、内閣総理大臣補佐官(国家安全保障問題担当)、防衛大臣、自民党総務会長など歴任後、2016年東京都知事当選(現在、3期目) >>都庁総合HP「知事の部屋」 ―グルーバル人材の育成について、どのようにお考えですか。小池百合子都知事:世界は広いです。英語はもちろんのこと、他の言語ができれば、情報量も増えます。そして人脈も増えます。ビジネス一つとってみても、そのチャンスが、2倍、3倍、4倍へと広がっていくのです。日本国内1億2千万(人)よりも、世界80億(人)のマーケットを目指した方がいい。そういう考えで進めてきました。世界を舞台にビジネスチャンスを増やす機会も、東京で作られているとお聞きしました。小池百合子都知事:スシテック東京(SusHi Tech Tokyo)という国際イベントの中で、スタートアップカンファレンスを開催しました。東京発のイノベーションの創出と未来の都市モデルを発信する国際イベントで、当然、英語ベースでの開催です。昨年は82の国と地域から参加者が集まり、434社のスタートアップが出展するなど、開催わずか2年目でアジア最大級にまでなりました。―スシテック(SusHi Tech)というネーミングも面白いですね。小池百合子都知事:Sustainable(サステナブル=持続可能)な都市をHigh Technology(高度な技術力)で実現するという意味です。昨年のスタートカンファレンスでは、参加者は倍増、商談件数は3倍弱など、初開催の2023年に比べ、実績を大きく伸ばしています。社会人に限らず、学生が主体となってセッションやピッチコンテストを運営するなど、様々な方による出会いや交流がありました。―まさに、海外に目を向けるとチャンスが増える、という実績を東京都が示しているということでもありますね。小池百合子都知事:次は、今年5月に「SusHi Tech Tokyo 2025」を開催しますが、スタートアップが海外都市との交流や投資家との商談を行う機会を一層充実させたいと思っています。東京は、国際都市としてロンドンやニューヨークなど、世界の大都市と競争しています。その競争の舞台で活躍できる人材を育てていく必要があります。若者たちが夢に向かってチャレンジでき、グローバルに戦える土壌づくりが重要です。世界を舞台に活躍できる英語力、そして教養を身につける後押しをしっかり進めたいですね。―英語力は当然としても、それだけではない、主体性や多文化への理解なども、グローバル人材としては大事ということですね。都は、「TOKYO GLOBAL GATEWAY(体験型英語学習施設)」の設置や都立高校生の海外派遣研修なども進められています。小池百合子都知事:体験型の英語学習施設「TOKYO GLOBAL GATEWAY」については、都内2か所(江東区青海、立川市)に設置し、大変多くの学校で利用されています。その他にも、都内の公立中学校の3年生を対象とした「英語スピーキングテスト」を2022年度から始めました。都立高校の入試で、この結果を活用しています。みなさん、(英語の)読み書きはできるけれども、話す方はちょっと、とおっしゃいますが、英語のスピーキング力の向上はとても大事なことです。昨年から、高校の授業料を所得制限なしで実質無償化しましたが、重要なのはそこで何を学び、成長するかです。自ら未来を切り拓く力の育成など、人間としての総合力を高めていくことが、日本の強さになると確信しています。グローバルで活躍する人材の育成もまた、「自己実現ができる都市」と言える。首都であり国際都市である東京の強みを最大限活用したグローバル人材育成策の推進を期待したい。取材・文/政治ジャーナリスト 細川珠生政治ジャーナリスト 細川珠生聖心女子大学大学院文学研究科修了、人間科学修士(教育研究領域)。20代よりフリーランスのジャーナリストとして政治、教育、地方自治、エネルギーなどを取材。一男を育てながら、品川区教育委員会委員、千葉工業大学理事、三井住友建設(株)社外取締役などを歴任。現在は、内閣府男女共同参画会議議員、新しい地方経済・生活環境創生有識者会議委員、原子力発電環境整備機構評議員などを務める。Podcast「細川珠生の気になる珠手箱」に出演中。
2025年01月15日成人年齢が18歳へ引き下げられてから、今年で3回目となる「成人の日」。新成人(2025年1月1日現在、18歳に達している人)の推計は109万人で、過去最少だった昨年より3万人増えたとのこと。それでも、新成人のおおよその親世代である第二次ベビーブーム世代からは約半減しています(1995年の新成人は209万人)。親世代そのものが減少しているので、新成人、つまり出生数が増えていくということはなかなか難しいということが、少子化が加速している実態でもあります。一方、例年、9月の「敬老の日」を機に、高齢社会の実態が浮き彫りになります。2024年の高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)は、29.3%と過去最高になりました。75歳以上の後期高齢者も16.8%、80歳以上でも10.4%であり、日本の高齢化率は世界200の国・地域中で最高です。2025年は、年あたり270万人もいると言われている「団塊の世代」が全員75歳以上の後期高齢者になることもあり、今後、ますます高齢化率も上昇。2040年には34%程度まで上がると予想されています。対して、15歳未満人口は11.2%。年々下げ止まりができない出生率かつて、第二次安倍政権以降、出生率の目標を「1.8」としていましたが、最後に1.8になったのは、1984年。以後は、1.8を超えることは一度もなく、2023年は過去最低の1.20でした。出生数も、72.7万人と過去最少でしたが、2024年はさらに下回り、69万人と、70万人を割り込むと予想されています。2020年の国政調査では、70万人を切るのは2030年代後半と予測していたため、少子化は予測を上まわるペースで進んでいるということになります。出生数が100万人を切った2016年以降、9年を経過し、生まれてくる子どもの数は約3割も減っているのです。出生数が低下し、寿命が伸びれば、ますます、「少子高齢社会」の実態は顕著になっていきます。これからより顕著になる社会の課題少子高齢社会となって何が困るかといえば、15〜65歳の生産年齢人口※の減少による人手不足、消費や生産の減少による経済力の低下、人口増を前提とした社会保障制度の行き詰まりにより、年金受給や医療サービスの低下など、国力や生活に直結する課題が挙げられます。これらはすでに看過できない状況となっていることも事実です。特に社会保障制度については、現役世代の負担により現在の受給者を支えるシステムであるため、すでに減少している現役世代の負担を増やし、受給を減らすことで制度を維持していますが、これが「老後の不安」に結びつき、消費の抑制や、非婚化、少子化の原因となっていると考えられています。課題解決に必要なこととは?これらの課題を解決していくには、発想を転換しながら、さまざまな方策をおこなっていかなければなりません。例えば、社会保障制度については、本来、人口減を前提とした制度への転換を図る必要があります。長く議論はされているものの、実行には至っていません。経済力についても、労働生産性を高めるさまざまな方策や、規制、過剰な慣行などを排除することにより、徹底した効率化を進め、人手不足の解消などを図っていく努力が今も行われていますが、まだまだ余地はあると考えられています。また子どもの数に応じて、教員の配置が決められていることから、少子化では教員の数も減らされますが、「個別最適な学び」のために、教員の加配もかなり行われるようになりました。しかしながら、どのような「個別最適な学び」を行うか、その中身が重要であり、子どもが少なくなっている今だからこそ、それぞれの子どもの持っている力を最大限に生かすことのできるような教育に転換し、「人造りは国造り」という教育を今こそ現実のものとすることも、少子化時代だからこその政策ともいえます。ところで、冒頭、新成人のことに触れましたが、成人年齢を18歳に引き下げたものの、かつて成人式と言われていた式典は「二十歳の集い」と名称を変えながらも、今もほとんどの自治体で20歳を対象に、お祝い会が開かれています。※生産年齢人口・・・社会の生産活動を中心となって支える、15〜64歳の人口。文/政治ジャーナリスト 細川珠生政治ジャーナリスト 細川珠生聖心女子大学大学院文学研究科修了、人間科学修士(教育研究領域)。20代よりフリーランスのジャーナリストとして政治、教育、地方自治、エネルギーなどを取材。一男を育てながら、品川区教育委員会委員、千葉工業大学理事、三井住友建設(株)社外取締役などを歴任。現在は、内閣府男女共同参画会議議員、新しい地方経済・生活環境創生有識者会議委員、原子力発電環境整備機構評議員などを務める。Podcast「細川珠生の気になる珠手箱」に出演中。
2025年01月08日12月の都議会定例会で第一子の保育料無償化や、低体重の赤ちゃんへの「ドナーミルク」の利用拡大など、新たな子育て支援策を表明した小池百合子東京都知事。すでに、「018サポート」で0から18歳までの子どもに対し、所得制限なしの月額5,000円の支給や、高校・都立大学の授業料実質無償化、妊娠・出産時における育児パッケージや出産後のバースデーサポートの提供など、国に先駆けた子育て支援策は、自治体トップレベル。「都は財源があるから」という地方からの批判の声もある中、小池都知事に、子育て支援政策についての考えを伺った。お話を聞いたのは…小池百合子 東京都知事1952年兵庫県生まれ。92年参議院議員初当選、93年衆議院議員初当選。以降、環境大臣、内閣総理大臣補佐官(国家安全保障問題担当)、防衛大臣、自民党総務会長など歴任後、2016年東京都知事当選(現在、3期目) >>都庁総合HP「知事の部屋」 ―妊婦を対象に1万円分の育児パッケージを配布する「とうきょうママパパ応援事業」など、とにかく充実しています。小池百合子都知事:社会はすべて人間で成り立っていますよね。人間と、経済の力、守る力、国で言えば国防、都で言うならば防災、安全、こういったいくつかの鍵となる要素により国力が算出されるという考え方があります。ところが、これらが縮小してしまうと、社会の力がそがれる。一方で、個々人が自己実現できる社会は豊かな社会だと思います。私はかねてから、自己実現ができる東京にしたいと思っています。その自己実現のため、ライフイベントをシームレスに、切れ目なく支援していく流れの一つに、この『とうきょうママパパ応援事業』があります。―(本事業と東京都出産・子育て応援事業を合わせると)妊娠時に6万円の支援を受けられるなど、出産前からのサポートがあるのには驚きました。小池百合子都知事:妊婦の方はさまざまな悩みや不安を抱えがちですから、保健師などの専門職が面接を行い、支援ニーズを把握するようにしています。さらに、シームレスという観点で言えば、結婚・出産前の段階、まず、『出会い』からサポートしています。AIマッチングシステム「TOKYO縁結び」や、いわゆる婚活イベントの提供には想定を超える応募をいただいており、反響は大きいです。―出産前という意味では、不妊治療への支援もありますね。小池百合子都知事:不妊治療については、以前から治療費の助成を行っていますが、(2022年に)国が保険適用としたことを契機に、都では不妊治療に伴せて行われる先進医療の費用をサポートしています。加えて今度は、無痛分娩のサポートをする方針を打ち出しました。出産された方が初産の時のような痛い思いをするのはもう嫌だという声が現実的にあります。日本はお腹の痛みを乗り越えてこそ、といったプレッシャーがありますね。いや、それより出産時の痛みを和らげることで、もう1人欲しいよねと考えてもらえればと思うのです。―子育て支援施策の実施主体は、基本的には区市町村ですが、東京都の役割というのは、どのようなものですか。小池百合子都知事:小池百合子都知事:「こどもDX」の一環として、都とGovTech東京が協働して、保育園探しから入園までの手続がオンラインで完結する保活ワンストップサービスを、都内3自治体で、2024年10月から始めました。今、『手取りを増やす』という議論が盛んですよね。東京都は、忙しい子育て世代が保育園探しから入園までの手続をオンライン・ワンストップで行えるように、保護者にとって時間や手間がかかる部分をデジタルで軽減する「手取り時間を増やす」取組を進めています。今後、都内に限らず他自治体でも使えるようにと、国と連携して全国展開していきたいと考えています。こうした先進的な取組を率先して進めるのが都の役割だと思います。―地方の自治体の方は、「都はお金があるけど、地方は同じようにはできない」とおっしゃる方もいらっしゃいますが。小池百合子都知事:それは自治体としての優先順位の付け方の違いですよ。地方自治として、都は自らの決定、つまり自治において進めています。東京都から毎年約1兆3千億円程度、地方へ財源が奪われている中で、都は見直すべき事業は見直すなど、無駄をなくす取組を徹底しています。東京では自己実現ができると、皆さんそれを期待してこられているのではないでしょうか。別に人さらいをやってるわけではありません。―財源のやりくりこそ、そのリーダーのお役目ということですね。小池百合子都知事:はい、そうですね。―東京で子育てすることのメリットはなんですか。小池百合子都知事:サポートがシームレスである点。出会いもある、やりたいことが選べる。経済的なポイントも大きいでしょうし、子育てをしながら自分のスキルを活用するチャンスがいろいろ選べる点も重要です。やはり自由な環境を自らが選べるということが大きいのではないでしょうか。―小池知事のおっしゃる「自己実現」ですね。小池百合子都知事:女性のエンパワーメントについても、男女平等という観点だけではなく、自分のやりたいことができるようにする。それは男性も女性も同じですね。女性の部分で足りないところを補うことも必要です。わかりやすい話で言うと、少子化担当大臣はこの17年間に24人が務められています。大臣は多産、子どもは生まれない、のは笑えませんね。―少子化担当大臣の成果が出ていないという声はよく出ますね。小池百合子都知事:結婚も子育てもしたい男性も女性も一定数いるのに、それが叶えられていないわけですよね。それはなぜか。個人の側に立っていないからです。役所別に、内閣府の担当、厚労省、文科省の担当だとかは、個人には関係ないのです。東京都では、いろいろなハードルがありますが、まさに都民ファースト、都民の立場から考えて、この人生の段階ではこういったニーズがあると個人の側のニーズを考えながら、必要な施策を打ち出してきました。子育て環境を整え、人を育て、自己実現が可能な都市・東京を目指す。小池都知事の推進力はやはりすごい。取材・文/政治ジャーナリスト 細川珠生政治ジャーナリスト 細川珠生聖心女子大学大学院文学研究科修了、人間科学修士(教育研究領域)。20代よりフリーランスのジャーナリストとして政治、教育、地方自治、エネルギーなどを取材。一男を育てながら、品川区教育委員会委員、千葉工業大学理事、三井住友建設(株)社外取締役などを歴任。現在は、内閣府男女共同参画会議議員、新しい地方経済・生活環境創生有識者会議委員、原子力発電環境整備機構評議員などを務める。Podcast「細川珠生の気になる珠手箱」に出演中。
2024年12月26日「我々は腹をくくっているんです!」と国会で「手取りを増やす」政策の実現に、覚悟を示した国民民主党の伊藤たかえ参議院議員。「103万円の壁」に続いて「ガソリン暫定税率の廃止」、「扶養控除の維持・拡大」と「年少扶養控除の復活」を実現すべく、奮闘中だ。伊藤議員のインタビュー2回目は、103万円の壁の進捗とガソリン減税、そして扶養控除や年少扶養控除についてもうかがった。 お話を聞いたのは…伊藤たかえ参議院議員1975年生まれ、名古屋市出身。1998年に金城学院大学文学部を卒業後、テレビ大阪に入社。報道記者として事件取材やドキュメンタリー番組を制作。2006年、資生堂を経てリクルート入社。2016年リクルートでの育休中に参議院議員選挙に初出馬。子育て世帯のリアルを日々永田町で訴え、個人の問題と捨て置かれてきた課題を、それは社会の課題・政治が取り組むべきと“これまでの国会にはなかった”政策提言に努めている。 >>伊藤たかえ公式HP 123万の壁を超えるには…厚すぎる「与党の壁」―「103万の壁」は、今、「123万の壁」になりましたが、「与党の壁」が厚すぎますね。伊藤議員:「103万円の壁」には、所得税の課税最低限の話と、扶養控除を受けられる上限年収の2つの意味がありますが、後者の特定扶養控除に関しては、2025年分所得から103万円から150万円に引き上げられることが決まりました。大学生年代のアルバイト問題は僅かながら前進します。一方で、前者の基礎控除の引き上げについての与党が示したのは、物価上昇率と同等の「123万円」に留まり、古川(国民民主)党税調会長の言葉を借りれば『話にならない』状態です。―123万で終わってしまうのですか?伊藤議員:いいえ、終わらせはしません。税調会長、政調会長の“上司”である幹事長が急きょ三党会談を行い、12月11日に自民党、公明党、国民民主党の幹事長間で合意した内容の実現に向け、「誠実な協議」を再開することになりました。―「178万円を目指す」というものですね。伊藤議員:はい。30年前と比べて最低賃金は73%増になっているので、年収の壁である103万円も73%増の178万円にすべきだというのが国民民主党の主張です。そもそも103万円という水準を決める時も、物価水準ではなく最低賃金を基にしているんです。自民党の税調会長は“税は理屈”と仰っていましたが、それならば、物価上昇率をもとに123万円だという与党より、最低賃金を鑑みて178万円だとする我々の理屈の方に分があります。―理屈は、物価上昇率ではなく、最低賃金の方にあるということですね。伊藤議員:そうです。―幹事長間では「ガソリン暫定税率の廃止」も確認されました。伊藤議員:画期的なことです。たとえばガソリンが1リットル183円だとすると、そのうち53.8円がガソリン税として課されているのですよ。これぜひ皆さん知って頂きたいです。今回、私たちが選挙で言ったのは、本来の税金である28.7円リットルに1974年から道路整備計画の財源不足に対応するための暫定措置として加算されている25.1円Lの「当分の間税率」(=暫定税率)の引き下げです。当初2年の約束だった暫定税率が続いてもう50年。いつまでやるんですかっていう話ですよ。―ガソリン税は、生活に直結する話ですよね。伊藤議員:特に地方はそうです。都内の山手線なら1キロに1つ駅がありますが、地方は家族みんなが車で移動している。ガソリン代の家計負担は都会の比ではないのです。加えて企業にとっても、輸送費が抑えられるので、利益や賃上げの原資になる。スーパーで売られている野菜などの食材も安くなります。―ガソリン代が1リッターあたり25.1円安くなるのは大きいですね。伊藤議員:はい。しかし肝心な“いつから廃止?”が決まっていません。与党との難しい交渉は続きます。―そのほかにも、国民民主党は16歳から18歳の高校生年代の子どもを育てる親の税負担を軽減する「扶養控除」の維持・拡大を求めていました。伊藤議員:与党は既に昨年段階で、扶養控除額を縮小する方針を決めており、結論を今年出すと明言していた為、特に強く反対しました。ここに来て公明党も一緒に反対して下さったお陰で、ひとまず現行水準を維持することになりましたが、これは方針撤回ではなく、判断を来年に持ち越しただけなので、こちらも引き続き交渉が続きます。与党は15歳以下を対象とする「年少扶養控除」はゼロなのに、「扶養控除」があるのは、制度上のバランスが悪いといいますが、それならば年少扶養控除を復活させるのが、少子化対策を喧伝する政治家の主張であるべきです。 ―年少扶養控除の復活はないのですか?伊藤議員:検討もしていないと言われました。異次元の少子化対策が必要というなら、子育て世帯の手取りを増やす政策に血眼になって頂きたいものです。手取りを増やすポイントは4つあると考えています。一つ目は何よりお給料が増えること。二つ目は控除の拡大を含め、税負担が下がること。三つ目は社会保険料負担が下がること。四つ目は、給付や無償化など、公的支援が拡充すること。この4つの内、1つたりとも欠かしてはいけません。「手当と控除の二重取りはダメだ」と言っているうちは、少子化対策のスタートラインにすら立てないことを、政治家は自覚すべきです。 ―その財源を、国民民主党は子ども国債で賄っていこう、と?伊藤議員:そうです。現在、財政法で認められているのは橋や道路をつくる為の建設国債のみですが、政府はその建設国債を、実は「育英会」や「大学ファンド」にこっそり入れています。そんなことをするくらいなら、堂々と「教育国債」の議論をすべきです。国づくりは人づくりと石破総理も所信表明演説で仰っているのですから、子どもたち、若者たちへの教育支出は、将来成長や税収増につながる投資的経費とみなし、絶対にケチらないでいただきたいと思っています。 ―今回の衆院選で少数与党になり、さまざまな交渉が表に出るようになってきましたね。伊藤議員:密室で国民生活に関わる大切なことを決めてしまう悪習を変えるチャンスだと思っています。加えてただ拳を振り上げるのではなく、具体的な対案を提示しながら反対する、現実的な交渉が出来るなど、まさに対決より解決の政治ができることを求められています。政策実現には、国民世論の大きさも大事。私たちも、協議をしっかりウォッチしていたい。 次回からは、「第一子保育料の無償化」を表明した小池都知事の政策をフォローするので、乞うご期待。取材・文/政治ジャーナリスト 細川珠生政治ジャーナリスト 細川珠生聖心女子大学大学院文学研究科修了、人間科学修士(教育研究領域)。20代よりフリーランスのジャーナリストとして政治、教育、地方自治、エネルギーなどを取材。一男を育てながら、品川区教育委員会委員、千葉工業大学理事、三井住友建設(株)社外取締役などを歴任。現在は、内閣府男女共同参画会議議員、新しい地方経済・生活環境創生有識者会議委員、原子力発電環境整備機構評議員などを務める。Podcast「細川珠生の気になる珠手箱」に出演中。
2024年12月24日「まだ、ここにない政策を」を信条とする、伊藤たかえ参議院議員は、小学校4年生と6年生の二人のお子さんを育てるママ議員。そして、今や、政治のキーパーティーとなった国民民主党参議院国会対策委員長でもあります。複数の民間企業で働いたのち、当時勤務していたリクルートの育休中に出馬。日本初の、育休中の国政出馬は大きな話題となりました。現在は、超党派ママパパ議員連盟の事務局長などを務め、ママたちの、生活者の代弁者としても活躍中です。他党の議員のお子さんやお孫さんも遊びに来るという、託児機能の充実した?議員会館の事務所で、「ここにない政策」の実現に邁進する伊藤議員の思いをお聞きました。伊藤議員のインタビュー、初回は、国民民主党のキーテーマである「103万円の壁」突破!について。お話を聞いたのは…伊藤たかえ参議院議員1975年生まれ、名古屋市出身。1998年に金城学院大学文学部を卒業後、テレビ大阪に入社。報道記者として事件取材やドキュメンタリー番組を制作。2006年、資生堂を経てリクルート入社。2016年リクルートでの育休中に参議院議員選挙に初出馬。子育て世帯のリアルを日々永田町で訴え、個人の問題と捨て置かれてきた課題を、それは社会の課題・政治が取り組むべきと“これまでの国会にはなかった”政策提言に努めている。 >>伊藤たかえ公式HP 30年弱続いた103万円の壁がついに崩れる…?―「103万の壁」、自民・公明との三党合意に漕ぎつけ、ついに崩せそうですね。伊藤議員:私たち(国民民主党)が求めている178万円を目指して、来年度から引き上げることが幹事長間では合意されましたが…―税制改正ということで、党主導で決めても、税制調査会の壁は厚そうです。「178万円を目指す」という合意は、本当に実現するの?という不信感もあります。伊藤議員:最早、政党間の交渉といった意味合いをとうに超えて、この「103万円の壁」の着地金額は、国民の手取りをどれだけ増やせるかに直結しています。だからひくわけにはいかないんです。―「手取りを増やす」ということは、この「178万円」の実現でもあり、国民はそこに大きな期待しています。それなのに、自公はすんなりとは認めないのは、おかしいと思います。ところでなぜ「178万円」なのですか?伊藤議員:国民民主党には学生部があるのですが、彼女たちが言っていたのは、自分だけでなく周りも皆、バイトしながら学生生活を送っている。でも自分が『壁』を越えてしまうと、扶養控除の対象ではなくなってしまい、親の税負担がぐっと上がってしまうので、バイトできなくなるんだ』と。―学生の本分はバイトではなく勉強だという声もあります。伊藤議員:勿論です。しかし、今や学生の2人に1人が奨学金を借りながら学んでいます。長く続いたデフレの影響で親の所得は増えず、今はインフレで生活コストが上昇、国が運営費交付金を減額したことで大学は学費を上げています。べき論では片づけられない現実があります。―学生の声から始まった政策だったんですね伊藤議員:1995年の最低賃金は611円、2024年は1055円。この30年で、1.73倍になっているにも関わらず、課税最低限の額は据え置かれたままです。学生は働きたいのに働けない、バイト先の店長さんも働いて欲しいのに働いてもらえない。誰得でもない状態を何とかしようと思いました。また、この政策は、学生やパートさんだけでなく、全ての働く人の課税対象所得が減るので、減税の恩恵は広く及びます。例えば給与所得200万円の人なら年8.6万円、300万円なら11.3万円、600万円なら15.2万円の減税になります。―主婦の収入と考えると、「女性の自立」という観点からは、178万円を超えると、一旦税や社会保険料の負担が増えるかもしれないけれど、もっと稼げば、その負担を超えますね。また将来の年金受給額が増える可能性もある。でも3号被保険者って、女性の働く「必要性」みたいなものを奪っているのではないかと思ってしまうのですが。伊藤議員:私も、ずっと働いてきたので、よく分かります。ただ、政治家として心しているのは、女性と一口に言っても、働きたい女性も、働きたくない女性も、そして働けない女性もいるということ。誰もがどの道を選んでも、その道が歩きやすいように舗装をする、それが政治家だと思うんです。―なるほど。伊藤議員:働くって、人生を豊かにする出会いや経験もあるので、一個人としては、次世代には働くことをおすすめします。でもだからといって、働きたくない人、働けない人が求める制度を否定することはありません。―伊藤さんご自身の経験は別としてですか?伊藤議員:働くことが正しくて、働かないことが正しくないって言った瞬間に、コンフリクトが生まれます。世の中に今あるコンフリクトって、働く、働かない、子どもがいる、いない、そういったものが、分断要素になっています。でも、どっちもいいじゃないと。どっちも素敵じゃない、どっちの人生も支えましょうという「当たり前」をつくっていくのが、今の私の仕事なんです。―子育て支援には関心がいくけど、産休や育休をとる人の職場で、分断が生まれていますよね。伊藤議員:私も37歳になるまで子どもを産み育てる人生を想像してきませんでした。不妊治療に行く上司、子どもが熱を出したからと退社する同僚の仕事を肩代わりして、土日に徹夜することもあったので、それ、すごくよくわかります。働くお母さんやお父さんを応援する声はあがってくるのに、しわ寄せが生じている人たちの声は、なかなか上がってこない。私は、確かに今、子育てしながら働く母親ですが、脳の半分はまだ、あの分断を生々しく感じていますので、上がってこない声なき声を拾いに行って、政策にしないといけないという、一種の使命感を感じています。「まだ、ここにない政策」、つまり「吸い上げられていない声」を反映する政策の実現に邁進する伊藤議員が、子育て世代代表としても重視している「扶養控除」の継続と「年少扶養控除」の復活、そしてガソリン減税の暫定税率廃止などについて、次回、お伝えします。取材・文/政治ジャーナリスト 細川珠生政治ジャーナリスト 細川珠生聖心女子大学大学院文学研究科修了、人間科学修士(教育研究領域)。20代よりフリーランスのジャーナリストとして政治、教育、地方自治、エネルギーなどを取材。一男を育てながら、品川区教育委員会委員、千葉工業大学理事、三井住友建設(株)社外取締役などを歴任。現在は、内閣府男女共同参画会議議員、新しい地方経済・生活環境創生有識者会議委員、原子力発電環境整備機構評議員などを務める。Podcast「細川珠生の気になる珠手箱」に出演中。
2024年12月19日今夏、おおぞら高校川越キャンパスの生徒たちが「笑える 政治教育ショー」に参加することが決定しました。これにより、政治への関心を高め、積極的な政治参加を促進することが期待されています。おおぞら高校川越キャンパスの生徒参加の背景川越市は近年、外国籍住民の増加や若年層、特に高校生を含む政治参加意識の向上が重要な課題となっています。これに対応するため、川越市に協力を頂き、宝くじの助成金で実施する事業として、笑下村塾、NPO法人日本語教育ネットワークが協力し、地元の課題への理解と解決に向けた具体的な提案を促すための公開ワークショップを企画しました。おおぞら高校川越キャンパスもこの取り組みに賛同し、参加する運びとなりました。「笑える 政治教育ショー」とは主催のたかまつなな氏「笑える 政治教育ショー」は、たかまつななさんが率いる笑下村塾が主催する高校生対象の政治ワークショップです。体験型のプログラムとなっており、参加した高校の投票率が平均約40%を大きく上回る80%以上を記録するなど、実績も高いです。楽しみながら政治を学び、政治参加への意欲を高めることを目的としています。イベント概要開催日:2024年8月2日(金)時間:13:00~16:00第一部「笑える 政治教育ショー」主催 笑下村塾 たかまつなな内容社会問題解決のためのアクションをとれる子どもを増やす実践的な授業第二部川越の多文化共生を探求してみよう主催 NPO法人日本語教育ネットワーク内容川越市内の多文化共生の課題を探して市に提案する事業を立ち上げる授業笑える 政治ショーを群馬県の高校で行った時の様子今回のワークショップを通じて、川越市の高校生たちが政治への関心を高め、地域社会の一員として積極的に関わる姿勢を身につけることが期待されます。法人概要学校名:学校法人KTC学園 おおぞら高等学院川越キャンパス住所:〒350-0046埼玉県川越市菅原町23-1アトランタビル壱号館 1F学院長:小林英仁URL: 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2024年07月04日【広島ホームテレビ】2024年5月4日(土)10時15分~放送株式会社広島ホームテレビ(本社:広島市中区)は、テレメンタリ-2024「政治とカネと契りと議員」を2024年5月4日に放送します。三宅正明 広島市議(河井事件で被買収議員として裁判中)相次ぐ政治とカネの問題… 本当に必要なのか今、専ら国会をにぎわせている自民党派閥の裏金問題。パーティー券、氷代・もち代…世間になじみのない政治の風習。果たして本当に必要なのか。そんな疑問を持ちながら、取材班が密着したのは、裁判を続けている広島市議会の三宅正明議員。「政治にお金は必要」としながらも、今の政治に何を思うのか___「政治にお金は必要」としながらも‥‥今も裁判を続ける岸田文雄 総理“買収事件の震源地” でもあった広島。地方政治の現場から“政治とカネ”を考える。■番組概要テレメンタリー2024[テレビ朝日系列全国ネット]「政治とカネと契りと議員」▶広島県の放送日時2024年5月4日㈯ 午前10時15分~▶制作広島ホームテレビナレーション:福山 潤[声優]ディレクター:岡森吉宏プロデューサー:立川直樹福山 潤[声優・福山市出身]『テレメンタリー2024』テレビ朝日系列の全国24社が共同で制作するドキュメンタリーです。週替わりでテレビ朝日系列の各局が制作を担当し、独自の視点で制作しています。系列局の放送時間はこちら : 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2024年04月25日フリーランスライターの安藤エヌ氏が「政治や社会問題を話題にすること」についてSurfvoteで提起。欧米とは異なり、政治議論をタブー視する傾向があると言われる日本。みんなの本音を聞いてみました。SNSとテクノロジーで社会課題の発見・解決をサポートするPolimill株式会社(ポリミル、本社:東京都港区、代表取締役:横田えり、以下Polimill社)はこのたび、「政治や社会問題について家族や友人と話すことはある?」というイシュー(課題)について3月20日に投票が終了しましたので結果をお知らせします。政治や社会問題について家族や友人と話すことはある?欧米では国によっては、日常で政治の話をよくすると言われています。アメリカは二大政党制なので、どちらの支持者であるのかという話題がよく発生し、フランスでは会社の同僚や家族とあらゆる場面で政治のことを口にします。翻って、日本はどうでしょうか。政治のことを話題にすることがタブー視されていたり、興味関心が低い人たちが多くいたりするようです。日本人は政治議論をすることを実際のところどう考えているのでしょうか?フリーランスライターの安藤エヌ氏がSurfvoteで提起、ひろく意見を集めました。投票の詳細イシュー(課題):政治や社会問題について家族や友人と話すことはある? 調査主体:社会デザインプラットフォーム Surfvote(Webサービス)調査対象:Surfvote上でアカウントを持つユーザー調査方法:Surfvote上でアカウントを持つユーザーが投票投票期間:2024年2月20日〜2024年3月20日有効票数:46票投票結果とコメントの紹介(一部抜粋・原文ママ)①【20代~30代】(政治や社会問題について家族や友人と)よく話す、たまに話す 43.5%話しをする時がたまにあります。最近だと特に年金・社会保障など、自分の将来と密接にかかわるトピックが増えてきました。自分事化できる話題については、話しをする傾向が強いです。自分事化できないトピックの話しは難しいと感じます。②【20代~30代】(政治や社会問題について家族や友人と)あまり話さない、まったく話さない 32.6%友達や家族の間で政治とかの話題になると、途端に緊張してしまう…私だけでしょうか?まともな事を言わないといけないプレッシャーを感じたり、相手と意見が合わなかったらどうしようと不安になったり。もっと日常的に話せたらいいんだろうけど、自分から口火を切るのも気が引ける。③【40代~50代】(政治や社会問題について家族や友人と)よく話す、たまに話す 17.4%若い世代に対しては、政治や社会問題について発言する事をタブー視という感覚はあまりないように感じます。あまり過激で偏ったことを主張しなければ問題視されることも少ないと思う一方で、単純に興味がないと感じる事が多いですね。④【40代~50代】(政治や社会問題について家族や友人と)あまり話さない、まったく話さない 2.2%あまりしない。堅苦しい話はナシ、という関係のままここまで来たから、社会的な話題は唐突な印象を与えてしまうと思う。親しい間柄で政治の話はしない雰囲気が日本にはあるみたいだ。それが必ずしも悪いこととは思わない。しかし、例えば匿名のSNSでは極端な政治主張をする人たちが多くて、政治の話をする人=特定の思想を持つ厄介な人、みたいなイメージが広まってしまっている気もする。⑤【60代~】(政治や社会問題について家族や友人と)よく話す、たまに話す 2.2%主に日本の経済政策や安全保障についての話題はよく出る。政治についての考え方や支持政党が異なる友人同士で意見を交わすのは刺激的なことである。国政選挙の投票率が50%を下回る世の中だ。もう少し社会についての関心を持った方がいいのではないか。親しい人達と日々話をすることがその一助になる。⑥【60代~】(政治や社会問題について家族や友人と)あまり話さない、まったく話さない 0%その他 2.2%政治問題についてはほとんど話さないが、社会問題については話すことが間々ある。このイシューを執筆した 安藤エヌ氏日本大学芸術学部文芸学科卒。フリーランスライターとして2019年から活動。現在は主に映画ジャンルでの執筆を行っている。これまでの掲載先は Real sound、rockin’on、マイナビウーマン、ダ・ヴィンチ、主婦と生活社など。セクシャルマイノリティ/ジェンダー分野に興味を持ち、クィア映画を積極的に鑑賞し、自費出版でオリジナルクィア小説を発行するなど、常に多角的な視点を持ち自分の言葉で発信することを信条としている。あなたの意見・投票を社会のために活用しますSurfvoteでは社会におけるさまざまな課題や困りごとを「イシュー」として掲載し、どなたでもすべてのイシューを読むことができますが、アカウント登録をすると各イシューに投票したりコメントを書いたりできるようになります。私たちは、みんながさまざまな社会課題を知り、安心して自分の意見を言える場を提供したいと考えています。また、そこで集められた意見は、イシューの内容に応じて提言書に纏め関係省庁や政治家へ提出することもあります。 Polimill株式会社Polimill社は社会デザインプラットフォーム【Surfvote】を運営・提供するICTスタートアップ企業です。Surfvoteは現在、一般社会についての社会課題と各地方自治体の抱える社会課題(Surfvoteローカル)を掲載。ひろくみんなが意見を言える場を提供しています。あらゆる人がルール作りに参加し、価値観の変化やテクノロジーの進化に合わせた柔軟でスピーディーな制度改革ができるような社会を、SNSとテクノロジーで実現させたいと考えています。 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2024年04月18日早稲田大学政治経済学部(学部長:齋藤純一)と松下政経塾(塾長:遠山敬史、以下「松下政経塾」)は、政治・公共経営の世界で活躍されてきた経験を豊富に有する松下政経塾卒塾生を講師として、提携講座「政治の世界」を2024年春学期に開講します。グローバル化が進む今日において、「国家経営」のために必要なリーダーシップとは何か?を受講生を交えて考察する機会となることを願っております。1.背景国境を越えて解決すべき課題が山積している昨今、日本は高齢化・人口減少・安全保障といった様々な問題に直面しています。パナソニックの創業者である松下幸之助が理想とした「物と心の繁栄を通じた、平和で幸福な社会」を実現するためには、国家百年の計を創り、実践し、日本を救い、世界を救い、人々の幸福に尽くすリーダーが必要であると言えます。松下政経塾は、国際的な視野のもと、日本国家の経営理念やビジョンの探求を有機的に行うことを通じて、日本及び世界を背負う真の指導者たり得る人財を育成し、国家国民並びに人類の繁栄・幸福と世界平和の向上に寄与するために、自修自得・現地現場の研修を通じて、様々な分野で活躍するリーダーを輩出してきました。また、早稲田大学政治経済学部は、学問の独立と自律的な市民社会の確立という建学の精神を踏まえ、経済学との密接な連携により、生きた政治現象を分析し、日本から世界に発信できる学問をめざしています。建設的な批判精神をそなえ、国際・政治・経済・言論・公務など多様な分野で冷静に、献身的にそしてグローバルに活躍できるリーダーの養成をめざしています。このような背景から、松下政経塾と早稲田大学政治経済学部は、双方の知見を元に、困難を極める21世紀の「国家経営」のために必要なリーダーシップを検討し、そのための理念や方策を探求し、推進していく人材を育成することを目的として、2024年春学期に提携講座「政治の世界(松下政経塾提携講座)」を開講します。2.提携講座「政治の世界」の概要[1]講座の概要グローバル化が進んだ今日において、国家運営は以前にも増して困難を極めるようになっています。このような時代背景をもとに、政治家はどのような視点で国家の舵取りをしているのでしょうか。本科目では、国家経営という視点のもとで、政治の世界で活躍されてきた経験を豊富に有するゲストの方々をお招きして、今日の政治・行政が直面する諸問題を理解し共に考察します。[2]講義の内容(1)講座名:「政治の世界(松下政経塾提携講座)」 4/18(木)~ 全14回(2単位)(2)担当教員:早稲田大学政治経済学部 日野愛郎教授コーディネーター:未来政治経済研究会 島田光喜代表(3)対象:早稲田大学に在籍する学部生(学部・学年を問わず)(4)講義概要:国家経営、公共経営他について、松下幸之助の経営理念を踏まえたリーダーシップを詳説(5)登壇予定講師 (※印:松下政経塾卒)野田佳彦(元内閣総理大臣 衆議院議員)早大卒※長浜博行(参議院副議長 参議院議員)早大卒※松原仁(衆議院議員)早大卒※井戸正枝(元衆議院議員)※杉島理一郎(埼玉県入間市長)早大卒※奈良俊幸(元越前市長)早大卒※松下玲子(前武蔵野市長)早大院卒※山中啓之(千葉県松戸市議)早大卒※神藏孝之(イマジニア株式会社取締役会長)早大卒※白井智子(NPO法人新公益連盟代表理事)※金子一也(松下政経塾塾頭)早大卒※日野愛郎(早稲田大学政治経済学部教授)早大院卒≪担当教員(日野教授)コメント≫早稲田大学、ならびに政治経済学部は政治を志す多くの人材を輩出してきました。この授業は政治を志している学生はもちろんのこと、漠然と政治に関心を持つ学生にこそ受講してもらいたいと思います。政治との繋がりは身近なところに溢れています。そして、その繋がりはライフステージの移り変わりに応じて見え方が変わっていきます。政治の世界に飛び込むタイミングは人それぞれです。そのことを頭の片隅に置きながら、政治の世界で活躍する先輩の話を聞いてみませんか。この授業を通して、多くの学生が公共やリーダーシップのあり方について考え、政治を志すきっかけとなることを期待しています。3.今後の展開松下政経塾と早稲田大学政治経済学部は、次年度以降の講座に、授業の成果や政治・経済の動向を踏まえた国家経営の在り方、リーダーシップ論などを反映させることで、講座内容をより充実させ、未来の国家経営を担える人材を育成していきます。関連リンク松下政経塾: 未来政治経済研究会: 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2024年03月07日「政治の世界で才能を生かしてもらうのはどうだろう」自身のユーチューブチャンネル「百田尚樹チャンネル」で、松本人志(60)にそう提案したのは、日本保守党の代表で、小説家の百田尚樹氏(67)だ。これは2月15日に行ったライブ配信での発言だ。「週刊文春」による“性加害”報道をうけ、裁判に集中するため、芸能活動を休止している松本。「真実はわかりませんよ」と断ったうえで、百田氏は裁判の結果をこう予想する。「仮に裁判の結果がよほどのことがない限り、じつは文春の記事がぜんぶ嘘っぱちやった、女性の証言もぜんぶ嘘やったということになれば、復活可能でしょう。さすがにここにきて、それはないかなぁという気がします。結局のところは灰色といいますか、真実はどこにあるかわからないという形で決着がつくんじゃないかな」今回の裁判は民事訴訟なので、刑事裁判のように白黒はつかない、そうなれば松本の芸能界復帰は厳しいという。そのうえで、松本の政治思想をこう評価するのだ。「この2、3年の発言や主張を聞いてますと、政治的には的を射ているなと。あるいは、かなり保守的な正論という発言が多いんですよね」■「残りの人生は日本の社会のために恩返しを」視聴者からの松本の政治能力を疑問視するコメントに対して、現在、政治を騒がしている自民党の裏金議員たちを引き合いに出して、百田氏はこう訴える。「(裏金を作り、それを秘書のせいにしている国会議員たち)そんなんに比べて、松本人志さんはダメな議員ですか?」「政治の世界にどっぷりつかった、プロ政治家がとんでもないことをしているんですよ」としたうえで、こんなふうに日本の政治を憂えるのだ。「やっている彼らの政策は、とにかく我々国民からいかに金を巻き上げるか、いかに嘘だまくらかして好きなことやるか、あるいは某国の有利になるような政策をどんどん続けるか、そんなことばっかりやってるんですよ」そして、松本はまだ60歳であり、平均寿命まで二十年以上の人生が残っていると百田氏は語る。「60も超えたんで、松本さん、今まで豊かな日本のおかげで(芸能界で)栄耀栄華を味わえた。この辺で、ひとつ残りの人生を日本の社会のために、少しでも恩返し出来たらええんじゃないかなぁと思います。どうでしょう」そして、裁判で名誉がある程度回復された場合という条件付きで、数年後の日本保守党への合流を呼びかけた。『探偵!ナイトスクープ』(朝日放送)の構成作家だった百田氏は、松本と面識があり、テレビで共演したこともある。ちなみにチャンネルの視聴者からは戸惑いのコメントが多かった。《松本に対する個人的な応援として聞き流します。》《大事な時期に支持者を失いかねない言動はやめて下さい》《これ、釣りかと思ったら本気なのでしょうか…》
2024年02月16日自民党安倍派(清和政策研究会)の政治資金パーティーでの裏金問題は、大臣経験者クラスのキックバック不記載や訂正などが次々と報じられている。いったい、政治資金パーティーをめぐるお金の流れの、どこが「違法」と指摘されているのか。「政治資金パーティーはズバリ『お金集め』が目的です。ノルマ以上に集めたお金が派閥からキックバックされ、集めた議員のところに戻ることは、違法ではありません。しかし、いくら収入があり、いくら派閥に納めたのか、また、派閥から寄付としていくら振り込まれたのか、つまりキックバックの金額などが、キチンと政治資金収支報告書に記載されなければならないんです。今回、裏金問題となっているのは、所属議員が政治資金パーティーで得た収入が実際にいくらだったのか、またいくらキックバックがあったのかが、政治資金収支報告書に不記載だったことが問題視されているんです」(全国紙政治部記者)たとえばある議員が派閥から求められているノルマ100万円を上回る150万円を集めた場合、派閥に150万円振り込み、派閥から後に50万円のキックバックがあることが、収支報告書で明記されていれば、違法性はないという。しかし、実際は150万円集めたのに、ノルマの100万円しか納めた記録がなく、派閥からのキックバック50万円分が不記載であれば、100万円の収入しか存在しなかったこととなり、50万円が裏金となるのだ!「こうして実質『浮かせた』裏金は、何に使われようと、誰にもわかりようがないお金になります。地元などで事業を有利に進めたい支援者は、派閥のパーティー券を高いお金で買い、派閥の所属議員は地元自治体議員などに、裏金を元手にお金を渡して地元での政策を優位に進めることもできる。これは裏金の使い方のほんの一例ですがね」(前出・全国紙政治部記者)岸田首相は党幹部に各派閥の政治資金パーティーを自粛するよう指示したが、各社の世論調査で内閣支持率は20%を割り込んで危機的状況を迎えており、焼け石に水の様相だ。
2023年12月20日政治資金パーティーが裏金作りの温床となっているということが取りざたされている。こんなことがまかり通ってきたのだとすれば許せないが、そもそも私たちは、政治資金パーティーそのものが、どんな実態のパーティーなのか、なにがおこなわれているのか、さっぱりわからない。そこで、著書に『ドキュメント 候補者たちの闘争 選挙とカネと政党』(岩波書店)などがある元衆議院議員でジャーナリストの井戸まさえさんに、政治資金パーティーの知られざる中身について、詳しく聞いた。「これは私が2018年に、ある自民党衆議院議員に取材した内容です。ある派閥では、パーティー券1枚20,000円として『期数(キャリア)×50枚』をノルマとしていました。つまり2期生であれば、20,000円×2期×50枚=2,000,000円がノルマとなります。そのノルマ以上を売れば、ノルマ以上の分は売った所属議員の取り分となるというのがキックバックです」そんなキックバックを、収支報告書に記載しないことで“裏金”にする慣習が横行していた疑惑の筆頭が安倍派なのだ。その安倍派をはじめ各派閥の資金集めパーティーは、一流ホテルなどの大宴会場で開催されることが多いという。「派閥主催のパーティーには、派閥の議員が出席します。一大勢力である安倍派のパーティーには、別派閥に所属する首相が来たりもするでしょう。100人規模で議員が参加して、そこに各議員が呼んだ、つまりパーティー券を買ってもらった人が来ますので、最低1,000人規模の大会場が必要です」ちなみにパーティーの名称は『○○会懇親の集い』『○○会と語る会』など、さまざまであるという。そしてパーティー券は、イベントチケットのような券に、次のような但し書きがついている。「券の下の部分などに《この会は政治資金規正法第8条の2に規定する政治資金パーティーです》と必ず明記しています。これが告知義務であり、ここでの売り上げには消費税がかからなくなります」そのパーティーとは、私たちの想像する結婚式や記念式典など、華やかなパーティーのように、豪華なお料理も出るのだろうか。「バブルのころは、それこそ大物政治家の政治資金パーティーでは、老舗の高級寿司店がコーナーを出してお寿司が出たりしたなんて豪華なこともありました。ただ、派閥の政治資金パーティーは1,000人規模の出席者なので、ビュッフェ形式のお料理にしても、すぐになくなってしまいます。現在では、ローストビーフが出ることはあるけれど、結婚式のようにフォアグラが出るなんてことは、まずないと思います。とても料理が参加者全員に行きわたるようなパーティーではありませんし、パー券を購入して入場された方も、料理を食べるのがメインではありません。チケットの20,000円分が、料理で元が取れるわけではないんです」年配議員や地方の有力者なども来るパーティーなどとなると、新人議員や女性議員がお酌をさせられたりなんていう“アルハラ”的な行為はないのだろうか。「女性議員がお酌をして回らなければいけないということは、政治資金パーティーにおいては見かけません。というのは、かつては政治資金パーティーというと、お酌などの要員である女性コンパニオンが派遣されていたんです」えっ?それは初耳です!「主催者である派閥が、あらかじめホテル側に依頼して、集められた女性などが、政治資金パーティーに派遣されるという流れでした。白いブラウスに赤いボディコンシャスなロングスカートという姿の女性たちです。彼女たちが水割り、ウーロン茶などを、入場者に手渡します。というのは、大臣など来賓の話が前にありますので、乾杯までが長いですから、コンパニオンがお酒を手渡して、場を持たせているのです」では、所属議員は地元の有力者やその関係者たちと、延々と名刺交換をしているのだろうか?「名刺交換は、たとえば大臣クラスが来賓や出席者となると、彼の前には行列ができます。地方から来る人などは、そういう『推し』の政治家に会うのが目的で来る人も多いですからね。所属議員は、そんな有力者や後援者などの間を持たせる役割であり、大臣の前で並んでいるときのお供をしたりします。そして、大臣の前では有力者を紹介し、有力者には大臣のことを紹介することで、手柄を立てる。つまり『おもてなし』する側に徹します。所属議員がパーティーのお料理を食べている暇はありませんし、食べていたらヒンシュクを買うでしょうね。ほかにも政治資金パーティーには、東京なら銀座、赤坂、大阪なら新地などのクラブのママも参加したりします。お店は、所属議員がよく接待で使う店であり、ママは議員に呼ばれてパーティーに出入りします。地方から来た支援者などを、パーティー終了後に自分の店で二次会としておもてなししたりするんです」どれだけ支持率が下がろうと知ったこっちゃないが、せめて法律だけは守ってもらわないと……国会議員どころか、ひとりの人間としての問題なのだ。
2023年12月20日