Upload By 発達ナビ編集部自閉症者の独特な世界観を表現した作品編集部(以下、――) 映画の原作となったエッセイ『自閉症の僕が跳びはねる理由』は、自閉症者の内面の感情や思考を分かりやすい言葉で伝えたことで注目され、34か国以上で出版され、117万部を超える世界的ベストセラーになりました。書著を書こうと思われたきっかけを教えてください。話せなかった僕が気持ちを伝えられるようになってから、母は僕の行動について「なぜ、そんなことをするの?」と、ことあるごとに聞くようになり、僕の説明を聞いては驚いていました。僕の行動の理由が分かるようになり、僕に接する母の態度に余裕が出てきたと思います。僕は母に尋ねられなければ、自分の行動を言葉にすることはなかったのではないでしょうか。なぜなら、それが僕にとっての日常だったからです。僕の世界が母の世界と違うと知ってから、僕が見たり感じたりしている世界を母に伝え、母からは“普通”と呼ばれている人たちが見たり感じたりしている世界について教えてもらうようになりました。当時の母は僕の行動の理由を知り、親子関係がよりよくなったと感じていたようです。自閉症者である僕の気持ちを知ってもらうことで、自閉症者に関わる人たちの気持ちが少しでも楽になればと思い、この本を出版しました。――映画は「自閉症と呼ばれる彼らの世界が“普通”と言われる人たちと、どのように異なって映っているのか?」を世界各地の5人の自閉症の少年少女たちの姿やその家族たちの証言を通して追い、明らかにしていく内容でした。著書がこのような形で映画化されたことについて、どのように思っているか教えてください。すばらしい映画にしてくださり、制作者のみなさまに感謝しています。僕は、自閉症者の生きづらさや独特な世界観について文章で表現しましたが、ジェリー・ロスウェル監督は映像で表現してくださいました。多くの方にこの映画をご覧いただき、自閉症とは何かということについて考えていただければうれしいです。――本作では、自閉症のある人が世界をどのように感じているのか、視覚や聴覚で伝えている描写がありました。東田さんが完成した映画の映像を見て、感じたことを教えてください。とても芸術的な映像だと思いました。自閉症者が見ている風景のように描かれている場面がありましたが、僕が日常のすべてにおいてこのような風景を目にしているわけではありません。僕は著書の中で世界の見え方について「最初に部分が目にとびこんできます。その後、徐々に全体が分かるのです。」と書いていますが、僕の視界にそう映っているというよりは、意識の向け方がそういう感じだということです。意識というのは本人にしか分からないものだと思っていました。意識下で起きていることを映像で表現し、それを見ている人に自分の視界で起きているかのような錯覚を起こさせる映画の技術に感動しました。Upload By 発達ナビ編集部「繰り返し行動」「動きを制御できない不安」、言葉にするなら――「不安に感じるとき、繰り返し行動を行うと安心する。不確かさから自分を守ってくれる」という言葉がありました。映画のなかでも、ある女の子がキラキラしたひもをいつも持っていて、集中している時は平穏、目を離すとさまざまな刺激が飛び込んでくる描写があります。東田さんも、繰り返し行動をしていないとさまざまな刺激が飛び込んでくるのでしょうか。また、どのようなことをすると気持ちが落ち着きますか?繰り返し行動をしていないとさまざまな刺激が飛び込んでくるのではなく、さまざまな刺激が飛び込んでくるために繰り返し行動をしてしまうのです。どちらが先でも同じではないかと思われるかもしれませんが、繰り返し行動は、したくてしているのではないという意味では、自分を守るために繰り返し行動をしてしまうという表現の方が、自閉症の人の心境をよく表しているのではないでしょうか。僕も刺激には弱いです。気になる音や風景が目に入ると、自分を落ち着かせるために、いつも見ている絵本や昔の写真を見たり、手で耳をふさいだりしていました。今は、周りの刺激にもだいぶ慣れました。――発達ナビを読んでいる人たちのなかには、お子さんが突然家を飛び出してしまったりすることにどうしたらいいか悩んでいる人もいます。東田さんもよく家を出て外にいらっしゃったと言います。外に飛び出すことで得たかったものはなんですか?外に出ることで自分が何かを得たかったわけではなく、脳が僕にそう指令を出すのです。外に出てしまったら、あとは歩き続けるだけです。赤い靴を履いた女の子のように、僕はただ目的地に向かって足を動かします。目的地といってもどこを目指しているのか、自分でもよく分からないのです。自分がどうなるのかなんて考えませんでした。自分の行動を自分でうまくコントロールできないというのは、なぜこんなことをしているのか、自分でも説明できない状況なのだと思います。僕の場合は、警察に保護されたり、車にひかれそうになったりしたことで、勝手に外に出て行かなくなりました。――東田さんは、記憶は線でつながっておらず点としてばらばらに存在し、突然思い出されるといいます。そのような時間の感覚を持っていることで大変だと思う点、逆に良いと思っている点等があれば教えてください。大変だと思っているのは「前にやったでしょ」「もう忘れたの?」などと注意されることです。普通の人たちは、これくらい覚えているのは当たり前という前提のもと、僕たちが記憶していないことに対して、叱ったり怒ったりします。けれど記憶というのは本来、意思の力だけでどうにかできるものではなく、脳の機能も関係しているものではないのでしょうか。僕がこんな文章を書けることを不思議に思われる方もいますが、僕が言う「点のような記憶」というのは、記憶が線のようにつながらないだけで、場面ごとの記憶はあるということです。場面としての記憶があれば、言葉や知識そのものは増えていきます。僕の記憶で良かったと思っているのは、過去から現在、どの地点においても、自分という人間の存在感が変わらないことではないでしょうか。小さい頃の自分も今の自分もそれほど変わらないのです。過去に思いをはせ遠い昔を振り返るというよりは、自分がたくさんいるようなイメージです。自分という人間がこの世に無数にいるような感覚は、時間を超越しているとも言えるでしょう。フラッシュバックに怯えることもありますが、もしかしたらこれは、四次元を体感している状態なのかもしれません。――自分の体や行動を制御できない不安はありますか?そのような不安から守るためにしていることがあれば教えてください。僕は、体の機能に問題がないにもかかわらずみんなのように動けない自分のことを、「壊れたロボットのようだ」と表現してきました。大人になった今も、あまり違いはありません。指示に従うことも、集団行動も上手くできないのです。じっとしていることさえ苦痛です。そんな自分を不安に思う気持ちはずっと続いています。特別な対策はしていませんが、失敗してもそれほど落ち込まなくなりました。なんとかなると、自分で自分を励ませるようになったからだと思います。――「人間にどれだけ否定されても、自然は僕を抱きしめてくれる」という表現がありました。東田さんはどのように自然とふれあい、感じてきたのでしょうか。光を浴びれば僕の体は分解し、分子となって周りに飛び散るような感覚になります。風が吹けば風よりも速く走りたくなり、水中に潜れば自分に手足がついているのを忘れてしまいます。僕は自分が人であることが、いまだに信じられません。人の中にいる自分より、自然の中にいる自分の方が安心できるからです。嫌なことがあったら空を眺めます。流れる雲やまたたく星を見ているだけで、気持ちが癒されるのです。自閉症者として、人として、自分に向き合うUpload By 発達ナビ編集部――思ったことを会話で伝えられないことで、人とのコミュニケーションに苦労されてきたと思います。そんななか、人との関わりで癒されたり救われたりした経験はありますか?僕が心から信頼しているのは家族です。僕がここまで元気に生きてこられたのも、家族の支えがあったから。自分が信じた道を歩くことの大切さを身をもって教えてくれた母には、感謝しています。父からは、世の中にはさまざまな価値観が存在するということを教わりました。学校の先生も、僕に優しかったです。僕が友達に笑われることはあっても、いじめられることはありませんでした。先生は僕をいつも気にかけてくれていました。僕が人を嫌いにならなかったのはこのような経験も影響していると思います。僕はコミュニケーションでずっと苦労していますが、人との関わりを拒絶しているわけではありません。むしろ、人にとても興味を抱いています。――人の、どのようなところに興味があるのですか?人はいつも正反対の性質を持って生きています。「善と悪」「やさしさと厳しさ」「期待する気持ちと失望する気持ち」…どんな人もさまざまな一面を持っています。誰でも自分の気持ちに正直に生きたいと願う気持ちと、人として正しくありたいという気持ちの間で揺れ動いているし、それは僕も同じです。だから、そんな思いは自分だけではないと知ることで、僕は未来に希望を感じるのです。僕の悩みも自閉症だからではなく、人として生まれたからだと思えるからです。――映画に出てきたある自閉症の方は、文字盤で意思を伝えられるようになる前の学校教育について、苦い思いを語っていました。東田さんは、受けてきた教育についてどのように感じていますか?僕は小学校時代、5年生まで地域の学校(通常学級)で学びました。ただし、授業中も母がずっと付き添ってくれていました。小学校6年生から中学3年生までは特別支援学校に通い、高校は障害のある生徒も受け入れてくれる通信制の学校に在籍しました。普通の学校も特別支援学校も、一長一短があったと思います。子どもには教育を受ける権利があります。どんな人生を歩みたいのか、学校の選択も含め本人が決められれば理想だと思っています。――東田さんは、どのようにご自身の学校を選択してきたのでしょうか。学校は、基本的に自分で選択してきました。小学校では、とにかくみんなと一緒に勉強したかったです。けれどもだんだん周りが見えるようになり、他の人との違いに気づき始めたのです。自分はいったい何者なんだろうと、思春期の入り口で深く考えるようになりました。みんなとの違いは努力だけではうめられないことも知りました。当時は、みんなのことがまぶしかったです。そこで小学6年生から特別支援学校に転校することを決めました。小学校の卒業まであと1年、せっかくだから頑張ったら?と言われたこともありましたが、将来のためにも、自分で自閉症という障害を受け止めるべきだと思いました。特別支援学校では、自閉症である自分と向き合うことができたと思います。世界中の自閉症者が、自分らしく生きられるように――発達ナビの読者は、主に保護者や支援者です。自閉症など、特性がある人の保護者、支援者に対して伝えたいことがあれば教えてください。当事者にとっては、自分のことを心配し、気にかけてくださる方々の存在が生きる希望につながっています。人が生きるうえで最も大切なものは、希望ではないでしょうか。どうすればできるようになるのかを考えることは大切ですが、そのためにも次も頑張ろうと思えるよう応援をしてあげてください。――映画に出てくる自閉症の人たちを見て、何を感じましたか?僕が気になったのは、やはり自閉症であるために差別されている人たちがいるということです。人は生れながらに平等で誰もが幸せに生きる権利を持っているはずです。そして、幸せかどうかを決めるのは、周りの人ではなく本人だと思います。世界中の自閉症者が自分らしく生きられることを祈っています。そして、これからもどうして差別が起きてしまうのか考えていきたいです。――自閉症のある人とまわりの人たちには、どの様な対話が必要だと思っていますか。また、どの様な人に対話へ加わってほしいですか。特別な対話はいらないと思います。ただ普通の人たちとは少し違う人たちも、社会の中にいることを知ってほしいのです。「どの様な人に対話に加わってほしいですか」というご質問には、「どなたでも」と僕は答えます。――今日はありがとうございました!インタビューを終え、東田さんの繊細かつ独特な感受性と、人に対する温かいまなざしの伝わってくる言葉の数々が印象に残っています。著書では自閉症者の見ている世界観が言葉で的確に表現されていますが、映画では映像と音声で、その世界観を体感することができます。ぜひ鑑賞してみてください。※インタビューは、東田さんにお送りした質問事項に文章で回答していただく形と、オンライン対面で質問してその場で文字盤を使いながら回答していただく形の2つをとりました。この記事は、その両方の回答をあわせて執筆しています。Upload By 発達ナビ編集部東田直樹さんの著書『自閉症の僕が跳びはねる理由』が原作となった映画、『僕が跳びはねる理由』 が、4月2日(金)より、角川シネマ有楽町、新宿ピカデリー、アップリンク吉祥寺 ほか全国順次公開。東田さんが文字でつづった自閉症のある人の感じている世界を、東田さんの言葉と美しい映像とともに描いた作品。アメリカをはじめ、さまざまな国で暮らす自閉症当事者の暮らしや夢、友情などを丁寧に取材している。原作:東田直樹『自閉症の僕が跳びはねる理由』(エスコアール、角川文庫、角川つばさ文庫)翻訳原作:『The Reason I Jump』(翻訳:デイヴィッド・ミッチェル、ケイコ・ヨシダ)監督:ジェリー・ロスウェルプロデューサー:ジェレミー・ディア、スティーヴィー・リー、アル・モロー撮影: ルーベン・ウッディン・デカンプス/編集: デイヴィッド・シャラップ/音楽: ナニータ・デサイー原題:The Reason I Jump2020年/イギリス/82分/シネスコ/5.1ch/字幕翻訳:高内朝子/字幕監修:山登敬之/配給:KADOKAWA
2021年03月26日今や、生活に欠かせないものとなったマスクだが、様々な事情からマスクの着用が困難な人もいる。自閉症はその理由の1つだ。米アーカンソー州リトルロックに住むキャリー・キンボールさんは先週金曜、LCCのスピリット航空を利用し夫と4歳の息子カーターくんと共にラスヴェガスに住む家族を訪ねた。往路は何の問題もなかったが、復路で思いもよらぬ対応をされた。カーターくんがマスクをしなければ飛行機には乗せられない、と搭乗を拒否されたのだ。カーターくんは自閉症で、発語がない。キンボールさんはCBS系列のKTVH-TVの取材に対しこう語る。「自閉症スペクトラムの子どもたちは、たいてい何かにとても夢中になっています。カーターは飛行機が大好きで、席に座って静かに窓の外を見ていただけなのに、女性乗務員が突然『降りなさい!』と言ってきたんです」。キンボールさんは、往路はマスクを着けなくても乗せてもらえたことを伝え、「マスクを着けさせると呼吸を止めたり、パニックになって自分を傷つけてしまうため、マスクの着用は免除される」という医師の診断書も見せたが、その女性乗務員はカーターくんに降りるよう求め続けたという。「この子には障害があるんです。アメリカ障害者法で保護されているんですよ」と反論しても、「いやいやいや、自閉症は障害じゃないでしょう。マスクを着けられないなら降りるべきです」ととりつく島もなかったとか。一家は飛行機を降り、アメリカン航空のチケットを買い直して帰路に就いた。カーターくんの診断書を提出したことで、マスクの着用は求められなかったという。CBS NEWSの報道によると、スピリット航空の広報担当者は「当社のマスクポリシーにおいてはいかなる医療上の免除も認めておりません。着用を免除されるのは2歳以下の子どものみです」とコメント。キンボールさんは「自閉症児の親でいることは困難の連続ですが、人からこのような差別を受けたことは人生で初めてです」と涙ぐみながらKTVH-TVの取材に語った。
2021年03月17日アイルランド・ダブリンに住むテレンス・パワーさんが投稿した動画が人々を笑顔にしています。テレンスさんが7歳の弟であるエドワードくんと一緒に路面電車『ルアス』に乗っていた時のことです。彼らは偶然、ミック・マクローリンさんという男性と会いました。海外メディア『Dublin Live』によると、3人はこれまで何度もルアスの車内で会ったことがあり、顔見知りなのだとか。しかししばらく会うことがなく、この日は久しぶりの再会だったといいます。エドワードくんは自閉症のため、言葉でコミュニケーションをとることが難しいのだそう。そんなエドワードくんのために、ミックさんは会うといつも歌を歌ってあげるのです。この日もミックさんは車内で歌い始めます。するとエドワードくんは…。@terencepower_Busker singing to my little brother who has autism, would bring a tear to a glass eye❤️ ##fyp ##4upage♬ original sound - Terence Power弾けるような笑顔を見せるエドワードくんはとっても嬉しそう!そんな2人の交流を見ていたテレンスさんは思わず涙ぐんでしまったそうです。この動画が撮られたのは新型コロナウイルス感染症のためにマスク着用が義務化される前でした。テレンスさんが2021年3月にTikTokに投稿したところ拡散され、たくさんのコメントが寄せられたのです。・ピュアな喜びが伝わってきて、こっちまで幸せになるよ。・男の子と同じくらい、男性も楽しんでいるのが分かる。・この動画、何度見ても笑顔になっちゃう。また動画にはミックさんの歌の素晴らしさを称賛する声も多いのですが、実は彼は地元では有名なストリートミュージシャンなのです。ミックさんはエドワードくんのことを『友達』と呼び、動画が撮影された日は久しぶりに会えたことが嬉しくて「歌わずにはいられなかった」と語っています。彼が歌った曲は映画『トイ・ストーリー』の主題歌であるランディ・ニューマンの『You’ve Got a Friend in Me(君はともだち)』。まさに友達同士の再会にぴったりの曲ですね。音楽を通じて心温まる交流をする『友達同士』に多くの人が幸せな気持ちになれたようです。[文・構成/grape編集部]
2021年03月12日他の子に迷惑かけるかも?Upload By ぼさ子自閉症のあるほぺろうは他人とのコミュニケーションが苦手なので、保育園に入るまで『他の子と一緒に遊ぼう』という意思が一切ありませんでした。他の子と関わったことがないので「お友達に優しく」とか「叩いちゃいけません」といった教訓に触れたこともありませんでした。そしてこの3歳のころは癇癪が強い時期で、発語がなく自分の気持ちを伝えられないイライラをぶつけていたのか、自宅では私を叩きつけたり髪の毛をむしったりという行動が見られていたので、余計によそのお子さんに危害が及ばないか心配でした。幸い、現在お世話になっている保育園は障害児受け入れの経験が多いこともあり、ほぺろうの癇癪っぷりを見ても動じない先生たちの様子から、初めて訪問したときから園への信頼は持つことができていました。なので、ほぺろうの入園準備期間に先生たちにたくさん相談に乗っていただきました。Upload By ぼさ子ほぺろうは加配希望で入園したので、加配の先生に目配りをお願いしたのと同時に、お友達やその保護者の方が心配する様子があれば先生に窓口になってもらって私に伝えてほしいと申し入れました。そして、ほぺろうの普段の様子・発達クリニックの記録・特性・対処法などをまとめたノートを先生に渡して情報共有し、今もそれは続いています。他の子との差に心折れるかも?私はもちろん折れました。同じ歳の子のみならず、歳下の子と比べても追いついていないわが子の現実に、ほぺろうが5歳になった今でも正直凹むことがあります!実は私、過去に少しだけですが保育施設でお手伝いしたことがありまして、その経験から学んだことがあります。それは、『障害がない子も発達の差はある』『どんな子も全員、手を焼くところ・良いところが必ずある』『どんな子も漏れなく可愛い』ということ。すべてにおいてパーフェクトなんていう子は一人もいませんでした。「障害のない子だって発達の差はあるし、しっかり大人の手を焼かせている」。そう思うと気がラクになりました。Upload By ぼさ子障害児を良く思わない人もいるかも?恥ずかしながら私は、ほぺろうを産むまで障害のある人に対して『よく分からない、あまり関わりたくない』と思っていました。なので今の環境で、ほぺろうのことを良く思わない人がいたとしても不思議ではありません。幸い今は優しい方たちに囲まれていますが、お友達も保護者の方もいろんな考え方があって当然。私の『ほぺろうを受け入れてほしい』という考え方も多様性の一つ、否定的な考え方があったとしてもそれも多様性の一つ…。そんな風に考えておくと、不必要に傷つくことが減ったように思えます。以前お世話になった保育施設の先生が『ほぺろう君の存在は集団にとって必要。他の子にとって気づきや優しさの勉強になる』と仰ってくださったことがあり、その言葉とそう考えてくれる人の存在に励まされました。Upload By ぼさ子私ができることとしては、他の保護者の方に会ったら「こんにちは」など普段の挨拶は欠かさず、気になることがあったときに話してくれやすいように気をつけています。そして「いつもお子さんがほぺろうと仲良くしてくれてありがとうございます」と感謝を伝えたりしています。年中の今では保育園を楽しめるようになったほぺろう入園したものの、適応するには相当な時間と労力がかかったほぺろう。朝は私となかなか離れられず、日中もちょっとしたことがキッカケですぐに癇癪。先生にもお友達にもたくさん迷惑をかけていたと思います。それでも周りの皆さんに助けられて、1年かかってようやく泣かずに登園できるようになりました。年中の今では保育園が楽しそう!以前は私から離れられず保育園の玄関でグズっていたのに、現在は私をサッサと締め出すまでに成長しました。Upload By ぼさ子LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年03月12日息子のパニックに困り果てていた私の心に刺さった、主治医の言葉息子はもう成人していますが、幼児期、小学校低学年の一番状態が悪かったときの主治医の言葉です。「パニックを起こす理由が立石君にはあるのです。『こうしてほしい』というこだわりには応じ、小さいうちに安心できる生活環境をお母さんが与えてください。パニック起こして一番しんどいのは本人なんですから」「もし、お母さんが人の履いたスリッパがどうしても履けなかったとしましょう。『履け』と命令されたらどうですか?それを履いて落ち着いていられますか?こだわりは自分だけのスリッパと同じなんです」「人が食べたガムを食べることができますか?子どもにとって偏食は、芋虫や他人が食べたガムを食べろと言われているようなものなのです」「喘息発作も起こせば起こすほど、それを誘発させます。『普段から吸入して発作を起こさない予防をすることが肝心です。自閉症児のパニックもそれと似ています。起こさないように周りが配慮してやることです」「お母さんからすれば『なんでこんなことにこだわるんだ』と思うことも、本人にとってはとても耐えがたい嫌なことなのですから、こだわりには応じてあげてください。」Upload By 立石美津子親は安全基地になるまだ言葉を話せない赤ちゃんは不快な状態のSOSを泣いて訴えます。お腹が空いても「ミルクが欲しい」と言えない。オムツがうんちでベチョベチョになっても「不快だ、交換して」と言えない。暑くても自分では服を脱げない。かゆくてもかけない。寝ようとしてもなかなか寝つけない。だから泣いて必死に訴えます。母親はその泣き方から「なぜ泣いているんだろう?」と原因を探り、「おお、よしよし。今、おっぱいをあげるからね」、「オムツをとりかえてあげるからね」と助けてやります。そして、子どもは「この人は僕を保護してくれる人だ」と母親を認識し、親の愛情の元「この世は生きていても安全な場所なんだ」とだんだんとわかってきます。パニックが起きたときは自閉症のある子には同じ道順しか通れない、決まった服しか着られないなどさまざまなこだわりがあります。それを押し通すことを周りの大人が許してくれないとき、また感覚過敏により「この音は耐えらない」と感じるときは、“止めてくれ”とばかりに全身の力で訴えます。地面に頭を打ちつけたり、自分の腕を噛んだり、自傷(自分自身を傷つける)したりパニックを起こすこともあります。私も親として未熟だったころはパニックを起こされたときは「いい加減にして!」と私もパニック状態になりました。親に助けを求めているのに子どもの世界を理解してやらないで、押さえつけたり叱ったりする最悪の対応をしていました。Upload By 立石美津子どう対応すればいい?大人だって悲しいとき、泣きたいとき、怒りが込み上げてきたときその感情を抑え込んでしまったら八方塞がりになります。もし、パニックを起こしてしまった場合は嵐が過ぎ去るのを待つしかありません。時間が本人をクールダウンさせ解決してくれるような気がします。パニックに親が巻き込まれてしまっては、共倒れ、何もしないことが一番の解決法だと感じています。「ああ、悲しいんだね。あなたの負担になる原因はつくらないようにするからね」と安全地帯になることです。また、自傷するときは自分の身体がダメになるほど傷つけたりはしないと感じています。「これ以上やるとひどい怪我になる」のマックスギリギリのところをわかって本人はやっているように見えます。そのコントロールが難しい場合は専門医師の処方の元、抗精神病薬を使う場合もあります。できれば、パニックを起こさないように、子どもの望みを聞いてやることです。“同じ道順をいつも通ってやる”、“同じ服を着せてやる”など。「毎日同じ服を着たら汚くなってしまう」と思うのならば、同じ服を何着が買っておけば済むことです。親の忍耐が必要ですが、これを続けているうちに子どもも安定し、新しいことにチャンレンジできるようになってくるのだと思います。主治医の言葉が心に刺さってからは、息子が「これだけを着たい」と言えばそれを着せ、同じデザインの靴しか履かなければ、13センチ、14センチ、15センチと何足も買っておきました。自閉症児として生まれて数年しか経っていない幼児期に、「苦手なことを克服しなさい」と言われるのは本人にとっては酷なこと。母親として子どもが安心できるよう、まずは寄り添うことで、恐々でも新しいものに挑戦できるようになっていくのだと思います。こだわりには“それを何とか治そう”ではなく、“とことんつきあう覚悟”が親には求められているのではないでしょうか。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年02月12日自閉症を抱える作家・東田直樹が13歳のときに執筆した「自閉症の僕が跳びはねる理由」を基にしたドキュメンタリー映画化した『The Reason I Jump』が、『僕が跳びはねる理由』として4月2日(金)に日本公開決定。ポスタービジュアルが解禁となった。これまで理解されにくかった自閉スペクトラム症を抱える者の内面の感情や思考、記憶を言葉で伝えた内容が大きな注目と感動を呼び、30か国以上で出版、現在117万部を超える世界的ベストセラーとなっている「自閉症の僕が跳びはねる理由」(エスコアール、角川文庫、角川つばさ文庫)。この書籍の英語版を基にした本作は、世界最大のインディペンデント映画祭としても有名な第36回サンダンス映画祭にてワールド・シネマ・ドキュメンタリーコンペティション部門の観客賞受賞、同じく2020年に開催されたバンクーバー国際映画祭では長編インターナショナルドキュメンタリー部門観客賞&インパクト大賞をW受賞。多数の海外メディアからも「五感を刺激され自閉症者の世界を体感できる」(Backseat Mafia)、「斬新で見事なカメラワーク」(Screen Mayhem)、「感情に突き刺さるような美しさ!」(Variety)、「驚異的な作品!」(The Hollywood Reporter)など、絶賛の声が続々と上がっている。斬新な映像表現や音響効果で問いかける体感ドキュメンタリー「自閉症と呼ばれる彼らの世界」を各国の5人の少年少女たちの姿やその家族たちの証言を通して追い、明らかにしていく本作。「自閉症者の内面がその行動にどのような影響を与えるか」を斬新な映像表現や音響効果を駆使し、彼らが見たり、感じたりしている世界をあたかも疑似体験しているかのように表現した。解禁されるポスターは、澄み切った青空の下で“跳びはねる”少年を切り取ったもの。自分の気持ちの赴くままに跳びはねているように見えるこの少年の姿は「みんな同じ空の下、“普通”の君と自閉症の僕との未来はきっとつながる」というキャッチコピーをそのまま体現するかのようなビジュアルに。『クラウド アトラス』原作者デイヴィッド・ミッチェルが夫妻で英訳なお、東田氏による原作を英訳したのは、トム・ハンクス、ハル・ベリー主演の映画『クラウド アトラス』の原作者として知られるイギリスのベストセラー作家デイヴィッド・ミッチェルと、その妻ケイコ・ヨシダ。日本に滞在していた経験もあるミッチェル氏は自らも自閉スペクトラム症の息子を育てており、我が子の行動に対する疑問の答えをこの書籍の中に見つけ、「世界中の自閉症の子を持つ親にもこの本を読んで欲しい・伝えたい」という願いから翻訳、2013年に「The Reason I Jump」として出版。その後、本作にも出演しているジョスの両親(本作のプロデューサーを務めるジェレミー・ディアとスティーヴィー・リー)の目にとまったことで、本作が誕生した。ミッチェル氏は「東田直樹の『自閉症の僕が跳びはねる理由』がそうであるように、この映画は私たちに“普通とは何か?”という抽象的な疑問を改めて我々に問いかけている。自閉症と自閉症ではない人たちの世界を繋ぐ架け橋となる、優しい革命的な作品だ」とコメントを寄せている。『僕が跳びはねる理由』は4月2日(金)より角川シネマ有楽町、新宿ピカデリーほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)
2021年01月22日新年の挨拶の代わりとなる年賀状。近年では、メールや『LINE』で年賀状の代わりに挨拶をする人も多く、減少傾向にあるそうです。しかし、年賀状ならではのやりとりや、つながりがあるため、あえてハガキで挨拶をするという人もいるでしょう。自閉症の息子から届いたラブレター2020年12月16日、年賀状印刷などを運営する株式会社グリーティングワークスが年賀状のエピソードを募集した『年賀状思い出大賞』を発表しました。約900件の応募の中から選ばれたのは、自閉症の息子から届いた年賀状のエピソード。元日の朝、母親が年賀状を取りに行くと養護学校に通う息子から封書が届いており…。寝坊した元旦の朝、ポストに年賀状を取りに行くと、私への一通の封書が届いていた。息子が通う養護学校からの手紙だった。息子は自閉症。人と関わることが苦手だ。「大好きだよ」と彼に伝えると「そうだったんだ」という応えが毎回返ってくる……。だから、毎日毎日その言葉を伝えた。封書を開けると、一枚の年賀状が出てきた。墨をたっぷり付けた太い筆で書かれた文字は、ハガキからはみ出していて、すぐには読めなかった。同封されていた先生のメッセージを読むと、国語の時間に取り組んだ年賀状作りで、息子はハガキに「海」の一文字を書いたとのことだった。「海は好きなの?」と尋ねると、いつもの無表情な顔で「だってお母さんがいるから」と応え、「海」の文字の「母」という部分を指差した。その瞬間、私は真冬なのに身体中が一変に温かくなったことを思い出す。十二年前の忘れられない年賀状は、十八歳の息子からのラブレター。自閉症の息子から元日に届いたのは、年賀状という名のラブレター。『海』という文字の中に、『母』の漢字を見つけた息子は、ハガキに大きく『海』と書いたのです。きっと、元日の朝から母親の心は温かくなり、息子の想いに包まれたことでしょうね。このエピソードは、ショートムービーでも公開されています。審査員からは「親子の愛情が素直に伝わる作品」と称賛の声が寄せられていました。年賀状のいいところは、直筆だからこそ想いが十分に伝わるところでしょう。2020年は新型コロナウイルス感染症の影響で、人に会うこともままならない日々が続きました。しばらく会っていない人に、年賀状で想いを伝えてみてはいかがですか。[文・構成/grape編集部]
2020年12月20日対人関係での困難や、特定の事柄に強いこだわりがあるなどの特性を持つ『自閉症スペクトラム』。厚生労働省によると、この障がいを抱えている人は、近年約100人に1人の割合でいるといわれています。3人の子供を育てるbeth(3beth_gm)さんは、自閉症の長男・ハルくんのエピソードをInstagramに投稿。その内容に「じーんとした」といった声が寄せられました。母のこころ、弟のこころ多くの人は、接する相手との関係性によって、距離感を使い分けたコミュニケーションをしています。しかし、ハルくんの場合は距離を踏まえたコミュニケーションが難しく、知らない人に突然あいさつをしたり、初めて会う人に対して近付きすぎてしまったりすることがあるようです。自閉症は見た目では分からないため、成長するにつれてハルくんの言動に周囲が戸惑うこともあるといいます。しかし、弟のイツくんは遊びに来た友人に、「兄は普通に話せないけど、すごく面白い」と話していて、その様子をbethさんは嬉しく感じたそうです。イツくんは、お兄ちゃんのいいところをたくさん見てきたからこそ、自然に伝えることができたのでしょう。読者からは「とても素敵な家族で、じーんとした」「子供が自閉症です。いいところがたくさんあるから、みんなに知ってほしい」などのコメントが寄せられていました。自閉症スペクトラムなど発達障がいを持つ人たちは、時に『風変わりな人』と印象を持たれてしまいがちです。しかし、表面的なコミュニケーションではその人の魅力は伝わらないもの。一緒に過ごして、よく知るにつれて、素敵なところをたくさん見つけることができるのでしょう。ハルくんを見守る家族の愛情に、心が温かくなりますね。[文・構成/grape編集部]
2020年12月04日アメリカ・マサチューセッツ州に暮らす11歳のアシュリン・マクドナルドさんは、毎食食べている大好きな食べ物があります。それはスープの缶詰で知られるキャンベル社の『スパゲッティ・オー・ウィズ・ミートボール』。トマト味のソースにアルファベットの『O』の形のパスタと小さなミートボールが入っているものです。自閉症をもっているアシュリンさんにとって、スパゲッティ・オーはただの好物ではなく、精神安定剤のようなもの。海外メディア『TODAY』によると、彼女は毎食、スパゲッティ・オーと一緒にピザやヨーグルトなどを食べていたといいます。しかし新型コロナウイルス感染症(以下、コロナウイルス)対策で学校が休校になって以来、スパゲッティ・オー以外の食べ物を一切食べなくなってしまったのです。アシュリンさんにとっては学校という『ルーティン』のない生活の中で、「いつでも同じ味」のスパゲッティ・オーが安心感をもたらしてくれるのだといいます。娘の好きな缶詰が店から消えたコロナウイルスが流行するまでは、人気商品であるスパゲッティ・オーはいつでも買えたのだとか。ところがパンデミックによって人々が食料品の買い溜めをし始めたことで、スパゲッティ・オーも店頭から姿を消してしまったのです。仕方なく母親のクリスタルさんはスパゲッティ・オーの別の味や他社の似たような商品を買ってみましたが、アシュリンさんは食べませんでした。それからクリスタルさんは地元のスーパーで『スパゲッティ・オー・ウィズ・ミートボール』を探し回り、多い時には1日に20軒近くの店に足を運んだといいます。2020年8月、娘のためにスパゲッティ・オーを探しまわるクリスタルさんのことが地元の新聞に掲載されます。するとその記事を読んだ人たちから彼女のもとにスパゲッティ・オーの在庫がある店の情報や、スパゲッティ・オーの寄付が続々と寄せられ、100缶以上を確保することができたのだそう。さらにこの話がキャンベル社にも伝わり、なんと約800缶の『スパゲッティ・オー・ウィズ・ミートボール』がクリスタルさんの家に送られてきたのです。A Mass. community is helping a mother stock-up on SpaghettiO's for her daughter with Autism who looks to them as a meal...Posted by WDBJ7 on Saturday, September 12, 2020A Mass. community is helping a mother stock-up on SpaghettiO's for her daughter with Autism who looks to them as a meal...Posted by WDBJ7 on Saturday, September 12, 2020クリスタルさんはこの出来事について『TODAY』に語っています。これは私の娘と私たち家族にとって信じられないような贈り物です。おかげで大きなストレスが軽減されました。この恩恵にどれほど感謝しているか、とても言葉ではいい表せません。TODAYーより引用(和訳)有事が起きると今まで普通に手に入ったものが突然買えなくなることがあります。そんな時こそ他者のことも考える思いやりと、困っている人がいたらお互いに助け合う気持ちを忘れずにいたいものですね。[文・構成/grape編集部]
2020年10月12日新連載!3歳発達障害息子の子育て、葛藤の日々を綴る現在3歳3ヶ月の息子、1歳5ヶ月の娘を育てています。息子のいっちゃんは、中度知的障害を伴う自閉症スペクトラムです。指ちゅっちゅタオルボーイ、発語はありません。産まれた時からあまり泣かず、寝てばかりで母乳を飲むこともないので、早いうちに母乳は出なくなりました。呼びかけても反応せず、あまり動くこともなく。もしかして...と思ってからはっきりと状況がわかるまでは、黙々と検索をして調べたり、そんなはずはないと息子を信じてみたり、何故こんなことができないのかと叱りすぎて自己嫌悪に陥ったり、とても苦しい時間を過ごしてきました。Upload By かさはらあやこ『ぜんぜん普通の2歳じゃん』見えない困難に追い詰められたこともUpload By かさはらあやこ『ぜんぜん普通の2歳じゃん。しつけがされていないだけでしょう?2歳を過ぎたらもう色々わかるんだからしつけなきゃ。』私が実姉から言われた言葉です。もちろん悪気があってではなく、「発達障害があるかも...」と悩んでいる私に対し、心中を推し量っての発言だと思います。自閉症は、その言葉のイメージから誤解を受けることも多いですが、自閉症の症状の程度、知的障害の程度も人によりさまざま。見た目で障害が分かりにくいこともあり、周囲から「しつけのできていない子」と非難され、祖父母を含む親戚、夫でさえも昔は当たり前に居ただとか、個性だとか、大袈裟だとか言ってくる。実母は、どうしてこうなっちゃったんだろうねぇ?と言い放ち、挙げ句の果てに、「身体が丈夫なんだからいいでしょう」って、いや、そういうことじゃない。Upload By かさはらあやこ発達障害についてメディアが取り上げるようになったり、認知が高まってサポートしてくれる機関が増えたりと、少しずつとりまく環境は良くなってきている、とは聞きます。でも、まだこの障害について正しく診断し、適切なアドバイスのできるお医者さんは足りないそうです。相談機関も不足しています。地域によっては病院を選べなかったり、100キロ以上も離れていたり、数が少ないため診察を受けるのに数ヶ月以上待たなくてはいけなかったり。子どもを産んでからよく、「子育ては大変だけど楽しいでしょう?」と聞かれます。......楽しい?タノシイ???大変と思うばかりの毎日で、その楽しさがわからず、自分は親として何かが欠けているのではないか?と悩んだりもしました。思うようにならないことの多い子育てです。必要な支援を受けにくい環境、適切な助言をしてくれる専門家が少ない状況...しかも、親兄弟や親戚に、正しい理解をしてください!勉強してください!とも言えない。めちゃくちゃストレス!!だからせめて、自閉症児とその家族の置かれている状況や、自閉症の特性を、なんとなくでいいから知っていただきたい...そんな想いで、これまでSNSに子どもとの日々を投稿してきました。幼稚園に通い始めた息子、成長中の日々をお届けしますUpload By かさはらあやこ癇癪が強くなり、特性が目立ちはじめる2歳頃...産まれてから2年以上、毎日夜泣きでまともに眠ることができず、全く意思の疎通を図れない。息子は一体何者なのか。精神的にも身体的にもすっかり参っていた私。そんな私を支えてくれたのは、療育で関わる先生方はもちろん、担当の保健師さん、話を聞いてくれた友人、SNSで情報を与えてくださる同じ境遇の方々でした。障害を受け入れ、特性を理解し、環境を整えてあげる必要があることに気づくまで、たくさん悩んで、たくさん泣いて、たくさん時間がかかってしまいました。いっちゃんは3歳から幼稚園に通っています!SNSで投稿をするようになってからは、目撃するたびに心が痛くなっていた特性を愛おしいと思えたり、 クスッと笑えるようになったり。息子の成長を通し、うちの子も同じ!と愛おしく感じていただいたり、自閉症ってこんな感じなんだ、こんなことに困っているんだと知っていただいたり...そんな風に思ってくれる方が少しでも増えるようなコラムがお届けできればと思っております。よろしくお願いいたします!
2020年09月30日息子の友人、おじいさんに席を譲られた!息子が特別支援学校高等部の頃のことです。子ども達が同じ放課後等デイサービスに通うママ2人と私とでお茶をしました。息子(17歳)は自閉症、A君(16歳)、B君(18歳)にはダウン症があります。小学校の頃から同じ放課後等デイサービス、同じ特別支援学校高等部に通っていました。10年以上の長い付き合いなので、結構突っ込んだ会話もドンドンできる気の置けない関係です。Aママ「ちょっと聞いてよ。この間、息子がバスで立っていたら、おじいさんに席を譲られそうになったらしいの」(A君は、当時、一人で公共のバスを使って下校していました)私「それで、本人はどうしたの?」Aママ「『いいです!』って断ったみたい。この話を息子から聞いたとき『やっぱ、“世間からは障害者だから大変だ”って見えるんだ~』と思い、悲しくなったよ!」Bママ「うちの子だったら、きっと『ありがとう!』」と言って席に座っちゃうかも!」私「外見から『障害がある』と分かるのも、理解してもらいやすいと思うから、私はうらやましいよ。本人が言葉に出したり積極的に伝えようとしなくても、周囲の人がSOSに気づいて、救いの手を差し伸べてもらいやすいでしょう。うちは見た目ではわからないから、バスの中で奇声を発したり、落ち着かないと怒鳴られてしまい、それでまたパニックを起こして…」Aママ「そうなのかあ…」もちろん、ダウン症のある子にも知的重度、軽度があり、身体面でも心疾患があったり、身体が弱い子もいたりします。そんな知識があって、おじいさんは「席を譲ろう」と思ったのかもしれません。でも、A君は元気一杯の子でした。このことを実家の母(80歳)に話したら「私だったらダウン症の子がいても席は譲らない」と言っていました。人それぞれです。「普通」として扱われる見た目ではわかりにくい発達障害児は、ぱっと見は定型発達のように見えます。息子は知的障害がある自閉症(IQ37 療育手帳3度)ですので、グレーゾーンではありません。それでも、「障害があるので色んなことが難しくてできないので宜しくね」とママ友に伝えても、容姿を見て「そんなことないじゃない、普通じゃない、しっかりしているじゃない」と数えきれないくらい言われました。誤解もある・NHKの番組で放送していたのですが、成人しているダウン症のタレントさんが居酒屋でビールを頼んだら「ビール飲ませても大丈夫なのかな」と店主が悩んでいたそうです。(年齢ではなく、「ダウン症の人にアルコールは大丈夫なのか」と思ったようです)・心疾患があり、4歳の子をバギーに乗せていたママ。「まあ、立派な足があるのにお嬢ちゃん、ママに甘えないで歩かないとダメよ」と言った見知らぬ人から言われていました。・内部疾患(心臓機能障害、腎臓機能障害、呼吸器機能障害)があるため電車の優先席に座っていた若者に対して「年寄りに譲りなさい」と言わんばかり前に立っている年配者がいました。(ヘルプマークを付ける方法もありますが、まだ世間には浸透していません)障害特性はあるけれど、性格はみんな違う「自閉症の子は秘めた才能がある」だとか「ダウン症の子はピュアだ」とか「これこれこういう障害の子は○○である」と思われていることがあります。確かに障害による特性はありますが、そんな型にはまったものではないと思います。何故なら、みんな一人の人間ですから…。生まれ持った気質や育った環境で全く性格が違ってきます。そんなことを感じたママ友との会話でした。同時に、「こんな突っ込んだ話が出来るママ友がいることは幸せなことだ~」と感じたお茶の時間でした。
2020年09月22日「ひゅーちゃんが自閉症と診断されて」第2話。Twitterで人気のさばまる(@funeido45)さんの育児マンガをご紹介! ひゅーちゃんが自閉症と診断されたときのお話です。ひゅーちゃんが自閉症と診断されて 第2話 ひゅーちゃんが自閉症と診断され、療育について調べ始めたさばまるさん。 すすめられて参加した保健センターの相談会でも望むような内容を受けられず、苦労が続きます……。 さばまるさんのマンガは、このほかにもTwitterで更新されています。ぜひチェックしてみてくださいね♪監修/助産師REIKO著者:イラストレーター さばまる2017年4月息子ひゅーちゃん出産/育児漫画と版権イラストごちゃまぜ/自閉症と診断され発語ゼロ。会話してみたい
2020年08月06日アメリカ・フロリダ州の森の中で、3歳の男の子が行方不明になりました。ある日の朝、マーシャル・バトラーくんは家族が気付かないうちにオムツ姿で家を出て、どこかへ行ってしまったのです。マーシャルくんは自閉症をもっていて、言葉でコミュニケーションをとることができないのだそう。パニックになった家族は近所を必死で探しましたが見つからず、郡の保安官事務所に捜索願を出しました。UPDATE: Child has been located. __________WCSO SEARCHING FOR MISSING THREE-YEAR-OLD BOY IN PONCE DE LEONWalton...Posted by Walton County Sheriff, Michael A. Adkinson, Jr. on Wednesday, June 3, 2020保安官事務所はFacebookでマーシャルくんの目撃情報を呼びかけます。すると人々から彼の無事を祈るコメントが次々と書き込まれ、「捜索に協力したい」という人たちも現れます。その1時間後、保安官事務所が新たな情報と写真を追加しました。犬が男の子と一緒にいるかもしれません。見かけた人は保安官事務所まで連絡をください。Walton County Sheriff, Michael A. Adkinson, Jr.ーより引用(和訳)Posted by Walton County Sheriff, Michael A. Adkinson, Jr. on Wednesday, June 3, 2020海外メディア『WJHG』によると、マーシャルくんの家ではバックウィートとナラという犬を飼っているのですが、2匹ともいなくなっていたのだそう。そして捜索を始めてから数時間後、マーシャルくんは自宅から約1.63離れた川の近くで発見されました。見つかった時、バックウィートとナラが彼を守るようにぴったりとそばに寄り添っていたということです。Posted by Walton County Sheriff, Michael A. Adkinson, Jr. on Wednesday, June 3, 2020マーシャルくんは泥だらけになっていましたが、ケガもしておらず元気だったそうです。彼らを発見した隣人は、「犬たちはマーシャルくんのガイドとなり、安全でいられるように守っていたのでしょう」と話しています。2匹の犬たちは1人で家を出ていくマーシャルくんを見て、心配になってついて行ったのではないかということです。犬の賢さと忠誠心には本当に驚かされます。マーシャルくんも犬たちも無事に見つかってよかったですね。[文・構成/grape編集部]
2020年06月29日自閉症に特徴的な3つの症状自閉症とは、現在は自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)と呼ばれることが多い、先天的な発達障害の一つで、社会性と対人関係の障害、コミュニケーションや言葉の発達の遅れ、行動や興味の偏りの3つの症状が発達段階で現れるといわれています。今回のコラムでは、この3つの症状について具体的にみていきましょう。出典 : 社会性・対人関係の障害自閉症のある人は、対人関係を築くことが苦手な場合が多いです。社会性・対人関係の障害として具体的な特徴は、・視線を合わせることができない・周囲に関心がないように見える・相手の気持ちが分からない・その場の空気が読めないなどが挙げられます。自閉症のある人は、会話をしているとき等でも目を合わせることが苦手な場合が多くあります。無理に視線を合わせようとすると落ち着きがなくなったり、パニックになってしまうこともあります。このような症状から、対人関係が苦手だと受け止められてしまいます。コミュニケーションや言葉の発達の遅れ自閉症があると、コミュニケーションや言葉の発達が遅れる傾向があります。具体的な特徴としては、・言葉を話すのが他の子どもと比べて遅い・人の話したことをオウム返しする・抽象的な言葉・比喩や皮肉の意味を理解できない・呼んでも反応しない・自分の話したいことだけ一方的に話すなどが挙げられます。自閉症がある人は、言葉を話し始めるのが遅く、言葉の意味を理解するのが困難な場合もあります。言葉を話し始めても、意味のある言葉で会話をするのではなく、誰かの言葉をオウム返しし続ける場合も少なくありません。相手に自分の気持ちがうまく伝わらず、暴れてしまうこともありますが、適切に対応をしていれば成長と共に落ち着いてきます。行動と興味の偏り自閉症のある人は、ある一定の行動をとる傾向があります。行動と興味の偏りについての具体的な特徴としては、・落ち着きがなく、手を動かしたり、部屋の中を行ったり来たりする・毎日決まった行動をし、予定外の行動は取れない・1つのものに執着する・自分の興味があるものに対して、とても執着する・予定外のできごと・初めての人/場所/活動などに抵抗を示すなどが挙げられます。自閉症のある人は、自分の興味のあることに対してとことん熱中する傾向があります。そのため、自分の興味のある物事をとことん調べ、誰も教えていないのに専門家顔負けの知識を持っている人も珍しくありません。自閉症をもっと詳しく知るリンク集「もしかして自閉症?」お子さんの発達等について、気になる症状があるときには、次のコラムが参考になります。自閉症の症状は、お子さんの年齢・発達によって目立つ症状が変わってきます。年齢別の症状について詳しくは次のコラムでご紹介しています。その他にも、自閉症に関連するコラムを出しています。ぜひ参考にしてみてください。
2019年10月28日年齢別に見た自閉症の症状の現れ方とは?出典 : 自閉症(自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD))は、先天的な発達障害の一つです。社会性と対人関係の障害、コミュニケーションや言葉の発達の遅れ、行動や興味の偏りの3つの特徴が発達段階で現れると言われていますが、その症状は成長とともに変化していきます。自閉症の症状は人によって個人差が大きいのですが、大まかな年代別の症状を紹介します。なお、これらの症状は、すべてがあてはまるわけではなく、現れ方は人によって異なります。幼児期(0歳~小学校就学前)自閉症は発達障害の一つですが、発達障害は、言語・認知・学習といった発達領域が未発達の乳児の場合、症状が分かりにくいことがあります。ですから、生後すぐに自閉症の診断がでることはありません。しかし、幼児期全体を通してみると、特徴的な行動をとっていたことが多いと言われています。以下にそれらの症状を紹介します。自閉症がある場合、視線を合わせようとしないことが多くあります。また他の子どもに興味をもたなかったり、名前を呼んでも振り返らないといった場面も目立ちます。定型発達の子が興味をあるものを指でさして示すのに対し、自閉症の子は指さしをせず興味を伝えない傾向があります。知的障害を伴う自閉症のある幼児は、言葉の遅れや、オウム返しなどの特徴がみられます。会話においては、一方的に言いたいことだけを言ってしまったり、質問に対してうまく答えられないなどの特徴があります。定型発達の子どもが友達とのごっこ遊びを好むのに対し、自閉症の子は集団での遊びにあまり興味を示さないことも多くあります。興味をもつことに対して、同じ質問を何度もする子どもも多くいます。また、日常生活においてさまざまなこだわりをもっていることが多く、ものごとの手順が変わると混乱してしまうこともあります。児童期(小学校就学~卒業)年齢相応の友人関係がもてない場合があります。周囲の状況にかかわらず、自分が好きなことを好きなようにしてしまう傾向があります。人と関わるときは何かしてほしいことがあるときなだけのことが多く、基本的に1人遊びを好みます。人の気持ちや意図を汲み取ることを苦手とする子どもも多くいます。きちんと決められたルールを好み、場面に応じて臨機応変に対応することが苦手な傾向にあります。言葉をうまく扱うことが難しく、単語を覚えても意味を理解できない場合があります。また、自分の気持ちや他人の気持ちを言葉にしたり、想像したりすることも苦手です。そのため説明がうまくできないことがあります。思春期~成人期(小学校卒業~)出典 : 抑揚がない、不自然な話し方が目立つ場合があります。コミュニケーション能力が乏しく、人が何を考えているのかなどを想像するのも苦手な傾向にあると言われています。目的のない会話をするのを難しく感じる人が多いです。自閉症の人は物事に強いこだわりをもっています。そのため、興味のあることにとことん没頭することが多いですし、その分野で大きな成果をあげられることもあります。自閉症についてもっと詳しく知るリンク集「もしかして自閉症?」お子さんの発達等について、気になる症状があるときには、次のコラムが参考になります。自閉症がある人には、「社会性と対人関係の障害」「コミュニケーションや言葉の発達の遅れ」「行動や興味の偏り」の3つの症状が発達段階で現れます。具体的にどんな言動として現れるのかについては、次のコラムが参考になります。その他にも、自閉症に関連するコラムを出しています。ぜひ参考にしてみてください。
2019年10月28日「何が食べたい?」「ラーメン!」長男の希望通り車で向かったのですが日曜日の朝、我が家はだいたい長男の「ラーメン!ラーメン!」のリクエストで始まります。ラーメンが好きなのです。「今日はラーメンないよ」というと不満そうな顔をします。「今日は夜、ラーメン食べに行くよ」と言うとニコニコご機嫌。Upload By シュウママその日は朝から約束していたので、出かける際長男は嬉しそうに車に乗りました。お気に入りのラーメン屋さんへと家族で向かいます。ここじゃない!店内へ入る前に長男大パニック!車を走らせていると次男が「今日は、ラーメンだけじゃなくて、から揚げも食べたい!」と言い始めました。すると夫が「じゃあ、みんなが好きなものを食べられるように中華食べに行こうか」と言いました。車は某中華料理店へと方向転換します。その時点で長男は向かう方向がラーメン屋さんではなくなったことに気づいたのか、「あれ〜?あれ〜?」と不安そうな声を出し始めました。でも長男はその中華料理店も大好きです。なので、まあ、かまわないだろうと思い車はそのままお店に到着しました。すると...長男は駐車場で泣き叫んだのです。「ラーメンない!ラーメンない!」すさまじい荒れ方です。とてもお店に入れる状況ではありませんでした。Upload By シュウママ「ここにもラーメンあるよ」と伝えても、納得しません。ここで食事は無理だな...そう思ったので、結局その日は長男の希望していたラーメン屋さんへと向かいました。いつものラーメン屋さんに向かい始めると長男は落ち着きはじめ、到着後はさっき泣いていたのが嘘のように、嬉しそうにラーメンを食べたのです。何が長男の機嫌を損ねたのか...忘れていた特性帰ってきてから、夫と次男とで話し合いました。いったい何が長男の気に障ったのだろう。「シュウはあそこの中華料理店、好きだよね~」と次男は不思議そうに言いました。「やっぱり、ラーメンと約束したら、ラーメン屋じゃなきゃダメなんじゃない?」これは夫の意見。そして落ち着いた結論は、シュウの場合「ラーメンを食べに行く」=「お決まりのラーメン屋さんに行く」ことであって、「ラーメンを食べられればどこのお店でも良い」という訳ではないということ。私たちは某中華料理店でもラーメンは食べられるからいいのではと思いましたが、それではシュウの見通しやこだわりに添わなくなってしまうのでしょう。もしいつものラーメン屋さんでない場所に行くのであれば、「今日は、ラーメンを食べに行くけれど、お肉とかお魚とか、他のものもいろいろ食べたいから、○○(中華料理店の名前)に行くよ」と、理由をつけた事前の説明が不可欠なのでは?ということになりました。Upload By シュウママこの日以降、前もって理由もつけて予定を伝えておけば、長男が想定と違うことでパニックに陥ることはなくなりました。主治医に相談。長男との関わり方についてこういった本人のこだわりにどこまで付き合っていいのか、主治医の先生に質問したことがあります。すると先生は、「本人の想定と違ってパニックになりそうなときには、無理に状況を変えて、周りに合わせるよう促すよりも、周りが自閉症の特徴を理解してシュウくんの意思に添ってあげてください」という回答でした。「何よりも、お母さんが楽でしょ?」Upload By シュウママ確かに、出先でのパニックは本人も辛いし、家族も対応に困ってしまいます。「ときには周囲の状況に合わせなさい、空気を読みなさい」という一般的な子育ての必要はないという先生の言葉に肩の荷がおり、ほっとしました。先生とのお話以降、今わが家で実践しているのは、基本的にその日の予定、特に本人にとってイレギュラーなことは事前に説明し本人に納得してもらうこと、そしてそれでも出てくる想定しきれていなかったこだわりは、その場では無理に矯正せず本人が安心できるやり方に合わせることです。Upload By シュウママ障害のある子どもの育て方に一般論は当てはまらないことが多くあります。それぞれのご家庭で合ったやり方で安心できる環境をつくっていくとよいのかなと思いました。
2019年09月23日ジンベイザメを金魚と言っただけで『発達障害に生まれて』(松永正訓著/中央公論新社)ノンフィクションのモデルとなった立石美津子です。自閉症の息子は、特別支援学校高等部に通っていた頃、学校で制作したこのTシャツを持ち帰ってきました。Upload By 立石美津子私は赤い魚が描いてあったので、「可愛い金魚だね」と言いました。すると…「違う!ジンベイザメだ!違う!違う!」とスイッチが入りパニック!朝食にいつもは食パンなのに、ロールパンを出した。私が「お薬飲んで」を「お薬食べて」と言い間違えた。そんな些細なきっかけで、パニックや自傷は始まります。息子は家の床を蹴り、トイレのドアを思い切り「バーーーーン!」と閉めました。私は「そんなことすると家が壊れて、引っ越しすることになるよ!」と傷口に塩を塗るような言葉をぶつけてしまいました。その朝、息子は折れて黙って登校していきました。家で禁止された息子、外で自傷をその夜、腕に酷い噛み痕があることに気づきました。「この怪我どうしたの?」と聞いたら「登校中、噛んで自傷した」と答えました。その日の朝、私から「家が壊れるよ」「引っ越しすることになるよ」と脅されたので、おそらくものすごく自分の感情をコントロールして、それ以上パニックを起こさないよう、つとめていたのだと思います。でも、結局外で自傷していました。私だって悔しくて泣いているとき「泣くな!」と言われたら、気持ちの持っていき場がなくなり、かえって苦しくなります。泣くことで、少し気持ちも落ち着きます。自閉症のある子にとって、パニックはそれと同じように、自分の気持ちを落ち着かせるためにしているものなのかもしれません。でも、この日の朝、私に強く言われたことで息子は”気持ちの持っていき場”を奪われてしまい…私が見ていないところで自傷をしました。言葉でうまく気持ちを伝えられないとき赤ちゃんは、「お腹すいた」「オムツが汚れて気持ち悪い」「暑い」「寝たいのに寝られない」など、不快な状態を泣いて訴えます。そんなとき、「泣くんじゃない!」と叱ることなく、親はその泣き方から「なぜ泣いているんだろう?」と原因を探り、「おお、よしよし。今、おっぱいをあげるからね」「オムツを替えてやるからね」と不快を取り除いてやります。この体験を通して子どもは「この人は僕を保護してくれる人だ」と母親を認識し、「この世は安全な場所なんだ」とわかってきます。私は保育園や幼稚園で長年仕事をしてきましたので、こうしたことを理解していたつもりですが、息子にはなかなか対応できないでいました。自傷を禁じることしかしていなかった息子は5歳になるまで言葉を話しませんでした。自分の思いがなかなか親に伝わらないとき、こだわりが通らないとき、床に頭を打ちつけ自傷することで伝えるしかなかったのでしょう…。でも、自傷する息子をみることはつらいものです。またそのことで近隣トラブルにつながってしまうこともあり、そのころの私は「やめなさい!」と叱ってばかりいました。息子の行為の背景にある思いまですべてを理解してやれず、叱ってばかりいたことで、「これがいやなんだ!」という気持ちが伝わらず、さらに叱られてしまうことでよりひどく自傷するという悪循環に陥っていたのです。どうすれば良かったのか息子がパニックを起こしたときは、赤ちゃんが泣いたときと同じように、「息子のパニックの原因はどこにあるんだろうか」と探り、「お前の負荷になる原因をなくしてあげるからね」と安全地帯を作ってやらなくてはならなかったのです。でも、大パニックを起こしている息子を目の前にした私に、そんな心の余裕なんかありませんでした。さらに、息子の場合は一度パニックを起こしてしまうと、嫌な原因(例えば「音を消す」)を取り去っても、もう収まりませんでした。パニックを起こしたきっかけを忘れてしまったかのように、今度は息子自身の泣き声に反応して大騒ぎをするのです。そんなときは、そっとしておくしかありませんでした。そして、15分くらいしてから、お風呂の湯船につからせました。すると息子は気分が変わるのか急速に自傷行為は収まってきました。今、私が心がけていることは、「頭ごなしに叱らない」ということです。指摘しなくてはいけないことがあるときも、叱るのではなく共感。そして、説得です。共感も説得もなく、ただ叱っても、息子の気持ちがおさまるどころか大きなパニックにつながってしまうからです。大怪我をするほど自傷していない…!?何度も起こすパニックと自傷に途方に暮れていた私でしたが、息子は、「これ以上やるとひどい怪我になる」のギリギリのところで踏みとどまっていることに気づきました。例えば、外出時パニックを起こして、道路上でスライディングすることもありましたが、大怪我をしない凸凹が少ない道路を選んでいるようにみえました。また、身体を触って抱きしめ「よしよし」となだめる行為自体が、感覚過敏の息子には不快なことで、パニックが増幅されていくことにも気がつきました。さらに1時間も続くように感じましたが、パニックを起こしている時間を測ってみると、一番長くても20分程度でした。修行中Upload By 立石美津子自傷やパニックを起こすのは精神のバランスを保つためにやっている行為。だから、嵐が過ぎ去るのを待ち、余計な手出し口出しをしない方がよいのかもしれません。時間が本人をクールダウンさせてくれます。親が巻き込まれるのは“火に油状態”となります。何もしないことが一番の解決のような気がします。太陽光の角度によっては赤く見えるジンベイザメもいるようです。まだまだ修行中の私です。
2019年08月13日サンちゃん、食べ方を工夫する4歳ごろ、麺をすすることが出来るようになったサンちゃん。ちゅるちゅるっと麺が口に吸い込まれていく様が見ていて爽快で、母はとても好きでした。しかし、しばらくしてサンちゃんは麺をすすらなくなりました。どうもその原因は、麺ではなく麺とともについてくるアレだったようです。さて、サンちゃんはアレを回避すべく新しい食べ方を考えたようですが…Upload By たなか れもんUpload By たなか れもんUpload By たなか れもんちなみに、汚れた手はすぐにふきたがってテーブルにこすりつけたりするので、目下お手ふきでふく練習中です!2019年6月28日発売、たなかれもん初の著書『つま先立ちのサンちゃん』。サンちゃんと弟のワッくん、ママ・パパの4人の毎日が描かれています。描きおろしの漫画に加え、療育園の仕組みなども紹介されています。監修は小児科医で医学博士の平岩幹男先生。
2019年06月21日「はじめて履いた靴」へのこだわり『発達障害に生まれて』(松永正訓著/中央公論新社)ノンフィクションのモデルとなった立石美津子です。どんなにかわいいわが子であっても、子育てには苦労はつきもの。自閉症など障害のある子の子育ては、その特性からさらに大変なことが多くあります。その一つがこだわりに付き合うことではないでしょうか。Upload By 立石美津子「僕が歩き始めたとき、人生で最初にお母さんが買ってくれた僕の靴。それは10㎝のベージュ色の可愛い靴でした」何だか歌の歌詞のようですが、そんな淡く美しいものではありませんでした。「これが靴という物だ」と本人は思ったのでしょう。それを履くことが心地よくなります。そこまではOKでした。ところが、毎日これを履いていることで次第にパターン化し、「このデザイン以外の物は僕は受けつけません!」となってしまい、こだわりが誕生しました。息子が、1歳のときのことです。まさか、はじめて買ってやった靴にここまでこだわることになるとは…買った当時は想像もしていませんでした。10.5㎝に。足が少し大きくなったけれど…Upload By 立石美津子しばらくの間、10㎝の靴を履かせていましたが、成長と共にきつくなってきました。そこで全く同じ色、デザインの10.5㎝の靴を買ってやりました。ここで私が違うデザインのものを与えていたら、結果は違っていたのかもしれませんが…たまたま私が同じ靴を続けて買ってしまったことで完全にパターン化し、「この靴でなければならない」となってしまいました。11㎝の靴を求めて子どもの足はドンドン大きくなります。10.5㎝の靴も次第にきつくなりました。そこで、同じ店に買いにいったところ、同じデザインのものはありましたが、11㎝の青色の靴しかありませんでした。それを買い、家に帰って履かせようとしたところ断固拒否、火のついたように泣き叫びました。翌日のお出かけのとき、ベージュの靴を見せて「これはもうきつくなったから、今日からははかないの。青いこっちの靴よ」と言い聞かせましたが通じず、暴れて履いてくれません。仕方なくきついベージュの靴を履かせたら機嫌が直り、きつい靴を履いて出かけました。私はメーカーに問い合わせし、他の靴屋に行き、サイズ違いの11㎝、11.5㎝、12㎝の同じデザインのベージュの色を買い置きしました。生産終了!さあ、どうするところが、息子の足がさらに大きくなり、12㎝ではきつくなりました。メーカーに問い合わせると、すでに生産は終了したとのこと。仕方なく、少しでもデザインが似ている色もベージュの物を買いました。ところが、前と同じく断固拒否!でも、私が頑張ってもないものはなく、その靴を用意することはできません。息子がどんなに暴れても、自傷しても、どうしてやることもできません…。お気に入りの靴はきつくなってしまっているので、息子はかかと部分を潰し、サンダルのような履き方をするしかなくなってしまいました。ゴミ箱に捨てた!?でも、これではやはり歩きづらかったのでしょう。ある日、ふと台所の生ゴミ用のゴミ箱を開けてみたら…そこに“ベージュの12㎝のこだわりの靴”が捨ててありました。私が捨てたのでもなく、本人に「捨てなさい」と命じたわけでもありません。自分で納得して、捨てたのです。「ああ、自分で自分をやっと納得させたんだな」と思いました。捨てた場所は「生ゴミ」のゴミ箱でしたが、それをとがめることはせず、「履けなくなったから、辛いけど自分で捨てたんだね」と褒めました。どんなデザインの靴でも受け入れられるようにこのことがあってからは、靴に関しては足が大きくなって違うデザインになっても、受け入れてくれるようになりました。今、振り返ってみると、洋服については衣替えのときは苦労したものの、それ以外は「ボタンが付いているものはダメ」というくらいで「この服でなければ着ない」というこだわりはなく、与えたものをすんなり着ていました。私は、息子の靴へのこだわりにばかりスポットを当ててしまい、必要以上に悩んでいたのかもしれません。あれだけこだわっていた息子自身、成長する中で折り合いをつけ、どんな靴でも履けるようになりました。子どもが幼いころには周りが“本人のこだわり”に応じてやり「お母さんは僕の嫌がることはしない」「自分に心地よいことを周りが認めてくれる」「大人は自分を守ってくれる人間である」このように安全基地を脅かさないことで、幼いころ、安心できる日が続くと大きくなったとき、我慢もできるようになるのだと、今は思っています。Upload By 立石美津子27.5㎝の靴を見てUpload By 立石美津子どんな靴でも履けるようになった今…「僕が歩き始めたとき、人生で最初にお母さんが買ってくれた僕の靴。それは10㎝のベージュ色の可愛い靴でした」ようやく、はじめての靴は懐かしい思い出となりました。現在、18歳の息子の足のサイズは27.5㎝。大人の男の、少しすっぱい臭いがする靴が玄関に並んでいます。
2019年06月18日空まで飛んで行きたいな小さい子向けの箱ブランコが窮屈になってきたサンちゃん。大きい子向けのブランコに乗ってみるも、なかなか姿勢を保って乗り続けることが難しい様子で、すぐずり落ちてしまうから、お腹をのせてユラユラしていたり。やっぱり、ビュンビュン勢いよく揺らせる、いつものブランコが楽しいよね…。そんなサンちゃんをそっと見守る大きい子向けのブランコくんがいました。果たしてサンちゃんとブランコくんは仲良しになれるのでしょうか…?Upload By たなか れもんUpload By たなか れもんUpload By たなか れもんサンちゃんはこれくらいのことではへこたれないよ!これからもよろしくね、ブランコくん。
2019年05月20日自閉症の長男が10歳になった年に、小さな妹が誕生しました。年が近い上の妹と双子のように育ってきた長男にとって、小さな妹は初めて「自分が守ってあげたい」と思う存在でした。 今回は、下の子の誕生によって長男に初めての感情が生まれたこと、その感情が大きな成長につながり、兄妹の絆が深まったエピソードを紹介します。 年の近い妹に依存していた自閉症の長男わが家の長男に障害があることを知ったのは、長女が生まれてすぐの2歳のころ。年齢相応のことが難しく、幼いころから兄妹は双子のように育ってきました。しかし、成長とともに長女が長男を追い越すことが増え、気が付けば兄妹の関係はすっかり逆転! 「しっかり者の妹に甘える兄」。それが当たり前になり、ますます自立から遠のいていく長男の将来を親として不安に感じていました。そんななか、わが家に新しい家族が誕生したのです。 「お兄ちゃんが守ってあげるよ」家族全員立ち会いのもと生まれたのは、とても元気な女の子。8歳の長女は、待望の妹だったため大喜びでした。しかし、10歳の長男は、どうしていいのかわからず戸惑っている様子。 うれしいけれどうまく言葉にできない長男に、「あなたの妹よ」と声をかけると、少し考えて生まれたての妹にこう話しかけました。「はじめまして、赤ちゃん。これからお兄ちゃんが守ってあげるよ」。長男が初めて自分から誰かを守りたいと思った瞬間だと感じました。 次女の誕生で深まった兄妹の絆次女が生まれてから、長男は立派なお兄ちゃんになろうと一生懸命でした。そんな兄の姿を見た長女は、自然と長男を兄として頼ることが増えてきたのです。もちろんうまくいかないこともたくさんありましたが、小さな妹にとって、自慢のお兄ちゃんになりたかったのだと思います。「これは俺にまかせて!」そう言って、何度失敗してもめげずに、2人の妹を引っ張っていこうとする姿を見せてくれるようになりました。 長男の障害のことがあり、長い間、3人目の子ども産む勇気が持てませんでした。しかし、小さな妹の誕生が兄妹みんなにいい変化をもたらしてくれたことで、改めて「勇気を出して産んでよかった!」と思えました。これからも兄妹3人がなかよく育ってくれることを願っています。著者:戸塚麻心発達障害のある長男、長女、年の離れた次女の三児の母。保育園・アパレルなど幅広い業種を経験し、結婚・出産。子育て中に2級FP技能士を取得し、コンサル会社に勤務。現在は不定期でアシスタント業務をしながら記事を執筆中。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。
2019年05月04日自閉症の長男と、定型発達の次男。わが家の「翌日の準備」風景わが家の双子の息子たちは、4月から小学5年生になります。今思うと、これまで本当にあっという間でした。子どもたちが低学年のころ、私は毎晩2人のかばんの中身を点検していました。Upload By シュウママ定型発達の次男の場合、低学年のうちは先生が翌日の予定を細かく板書してくれていたようで、連絡帳を見れば次の日の必要なものがすぐわかりました。私は、連絡帳を確認して「あれを持っていって」「これを忘れないで」と次男に指示していました。そして自閉症の長男の場合は、連絡帳を見ながら私が必要なものを準備していました。中学年になってくると、次男は「習字の墨汁がないから補充してほしい。それから明日は4時間授業で、給食はないよ」というように、必要なことや予定など自分から私に伝えてくれるようになりました。しかし長男の方はまったく変わらず、今日あった出来事も明日の予定も、自分から教えてくれることはなかったのです。Upload By シュウママ明日は6年生の卒業式。連絡帳をチェックしていたら...。つい先日、6年生が卒業式を迎える日の前夜のこと。私は、いつものように長男の連絡帳を確認していました。「明日は、在校生はモノトーンの服で登校してください」という先生からのコメントを読み、それに合った洋服を出していたところ、長男が横から連絡帳を覗き込んできました。そして何を思ったか、私の服の袖をぐいぐい引っ張るのです。Upload By シュウママ母の袖をつかみ、長男が何度も繰り返した言葉「どうしたの?」と聞くと、長男は切羽詰った表情で繰り返しこう言いました。Upload By シュウママ「何のこと?」と思った私が首をかしげていると、長男はいら立ったように再び「あした、おべんとう!あした、おべんとう!」と大きな声で言いました。その瞬間「あっ!」と思い、私はあわてて学校から配布されている1週間の行事予定表を確認しました。すると…そこには、こう書かれていたのです。Upload By シュウママ前日の連絡帳には書かれていなかったけれど、1週間の行事予定にははっきり「お弁当が必要」だと書いてある!きちんと確認していなかった!私は大慌てで炊飯器のタイマーを設定し、冷蔵庫の中身を確認しました。大丈夫、お弁当の材料はある...。ほっとして振り返ると、長男がにんまり笑っていました。ゆっくりかもしれない。でも、確実に成長しているんだね「明日、お弁当の日だったんだね。教えてくれてありがとうね。ママ、忘れてたよ。」そう言うと、長男はうれしそうにどや顔をしていました。Upload By シュウママおそらく先生から、「明日はお弁当ですよ。おうちの人に伝えてね」などと言われていたのでしょう。それを長男は覚えていて、きちんと伝えてくれたのです。長男が学校からの連絡事項を教えてくれたのは、初めてのことでした。長男も、もうすぐ5年生。小さな成長が見えて、なんだかとてもうれしい1日でした。
2019年03月29日ご飯が熱い!癇癪をおこした長男ある日、夕飯を食べていたときのことです。炊きたてのご飯をほおばった長男は、思いのほか熱かったのでしょうか。私が目を離したすきに、あろうことかご飯の入った茶碗をテーブルにひっくり返しました。Upload By シュウママ振り返ると、長男は怒ったような顔をしながら固まっていました。長男は、癇癪をおこすとよく物に当たります。やってしまった直後はだいたい硬直しています。衝動的に動いてしまって、後で反省するというのがパターンですが、そもそもひっくり返しちゃダメです。私は長男に向き合って叱ろうとしました。叱ろうとした瞬間、長男が発したひとことすると長男は大きな声で言いました。Upload By シュウママ私は一瞬耳を疑いました。先に食べ終わって本を読んでいた次男も一瞬意味がわからず、ぽかんとしていましたが「いや、オイラやってないし」と抗議しました。ところが長男はさらに「おとうとくん、やったねえ」と言うではありませんか。一度ならず二度までも…。バレバレではあるものの長男が初めて嘘をついたのです。初めての嘘に感心…している場合じゃなかった!そのとき、私が一瞬思ったのは、「嘘をつけるようになるなんて、成長したな…!」でした。ついこの間まで、単語もろくに言えなかった長男が、自分の行為について考えを巡らせ、自分を守ろうと言葉を選んで話したということが、なにか感慨深かったのです。イヤイヤ!もちろん、自分を守るためとはいえ、他の人がやったことにするのは、ついてはいけない嘘です。ここはきちんと説明して叱らなければいけません。けれど説明して長男に伝わるだろうか…?どうやったらわかってもらえるだろうか…。そう考えたとき、ふとある考えを思いつきました。どうやって「それはダメ」を伝える?私は次男にこっそり耳打ちしました。Upload By シュウママ私が作戦を説明すると次男もノリノリで参加してくれました。そして、私は次男に向かって「ご飯をひっくり返すなんて、なんてことするんだ!」と言って次男を叱っているふりをしました。「えーん。オイラやってないよ」と次男が泣き真似をしても「嘘だ。認めてちゃんと謝るんだ!」と、続けて怒りながら横目で長男の反応をうかがいました。Upload By シュウママ効果てきめん!反省した長男すると長男は自分がついた嘘で弟が理不尽に怒られている…という状況を理解できたのでしょうか。口を開けてすくみあがっています。Upload By シュウママ私は長男の方に向き直り「茶碗ひっくり返した人は誰?」と聞きました。すると長男は泣きながら手を挙げました。Upload By シュウママ十分反省しているように見えました。「嘘をついたらいけないよ」と私が言うと、長男はこくりと頷きました。その日以来、長男が自分でやったことを次男のせいにしたことはありません。子どもの心や言葉の表現力が成長していくことはとても幸せなことです。けれど、発達障害であってもそうでなくても、悪知恵も同時に育っていくので、気をつけていかないとな…と思った出来事でした。
2019年02月28日スパルタ特訓時代『発達障害に生まれて』(松永正訓著/中央公論新社)ノンフィクションのモデルとなった立石美津子です。わが子がしゃべらない…、言葉が少ない…、変な言葉遣いをすると、周りの子が上手にしゃべっているのを見て焦ったり、比べてしまったり。つい「言葉」だけにスポットを当ててしまい、「わが子の言葉を増やそう!」と必死になってしまうのではないでしょうか?かつての私もそうでした。でも、言葉を増やそうとすればするほど、やたら“オウム返し”が増えるだけでした。母「これは葉っぱよ、葉っぱ」子「これは葉っぱよ。葉っぱ」母(怖い顔になり)「そうじゃなくて、葉っぱ!」子「そうじゃなくて、葉っぱ」母(更に怖い顔になり)「葉っぱ!」子「葉っぱ」母は「やっとできるようになった」とホッとします。しかし!この訓練により、オウム返しが定着してしまい…。母「お名前はなんですか」子「お名前はなんですか」母「お名前はなんですか。立石勇太でしょ!」子「お名前はなんですか。立石勇太」(質問者の言葉までセットで言ってしまう)となってしまい、ガッカリ。そんな経験ありませんか?母「お名前を教えてください」子「…(無言)」という風に、質問の仕方を少し変えるだけで、途端に固まってこともあります。以前、息子とタクシーに乗ったときのことです。運転手さんに、「僕のお名前は?」と聞かれた息子は、「山田太郎※」とタクシーの運転手のネームプレートを読み上げました。オウム返しが減ってからも、会話がなかなか噛み合いません。※ここでは仮名にしています言葉を話す意味よく考えてみると、言葉って単語が増えるだけではダメで、「相手と関わりたい」という強い動機があって発達していくもの。電車の型番、国の名称、リンゴの銘柄を「王林、ジョナゴール、シナノスイート、世界一、富士…」と唱えていても…「ママ、今日は電車に乗ってお出かけしたい」とか「「お母さん、このリンゴ美味しそうだね。買って~買って~」とはなかなか言ってくれないものです。英語だって英単語を山ほど知っていても、「外国人と話したい」という動機がなければ、英会話は上達はしません。これと少し似ているのではないかと思います。息子がしゃべりはじめたきっかけUpload By 立石美津子息子が5歳、うどん屋に行ったときのことです。私と息子は、うどん屋さんで昼食をとっていました。そのとき、あと一本、うどんの切れ端が残っている器を、店員さんが下げようとしました。息子は”まだ、この一本を食べたいのだ!器を下げないでくれ!”という状況に追い込まれました。そして「まだ、食べる!」と叫んだのです。店員さんは慌てて器を戻しました。この経験をきっかけに「要求を叶えるためには言葉という便利なものがあるんだ」と理解したのか、徐々に、例えば「カレーライス食べたい」としゃべるようになってきました。オウム返しでも、心がこもっているUpload By 立石美津子オウムに「おはよう」と声をかけると「おはよう」と答えてくれます。でも、そこに心はこもっていないでしょう。人間が「おはよう」と言っても、オウムは「おはよう。今日の予定は?」「昨晩は良く眠れた?」と言う風には反応はしてくれないので、会話が続きません。息子は現在、18歳。今でもオウム返しをします。母「行ってらっしゃい」と見送ると息子「行ってらっしゃい」と元気に手を振りながら玄関から出ていきます。でもオウムとの決定的な違いは、言葉はオウム返しでも心がこもっていることです。オウム返しの「行ってらっしゃい」でも、ちゃんと意思表明してくれます。そこに心があるのが感じられます。こんな息子を毎朝、笑顔で「行ってらっしゃい~」と見送っている、親バカな私です。親が望む言葉に囚われないで私の身近に18歳になっても言葉がない子がいます。その子は自閉症ではありません。でも、その身振り手振り、表情でしっかりコミュニケーションが取れる子です。「これも言葉の一つなんだな」と感じています。ある自閉症のお子さんは、いつもは“要求語”しか発しないのに、先日はじめて、美しい満月を見あげながら「つき…」と言ったそうです。満月をきれいだと思った感性や、それを伝えようとしたこと(共感)を感じて、お母さんはすごくうれしかったそうです。息子は、要求があるときはたくさんしゃべりますが、会話のやりとりを続けることはまだなかなか難しい状況です。でも、あまり「言葉!言葉!」と焦らないで、その人にとってのそれぞれの言葉、親として見守ってやりたいと思っています。日本語って、難しい?息子のオウム返しがのり移ってしまい、息子が帰宅した時、つい私のほうから母「ただいま」と声をかけてしまい…息子「ただいま」オウム返しを予測して、息子が言うべき言葉を私が先回りして言ってしまうことも多く、なかなか学習できない息子です。でも、よく考えると「おはよう」「おはよう」「こんにちは」「こんにちは」「おやすみなさい」「おやすみなさい」なのに、「行ってらっしゃい」と言われたときは「行ってきます」、「おかえり」と言われたときは「ただいま」と、置かれた状況により言い回しを変えなくてはならない日本語って、実はすごーーーーーーーく難しいのかもしれませんね。2018年9月10日、医師・松永正訓氏が立石親子を取材、書き上げた新刊が発売に。発達障害がある子と母の、幼児期から今までに渡る育児について綴られています。
2019年02月07日次男のランドセルから出てきた、1枚の人権作文ある日、双子の次男が学校から帰ってきたときのこと。ランドセルを放り出して遊びに行く次男を見送った後、私は「学校からのお便りはないかな〜」とランドセルを開けて連絡帳ケースを取り出しました。すると中には連絡帳と一緒に1枚の原稿用紙が。Upload By シュウママ開いてみるとそれは学校で書いたと思われる次男の人権作文でした。「ぼくのお兄ちゃんは自へいしょうという病気です」「いつも見ている」というタイトルで書かれたそれは「ぼくのお兄ちゃんは自へいしょうという病気です」という書き出しで始まっていました。原文をそのまま全て載せることはできませんが、それは人権作文というより、長男に対する自分の感情を綴ったものでした。「見たいテレビをやっていないと怒ってテレビを叩くお兄ちゃん」「そんな姿を見るとぼくはとても腹が立つ」…Upload By シュウママなかなか普段本人から聞くことがない素直な思いがずばりと書かれていました。けれど次男はこうも書いています。「でも本当はお兄ちゃんはとても苦しいのかもしれない」人の気持ちを受け止めるレーダー自分でわかっていて、わざと人に意地悪したり叩いたりする人は、いつかバチがあたる。「でもお兄ちゃんには悪気がない」Upload By シュウママそう書いてあったのです。怒りをうまくコントロールできない兄への理解、行動の裏にある感情や理由を考えて寄り添う力が、私が思っていたよりもずっと育っていたことに驚きました。兄の自閉症のことを自分で考えられるようになっていた次男私は学年が上がるにつれて、なんでも話してくれるわけではなくなった次男が今、発達障害の兄をどう受け止めているのか、本心がわかりませんでした。次男の置かれている環境が本人を苦しめていないだろうかとも思っていました。長男は気に入らない音楽が流れると耳をふさいで叫んだり、手当たり次第に物を投げたりします。日常的にそんな兄の姿を見るのは、やはり特殊な環境だと思うからです。発達障害のある子どもがいると、どうしても身近にいる家族は戸惑ったり、苦しい思いをすることもあります。けれど、次男の作文を見て、長男のことを対等に見ている部分があったり、気持ちを想像して思いやったりしていることもわかりました。小さいころと変わらず、まっすぐに兄を受け止めていました。そして、きょうだい児として障害のある兄の心の声に気づき、その気持ちを汲み取り、寄り添う力が育まれているのではないか、そう思ったのです。偶然見つけた1枚の人権作文が次男の成長を教えてくれ、心にほっと温かい明かりを灯してくれました。Upload By シュウママ
2018年11月23日Q. 自閉症スペクトラム障害(ASD)とは?A. 自閉症の特徴のある障害概念のグループです。それまで自閉症やアスペルガー症候群など様々な名称で呼ばれていたものが、「DSM-5」という診断基準で「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」として統合されました。Upload By 井上 雅彦アメリカ精神医学会が策定した最新の診断基準「DSM-5」で、それまで、アスペルガー症候群、高機能自閉症、早期幼児自閉症、小児自閉症、カナー型自閉症などさまざまな名称で呼ばれていたものが、この診断名に集約されました。診断や支援において、これらには明確な線引きがないことから、それぞれの障害に明確な境界線を設けない考え方が、医療の現場で使われることが多い「DSM-5」で採用されたことが経緯としてあります。そして、「連続体」という意味の「スペクトラム」という言葉が使われることになりました。これからこの概念が一般化していくと考えられています。「DSM-5」では、自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害について、主に以下が特徴として挙げられます。■アメリカ精神医学会の診断基準の「DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル第5版)」A. 社会的コミュニケーションの障害B. 限定された反復的な行動様式C. 症状は発達早期に存在している診断ではA、Bの2つの症状を3段階の重症度で評価していきます。(精神障害の診断と統計マニュアル第5版)について詳しく知るもっと詳しく知る自閉症スペクトラム障害(ASD)とは?年代別の特徴や診断方法は?治療・療育方法はあるの?広汎性発達障害(PDD)とは?年齢別に症状の特徴を解説!アスペルガー症候群(AS)とは?症状と年齢別の特徴を詳しく解説します。カナー症候群(カナー型自閉症)とは?アスペルガーとの違い、症状、年齢別の特徴、子育て・療育法を紹介!自閉症 | 文部科学省
2018年10月25日自閉症の息子が5歳のとき――初めて意味のある言葉を発した!Upload By 立石美津子『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』著者の立石美津子です。あれは、息子が5歳のときでした。デパートの讃岐うどんのお店に連れて行ったときのこと。息子が食べていたうどんの器には、あと1本だけ、うどんが残っていました。その器を、店員が「お下げいたします」と持って行こうとした瞬間、大きな声で「まだ食べる!」と叫んだのです。そのころの息子は、まともな単語すら出ていませんでした。それなのに、いきなりの2語文!しかも自閉症らしからぬ、自分の意思をはっきりと示し、まっすぐと相手に届く言葉でした。言葉は単独では発達しないと、主治医に諭されて出典 : 息子は2歳から国立の子ども病院の心の発達科に通っていました。この病院ではソーシャルスキルトレーニングのほか、さまざまな訓練があったので「言葉が話せるようになるトレーニングをさせたい」と申し出ました。ところが担当医は、「お母さん、いくら言葉を教えても、それは単に単語を覚えるだけに終わります。言葉を操ってコミュニケーションをとれるようにはなりませんよ!」ときついことを言うのです。「ソーシャルスキルトレーニングを受けさせたい」と申し出ても、「周りに関心を持つことができてはじめて、社会のルールを学べるのです。○○君(息子の名前)は、排泄・着替えなど自分の身のまわりのことも全くできていないじゃないですか!何を考えているの?」と厳しく言われました。更に、診察室の床に落ちているゴミを口に入れている息子を見て、「ほら、ごらんなさい。ゴミを口に入れているじゃないですか、この段階では“社会性を育てる”なんてずっと先の話ですよ。まだ早い、まだ早い」と言いました。5歳過ぎてもオムツが外れない息子を心配し、「なんど教えてもトイレでおしっこができない。どうしてもオムツを取りたい」と訴えた時も…「オムツだけをとっても、オムツとれた赤ちゃんのままです」と言われる始末。「言葉も、オムツがはずれることも、全部発達の中でできるようになっていくものです」と厳しく諭されました。自閉症の息子、リンゴの銘柄は言えても「買って」とは言わない…出典 : 幼いころ、息子はリンゴの銘柄にこだわりがあり、スーパーに行くと、リンゴの棚の前で「ジョナゴールド・津軽・紅玉・シナノゴールド・秋映・王林…」と覚えている銘柄を順に言っていました。けれども、「ママ、このリンゴ美味しそうだね。買って~買って~」と言うことはありませんでした。息子は、スーパーの中だけでリンゴの銘柄を唱えていたのではありませんでした。動物園など、リンゴなんて目の前にない場所でも、銘柄名をお経のように唱え続けるのでした。これは言葉を使ったコミュニケーションとは言えません。「伝えたい気持ち」があるかどうかUpload By 立石美津子言葉だけのトレーニングをしても単語を単に覚えるだけ。言葉を使ってしゃべるようには、なかなかなりません。息子が意思のある言葉を発したきっかけは、「うどんを最後の1本まで食べたい、器を下げようとしている店員に何がなんでも伝えたい」という強い動機があったからです。「どうしても言葉を使って伝えたい」という動機。この動機づけこそが、言葉を話すようになるための第一歩です。本人が「そうしたい」という気持ちになるまで待つしかないのです。おもちゃで遊んでいるときに、友達に奪われそうになって「嫌だ」と言う。カレーライスが食べたいとき「カレーライス」と叫ぶ。結果、自分の希望が通る。こうして「自分の気持ちを伝えるためには便利な“言葉”というものが、存在するんだ」ということを体験させるしかないのです。それまでは、周りの人たちは、ただ単語をインプットさせようとするのではなく、「思いを伝えるための言葉」で語りかけ続け、ときが来るのを焦らず辛抱強く待つしかないのだと思います。5歳ではじめて意味のある言葉を発した息子。その後、少しずつ、伝えたい気持ちも言葉も発達していきました。今、18歳になった息子は悪い言葉も覚えて、私があまり構い過ぎると「まじ、しつこい」と連発します。母として眉をひそめながらも「友達の真似をして、母親に言葉で感情をぶつけられるようになったなんて、昔に比べたら成長したなあ」と心ではひそかに喜んでいます。2018年9月10日、医師・松永正訓氏が立石親子を取材、書き上げた新刊が発売に。発達障害がある子と母の、幼児期から今までに渡る育児について綴られています。
2018年09月11日双子を可愛がってくれた、ひいおじいちゃん今年の桜は例年より早く咲き、本来ならまだ満開であろう時期に散っていきました。時を同じくして4月の初め、わが家の双子を可愛がってくれたひいおじいちゃんが亡くなりました。双子とひいおじいちゃんの関わりは深く、以前、コラムにもその様子を書いていました。連絡を受けた時、私はしばらく呆然としていました。頭の中には長男の頭を撫でてくれていたひいおじいちゃんの姿が駆け巡ります。知らぬ間に涙があふれ、私の隣りでは次男が悲しそうな顔をして膝を抱えていました。楽しそうにテレビを見ている長男に「ひいおじいちゃん、死んでしまったよ。もう二度と会えないんだよ」と告げました。けれど長男はぽかんとして私の顔を見つめ、またテレビへと視線を戻しました。長男は死というものがどういうものか分かっていなかったのです。Upload By シュウママ不安もある中、子どもたちと葬儀へ参列することに葬儀には、子どもたちも一緒に参列しようと思いました。2人を大切に思ってくれたひいおじいちゃんのもとへ、どうしても連れて行きたかったのです。そうは言っても、本当に大丈夫だろうか、長男は騒いだりしないだろうかーー。乗り込んだ新幹線の中で不安が募ったことを覚えています。Upload By シュウママパニックになってもおかしくない中、意外だった長男の姿初めて入る葬儀場、そして大勢の人。長男にとってはパニックを起こす要素だらけの状況です。Upload By シュウママ通夜がしめやかに営まれている間、私は多動の長男が騒ぎ出したりしないかと気が気ではありませんでした。ところが予想に反して、長男は握り締めた手を膝の上に置いて、きちんと座っていました。ひいおじいちゃんの遺影を見ながら、感じるものがあったのでしょうか。長男はじっと写真へと視線を注いでいたのです。Upload By シュウママなぜひいおじいちゃんはこの場にいないんだろうという寂しさがあったのかもしれません。周囲に漂う重い空気を察したのかもしれません。どちらにせよあの瞬間、長男はひいおじいちゃんの不在を心の底から哀しんでいたのです。長男にとって、ひいおじいちゃんはやはり特別な人だったんだと改めて感じました。ふっと2年前、最後にひいおじいちゃんと会ったときのことが蘇りました。長男を丸ごと可愛がってくれた長男が言葉を話せなかった7歳ごろは、頻繁に癇癪を起こしていました。それは夏休みに私の実家に帰省した時も同じでした。些細なことで泣き出す長男に対し、ひいおじいちゃんは「シュウの頭の中には言葉があふれているよ」と優しく言い続けてくれました。そして冬休みに再び帰省した時のことです。皆と楽しい時間を過ごし、いよいよ家に帰る日。「また会おうな」と言って頭を撫でてくれたひいおじいちゃんに向かって、長男は「バイバイ」と言って手を振ったのです。その瞬間、ひいおじいちゃんは驚いた顔をしてぼろぼろと涙をこぼしました。これが初めて長男がひいおじいちゃんに向かってしゃべった言葉だったのです。言葉があふれているよーーそう励ましてくれたひいおじいちゃんは、誰よりも長男の力を信じてくれていました。でも本当は話さない長男のことを誰よりも心配していたのだと思います。人前で決して泣くことのなかったひいおじいちゃんが、長男のために流した涙。その優しさは長男の心に届いていたのでしょう。Upload By シュウママ長男が葬儀の席で静かに見送ることができたのは、ありったけの愛情で包んでくれたひいおじいちゃんに必死で応えたからだと思います。愛された記憶は、長男の心の中に宝物のようにしまわれているのかもしれません。葬儀に参列できたことで、改めてひいおじいちゃんの残してくれた優しさが心に沁みていきました。そしてそれは長男も同じだったんだということに気づかされて、悲しみが少しだけ癒されていくのを感じたのです。
2018年06月20日父親として自閉症がある息子の子育てに向き合う出典 : もうすぐ父の日ということで、父親としての自分の思いや考えを振り返ってみました。母親の立場からは考え方や悩みの観点が違うこともあるかもしれません。父親なりのお話をできればと思います。私は自閉症児の父親として、心に決めていることがあります。息子の障害が分かった当時から想定していたこともあれば、日々の生活を過ごす中で見出した部分もあります。家族を持つ男性として「当たり前」のようなことも、障害という現実によって「当たり前」と思えなくなるケースもあるだろうと考えてお伝えします。自閉症児の父親として心に決めている3つのこと出典 : つ目は、自分から情報収集して自閉症をより理解することです。私の主な手段はテレビや本、WEBサイトやSNSです。本は図書館などで借りれば無料ですので、気兼ねなく情報収集ができます。WEBサイトでは、個人ブログの場合、療育の実体験や症状について知ることができます。また、発達障害などの専門サイトは日本の制度や社会情勢、新しい動向や特徴的な事例などもよくチェックしています。子どものために参考になることが多く、定期的に見るようにしています。情報を得ることがなく、「何も知らない状態」というのは、余計な不安を感じたり希望を見出せなくなったりしてしまうと考えています。私自身が、そうだったからです。3歳頃に自閉症と言われた当時の息子は、話すことはもちろん、目を合わせることもできない状態でした。そのまま容姿だけが年を重ねていくものだと考えてたため、将来の不安や成長しない(と思っている)ショックはとても大きなものでした。でも、情報を集めたことで少しずつ自閉症の全体像が見え、息子が成長することが分かって前向きになることができました。特に大きかった「発見」は、重度の自閉症でありながら小説家として活動をしている東田直樹さんを知ったことでした。東田さんは息子と同じように手をかざす、ジャンプする、急に動く、歌うなどの症状がありました。しかし、自らパソコンをタイピングして小説の執筆をするだけでなく、文字盤を利用してリアルタイムで人と会話をしていました。特徴的なケースかもしれませんが、当時の私には大きな希望でした。東田さんの姿を通して、わが子の自閉症という障害を理解し、受け入れることができたのだと思います。今後も年齢など息子のステージが変わるにつれて、初めての経験や知らないことが増えていくでしょう。意識的に自閉症やその周辺のことを知ろうとする努力を続けていきたいです。2つ目は、妻のことを意識して気に掛けることです。「夫なら当たり前だ」と思われるかもしれませんが、息子に障害があることが分かり、より意識が高くなりました。ただでさえ大変と言われる子育てです。障害があり、生きにくさを感じることがある子どもを育てていくのは、とても困難が多いだろうと診断された時に覚悟しました。特に考えたのは、精神的な負担です。私は仕事で外に出ていることが多いため、ずっと妻が中心となって子どもを見てくれています。息子と街中を移動する時の周りの視線、保育園や学校に行った時の先生の反応のほか、さまざまな場面で健常児との違いを感じて、落ち込んだり悲しくなることがあり得ると想定しました。そして、それらは実際に全て起こりました。そんな時は、仕事が立て込んでいたり、疲れていたとしても、妻の気持ちが落ち着けるようにできる限り話を聴く時間を取るようにしてきました。妻から話かけてくれることもありますし、明らかに気分が落ちている時はこちらから聞くようにしています。アドバイスや無理に共感するというよりはとにかく話を聴くことが大切。ひと通り話を聴いた後に、短期的に考えるのではなく少し長いスパンで考えてみる、今後(未来)の話をすることで良い形に転換できているのかなと思います。結果的に早く前向きになって、次のことを考えて行動することに繋がっています。また、息子の進学について悩んだ時などは、妻以上に妻のことを考えて発言をしました。息子の当時の状況(発達度合い)を考えた際、特別支援学校ではないところに進学すると、何かが「できない」状況が増えてしまうと考えていました。それにより息子が自尊心を失う可能性もありましたし、何より妻が「自分の教育が悪い」などと自己否定をして落ち込んでしまうことが一番の心配でした。妻が自信を無くしてしまったり、傷ついたりしてしまうと本人も辛いですし、息子もそれを感じ取って悲しい気持ちになるでしょう。もちろん、私も辛くなります。だから、できる限り元気にいて欲しいのが夫としての願いです。3つ目は息子の成長の可能性を探り、伸ばしてあげることです。息子は言葉を話すことが困難なタイプですので、発話がほとんどありません。診断された当時は、息子にこちらの話は通じておらず、コミュニケーションはできないものだと考えていました。しかし、息子と一緒に過ごす中で、彼には意思があり、状況や話を理解していることが分かってきました。教えたことを覚えたり、話したことを行動することが少しずつできるようになったからです。少しずつ自閉症を理解をしていく中で、「できるようになるためには、どうすればよいか?」と思うようになっていた私は、「『声』というアウトプット手段が難しいのであれば、他の手段を習得すればよい」と考えました。それから紙と鉛筆で文字を書く練習を始め、今ではパソコンのタイピングの練習をしています。文字にすれば1文で済んでしまう簡単な話ですが、実際は苦節2年程の時を経て今があります。そもそも鉛筆を握れないところから始まり、線をなぞれない、なぞれるようになっても時には完全に無視することがありました。息子の集中力が切れて1枚のプリントを終わらせるのに2時間かかる日も…。でも、諦めずに可能性を頼りに継続して進めてきたことにより、確実に前進しています。実際に息子がタイピングの練習をしている動画がこちらです。私も「タッチパネルの製品を使おう」と言ったり「好きな数字のタイピングから始めてみよう」「文字のタイピングの前にローマ字を覚えよう」という提案をしながら一緒に進めてきましたが、この練習を全面的に支えてくれたのは妻です。妻のひたむきさと息子自身の努力の成果なので、2人に本当に感謝しています。妻と息子が幸せであるために出典 : 私は、父親として妻や息子に幸せであって欲しいと願っています。そして、そのように導くことが使命だと思っています。これらは自閉症とは何ら関係はありません。今は私たち家族に自閉症という要素が入りましたが、それによって妻や息子が不幸になるものではなく、私たち家族がどのように行動するか?ということが少し変わっただけです。どのような状況下にあっても、まずは父親である私自身が自ら心に決めたことを、継続していくことが全てだと感じています。とはいえ実際には自分一人ではやり切れないことばかりです。妻や息子自身、周りの方の協力があって成り立つものですが、まずは紹介した3つのことを大切にしながら、父親としての使命を果たしていきたいと思います。
2018年06月14日行き先の確認は念入りに…「用意周到」を求められるレジャー出典 : 発達障害の息子と一緒に旅行やレジャー施設などに行くとき、私たち家族は常に先回りして施設の特徴を調べ、息子にとって苦痛な刺激がないかどうかを確認します。大きな音や明るすぎる照明がないか。疲れたときに休ませる場所はどこにするか。混み具合はどうか。泊まりにしたほうが良いか日帰りにしたほうが良いか。息子は刺激に弱く、すぐに「疲れた」と言って座り込んでしまいます。そんな息子が無理をすることなく、「楽しかった」と言って終わってくれるようなラインを探ります。こんなとき、「このレジャー施設は発達障害のある子どもにやさしいよ」「このホテルは発達障害の特性に理解があるよ」というようなことが体系的にまとめられている情報があったら、とても助かりますよね。今回、諸外国の事情を調べていたときに、アメリカでは発達障害のある子どもにやさしい施設に認定を与えていることを知ったのです。認定された施設をまとめてくれている「Autism Travel」というページを見れば、ホテルやレジャー施設などの一覧を見ることができます。 Travel - 自閉症者向け旅行サイト(英語)アミューズメントパークとしては初めて!「セサミプレイス」とは出典 : 「発達障害のある子どもにやさしい施設」の認定は、アメリカのIBCCES(International Board of Credentialing and Continuing Education Standards 資格認定・継続教育基準国際委員会:筆者訳)という団体が行います。同団体の定める条件をクリアすると、「認定自閉症センター(Certified Autism Center)」として認められ、レジャー施設やホテルであればAutism Travelのページに掲載されます。この「認定自閉症センター」に初めて認められたアミューズメントパークが、アメリカ・ペンシルバニア州にある「セサミプレイス」です。ここは、アメリカの子ども教育番組「セサミストリート」のキャラクターのテーマパーク。「セサミストリート」といえば自閉症の女の子のキャラクターが登場したことも話題になりましたね。セサミストリートに自閉症の新マペット登場!番組制作の背景は?日本では視聴できるの?アメリカで「認定自閉症センター」として認められるには、働いているスタッフが発達障害についてしっかりと教育を受けている必要があるそうです。では、「セサミプレイス」のスタッフは、実際にどのような訓練を受けたのでしょうか。公式ホームページに記載されている内容によると、スタッフは発達障害の特性にかかわる以下の点について特別なトレーニングを受けているそうです。・感覚刺激に関する認識・運動能力・自閉症に関する基本的知識・各種プログラムの作成・ソーシャルスキル・コミュニケーション・環境設定・感情についての認識また、スタッフがその人の特性に配慮して、乗ることのできる乗り物をピックアップしてくれたり、刺激で疲れてしまった人のためのコームダウンの部屋を準備してくれていたりします。聴覚過敏の人のためにヘッドフォン貸出が行われているほか、パレードでは、身体を触れられることが苦手な人は、キャラクターが直接ハグしたりすることのない列に案内されるのです。セサミプレイスホームページ ー 世界で初めて「認定自閉症センター」に認定される(英語)「分かっている人がいる」という安心感出典 : 今でこそわが家の息子は感覚刺激が不快になると、自分から休憩するようになりました。成長するに従って、自分の限界を認識することができるようになってきたからです。けれども、幼いころはそうはいきませんでした。水族館に行けば、ボヤボヤとした光と、館内から響く独特の音にやられて、床に這いつくばって動かなくなりました。動物園では、動物の臭いにめまいがしてきてしまい、ずっとおんぶで移動したこともあります。顔は真っ青でした。お祭りに足を運べば、太鼓の音と人混みに吐き気がしてしまい、泣きながら帰りました。心配して「どうしました?」と声をかけてくださるスタッフの方もいましたが、「すみません、発達障害で…」と答えても「?」という顔をされることが多かったのです。そうすると、なんだか申し訳ないことを言ってしまったような気分になり、「大丈夫です。ちょっと疲れたみたいで」と、そそくさとその場を去ったものです。そんな時、具体的に何かをしてくれるわけではなくとも、「セサミプレイス」のようにいまパニックを起こしている人が何に苦しんでいるのか「分かっている人がいる」ということ、それがどんなに心強いことか想像に難くありません。私たち親も、特に何かを配慮をしてもらいたいわけではなく、「知っておいてもらえると、それだけで気持ちが楽」なのです。日本にも、このような認定制度があったら、旅行計画をするときに、もっと気楽に楽しい気持ちでできるかもしれませんね。
2018年05月28日