トゥレット障害(トゥレット症)とは?出典 : トゥレット障害とは、児童期から青年期にみられるチック症の一種で、多様な「運動チック」と1つ以上の「音声チック」が1年以上持続することを特徴とする精神・神経疾患です。1885年に研究者のGilles de la Tourette(トゥレット氏)にちなんで命名され、トゥレット症やトゥレット症候群と呼ばれることもあります。トゥレット障害は、大きくはチック症と呼ばれる疾患群の1種として分類されます。まばたきや首振り、咳払いといった、一見癖のように見える症状が起こることをチックと呼びます。チックの症状には運動性チックと音声チックの2種類があり、さらに持続時間に応じて、単純性チックと複雑性チックに分類されます。2013年に出版されたアメリカ精神医学会のDSM-5(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版)の診断基準によると、チック症は5つの診断カテゴリに分類されます。そのうち、以下の4つの条件を満たすものがトゥレット障害と診断されます。トゥレット症の推定有病率は学童期の子どもで1000人あたり3~8人の範囲とされています。A. 多彩な運動チック,および1つまたはそれ以上の音声チックの両方が,同時に存在するとは限らないが,疾患のある時期に存在したことがある.B. チックの頻度は増減することがあるが,最初にチックが始まってから1年以上は持続している.C. 発症は18歳以前である.D. この障害は物質(例:コカイン)の生理学的作用または他の医学的疾患(例:ハンチントン病,ウイルス性脳炎)によるものではない.(日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院,2014年/刊)東京大学医学部附属病院精神神経科―トゥレット症候群の概要チック症について詳しくは次の記事をご覧ください。トゥレット障害の症状経過出典 : トゥレット障害は、平均的に4~6歳で発症し、10~12歳くらいに重症度のピークがきます。まず初期の段階で、まばたきや首ふり、顔をしかめるといった「単純運動チック」が始まることがあります。そしてしばらく経つと、物に触る・蹴る、飛び上がるなどの「複雑運動チック」、不謹慎な言葉を唐突に言ってしまうなどの「複雑音声チック」へと進行していく場合があります。その後、一般的には青年期の間に症状は軽減するといわれています。トゥレット障害を含むチック障害(発達障害者支援関係報告会金生由紀子)トゥレット障害の主な原因と悪化要因出典 : トゥレット障害正確な原因はまだわかっていませんが、家系発症が多いことや双生児研究の結果から遺伝的要因の関連性が指摘されています。また、情動、注意、意欲、報償、依存、歩行運動などをつかさどる、大脳基底核のドーパミン神経受容体の異常が関連しているともいわれています。トゥレット障害の症状を悪化させる要因は環境要因、気質要因、その他の要因の3つに分けることができます。■環境要因チックの症状は、不安、興奮、強い疲労によって悪化し、落ち着いて集中しているときは改善します。たとえば、テストを受ける、課外活動に参加するなどの、ストレスが多い出来事はしばしば症状を悪化させる一方、勉強や仕事に集中しているときは、症状を軽減させます。■気質要因対人関係が不器用、不安やストレスを感じやすい、緊張を感じやすいなど、デリケートな気質の子どもがトゥレット障害を発症しやすいといわれています。■その他の要因併発したADHD(注意欠陥・多動性障害)の症状緩和のために使用される中枢刺激薬などが、トゥレット障害の症状を促進することがあります。また、結膜炎を生じた際の目のかゆみでまばたきをしていたのが癖になったケースや、テレビの見過ぎによる目の疲れが原因となったケースもあります。トゥレット障害によく見られる合併症出典 : トゥレット障害のある人は、他の障害も併発することが少なくありません。代表的なものとして、ADHD(注意欠陥・多動性障害)と強迫性障害の2つが挙げられます。これらが合併症として現れる理由は、トゥレット障害、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、強迫性障害がいずれも、ド-パミン系やセロトニン系などの脳内神経伝達物質の機能不全に起因するためであると推測することができます。その他、学習障害、睡眠障害、気分障害、自傷行為などを併発することがあります。これらは、日常生活においてチックが現れることへの不安や、チック症状そのものが学習活動や仕事をするうえでの支障となることで生じる二次障害であると考えられます。しばしばみられる合併症(併発症)は、小児期の注意欠陥多動性障害と10歳以後の強迫性障害がある。ほかに、小児期には睡眠障害、昼夜の区別に一致した生活リズムがとれない、直立二足歩行がきちんとできないことがみられ、10歳代には衝動性行動などをみることもある。(「神経系疾患分野トゥレット症候群(平成22年度)」難病情報センター)東京大学医学部附属病院精神神経科―トゥレット症候群の概要ADHD(注意欠陥・多動性障害)、強迫性障害について、詳しくはこちらをご覧ください。トゥレット障害の治療方法出典 : トゥレット障害の基本的な治療方針は、トゥレット障害を除去することを目的としていません。トゥレット障害や合併症があっても本人が社会に適応できるようにしたり、周囲の環境を整備して症状や困難を緩和するという考えに基づいて、治療が行われています。そのため、本人や周囲への心理教育や環境調整などの治療法を基本としつつ、チック症や合併症の症状に合わせて、認知行動療法や薬物療法などの治療法がとられることが多いのです。比較的軽度の症状であれば、家族や学校など周囲の理解を得ることで、通常通りに生活することができます。心理教育および環境調整とは、患者の家族や学校に対して適切な支援を行うための情報提供やアドバイスを行うことで、社会適応できるようにサポートしていける環境を整備することです。重症・慢性化した症状の場合、習慣逆転法(ハビット・リバーサル)という行動療法がとられることがあります。習慣逆転法(ハビット・リバーサル)とは、意識化練習、拮抗反応の学習、リラクゼーション練習、偶然性の管理、汎化練習の5つのステップを用いた治療法のことで、これらを習得することで症状が改善されるというものです。ただし、現在のところ日本ではあまり普及しておらず、一般的な治療法ではありません。上記の療法では解決できない場合、薬物療法が行われることもあります。合併症も含めて、どの症状に的を絞るのか、副作用の程度などを考慮して選択されます。ドーパミンの過剰な働きを抑制するハロペリドールのほか、リスペリドン、クロルプロマジン、アリピプラゾールなどが用いられます。薬は人によって合う・合わないもありますので、主治医と相談し、指示のもと用法用量を守って治療を進める必要があります。ハロペリドール|独立行政法人医薬品医療機器総合機構HPリスペリドン|独立行政法人医薬品医療機器総合機構HPクロルプロマジン|独立行政法人医薬品医療機器総合機構HPアリピプラゾール|独立行政法人医薬品医療機器総合機構HP以上に示したいずれの方法でも治療できない場合は、外科治療が施されることもあります。大脳基底核に電極を埋め込んで持続的に刺激を与える、深部脳刺激療法という手術が行われます。法人日本トゥレット協会―トゥレット症候群についてトゥレット障害の診療・相談先出典 : 幼児期・乳幼児期に発症した場合は、小児診療内科・児童精神科などで診療できます。大人の場合は、精神科や神経内科、心療内科などが適切です。その他相談先には、市区町村窓口、保健所、精神保健福祉センター、発達障害支援センターなどがあります。トゥレット障害には、周囲の理解とサポートが不可欠トゥレット障害はあまり知られていない精神・神経疾患で、悪い癖やしつけが足りないなどと周囲から誤解されることが少なくありません。そのため、本人だけでなく周囲の人たちがチック障害を正しく理解し、適切な対応や望ましい接し方を身に付けることが求められます。病気について学び、正しい対応法などを学ぶことを心理教育といいます。保護者や周囲に対するトゥレット障害における心理教育は次のようになります。・チックは運動を調整する脳機能の特性やなりやすさが基盤にあり、親の育て方や本人の性格に問題があって起こるのではない。・チックの変動性や経過の特徴を理解し、些細な変化で一喜一憂しない。・チックを悪化させるかもしれない状況があれば、その対応を検討する。・チックを本人の特徴の一つとして受容する。・チックのみにとらわれずに、長所も含めた本人全体を考えて対応する。・チックや併発症及びそれに伴う困難を抱えつつも本人ができそうな目標を立て、それに向かって努力することを勧める。(トゥレット障害を含むチック障害発達障害者支援関係報告会金生由紀子)また、小学生以上でトゥレット障害のある人が生活する上で生じる困難に対する理解をサポートする教材として、次のようなものがあります。心理教育を通してトゥレット障害に対する理解を深めましょう。「チック」や「くせ」をよく知ってうまくつきあっていけるように(齋藤万比古,分担研究者:金生由紀子)まとめ出典 : もしトゥレット障害の症状が見られたら、まずは専門機関での相談・受診をおすすめします。早期から適切な支援を行うためには、自分たちの判断ではなく、専門家に相談するのが一番です。仮にトゥレット障害ではないと診断された場合でも、困難を乗り越えるための様々なアドバイスをしてもらえることが多いので、一度相談してみることをおすすめします。東京大学医学部附属病院精神神経科―トゥレット症候群の概要日本小児神経学会―Q&A大人のためのADHD.co.jp―ADHDの原因強迫性障害ガイド―強迫性障害の原因発達障害療育の糸口―トゥレット症候群の症状法人日本トゥレット協会―相談窓口
2016年08月28日すぐ汗をかく長男の頭のニオイは、夏場すごいことにUpload By モンズースー以前先輩ママから、男の子は幼児期から体臭がある子も多いとは聞いていましたが、長男は2歳頃から頭の匂いが気になる子でした。特に夏場の暑い時期はひどく、毎日洗ってもお風呂上りには、すぐ汗でびしょびしょに…。洗う時間が短いのが原因かと思い、長い時間ゴシゴシしてみましたが、それはそれで嫌がるので、しっかり洗うことができませんでした。しっかり頭を洗いたい!シャンプーの時間に見通しをつける方法Upload By モンズースーそんな時、シャンプーのときに童謡の「どんぐりころころ」を歌うと、ちょうどいい時間になるという話を聞き、実践してみました。この方法だと、子どもも歌に夢中なので嫌がらず、しっかり洗わせてくれました。洗い終わった後は匂いもほとんどせず、次の日でも以前よりずっと匂いが少なくなったのです。曖昧な「ちょうどいい」が明確になることで、1人でできることも増えていくUpload By モンズースー最近では、自分で歌いながら洗うようになりました。ちょうどいいが難しい長男には、「歌」という解りやすい時間を使うことで、ちょうどいいシャンプーの時間が、わかるようになったみたいです。数や時計が難しい子には、歌という方法もありなのかもしれません。
2016年08月26日広汎性発達障害(PDD)とはUpload By 発達障害のキホン広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorders:略称PDD)は、コミュニケーションと社会性に障害があり、限定的・反復的および常同的な行動があることを特徴として分類される発達障害のグループ です。世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)の診断カテゴリでは、このグループには自閉症、アスペルガー症候群のほか、レット症候群、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害という5つの障害が含まれています。広汎性発達障害の中でも特に自閉症やアスペルガー症候群がよく知られていますが、自閉症の半数以上が知的障害を伴うのに対して、アスペルガー症候群は言葉の発達の遅れが伴わない「知的障害のない自閉症」と言われています。また、知的障害のない自閉症は「高機能自閉症」とも呼ばれますが、アスペルガー症候群との定義の違いが曖昧で、専門家によって異なります。さらに、広汎性発達障害は、最新の診断基準であるアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版テキスト改訂版)では自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害というカテゴリに変更されています。広汎性発達障害の障害名、症状の中には自閉症スペクトラム障害の概念では除外されたものも含まれています。ですが、行政や医療機関で広汎性発達障害の名称を使用している場合も多いこと、すでにこの名称で診断を受けた人も多いことから、本記事では『ICD-10』の診断カテゴリに準拠して広汎性発達障害の名称でご説明します。広汎性発達障害の子どもの生活での4つの困難と対処法出典 : 広汎性発達障害の主な症状は・対人関係・社会性の障害・コミュニケーションの障害・特徴的なこだわりや興味の3つが挙げられます。その他、広汎性発達障害のある人の多くに「視覚」「聴覚」「味覚」「触覚」などの感覚に対して特定の刺激に苦痛や不快感を感じる「感覚過敏」や感覚の鈍い「感覚鈍麻」という症状が見られると言われています。このような特徴を持つ広汎性発達障害の人は、どのようなことを困難に感じるのでしょうか。以下に4つの困難と対処法を述べたいと思います。広汎性発達障害のある子どもは、人の感情を読み取って人の気持ちに共感したり、想像したりすることが難しい傾向にあります。また、比喩やたとえ話も理解しにくい傾向があります。そのため相手の気持ちを考えずに、思ったことをストレートに口に出してしまって相手を傷つけたり怒らせたりしてしまうこともあります。対人関係を築くのが苦手でコミュニケーション障害もあることから、広汎性発達障害の子どもにとって友達を作ることは困難な作業です。例えば、一緒に遊びたいなと本人が思ったとしても、友達を誘う方法自体が分からないこともあります。【対処法】「君太ってる」「あのひと臭い」など、相手を傷つけるような発言をした場合は「そんなこと言っちゃダメ!」と抽象的に叱らずに「太ってると言われると○○さんは悲しいと思うから言わないで」と相手の気持ちを推測できるように促し、具体的に何を言ってはいけないかを提示してあげましょう。相手の気持ちを理解する練習をすることで、言っていいことと悪いことの区別をつけさせるのが大切です。他人とのコミュニケーションをとるのが難しい場合、具体的に友達の誘い方を教えてあげたり、親が遊びの場を作ってあげることも大切です。例えば療育機関などで、社会的スキル訓練や、集団療育を行うことも有効です。広汎性発達障害のある子どもの多くは感覚の過敏性や鈍さを抱えています。電車の音や騒音などにとても強く反応してしまうことがあります。赤ちゃんの泣き声などにも強い拒否反応を示し、自分が癇癪を起したりパニックになったりする子もいます。また、体に触れられることを嫌ったり、温度に敏感でお風呂に入りたがらなかったりなど、少しの刺激でも本人のストレスに繋がってしまい、パニック状態を起こしてしまうこともあります。【対処法】無理に触ろうとはせず、機嫌がいい時や心の準備ができているような時に声かけをしてあげましょう。「今からお風呂にはいろうね、お風呂で○○して遊ぼうか」「今から背中を触るね」など、いきなり体を触らずに声かけしてあげると心積もりができるようになります。にぎやかな場所へいく場合はイヤーマフを使用してみたり、なぜその音が鳴るのか、どうして賑やかなのかを落ち着いているときに説明してあげるとよいでしょう。それでも嫌がる場合は無理をせず、苦手なものを避けてあげるのも一つの手です。広汎性発達障害のある子どもは、こだわりが強く、変化が苦手な場合が多いです。規則や法則など、一定の安定したルーティーンを好むため、少しでも自分のマイルールが侵されることを嫌がることがあります。よって、イレギュラーな対応や予定の変更についていくことができず、癇癪やパニックを起こしてしまうこともあります。【対処法】「○時になったら○○するよ。約束ね」と一緒に時計をみて確認し、一つひとつ理解を促すようにスケジュール管理を行うようにしましょう。言葉で言っても理解しづらそうなときはイラストや写真などを使うのも有効です。見通しが立つと安心することが多いので、予定をあらかじめ把握し、お子さんに伝えてあげるようにしましょう。広汎性発達障害のある子どもは、集団内で暗黙に共有されている「常識」や"空気"を理解するのが難しい傾向にあります。人との距離感や場に合った振る舞いなど、抽象的で境界線がはっきりしないことについて理解が難しく、友達が表情で悲しさや怒りを伝えてきても、感情を読み取れないこともあります。【対処法】指示は分かりやすく伝えるようにしましょう。例えば静かにしなければいけない場面の場合、具体的にルールを短い言葉や文字で示してあげることが大切です。また、「会場内は静かにしましょう」というアナウンスだけでは、何をすべきかがわからないので、「お絵描きしながら静かに待ちましょう」など具体的にどうすればいいかを指示の中にいれると良いです。広汎性発達障害の子どもへの日常の接し方のコツ9選これまで、広汎性発達障害の子の困難とそれらの対処法をご紹介してきました。以下では、広汎性発達障害の子の日常生活の子育てにおいて、どのようなことに気をつければ良いかを紹介します。出典 : 広汎性発達障害のある子どもは聴覚刺激よりも視覚刺激を利用すると効果的な場合もあります。紙に文字を書いて説明するのもよいですが、言語能力の発達に遅れが見られる場合は絵や写真、図表にして説明すると理解しやすくなります。例えば、時間管理をする際はタブレット上に大きいタイマーを表示して、視覚的に「あと何分あるか」を提示しながら取り組んだりするといいと思います。耳よりも目から入った情報の方が記憶にも残りやすいと言われているので、遊びやスポーツのルールを伝える際も紙に書いて説明するとよいでしょう。曖昧な表現を理解することが難しいため、できるだけ具体的な表現や手順を使うことが大切です。例えば、「ちょっと」ではなく「何分、何個」という具体的な数を使って話したり、片付けの際も「ちゃんと片付けて」「キレイにして」ではなく「おもちゃ箱におもちゃを入れる」といった具体的にやるべきことを伝えます。ついつい曖昧な表現を使いがちですが、どうすれば伝わりやすくなるかを常に頭に入れて指示するようにしましょう。その際、上記で挙げた絵や写真を使うのも効果的です。広汎性発達障害の子どもを持つ保護者は、できないことや、やめさせたい行動が多く目につき子育てが不安になってしまうこともあるかもしれません。ですが否定的な言葉を使ったり、大声で叱ることは控え、できるだけ褒めることを心がけることも子育てのコツの1つです。褒めることで「褒められた→嬉しい→またやろう」とやる気を促すことにも繋がります。また、子どもによっては大げさに褒められることを嫌う子もいますので、その子にあった褒め方をしていきましょう。広汎性発達障害のある子どもは、他人と比べて自分ができていないと感じて自信を失ったり、自暴自棄になってしまうケースもあります。子どもの得意分野を見つけて、できることをさらに増やし、成功体験を積むことが大切です。例えば食べ物が好きな子であれば調理やお菓子作りを教えたり、家事を手伝ってもらったりすることも今後の生活に役立ちます。広汎性発達障害のある子どもは、人の気持ちを理解するのが苦手な傾向があります。そのため、嬉しいことは嬉しい、嫌なことは嫌と、気持ちをはっきり言葉にして伝えることも大切です。友達とケンカした際も相手がどう思っていたかを伝え、どう対処すれば良かったかなどを、絵や文字にして具体的に教えることが大切です。頭ごなしに否定してしまうと、やる気をなくしたり、物事自体を拒否するようになってしまいます。まずは子どもの気持ちに寄り添い、なぜそういうことをしてしまったのか子どもの考えを聞いたり、どうすればよかったのかを一緒に考えることが大切です。子どもが興奮したり、泣きわめいてしまった場合、落ち着いてから話をするようにします。広汎性発達障害のある子どもは、急な予定の変更や初めての場所が苦手です。場合によってはパニックとなってしまう可能性もあります。こういった状況を避けるため、できるだけ予定を早めに伝えておき、初めての場所でも子どもが安心できるように、事前に写真やビデオを見せるなど、工夫をしてみましょう。広汎性発達障害のある子どもは、推測することが苦手な場合が多いです。そのため遊びの中でルールを自然に理解することが難しいこともあります。あらかじめ、絵や図にしてルールを予習をしておくと、子どもが理解しやすくなります。また、自由時間といった何をすればよいか曖昧な時間も不安になってしまうことが多いので、何をするとよいか、選択肢を提示したり、選ばせてあげるとよいでしょう。自分ひとりだと子育てのコツが掴みづらい場合は、ペアレントトレーニングのような子育てトレーニングや療育相談を受けることも有効です。専門的なトレーニングを受けた講師から、子どもにあった子育て方法を学ぶことができます。これらのプログラムでは、子どもが危険な行動をとったときに上手に止める方法や褒め方のコツなどを知ることができます。広汎性発達障害の子どもに接する際に注意するべきこと普通の子には当たり前にとる対応や反応でも、広汎性発達障害の子だとパニックを起こしてしまうこともあります。以下のポイントを頭に入れておいて、広汎性発達障害の子とよりよいコミュニケーションがとれるようにしましょう。出典 : ついつい大声で叱りたくなる気持ちも分かりますが、大声は広汎性発達障害のある子どもにとってトラウマとなる可能性があります。怒られるという恐怖心で何もできなくなってしまうこともあります。一度深呼吸をして落ち着く、感情的になったら一度その場を離れるなどして、冷静になってから具体的に悪いことを伝えて、どうすればいいかを指示するようにしましょう。手をひらひらさせたり、ぴょんぴょん飛び跳ね続けたりするなど、広汎性発達障害のある子どもの中には同じ行動を長時間続ける常同行動が見られる場合があります。これらは視覚支援によって見通しを持てる環境を作ったり、コミュニケーションスキルを学んだり、適切な遊びにかえることなどで改善することが多いです。無理に止めさせようとするとパニックに陥ることもあるため、何回やったら終わりと決めたり、何か違うことに集中するための課題などを与えてあげたりするとよいでしょう。何度伝えても伝えたことができない場合、「どうしてできないんだろうか」と悩んでしまう人もいますが、「今日はできなかったな」ぐらいの気持ちで受け止めてみることも大切です。また、自分では上手く伝えていると思っていても、子どもにとっては理解しづらい可能性があります。絵や図などを使い、伝え方を変えてみるなど工夫してみましょう。他の子にとっては当たり前でも、広汎性発達障害のある子どもにとって困難なことは多々あります。親としてはつい他の子と比較したり、同じことができないことに悩んだりすることもあると思います。しかし大切なのは、子どものできることや、頑張っていることに目を向けることです。それらのことを褒めたり認めていくことは、子どもの成長に繋がっていきます。まとめ出典 : 広汎性発達障害のある子どもの子育ては、その子の特性を理解し、視覚的な情報の活用や事前の予告など、工夫を学んでいく必要があります。一人で悩まずに、療育機関や支援センターなど周りの環境を上手く利用しましょう。ペアレントトレーニングや療育相談など、様々なサービスがありますので、地域の情報を探してみましょう。参考文献: 田中康雄 (2014) 『発達障害の子どもの心と行動がわかる本』 西東社
2016年08月18日広汎性発達障害(PDD)の原因は?出典 : 広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorders:略称PDD)は、コミュニケーションと社会性に障害があり、限定的・反復的および常同的な行動があることを特徴として分類される発達障害のグループ です。世界保健機関(WHO)の診断基準である『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)の診断カテゴリでは、このグループには自閉症、アスペルガー症候群のほか、レット症候群、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害という5つの障害が含まれています。広汎性発達障害は、最新の診断基準であるアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版テキスト改訂版)では自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害というカテゴリに変更されています。また、広汎性発達障害の障害名、症状の中には自閉症スペクトラム障害の概念では除外されたものも含まれています。ですが、行政や医療機関で広汎性発達障害の名称を使用している場合も多いこと、すでにこの名称で診断を受けた人も多いことから、本記事では『ICD-10』の診断カテゴリに準拠して広汎性発達障害の名称でご説明します。広汎性発達障害のはっきりとした原因はまだ解明されていませんが、脳の機能障害がその原因と考えられており、親の子育て方法が原因で起こるものではありません。このうち、レット障害(レット症候群)についてはX染色体上に存在する遺伝子の突然変異が原因であることが分かっています。ほかの障害についても最近では遺伝的要因の関与が有力視されていますが、必ずしも単純に親から子どもへ遺伝するという意味ではありません。遺伝的要因と環境要因が複雑に相互に影響しあっていることが原因ではないかと言われています。しかしながら具体的な障害の原因やメカニズムは分かっておらず、様々な説が議論されている段階です。広汎性発達障害って治療できるの?出典 : 広汎性発達障害を根本的に治療する薬や手術といった医学的な方法はありません。しかし、広汎性発達障害による困難を緩和・解消するための教育・療育によるアプローチは存在します。本人が困難への対応法を学んだり、困難を未然に防ぐための環境調整をすることで、生きやすい環境を作っていくことが可能です。広汎性発達障害のある人はその特性ゆえに、生活する中で様々な困難にぶつかりがちです。他者の感情の読み取りが困難なため、会話の意図を誤解して受け取ったり、コミュニケーションがかみ合わなかったりする場合があります。抽象的な指示が理解できないために同じミスを繰り返したり、こだわりのため順番やルールを守れずトラブルになったりすることもあります。中には自分に自信をなくしたり、周りに強い被害者意識を持ってしまうこともあります。こういった日々の困難さが引き金となって、うつ病やひきこもりなどのいわゆる二次障害が発現することもあるのです。特に思春期以降の不安障害や気分障害の予防が大切です。広汎性発達障害の特性による困りごとを緩和するのに加え、こうした二次障害のリスクを極力なくすためにも、周りが障害の特性についてよく理解し、どのように対応すれば本人が行動しやすいか、生きやすいかなどを考えていくことが必要です。また、てんかん発作や感覚過敏など、一部の症状に対しては薬物療法によって症状を緩和できる場合もあります。うつ病や睡眠障害などの二次障害に対しても精神安定剤などの薬物治療が行なわれることもあります。これらの二次障害に対する治療の一つとしては、心理療法である認知行動療法の有効性が示されています。広汎性発達障害の治療の判断基準は?出典 : 広汎性発達障害は主に「社会性・対人関係の障害」「コミュニケーションや言葉の発達の遅れ」「行動と興味の偏り」の3つの症状が現れると言われています。専門機関においても上記の3つの症状が見られるかを本人や保護者への問診や本人の行動観察などから評価・判断します。親が気づく子どもの症状としては「視線を合わせない、または避ける」「言葉の発達が遅い」などの症状がよく挙げられます。また、広汎性発達障害のある人のほとんどに何らかの感覚過敏が見られます。例えば、小さな物音を怖がったり(聴覚過敏)、抱っこされることを嫌がったり(触覚過敏)、偏食が多い(味覚過敏)などの感覚過敏があります。広汎性発達障害の症状は上記のように複数存在しますが、特定の症状がでたら治療が必要という明確な線引きはできません。また症状ごとに対処法や治療プログラムは異なります。本人が特性による困りごとに直面している場合、専門家による何らかの治療や支援が必要になると言えるでしょう。障害ではないかと気づいた場合には、まずは近くの保健センターや子育て支援センター、児童発達支援センターなどの専門機関に相談するようにしましょう。広汎性発達障害の治療法と治療を行う年齢は?出典 : 広汎性発達障害の根本治療はできませんが、症状を緩和するためには療育的アプローチと薬物療法の2つが効果的です。■療育療育は何歳からでも始めることができ、なるべく早くから通うことが推奨されます。療育とは、以下のように定義されています。療育とは医療、訓練、教育、福祉などの現代の科学を総動員して障害を克服し、その児童が持つ発達能力をできるだけ有効に育て上げ、自立に向かって育成することである。■薬物療法広汎性発達障害そのものを根本的に直す薬はありませんが、特定の症状を緩和するために使用することがあります。薬によって開始できる年齢や症状が決まっており、人によって副作用がある場合もあるので、主治医とよく相談し、用法用量を守って服薬していくことが大切です。薬物療法は、症状を一時的に抑えるためのものであり、症状が軽減している間に、教育や支援を行うと効果的であるともいわれています。治療を終える判断基準については、根本治療ができないため、はっきりと決まっているわけではありません。ですが、本人が特性への対処法を習得したり、環境調整を行ったりすることで困りごとが緩和されれば、治療が必要のない状態になることも少なくありません。しかし、進学や引っ越し、転職などの大きな環境変化によってさまざまな困難が再発する可能性もあるため、十分なフォローが必要です。広汎性発達障害の具体的な療育法・治療法出典 : 療育の遊びを通じてコミュニケーションの取り方を学んだり、友達を作ったりすることができます。また、ストレスを抱えがちな親にとっても療育の場は相談できる場所であり、同じ悩みをもつ親同士の交流の場所にもなっています。療育の効果は個人差があり、子どもに合った療育が必要となりますが、子どもにとっても親にとっても療育は心の面の大きなサポートになると言えるでしょう。広汎性発達障害の療育方法は様々ですが、下記の4つがよく知られています。それぞれの位置づけは異なりますが、ここでは簡単に概要のみを説明します。■ABA(エービーエー、Applied Behavior Analysis/応用行動分析)人間の行動を個人と環境の相互作用の枠組みの中で分析し、問題解決に応用していく理論と実践の体系です。広汎性発達障害に対する療育だけでなく他の障害や教育、福祉、医療、スポーツ分野でも利用されています。■TEACCH(ティーチ、Treatment and Education for Autistic and related Communication handicapped Children)米国ノースカロライナ州で生まれた、自閉症スペクトラム障害の当事者とその家族を障害支援する総合的なプログラムです。※自閉症スペクトラム障害とはレット障害を除く広汎性発達障害を指します。■PECS(ペックス、Picture Exchange Communication System)絵カードを使ったコミュニケーション援助プログラムです。上記のABAの原理に基づいて作成されています。■SST(エスエスティー、ソーシャルスキルトレーニング)対人関係をうまく行うための社会生活技能を身につけたり、障害の特性を自分で理解し自己管理をするためのトレーニングの総称です。紹介した療育方法はごく一部ですが、療育機関ではこれらの療育理論や方法を複数組み合わせたり、独自のプログラムを利用して、子ども1人ひとりにあった療育方法が行なわれます。広汎性発達障害の根本的な治療としての薬物療法はありませんが、一部の症状に対しては対症療法として薬を使用することがあります。例えば、パニック症状を緩和するためには抗精神病薬、てんかん発作や感覚過敏には抗てんかん薬などが処方される場合もあります。その他様々な症状に対して薬物療法が行なわれますが、薬は一時的なもので、症状が完全になくなるというわけではありません。また薬には副作用が出ることもあります。薬の使用は必ず医者の指示を守りながら使うようにしましょう。適切な治療やサポートを受けられない場合、広汎性発達障害の主症状とは異なる合併症や状態を引き起こしてしまうことがあります。このような症状や状態を、一般的には「二次障害」と言うこともあります。注意すべき症状・状態には以下のようなものがあります。・気分障害(うつ病など)・不安障害・睡眠障害・不登校やひきこもり・アルコールなどの依存症などこのような症状や状態が現れた場合には専門の相談機関や医療機関で早期に相談・治療を開始しましょう。二次障害の治療には、それぞれの症状によって認知行動療法などの心理療法的アプローチや薬物療法などが用いられます。二次障害の予防のためには環境調整や周囲の理解、親や家族以外にも本人が信頼して相談できる人間関係を作ることなどが大切です。接し方で大きく変わる!広汎性発達障害の子どもへの接し方のポイント出典 : 広汎性発達障害のある子どもの中には、使っている言葉の意味を理解していなかったり、遊びのルールを理解するのに時間がかかってしまう子もいます。その際は絵や写真を使うと、理解しやすくなる場合があります。また、あいまいな表現は苦手なので、できるだけ具体的な言い方をするようにしましょう。何度叱っても同じことを繰り返してしまうために、親もイライラしてつい大声で叱ってしまうかもしれません。広汎性発達障害のある子どもは恐怖心でトラウマになりやすい傾向にありますので、大声で叱ってしまいそうになったら一度その場を離れるなど、冷静になるよう心がけてみてください。広汎性発達障害のある子どもが適切な行動を習得するまでには、根気強く教える必要があることを理解しましょう。叱るときには感情的にならず、具体的に注意する方が効果的です。上記でお伝えしたように写真や絵を使うなど、どうすれば上手く伝わるかを試行錯誤することも大切です。手をひらひらさせたり、ぴょんぴょん飛び跳ね続けたりするなど、広汎性発達障害のある子どもの中には同じ行動を長時間続ける常同行動が見られる場合があります。これらは視覚支援によって見通しを持てる環境を作ったり、コミュニケーションスキルを学んだり、適切な遊びにかえることなどで改善することが多いです。無理に止めさせようとするとパニックに陥ることもあるため、何回やったら終わりと決めたり、何か違うことに集中するための課題などを与えてあげたりするとよいでしょう。広汎性発達障害の子どもを持つ保護者は、できないことや、やめさせたい行動が多く目につき子育てが不安になってしまうこともあるかもしれません。ですがマイナス面ばかりに目がいかないように、得意分野を見つけて、できることを増やすことが大切です。また、ちょっとしたことでも褒めることが子どもの自信につながります。広汎性発達障害のある子どもの子育ては通常に比べて少しコツが必要になってきます。家族だけで解決しようとするとつまづくことも多いため、プロの手を借りて、子育ての仕方を学んでいくのもおすすめです。ペアレントトレーニングでは褒め方のコツや上手な指示の出し方、危険な行動を予防する方法などを学ぶことができます。まとめ出典 : 広汎性発達障害の根本的な治療方法はありませんが、療育によってコミュニケーションを取りやすくなったり、生活の困難に対処しやすくなります。そのためできるだけ早く療育をスタートしたほうが、本人の生きづらさも減ると思います。日常生活において不安に思ったりすることもあるとは思いますが、何かあった場合は身近な専門機関に相談してみてください。また、本人にとってよい環境を整えて生きづらさを少しでも減らせるように、周囲の人たちは障害の特性を理解した上でサポートするようにしましょう。
2016年08月17日そのカミングアウトは誰のため?出典 : 発達障害とわかったら、周囲の人に伝えるべきなのだろうか?子どもの特性をどういう言葉で伝えるか?…と、頭を悩ませる方も多いかと思います。しかし、「何のために、そして誰に、どう伝えるのか?」と整理して考えると、答えが出てくることがあるかもしれません。紆余曲折を経て、「息子のために伝えよう」と思えるようになった、私なりのカミングアウトをお話します。息子の障害を隠し続けた理由出典 : 息子が発達障害と診断されたのは7歳のとき。今から7年前のことです。当時は学校の先生へは診断名を伝えたものの、周囲の人にはひた隠しにしていました。学校の先生からは「同じクラスの子どもたちには、伝えたらどうか?」という提案がありました。ですが私はそれを断り、通級指導教室に参加するために、息子がクラスを抜ける際も、「毎週病院へ行っている」と、苦しい言い訳をしていました。周囲にバレないように、細心の注意を払い、息子の通級の送り迎えをしていたのです。当時の私には、息子の障害をどう伝えたら良いのか分かりませんでしたし、何よりも親としての余計なプライドを捨てられず、周囲の偏見を恐れていました。今思えば、息子の障害を受容したつもりでいましたが、気持ちの根底には障害を認めたくない自分がいたのかもしれません。もうこれ以上は誤魔化せない!出典 : そんな中、あるきっかけで息子の障害をカミングアウトすることになりました。通級のたび「病院へ行くので授業をお休みします」と説明されることに混乱した息子が、「ぼくは病院へ行っていない!」と学校でパニックになってしまったのです。息子に予定を偽るなんて、この頃の私は自閉症の子どもの苦手な事を、まるで分かっていなかったのだと思います。このまま偽り続ければ、息子がまたパニックを起こす可能性があります。こうして私は、クラスの同級生に「担任の先生から伝えてもらう」ことを決めたのでした。相手は同級生でしたし「自閉症」という障害名ではなく「苦手なことがあって、それをお勉強しに行っている」という通級の説明を中心に伝えることにしました。「子どもたちを通して、保護者の中で噂が広がるだろう!」私は内心、とてもハラハラしていました。しかし、そんなネガテイブな考えとは裏腹に、噂や誤解は広がりませんでした。少なくとも私の耳には入りませんでした。それどころか、困っている息子を積極的に手伝ってくれる同級生が何人も現れたのです。通級へ行く息子を見送ってくれる子、通級から戻ったときに先生を呼びに行ってくれる子、教室に入れず、1人で給食を食べている息子に、おかわりを持って来てくれる子…。こんな同級生の様子を見て、息子よりもむしろ私が救われたのです。伝えることが息子のためになる、とわかり…出典 : 息子と同級生との関わりを見て、「カミングアウトすることで生きやすくなる場合がある」と知り、私は息子の障害を隠さなくなりました。でも、はじめから障害名だけを伝えることや、懇談会などで大勢を前に伝えることは、ほとんどありません。大切なのは、息子のために、協力者となって欲しい人に、分かりやすく伝えるという視点。また、伝え方も工夫しています。「あれが苦手」「こういう配慮は混乱しやすい」など、ネガティブな言葉だけで終わらずに、療育で学んでいる話など前向きな情報も一緒に伝えるようにしています。ネガティブで深刻な話というのは、聞くだけでも気持ちが重くなり、相手が負担に思うかもしれません。私の経験から言うと、周囲の人は、親が子どもの障害と向き合っているという事実に安心するような気がします。怖かったカミングアウトだけれど、伝え方を考えることで深まったのは…出典 : 診断前は、息子の行動や私のしつけに関して、批判されることもありましたが、障害を受容し、療育に励むことで周囲からの批判は収まってきました。私は今、発達障害児の保護者のコミュニティを運営していますので、息子の障害については、かなりオープンにしています。不思議なことに息子の障害をオープンにしてから、あれ程心配していた嫌な思いをしたことは、ほとんどありません。そしてオープンにするにつれて、私自身の障害への理解、そして障害を受容することも、深まってきたと感じています。カミングアウトは、家族それぞれの形があって当然ですし、私の経験は一例にすぎません。場合によっては、言わないということが賢明なこともあるでしょう。ですが、言う言わないはひとまず考えずに、「伝え方」だけイメージしてみるのはいかがでしょうか。子どものために、「学校に」「友達に」「保護者に」、そして「身内に」、どうやって伝えるか?それは様々な場面にいて、子どもが過ごしやすい環境を考えることでもあります。子どもにも周囲にも、メリットをもたらす伝え方を考えることで、そのプロセスがより子どもを理解し、受容させてくれるかもしれません。
2016年08月17日障害者手帳がないとサービスを受けられない?出典 : 障害者手帳とは、身体障害者手帳、療育手帳と精神障害者保健福祉手帳を含む、障害のある人が取得する手帳のことです。障害者手帳を取得することで、障害の種類や程度に応じて様々な福祉サービスを受けることができます。ただ、障害のある人が全員持っているわけではなく、取得の基準に満たなかったり、取得に対する心理的ハードルなどが理由で、障害者手帳の取得申請をすることができない/しない人もいます。一方、障害者手帳がなくても、申請して必要性が認められれば受けられるサービスも存在します。しかし、そのサービス内容や利用条件を詳しく知らない方も少なくありません。障害のある18歳未満の子どもへの支援は児童福祉法によって定められています。また身体障害者・知的障害者・精神障害者(発達障害者を含む)・難病等がある方への支援は障害者総合支援法(平成25年4月1日に障害者自立支援法から改正)に基づき、行われています。今回はその法的根拠の解説と共に、障害者手帳がなくても受けられる、障害のある子ども・大人向けのサービス内容をそれぞれご紹介します。Upload By 発達障害のキホン児童福祉法に基づく障害児への支援出典 : 児童福祉法とは、障害のある児童に対する支援に関する法律です。この法律において、障害児は障害のある18歳未満の子どもと定義されています。この法律によると、サービス内容は障害児通所支援と障害児入所支援の2つにわけることができます。障害児通所支援は市町村、障害児入所支援は都道府県が実施主体となります。サービスの利用にあたり、手帳の有無は問われません。障害児通所支援は障害のある子どもが施設に通ってサービスを受ける事業の総称です。未就学児を対象とした児童発達支援、就学児が授業後や休みの日に通う放課後等デイサービスのほか、医療型児童発達支援や保育所等訪問支援などがあります。Upload By 発達障害のキホン■ 児童発達支援・医療型児童発達支援児童発達支援・医療型児童発達支援とは、障害児やその家族、事業主に向けて身近な地域で支援を行うサービスです。児童発達支援センターと児童発達支援事業の2類型に大別されます。・児童発達支援センター/医療型児童発達支援センター通所支援や身近な地域の障害児支援の拠点として、障害児やその家族、事業主に向けた支援を行います。医療の提供の有無により、児童発達支援センターと医療型児童発達支援センターに分かれます。・児童発達支援事業通所利用の未就学の障害児に対する支援を行う身近な療育の場です。■放課後等デイサービス学校教育法に規定する学校(幼稚園、大学を除く)に就学している障害のある子ども向けのサービスです。放課後や夏休み等の長期休暇に訓練などを行うとともに、居場所を作ります。■保育所等訪問支援保育所、幼稚園、小学校などに在籍している障害のある子どもを訪問し、訪問支援員が集団生活の適応のための専門的な支援を行います。児童相談所、市町村保健センター、医師などにより療育の必要性が認められた障害のある児童を施設に入所させ、サービスを行います。福祉型障害児入所施設と医療型障害児入所施設の2種類があります。障害のある児童を入所させて、保護、日常生活の指導及び自活に必要な知識や技能の付与を行う施設です。福祉サービスを行う「福祉型」と、福祉サービスに併せて治療を行う「医療型」があります。障害児に対する施設は、以前は障害種別ごとに分かれていましたが、複数の障害に対応できるよう平成24年度より一元化が行われました。ただし、これまで同様に障害の特性に応じたサービス提供も認められています。 By 発達障害のキホン障害児支援サービスの利用方法出典 : 障害児通所・入所支援を利用するには、通所受給者証または入所受給者証を取得する必要があります。通所受給者証はお住まいの市区町村の福祉担当窓口・障害児相談支援事業所などに申請を行い、サービス支給の決定後に事業者と契約することができます。入所受給者証は児童相談所との相談の上、各都道府県の児童相談所に申請し、交付の決定後に指定障害児入所施設などで当該指定入所支援を受けることができます。自治体ごとに申請方法が異なりますので、お住まいの地域に確認しましょう。詳しくは次の関連記事をご覧ください。障害者総合支援法に基づく障害者への支援出典 : 障害者総合支援法は、障害者に対して障害福祉サービスの充実を図り、総合的に支援する法律です。平成18年度に施行された障害者自立支援法を改正することで、障害者総合支援法は創設されました。サービス内容は大きく分けて、自立支援給付と地域生活支援事業の2つにわけることができます。対象者については、次のように定められています。法が対象とする障害者の範囲は、身体障害者、知的障害者、精神障害者(発達障害者を含む)に加え、制度の谷間となって支援の充実が求められていた難病等(治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病であって政令で定めるものによる障害の程度が厚生労働大臣が定める程度である者)としています。※平成27年7月時点で、332疾病が対象です自立支援給付とは障害のある方のニーズに応じて個別に行われるサービスです。訪問サービスや施設への通所・入所を利用するサービス、また自立促進のための就労支援などがあります。障害福祉サービス(介護給付・訓練等給付)、自立支援医療、相談支援事業、補装具の大きく4つに分けられます。Upload By 発達障害のキホン■障害福祉サービス□介護給付日常生活に支障がある人や介護を必要としている人に対して支援を行います。内訳としては以下のようなサービスがあります。・居住介護(ホームヘルプ): 入浴や食事などのお手伝いをします。・重度訪問介護: 重度の肢体不自由者である、または重度の知的障害もしくは精神障害があるために介護を必要とする方に、総合的な支援を行います。・同行援護: 視覚障害により移動するのが難しい方に対して支援を行います。・行動援護: 判断能力が制限されている方に対して、危ない目に合わないように支援を行います。・重度障害者等包括支援: 介護を大変必要としている方に対して、居宅介護など複数の介護サービスを行います。・短期入所(ショートステイ): 普段介護している方に変わって短期間、代わりに介護をします。・療養介護: 医療行為と介護を常に必要とする方に対して、医療機関で訓練や介護などを通して生活支援を行います。・生活介護: 介護を常に必要としている方に対して、介護を行うことに加え創作的活動又は生産活動の機会を与えます(夜間)。・障害者支援施設での夜間ケア等(施設入所支援): 施設に週初している方に対して、介護を行います(夜間・昼間)。□訓練等給付自立した生活もしくは就労することを目指し、訓練などの支援を行います。内訳としては以下のサービスがあります。・自立訓練: 自立した生活を送ることができるよう、身体機能と生活能力の向上を目指して訓練を行います。機能訓練と生活訓練の2種類があります。・就労移行支援: 一般企業などで働くことを希望する方に対して、就労に必要な知識・能力の向上を目指して訓練を行います。・就労継続支援: 一般企業などで働くことが難しい方に対して、働く場所を提供し知識・能力の向上の向上を目指して訓練を行います。雇用契約を結ぶA型と、雇用契約を結ばないB型の2種類があります。・共同生活援助(グループホーム): 共同生活を行う住居で、相談や日常生活上の援助を行います。また介護などの必要性が認められた場合には介護サービスを提供します。さらにグループホームを退居し、一般住宅等への移行を目指す人のためにサテライト型住居があります。■自立支援医療自立支援医療は心身の障害を取り除くためにかかる医療費の自己負担額を軽減する制度です。障害の種類や所得に応じて、ひと月当たりの負担額に上限が設定されています。・育成医療: 障害の改善が確実に期待される治療に対して、治療費の一部を公費が負担する制度です。心身障害を改善するもしくは治療を行わないと大人になっても障害が残ってしまうような障害児が対象となっています。・更生医療: 更生医療とは障害の改善が確実に期待される治療に対して、必要な医療費が給付される制度です。・精神通院医療: 精神通院医療は精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第5条に規定する統合失調症、精神作用物質による急性中毒、その他の精神疾患(てんかんを含む。)を有する方で、通院による精神医療を継続的に要する病状にある方に対し、その通院医療に係る自立支援医療費の支給を行う制度です。■相談支援事業相談支援事業とは一連のサービスの利用にあたり、様々な相談や質問に対応するものです。各区町村は基幹相談支援センターを設置し、幅広い相談に総合的に対応しています。相談に対する中核を担う役割として多くの自治体で設置されています。・基本相談支援: 障害者やそのご家族からの相談に対して情報の提供や支援サービスの利用支援などを行います。・地域相談支援: 障害者施設を利用する18歳以上の方に対して地域以降支援計画の作成や相談、関係機関の調整などを行う地域以降支援と、単身で暮らしている障害者に対して連絡体制の強化を図る地域定着支援の2つがあります。・計画相談支援: サービス等利用計画案等を作成するサービス利用支援と、支給されたサービスなどに対してモニタリングし業者と調整をする継続サービス利用支援の2つがあります。■補装具補装具とは補装具の購入にかかる費用を支給する制度です。利用者の負担額は所得などに配慮して決定されます。障害のある人が自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう身近な市町村を中心として以下のような相談支援事業を実施しています。地域の状況に応じて柔軟な事業形態をとれることとなっておりますので、詳細については、最寄りの市町村窓口にお問い合わせください。地域生活支援事業とは、障害のある方が自立した生活を送るために、地域の特色や利用者の状況に応じて支援を受けられるサービスです。移動支援や日常生活用具の給付又は貸与、相談支援、意思疎通支援、成年後見制度支援などがあります。Upload By 発達障害のキホン特色のある任意事業として、日中一時支援事業というものがあります。日中一時支援事業とは日中に事業所や施設などを活動の場を提供し、見守りや訓練といった支援を行うものです。日中一時支援事業には2種類あり、タイムケアとレスパイトがあります。・タイムケア(就労支援): 障害児の家族が仕事などで、面倒をみることができないときに預けることができます・レスパイト: 障害児を日常的にサポートしている家族に、一時的な休息をつくることができます東京都豊島区での取り組みを一例としてご紹介します。日中一時支援事業通常介護しているかたが、疾病・出産・休養等の理由で一時的に介護できないときに、障害福祉サービス事業所等で障害者(児)のかたに日中活動の場を提供し、入浴・排せつ及び食事の介護等その他の必要な支援を行います。対象者身体障害者(児)、知的障害者(児)のかた利用者負担障害者のかたは費用の1割を負担していただきます。障害児(18歳未満)は、24時間までは無料、24時間を超え40時間まではサービスに要した費用の1割を負担していただきます。このほかにも自治体により様々な支援があるので、ご興味のある方はお住まいの市町村に確認しましょう。障害者支援サービスの利用方法出典 : ■障害福祉サービス(介護給付・訓練等給付)障害福祉サービス(介護給付・訓練等給付)を利用するには、市区町村の窓口で申請を行い、支給決定を受ける必要があります。詳しい利用方法は次のサイトをご覧ください。利用までの流れ(WAM NET)■自立支援医療・相談支援事業サービス対象者、利用料など事業内容の詳細などは自治体により大きく異なります。最寄りの市町村又は都道府県窓口に問い合わせましょう。■補装具障害ある本人または児童の保護者がお住まいの市町村に申請にします。そして身体障害者更生相談所や指定自立支援医療機関の判定・意見を参考に、市町村長が補装具費の支給の有無を決定します。お住まいの市町村に問い合わせましょう。まとめ出典 : 手帳の有無という制度の谷間に落ち、支援を必要としながら適切な支援を受けられない人が出てしまっていたことという反省点から、障害者総合支援法などの公的支援が整備されました。また利用者の自己負担については収入に応じた応能負担へと変えることで、サービスを受けやすくなりました。障害者手帳を取得できないからといって、国からの支援を諦めてしまうことはありません。これを機に、障害児・障害者支援サービスの利用を検討してはいかがでしょうか。障害児支援の強化について(厚生労働省)サービスの体系(厚生労働省)障害のある人に対する相談支援について(厚生労働省)障害者手帳・受給者証(発達障害のある小中高生向け 放課後等デイサービス)障害福祉サービスの 利用について(全国社会福祉協議会)障害児入所施設(WAMNET)
2016年08月15日発達障害の「こだわり」から起きた強迫性障害出典 : 強迫性障害という言葉を聞いたことはありますか?忘れ物はないか、手が汚れていないか、ガスの火を止めたか、など確認行為を何度も繰り返してしまうことが主な症状です。周囲から見てもその様子が辛いほど、確認行為を繰り返してしまうというところが特徴です。これは、発達障害の「こだわり」とよく似ているため、周囲から見ると「こだわりなのかな?」と見える事も多いと思います。私は、23歳のときに強迫性障害になり、後になってからアスペルガー症候群と診断されました。ガスの確認からどんどん症状は広がり、確認することや心の中で頭に浮かんだことを取り消したりするので心はいっぱい。自分でも「本当はばかばかしいことをしている」という自覚があり、泣きたくなるような気持ちで、恥ずかしいし、みじめで疲れ果てて、情けなくてたまらない気持ちでいっぱいでした。病院に行くと私の主治医は、「今の君の心のエネルギーはゼロではなくマイナスです。病気になるのにかかった時間の倍かけて治していきましょう。」といいました。「小さなことが気になるあなたへ」子どもの不安障害:親が知っておきたいこと私が、強迫性障害になった原因はどこにあるのだろう出典 : 私の場合、強迫性障害は発達障害の二次障害として現われました。しかしカウンセリングによると、原因は様々で、親子関係での葛藤や自分自身に対するとらえ方の歪みも、強迫性障害に影響を与えていたということでした。このつらい症状は、「心に押し込めている何か」の代わりに症状として出ているのだなと今では納得しています。この障害の本当のつらさは、発達障害の凸凹が理由ではなく、別のところにあるんだと。子どもが強迫性障害になるときも、その原因は心の中にあるのかもしれません。発達障害のある子どもは、驚くほど早い段階でたくさん傷ついています。学校でうまくいかない、自分ではできるつもりなのに出来ていないと言われる、そういった傷つきの積み重ねで二次障害として症状が出るのだと思います。家族の対応の仕方で、私がおすすめしたいこと子どもの強迫性障害は発達障害とのかかわりも強いとされていますし、相談は児童精神科に行くことをおすすめします。児童精神科がどこにあるかわからない場合は、各自治体の発達障害者支援センターに相談するといいですね。発達障害についての相談もできますし、適切な病院も紹介してくれます。強迫性障害の治療は、大人と子どもとで大きな違いがあります。1.SSRIよりも心理支援・社会支援・環境調整が優先される2.いじめやからかいなど、学校生活の順応への支援(スクールカウンセラーや教師との協力も含む)3.親の協力が必須-子供の認知能力のみに頼った治療は難しい強迫性障害で特徴的な症状として、「巻き込み」というものがあります。これは、不安を家族などにぶつけて不安解消を手伝ってもらったり(確認を手伝ってもらったり大丈夫と言ってもらうなど)、自分の不安解消行為(手洗いなど)を家族に強要するといった行為です。巻き込みには応じないのがポイントです。子どもは全力で巻きこんでくるケースが多いですが、巻き込まれてしまうと家族のストレスはそれはもうひどく、本人も自己嫌悪と罪悪感でいっぱいになってしまいます。ただし断り方には細心の注意が必要なので、そこは医師としっかり連携をとっていきましょう。叱ったり怒ったりして無理に止めさせるのは逆効果です。どんなにはたから見てバカらしくても、病気ですので本人はとても苦しんでいます。「いいかげんにしたら?」「バカじゃないの?」など批判的な言葉やからかいは、本人がますます不安になるだけではなく、大きな傷となります。医師から接し方のアドバイスを聞き、本人は病気で苦しんでいることを理解した上で、そっと支えてあげてあげたいですね。症状が軽くなる日を目指して出典 : 強迫性障害はきれいさっぱり治る病気ではありません。私は今でもストレスがかかると確認行為が出ます。ですが、治療を続けた結果、今では症状が出ても「ああ、またストレスがかかってひどくなっているんだなぁ」と以前よりは余裕を持って捉えられるようになりました。一歩進んで二歩下がることだってあります。でも、あきらめずに環境調整したり、治療を受けていたら必ずトンネルから出る日は来ます。焦らず、医師や周りの人にも助けを求めながら見守ってあげてください。
2016年08月12日学習障害(LD)で働いている人はどのくらいいるの?出典 : 学習障害とは、全般的な知的発達に遅れがないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」能力のうちいずれかまたは複数のものの習得・使用に著しい困難を示す発達障害のことです。英語ではLearning Disabilityと呼ばれ、LDと略されることも多いです。学習障害は、知的発達に遅れが見られないことから、障害者自立支援法の対象外とされてきました。現在では障害者基本法の改正により精神障害者保健福祉手帳の対象となりましたが、まだまだ学習障害を「障害」として認識している人が少ないのも現状です。学習障害の人の就職率として、はっきりとした数字は出ていません。厚生労働省のアンケート結果では学習障害を含む知的障害の見られない発達障害の人は普通学級に進学した人の割合が最も多いことが分かっています。また発達障害がある人の就職状況をみると、一般枠で就労した人の割合は全体の40%近く、障害者枠で就労した人の割合は25%以上いることが分かりました。これらのことから、学習障害の人の中には社会に出て働いている人もたくさんいることが予想されます。厚生労働省「発達障害のある人の就労の現状と課題 障害者権利条約への対応に向けて」大人の学習障害、いつ診断された?きっかけは?出典 : 学習障害は今でこそ知っている人が増えてきている障害ですが、昔はそれほどそうでもありませんでした。知的発達に遅れが見られないため気付きにくく、学習障害が障害として認識されないまま大学へ進学したり、就職したりすることも少なくありません。学習障害の症状は「勉強が苦手」や「やる気がない」などとひとくくりにされ、大人になって初めて発達障害だったと気づいた人も少なくないのです。現在では障害者基本法の改正により精神障害者保健福祉手帳の対象となりましたが、まだまだ学習障害を「障害」として認識している人が少ないのも現状です。以下では、大人になって学習障害と診断された方の小さい頃の症状や、きっかけなどの体験談をご紹介します。私は、注意欠陥障害と学習障害(算数障害で四則計算がまったくできない)です。小学1年生でついていけず、中学でも数学や化学は0点でした。でも、自分なりに数学0点でも他の教科で頑張って高校にも行きましたし、大学も行って、就職もしました。この人のように、学習障害であっても大学へ行き就職する人も多くいます。学習障害の場合、苦手な勉強分野に偏りがあるので、この人は苦手な数学以外に力をいれるという工夫をし、大学へ進学したそうです。小さい頃から勉強が苦手でした。計算ができなかったり、文書を作るのが苦手だったり、記憶力が無く一つのことを覚えるのに時間が掛かりました。よく天然だね!と言われて過ごしてきましたが、天然ではなくただ、発達障害の為、人の話や空気が読めなかったり、質問に対して違う返事を返してしまったりします。なので、上手く伝えられない自覚はあります。その為、自然と臆病になり、なるべく自分から発言したり行動を取らなくなりました。また、あまり考えれないので、とっぴおしないことをしだしたり、自分の思う様に出来ない苛立ちから、癇癪を起こすようになりました。小学生の時に一度学習障害ではないかと言われていたようですが、最近専門の病院で診察してもらったところやはり学習障害という結果でした。このように、大人になってから学習障害が発覚する人もいます。子どもの頃を振り返ってみると、学習障害の症状があった人が多いようですね。学習障害の人が向いている仕事、向いていない仕事は?出典 : 学習障害は、能力の凸凹や特性の偏りが多く、苦手なことにかなり個人差がある障害です。そのため、向いている仕事、向いていない仕事も人によって様々であると言えます。本人の特性を理解し、得意な分野を活かせる仕事につけることが理想ですね。向いていない仕事は一概には言えませんが、苦手な業務が多い仕事内容だと、困難な場面も増え、ストレスを感じることも多くなるかもしれません。一方、別の手段で代替できたり、職場の理解や協力があれば乗り越えられる可能性も大いにあります。たとえば、算数障害(ディスカリキュリア)の人の場合、日々、多くの計算が業務に必要な仕事は苦手かもしれません。ですが、計算機で解決できる場合もあります。同じ小売業でも、暗算が苦手な場合、お釣りを計算しなければいけないお店の会計業務は向いていないと言えますが、バーコードを読み取るだけのレジであれば、問題ないこともあるでしょう。また、書字障害の人は、文字を書く業務が苦手かもしれませんが、パソコンでタイプしてプリントすればよいこともあります。読字障害の人も、音声読み上げソフトを使用したり、録音することで困難が解消できることもあります。苦手な分野を避けることは働き続ける上で大切ですが、テクノロジーや手段を替え工夫することでうまくいくこともあるので、「この仕事は無理」と決めつけてしまう前に検討するのがよいでしょう。実際に、様々な障害特性を乗り越えて作家、映画監督、発明家、俳優など様々な職業で活躍している人もいます。障害特性と向き合いつつも、自分が希望する仕事に目を向ける、という進路も選択肢の一つかもしれません。学習障害の人の仕事の探し方Upload By 発達障害のキホン■学校の進路相談を利用する発達障害に関する就労支援は、現在、よりよい対応を整えている状態です。特別支援学校などでは、卒業後に就職できる企業の紹介もあります。通常学級でも高校、大学ともに進路指導の先生に相談することも可能です。■ハローワークなどの公的支援を利用するまず、最寄のハローワークでの相談をおすすめします。障害者雇用の窓口もあるので、そこでご自身の学習障害の特性について伝え、仕事を探していること、仕事で不安に感じていることなどの相談をすることができます。障害者を対象とする障害者合同就職面接会などの情報を得ることもできます。障害者向けの支援を希望しない場合でも、ハローワークできめ細やかな相談・支援を実施してくれます。適職があれば求人に応募してもよいでしょう。「若年者コミュニケーション能力要支援者就職プログラム」として、発達障害などでコミュニケーションに困難を抱えている場合の支援も行っており、不安がある場合には、発達障害者支援センターや医師との連携をとってもらうことができます。適職を自分では探すことが難しい場合には、適職を探す方法や調べてもらえるところも紹介してもらえます。就職に不安をかかえている場合には、就労移行支援という方法で就職をすることもできます。これは障害者総合支援法に基づいた支援で、就労移行支援事業所が各都道府県や政令都市の認可を受けて民間が運営しています。この就労移行支援は手帳を取得していなくても支援を受けることができます。まずは最寄のハローワークや就労移行支援事業所に連絡をとってみましょう。ハローワークは発達障害のある人が就職された場合、その事業主に対して助成を行う「発達障害者雇用開発助成金」という制度を設けています。他にも「障害者トライアル雇用奨励金」という短期間の施行雇用を行い、仕事に慣れることで実際の雇用につなげる制度もあります。詳しい情報は以下のリンクを確認してください。実際に働いてみると仕事が想像していた仕事内容と大きく異なった、と離職を希望される場合も少なくありません。仕事を探す際には、似たような職種で職務経験を積んでいく方法や、希望の会社でまず一定期間働くことが可能なのか、聞いてみる方法もいいでしょう。より自分の得意・不得意を理解し、どの仕事ならこなせるか、やりがいを持てるかどうかを把握するヒントになるかもしれません。就職後も相談に乗ってほしい場合はジョブコーチによる支援を受けることもできます。これは、就職後、職場にジョブコーチが出向き、職場でうまく仕事をしていくための支援をしてくれる制度です。■障害者雇用制度を利用する手帳を取得している場合はいわゆる「障害者雇用制度」の対象となります。・手帳所持者を事業者が雇用した際の、障害者雇用率へのカウントの対象となり、障害者雇用枠での就職ができる・障害者職場適応訓練を受けられるなど、就職への支援が受けられます。実際に障害者雇用制度を利用して就労する人の数は年々増加しています。ですが、希望している職種や企業が障害者雇用枠で募集しているとは限らないこと、賃金などの面で希望と合わないこともあるでしょう。一般の求人に応募したい場合などには、手帳を持っているからと言って必ずしもこの制度を利用しなくてもよいですし、手帳取得者であることを報告する義務はありません。制度を利用するかどうか、よく考え、支援機関などと連携し、相談しながら進めていくとよいでしょう。厚生労働省「障害者トライアル雇用奨励金」厚生労働省「発達障害者・難治性疾患患者雇用開発助成金」学習障害の会社への報告出典 : 大人になって学習障害に気づいた方は会社に報告するか迷うかもしれません。いままで何の問題もなく仕事をこなしていた人、困難があり失敗続きだった人、大人の学習障害は様々ですが、いずれにせよ「障害」という言葉は相手にマイナスのイメージを与える可能性もあるため、報告するかどうか、また誰に報告するかは慎重に検討するべきと言えます。学習障害と診断され、報告をする方の場合、理解のある会社であることが多いようです。何かを隠しながら会社で働くのは、自分へのストレスと、会社への負担を生みかねません。報告することで、「学習障害があったから苦手だったのか」「サボってるわけではなかったのか」と、周囲に理解してもらい、自分の得意・不得意に合った仕事に配慮してもらいやすくなる、というメリットも感じられます。会社に学習障害を報告した人の割合は分かっていませんが、発達障害の人で一般枠での就労後1年で離職する人の割合は37.5%と非常に高いという話もあります。離職の理由としては「仕事のミス」「上司の要求に応えられない」「毎日変わる仕事についていけない」などの仕事上での困難が挙げられました。会社に報告し、自分に合う仕事を担当させてもらうことで、それらの困難が軽減されることもあります。一方で、学習障害の間違った理解により「あいつは仕事ができない」「教えてもできないから教えても意味ないか」など、望まない結果になってしまうことも考えられます。伝える場合は、まずは障害を理解してもらえるよう、しっかりと説明するようにしましょう。厚生労働省「発達障害のある人の就労の現状と課題 障害者権利条約への対応に向けて」学習障害を伝えるとき、「学習障害と診断されました」と伝えるだけでは「障害がある」ということしか伝わりません。学習障害の中でも、どの部分に特性の偏りが見られるのかをきちんと説明し、自分の得意・不得意を理解してもらうことが大切です。1.自分が難しいこと・苦手なこと2.どうすればうまくいきやすいか3.会社・同僚にどうして欲しいのかなどをできる限り具体的に伝えるとよいでしょう。例えば、・書類に記入するのは苦手だが、パソコンは得意なので、パソコン入力を許可してほしい・書類を読むのは苦手だが、読みあげればわかるので、口頭で指示してほしいなど、自分の特性と工夫すればできることを伝え、お願いすれば職場でも対応しやすいでしょう。言葉で伝えるだけでは、理解が難しい部分もあります。その際は、文面に起こす、参考資料をもって伝える、などの工夫もいいかもしれません。同僚には要点をしっかりまとめ、配慮してもらいやすいよう、報告してみましょう。人事のみに伝える場合と、働いている同僚にも伝える場合と、両者のメリットやデメリットも考えてあなたにとって一番いい方法を選んでいきましょう。学習障害を報告した場合でも、職場や周囲に偏見が無理解があれば、職場で差別・虐待を受けてしまう可能性もゼロではありません。こうした深刻なケースでは、本人から周りに助けを求めるのが難しい場合もあるので、周囲の人が虐待に気づいた場合、各市町村の障害者虐待防止センターなどの専門機関に虐待の存在を知らせましょう。本人からの申告も可能性です。またこの虐待は就業場に限らず家庭内の虐待も含みます。障害者虐待防止センターに虐待を相談すると、支援・指導を受けることができ、問題の糸口を探す手伝いをしてくれます。強制的に仕事や家族から隔離されたりすることはありませんので、安心して相談することができます。学習障害の仕事での困りごと・よくあるミスと対処法Upload By 発達障害のキホン学習障害の人は職場で様々な困りごとに直面し、時にはミスを繰り返すこともあります。よくある職場での困りごとと、それを解消するための対処法をまとめてみました。中には、話を覚えるのが苦手で一度にいろんな物事を同時に理解するのが難しい方もいます。メモを取るのが苦手な場合もあります。事前に上司に障害のことを説明し、口頭だけでなく文字に起こした状態で伝えてもらうよう依頼するのもいいかもしれません。また、会議などではボイスレコーダーなどを使用して、あとで聞き返すのも効果的です。自分で話したい物事があっても簡潔にまとめたりその場で話すのが苦手な人は、あらかじめ文章にまとめ原稿を作成しておきましょう。会議中に作成した原稿を確認しながら提案すればスムーズにこなせるはずです。学習障害の中には、文章を読むのが苦手な人もいます。そういった場合には、理解が難しかった言葉や概念をカードやノートなどにまとめておきましょう。一度理解できなかったことは必ず意味を調べ、次に出てきたときにすぐに分かるように常備しておきましょう。読字障害のひとつに読んでいる部分が分からなくなる症状があります。会議の資料やメールなど社会では長い文章が多いですよね。読むのが困難に感じる場合は一行だけ見えるように切り取った枠をつかって対処しましょう。一行ずつ読んでいけば理解がしやすくなります。またタブレットやパソコンなどの音声読み上げ機能を使用するのもおすすめです。まとめ出典 : 学習障害の人が就業する場合、多少の困難はもちろんつきものです。職場の方から偏見を受けたり誤解されてしまうこともあります。学習障害は障害の中でも知的発達に遅れがない分、他人には障害であることが理解されにくい場合があります。自分でも自覚が少なく、仕事ができないと他人と比べて落ち込むこともあるかもしれません。しかし、自分の障害特性を理解することで適切な支援も受けられますし、必要な配慮を周囲の人に伝えやすくなります。自分の特性を理解し、自分にあった対処法を工夫し、やりがいの感じられる働き方ができるとよいでしょう。法令データ提供システム「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」2012年
2016年08月09日親が子どもの発達障害を受け入れられるようになるまで出典 : お子さんに発達障害があることが分かったとき、まず最初に「なんとかしたい」「どんなことをしてもいいから、普通の子にしたい」と考える親御さんも少なくないと思います。でもそんな親でも、専門家の先生から「子供に無理にストレスを与えてはいけません。逆効果です。」「子供のあらゆる行動は、子供の『こうしたい』という自己主張なので、子供の全てを受け入れて抱きしめて下さい」と言われると、当初の「普通の子にしたい」という思いから、「発達障害を何とかしようというのは間違っていた。子どものすべてを受け入れなければならないんだ」という気持ちにだんだんと変化していくようです。本当にお子さんの「障害を受け入れて」いますか?出典 : この気持ちの変化は、お子さんのありのままを受け入れて、お子さんに本当に必要な教育やトレーニング、支援方法は何なのかを考え得るために大切なことです。しかし、お子さんの「障害を受け入れる」ということの意味ををはき違えてしまっている保護者の方も多いように思われます。例えば、障害がない兄のことは厳しく育てていたのに、弟に発達障害があると分かった途端に何もしなくなり、なんでもその子の自由にさせているご両親がいました。その子が人の物を壊しても、「この子はこうしたかったんです。分かってください」といって、子どもに「謝る」というコミュニケーションをまったく教えようとしません。他にも、「この子は今まで大人しかったが、最近は癇癪がでてきた。これも立派に自己主張するようになったということ。成長を感じるよ。」と言っている保護者の方がいました。もちろんそういった場面でお子さんの成長を感じる場面はあると思います。でも、その方はあまり嬉しそうな顔をしていませんでした。これは本当にお子さんの「障害を受け入れている」と言えるのでしょうか。子どもの発達障害に向き合うということ出典 : 私は、「発達障害を何とかしよう」と考えることは、「障害を受け入れていない」ということにはならないと思います。むしろ、子どもに障害があることが分かった後「この子は障害があるから」と言って、その子が社会に適応するための支援や教育を何もしないことこそ、「障害を受け入れていない」ことになるのではないでしょうか。そういった親の教育の仕方は、問題を後回しにしているだけのように私は思います。私の娘は学校での勉強を習得するのに、他の子どもたちの何倍も時間がかかります。もしかすると、娘は他の子どもたちと同じように勉強ができるようになることは難しいかもしれません。でも私は、発達障害を理由に娘の成長を諦めたわけでは決してありません。私は娘に、勉強はほどほどにして家事を教えることにしています。娘には、洗濯物を干してもらったり、味噌汁を作らせたり、ご飯を炊いてもらったりしています。障害のある私の娘には、こういった社会に適応するための教育こそが必要なのです。確かに今はできなくても、成長とともに出来るようになることもあります。しかし、親が子どもの障害をきちんと受け入れられれば、子どもが将来自立して生きていくためには何を教えればよいのかが見えてくるのではないでしょうか。子どもが将来、社会の一員として生きていくために出典 : 障害のある子どもでも、将来は社会の一員として自立して暮らしていく必要があります。そしてそのように生きる権利もあります。そのため、障害があろうとなかろうと、社会で生きていくうえで最低限必要なスキルやマナーは身につけている必要があると思います。もしかすると、障害のある子どもとない子どもの育て方は違うと考えている人が多いのかもしれません。しかし、「その子の得意な部分を見つけて伸ばしてあげるようにすること」が親の役目だとするならば、基本的には変わらないと私は考えています。子どもにいろいろなことを経験させることで、その子のの得意不得意が分かると思います。その経験をさせるきっかけを与えたり、その後に子どもにとって適切な支援は何なのかを考えることが、本当に親がやらなければならないことではないでしょうか。どんな子どもでも、社会で生きていく1人の人間として育てる事に変わりはありません。子どもの障害を本当に受け入れられたのであれば、社会で生きるために必要なことを一つずつ教えていくのが、親の役目だと私は思っています。
2016年08月09日私の父にそっくりな息子出典 : 発達障害は遺伝の要素が強いとは言いますが、それを実感したエピソードがあります。息子と私の父は間違いなく同じ特性を持っています。息子が発達障害の診断を受ける前からずっと、私は息子の様々な行動が私の父にそっくりなことに気付いていました。「動き方がおじいちゃんみたい」「自分勝手な行動がおじいちゃんそっくり」「じっとできないところがおじいちゃんと同じ」と、家族もみんな言っていました。そのせいか、私の父はどの孫よりも息子のことを特別可愛がっていたように思います。私の父と言えば、まずとんでもなく不器用。お皿を割らずに皿洗いができない人です。そして、シングルフォーカス。庭に水やりをしてと頼むと、足元の花を全部ふんづけて水を撒いています。衝動性は凄まじく、思ったことをそのまま口に出すため母が「恥をかかされた」と怒って外出先から泣いて帰ってくるなどしょっちゅうでした。また、残念ながらカッとくると感情のコントロールができないので、家族は大変。多動と多弁は70を超えた今でもそのまま残っており、「ガサガサゴソゴソしないで!」「ちょっと黙って!」と周囲によく注意されています。制御がきかなかった父の幼少期出典 : 父の特性がよく分かる話を、今は亡き祖母がしてくれたことがあります。「幼稚園に入園させたらねえ、毎日手がつけられないほど泣いて叫んで暴れて…。先生たちが困り果てて、結局1ヶ月で退園させられちゃったの。」「家にお客さんがくると、いつもと違う状況に異常にテンションが上がっちゃってね。もうどれだけ注意しても大はしゃぎで、本当に大変だった。」「小学校に上がったら、授業中に鉄棒しに勝手に出ていっちゃったりしてね…」とにかく父は「大変な子」だったようです。問題児だった父を変えたひと言出典 : 幼稚園は強制退園、小学校は立ち歩き脱走ばかりしていた父。小学校低学年までは成績も悪く、勉強も大嫌いな子だったそうです。しかし、最終的には某国立大学を首席で卒業し、表彰式の模様はテレビで放映されました。大学卒業後は企業の営業職として抜群の営業成績をおさめ、リタイア後は法律関係の仕事をしています。周りにずっと「ダメな子」認定されていた父が変わったきっかけは何だったのでしょうか。以前、父が話してくれたことがあります。成績が悪く立ち歩きをする父に、小学校4年生のとき担任の先生がこう言ってくれたそうです。「君は、本当はすごく出来る子なんだよ。僕は知っているよ。」その先生の言葉が、父に革命を起こしたと言います。それまで何をやっても自分はダメだと思っていたけれども、たった1人でも自分を認めてくれる人がいる、それは父の中で大変なことだったのです。それからというもの、父は勉強を含め様々なことに前向きに取り組むようになったそうです。当時、周りと同じことをするのに数倍の努力が必要でしたが、その先生の言葉のおかげで父は努力をし続けることができたと言います。良き大人との出会いが人生を変える出典 : 父のこのエピソードは「窓ぎわのトットちゃん」と重なるものがあります。小学校を退学処分になったトットちゃんに、新しい学校の校長先生が「きみは、ほんとはいい子なんだよ!」と言うという話は有名です。自分を認めてくれる良き大人との出会い、これは、子どもの人生を変えるものです。日常的に自信を失うことが多い発達障害児にとって、こんな言葉をかけてくれる人はどれほど貴重なことでしょう。自分を認めてくれる良き大人、そんな人と子どもが出会うことを信じながら、日々育児に取り組んでいます。
2016年08月06日医学的に知的障害の発現時期は分かっているの?出典 : 知的障害とは、発達期までに生じた知的機能障害により、認知能力の発達が全般的に遅れた水準にとどまっている状態を指します。単に物事を理解し考えるといった知的機能(IQ)の低下だけではなく、社会生活に関わる適応機能にも障害があることで、自立して生活していくことに困難が生じる状態です。知的障害は、知的機能および適応行動(概念的、社会的および実用的な適応スキルで表わされる)の双方の明らかな制約によって特徴づけられる能力障害である。この能力障害は、18歳までに生じる。(AAMR,2002)。(栗田広・渡辺勧持/訳『知的障害定義、分類および支援体系』2004年,日本知的障害福祉連盟/刊p17より引用)知的障害は発達期の間に発症すると定義され、後天的な事故や認知症などの病気で知能が低下した場合は含みません。この発達期とはおおむね18歳までを指しますが、知的障害は障害の状態を指すため、障害が現れる道筋は人によってさまざまで、具体的な発現時期も人により異なります。知的障害を引き起こす原因についても出生前の胎児期に発現する先天的な場合が多いと言われていますが、出産後に発現する・成長段階に後天的に発現する場合まで人によって様々です。症状は成長するにつれて明らかになり、だんだんと家族や周りの人が知的障害の症状に気づくことが多いです。乳幼児期にはことばの発達や園での集団への参加の様子などから特性が目立つようになると言われています。ですが、軽度の知的障害は見た目からは判断しにくいため、見過ごされてしまう場合もあります。知的障害の原因は?出典 : 知的障害の原因は一つではありません。脳障害を引き起こす疾患や要因すべてが知的障害の原因となりうると考えられ、また知的障害を発症する道筋も一つではありません。原因不明の知的障害の人も多いとされていましたが、最近になって原因解明の研究が進んでいます。2014年にも脳内タンパク質の遺伝子変異が知的障害の原因の一つとなるという研究が発表されました。知的障害の原因は十分には解明されていない状況ですが、主な要因は病理的要因・生理的要因・環境要因の3つの面から分類できると考えられています。病理的要因は病気や外傷など脳障害をきたす疾患で、これらの合併症として知的障害が一緒に起きることがあります。この中にはてんかんや脳性まひなどのほか、ダウン症などの染色体異常による疾病も含まれます。一方、特に疾病などがなくたまたま知能水準が知的障害の範囲内にあるといった場合、生理的要因と呼ばれます。環境要因は、直接の原因となるわけではありませんが、脳が発達する時期に不適切な環境であることで知的障害の症状が悪化したり、脳の発達が遅れる原因になったりすると言われています。中日新聞 「脳内タンパク質の遺伝子変異、知的障害の原因に」 2014年知的障害を引き起こす病理的要因としては、主に以下のような病気・けがが挙げられます。・感染症によるもの(胎児期の風疹や梅毒、生後の脳炎や高熱の後遺症など)・中毒症によるもの(胎児期の水銀中毒や生後の一酸化炭素中毒など)・外傷によるもの(事故や出産時の酸素不足など)・染色体異常によるもの(ダウン症候群など)・成長や栄養障害によるもの(代謝異常や栄養不良など)・その他(早産、未熟児、仮死など)病理的要因を考え、もしその要因が治療可能であれば、知的障害を最小限に抑えることができるかもしれません。また、その要因が及ぼす影響を予防したり、支援の方向性を検討したりできます。参考:宮本信也・武田一則/編著『障害理解のための医学・生理学』(明石書店/2010年刊)浜渦辰二「ケアの臨床哲学 ー障がいとそのケアー (8)知的障害」 2013年時期によって発現する原因は変わります知的障害の原因はどのように発現するのでしょうか?出生前・周産期・出生後の3つの時期ごとにご説明します。この中には、まだ詳しい原因やメカニズムがわからないものもあれば、医学の進歩で一部原因が解明されたり、発症を防げるようになったものもあります。胎児期に発現する遺伝子変異や染色体異常といった先天的な原因が知的障害を引き起こす場合があります。また、まれに知的障害の素因となる遺伝子が親から子へ伝わることもあります。下記は胎児期に発現する知的障害の素因としてよく知られている疾病です。・先天性代謝異常(フェニールケトン尿症・メープルシロップ尿症など)・ダウン症・脆弱X症候群(FXS)・脳内タンパク質の遺伝子変異などダウン症などの染色体異常が原因の場合、出生前検査などでその可能性がわかる場合もあります。また胎児期はお母さんのおなかの中で身体や脳などの器官がつくられる大切な時期です。この頃にお母さんを通じて感染症や薬物、アルコールなどの外的要因が胎児に影響したり、お母さんの代謝異常などで栄養不足になったりして脳の発育が妨げられ、知的障害を引き起こす原因となる可能性もあります。出産前後の事故などによって脳に障害が現れることがあります。母体の循環障害、へその緒がねじれるなどで赤ちゃんの脳に酸素がいかなかったり、出産時に頭蓋内出血が起こったりして脳に障害が残る場合があります。また低体重や早産などにより、脳が未発達のうちに生まれることも原因の一つとなる可能性があります。これらの出産前後のトラブルは周産期医療の進歩や充実によって少なくなってきています。脳が未発達なうちはけがや病気の影響を受けやく、乳幼児期の感染症や頭部の外傷などが原因になることがあります。日本脳炎や結核性髄膜炎、ポリオ、麻疹、百日咳などに感染し重篤化して脳炎になると知的障害を引き起こす場合がありますが、予防接種により感染の危険を減らすことができます。また乳幼児期に栄養不足だったり、不適切な養育環境に置かれることで脳の発達が遅れることもあります。フェニールケトン尿症は出生後すぐの新生児マススクリーニング検査の対象疾患となっており、そこで自動的に検査されます。疾患が見つかったらすぐに食事療法によって血液中のフェニルアラニンを一定の範囲にコントロールすることで、発症を予防することができます。知的障害は遺伝するの?出典 : 知的障害の原因はさまざまですが、一部に遺伝性の疾患によるものがあることもわかっています。ですが、それは単純に「親から子に遺伝する」ということではありません。そもそも「遺伝子的な原因」とは、どのようなものなのでしょうか?■染色体の異常私たちの身体は60兆を超える細胞から成り立っていますが、細胞一つ一つの核の中には染色体があります。本来ヒトには23対46本ある染色体がありますが、細胞分裂がうまくいかず数や構造に異変が起こることがあります。染色体は遺伝子を乗せたDNAとタンパク質が集まったもので、たくさんの遺伝子情報がコードされているため、これらに異常があると障害の原因となる可能性があるのです。例えばダウン症は21番染色体が1本多く、脆弱X症候群はX染色体長腕末端部に異常があることがわかっています。■遺伝子の変異遺伝子は4つの塩基配列の組み合わせによって遺伝情報を表しています。その並び方に変異が起きるとその遺伝情報をもとに作られる物質がつくられなくなってしまいます。それが知的障害を引き起こす脳機能障害の素因となりえるのです。脆弱X症候群(難病情報センターHP)知的障害の原因は人様々ですので、遺伝を原因としない場合もありますし、まれに脆弱X症候群(FXS)をはじめ単一遺伝疾患(メンデル型遺伝疾患)など、原因となる遺伝子が親から子に伝わることで知的障害が発症する場合もあります。ですが、親が知的障害の原因となる素因を持っていても、それが子どもに必ず遺伝するわけではありませんし、遺伝しても必ず発現するとは限りません。つまり親が知的障害だからといって必ず子どもが知的障害になるわけではないのです。また、遺伝子の変異は誰にでも起こりうるものですし、遺伝性疾患のほとんどは正常な遺伝子や染色体が突然変異を起こすことによります。知的障害の合併症・併存症知的障害は脳の障害と関わりのある他の疾病と一緒に起こる場合もあります。以下に代表的な合併症・併存症をご紹介します。■てんかんてんかんは、神経細胞の過剰な放電によって発作を繰り返す慢性的な脳の病気です。様々な種類がありますが、ウエスト症候群やレンノックス・ガストー症候群などの難治性のてんかんは、知的障害を伴いやすいと言われています。また、知的障害の程度に比例して合併率も高くなります。てんかんの合併率は、重度知的障害で50%前後、中等度知的障害で40%前後、軽度知的障害では10%前後とされる。宮本信也・武田一則/編著『障害理解のための医学・生理学』(明石書店/2010年刊)p36より引用■脳性まひ脳性まひも知的障害を伴う場合のある疾患です。脳性まひは出生前、出生直後の周産期に受けた脳のダメージが原因で運動障害が起こります。てんかんと知的障害、脳性まひの3つを合併する場合もあります。■発達障害自閉症の場合、知的障害を伴う人も少なくありません。ことばの遅れや構音障害を伴う場合もあります。知的障害のある人でADHD(注意欠陥/多動性障害)のような症状が見られる人もいます。その場合、知的障害のある人にADHDの併存を認めるときは、精神年齢に対して過剰であるかどうか注意する必要があります。このように知的障害の場合、他の発達障害の症状がないかどうか、慎重に判断する必要があります。■その他の障害上記のほかにも、原因となる疾患によって、聴覚障害・視覚障害など様々な障害を合併することがあります。■二次障害(併存症)知的障害のある方に見られることの多い二次障害として、うつ病などの気分障害や不安障害があります。「できない」ことを注意されるなどして自己肯定感が下がったり、マイナス思考におちいったりすることが原因となることがあります。このような二次障害を防ぐためにも、早期に障害に気づき、その人にあった対応方法や支援につなげることが大切になってきます。有馬正高/監修『知的障害のことがよくわかる本』(2007年,講談社/刊)知的障害を検査する方法はあるの?出典 : 出生前に知的障害を検査する方法は現段階ではありません。羊水検査でその可能性を検査できるダウン症に関しても、知的障害の程度や可能性は出生前には確実にはわかりません。ダウン症・脆弱X症候群などの染色体異常は出生後の遺伝子検査で診断が確定することができます。フェニールケトン尿症については新生児マススクリーニング検査で検査が行われます。しかしながら必ずしもこれらの疾病=知的障害ではありませんので、羊水検査や遺伝子検査で異常があったからといっても知的障害であると断定するものではありません。また知的障害があってもその程度は人によって様々です。知的障害を検査する方法としては知能検査や発達検査を用いるのが一般的です。知能検査は、様々な種類があり使用する検査は病院などによって異なりますが、「WPPSI」「WISC」・「WAIS」や「田中ビネー」など標準化された知能検査や社会適応能力検査を用いて、知的障害の診断を行います。幼児期の子どもは知能検査や発達検査を受けたり、保護者が質問の回答や記入を行ったりします。検査機関によっても異なりますが、知能検査は正確な結果を得るため、通常1年に1回など期間をあけて測定します。また、知的障害は他の障害や疾患を合併していることもあるため、様々な検査が行われることもあります。てんかんがないか脳波を調べたり、脳の器質的な異常がないか調べるためにMRIをしたりといった、生理学的な検査を行うこともあります。知的障害の治療法はあるの?出典 : 知的障害は環境調整や療育・トレーニングによって改善することができると言われています。その他、代謝異常などの病気が原因の場合は、治療によって改善することもあります。しかし、現在のところ知的障害の直接的な治療法として薬や手術といった医学的治療法はありません。治療法は確立されていませんが、対応法を変えることによって大きな変化があります。例えば発達支援として療育プログラムを利用し、本人にとってよい環境で学ぶ機会をつくることで、成長を促すことができます。また、通う学校においてもその子にあった支援が得られるとよいでしょう。成人後は就職支援なども受けられ、社会人として働いている知的障害のある方も多くいらっしゃいます。扶養手当などの経済的支援も進んでいるので、それらを利用して、お子さんが過ごしやすい環境を作るように心がけましょう。ご家族はカウンセリングやペアレントトレーニングなどを受けることもできます。ペアレントトレーニングとはその名の通り、親に対する子育てトレーニングです。知的障害について理解し、子どもにどう接すればいいのかを学ぶことで、今後の生活と向き合いやすくなります。また、知的障害のあるお子さんをもつ親同士のつながりをつくったり、周りに相談したり、協力しながら子育てを進めることも大切です。疑いがある場合は、専門機関を受診しましょう出典 : 現在知的障害の原因として、染色体異常や先天性感染症などが考えられていますが、それらに当てはまらないものの原因は不明とされています。遺伝する確率や治療法も解明されていませんが、療育や経済的支援は進んでいますので子育てしやすい環境は整いつつあります。しかしながら軽度の知的障害に大人になるまで気づかず辛い思いをされる方も多くいます。早めに気づけるよう、お子さんを気がけるようにしたり、知的障害かもと思われた場合は専門機関での診断をおすすめします。専門機関は、児童の場合、各市区町村の保健センター、子育て支援センター、児童発達支援事業所等をさします。大人の場合は発達障害者支援センター、障害者・生活支援センター、相談支援事業所へ行ってみましょう。知能検査や発達検査は児童相談所や療育センターでは無料で行なえる場合もあります。まずは身近な相談センターに行ってみて、障害の疑いがある場合には発達を専門とする小児科、小児神経科など専門医を紹介してもらいましょう。以下は発達障害を診療できる医師の一覧です。参考にしてみてください。日本小児神経学会 「発達障害診療医師名簿」参考書籍:栗田広・渡辺勧持/訳『知的障害定義、分類および支援体系』2004年,日本知的障害福祉連盟/刊参考書籍:日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院/刊参考書籍:有馬正高/監修『知的障害のことがよくわかる本』講談社/刊
2016年08月04日知的障害とは?どんな症状?出典 : 知的障害とは、発達期までに生じた知的機能障害により、認知能力の発達が全般的に遅れた水準にとどまっている状態を指します。発達期とはおおむね18歳までを指し、それ以降に事故や病気などで知的機能が低下しても、知的障害とは言いません。厚生労働省は知的障害を以下のように定義しています。知的障害は精神遅滞とも表される、知的発達の障害です。知的機能や適応機能に基づいて判断され、知能指数により分類されます。様々な中枢神経系疾患が原因となるため、正しい診断を受けて、早期に治療・療育・教育を行う必要があります。本人のみならず、家族への支援もかかせない発達障害のひとつです。知的障害(ID: Intellectual Disability)は、医学領域の精神遅滞(MR: Mental Retardation)と同じものを指し、「知的発達の障害」を表します。すなわち「1. 全般的な知的機能が同年齢の子どもと比べて明らかに遅滞し」「2. 適応機能の明らかな制限が」「3. 18歳未満に生じる」と定義されるものです。中枢神経系の機能に影響を与える様々な病態で生じうるので「疾患群」とも言えます。知的障害は、染色体異常を原因とするダウン症のように出生後にすぐ診断できる疾病に合併する場合もあれば、自閉症のように、生後すぐには診断できない障害に合併することもあります。知的障害は「知的機能(IQ)」の検査のみによって診断がくだされるのではありません。「適応機能」という日常生活能力、社会生活能力、社会適応性などの能力を測る指数と併せて診断が下されます。知的障害の診断は医療機関や地域によって異なりますが、一般的に知的障害は「知的機能」と「適応機能」の評価で「軽度」「中度」「重度」「最重度」の4つの等級に分類されます。出典 : この図では、横軸に日常生活能力水準をaからdで取り、縦軸にIQのレベルをIからIVに取っています。日常生活能力水準はaに近づくほど自立した生活が難しいということになり、dに近づくほど自立した生活ができるということを表します。また同様にIQが低いほどIに近づき、IQが高いほどIVに近づきます。横軸と縦軸が合わさったところから、知的障害の程度を診断します。以上の図では、知的機能が低かったとしても適応機能が高ければ、ひとつ上の等級で診断されることがわかります。知的障害は知的機能検査だけで診断されると思われがちですが、このように知的機能と適応機能の2つが評価された上で診断が下されます。小林朋佳稲垣真澄 「精神遅滞」 2011年知的障害はいつ分かる?診断の年齢は?出典 : ダウン症の場合、出生時に知的障害が合併する可能性を示唆できます。しかし、保育園や幼稚園、小学校などで周りの子と比べた発達の遅さから疑いを持ち、医療機関での検査を受け、知的障害だと判明するケースが多いのです。知的障害は発達期の間に発症するとされ、診断は18歳以下が一般的ですが、子どもの頃に症状に気づかず大人になってから知的障害だと診断された方も少なくありません。検査できる年齢等は定められていませんが、症状がわかりやすい幼児以降の診断が多いです。幼い子どもや障害が重度の場合は保護者が代わりに質問に答えたり、記入してもらう方法が適用されます。出典元:内閣府「平成25年版障害者白書(概要)」>第1章障害者の状況(基本的統計より)知的障害の診断基準出典 : 医療機関では問診と簡単なテストを行います。知的障害の診断基準にはアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版テキスト改訂版)や世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)といった基準が使われており、検査結果から総合的に判断します。以下はDSM-5にある知的障害の診断基準です。以下を全て満たすと、知的障害だと診断されます。A 臨床的評価および個別化、標準化された知能検査によって確かめられる、論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、学校での学習、および経験からの学習など,知的機能の欠陥。B 個人の自立や社会的責任において発達的および社会文化的な水準を満たすことができなくなるという適応機能の欠陥。継続的な支援がなければ、適応上の欠陥は、家庭、学校、職場、および地域社会といった多岐にわたる環境において、コミュニケーション、社会参加、および自立した生活といった複数の日常生活活動における機能を限定する。C 知的および適応の欠陥は、発達期の間に発症する。(日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』2014年 医学書院/刊より引用)ほかにも使われる診断方法があります。知的障害は、知能検査と適応能力検査の2つによって総合的に診断が下されます。「田中ビネー知能検査 V(ファイブ)」、「新版K式発達検査」、「ウェクスラー式知能検査」が検査で使われることが多いです。年齢によって受ける検査が異なるものもあります。■田中ビネー知能検査 V(ファイブ)2歳から成人まで受けることができます。就学する5~6歳の年齢にフォーカスをあて、特別な配慮が必要かどうかを判断するための「就学児版田中ビネー知能検査V(ファイブ)」という検査もあります。子どもが興味を持てるように、検査に使われる道具が工夫されています。日常生活において必要な知能・学習する上において必要な知能の2つを測定します。■新版K式発達検査生後100日頃から14歳くらいまでの人が受けることができます。「姿勢・運動」(P-M)、「認知・適応」(C-A)、「言語・社会」(L-S)の3領域について評価されます。3歳以上では「認知・適応」面、「言語・社会」面に、重点を置かれ検査します。楽しみながら検査を受けることができるので、緊張していない自然な行動から判断することができます。試験者は子どもの検査結果だけでなく、言語反応、感情、動作、情緒などの反応も記録し、総合的に判断します。■ウェクスラー式知能検査ウェクスラー式知能検査は、年齢ごとに3つのテストに分類されます。・幼児(3歳10ヶ月〜7歳1ヶ月)→WPPSI・児童(5歳から16歳11カ月)→WISC・成人(16歳〜)→WAISIQが求められるだけでなく、脳の発達具合を下位検査を用いて導出し、総合的に判断することができます。ウェクスラーにはA式検査とB式検査の2種類があり、A式が言語性検査、B式が動作性検査です。教育相談情報提供システム 「発達検査」 国立特別支援教育総合研究所田研出版 「田中ビネー知能検査V」適応能力を評価する検査は大きくわけて3つあります。■適応能力検査の種類・vineland-II(全年齢)・ASA旭出式社会適応スキル(幼児〜高)・S-M社会生活能力検査(乳幼児〜中学生)これらの検査を年齢や状況に応じて使い分け、総合的に知的障害の診断が下されます。日本文化科学社 「心理検査カタログ」 2016年専門機関での診断は受けるべき?どこへ行けばいいの?出典 : 言葉を習得するのが著しく遅いなどの言語能力の遅れや、運動能力の遅れ、社会性の発達の遅れなどで気になることがあるなど、子どもの知的障害を疑ったら、一度は専門機関へ相談されることをおすすめします。医療機関で診断を受けるかどうか、決めるのは本人やご両親の判断となります。ですが、適切なサポートを受けられないまま、生活する上で最も困難さを感じるのは本人です。少しでも早く症状に気づいてあげられれば、フォローして困難の乗り越え方を手助けすることも可能になりますし、できるだけ生活しやすい環境を整えてあげることもできるかもしれません。親や家族で抱え込まず、専門家や周りの人たちの協力を得ながら、その子にあったやり方で接することが大切です。いきなり専門医に行くことは難しいので、まずは無料で相談できる身近な専門機関の相談窓口を利用するのがおすすめです。子どもか大人かによって、行くべき機関が違うので、以下を参考にしてみてください。【子どもの場合】・保健センター・子育て支援センター・児童発達支援事業所など【大人の場合】・発達障害者支援センター・障害者就業・生活支援センター・相談支援事業所などその後、すすめられた場合は、医療機関に行き医師からの診断を受けましょう。診断を受けて知的障害だった場合は今後どのように対応していけばいいか聞くことができますし、仮に知的障害でなくとも普段の行動を見直すきっかけになると思います。児童相談所などは電話やファックスでの相談にも対応してくれるため、事前に気になることを聞いてもいいですし、診断に抵抗がある方はまずは相談するだけでも大丈夫です。身近な相談センターに行って相談し、知的障害の疑いがあり、診断を希望すればそこから専門医を紹介してもらえます。自宅の近くに相談センターがない場合には、電話での相談に乗ってくれることもあります。知的障害を含め、発達障害の専門機関は他の病気に比べると少ないですが、発達障害者支援法などの法が整備されたことの影響もあり、年々増加はしています。診断を受けられれる医療機関としては、子どもの場合は小児科、大人の場合は精神科が一般的です。その他、神経科や心療内科なども挙げられます。また、保健センターなどでは知能検査や適応能力を診断する検査を受けられる可能性もあります。以下のリンクは発達障害の診療を行える医師の一覧です。日本小児神経学会 「発達障害診療医師名簿」診断の流れ、必要な持ち物は?出典 : 使用する検査は病院などによって異なりますが、「WISC」・「WAIS」や「田中ビネー」など標準化された知能検査や社会適応能力検査を用いて、知的障害の診断を行います。幼児期の子どもは知能検査や発達検査を受けたり、保護者が質問の回答や記入を行ったりします。検査機関によっても異なりますが、知能検査は正確な結果を得るため、通常1年に1回など期間をあけて測定します。また、知的障害は他の障害や疾患を合併していることもあるため、様々な検査が行われることもあります。てんかんがないか脳波を調べたり、脳の器質的な異常がないか調べるためにMRIをしたりといった、生理学的な検査を行うこともあります。なお、検査のみで把握できないことも多いため、行動観察や問診などで総合的に考慮されて、知的障害と診断されます。また、一度の受診で診断されることはあまりなく、何度か経過観察を経て正式に診断を下されることが多いようです。診断に持っていかなければならない持ち物としては基本的に健康保険証とお金、小さな子どもの場合は乳幼児医療証が挙げられます。診察料は病院によってさまざまで検査によっても異なりますが、2万円以内に収まるケースがほとんどです。地域や年齢によっては診察代が無料の場合もあります。しかしながら、保険適用外の検査もあるため、事前に電話などで病院に確認しておくと安心です。知能検査や発達検査の他に問診でこれまでの生活状況について尋ねられることがあります。母子手帳や事前に子どもの行動や1日のスケジュールなどをメモしたものを持参すると質問された時に答えやすいでしょう。まとめ出典 : 軽度の知的障害の場合、本人や周囲の方が気づかないまま大人になることも少なくありません。一方、知的障害の診断を受けると、療育手帳を取得することが可能になり、社会からのサポートが受けやすくなるというメリットもあります。お子さんに知的障害の疑いがある場合、専門機関への相談も検討してみてください。専門家や支援センターの担当者、同じ悩みを抱えるご家族と相談することで、お子さんがより過ごしやすい環境やサポートを考えていくことができるでしょう。参考書籍:日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院/刊参考書籍:栗田広・渡辺勧持/訳『知的障害定義、分類および支援体系』2004年,日本知的障害福祉連盟/刊参考書籍:有馬正高/監修『知的障害のことがよくわかる本』講談社/刊
2016年08月03日広汎性発達障害(PDD)の主な症状出典 : 広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorders:略称PDD)は、コミュニケーションと社会性に障害があり、限定的・反復的および常同的な行動があることを特徴として分類される発達障害のグループ です。世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)の診断カテゴリで、このグループには自閉症、アスペルガー症候群のほか、レット症候群、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害という障害が含まれています。広汎性発達障害の症状として主に下記の3つが挙げられます。1.社会性・対人関係の障害人に関心を示さない孤立型、言われたことに何でも従う受動型、一方的に話し続ける積極・奇異型、横柄な態度を取る尊大型の主に4タイプに分かれます。孤立型の特徴としてよく言われるのが、視線を合わせない(避ける)などの症状です。2.コミュニケーションや言葉の発達の遅れ他人とのコミュニケーションや会話が苦手で、抽象的な言葉の意味や曖昧な表現、文脈を理解できていないなどの症状があります。言葉の発達が遅れる症状も見られるため、3歳になっても会話ができないということで障害を疑う親も多くいます。3.行動と興味の偏りある特定の物事に強い興味やこだわりをみせることがあります。環境の変化や予定の変更を嫌がったり、普段はできていることも初めての場所だとできないなどの症状があります。その結果パニックを起こしてしまう場合もあります。こだわりが強く偏食になったり、同じ行動を長時間続けるなども見られます。また、機械音やサイレンなど特定の音に苦痛を示したり、抱っこを嫌がったりするなど、聴覚や視覚などの感覚過敏が広汎性発達障害のある人の多くに見られると言われています。広汎性発達障害はいつ分かる?診断の年齢は?出典 : 広汎性発達障害は、なんらかの先天的な遺伝要因と様々な環境要因に起因する何らかの障害が脳が発達する時期に起こり、それが成長段階で「広汎性発達障害」として発見されるとされています。要は先天的な素因によって起こる発達障害の一つとして医学的には捉えられています。広汎性発達障害は親のしつけや育て方の問題で起こっているわけではないことがわかっています。広汎性発達障害は、だいたい3歳までの幼児期に何らかの症状が現れると言われています。広汎性発達障害の子どもをもつ親が、言語能力の遅れやこだわりなどの何らかの症状に気づく時期についても3歳未満が多いとされています。また、1歳半健診や3歳児健診などの乳幼児健康診断で広汎性発達障害を含む発達障害に関する何かしらの指摘があり、その後医師の診断により判明することもあります。中には子どもの頃に気づかず、大人になってから広汎性発達障害と診断された方もいます。思春期以降には、不安障害やうつ病などの気分障害・睡眠障害などのいわゆる二次障害と呼ばれる症状や状態となり、その検査を通して広汎性発達障害に気づく人もいます。まだまだ認知度が低い発達障害ですが、本人に何らかの困りごとや症状があることに気づいた段階で早めに専門機関などで相談し、医療機関を受診するなどして、療育などの必要な支援を受けることが大切と言われています。広汎性発達障害の診断基準は?出典 : 一般的に専門機関での診断はアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版テキスト改訂版)や、世界保健機関(WHO)の『ICD-10』による診断基準によって行われます。アメリカ精神医学会の診断基準である『DSM-5』では広汎性発達障害の診断カテゴリ下にあったレット障害を除くすべての障害名が、自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害という診断カテゴリに統合されました。そのため今後「広汎性発達障害」という診断名は少なくなっていくと考えられますが、本記事では行政や医療機関で広汎性発達障害の名称を使用している場合も多いこと、すでにこの名称で診断を受けた人も多いことから、『ICD-10』の診断カテゴリに準拠して広汎性発達障害の名称でご説明しています。以下は『ICD-10』における広汎性発達障害の診断基準になります。以下の基準の中で当てはまる項目が多い場合や気になる場合は、専門機関で相談することをおすすめします。F84.2レット症候群Rett’s SyndromeA.胎生期・周産期は明らかに正常,および生後5カ月までの精神運動発達も明らかに正常,および生下時の頭囲も正常であった.B.生後5カ月から4歳までの間に頭囲の成長は減速し、また5~30カ月の間に目的をもった手先の運動をいったんは獲得していたのに喪失すると同時に,コミュニケーション機能不全,社会的相互関係の障害を伴い,また歩行および/または体幹の協調運動障害/不安定さがあらわれる.C.表出性および受容性言語の重度の障害があり,重度の精神運動遅滞を伴うこと.D.目的をもった手先の運動を喪失時またはそれ以後にあらわれる。正中線上での常同的な手の運動(もみ手や手洗いのようなもの)があること.F84.3他の小児期崩壊性障害Other childhood disintegrative disorderA.少なくとも2歳までの発達は明らかに正常であった.2歳時あるいはそれ以後に,コミュニケーション・社会的関係・遊び・適応行動について,年齢相応の正常な能力が存在していたことが診断に必要である。B.発症と考えられる時点において,それまでに獲得していた技能を明確に喪失していること.診断には臨床的に重要な技能について,次に挙げる領域のうち2項目以上の喪失(できなくなる場合があるだけではなく)が必要である.(1)表出性または受容性言語(2)遊び(3)社会的技能または適応行動(4)排尿または排便のコントロール(5)運動技能C.社会的機能の質的な異常が,次に挙げる領域のうち2項目以上に存在すること.(1)相互的な社会関係における質的異常(自閉症で定義した型)(2)コミュニケーションにおける質的異常(自閉症で定義した型)(3)常同運動や奇妙な運動を含む,行動や関心および活動性の,限定的・反復的・常同的なパターン(4)物や周囲に対する関心の全般的喪失D.障害は,広汎性発達障害の他の亜型,てんかんに伴う後天性失語(F80.3).選択制緘黙(F94.0),レット症候群(F84.2),統合失調症(F20.-)などによるものではない。F84.4精神遅滞[知的障害]および常同運動に関連した過動性障害Overactive disorder associated with mental retardation and stereotyped movementsA.重篤な過動が,活動性と中言い関する次の問題のうち2項目以上に明らかであること.(1)走ったり,跳んだり,全身を使った運動に示される,持続する落ち着きのなさ.(2)じっと座っていられない,常同的な活度に没頭しているときを除いて,ふつうは長くて数秒しか座っていられない(基準Bを参照).(3)静かにしていなければならない状況での強度の過動(4)めまぐるしく活動を変え,通常行動は1分未満しか続かない(時々,お気に入りの活動により長い時間を費やしても,除外しない.また,常同的な活動にひどく長い時間を費やすことがあっても,その他のときにこの問題が存在すればよい).B.行動や活動の常同的・反復的なパターンが,次のうち1項目以上に明らかであること.(1)固定して頻繁に繰り返される奇妙な運動,全身を使った複雑な運動ないし,手をひらひらとさせるような部分的な運動のいずれかがある.(2)過剰で意味のない活動の一定の形の繰り返し,単一の物体(たとえば流れる水)との遊びや,儀式的な行為(1人でしたり他人を巻き込んだり)など(3)反復する自傷行為C.IQは50以下.D.自閉的なタイプの社会機能障害はない.すなわち,次のうち3項目以上を示すこと.(1)社会的相互関係を調整するうえで,視線・表情・姿勢を発達的に適切に使用すること.(2)発達的に適切な,同世代の小児と関心や活動などを共有できる関係があること.(3)少なくとも時々は他人に慰めや情愛を求めていくこと.(4)他人の楽しみを時々は分けあうことができる.社会機能障害の他のタイプ,たとえば見知らぬ人に平気で近づくことなどは,あってもよい.E.自閉症(F84.0とF84.1),小児期崩壊性障害(F84.3)または多動性障害(F90.-)の診断基準を満たさない.F84.8他の広汎性発達障害Other pervasive developmental disordersF84.9 広汎性発達障害,特定不能のものPervasive developmetal disorder, unspecifiedこれは残遺診断カテゴリーで,広汎性発達障害の全般的記載には合致するが,十分な情報を欠く,あるいは矛盾する所見があるために,F84の他のコードのいずれの診断基準も満たさないような場合に用いるべきである。(中根允文ほか/訳『ICD-10精神および行動の障害DCR研究用診断基準』2009年,医学書院/刊p158より引用)自閉症・アスペルガー症候群の診断基準に関しては下記の記事をご参照ください。専門機関での診断は受けるべき?どこへ行けばいいの?出典 : 上記で述べた症状や特徴などが見受けられる場合、専門家に判断してもらうことをおすすめしますが、いきなり専門医に行くことは難しいので、まずは無料で相談できる身近な専門機関の相談窓口を利用するのがおすすめです。また、1歳半や3歳児健診などの乳幼児健康診断がある場合は、医師や専門家もいるのでその際に相談してみるのもよいでしょう。子どもか大人かによって、行くべき専門機関が違うので、以下を参考にしてみてください。【子どもの場合】・保健センター・子育て支援センター・児童発達支援事業所・発達障害者支援センターなど【大人の場合】・発達障害者支援センター・障害者就業・生活支援センター・相談支援事業所など児童相談所などでは無料で知能検査や発達検査を受けられることも多いので、児童相談所で相談するパパ・ママも多くいます。まず身近な相談センターに行って、診断をすすめられたら、そこから専門医を紹介してもらいましょう。自宅の近くに相談センターがない場合には、電話での相談にのってくれることもあります。診断は、子どもの場合、小児科・児童精神科・小児神経科や発達外来などで受けることができます。(大学病院や総合病院などにあります)大人になって検査・診断を初めて受ける場合には、精神科や心療内科、大人もみてくれる児童精神科・小児神経科や精神科など専門の医療機関を受診することが一般的ですが、大人の発達障害を診断できる病院はまだ数が多くありません。上記の相談機関で紹介してもらえるほか、医師会や障害者支援センター、発達障害者支援センターなどでも調べることができます。発達障害の専門機関は他の病気に比べると少ないですが、発達障害者支援法などの施行によって年々増加はしています。以下のリンクは発達障害の診療を行える医師の一覧です。この他にも、児童精神科医師や診断のできる小児科医師もいます。担当者との相性も大切なので、納得のいく医療機関を選ぶようにしましょう。日本小児神経学会 「発達障害診療医師名簿」診断の流れ、必要な持ち物は?出典 : 本人や保護者に対する問診(面接)や行動観察、家族・学校の先生による提供情報の精査などと、専門機関によっては知能検査や発達検査などを実施する場合もあり、筆記や口頭質問などの検査が行なわれ、様々な情報を総合的に評価して診断されます。検査は複数回に分けて行なわれたり、慎重に経過を見ながら行われるため、一度の受診で診断されることはあまりありません。知能検査は、田中ビネー知能検査Ⅴ(ファイブ)やウェクスラー式知能検査(3歳10ヶ月〜7歳1ヶ月の幼児の場合は「WPPSI」、5歳から16歳11ヶ月の子どもは「WISC」、16歳以上の成人の場合は「WAIS」)などの検査を受けることによって検査結果がでます。特性の現れ方や発達段階などを評価するため「CARS」や「新版K式発達検査2001」、「PEP-R」などを行う場合もあります。初診時に必要な物として保険証、子どもであれば母子手帳などがあります。服用中の薬などがあれば、お薬手帳なども持っていくとよいでしょう。また、生育や発達歴についての問診がありますので、言葉を話し始めた時期や日常生活での困りごとなどをメモして持っていくと質問に答えやすいかもしれません。発達外来などの専門機関によっては保育園や幼稚園の連絡帳、小学校の通信簿やホームビデオなどを参考にする場合もあります。事前に問診票をプリントアウトして持参する機関もありますので、専門機関の公式ホームページをチェックしたり、予約時に電話にて必要な持ち物を問い合わせてみてください。まとめ出典 : 広汎性発達障害の子どもをもつ親の中には子育ての仕方が悪いと自信をなくす方もいらっしゃいます。ですが広汎性発達障害は子育ての仕方が原因ではないことが医学的にわかっています。自信をなくすなど親がストレスを抱えていると、子どもにも気持ちが伝わってしまいます。専門機関に相談したりすることで、同じ悩みを持つ親と知り合える機会も増え、親にとっても子どもにとっても心の面でケアできる可能性があります。まずは相談や診断を受け、少しずつでも広汎性発達障害について理解し、じっくり子どもと向き合っていくことが大切です。広汎性発達障害と診断された場合、年齢に応じた療育相談や、理学療法士・作業療法士などによる個別訓練、てんかんなどに対する薬物療法などが行なわれます(専門機関によって異なる)。一般的に早期療育がよいと言われています。早めに広汎性発達障害と知ることで子どもにあった療育方法を見つけ、生活に必要なスキルを練習することで、子どもと家族にとって生きやすい環境をつくっていきましょう。
2016年08月02日医学的に広汎性発達障害(PDD)の発現時期は分かっているの?出典 : 広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorders:略称PDD)は、コミュニケーションと社会性に障害があり、限定的・反復的および常同的な行動があることを特徴として分類される発達障害のグループ です。世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)の診断カテゴリでは、このグループには自閉症、アスペルガー症候群のほか、レット症候群、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害という5つの障害が含まれています。広汎性発達障害は、なんらかの先天的な遺伝要因と様々な環境要因に起因する何らかの障害が脳が発達する時期に起こり、それが成長段階で「広汎性発達障害」として発見されるとされています。要は先天的な素因によって起こる発達障害の一つとして医学的には捉えられています。広汎性発達障害は親のしつけや育て方の問題で広汎性発達障害が起こっているわけではないことがわかっています。広汎性発達障害は、だいたい3歳までの幼児期に何らかの症状が現れると言われています。広汎性発達障害の子どもをもつ親が、言語能力の遅れやこだわりなどの症状から何らかの疑いをもつ時期についても3歳未満が多いとされています。また、1歳半検診や3歳児検診などの乳幼児健康診断で広汎性発達障害を含む発達障害に関する何かしらの指摘があり、その後医師の診断により判明することもあります。中には子どもの頃に気づかず、大人になってから広汎性発達障害と診断された方もいます。不安障害やうつ病などの気分障害・睡眠障害などのいわゆる二次障害と呼ばれる症状や状態となり、その検査を通して広汎性発達障害に気づく人もいます。姫路心療内科 前田クリニック 「発達障害とうつの関係」埼玉県総合教育センター 「自閉症の理解と支援自閉症とは」広汎性発達障害の原因は?出典 : 現段階では正確な原因は解明されていませんが、脳機能の障害により症状が引き起こされるといわれています。その脳機能障害は、先天的な遺伝要因と、様々な環境要因が複雑かつ相互に影響し合って発現するというのが現在主流となっている説です。なお、広汎性発達障害という診断名は、アメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版テキスト改訂版)の診断基準では自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害という診断カテゴリに変更されています。以下の各症状の中には、自閉症スペクトラム障害の概念から除外されたものも含まれています。しかし、行政や医療機関で広汎性発達障害の名称を使用している場合も多いこと、すでにこの名称で診断を受けた人も多いことから、本記事では『ICD-10』の診断カテゴリに準拠して広汎性発達障害の名称でご説明します。以下の図で広汎性発達障害に含まれている各症状の原因について、それぞれご紹介します。Upload By 発達障害のキホン自閉症は脳の機能障害が原因と考えられていて、これには複数の遺伝子が関わっており、最近では父親の高齢化で自閉症の確率が高まるという研究報告や、妊娠時の体内環境の要因などが関連すると言われることもあります。しかしながら、これらは全てはっきりしたメカニズムが分かっておらず、医学的根拠については解明されていません。アスペルガー症候群も自閉症と同様に脳の機能障害である可能性が高いとされていますが、その全てが解明されている訳ではありません。小脳や脳内物質の異常、環境ホルモンやウィルス感染、成長環境での心理的要因など国内外で様々な研究が進められており、アスペルガー症候群の原因について医学的な裏づけを研究している段階です。レット障害(レット症候群)はほとんどが女児に見られる発達障害です。レット障害についてはX染色体上に存在する遺伝子の突然変異が原因だということが発見されました。1999年にMECP2という遺伝子が主な原因遺伝子であることが発見され、その後2004年にCDKL5、2008年にFOXG1という原因遺伝子も発見されています。女性の性染色体はXX型、男性はXY型であるため、レット障害は女児に多いと考えられています。また、男児の場合、遺伝子の異常で流産や死産してしまう可能性が高いですが、男児のレット障害も少数ながら報告されています。レット症候群|難病情報センター小児期崩壊性障害(CDD)はヘラー症候群とも呼ばれますが、その原因は現段階では解明されていません。今まで話していた子どもが言葉を話さなくなるなど精神発達の退行が症状として現れますが、脳や神経系の感染症などを発現後に小児期崩壊性障害となるケースも多く、脂質代謝異常や結節性硬化症など、さまざまな疾患と関連があると考えられています。特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)は特定不能とあるように、特定の原因は不明とされています。一部では遺伝要因と環境要因による相互作用ではないかと考えられています。自閉症やアスペルガー症候群の診断基準には当てはまらないが、その特徴を一部持っているという場合に診断されることが多いです。広汎性発達障害は親から子どもへ遺伝するの?出典 : 広汎性発達障害は先天的な遺伝的要因が関与している可能性が高いと言われています。双生児研究や家族間研究が盛んに行われてきました。以下のようなデータがあります。広汎性発達障害の一卵性双生児における一致率は70~90%であり、その遺伝率は90%とされている。よって広汎性発達障害は遺伝因子がその発症に大きな役割を果たしていると考えられている。(橋本亮太、安田由華、大井一高、福本素由己、高村明孝、山森英長、武田雅俊「モデル動物を用いた発達障害病態解析」 2009年より引用)一卵性双生児の場合、基本的な遺伝子情報は同じです。その一卵性双生児間で一人が広汎性発達障害である場合、もう一人も広汎性発達障害であるという確率が90%と高いことは、遺伝的要因が影響していると言われている根拠の一つとなっています。一方で、一致率が100%でないということは、遺伝以外の要因があることも示唆しているのです。つまり、広汎性発達障害は遺伝的要因が関係している可能性がありますが、必ずしも単純に親から子どもへ遺伝するというわけではありません。また。遺伝する確率や詳しい原因については研究段階で、発現するメカニズムなどは解明されていないのが現状です。障害のある親から障害のない子どもが産まれる場合もありますし、親族の広汎性発達障害のない場合でも障害のない親から障害のある子どもが産まれる場合もあります。きょうだい間でも上の子が広汎性発達障害だったからといって、下の子も必ず広汎性発達障害になるとは限りません。広汎性発達障害を検査する方法はあるの?出典 : 羊水検査やエコー写真などによって、出生前の妊娠中の段階で広汎性発達障害を検査する方法は今のところありません。原因遺伝子が確定されているレット障害(レット症候群)に関しては、出生後に遺伝子検査ができる場合もあります。しかし、その他の広汎性発達障害については、出生後も血液検査や遺伝子検査といった生理学的な方法で検査することはできません。一般的に子どもになんらかの症状や特性が現れてから、様々な心理検査や知能検査、保護者(親)に対する問診、子ども(本人)の行動観察、学校や家族からの情報提供などによって診断が行われます。診断基準は主にDSM-5やICD-10などが用いられます。診断はさまざまな情報や検査の結果から総合的に行われ、経過を見ながら慎重に行われます。レット症候群の遺伝子異常について|NPO法人レット症候群支援機構HP広汎性発達障害の治療法はあるの?出典 : 根本的な原因が解明されていないため、薬や手術などによる根本的な治療法は存在しません。一般的には環境調整や療育(りょういく)と呼ばれるトレーニングを行い、家庭での対応や専門機関による療育などによって子どもが自立して生活できるよう支援していきます。また、パニック症状やてんかん発作、感覚過敏など一部の症状に対して薬物療法が行なわれる場合もあります。療育は何歳からでも始めることができます。コミュニケーションの取り方がわかったり、療育の遊びを通して友達ができたりする子もいます。ストレスを抱えがちな親にとっても療育の場は相談できる場所であり、同じ悩みをもつ親同士の交流の場所ともなっています。療育の効果は個人差があり、子どもに合った療育が必要となりますが、子どもにとっても親にとっても療育は心の面でもサポートにもなると言えるでしょう。まとめ出典 : 広汎性発達障害の原因は遺伝的要因が有力とされていますが、必ずしも単純に遺伝するという訳ではなく、詳しい原因やメカニズムはいまだ解明されていません。一方で親の子育て方法が原因と言う心因論も誤りです。遺伝かどうか、原因は何かを探るだけではその子の生きやすさにはつながりません。その子が生きやすい環境を作ることがもっとも大切なことです。また、最近では3歳未満で診断されることも多いですが、見た目にも分かりづらいことから大人になるまで広汎性発達障害と気づかなかった方もいます。広汎性発達障害と気づき、療育などの適切なサポートを受けることは本人にとっても親にとっても大切なことです。少しでも気になることがあるようでしたら、専門機関での相談を受けてみてください。
2016年08月01日梅酒や果実酒を自宅でつくっている人も多いことでしょう。しかし、日本では、アルコール度数20未満のお酒を使って家庭で果実酒をつくることは酒税法違反になるそうです。果実酒をつくる前にチェックしておきたい注意点をまとめました。■日本酒がダメなら洋酒で!梅酒といえば、氷砂糖とともに梅の実をホワイトリカー(焼酎)に漬けたものが一般的です。最近では、梅酒の種類が豊富な居酒屋が増えてきて、みりんや日本酒に漬けたものをそろえる店もありますよね。みりんで漬けた梅酒は飲みやすく、食前酒にも最適。女性を中心に人気が高まっていますが、家庭でつくることはできません。なぜなら、みりんのアルコール度数が15度前後だからです。日本酒のアルコール度数も同程度のため、酒税法違反になってしまいます。家庭でもちょっと変わった梅酒をつくりたい! という場合は、ブランデーやウイスキーを使うのがおすすめ。洋酒の豊潤な香りと梅のさわやかさがマッチした大人の味わいです。さらに氷砂糖の一部を黒糖に変えると、コク深い味わいを楽しめます。■友だちに振るまうのもNG!?これからの季節はたくさんのフルーツが実る時期で、梅酒以外にもさまざまな果実酒をつくることができます。しかし、ぶどうの場合は、焼酎を使っても酒税法違反になるそうです。同様に、米や麦などの穀類を漬けこむことも禁止されています。ほかにも、手づくりの果実酒を家族以外に振るまうことはNGなど、厳しい決まりもあるようです。「梅酒をつくったから飲みに来て!」なんて、SNSに投稿しませんように…。■梅酒のアレンジ法禁止事項ばかりでは気がめいってしまうので、梅酒のユニークな楽しみ方をご紹介します。梅酒といえばロック、水割り、ソーダ割りなどが定番ですが、意外とおいしいのが「牛乳割り」。甘味と酸味がまろやかになり、デザート感覚で楽しめます。梅酒を入れすぎると分離しやすくなるので、最初は少量からお試しを。アイスコーヒーに梅酒をプラスしても、ほのかな酸味が心地良い一杯に。浅草の老舗喫茶店「アンヂェラス」のメニューでもあります。私は梅酒1に対してブラックコーヒー3くらいがちょうどよかったです。また、梅酒のアルコール分を飛ばしたシロップは、ヨーグルトにまぜてもいいし、パウンドケーキの風味づけにも最適です。これなら子どもも食べられますが、しっかり沸騰させて完全にアルコールを飛ばしてから与えるようにしましょう。梅酒をはじめ、果実酒は未開封で保存状態がよければ、10年以上も持つこともあります。いまから子どもたちと一緒に梅酒を仕込み、成人を迎えたときにそれで乾杯できたらすてきですね。
2016年07月27日こんにちは、ライターの渦マキです。今回は発達障害児童の問題行動について、対処法をご紹介したいと思います。発達障害にはさまざまなタイプがあり、同じ障害でも特性の現れ方には個人差があります。発達障害児の多くは、 通常の学級に在籍して他の子どもたちと学習しています。ケースバイケースで子どもの行動の特徴を理解し、対処法を考えていくことが大切になってきます。おもに学校生活で多く見られる行動についての対処法を、いくつかご紹介します。●(1)教室を飛び出してしまう●教室を飛び出してしまう理由・外の様子が気になり衝動的に出て行ってしまう・他の子どもにからかわれて感情的に出て行く・与えられた課題が終わり、次に何をやるのかがわからず出て行く●ポイント一度感情的になるとなかなか収まらない傾向が強いので、それを無理に制止すると逆効果になってしまいます。気持ちが収まってから 出て行った理由を聞いてみましょう。●注意点・力づくで押さえない・教室を出て行くことを黙認しない(無視されていると勘違いする)・他の子どもたちを放って追いかけない●(2)質問に上手に答えられない●質問に答えられない理由・先生の質問を聞いていない・話したいことがうまくまとめられない・先生の話の内容を理解できない・吃音などでうまく話せない●ポイントうまく答えられない理由を把握することが大切です。質問の仕方を変えながら、子どもが質問内容をどれくらい理解しているか を把握します。長い質問をところどころで区切ってみて、「ここまでの質問がわかりましたか?」と確認します。●注意点・罰を与えない・「聞いていないのが悪い!」と叱らない・「はっきり言ってみて!」と強要しない●(3)体育が苦手●体育が苦手な理由発達障害児には、手足の強調運動 が苦手だったり、体の動かし方自体に問題のあったりする子どももいます。こんな運動が苦手です。・球技が苦手・なわとびがうまく飛べない・音楽にあわせて動作することが苦手●ポイント・できそうなところからやらせる(到達目標を下げてみる)・周りの子どもがからかったら厳しく注意する●注意点・ほかの子どもと比べたり、できないことを責めたりしない・スムーズに動けない原因をしっかり見極め、どのようなトレーニングが必要か導きだす----------発達障害の子どもたちは得意不得意に偏りがあります。まずは、その子どもがどのような特性か、どんな偏りがあるかを見極めていくことが大切です。【参考文献】・『ケース別 発達障害のある子へのサポート実例集 小学校編』上野一彦・月森久江(共著)●ライター/渦マキ(フリーライター)
2016年07月27日こんにちは。メンタルケア関係を中心に執筆しているメンタルケア心理士の桜井涼です。みなさんは、『起立性調節障害』 という病気をご存じでしょうか。わかりやすく言いますと、朝起きられない・頭痛がする・疲れやすい・午前中は体調が悪いのに夕方から元気になる、 といった症状を引き起こす病気です。これらの症状だけをみると、「怠けているだけではないのか?」「気持ちがたるんでいるからでは?」と考えてしまう人もいるかもしれません。しかし、これは自律神経の調節に障害が起きる病気なのです。そのことを多くの人に知っていただきたいと思い、書くことにしました。●起立性調節障害とは起立性調節障害は、最初に自律神経の調節がうまくいかなくなる病気と説明させていただきました。具体的には、交感神経(体を活動させる・覚醒させる)と副交感神経(体を落ち着かせる)の分泌がズレてしまう状態です。交感神経は朝に多く分泌するので活動がしやすくなります。副交感神経は夜に多く分泌するので、体を休め体の運動を抑制しやすくなります。この2つの分泌が少しずつズレていき、昼夜逆転してしまうような状態 になります。それで下記のような症状が起こるようになるのです。【症状と理由】・朝起きられない(全身への血流が維持できないため)・だるくて疲れやすい(血液による酸素や栄養供給が悪いため)・立ちくらみやふらつき(血圧低下で全身への血行が維持されないため)・夕方から元気になり夜眠れない(交感神経の活動性が下がってこないため)・動悸や息切れ(血流が悪く、頻脈になるため)・思考力低下や集中力低下(脳血流が悪くなるため)10~16歳の子どもがかかりやすいと言われています。その中を見てみると、小学生約5% 、中学生約10% とされています。【原因】・精神的なストレス(いじめや親の不仲、集団の中での立ち位置などの対人関係の問題など)・環境の変化(引っ越しやクラス替えなど)何らかの原因で長いあいだ心が緊張状態になる(ストレスにさらされる状態)と、自律神経のバランスが崩れて、さまざまな症状が心身共に現れます。自律神経がうまく働かなくなることで、『起立性調節障害』という病気を引き起こしてしまうのです。●改善を図るために小児科受診で検査をし、病気が発覚したあとに軽症・中等症・重症の診断が出てくることでしょう。どの度合いでも、生活リズムの改善 が必須です。生活リズムを整えることで一番最初に行うのが、早寝早起きです。最初のうちはすごく大変であることは明らかですが、リズムを正常に戻すためには必要です。体調不良でも昼間は極力横にならないようにすることが効果的と言われています。これは血流を全身に送るようにするためです。そして、1日3回の食事をしっかり取ることも大切です。栄養バランスのとれたものだと、循環を促したり体力がついたりして活動しやすくなります。日中は、散歩程度の運動が有効です。ゆっくり歩くことで血流を促すことにつながります。ただし、立ちっぱなしは下半身に血液が溜まってしまいます ので、注意しましょう。そして、ストレスの原因となっている事柄をカウンセリングなどで解消していくことも同時に行います。●病気であることを理解してあげることが本人の支えになる親からすれば、「朝は起きないし、午後は学校も行かないでゲームばかりしている」「とても病気に思えない」「仮病なのではないか」と思うかもしれません。しかし、体が病気になっているのだということを親が理解することが本当に大切です。親が理解を示すことで、治り方が変わり、症状の軽減につながります。「親に理解してもらえた」という安心感 が何よりの薬になると、私は思っています。中等症や重症になると、学校を遅刻したり欠席したりすることになります。そうなれば、学校から親に出席させるように言われることもあるでしょう。体がよくなるまでは登校できないことを学校側に知ってもらうことが、親の大切な役目になります。『起立性調節障害』の診断を受けたら、担当医に診断書をお願いし、学校側に提出しましょう。親だけでなく学校側も理解が必要です。●おわりに不登校の子どもたちの中にも『起立性調節障害』を起こしているのではないかと思われる人たちがいます。この病気は、頻度の高い疾患だからです。少しでも思い当たる症状があるならば、小児科を受診することをお勧めします。学校に行けないのは、体が病気になっているせいかもしれないからです。本人だって、「オレ(私)はなまけ者なのかも……」と思っているでしょう。それを親が「ただの仮病」「怠けているだけ」なんて言ってしまったら、症状は悪化します。「怠けている」なんて理由で片付けないであげてほしいと思います。一番つらいのは、本人なのですから。【参考リンク】・起立性調節障害 | 日本小児心身医学会()●ライター/桜井涼(メンタルケア心理士)
2016年07月27日その1ボタンの掛け違いは色で解決Upload By たっくんママパジャマのボタンを上下ずらさずにはめるのが苦手だった息子のため、ボタンが色違いのパジャマを見つけると、購入して家で練習に使っていました。ボタンとボタン穴が同じ色なのでこちらも説明がしやすく、色を組み合わせるだけでボタンの掛け違いを防げるのんで、息子も「掛け違いしないでできる!」という達成感を味わうことができたようです。小2の現在も、声かけをしないと、たまにずれることがありますが、「下からかけていこうね」と声かけすれば出来るようになってきました。余談ですが、トレーナーやズボンなど前後が分からない場合には、洋服に印をつけ、一目で「こっちが前だ」と分かるようにしました。私は、目立たないように糸でバッテン印を縫い付けましたが、他の方はワッペンをつけたりと色々工夫されていましたよその2左右がわからない時「間違いに気付かせる」工夫Upload By たっくんママ靴などを左右まちがえて履くと、足の形と合わずに違和感を感じる方も多いと思います。ですが、息子はその感覚が鈍いのか逆に履いても余り気にしていませんでした。そこで、左右を間違えないよう、上履きの内側に、左右を合わせると対になる目印に笑顔マークをマジックペンで書いてみました。「絵もいいね♪」と、息子もお気に入りです。ずぼらで不器用なわたしは簡単な絵を書くのが精一杯でしたが、目印としてはシールやワッペンなど色々な方法があるようです。 息子も絵を目印にして、左右を間違わなくなりました。上履きの外側にボタンをつけるその3見えなくて忘れるなら「見せて」解決Upload By たっくんママ小学校に入ると、忘れ物の多い息子は家へ持って帰るべきモノを学校に置き忘れることが増えました。特に困ったのが、筆箱の中身!鉛筆4本、赤鉛筆1本消しゴム1個というのが基本セットで、前日の夜に必ず持ち物を確認しているのですが、学校から帰っていざ筆箱を開けてみると、いつも何かが足りない状態でした。消しゴムがない、鉛筆が少ない、そしてなぜか息子自作の紙ふぶきが入っているなど色々ありましたが、中でも1番びっくりしたのは開けたら鉛筆1本だけという日もあったこと。息子に「帰りに忘れ物が無いか、持ち物のチェックをしてみて」と話しましたが、なかなかうまくいきませんでした。Upload By たっくんママそもそも、帰りの時間に持ち物をチェックするとき、わざわざ筆箱の蓋をあけないという事に気づき、自分でチェックできないならば筆箱の中が外から見えたほうが良いのでは?と考えました。外から見えやすい透明のケースを筆箱にしてみました。Upload By たっくんママ効果はテキメン!たまに鉛筆は学校に忘れてしまいますが、入っているものが一目で分かるのがよいのか、持って帰る回数が増えてきました。前はどうして持って帰れないのか、イライラして叱っていましたが、叱る回数も減って親の私も気持ちが楽になりました。ちょっとした支援で息子の自信につながる出典 : いかがでしたか?発達障害ゆえの、苦手なことはたくさんあります。そのなかで、視覚支援の力を借りて「できないをできるに変える」こともできます。できることが増えると自信につながるようで、息子の達成感や自己肯定感も高まったように感じます。1人でなんとかしなくちゃ!と悩んでも、いろいろな方法を見つけるのに限界があると思います。そういうときには、通われている医療機関や療育センター、保育園・幼稚園の先生方に相談して、プロの力をたくさん借りてみましょう。少しでも暮らしやすくなって、どうかママとお子さんの笑顔が増えますように!
2016年07月27日■1泣いてるよUpload By SAKURA■2お友達に会ったらUpload By SAKURA■3犬との会話Upload By SAKURA私たち夫婦は、娘のちょっとズレた発言にいつも笑わされています。子どもって本当にユニークですよね♪Upload By SAKURA
2016年07月27日発達性協調運動障害とは?出典 : 協調運動とは、手と手、手と目、足と手などの個別の動きを一緒に行う運動です。例えば、私たちがキャッチボールをする時、ボールを目で追いながら、ボールをキャッチするという動作を同時にしていますよね。他にも、縄跳びをする時、ジャンプする動作と、縄を回す動作を同時にしなくてはなりません。このような運動を協調運動と言います。発達性協調運動障害とは、日常生活における協調運動が、本人の年齢や知能に応じて期待されるものよりも不正確であったり、困難であるという障害です。別名、不器用症候群とも呼ばれていました。本人の運動能力が期待されるよりどのくらい離れているかは、通常「MABC-2」(Movement Assessment Battery for Children,2ndversion)や、「JPAN」(日本版感覚統合検査)と呼ばれる感覚処理行為機能テストなどのアセスメントテストによって評価されます。これらのテスト結果を参考に、医師が発達性協調運動障害かどうかを判断します。アメリカ精神医学会の診断基準である『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版テキスト改訂版)では以下のような診断基準になっています。A.協調運動技能の獲得や遂行が、その人の生活年齢や技能の学習及び使用の機会に応じて期待されるよりも明らかに劣っている、その困難さは、不器用(例、物を落とす、またはぶつかる)、運動技能(例、物を掴む、はさみや刃物をつかう、書字、自転車に乗る、スポーツに参加する)の遂行における遅さと不正確さによって明らかになる。B.診断基準Aにおける運動技能の欠如は、生活年齢にふさわしい日常生活活動(例、自己管理、自己保全)を著明及び持続的に妨げており、学業または学校での生産性、就労前及び就労後の活動、余暇、および遊びに影響を与えている。C.この症状の始まりは発達障害早期である。D.この運動技能の欠如は、知的能力障害(知的発達症)や視力障害によってうまく説明されず、運動に影響を与える神経疾患(例、脳性麻痺、筋ジストロフィー、変性疾患)によるものではない。発達性協調運動障害と運動能力出典 : 人間の運動には大きく分けて、粗大運動と微細運動があります。人間は、さまざまな感覚器官から得られた情報をもとに、初めは姿勢を保つことや寝返りといった粗大運動を習得し、次第に段階を踏みながらより細かい微細運動ができるようになります。粗大運動とは、感覚器官からの情報をもとに行う、姿勢と移動に関する運動です。粗大運動には、先天的に人間に備わっている運動と、後天的に学ぶ運動があります。寝返り、這う、歩く、走るといった基本的な運動は人間が先天的に持っている粗大運動能力です。一方、泳ぐ、自転車に乗るなどの運動は、環境的な影響や学習によって身につけると言われています。微細運動とは、感覚器官や粗大運動で得られた情報をもとに、小さい筋肉(特に指先など)の調整が必要な運動です。モノをつまんだり、ひっぱったり、指先を使って細かな作業、例えば、絵を書く、ボタンをかける。字を書くなどの運動があります。成長とともに、粗大運動から、より細かい微細運動ができるようになります。発達性協調運動障害のある人は、粗大運動や微細運動、またはその両方における協調運動が同年代に比べぎこちなく、遅かったり、不正確になります。子どもによって、乳幼児期の粗大運動には全く遅れや苦手はなかったが、幼稚園や、小学校に行くようになり微細運動を必要とする場面が増え、微細運動が顕著に困難である場合もあります。発達性協調運動障害のある子どもの年齢別の困りごと出典 : 発達性協調運動障害かどうかの判断は、協調運動が本人の年齢や知能に応じて期待されるよりも著しく不正確であったり、困難であるかどうかが重要なポイントとなります。以下で年齢別によく見られる傾向を紹介します。とはいえ、年齢が低ければ低いほど、得意な運動と困難な運動は子どもによって大きく差があり、人それぞれです。ですので、以下の例に当てはまるからといって、必ずしも発達性協調運動障害であるということではありません。子どもの様子を見つつ、気になるときは専門家に相談してみましょう。乳児期は、そもそも基本的な粗大運動を学び、獲得していく段階です。また子ども一人ひとりの運動機能獲得のスピードは違いますし、できること、できないことも個人差が大きい時期です。ですので、苦手なことがあっても心配する必要がない場合も多いと言えます。ですが、発達性協調運動障害と診断される子どもは、乳児期に以下の様な特徴が共通して見られる傾向があります。例:母乳やミルクの飲みが悪い、離乳食を食べるとむせる、寝返りがうまくできない、はいはいがうまくできない幼児期は、特に5歳を過ぎると、運動能力の個人差が縮まってきます。そのためこの時期に発達性協調運動障害と診断される場合が比較的多いと言えます。発達性協調運動障害のある幼児は以下のことが不正確であったり、習得が遅れていたり、困難な場合があります。例:はいはい、歩行、お座り、靴ひもを結ぶ、ボタンをはめる、ファスナーを上げる、平坦な場所でも転ぶ(転んだ時に手がでない)、トイレで上手にお尻をふく小学校に上がると日常生活、学習生活でより複雑で繊細な動作を求められる場面が増えます。そのため微細運動での協調運動障害が顕著に表れます。発達性協調運動障害のある子どもは以下のことが不正確であったり、習得が遅れていたり、困難な場合があります。例:パズルを組み立てる、模型を作る、ボール遊びをする、活字をますの中に入れて書く、階段の上り降りがぎこちない、靴ひもが結べない、お箸をうまく使う、文房具作業が苦手(消しゴムで消すと紙が破れる、定規をおさえられずにずれるなど)発達性協調運動障害の原因出典 : 発達性協調運動障害のはっきりとした原因は、まだわかっていませんが、いくつかの原因が検討されています。まず妊娠中、母親のアルコールを摂取、またはそれによる早産、低体重で生まれた場合、発達性協調運動障害を発症する確率が高いという研究があります。次に、ADHD、学習障害、アスペルガー症候群を含む自閉スペクトラム症との併発が非常に多いため、なんらかの共通する遺伝的要因があるのではないかと言われています。また、上記のような障害のある子どもは定型発達の子どもより、発達性協調運動障害を発症する可能性が高いと言われています。5歳から11歳の子どもでは、5~6%が発症します。また、女児より男児のほうが発症率が高いことが分かっています。『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版テキスト改訂版)発達性協調運動障害の診断と発達障害の関係は?出典 : 現在使われている精神疾患の診断基準は、アメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』5版テキスト改訂版)と世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)による診断基準があります。現在、最新の診断基準である『DSM-5』が主流になりつつありますが、医師や医療機関によってどちらの診断基準に準拠しているかは異なります。発達性協調運動障害における診断基準の違いは、『ICD-10』と『DSM-5』で異なる点があります。『ICD-10』では発達性協調運動障害は心理発達の障害に分類されるため、精神遅滞と知能指数が重要になります。『ICD-10』の診断基準では、明らかな精神遅滞(知能指数70以下)の場合、運動の困難さ、不器用さはその精神遅滞が原因によるものと判断されます。一方で精神遅滞のない広汎性発達障害の場合、発達性協調運動障害と併発し、両方の診断が下りる場合があります。『DSM-5』の診断基準では、発達性協調運動障害は神経症群に入るため、精神遅滞や知能指数との関係ではなく、純粋に発達性協調運動障害の症状に当てはまるかどうかが重要になります。広汎性発達障害(アスペルガー症候群)と発達性協調運動障害を併発することは少なくありません。『ICD-10』の診断基準では、両方の診断基準を満たしている場合、両方の診断が下ります。対人関係において、認知されたものを統合する際に混乱が起きコミュニケーションがうまくとれないというアスペルガー症候群の特徴が、運動機能面においても現れているのではないかと検討されています。『ICD-10』の診断基準では、子どもが知的能力障害を持っている場合、その知的能力障害のため運動能力が損なわれているとの見なされる場合もあります。しかし、その運動が知的能力障害を考慮してもなお、不器用であったり、不正確である場合は、知的能力障害と発達性協調運動障害の両方の診断が下ります。ADHDのある子どもがよくころんだり、物にぶつかったりしてしまうのは、ADHDによる注意散漫や衝動性に原因があるのか、それとも発達性協調運動障害によってなのかを注意深く観察する必要があります。子どもの運動に対する困難さ、不器用さは必ずしも、ADHDだけが原因、発達性協調運動障害だけが原因というわけではなく、両方が原因となっていることもあります。特にADHDの場合、発達性協調運動障害との併存確率は50%と非常に高いです。発達性協調運動障害とADHDは併存しやすいため、二つを併発している場合は、DAMP症候群(deficits in attention, motor control and preception/注意・運動制御認知における複合的障害)と呼ばれることもあります。発達性協調運動障害について相談できる機関出典 : 子どもの運動や動作の不器用さが気になったら、まず以下の3つのどれかに相談に行きましょう。市区町村ごとに設置された、地域の健康づくりの場です。保健師さんが常駐しており、子どもの発達に関する悩みの相談を受けてくれます。場合によっては医療機関や療育施設の紹介をしてくれます。子育て家庭の支援に特化している機関です。自治体運営や医療機関に委託運営されており、保健師さんまたは看護師さんが相談に乗ってくれます。中には、療育指導を実施している子育て支援センターもあるので、お近くのセンターに問い合わせてみてください。都道府県ごとに設置されており、児童福祉を専門とした機関です。医師、児童心理士、児童福祉士がおり、相談に乗ってもらえます。必要に応じて発達検査を行ってくれる場合もあります。また、全国共通児童相談所ダイアルがあり、189番にかけると、24時間365日いつでも児童福祉に関する相談を受けてくれます。発達障害者支援全般を行っている機関であり、都道府県・政令指定都市やその他法人によって運営されており全国に設置されています。お近くの発達障害者支援センターは以下のリンクより検索できます。発達障害情報・支援センター相談窓口情報ここでは、相談支援と発達支援を行っています。相談支援では子どもの相談はもちろん、その様子に応じて医療機関、療育機関の紹介、行政サービスの利用方法を紹介してくれます。発達支援では、医療機関、療育機関との連携を図りながら、家庭での療育方法のアドバイス、発達検査、発達状態に応じた療育計画の作成や具体的な助言をしてくれます。発達性協調運動障害への支援を受けられる機関出典 : 上記の相談先で紹介してもらった医療機関を受診しましょう。小児専門や発達障害専門の医療機関では療育も行っているところがあります。上記の相談先で紹介してもらった療育機関で療育を受けましょう。療育機関では子どもの成長や自立支援のための、医療、治療、育成、保育、教育を総合的に行っています。民間の療育機関は保険が適用されないため、各施設により費用は様々です。内容や療育に当たる方との相性もあるので、あらかじめ見学に行くことをおすすめします。発達性協調運動障害の支援・治療方法出典 : 作業療法は、作業(子どもの場合、主に遊び)などをして、複合的な動作をできるようにしていくものです。運動、日常生活、学習などの動作をスムーズに行えるようにするために、基本的な動作に加え、動きと動きの統合が必要な協調運動への支援を行います。発達性協調運動障害のある子どもは、一つ一つの行動の統合が苦手であることが分かっているので、作業療法は障害の改善に効果があるといわれています。東京小児療育病院みどり愛育園広義には高齢、障害などによって運動機能が低下した状態にある人々に対し、運動機能の維持・改善を目的に運動、温熱、電気、水、光線などの物理的手段を用いて行われる治療法です。特に運動による理学療法が発達性協調運動障害の改善に役立つとされています。別名運動療法ともいわれますが、理学療法に含まれない場合もあり、定義はあいまいです。理学療法士が行う運動を使った療育では、日常生活で必要な運動、行動を訓練し改善していきます。日本理学療法士協会家庭でもできること出典 : 家庭でもできることは多くあります。家庭で様々なサポートを行う場合は、まず、「こうするべき、こうあるべき」という先入観を捨て、子どもと一緒に楽しみながらやることが長続きの秘訣です。あくまで遊びの中で取り入れ、訓練、という位置づけにしないことも大切です。家庭で見られる困りごとの例としては、以下のような例が挙げられます。・手先がうまく使えていない・正しくお箸の使い方を何度も教えたけれど、なかなかお箸をうまく使いこなせない。・服のボタンをうまくはずしたり、かけたりすることができない。・文字を書くときに極端に筆圧が弱い、強い。上記のような困りごとに対して、考えられる不器用さの原因としては、・手の筋肉の動きをうまく制御できない・手元に注意が向いてない・手の動きと視覚の情報の連携が取れていないなどが挙げられます。これらを踏まえた上で、手で何かを握る経験や、握ったあとの状態を把握する機会を増やすことにより、手の筋肉に入れる力の制御を学ぶことができ、つまむ機能や握る機能が育っていきます。具体的に家庭で出来ることとしては、以下のような取り組みが考えられます。・ブランコやアスレチックで遊び、どのくらいの力で自分の体重を支えれれるようになるのかを学ぶ。・コイン遊びを通して、コインを握る、つまむ、入れるという動作を経験する。いろんな指でコインをつかむことで指の力の入れ加減を学ぶ。・粘土で遊び、粘土の形を変形させたり、細かい作業を行うことで、感覚の加減を学ぶ。ここで紹介した方法はあくまで一例であり、他にも様々な方法があります。また、家庭でできるこうした取り組みも、すぐに効果が表れるとは限りません。ゆっくり時間をかけて、楽しみながらやっていきましょう。 コラム粘土遊びは子どもの脳が活性化する!?楽しく創造力を伸ばす、3つの魅力とは?乳幼児期の感覚統合遊び発達障害の子の感覚遊び・運動遊び 感覚統合をいかし、適応力を育てよう1まとめ発達性協調運動障害は、一つ一つの運動を関連づけたり、統合することが困難な障害ですが、運動の得意不得意はどんな子どもにも見られるため、ただの「不器用な子」ですまされる場合も少なくありません。しかし、発達性協調運動障害のある子どもが見過ごされ、必要な支援を受けられないままでいると、その子どもが集団に適応することが困難になることもあります。たとえば、運動能力を中心とした遊びは、子どもたちの社会で周囲との関係を構築するために重要な役割を果たします。また授業での運動課題に取り組む場面では、その子ども自身の評価を著しく下げることがあるかもしれません。子どもが発達性協調運動障害かどうか心配な場合は、早めに相談機関に相談し、必要に応じて専門家の支援を受けながら、家庭でできる工夫を行っていきましょう。お子さんが楽しめるペースや方法で、出来ることを少しずつ増やしていけば、自信にもつながり、学校生活へも良い影響が出ることでしょう。
2016年07月27日幼稚園からのおたより。そのプリントの数々は私の天敵で…Upload By モンズースー子どもが幼稚園や保育園へ通いだすと、園からよくプリントを受け取りますが、私はこれらの管理が大の苦手でした。元々整理整頓が苦手で手帳も持てなかった私。ADHDと自覚してからは、どうにか手帳を使うようになりましたが、細かい行事を毎回記入するのはやっぱり苦手。2人の息子の行事やプリントの多さに対応できず、ミスが続いてしまいました。家のカレンダーに書いたり、スマホのアプリを利用したり、アドバイスを頂いて色々実践してみたのですが私に合う方法が中々見つからず悪戦苦闘の日々…悩む私を救った100均の万能グッズ!Upload By モンズースー最近では100円均一などでもよく見るマスキングテープ、通称マステです。Upload By モンズースーUpload By モンズースープリントなどの配布物は、メモをとるよりその紙自体を貼るのが一番簡単でミスも少ないので、マステで手帳や壁にそのまま貼るようになりました。病院の予約券も同じ。手帳などにそのまま貼れば忘れません。テープなので綺麗にはがせない材質の紙もありますが、大体は綺麗にはがせるので、はがして学校や病院に提出も可能。予定やプリント管理が苦手な私でも、これで忘れ物を減らすことができました。…よし!
2016年07月22日わらにもすがりたい母親の心境Upload By かなしろにゃんこ。息子は、家事をしていて少しでも音を立てるとすぐに昼寝から目覚めてしまう子でした。起きたとたん大声で泣きだし、足を激しくバタバタします。息子の鳴き声がヒステリックに感じてイヤだった私は、毎日音を立てずに家事をしていたのですが、それがとても疲れました。この大泣きは私が息子の側から離れるときも、抱っこから降ろすときもあり、「この子は一生抱っこしていなきゃならないのかも…」と思ったくらいです。今考えると、抱っこから降ろすと泣くのは、乳児期に自分で好きな場所に移動できないため、つまらなかったのが原因なのではないかと思います。夫は「疳の虫が強いんだよ、漢方を飲ませて様子をみよう」と言うので市販の漢方を与えてみましたが、息子の育てにくさは変わらず、なんとか楽にならないものか?という悩みは消えませんでした。よそのお宅の育児が楽しそうで輝いて見え、「あのお宅の育児は楽なのかな?幸せなのかな?」とぼんやり考えることも。義母の時代にあった、民間療法の話。あるとき、義母から「疳の虫が強い子の虫封じ」の話を聞きました。「昔は民間療法で疳の虫の強い子は虫封じをしてもらったりしたのよ」と義母は笑いながら話すのです。夫も育てにくい乳幼児だったようで、義母は困って地域に住んでいる、あるお婆さんを訪ねたそうです。「そのお婆さんは息子の身体から虫を本当に出したのよ!私ね、この目で見たの!にゅる~ってなんか出てきたんだから」本当かな〜と疑う私に義母は「でも、お婆さんは亡くなってるかも、30年前の話だから!でもね、そのあと気性の荒い息子が少しだけマシになったのよ!」と教えてくれました。精神的にも追い詰められていた時期、あのころの育児が1番キツかった。育てにくい子が少しでも穏やかになってくれるのならば眉唾な話ではありますが、民間療法だってなんだってすがりたくなる気持ちになるものです。それほど発達障害がある子の母親は、心もくたびれてしまうのですね…。さて、その「虫封じ」ですが…いったいどんな内容だったのだろう?とちょっぴり気になります。(笑)
2016年07月17日新生活の一番のネックは「人の名前を覚えること」Upload By 鈴木希望就職、進学、転居、転職―新生活を始めるとき、皆さんが1番気がかりなのはどんなことですか?アスペルガーとADDを持つ私の頭にまず浮かぶのは「人の顔と名前を覚えること」です。1週間毎日顔を合わせている人に「初めまして」と挨拶してしまうことはザラ。学校や職場で顔を合わせていた同級生や同僚が私服になった途端、いったい誰なのかわからなくなってしまうほどです。短期記憶力が弱いのはもちろん、軽度の相貌失認があるのかもしれません。相手に関心がないから覚えられないというわけでなく、興味がある人のこともなかなか覚えられないからこそ辛いのです。同じくアスペルガーでADDの息子も、やはり人の顔と名前を覚えるのが苦手。意気投合して仲良く遊んだ相手でも、顔と名前を1度で覚えられることはかなり稀です。保育園のころも、10人前後のクラスメイトを覚えるのに何ヶ月もかかっていました。人の顔が覚えられない「相貌失認」(失顔症)について知ってください記憶には苦戦、でもなぜか余裕の表情。Upload By 鈴木希望さて、4月から小学校に入学。クラスの人数は倍以上、20人超になります。それについて不安はないのかと何となく聞いてみたところ、「まあ、何とかなるし、何とかするしかないでしょう」と、頼もしいような呑気なだけような言葉が返ってきました。息子が余裕の表情を見せていたのもあり、私も大して心配はしていませんでした。入学後、クラスメイトの顔は存外早く覚えられた模様。問題は名前。「学校にいるときは名札があるから大丈夫なんだよねー。でも帰ってくると忘れちゃうんだよなー」と、苦戦気味の模様。それでも、「保育園のときだって、すぐにではないけど覚えられたんだし、まあ大丈夫だよ」息子がどう「大丈夫」なのかとワクワクしていた私は約1ヶ月後、予想外の対策方法を知ることになるのです…。その手があったか!こだわりを活かした記憶術Upload By 鈴木希望そしてゴールデンウィーク直前のある日のこと。学校から帰宅した息子は、満面の笑みで私にこう告げたのです。「今日は○年○組○番の子と●年●組●番の子と3人で帰ってきたよ!」そう、息子は数字にこだわりを持つ男。そこを活かしてまずは学年と組、番号を覚える作戦に出たのです!「人を番号で呼ぶって、お前は看守か!!!」私は大笑いしながら突っ込んでしまいましたが、「その手があったか!やるじゃん息子!」と心の中では感心しきりでした。しばらくすると「○年○組○番の子」という呼び方は「○年○組○番の(フルネーム)君」という呼び方に変わり、今では学年と組、番号を名前と並べて呼ぶことはほとんどなくなりました。スタンダードな記憶術に私が感激した理由。キーワードと関連付けて何かを覚えるというのは、昔からあるスタンダードな記憶術のひとつで、決して目新しいものではありません。私が感心したのは、息子が自分なりに、しかも特性を活かしてその方法を見つけ出してきたことです。「いやー、お前さんすごいな!天才だな!!」と、私が感嘆していたところ、何か勘違いしたのか「○○君は何年何組何番、●●ちゃんは何年何組何番で…」と、既に名前を覚えている友達の学年と組、番号を報告してくるようになりました。(笑)「私、正直君の友達の番号にはあまり興味がないんだよね」と息子に伝えたのですが、「数字を覚えて、のん(私の呼び名)に伝えるのが楽しいから、これからも言わせてよ!」とのことなので、日々報告を受けています。自分で対策を見つけてきた息子だから、これからもきっと大丈夫。Upload By 鈴木希望そうそう、友達の呼び名がいつまで経ってもフルネームなので、その辺について質問してみたところ、照れたように笑ってこう答えてくれました。「どこまでが苗字でどこからが名前か、まだ時々迷っちゃうんだよね」「あー、『三国志』読んでてさ、“諸葛亮公明、どこで区切ったらいいのかわからない!”みたいな感じ?」「それそれ。あ、ハルは『三国志』好きだし、諸葛亮孔明をどこで区切っていいのかはわかるよ!」「いやいや、今のは例えだって。で、それはどうするの?」「うーん、これも何とかなるし、何とかするしかないよね!」息子なら、また息子らしい、息子なりの対処方法を楽しみながら見つけるような気がしているので、私はただニヤニヤしながらその報告を待つばかりです。
2016年07月17日●連載の目次は こちら から●発達障害についての基本的な知識を持っておくことで、当事者(母や子ども)は、随分と楽になる。それは私が実体験を通じて感じていることだ。今回は、私が質問されて答えに困った「発達障害の診断」について、軽度の発達障害クリニックの院長である、司馬理英子先生にお話を伺った。■診断はレッテルを貼るのではなく、対処法を知るため私は息子を支援学級に通わせていたので、ママ友から子育ての相談を受けることがある。そのときに、よく聞かれることは、「発達障害の診断を受ける必要ってあるの?」ということだ。発達障害は病気ではなく、「脳の発達のかたより」。そうだとすれば、「診断は本当に必要なのか?」と思ったり、「わが子に、発達障害のレッテルなんて貼りたくない」と思ったりするのは当然のことだと思う。「診断は子どもにレッテルを貼るためのものではなく、それによってどんなことで困っているのかを教えてくれるものです」(司馬先生)診断は、いわば大きな方向つけ。「これから何をするのか?」「どんな対処方法があるのか?」を考え始めるスタート地点の指標のようなものだ。もちろん、わが子を育てる作戦(司馬先生は、よく“作戦”という言葉を使われる)を立てるのに、診断を受けるだけでは充分ではない。 ただ、ADHDといってもどんなタイプなのか、その子の能力のどんなところにどう影響しているのか、それらがわかればわかるほど作戦(対策)は立てやすくなる。また診断することによって、子どもが専門家から的確なアドバイスを受けられるほか、親が本や勉強会などから、ピンポイントで情報を得ることもできるようにもなる。■診断を受けるための一般的な経路「発達障害かどうかが気になるのだけれど、誰にどんなふうに相談すればよいかわからない」これも、よく相談される内容だ。一般的には、まずは学校の担任の先生に相談するのが良いだろう。学校には、週に1~2回ほど来て、子どもや保護者の相談に乗ってくれるスクールカウンセラーという職種の人もいる。また、自治体の教育相談所や教育センターなどで、相談業務を行なっていることもある。最近では、発達障害の診断や治療の経験がある小児科の先生も増えているので、かかりつけの医院の先生に相談してみてもよいだろう。■大切なのは、早く気づいて二次障害を防ぐこと私が相談を受けたときに必ず言っていることは、「発達障害の子を育てるのは、すごく大変だし、一緒に生活するのはしんどいよね。でも、発達障害の子を育てる上で、一番大切なのは、二次障害を防ぐことだと私は思っている。診断を受けることで、子どもの特徴に早く気づければ、必要とする支援がわかり、より二次障害を防ぎやすくなると思うよ」ということ。二次障害とは、発達障害に対する対応が十分に行われないために、二次的に起こる問題のことだ。たとえば、学校に行くのをイヤがったり、学校に行けなくなったり、うつ状態になって元気がなくなったり、親にひどく反抗したりというのが二次障害だ。発達障害の子は何かにつけて叱られることが多く、「ぼく(私)はダメなんだ…」というように自尊心が低下しがち。いったん二次障害が起きると、もともとの発達障害そのものへの対応以上に、扱いが難しいこともよくあると言われている。次回は、最終回。「発達障害の子育ては疲れます」です。
2016年07月17日●連載の目次は こちら から●ひとことで「発達障害」と言っても、その状態はさまざま。基本的な知識を持っておくことで、当事者(母や子ども)は、随分と楽になる。今回はさまざまな発達障害について、軽度の発達障害クリニックの院長である、司馬理英子先生にお話を伺った。「 発達障害って、何? 」で、発達障害には、おもに以下の3つがあるとお伝えした。今回はその内容を、もう少し詳しく見ていこう 1.不注意・多動性・衝動性が目立つ 「ADHD(注意欠如・多動性障害)」2.人との関わりが難しい「アスペルガー症候群」など「自閉症スペクトラム障害」3.特定の領域の学習がうまくいかない「LD(学習障害)」「発達障害のわが子」と向き合う本(司馬理英子/大和出版) ■ADHD(注意欠如・多動性障害)とは?不注意・多動性・衝動性を特徴とする。たとえば、忘れっぽくて集中力が乏しく、宿題などをしているときに気が散りやすい。落ち着きがなく、いつもそわそわしていて、順番を待てずなんでも我先にとやりたい。こんなふうに、年齢に応じた「注意力や行動・衝動などのコントロール」がうまくできない。そのため、毎日の生活習慣や学校での活動を行うのに苦労をする。■「アスペルガー症候群」など「自閉症スペクトラム障害」とは?「アスペルガー症候群」を含む「自閉症スペクトラム障害」の特徴はおもに「人との関わりの困難さ」にある。言葉やしぐさなどコミュニケーションをする力にかたよりがあり、興味を持つ範囲が狭く、興味のない活動には取り組めない。こうしたこだわりの強さがあるため、毎日の生活がスムーズに進まないこともある。「広汎性発達障害」や「自閉症」も「自閉症スペクトラム障害」に含まれ、なかでも言葉の遅れが見られないものは「アスペルガー症候群」と呼ばれている。 ■LD(学習障害)とは?LDでは特定の学習能力の困難さが見られる。全体的な知的発達に遅れがないのに、特定の学習能力での遅れが、小学校の低学年では1年程度、高学年では2年程度見られる場合に診断される。文章を読むことが困難な状態を「読字(どくじ)障害」、鏡文字が多く見られ、漢字や作文などを書くことに関する遅れを「書字(しょじ)障害」、計算または文章問題など算数の学力がほかの科目に比べて低い場合「算数障害」と言いわれる発達障害は決してまれなものではなく、多くの子どもにみられる。ADHDは5%、アスペルガー症候群などの自閉症スペクトラム障害の子どもは1~2%、LD(学習障害)は10%程度いると言われている。わが子に、こういった傾向を感じるとしたら、まずは本などから子どもへの対応の仕方を学んでみるのも一手だ。たとえば、『「発達障害のわが子」と向き合う本』(司馬理英子/大和出版)は、「ADHDの子どもの特徴」「ADHDの子育てのヒント」「アスペルガー症候群の子どもの特徴」「アスペルガー症候群の子どもの子育てのヒント」と、こどもの傾向別に説明と対処法の項目が分かれており、とても読みやすい。本などから得た情報で、少しでも子育てが楽になったら、ハッピーなことだと思う。また、本を読むことが、子どもへの支援を次の段階に深めるキッカケになるかもしれない。<次回は、「発達障害の診断を受けることは必要?」です。>
2016年07月17日素晴らしい才能も時には…ADHDの長男はほっとけばいつも動いています。「多動」とは良く言ったもので、本当に動きが多い!外に遊びに行けば、4~5時間ぶっ通しで走る!登る!跳ぶ!その上、全く疲れを見せません。私は長男のそんな動きと体力を、素晴らしい才能だと思っています。しかし、これほど動く子にとって長時間じっとしていることは非常にハードルの高いもの。けれど社会に出れば、たくさんのそういう場面を避けては通れません。いよいよ始まった卒園式の練習ある日、幼稚園の担任の先生から…Upload By ラム*カナ「今週から卒園式の練習が始まりまして、じっとしていなきゃいけない時間が増えるので、きっと息子くんストレスがたまっちゃうと思うんです。もし、息子くんから『やりたくない』とか『つらい』という声があったら、教えてください。」と言われました。卒園式の練習内容は、卒園証書を受け取りに行く練習以外はほぼ「静かに座る練習」なんですよね。これは、長男がもっとも苦手とする練習でした。(笑)しかも、静かに座る時間は1時間以上。それを卒園式当日までの1ヶ月以上こなさねばならなかったのです。今までも、幼稚園で行なう「やりたくないこと(運動会の練習やお遊戯会の練習など)」はたくさんあったけど、それでも動きのあるものだったから、どうにかできていました。ですが、卒園式の練習ばかりは親の私も「うへ~」と思うほど辛そうなものでした。どんな気持ちか本人に聞いてみたその日の帰り道、長男に聞いてみました。Upload By ラム*カナUpload By ラム*カナUpload By ラム*カナか、掛け算?!なんていい時間の潰し方を考えたんだ!息子の発想に私は感心してしまいました。3~4歳の頃、やりたくないことがあれば泣いたり逃げたりしていたこの子が、自分なりに「やりたくないことをやり過ごす方法」を考えたことに、純粋に感動したのです。現実逃避という荒業ではありますが。(笑)この時間潰しに掛け算をしていることは担任の先生に伝えました。「本人なりにじっとしている術を考えているみたいなので大目に見てくださると嬉しいです」ということも。ただ、好きなことに集中しすぎると立つタイミングなどを聞き逃すこともあるかも、と担任の先生は心配されていましたが「うまく声掛けしてみます」と言ってくださいました。これから社会に出て、大人になる過程にはたくさんの試練がまだまだたくさんあるでしょう。でも、今回のように自分なりに考えながらいろいろな場面で切り抜ける力を身に付けて欲しい。そう願う私なのでした。
2016年07月16日●連載の目次は こちら から●正しい自己認識を持つこと。つまり、発達障害についての基本的な知識を持っておくことで、当事者(母や子ども)は、随分と楽になる。それは私が実体験を通じて感じていることだ。そこで、「発達障害って、何?」という基本的な疑問について、軽度の発達障害クリニックの院長である、司馬理英子先生にお話を伺った。■発達障害は「しつけ」や「育て方」が悪いわけではないほかの子に比べ、手のかかるわが子。「やっぱり、私の育て方が悪いのかしら?」と思ってしまうママもいるだろう。「夫に『子どもを甘やかすからだ』と言われる」「忙しくて充分にかまってあげられないからかな?」など、子育てがうまくいかないと、ママは自分を責めがちだ。けれども、「発達障害は、しつけの問題ではありません。多くの場合、生まれつきのものです」と、司馬先生は言う。生まれつきといっても、もちろん、生まれてすぐわかるわけではない。たとえばADHDなら幼稚園や保育園くらいまでは「活発で元気な子」という印象で、小学校に入り、生活の中心が勉強になってくると特徴が目立つ。また、アスペルガー症候群の場合は、赤ちゃんの頃から手がかかる子もいるが、「ちょっと違和感があるな」くらいの子も多い。だからこそ、難しいのだと思う。なぜなら、早い段階から障害に気づければ、親の側も「そういうものだ」と思い、ある意味、納得して育てられる。けれども、「ちょっと変わっているかな?」くらいだと、子どもの問題なのか、親側(しつけ)の問題なのか? というあたりで、ママがひとりで問題を抱え込み、グルグルと悩んでいることも多いからだ。■発達障害は病気ではない 前回 でも話したとおり、「発達障害とは、脳の発達のかたより」だ。発達障害の子どもは、すべての能力に問題があるわけではなく、“特定のある部分の発達だけ”がほかの子どもに比べて遅れている。「発達障害は、病気というわけではありません。脳の発達にかたよりがあったとしても一生がそれで決まってしまうというものでもありません」(司馬先生) ■わが子の特徴に気づいて、必要なサポートをする一般的な発達をとげている子ども(定型発達の子ども)に比べて、ある能力の発達のかたよりが目立っていて、そのために子どもが「生きづらさ」を抱えている場合、学校や家庭での状況、発育歴などのさまざまな情報を元に、発達障害かどうか?を見てみよう。たとえば、「忘れ物」。ADHDの子によく見られる忘れ物は、どの子も多少あるものだが、毎日いくつも忘れものをしていれば、そのために困ることがたくさん出てくる。個性といって片付けてしまうには困難さが際立っている場合、発達障害の診断がつけられる。「発達のかたよりに気づき、早く対処することによって、日常において困ることをずいぶんと減らすことができます」(司馬先生)発達のかたよりは、裏を返せば長所となる場合も少なくない。かたよりに早く気がつけば、子どものいい部分を生かしたり、得意な分野をしっかり伸ばしたりすることに、親子でエネルギーを使うことができる。「だからこそ、早めにわが子の特徴に気づいて、必要としているサポートをしていくことが大切なのです」(司馬先生)次回は、「発達障害のさまざまな種類」を少し詳しくみていこう。
2016年07月16日●連載の目次は こちら から●正しい自己認識を持つこと。つまり、発達障害についての基本的な知識を持っておくことで、当事者(母や子ども)は、随分と楽になる。それは私が実体験を通じて感じていることだ。そこで「発達障害って、何?」という基本的な疑問について、軽度の発達障害専門クリニックの院長である、司馬理英子先生にお話を伺った。■発達障害は、いわば「発達のかたより」育てにくいわが子。私の気にし過ぎかもしれないけれど、ちょっと心配。ママ友に相談すると「うちもそうよ。大丈夫」なんて言われて、「そうかな?」と安堵する。けれども、また別の日には、「これって、やっぱり普通じゃないよな」と思う。「でも、これはこの子の個性で、私の我慢が足りないのかもしれない」。そんな無限のループを、頭の血管が擦り切れるほど何年もグルグルと考え続けていた私。そうした状況にあった私に、司馬先生の発達障害の説明は、非常に腑に落ちるものだった。まず、発達障害の定義だが、「発達障害とは、いわば“発達のかたより”です。最近の考え方としては、全体的な知能の発達には問題がなく、以下のような特徴がある子どもを発達障害としています」(司馬先生)1.不注意・多動性・衝動性が目立つ 「ADHD(注意欠如・多動性障害)」2.人との関わりが難しい「アスペルガー症候群」など「自閉症スペクトラム障害」3.特定の領域の学習がうまくいかない「LD(学習障害)」「発達障害のわが子」と向き合う本(司馬理英子/大和出版) 発達「障害」と書くと、「障害」という言葉から重々しい感じがするが、症状の度合いは重いものから、「診断名をつけるほどではないけれど、特徴が見られる」という軽いものまで幅がある。 ■「発達障害の特徴があるかもしれない」という見方をしてみるママたちがいちばん気になるのは「うちの子が発達障害なのかどうか?」ということかもしれない。けれども、発達障害であったとしても、なかったとしても、子育てがうまくいかないのであれば、子どもの特徴を把握し、ちょっとした工夫をすることで、日々の生活は随分と楽になる。つまり、「もしかしたら発達障害の特徴があるかもしれない」という見方をしてみるのだ。■子どもの特徴に合わせた丁寧な関わり方司馬先生が教えてくださった「発達障害の子育て法」は、子どもの気持ちを尊重し、子どもの特徴に合わせた、子どもへの、より丁寧な関わり方だ。発達障害のない子どもは、さほど手をかけなくても自力で成長していけるが、それでも関わり方を丁寧にしてやることに越したことはない。つまり、子どもが発達障害でなくても、ちょっと似た部分はあるけれど診断されるほどではないというレベルでも、発達障害であっても、同じように使っていける子育て法なのだ。「発達障害かもしれないと怖がってばかりいないで、その子の特徴を見極め、その子に合わせたオーダーメイドの子育てしてみては?」というのが、司馬先生からの提案なのである。<次回は、「発達障害は、“しつけ”の問題なの!?」です。>
2016年07月16日梅雨から夏にかけて気をつけたい病気といえば、熱中症や食中毒。しかし、実は鬱病にも注意が必要です。この時期になりやすい鬱病は季節性感情障害(SAD)で、「季節性鬱」とも呼ばれています。一年間の特定の時期に気分が落ち込む病気で、「夏季鬱」と「冬季鬱」の2種類があり、ストレス等のなんらかの原因がなくても陥ってしまうもの。アメリカではSAD 患者は 1,000万人、冬季鬱は 1,500万人と推定されており、冬に多い病気でしたが、最近では夏に症状が出る人も増えているそうです。世界的に季節が移り変わる時期や、降水量が多い季節は自殺率が高いという研究もあり注意が必要です。今回は楽しく夏のスタートを切るためにも、この季節性の鬱について学んでおきましょう。■季節性鬱の症状不眠や食欲の低下、頭痛や吐き気などの症状が最初に現れ、やがて「気力が湧かない」「集中できない」「家事や仕事・外出したくない」という気持ちになってきます。冬の季節性鬱に過食、過眠の傾向が強いのに対して、夏の場合は食欲不振、不眠が目立ちます。また、夏の季節性鬱は夏バテと勘違いしやすい症状がそろっているため、注意が必要です。■季節性鬱の原因季節性鬱の原因ははっきりとわかっていませんが、脳内のセロトニンが不足するためではないかといわれています。セロトニンは心の安定に不可欠で、これが不足すると情緒不安定になります。セロトニンは日光を浴びることで生成されるため、曇りがちな梅雨の時期や、日照時間の短い冬に不足しやすくなります。梅雨~夏は湿度が高く、気圧変化や暑さが原因でストレスをためやすく、不眠にもつながり、自律神経のバランスも壊しやすい季節です。自律神経のバランスが悪くなると鬱の症状が出やすくなります。■季節性鬱の対策(1)規則正しい生活をする自律神経を乱さないためには、規則正しい生活が必須です。しっかりと朝寝て夜起きる生活を心がけてください。朝日を浴びることでセロトニンも生成されるので、朝起きたらカーテンを開けましょう。食事は、暑くても冷たいものばかり摂取するのはご法度。身体を冷やさないように温かいものを食べる必要があります。セロトニンをつくるにはトリプトファンとビタミンB6が必要なので、これらを多く含む大豆や赤身の肉を食べるといいでしょう。暑くて外出せずにいると、日光に当たらないためセロトニンが生成されません。朝の涼しい時間に散歩等の軽い運動を習慣にするといいでしょう。ただし、熱中症には注意してください。(2)エアコンの風を弱めに調整してみよう暑いからといって、エアコンの設定温度を低くしすぎないように注意が必要です。外と室内の温度差が激しいと、自律神経が乱れ、夏の鬱になるリスクが高まります。外気との温度差をなるべく抑えるためにも、設定温度は28~29度くらいにし、ときどき窓を開けましょう。オフィスや電車内などの房調整ができない場所では、パーカーを羽織ったりブランケットを使用するといいでしょう。就寝前はタイマーの設定も忘れずに。*梅雨から夏にかけては、心身ともに気を使わなければいけない季節。楽しく夏を過ごすためにも、いまから生活を見なおしておきましょう。(文/堀江くらは) 【参考】※夏の鬱 ストレス解消には?-ケータイ家庭の医学
2016年07月15日「発達障害の原因分子の発見」という研究成果発表が話題に出典 : 月5日、大阪大学が「神経発達障害群の染色体重複による発症の機序を解明-注意欠如・多動症などの神経発達障害の新治療法に光-」というプレスリリースを発表し、日経新聞をはじめとしたメディア各社が報じました。ADHDや知的能力障害、自閉症スペクトラムといった発達障害は、特定の染色体が重複して存在すると引き起こされるということを、大阪大学の山下俊英先生(分子神経科学)のチームがマウス実験で突き止め、7月5日付で英科学誌「Molecular Psychiatry」に発表したニュースです。出典 : 記事を読むだけでは専門性が強く、理解が難しい部分があります。そこで、今回の研究を実施した先生方にインタビューを行い、その内容をわかりやすく解説していただきました。お話をしてくださったのは、今回の発見をした研究チームの、大阪大学大学院医学系研究科分子神経科学教授兼大阪大学大学院生命機能研究科教授の山下俊英先生と、 兵庫医科大学解剖学講座神経科学部門准教授の藤谷昌司先生です。この記事では、お二人のお話を交えながら、今回の研究発見の背景や内容、今後どのように実用化されていくのかなど、噛み砕いてお伝えしていきます。発達障害の原因について、わかった事は?出典 : 今までの研究成果では、発達障害が染色体の一部分の重複により生じることがわかっており、その領域が「16番染色体の16p13.11領域」だということまでは特定されていました。ですが、詳細なメカニズムまでは解明されていませんでした。今回の山下先生・藤谷先生の研究では、マウス実験を通じてそこから大きく3つの発見がありました。①16番染色体の16p13.11領域の中に、マイクロRNA484が存在する。②16p13.11が重複することで、マイクロRNA484が増加する。③マイクロRNA484が増加すると、脳機能の発達に異常をきたす。(発達障害を引き起こしうる)発達障害の原因分子の1つである、マイクロRNA484が発見され、さらに、マイクロRNA484が要因となる発達障害の発症メカニズムが解明された、というのが今回の研究成果です。具体的な研究方法は、公共のデータベースより得られた患者情報を元に、染色体の重複部位の中の遺伝子に着目し、それらの遺伝子の発現・働きをマウスの脳内で明らかにしました。さらに、BACトランスジェニックという方法を用いて、ヒトの染色体の重複部位をマウスゲノムに組み込み観察し、神経新生異常と発達障害の症状を確認するというものです。Upload By 発達障害のキホン発達障害の発症メカニズムとは?出典 : 領域が重複することで、16p13.11領域の中にあるマイクロRNA484が増加します。すると、プロカドヘリン19蛋白(たんぱく)の機能を過度に減らしたり弱めたりしてしまい、プロカドヘリン19蛋白のバランスが崩れます。プロカドヘリン19蛋白は脳の発達に重要な役割をはたしており、そのバランスが崩れることで、異常な神経回路が構築されてしまいます。その結果、神経発達障害が発症するのです。山下先生、藤谷先生は、この一連の流れ、つまり、発症メカニズムを解明し、その過程でマイクロRNA484が原因分子であると発見したのです。Upload By 発達障害のキホンマウス実験による研究成果、人間への応用可能性は?出典 : 今回発表された研究成果は、マウスを使った実験に基づくものでしたが、人間にも同様の発症メカニズムがあると言えるのでしょうか。この質問に対する山下先生、藤谷先生のご回答ですが、①ヒトの遺伝情報を元に研究している。②ヒトの遺伝子をマウスに入れて異常がおこるか確認している。ということから、人の発達障害に対しても応用可能性が高いと考えることができるとのことです。発達障害の原因解明、気になる今後の治療法開発は?出典 : 発達障害の要因分子マイクロRNA484と発症メカニズムを解明した今回の研究ですが、原因解明は今後の治療方法開発にどの程度貢献するのでしょうか。山下先生・藤谷先生は以下のように答えてくださいました。「発達障害という病態に関わる分子はおそらくたくさんあります。それらの分子が、どのように働いて、脳の機能異常をきたすのかということを理解しなければなりません。本研究成果は、ほんの小さなピースです。膨大な数の小さなピースを組み合わせていくことで、発達障害の全貌が少しずつ明らかになり、治療開発の戦略が生まれてくるのではないかと考えます。」今回の研究成果は一つの原因分子とメカニズムの発見となりましたが、すぐに発達障害の治療に役立つというわけではないようです。しかしながら、こうした小さな発見の積み重ねが、医学のレベルを進歩させ、やがては新たな治療法の開発につながっていくと期待されます。今後の研究の展望について出典 : お二方とも、発達障害の治療に役立つであろう研究を今後も実施していく方針のようです。山下先生は、発達障害に関連する様々な分子に着目し、それらの機能を明らかにし、動物モデルで神経回路の構築と症状を検査していくという方法で、発達障害とは何かという問いに答えていくための基礎研究を進めていくご予定です。藤谷先生は、兵庫医科大学の准教授として、今後は、患者さんのiPS細胞から作った脳細胞を作成し、神経の分化異常に作用する薬剤を探索しようと計画しています。そして、発達障害のモデル動物を用いて薬剤の効果を確かめるといった研究を進めるご予定です。また、山下先生、藤谷先生から発達ナビ読者のみなさんへのメッセージもいただきました。「発達障害は、現在の神経科学の最も重要なトピックスの一つとして、急速に研究が発展しています。それらの中から、治療開発に役立つ研究が、一日も早く出てくることを祈念しています。」編集部としても、今後の先生方の研究に注目していきたいと思います。大阪大学 大学院医学系研究科/生命機能研究家 分子神経科学神経発達障害群の染色体重複による発症の機序を解明|大阪大学ADHDなどの原因、特定遺伝子の重複阪大解明|日経新聞 電子版 chromosome 16p13.11 microduplication causes hyperactivity through dysregulation of miR-484/protocadherin-19 signaling|Molecular Psychiatry
2016年07月15日