2020年7月4日 11:00
遠隔診療で広がる新型終末医療「最期の瞬間を故郷の家族と」
余命は半月、もって1カ月と宣告された。
姉の静江さん(仮名)が病院に駆けつけた。高齢の両親は共に足が悪く車椅子で、沖縄を出ることができなかった。幹雄さんは、「最後に沖縄に帰って、両親に会いたい」と告げた。
静江さんは病院に退院の希望を伝えた。病院側は、一度は許可したものの、幹雄さんの容体が悪化。「移動中に何かあっても責任が取れない」と、許可を取り消した。そこで、静江さんはすがる思いで「かなえるナース」に依頼。
前田氏は、すぐに内野医師に連絡し、「残された時間は少ない」と告げた。
そこからはスピード勝負だった。内野医師は幹雄さんを遠隔で診療。幹雄さんはほとんど会話ができないほど衰弱していて、うなずくのが精一杯だった。代わりに静江さんが「本人の希望通り、沖縄に帰したい」と画面越しに家族の決意を伝えた。
しかし、主治医でなければ退院の許可が出せない。それならばと、内野医師自らが幹雄さんの主治医になったのだ。これで退院の準備は整った。
そのわずか2日後、3月30日の朝6時、幹雄さんと静江さんは沖縄に向けて出発した。24時間体制で前田氏が付き添い、内野医師も遠隔で診察を続けた。
飛行機が那覇空港に到着すると、ゲートには幹雄さんの両親が迎えに来ていた。