愛着障害(アタッチメント障害)とは?出典 : 一般的に愛着障害とは、養育者との愛着が何らかの理由で形成されず、子どもの情緒や対人関係に問題が生じる状態のことを言います。主に虐待や養育者との離別が原因で、母親を代表とする養育者と子どもとの間に愛着がうまく芽生えないことによって愛着障害は起こります。愛着とは、主に乳幼児期の子どもと母親をはじめとする養育者との間で築かれる、心理的な結びつきのことです。専門用語でアタッチメントともいいます。子どもはお腹が空いたとき、オムツが汚れたとき、恐怖や驚きを感じたときなどに泣くことで自分の気持ちや欲求を表現しますよね。そのとき通常は決まった養育者がくりかえし子どもに駆け寄り、不快にさせる要因を取り除きます。ここでいう養育者とは、母親や父親など、身近で世話をして育ててくれる人を意味します。養育者は頻繁に子どもと抱っこなどで触れ合ったり、声かけなどでコミュニケーションをとったりもします。子どもは生後3ヶ月ころまでは誰に対しても微笑んだり見つめたりします。しかし、こういった日常的なお世話と愛情あふれるスキンシップ、コミュニケーションを受けとる中で、子どもは「この人は自分の要求を敏感に感じ取り、正しく対応してくれる」「この人は自分によく声をかけてくれるし、抱っこしてくれる」などと特定の養育者を認識するようになります。このような認識のもと、生後3ヶ月を過ぎてくると、子どもはいつも自分をお世話してくれる養育者とそうでない人を識別できるようになってきます。これが愛着形成の第一歩です。子どもは養育者と生活していく中で養育者との愛着をどんどん深めていきます。この愛着を土台に、子どもは成長していくため、養育者と子どもが愛着を形成するということは、子どもの発達に欠かせないことなのです。では、愛着を形成することは子どもの成長においてどんな意味があるのでしょうか。子どもの成長における愛着の重要性は大きく分けて3点あります。◇人への基本的信頼感の芽生え子どもは特定の養育者との間に愛着を築くと、その養育者に甘え、依存するようになります。養育者に甘え、受け入れられる。このようなやりとりを通じて、人とかかわる楽しさや喜びを体験することができます。◇自己表現力、コミュニケーション能力を高める愛着を形成した相手に対して、自分の要求を伝える、また時には相手の要求を受け入れるということを通して、子どもは自分が求めていることを表現することの楽しさや難しさを知ります。これにより表現力やコミュニケーション能力の向上が期待できます。◇自己の生存と安全を確保する子どもは不安や危機を感じた時に、愛着の対象者を「安全基地」と見なして、自分の身を守ろうとします。安全基地とは、自分の見知らぬ世界に対して好奇心を抱き、それらを探索しようとする時に、子どもが拠り所とする存在を指します。つまり、子どもが母親との愛着を形成した場合、母親を安全基地と見なすのです。自らの好奇心のもと、見知らぬ世界を探索したときには、不安や恐怖、心理的・身体的苦痛を感じることがあります。そんなときに安全基地である母親のもとに戻って、安心感を得るのです。子どもはこのような探索と避難をくりかえすことよって好奇心や積極性、ストレスに耐える力を身につけていきます。愛着障害の医療的な定義と診断基準とは?出典 : ここまで一般的に知られている愛着障害についてご紹介しました。医療の面から愛着障害を見てみると、愛着障害は「反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)」と「脱抑制型愛着障害」に診断が分けられます。「反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)」も「脱抑制型愛着障害」も、5歳以前に発症するとされています。この2つの愛着障害の何が違うのか簡単に説明すると、人に対して過度に警戒するのが「反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)」、過度になれなれしいのが「脱抑制型愛着障害」です。世界保健機関(WHO)が定める『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)という診断分類ではこのように定義づけられています。「反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)」5歳までに発症し、小児の対人関係のパターンが持続的に異常を示すことが特徴であり、その異常は、情動障害を伴い、周囲の変化に反応したものである(例:恐れや過度の警戒、同年代の子どもとの対人交流の乏しさ、自分自身や他人への攻撃性、みじめさ、ある例では成長不全)。この症候群は、両親によるひどい無視、虐待、または深刻な養育過誤の直接的な結果として起こるとみなされている。「脱抑制型愛着障害」5歳までに発症し、周囲の環境が著しく変化しても持続する傾向を示す、異常な社会的機能の特殊なパターンである。たとえば、誰にでも無差別に愛着行動を示したり、注意を引こうとして見境なく親しげな振舞いをするが、仲間と強調した対人交流は乏しく、環境によっては情動障害や行動障害を伴ったりする。引用文献:中根 允文、岡崎祐士/著ICD-10「精神・行動の障害」マニュアル (医学書院,1994年刊)同様に、『ICD-10』では反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)と脱抑制型愛着障害について、以下のような診断基準を示しています。「反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)」A.5歳以前の発症B.いろいろな対人関係場面で、ひどく矛盾した、両価的な反応を相手に示す(しかし間柄しだいで反応は多様である)C.情緒障害は、情緒的な反応の欠如や人を避ける反応、自分自身や他人の悩みに対する攻撃的な反応、および/またはびくびくした過度の警戒などにあらわれるD.正常な成人とのやりとりで、社会的相互関係の能力と反応する能力があるのは確かであること「脱抑制型愛着障害」A.広範囲な愛着が、5歳以前の(小児期中期にまで持続していなくてもよい)持続的な特徴としてみられること。診断には、選択的な社会的愛着を十分に示せないことが必要であり、次の項目に明らかとなる。(1)苦しいときに、他人から慰めてもらおうとするところは正常であり、(2)慰めてもらう相手を選ばない(比較的に)というところは異常である。B.なじみのない人に対する社会的相互関係がうまく調節できないこと。C.次のうち1項目以上があること(1)幼児期では、誰にでもしがみつく行動(2)小児期の初期または中期には、注意を引こうとしたり無差別に親しげに振る舞う行動D.上記の特徴については、状況特異性のないことが明らかでなければならない。診断には、上記のA,Bの特徴が、その小児の経験する社会的な接触の全範囲に及んでいる必要がある。引用文献:中根 允文ら/訳ICD-10精神および行動の障害-DCR研究用診断基準 新訂版子どもが愛着障害である場合の具体的な傾向とは?出典 : 子どもが愛着障害の場合、どういった態度・素振りを見せるのでしょうか。具体例を見てみましょう。◇反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)「反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)」の場合、相手が養育者であっても極端に距離をとろうとするために以下のような様子が見られることがあります。・養育者へ安心や慰めを求めるために抱きついたり、泣きついたりすることがほとんどない・笑顔が見られず、無表情なことが多い・他の子どもに興味を示さない、交流しようとしないなど◇脱抑制型愛着障害「脱抑制型愛着障害」の場合、養育者に限らず誰に対してもべったりくっついてしまったり、自分に目を向けてほしいがために不注意や乱暴な行為に走るなど、困りごとが生じることがあります。・ほとんど知らない人に対してもなんのためらいもなく近づく・知らない大人に抱きつき、慰めを求める・落ち着きがなく、乱暴など◇どちらにも見られる態度・素振りまたどちらの愛着障害にも見られることとして、強情・意地っ張り・わがまま、といった態度が挙げられます。「反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)」も「脱抑制型愛着障害」も子どもと養育者との愛着形成が不安定であることによって起こるので、愛着障害の子どもは養育者を頼りにし、甘えることが上手にできません。そのため意地っ張りになってしまったり、極度にわがままになってしまったりすることがあります。・強情、意地っ張り・度が過ぎるわがままなどまた、子どもが特定の養育者を安全基地と見なしていないために、子どもの視線や行動に違和感を感じることもあります。・養育者との別離・再会のときに、養育者に対して視線をそらしながら近づく・抱っこされている間、全然関係ない方向を見つめている・見知らぬ場面において、特定の養育者を頼りに(安全基地に)する素振りが見られないなど愛着障害の原因は?出典 : 愛着障害の原因は、子どもと養育者との間に愛着がうまく形作られないことが大きく関係しています。具体的には、以下のような原因が挙げられます。・養育者との死別・離別などで愛着対象がいなくなってしまう・養育者から虐待やネグレクトを受けるなど、不適切な養育環境で育てられた・養育者が子どもに対して最低限の世話はするものの、無関心であったり放任したりしていた・養育者のような立場の大人が複数いて、世話を焼いてくれる人が頻繁に変わってしまっていた・兄弟差別など、他の子どもと明らかに差別されて育てられたこのように、本来愛着を形成する対象に危害を加えられたり、それによって自分が育った環境が安全でなかったりすると愛着の形成が阻害されてしまいます。特に、愛着を形成する大事な時期である生後6ヶ月から1歳半ころの間に上で紹介したような愛着形成が阻害されるようなことが起こると、子どもの成長に大きな影響が及びます。子どもは養育者との愛着を形成できないだけでなく、人に対する基本的な信頼感がうまく芽生えなくなってしまいます。そしてこうなると後から愛着形成を取り戻そう、修正しようとしても難しいことが多いのです。これによって先に述べたような困った態度・素振りが表れることにつながります。愛着関係をはぐくむには?出典 : 子どもの健やかな成長に必要不可欠な愛着。では、パパ・ママなど子どもの養育者が子どもとしっかり愛着を築くためにはどのように子どもに接すればよいのでしょうか。・だっこなど、親子でのスキンシップをこまめにとる・授乳、オムツかえなど、子どもの欲求に敏感に反応してあげる・親子での細やかなコミュニケーション(まだ話せないような年齢の子どもに対しても、子どもと会話をしているように声掛けをしてあげましょう)以上に示したように、愛着を築くために特別難しい技術は必要ありません。大切なのは、実際に肌と肌で感じあうことができるようなふれあいの機会を多く設ける、顔を見合わせてコミュニケーションをとる、子どもを常に見守り、細やかにお世話するというような、基本的な子育てに対して丁寧に優しい気持ちで取り組むことです。一見単純なことのように思われがちですが、基本的な子育ての姿勢を忘れずに、真摯に子どもに向き合うことが、子どもとの愛着をしっかりと構築するために重要なことなのです。愛着障害には治療法があるの?出典 : 愛着障害は、発達障害などと違って、子どもの育つ環境や養育者の子育て方法に原因がある、後天的なものです。それゆえ、投薬などを利用した治療は基本的には行いません。子どもが愛着障害と認められた場合にまず行うことは、安全基地の形成です。子どもとの間で愛着がしっかりと築かれることで、子どもは養育者のことを安全基地、すなわち困った時・不安や恐怖を感じた時に守ってもらえる拠り所として認識するようになります。愛着障害の子どもは養育者を安全基地と見なせていない場合がほとんどです。ですので、子どもに「養育者=安全基地」と認識してもらえるように、親族やかかりつけの医者など、まわりの人々が親子を支援していくことが必要です。安全基地の形成が足がかりとなって、子どもの人と接することへの安心感や信頼感を生み、他の人との接し方・距離感も改善することができます。また、子どもが愛着障害を発症するということは、養育者や家族も何らかの支援を必要としていたり、問題を抱えている場合も少なくありません。その場合、子どもだけに治療の焦点を当てるのではなく、養育者や家族を含めて幅広くアプローチすることがあります。例えば、虐待が原因の場合は子どもと養育者の距離を一回遠ざけてみたり、親へのカウンセリングや心理療法的・家族療法的アプローチを取り入れたりすることで、子どもの愛着障害の改善につながることがあります。また、養育者の抱えるさまざまな悩みや状況により、子どもを十分に育てられず、子どもに愛着障害の症状が表れた、ということもあります。その場合は生活保護や、行政や民間で提供されている育児・家事サービスの利用を視野に入れるなど、愛着障害を取り巻くすべての要因から解決策を探しだすことが必要となってきます。「子どもが愛着障害かも・・・」「子どもとの愛着形成に不安がある」と思ったときは、精神科のある病院やクリニック、カウンセリングセンター、地域の子育て支援センター、児童相談所で一度相談してみるのも良いでしょう。大人の愛着障害出典 : これまで子どもが愛着障害を発症した場合を見てきましたが、愛着障害は子ども時代を過ぎれば関係なくなるものではありません。子どものころに発症した愛着障害が治療されないと大人になっても愛着障害の症状が続くことがあります。子どもの時に養育者と愛着を築くことができなかった、ただそれだけのことのように思われることもあるかもしれません。ですが、愛着が形成されない、またそれをそのままにしておくということは、子どもが大人へと成長していくうえでの人格形成や心の持ちようなどにおいても影響を与える大きな要因になることがあるのです。実際のところ、大人で愛着障害があるということは珍しいことではありません。ただ、大人になってからも情緒や人との関係づくりで苦労することがあってもその原因が愛着障害であるという自覚が少ないケースもあります。まず大人が愛着障害を発症している場合どのような特徴があるのかご紹介します。◇情緒面・傷つきやすい・怒りを感じると建設的な話し合いができない・過去にとらわれがち、過剰反応・0か100かで捉えてしまう・意地っ張りなど情緒面では主にこのような症状が表れます。他人の何気ない発言に対して過剰に反応してしまい、傷ついてしまったり、過去の失敗や恐怖を極度に引きずってしまったりすることがあります。また、一度頭に血が上ってしまうと何に怒っているのか整理することができず、当たり散らしてしまう。「ある・ない、好き・嫌い」など物事や人を極端に捉えることしかできず、「この人は苦手な部分もあるけど、良いところもある」というように柔軟で折り合いをつけた考え方ができないということが挙げられます。◇対人関係・親などの養育者に対して敵意や恨みを持つ、または過度に従順になったり、親の顔をうかがう・親の期待に応えられない自分をひどく責める・人とほどよい距離がとれない・恋人や配偶者、また自身の子どもをどう愛すればいいかわからないなど対人関係の面では、第一に愛着障害の原因をもたらした養育者に対しての態度に症状が見られることがあります。養育者に激しい敵意・恨みをもつことでいつまでも反抗的な態度を取り続ける。反対に親に従順すぎるほどの態度を取り、大人になっても親に言いなりになってしまっているというような症状が表れます。また、子どもの場合と同じように、人とほどよい距離を保つことができない、恋人や配偶者、そして自分の子どもに対してどのように愛情を注げばいいかわからず、関係づくりに苦労することがあります。◇アイデンティティが確立できない・キャリア選択がうまくできず時間をかけた割にわずかな見聞や情報で決めてしまう・自分の選択に対する満足度が低い大人になると、仕事やプライベート、さまざまな場面で自分自身で選択することが求められます。愛着は他人との基本的な信頼感の基礎であるだけでなく、好奇心や積極性、自己肯定感の基礎ともなるものです。その愛着が子どもの時に十分に形成されず、大人になっても愛着障害が続くと、アイデンティティを獲得・確立する青年期や成人期で決断を求められる場面において苦労してしまうことがあります。大人の愛着障害が他の疾患を発症の原因になってしまうことがあります。・うつ病・心身症・不安障害・境界性パーソナリティ障害などこのように、愛着障害がある大人は生活を送るうえでさまざまな困りごとが起こるだけではなく、二次的に他の疾患を引き起こすこともあります。ですが、大人になってからでも工夫次第では症状をやわらげることができたり、困りごとを克服できたりすることもあります。最も大切なこととして、幼少期に満足に得られなかった、愛着形成のための愛情深いスキンシップやコミュニケーションを補ってあげることが挙げられます。大人になってしまうと実の親と子どものころのように密にやりとりをする、ということが難しいかもしれません。その場合は、恋人やパートナー、教師や友人などとのやり取りが愛着障害の克服の第一歩となることがあります。また、職場など対等な人間関係をつくることができ、自分の存在価値が認められるような環境に身を置くことや、自分が「理想の親」のような存在となって後輩を指導するということもアイデンティティの確立や自信をもつことにつながり、結果的に愛着障害が改善していく可能性があります。愛着障害と発達障害の関連はあるの?出典 : 発達段階の年齢にある子どもの愛着障害の症状は、発達障害の症状に似ているため、しばしば混同されることがあります。しかし、発達障害は先天性のもの、愛着障害は後天性のものである、という決定的な違いがあります。そのため愛着障害は適切な環境(愛着がきちんと形成される環境)で子どもを育てれば、症状が改善するケースが多いのです。以下、愛着障害を「反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)」と「脱抑制型愛着障害」をわけて、それぞれ間違えられやすい発達障害との違いをご紹介します。◇自閉症スペクトラム自閉症スペクトラムと愛着障害は、養育者と目が合いにくい、嬉しい・楽しいといった情動表現をあまり見せない、認知と行動に遅れが見られる、対人関係を円滑に築くのが苦手といった共通点があります。しかし、自閉症に見られるこだわりや反復行動は、多くの場合愛着障害には見られません。また、自閉症児の場合、知的機能は高くてもコミュニケーションに苦手意識があったり、相手の気持ちを察したりすることができないということもあります。それに対して愛着障害は、知的機能に見合った社会的コミュニケーションが見られます。つまり、愛着障害は愛着の不足によって子どもの発達が遅れているということなので、養育環境を改善すれば知的、社会面の両面を含む発達の遅れを取り戻すことができます。◇注意欠如・多動性障害(ADHD)脱抑制型愛着障害のある子どもにも、不注意や多動といったADHDのような症状が現れることがあります。ですがADHDのように、子ども自身とりわけ意識していないにもかかわらず常に不注意や多動が続く、という状態とは少し違います。脱抑制型愛着障害の場合、大人の気を引きたいがためにわざとそういった行動・態度を示すという点で、ADHDとは区別することができます。まとめ出典 : 愛着障害は乳児期に母親をはじめとする養育者ときちんと愛着を形成できていないことにより発症します。愛着がきちんと形成できないことは、子どもの知的・社会的発達に大きな影響を与えることとなります。愛着障害の治療は早期であればあるほど効果がありますが、何もせず放置してしまうと大人になっても愛着障害をずっと抱え続ける可能性があります。養育者の抱えるさまざまな悩みや困難な状況がある場合には、愛着障害を取り巻くすべての要因から解決策を探しだすことが必要となってきます。パパ・ママは子どもが生まれた直後から、声掛けやスキンシップなどの子どもへのコミュニケーションを積極的にとるようにしましょう。また、子どもに常に目をかけ、あたたかく寄り添ってあげることが、子どもとの強くしっかりとした愛着を築くために大切なことなのです。参考文献岡崎尊司/著『愛着障害の克服 「愛着アプローチ」で、人は変われる』岡崎尊司/著『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』
2017年01月19日失語症とは出典 : 失語症とは言語障害の一つで、脳の言語中枢が何らかの損傷を受けることによって、言語を操る能力に障害が残った状態を言います。具体的には、言いたい言葉が浮かんでこない、思ったことと違う言葉を口にしてしまうことなどが症状としてあげられます。私たちが言葉を覚えるとき、言葉そのものを覚えることに加えて、その言葉が指し示している「もの」はどのようなものかを同時に学んでいます。そして脳の中には「クルマ」「リンゴ」といった言葉そのものを貯蔵する「言葉の貯蔵庫」と、「クルマ」「リンゴ」がどのようなものを意味しているのかを貯蔵する「意味の貯蔵庫」の2つがあります。この貯蔵庫には無数の引き出しがあり、またそれぞれの引き出しが相互につながっています。私たちが「話す」とき、膨大な言葉の引き出しと意味の引き出しが適切に対応しているため、表現したいこととぴったりの言葉を選ぶことができているのです。しかし失語症になると、この言葉の引き出しと意味の引き出しのつながりが混乱してしまいます。言葉の貯蔵庫も意味の貯蔵庫も頭の中には残っているのですが、一つひとつの意味の引き出しに対応している言葉の引き出しをすばやく探すことが困難になります。そのため言いたい言葉が浮かばず何も言えなくなったり、「テレビ」と言いたいのに「メガネ」と言ってしまったりするのです。「失語症」という名称から、言葉を発することや話すことに困難が生じている状態だととらえられがちです。しかし失語症になると話すことだけでなく、聞く・読む・書く・話す・計算するといった言葉にかかわるすべての作業が難しくなります。失語症はよく、「言葉の分からない国に放り出された状態」にたとえられます。私たちが外国に行ったとき、現地の人とは言葉が通じず、相手が何か言っていることは聞こえますがその内容を理解することはできません。看板などに何か書いてあることは分かりますが、音読したり意味をつかむのは難しいです。相手に伝えたいことや自分の考えはあるのですが、それをすらすらと伝えることも困難です。このように、失語症になっても聴力や視力、記憶力や判断力などには問題がないのですが、言葉にかかわる働きのすべてがうまくいかなくなってしまいます。失語症と構音障害・失声症・学習障害の違いは?出典 : 失語症と症状が似ているため混同されやすい障害・疾病に構音障害、失声症、学習障害があります。それぞれ失語症とは何が違うのかを見ていきましょう。失語症と同じ言語障害である構音障害は、「言葉が出にくい」という点で失語症とよく似ています。しかし失語症と構音障害では、ダメージを受けている脳の部分が異なります。私たちは話す内容は言語中枢で考えますが、話すという行為のときには、呼吸筋や口を動かす運動中枢を使います。構音障害は、運動中枢がダメージを受け、言葉を話すのに必要な唇、舌、声帯など発声・発語器官の麻痺などによって発声や発音がうまくできなくなる状態をいいます。失語症は言語中枢がダメージを受けている状態のため、麻痺がなく口を動かすことができても、言語中枢からの指令が不十分なため言葉が出なくなったり、正しくない単語が口から出たりします。失声症とは、主としてストレスや心的外傷などによる心因性の原因から、声を発することができなくなった状態を言います。「発声器官に問題はないのに、話すことができなくなった」という点は失語症と共通していますが、失語症の原因は脳の損傷であり、心理的なショックや精神的なストレスなどが原因ではない点で異なります。参考:心因性失声症|心身条件反射療法協会失語症と同様に、読む・書く・話す・計算するといった能力に困難が生じるもののひとつに、学習障害があります。学習障害とは、全般的な知的発達に遅れがないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」能力のうちいずれかまたは複数のものの習得・使用に著しい困難を示す発達障害の一つです。学習障害の原因ははっきりとは解明されていません。しかし学習障害は先天的な脳の機能障害であるのに対して、失語症は、脳の言語中枢が何らかのきっかけで損傷を受けた結果生じる後遺症であり、症状もその損傷を受けた後に現れる後天的なものである点が、学習障害とは異なります。失語症の原因は?出典 : 失語症の原因は、脳の言語中枢が傷つくことです。この損傷の原因の9割以上が脳出血、くも膜下出血、脳梗塞といった脳卒中です。脳卒中の患者は中高年が多いため、失語症も中高年に多くあらわれます。そのほかは交通事故や転落による頭部外傷、脳腫瘍、脳炎などになっています。出典:加藤正弘・小澤知幸監修『失語症のすべてがわかる本』(講談社,2006)失語症になるとどんな症状があらわれるの?出典 : 失語症になると、話すことだけでなく聞く、読む、書く、計算することすべての能力に困難が生じます。しかしその症状やその重さは一様ではなく、脳の損傷の場所と大きさによって違いが生じます。失語症の症状を「話す」「聞く」「読む」「書く」「計算する」の5つの側面に分けて説明します。・言いたい言葉が浮かんでこない思ったことを言葉ですらすらと表現できなくなります。特に人名や地名などの固有名詞が出にくく、「ここまででているんだけど」というもどかしさを感じます。また、「包丁」と言いたいのにその言葉が思い浮かばないため「魚を切るやつ」と遠回しな回りくどい表現をすることもあります。この症状は記憶力の低下によるものではなく、意味の引き出しと言葉の引き出しがうまく対応していないために起こっています。・思ったことと違うことを言ってしまう「病院」を「学校」、「みかん」を「りんご」のように単語を言い間違える場合と、「メガネ」を「メダネ」、「時計」を「トテイ」というように違う音に言い誤る場合があります。言葉の言い間違いがひどい場合は、まったく意味不明の言葉(ジャルゴン)が続くようになります。・文章で話すことが難しくなる「オトーサン…カイシャ…ヤスミ…」のように単語でポツリポツリとしか話せなくなってしまったり、「お父さんは会社へ休みでいます」のようにすらすらと話せても正しい文章ではないことがあります。・同じ言葉が言えたり言えなかったりする一度言えた言葉でも、もう一度言おうとすると言えないことがあります。反対に、さっき言えなかった言葉が今度は言えるということもあります。・前に言った言葉が続いて出てくるいったんある言葉が出始めると、その言葉ばかり繰り返し出てしまうことがあります。例えば、名前を聞かれて、名前が言えたあと、続いて年齢を聞かれても名前を言い、次に住所を聞かれても名前を繰り返すような状態です。・唇や舌に麻痺がないのに発音がたどたどしくなるすんなり正しい発音ができなくなり、たどたどしい話し方になります。耳は聞こえているのに、聞いた言葉の意味が理解できなくなるというのも失語症の症状です。・大勢の人が集まっているところで会話を聞きとるのが難しい症状が軽い人の場合、日常的には聞き誤ることはほとんどありませんが、大勢の人が集まっているところで集中して会話を聞きとることが難しくなります。・早口や回りくどい言い方、複雑な内容や長い文章の理解が難しい講演会で話されるような複雑な内容の文章を理解することが難しくなります。また、もう少し症状が重くなると「冷蔵庫から牛乳と卵を出して」という程度の長さの文章を理解することが困難になります。これは聞いた内容を頭にとどめておくことが難しくなるためです。この場合、「冷蔵庫から牛乳をとって」といい、牛乳を取り出したところで「卵も取って」というと分かりやすくなります。・身の回りの品物の名前を言われても意味が分からない障害が重くなると、身の回りの品物の名前を言われても意味が分からずきょとんとしていたり、間違った理解をしてしまうこともあります。しかし、判断力が低下しているわけではないため、言われた単語の意味が分からなくても状況から推察して適切な行動をとることができます。そのため周りの人からは失語症の症状があると分かりにくいことがあります。失語症になると、目は見えているのに文字や文章の意味の理解が難しくなります。・複雑な内容の文だと意味を読み取れない症状が軽い人の場合、簡単な読み物など楽しむことができますが、複雑な内容になると文の意味を読み取ることが難しくなります。・単語の意味を理解できない症状が重くなると、文章だけでなく単語の意味を理解するのが困難になります。失語症の人は一般的に、かな文字に比べて漢字のほうが理解しやすい傾向があります。かなは表音文字であり、発音を表しているだけなので、その文字を見ただけでは意味はとれません。一方漢字は表意文字であり、文字を見ただけで直接大まかな意味を取れることが多いので、かなよりも漢字のほうが理解しやすいのです。・難しい漢字が思い出せない、文法を間違える症状が軽い人の場合、文章を書くことはできますが、難しい漢字を思い出せなかったり、濁点や拗音(ようおん)が抜けることがあります。また、助詞を誤るなどの文法上の問題もみられます。・自分の名前が書けない症状が重くなると、自分の名前も書けなくなることがあります。自力では書けないときに漢字のへんやつくりの部分を書き示すとあとを続けて書くことができたり、見本の文字を示すと書き写すことができる場合があります。・数字を言い間違える・聞き間違える数字は失語症の人にとって聞き間違えたり言い間違えたりしやすいものの筆頭にあがり、軽度の人にとっても難しいものと言えます。数字の桁数が上がるほど理解も表現も難しくなり、たとえば電話番号や金額、日付や時間を言い間違えたり聞き間違えることがよくあります。・計算が難しい計算は一般的に九九を使う掛け算・割り算が難しく、足し算や引き算でも繰り上がり・繰り下がりがあると難しくなります。失語症にはどんなタイプがあるの?出典 : 失語症の症状は人によって千差万別ですが、脳が損傷を受けた場所や症状の程度によっていくつかのタイプに分けることができます。運動性失語症は、脳(左脳)の比較的前の方の部分に障害が起き、運動性言語中枢(別名:ブローカ中枢)に障害がある状態です。このタイプの失語症は、イメージが言葉になる過程で障害がおこるため、話すことがうまくできず、ぎこちない話し方になります。また、言葉の発音が不明瞭になったり他の音に置き換わることがあります。軽度の人は文章で話せますが、話すスピードは遅く、言葉の発音はしにくいです。重度の人は単語や短い言葉を話しますが、文章を話すことは難しくなります。感覚性失語症は、脳の比較的後ろの部分に障害が起き、感覚性言語中枢(別名:ウェルニッケ中枢)に障害がある状態です。このタイプの失語症は、なめらかにぺらぺらと話すことができますが言い間違いが多く、また相手の言ってることが理解できず会話が成立しないことがあります。話すことよりも聞いて理解することが困難になるのがこのタイプの失語症です。軽度の人でも複雑な文章は聞き取りにくくなり、重度の場合は日常の意思疎通が大変困難になります。比較的軽度の失語症です。聞いて理解することはでき、会話も口頭で楽しめますが、物の名前が出てこないため、回りくどい話し方が多くなります。例えば、「スイカ」という単語が思い出せず「ほら夏に食べる、大きくて、丸くて、おいしいの」と言いたいものを抽象的に表現します。「聞く・話す・読む・書く」のすべての言語機能に障害がある、重度の失語症です。聞いて理解するのは困難ですが、その人の感情に強く訴える言葉は理解できることもあります。意味のある言葉を言うことがほとんどできなくなり、決まりきった言葉しか言えなくなったり、相づち程度になります。失語症の診断から検査に至るまで出典 : 失語症の原因は脳の損傷です。言葉が出ない、呂律(ろれつ)が回らないなどの言語症状も、脳の機能の異常を示す症状の一つであり、本格的な脳卒中の前触れかもしれません。少しでも疑いがある場合は、神経内科や脳神経外科への受診をおすすめします。脳卒中や事故による頭部外傷などで脳に損傷が起こった場合、主治医はその主となる病気やけがの治療にあたります。その後、後遺症として失語症が起こった場合、主治医の紹介により言語聴覚士が検査や診断、治療にあたります。言語聴覚士は言語治療のプロフェッショナルです。失語症によって患者さんの気持ちが混乱したり落ち込んだりすることもあるため、失語症の検査は病状が落ち着いたころに始めます。日本の代表的な失語症検査のひとつは「SLTA(標準失語症検査)」です。言語聴覚士が患者さんに質問をして答えられる割合を調べます。この検査では患者さんの聞く力・話す力・読む力・書く力・計算する力を測ります。回復の程度を調べるために、治療中にも一定期間ごとに何度か行います。失語症の治療・リハビリテーションはどんなことをするの?出典 : 失語症の治療では、言葉の働きを取り戻すための言語訓練を、言語聴覚士と行います。言語訓練にはさまざまな方法があり、症状に合わせて最適な組み合わせが選ばれます。まず、脳の障害の範囲や検査の結果などから重症度を判断します。まずは、患者の趣味に関することや過去に撮った写真などを用いてコミュニケーションの方法を探します。同時に、周囲の人も失語症の患者さんにどう対応すればいいかを学びます。こうした活動を通じて脳の状態がある程度落ち着いてくると、言語治療がおこなえるまでコミュニケーション力が回復する場合があります。言語聴覚士の口の動きを見たり、鏡で自分の口の動きを確認しながら話すなどの発音動作の練習を、他の失語症の治療と並行して実施します。短い単語から長い言葉を思い浮かべる訓練をします。「火」や「目」など、1文字の単語の発音練習から始め、少しずつ長い単語に変えていきます。長い単語も、最初は「え」「ん」「ぴ」「つ」というように、一音ずつゆっくりと確実に発音してから「えんぴつ」とつなげて言えるように訓練します。みかんを「りんご」と言ってしまうような症状のときは、言葉と意味を結ぶ訓練を重点的に実施します。耳で聞いた単語やかなで書かれた単語がどれか、絵の描かれたカードの中から選ぶ練習から始めます。これは一般的な失語症でおこなわれる訓練でもありますが、このタイプの失語症では特に大切な練習です。りんごを「ごりん」と言ってしまうような症状のときには、音を正しく並べる訓練を重点的に実施します。絵を見て、その名前をゆっくり思い出しながらかなで書く練習をします。かなが一文字ずつ書かれたカードを並べる方法もあります。また、漢字の単語にふりがなをつける練習も効果的です。これらの言語訓練の進め方はあくまで目安です。正しい治療法の決定には、医師や言語聴覚士の助言が欠かせません。失語症の治療は症状の程度、タイプによって進め方もさまざまなので、他の人と内容や進み具合を比較することは意味がなく、また患者さんにとってもプレッシャーになります。失語症の人が受けることのできる支援出典 : 失語症になると、治療や仕事への影響で経済的な負担が大きくなります。失語症の人が受けられる支援にはどのようなものがあるのでしょうか。患者さんが40歳以上である場合、介護保険によるサービスを受けられることがあります。主治医からの意見書の提出や本人の状態の調査をしたのち、非該当、要支援1・2、要介護1・2・3・4・5の区分に分けて認定が下りますが、失語症の程度によっては認定が下りないこともあることに注意が必要です。認定が下りて介護の必要性が認められると、デイケアやデイサービスといった通所サービスや、訪問介護、訪問看護や訪問リハビリテーションといった在宅サービス、入所介護などのサービスを受けることができます。認定の程度によって受けられるサービスは異なりますが、施設を選ぶときは言語聴覚士がその施設にいるかどうかを確かめるようにしましょう。介護保険のサービスは、介護保険の被保険者以外の人は受けることができません。40歳未満で介護保険の対象にならない場合や介護保険にはないサービスを受けたい場合、障害者福祉のサービス活用が考えられます。1.身体障害者手帳取得により受けられるサービス身体障害者手帳を取得すると、身体障害者福祉のサービスを受けることができるようになります。受けられるサービスは認定された等級や住んでいる地域によって多少異なりますが、下記のようなものがあげられます。・医療費の助成や手当・補助具や生活用品の給付や貸与・住宅改善のための費用の給付・交通費などの割引制度・障害者施設の利用・美術館、音楽会、映画館などの割引・公共料金の減額、免除、携帯電話の割引身体障害者手帳の等級には1級から6級まであり、数が小さいほうが障害の程度が重いことを意味します。現在、言語障害が該当する等級は3級と4級のみであり、言語を「完全喪失」した場合が3級、「著しい障害」がある場合が4級になります。これに手足の麻痺の程度などが重ければ肢体不自由の障害の分が加わって等級は重くなります。逆に、失語症があって言葉が出にくいけれど、手足に麻痺がなく、家族や近隣の人との会話が成立している場合は身体障害の認定を受けられないこともあるので注意が必要です。手帳取得を考えている人は、まずは主治医に相談することをおすすめします。2.障害者総合支援法によるサービス2013年に成立した障害者総合支援法ににより、居宅介護や機能訓練を始め、補装具や自立支援医療費の支給や日常生活用具の給付などのサービスを受けられます。どのサービスを受ける場合でも、サービスの窓口は市町村の障害者福祉の窓口になります。サービスによっては介護保険と同様に、認定調査を経る必要があります。障害のある人を支援するNPO、地域の社会福祉協議会や民間の団体でも特徴あるサービスを行っているところがあります。地域のボランティアセンターなどに情報が集まっているので、確認してみることをおすすめします。また現在、全国で135の「失語症友の会」が活動しています。「失語症友の会」は失語症の患者さんとその家族でつくられたものであり、同じ病気をもつ患者さんやその家族が交流する場を設けたり、失語症についての知識を広げる活動を行っています。同じ病気の人と交流することで患者さんの孤独感を軽くでき、家族同士でアドバイスを交換することもできます。失語症友の会失語症の人とコミュニケーションをとるときに気をつけたい、6つのポイント出典 : 失語症が起こった直後は、患者さんは混乱して気持ちの変化が激しくなることがあります。また、自分の言いたいことがうまく言えなかったり、相手の話を理解出来ない自分の状態に気づいて落ち込み、「どれくらい良くなるんだろう」「自分はずっとこのままなのだろうか」という不安でいっぱいになったりします。家族や周りの人は、失語症について正しく理解し、適切なコミュニケーションをとることで患者さんの支えになることが大切です。周囲の人が「言葉を取り戻してほしい」という思いからついやってしまうことが、患者さんの心を傷つけたりいらだたせたりすることがあります。たとえば、身近なものだからすぐに思い出すだろうという思いから、「これなんだ?」と名前あてクイズをする人がいますが、これは歩けない人に「ここまで来て」というのと同じようなものです。失語症は単なる度忘れでなく脳の機能障害であり、このようなクイズを何度繰り返してもできるようにはなりません。また、「”コ”から始まるあなたの好きな飲み物だよ」というヒントを出すようなことも控えましょう。患者さんは、言いたいものが「どんなものなのか」というイメージを頭の中で描けている場合がほとんどです。それを周囲の人から言われても、「それは分かっているけれど言葉が出てこない…」という患者さんのいら立ちを余計強くしてしまいます。失語症の患者さんと話すときは、ゆっくり、はっきり話すことが大原則です。早口で話したり、突然話題を変えたりすると患者さんは話についていくことができません。1対1で落ち着いて会話できる場を設けたり、患者さんの表情やしぐさを見逃さないよう目を見て話したり、伝わっていない様子のときは繰り返し話したりするようにしましょう。このとき、患者さんは耳が遠いわけではないので、大声で話しかける必要はありません。また、記憶力や判断力が低下しているわけでもないので、患者さんを子ども扱いすることのないように気をつけましょう。言葉を正しく選んで話す作業は、失語症の人にはとても難しい作業です。しかし相手の話を理解できる患者さんの場合には、質問して答えを引き出すことができます。でもこのとき、例えば「何が食べたい?」と漠然とした質問をしてしまうと、患者さんは答えるときに言葉を選ぶ必要があり、好ましくありません。「あっさりしたものがいい?」「ご飯がいい?」「麺がいい?」「そばがいい?」というように、「はい」「いいえ」で答えられる質問を繰り返すことで、患者さんの意図をくみ取ることができます。言葉以外のコミュニケーションを患者さんととることは非常に大切です。時間や場所を伝えたいとき、時計やカレンダー、地図といった道具は「何を伝えようとしているのか」がはっきりわかるので、より患者さんに分かりやすいコミュニケーションをとることができます。また、「野球」という言葉を伝えたいとき、漢字で端的に「野球」と書いたり、バットとボールの絵を描いて見せるのも良いでしょう。ほかに、バットをスイングする仕草といった身振りで伝えることも効果的です。患者さんにとって、話すことは勇気と強い気持ちが必要です。そんなとき、周囲の人が「聞こうとしてくれている」という姿勢を見せてくれると、患者さんの励みになります。患者さんが何かを話そうとしているときは、まずは黙ってじっくりと待ちましょう。沈黙が続いている間も、患者さんは一生懸命考えています。先回りして患者さんの言いたいことをこちらが言ってしまうと、患者さんの話そうとする意欲を削いでしまいます。それでも患者さんが困り果てているときは、助け船を出すことも有効です。ただし、「○○でしょ」ときめつけることはせず、「○○?それとも××?」と質問して答えを引き出すようにしましょう。患者さんの日常生活をよりすごしやすくするために、日常よく使うものや生活に必要なものをまとめた「会話ノート」があると便利です。たとえば食事について、「カレー」「寿司」「うどん」などのイラストや写真と、名称をいっしょに載せたノートをつくっておくと、会話の幅がぐんと広がります。また、患者さんは自分の体調について明確に言葉で伝えることができません。しるしをつけるだけでコミュニケーションがとれるチェックシートがあると便利です。パソコンや電子辞書は、漢字を探したり読みを調べたりするときに便利です。また、外出先から家にいる患者さんに伝えたいことがある場合はファックスをつかうとスムーズに伝言ができます。まとめ出典 : 失語症になると、住み慣れた環境は変わらず、また判断力などが衰えないまま、突然周りの言っていることが理解できなくなったり、自分の考えや言いたいことを言葉で表現できなくなってしまいます。そのショックは大変なものであり、誰よりもつらいのは患者さんです。家族や周りの人も、突然うまく話せなくなった患者さんの様子に戸惑うこともあるかもしれません。しかし、本人も家族も焦ることなく、あきらめずにコミュニケーションをとり、自信を取り戻すことが大切です。患者さんの気持ちに寄り添って、治療やリハビリテーションに向き合うようにしましょう。参考:加藤正弘・小澤知幸監修『失語症のすべてがわかる本』(講談社,2006)参考:NPO法人言語障害の社会参加を支援するパートナーの会・和音『改訂失語症の人と話そう』(中央法規、2008)参考:脳卒中と言葉の障害|国立循環器病研究センター循環器病情報サービス
2016年12月28日ジストニアとは出典 : ジストニアとは、筋肉の緊張の異常によって筋肉が勝手に動いたりすること(ジストニア運動)によって、姿勢の異常などが起きる神経系の疾患です。また、日本神経学会の用語では「ジストニー」と表記され、世界神経学連合(WFN)が1981年の特別臨時委員会においてまとめた「錐体外路性障害の国際分類と用語集の提案」では以下のように定義されています。身体のひとつ以上の部位の不随意な持続する筋収縮で、しばしばねじるような反復する運動や異常姿勢の原因となると特徴付けられる運動障害ジストニアは知能が侵されたり命にかかわるような病気ではないものの、日常生活に支障が出ることもある疾患です。また、いまだに病態の解明が進んでおらず、根治的な治療法もまだ見つかっていないのが現状です。患者数は全国で約2万人といわれていますが、まだまだ認知度の低い病気であり、周囲の理解が得られず患者さんが悩んでしまうこともあります。ジストニアは、特定の動作を反復的かつ高頻度で行っている、特定の向精神薬を服用している等、外部要因が特定できる続発性ジストニア(二次性ジストニア)と、外部要因が特定できない本態性ジストニア(一次性ジストア、主に遺伝性と診断される)に大別されています。中でも遺伝性ジストニア(変形性筋ジストニーとも呼ばれる)は発症率は少ないのですが、厚生労働省によって「難病」と「小児慢性特定疾病」に指定されており、前者は障害者総合支援法、後者は児童福祉法に基づいて国からの支援を受けることができるほか、その他のジストニアでも症状や障害の程度によっては身体障害者手帳や障害年金を受給できる可能性があります。ジストニアの症状出典 : ジストニアの症状は、脳や神経系統における機能異常により筋肉の異常緊張が起きることによって、無意識な体の動きや異常姿勢となって現れます。そうした症状は顔面・四肢・体幹筋など様々な部位に現れ、その分布により身体の一部分に限定して症状が現れる局所性ジストニアと、下肢を含む体幹部など広範囲にジストニアが発症する全身性ジストニアに分けられます。また、身体の一部を酷使する人が発症する職業性ジストニアのように特定の動作をするときだけ症状が現れるということもあります。ジストニアの症状の例として、具体的には、・字を書くときにしびれや震え、こわばり、脱力といった症状が現れて文字を書くことが困難となる「書痙(しょけい)」・ピアノやギターなど特定の楽器を弾く時だけ手指が震えたり勝手に動いたりするケース・脚の筋肉に異常が見られ歩行困難となるケース・顎や口、唇や舌が勝手に動いたり、口が開かなかったり、物が飲み込みにくかったり、しゃべりにくかったりするケースなどがあります。ジストニアの原因と、原因別の分類出典 : 筋肉の自由がきかなくなってしまうジストニアの根本原因は、脳内の神経に起きる変調にあり、そうした変調はそれぞれ以下のような理由で引き起こされます。以下の分類のうち遺伝性は本態性に、それ以外の3つは続発性に属します。遺伝性ジストニアは両親から受け継いだ特殊な遺伝子が原因で起きるジストニアを指します。この種類のジストニアは早くから発症し、下肢を含む体幹部など広範囲にジストニアが発症する全身性ジストニアに発展しやすいという特徴があります。遺伝性ジストニアの患者は希少で、患者数は全国で500人ほどと言われています。病因となる遺伝子を持っていても発症しないケースもあり、病態に関して未解明な部分も多いです。職業性ジストニアは、同じ動作や姿勢を反復的かつ高頻度に繰り返すことによって脳の神経になんらかの影響が生じた結果起きるといわれており、音楽家・アスリートなど身体の一部を酷使する職業を持つ人に多く発症します。職業性ジストニアは、症状が身体の一部にのみ現れる局所性ジストニアであることがほとんどで、その場合「フォーカルジストニア」とも呼ばれます。最近では人気バンドRADWIMPSのドラムを務める山口さんが、ドラム演奏時に使う右足に現れたジストニアを理由に休養を発表しました。数年前には、コブクロのギターボーカルを務める小渕さんが歌うときに声がうまく出せない「発声時頚部ジストニア」を発症しましたが、約1年間の投薬療法とリハビリの後、見事復活を果たし現在も活躍を続けています。参考:コブクロ及び、オフィスコブクロからのご報告参考:株式会社ワーナーミュージック・ジャパンコブクロに関するご報告参考:RADWIMPSからの大事なお知らせ脳卒中、脳炎、脳梗塞といった脳の疾患の後遺症がジストニア運動として現れることがあります。抗精神病薬・抗パーキンソン病薬などの副作用としてジストニア運動が現れる場合もあります。ジストニアの診断・検査方法出典 : ジストニアは神経の病気です。そのため、ジストニアの疑いがある場合は脳や神経、筋肉の病気を扱う神経内科に相談するとよいでしょう。ただ、ジストニアは医療従事者の間でも認知度が低く、別の病気として診断されたり、特に問題がないと誤診されたりすることも多い病気のためジストニアの検査ができる病院を受診することをおすすめします。以下のリンクはジストニアを専門で見られる病院の一覧です。ジストニアの診療が可能と思われる病院|NPO法人ジストニア友の会ジストニアは神経の病気であるうえ、ジストニアと似た症状の病気も多く存在します。そのため、ジストニアと確定診断されるまでにはいくつもの検査を要する場合が多いです。頭部CT・MRI検査…二次性ジストニアの原因となる脳血管障害や、腫瘍といった病気の有無を確認します。筋電図検査…ジストニアの特徴である筋肉の収縮を記録し、異常が見られるか確認します。血液検査…肝臓・腎臓などの臓器の状態や他の病気の兆候を推測できます。遺伝子検査…遺伝性ジスト二アは、CT検査や血液検査では異常を確認できないことが多いです。一方、遺伝子検査は一般的に費用が高く検査結果が出るまでに時間がかかることが多いものの、確定診断に役立てることができます。ジストニアの治療法出典 : ジストニアは未だに症例が少なく、確立された治療法はまだ存在していません。根本原因に対処する根治療法はなく、対症療法によって症状の緩和を目指します。病型によって有効な治療法が異なるため、専門知識を持つ主治医に相談し、治療方針を立ててもらう必要があります。副交感神経を活発化させるアセチルコリンという物質の作用を抑える「抗コリン薬」の投与が行われることがあります。あるいは、一般的ではないもののドーパミン遮断薬の投与による治療が行われる場合もあります。その他の経口薬物としては緊弛緩薬や向精神薬、および一般的な鎮痛薬が用いられることがあります。参考:GRJジストニア概説「ボツリヌス毒素」というヒトの神経毒を、症状が出ている部位の筋肉に注射します。注射によって、神経筋の結合部分でのアセチルコリンの放出を阻害し、症状の緩和をはかります。筋肉の局所的な弛緩性麻痺を生み、効果は数週間から数ヶ月間持続します。成功率が高く合併症の頻度も低いため、専門家の間で広く容認されています。参考:GRJジストニア概説ジストニアの症状が重い場合、部位や症状によっては末梢あるいは定位脳手術という手術を行うことがあります。ジストニアに対して行われる末梢手術の例としては、選択的末梢神経遮断術(SPD)という、神経の末梢部分を選択的に遮断する手術法があり、有効かつ安全な治療としてヨーロッパ神経内科学会や英国のガイドラインにも明記されています。参考:ジストニアの外科治療(平孝臣)定位脳手術は、脳の中の特定の構造物をターゲットとして、そこへ電極を留置して治療を行う方法のことです。細い電極の先端を、1mm単位で正確に特定の場所に留置する必要があることから、定位(位置を定める)脳手術といいます参考:東京女子医科大学脳神経外科定位脳手術:凝固術と脳深部刺激療法定位脳手術によって、不随意運動の改善が期待できます。ジストニアの人が受けられる支援は?出典 : 「遺伝性ジストニア」のみ、厚生労働省が指定する難病として認定されています。遺伝性ジストニアの患者であれば、ジストニアの医療費の自己負担割合が3割から2割に引き下げられるほか、世帯の所得に応じて医療費の自己負担上限額(月額)が設定されるので、経済的負担を緩和することができます。詳しい内容は以下のリンクをご参照ください。難病情報センター遺伝性ジストニア難病医療費助成制度遺伝性ジストニアの中でも、DYTシリーズとして指定されている特定の遺伝子が原因のジストニアを持つ18歳未満の患者であれば、小児慢性疾患として医療費の自己負担分の一部が助成される可能性があります。詳しくは以下のリンクを確認してみてください。小児慢性特定疾病の医療費助成について小児慢性特定疾病情報センター変形性筋ジストニー身体障害者福祉法に基づいて発行される身体障害者手帳の認定基準においては、身体の「機能」の障害を中心に認定の可否が評価されるほか、その障害が将来に渡っても回復する可能性が極めて少ないものという条件も挙げられています。ジストニアは症状が改善する場合も多いため、身体障害者手帳の習得が比較的難しいと言われていまが、症状が重い場合は手帳が発行されるケースもあるようです。一度自治体の福祉担当窓口に問い合わせてみるとよいでしょう。ジストニアの症状は一人ひとり違います。そのためジストニアであるからといって障害年金を受けられるわけではありません。しかし、眼瞼痙攣(がんけんけいれん)や歩行困難など、障害年金の障害認定に当てはまる症状がある場合は受給できる可能性があります。障害年金の受給条件としては以下の5点が挙げられます。・初診日(初めて医師の診察を受けた日)に国民or厚生or共済年金に加入していること・初診日までに一定以上保険料を払っていること・障害の程度が受給条件を満たしていること・初診日当時の年齢が20歳以上65歳未満であること・20歳未満だが先天性の障害を持つ、あるいは20歳前に障害を発症していること上記の条件を満たしていれば、身体障害者手帳を持たない人でも障害年金を申請することができます。実際に自分の症状が認定基準に当てはまるかどうかは、以下のリンクからご自身で確認してみてください。国民年金・厚生年金保険 障害認定基準まとめ出典 : 神経の異常が原因で起きるジストニアは、生命や知能を脅かすような病気ではありません。しかしその症状は、日常生活や仕事に支障をきたすことも少なくありません。病態の解明が進んでおらず、いまだに根治治療が確立されていないため、医療機関では薬物や注射療法、手術による対症療法によって症状の緩和を目指します。希少な遺伝性ジストニアが難病指定されているほか、その他のジストニアでも症状の程度によっては身体障害者手帳や障害年金の対象となり、各種支援を受けられる可能性があります。最後に、ジストニアを紹介するドキュメンタリー映画や、ジストニアを持ちながらも「左手のピアニスト」として活躍する智内威雄さんを以下に紹介します。ジストニアに関心のある方は、ぜひご覧になってください。ドキュメンタリー映画「ジストニア」左手のピア二スト智内威雄さん
2016年12月28日素行障害・行為障害(CD)とは?出典 : 素行障害・行為障害(Conduct Disorder)とは別名「素行症」と呼ばれる精神疾患であり、社会で決められたルールを守らず反抗的な行動を起こし続けてしまうという特徴があります。具体的な症状には人や物への暴力的な攻撃、窃盗や長期・複数回の家出などが挙げられます。素行症/素行障害はアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)において用いられている診断名です。一方、行為障害は世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)で用いられている名称ですが、ここでは「素行障害」という疾患名に統一して説明します。素行障害の主な症状出典 : 素行障害の主な症状として年齢相応の社会のルールを守ることができない、もしくは明らかに他者の人権を侵害していると考えられる行為を繰り返し、持続して行うことが挙げられます。素行障害の症状は下記の4パターンに分けられます。素行障害と診断されるには、加えて12ヶ月の間にいくつかの症状が継続していることや、6ヶ月の間に少なくとも1つの症状が発症していることなど様々な条件が定められています。1. 人または動物に対して攻撃的:いじめや取っ組み合いのけんか、凶器の使用、強盗、一方的な性行為を通して人や動物に対して残酷な行動を起こします。2. 所有物の破壊:わざと放火したり、自分の所有物ではないものを破壊したりすることで、相手に重大な損害を与えようとします。3. 人に嘘をつく・物を盗む:建物や車など無断で入ってはいけないところに侵入したり、自分の利益のためにとっさに嘘をついたり、万引きなどをして価値のある物を盗んだりします。4. 決められたルールの違反:門限が決められているにも関わらず夜に外出したり、学校をさぼったり、家出をしたりします。参考:素行障害l ハートクリニック参考書籍:日本精神神経学会/監修『DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院,2014)年代別の素行障害出典 : では素行障害には3種類あり、発症した年齢によって種類が分けられるとしています。小児期発症型の素行障害は10歳になるまでに素行障害の症状が発症することが特徴です。通常男の子に多く発症する傾向があり、発症すると暴力的になり、同世代集団の対人関係に障害を抱えることがあります。また小児期発症型の素行障害を抱えている人は、小児期早期に反抗挑戦性障害(ODD)に診断されている場合が多く、ADHD(注意欠如・多動症)や他の神経発達上の困難を抱えている傾向があります。この小児期発症型の素行障害は青年期に発症するよりも長引く傾向があります。参考:素行障害l ハートクリニック青年期発症型の素行障害は、10歳になるまでに素行障害の症状を発症していないことが条件です。小児期発症型の素行障害に比べて症状は軽く、成人になる前に症状が治りやすい傾向にあります。青年期発症型の素行障害を抱えている人はあまり攻撃的な行動は示さず、同世代集団のなかでも大きな対人関係の障害を抱えない傾向があります。素行障害の基準は満たしているが発症年齢が10歳より前か後か分からない場合には、特定不能の発症年齢と診断されます。素行障害を発症しやすい人出典 : 素行障害の発症率は小児期から青年期にかけて上昇し、女性よりも男性のほうが高いという研究結果が報告されています。素行障害を発症しやすい性格としてはネガティブであることと、自己制御を苦手とすることが挙げられ、具体的には下記のような行動を起こす傾向にある人を指します。・怒りっぽい・かんしゃくを起こしやすい・あまり人を信用できず、疑い深い・悪いことに対して罪悪感をあまり感じない・スリルを追い求める・先のことを考えずに強引に行動する素行障害の主な原因出典 : 素行障害は研究の結果、生物学的要因と環境の両方に原因があるとされており、これらが複雑に作用し合うことで発症すると言われています。素行障害の生物学的要因に関してはまだ研究途中であるため、決まった原因があるとは限りません。しかし、素行障害がある人はドパミンβヒドロキシラーゼ濃度が低かったり、セロトニン濃度が通常よりも異なる数値で見られる傾向があると言われています。また副腎でつくられる男性ホルモンの一種、デハイドロエピアンドロステロン(DHEA)が攻撃性と関連しており、素行障害をかかえている人はこのDHEAの数値が高い可能性があるという研究結果もあります。その他にも中枢神経の機能障害や損傷が原因となり、性格が変化してしまったり、情緒不安定な行動を起こしている場合は素行障害を併存している可能性があります。参考:素行障害l ハートクリニック環境要因としては家庭関係や周りの友人からの影響が大きいと言われています。家族や仲間から拒絶されているなどの孤独感を感じてしまうことで、反抗心が生まれ最終的に反社会的な行動を起こしてしまうことがあります。具体的に下記のような環境は素行障害を発症するきっかけになる恐れがあります。・親の子どもに対する拒絶や無視・厳しすぎるしつけ・身体的虐待・周囲の友人からの拒絶や暴力・夫婦が別居しているなどの不仲・家庭内の経済状況の悪化参考書籍:日本精神神経学会/監修『DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院,2014)素行障害の診断基準出典 : 以下はアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神障害の診断・統計のマニュアル』第5版)での診断基準です。以下のうちどの程度基準が当てはまっていたか、その症状がどのくらい重症かによって軽度・中等度・重度と判定されます。A.他者の基本的人権または年齢相応の主要な社会的規範または帰省を侵害することが反復し持続する行動様式で、以下の15の基準のうち、どの基準群からでも少なくとも3つが過去12カ月の間に存在し、基準の少なくとも1つは過去6カ月の間に存在している。人および動物に対する攻撃性1.しばしば他人をいじめ、脅迫し、または威嚇する。2.しばしば取っ組み合いの喧嘩を始める。3.他人に重大な身体的危害を与えるような凶器を使用したことがある。4.人に対して身体的に残酷であった。5.運動に対して身体的に残酷であった。6.被害者の面前での盗みをしたことがある。7.性行為を強いたことがある。所有物の破壊8.重大な損害を与えるために故意に放火したことがある。9.故意に他人の所有物を破壊したことがある。虚偽性や窃盗10.他人の居住、建造物、または車に侵入したことがある。11.物または好意を得たり、または義務を逃れるためしばしば嘘をつく。12.被害者の面前ではなく、多少価値のある物品を盗んだことがある(例:万引き、ただし破壊や侵入のないもの、文書偽造)。重大な規則違反13.親の禁止にもかかわらずしばしば夜間に外出する行為が13歳未満から始まる。14.親または親代わりの人の家に住んでいる間に、一晩中、家を空けたことが少なくとも2回、または長期にわたって家に帰らないことが1回あった。15.しばしば学校をなまける行為が13歳未満から始まる。B.その行動の障害は、臨床的に意味のある社会的、学業的、または職業的機能の障害を引き起こしている。C.その人が18歳以上の場合、反社会性パーソナリティ障害の基準を満たさない。出典:日本精神神経学会/監修『DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院,2014)反社会的パーソナリティ障害(ASPD)とは、法や倫理にかなった行動に従わなかったり、自己中心的で冷淡な他者への配慮が欠如していたり虚偽性、無責任さ、操作性や無謀さが特徴にある疾患です。18歳以上である場合、その診断基準を満たさないことが素行障害の診断条件となります。これに加え重度な素行障害がある人は「向社会的な情動が限られている」ことがあります。向社会的な情動が限られているとは、以下のような症状を指し、これらの症状のうち2つ以上を過去12ヶ月の中で発症していることが必要です。・後悔または罪責感の欠如:何か間違ったことをしたときに悪かったまたは罪責感を感じない(逮捕されたり、または刑罰に直面した場合だけ後悔することを除く)。自分の行為の否定的な結果に関する心配を全般的に欠いている。例えば誰かを傷つけた後で後悔しないし、規則を破った結果を気にしない。・冷淡-共感の欠如:他者の感情を無視し配慮することがない。その人は冷淡で無関心な人とされる。自分の行為が他者に相当な害を与えるような時でも、その人は他者に対してよりも自分自身に与える効果をより心配しているようである。・自分の振る舞いを気にしない:学校、仕事、その他の重要な活動でまずい、問題のある振る舞いを心配しない。期待されていることが明らかなときでもうまくやるのに必要な努力をすることがなく、典型的には自分のまずい振る舞いについて他者を非難する。・感情の浅薄さまたは欠如:浅薄で不誠実な表面的な方法(例:示される情動とは相反する行為、情動をすばやく入れたり、切ったり切り替えることができる)以外では、他者に気持ちを表現したり情動を示さないか、情動の表現は利益のために用いられる(例:他者を操ったり威嚇するために情動が表現される)。出典:日本精神神経学会/監修『DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院,2014)これらの向社会的な情動が限られているかどうか診断する場合には、本人と長期間関わりがある親・教師・友人などからの報告も必要になります。「素行障害」とはDSM-5で主に用いられる疾患名です。(本コラムはこれに照らし合わせ記述しています。)これに対し、ICD-10では主に「行為障害」という疾患名が用いられていますが、診断基準や原因などに大きな差はありません。しかしICD-10は反抗挑戦性障害を含める4つの疾患を行為障害の下位分類として定めている点が、DSM-5とは大きく異なっていると言えます。以下がICD-10の行為障害に含まれる下位分類の疾患です。1. 家庭限局性行為障害:家庭限局性行為障害とは家族が精神的にまいってしまうほどの、激しい家庭内暴力をおこしてしまう疾患です。この暴力的な行動は家庭内だけでみられ、学校生活や友人間では問題なくうまくやっていくことができることも特徴です。しかし、これらの家庭内暴力は統合失調症や強迫性障害、家庭関係がよくないことでおこる場合もあるため、見きわめることが重要です。2. 個人行動型行為障害:個人行動型行為障害とは、行為障害の症状を一人で行うことで診断される疾患です。つまり親しい友人がおらず、グループに所属しないことが条件であるといえます。3. 集団行動型行為障害:集団行動型行為障害は行為障害の症状を満たしているにもかかわらず、人間関係に問題を抱えておらず、友人がいることが特徴の疾患です。4. 反抗挑戦性障害:反抗挑戦性障害とは、親や教師など目上の人に対して拒絶的・反抗的な態度をとり、口論をしかけるなどの挑戦的な行動をおこしてしまう疾患です。反抗挑戦性障害は『DSM-5』では独立した疾患として扱われていますが、『ICD-10』では行為障害に含まれます。素行障害の合併症出典 : 素行障害の代表的な合併症として反抗挑戦性障害が挙げられますが、これは小児期発症型の素行障害をもつ子どもによくみられます。反抗挑戦性障害が重度になるにつれて素行障害の症状もあらわれてきてしまうのです。反抗挑戦性障害とは、親や教師など目上の人に対して拒絶的・反抗的な態度をとり、口論をしかけるなどの挑戦的な行動をおこしてしまう疾患です。合併してしまう主な原因は、自分より偉い人との間に挑戦的な感情をもってトラブルを起こしてしまうという、共通の症状があることと言われています。しかし素行障害は反抗挑戦性障害に比べて、人や動物に向けた殴るなどの攻撃的な行動や、物の破壊、または盗みや詐欺など違反行為がみられるため、両者をしっかりと区別することが重要です。また、そのほかの代表的な合併症としてADHD(注意欠陥・多動性障害)があげられ、ADHDをかかえている人が”人間不信的行動”という二次障害として素行障害を発症することがあります。大阪市立大学の児童精神科外来を受診した7歳から14歳のADHD41例を対象にした研究では、37%に反抗挑戦性障害が、22%に素行障害が認められました(Takahashi et al.,2007)。とは、不注意(集中力がない)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(考えずに行動してしまう)の3つの症状がみられる発達障害のことです。 年齢や発達に不釣り合いな行動が、社会的な活動や学業に支障をきたすことがあります。人間不信的行動とは、自尊心・自己肯定感が低下して「自分はダメな人間かも知れない」と思い、「そんな自分のことを誰も理解してくれない」という気持ちから、周囲の人を信じれなくなったときに起こしてしまう行動のことを指します。ADHDを発症している人は、自分自身がADHDであることを認識していないケースも多く、周りから理解が得られていない場合も多いです。そのため知らない間に人間不信になり、素行障害を発症しているということも少なくないのです。その他にも素行障害は・うつ病や双極性障害などが含まれる気分障害・いきなり攻撃性が爆発したように発症する間欠爆発症・ストレスに適応できないためにさまざまな心身症状が表れる適応障害の合併のリスクも高いと言われています。その理由は怒りっぽい、気分の波が激しいなどの症状が一致している傾向にあるからです。ADHDから始まり、”人間不信的行動”という二次障害として反抗挑戦性障害、素行障害、反社会的パーソナリティ障害へと展開していくことがあります。この一連の流れは破壊性行動障害(DBD)マーチと呼ばれ齋藤万比古らによって発表された概念です。しかしDBDマーチに対しては様々な考えがあり、まだ確立していない概念であると言えます。参考:青少年の心の障害と自立支援l 国立国際医療センター国府台病院齊藤万比古素行障害が気になった時の相談先出典 : 素行障害は反抗挑戦性障害やADHD、うつ病などの、様々な合併症と関わりあっている場合が多く、年をとるにつれて症状が複雑化しやすい傾向があります。それに加えて年齢が上がってからの治療は、素行障害がある子どもが治療に対して抵抗することがあるため早期に診察・治療することが推奨されています。年齢相応の社会のルールを守ることができない、もしくは明らかに他者の人権を侵害していると考えられる行為を繰り返ってしまう場合は以下の相談先に相談するか、医療機関の受診をおすすめします。■児童相談所:児童相談所は、すべての都道府県と政令指定都市に最低1つ以上設置されている児童福祉の専門機関です。主に、「子どもの養育に関する相談」、「障害に関する相談」、「性格や行動の問題に関する相談」などの育児に関する相談ができる機関となっています。全国児童相談所一覧l 厚生労働省■全国精神保健福祉センター:各県、政令市にはほぼ一か所ずつ設置されている、保健・精神保健に関する公的な窓口です。精神保健福祉に関する相談をすることができます。精神科医、臨床心理技術者、作業療法士、保健師、看護師などの専門職が配置されています。相談については、予約制、健康保険の適応があるところがあります。詳細は、それぞれのセンターにお問い合わせください。全国の精神保健福祉センター一覧l 厚生労働省■精神科:心の症状、心の病気を扱う科です。心の症状とは具体的に不安、抑うつ、不眠、イライラ、幻覚、幻聴、妄想などのことです。心の症状に対して治療を行います。■心療内科:心と体、それだけでなく、その人をとりまく環境等も考慮して扱う科です。上記の心の症状だけでなく、ほてり、動悸などの身体的症状とその人の社会的背景、家庭環境なども考慮して治療を行います。精神科、心療内科どちらに行ったらいいか迷う方もいらっしゃるかもしれませんが、素行障害の場合は精神科を受診しても、心療内科を受診してもどちらでも大丈夫です。素行障害の治療法出典 : 素行障害の治療法として主に薬物療法、ペアレント・トレーニング、認知行動療法など様々な方法が挙げられます。なぜなら素行障害を発症する原因は一人ひとり異なる場合が多く、その原因に応じた治療法が選ばれるからです。そのため素行障害では一人ひとりに合った原因をしっかりと特定し、根本的な治療をすることが大切になっていきます。■薬物療法:薬物療法に関しては素行障害の原因に直接的な効果を発揮する薬はまだ開発されていないため、興奮や衝動性などの症状を抑える薬が処方されます。■ペアレントトレーニング:ペアレントレーニングとは、保護者の方々が子どもと良好な関わり方ができるように学ぶ保護者向けプログラムです。親は子どもの反抗的な行動の動機、行動のパターンを理解・分析する訓練をすることによって、問題行動に対して上手く対応できることを目指します。具体的には以下のような基本的な考え方を導入することがあります。・子どもの良い行動をほめる・望ましくない行動をした場合定めたルールに沿って一貫した対応をする・達成しやすい指示をし、積極的にほめる機会を作る・指示をできるだけスモールステップで目標を定める■ソーシャルスキルトレーニング(SST):素行障害のある年少者本人に対する支援策として実施されることが多いトレーニングです。ソーシャルスキルトレーニングとは、人が社会でほかの人と関わりながら生きていくために欠かせないスキルを身につける訓練のことを指します。具体的には遊び、勉強、スポーツなどを通してゆっくりと社会性を身につけていきます。しかし根本的な原因の解消が難しい場合、例えば子どもがおかれている環境の改善が困難な場合などは、上記の治療法だけではなく自宅を離れて治療にあたることも考えられます。まとめ出典 : 素行障害は成長に見合った社会のルールを守ることができず、他者の人権を侵害する行為を繰り返し、持続して行ってしまう疾患です。症状が悪化することによって最終的には退学や職場適応の問題、性感染症、身体的負傷など様々な問題を引き起こしてしまう恐れもあります。一方で、素行障害は原因を早期に解明し適切に対処することができれば治療・改善していくことができる疾患です。素行障害の症状が当てはまる場合は身近にいる専門家に相談することをおすすめします。
2016年12月27日コミュニケーション障害とは出典 : 近年コミュニケーション障害は“コミュ障”として一般的に知られるようになりました。いわゆる“コミュ障”という言葉は、2ちゃんねるなどのBBS(掲示板)やSNS(ソーシャル・ネットワーク)で作られたネット用語です。この“コミュ障”の特徴としては、重度の人見知りで人とまともに話すことができない、緊張して異性と話すことをむずかしいと感じる、同じ言葉を連呼する、どもってしまう、他人に興味がなく自分の意見を押しつけてしまう、などの傾向にある人のことを指すことが多いようです。しかし医学的な観点から見たコミュニケーション障害は、この“コミュ障”とは少し異なります。アメリカ精神医学会による診断基準である『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)においてコミュニケーション障害とは、ことばを扱うことに対して障害が発生する複数の疾患が一つにまとめられた、コミュニケーション症群/コミュニケーション障害群(Communication Disorders)という総称として認識されているのです。『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)/2014年医学書院コミュニケーション症群/コミュニケーション障害群とはことばを扱って他者とコミュニケーションをとることに困難が生じる疾患群です。具体的には、・言葉を相手に伝わるように発声することが困難である・すらすら、止まらずに話すことが困難である・他の人と円滑に会話することが困難である・相手の話していることを上手くくみ取ることが困難である・正しい言葉の使い方をすることが困難であるといった症状が挙げられます。人は認知や発声など多くの機能・能力をつかって他者とコミュニケーションを図ります。そのためコミュニケーションに何かしらの障害が生じている場合は、特定された一つの原因が作用している訳ではありません。その上、発症する症状は疾患によってさまざまです。そこで症状に合わせた5つの疾患が定められ、コミュニケーション症群/コミュニケーション障害群としてまとめられているのです。5つの疾患とは言語症、語音症、小児期発症流暢症(吃音)、社会的(語用論的)コミュニケーション症、および特定不能のコミュニケーション症群です。これらの疾患は主に幼児期、小児期、青年期に発症する傾向があり、成人になった後にいきなり発症することはあまり認められていません。本コラムではコミュニケーション症群/コミュニケーション障害群を、以下コミュニケーション障害と表記します。コミュニケーション障害の種類出典 : 言語症とは話したり、書いたりするために言語を取得することの困難さを特徴とする疾患です。それに伴い、使える語彙が少ない、正しい文章を作る力が弱く主語と述語の順番がぐちゃぐちゃになる、相手に自分の思ったことを正しく伝える表現力が弱いなどの症状が発生します。具体的には、・過去の話を話すことが困難である・話題に応じた適切な単語を選ぶことが困難である・電話番号や買い物リストを覚えることが困難である・一番伝えたいことをずれのないように伝えることを難しいと感じたりするといった症状が挙げられます。こうした症状は、その人の成長の段階に応じて、社会参加、学業成績、職業的能力など様々な場面に影響を与える傾向があります。言語症は通常発達期初期に発症することが多いため、言語症を発症しているのか、言語能力の取得のスピードの正常な範囲内での遅れであるのかが分かりにくい場合があります。そこで言語能力の個人差が安定すると考えられている、4歳を基準として診断することが多いです。4歳以降に言語症と診断された場合には個人差はありますが、成人期になっても持続する可能性があります。語音症とは、言葉をうまく発声できないことで引き起こる疾患です。語音症がある人が話している内容を周囲の人が完全には理解することができず、意思伝達が正しく行われない場合があります。語音症と診断される条件の一つとして社会参加、学業成績または職業的能力に対して少なからず1つ以上に影響が発生していることが挙げられます。人は話すとき、言葉がどういう響きを持つのかという音韻的知識と、会話のために呼吸と発声をしながら顎、舌、そして唇の運動を調整する能力の両方が求められます。語音症はこれらがバランスよく発達しない場合に引き起こされます。言葉の発音がその子の年齢及び発達と比較し、期待されるものになっていない場合に診断されます。症状の始まりは発達早期ですが子どもの成長スピードには個人差があるため、見極めの基準は3歳で分けられています。定型発達の場合、3歳では会話の大部分が分かりやすいものであることが求められます。また、8歳までにはほとんどの単語が正確に発音できることが求められますが、それまでに発音違いがある場合は正常範囲とみなされます。語音症は治療することができない疾患ではなく、治療をすれば会話の困難は改善することが多い傾向にあります。しかし、言語症が語音症と併存している場合は限局性学習症が発症していないかチェックする必要があります。『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)/2014年医学書院出典 : 小児期発症流暢症とは吃音(きつおん)とも呼ばれ、どもったり、会話の途中でいきなり話せなくなったりしてしまう症状を中心とした疾患です。2016年度の月9ドラマ『ラヴソング』にも取り上げられ知名度も上がっている疾患です。具体的には・あー、あーというように音声や音節を頻繁に反復したり、延長したりする・単語が不自然な区切りで途切れる・会話の途中でいきなり無言になる・過剰な身体的緊張を伴って話す・苦手とする言葉を避けた、遠回しの言い方を用いるなどの症状が挙げられます。小児期発症流暢症は人前に立つとき、就職の面接のときなどストレスや不安が伴う場面でより症状が重くなる傾向があります。一方音読したり、歌ったり、置物や動植物に話しかけるときは症状が現れないことが多いです。小児期発症流暢症を抱えている80~90パーセントの人が6歳までに発症しているといわれており、発症するときの年齢は2~7歳である場合が多いです。小児期発症流暢症は本人や周囲の人が気づかない間に急に発症する傾向があります。そのとき本人は急に話すことが苦手になってしまったことに戸惑いを感じ、徐々に人前で話す機会を避けたり、短く単純な発言を用いたりし始めます。最終的には社会との関わりをできるだけ断とうとする場合があります。しかし65~85パーセントの子どもたちが、小児期発症流暢症から回復するという研究結果もでており、決して症状の治療や改善ができない疾患ではないと言えるでしょう。またいわゆる“コミュ障”の主な症状であるどもりが、青年期またはそれ以降に出現する場合があります。それは小児期発症流暢症ではなく“成人期発症の非流暢性”です。これはその他の身体・精神疾患、神経損傷と関係している場合があるため、固有の疾患名は存在しません。『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)/2014年医学書院社会的(語用論的)コミュニケーション症は、社会生活においてのコミュニケーションを難しいと感じてしまうことが特徴の疾患です。本コラムは以下、社会的コミュニケーション症と記載します。代表的な症状としては以下の4つが挙げられます。1. 周りの人との挨拶、情報の共有など、社会生活を送る上で重要なコミュニケーションをとることが困難である2. 自身が置かれている状況に応じて適切な話し方を選択することが困難である話す相手が大人か子どもか、授業中と遊び時間など状況の変化に対して堅苦しすぎる言葉の使用を避けるなど、場面に応じてスムーズに話し方を変えることに難しさを感じる傾向があります。3. 人とコミュニケーションをとる上でのルールに従うことが困難である相手の話を聞かず自分の話ばかりしてしまったり、相手の理解を得られていないにもかかわらず繰り返しの説明を避けてどんどん話を進めてしまったり、身振り手振りのコミュニケーションを理解できなかったりすることが挙げられます。4. 相手が言いたいことを推測、察することが困難である相手がはっきりとは言わないけれど何かを要求している”ほのめかし”、論理的では無い文脈や、たとえ話などの曖昧な言葉の理解ができない場合があります。社会的コミュニケーション症がある人は過去に言語の発達に遅れがあったり、言語症を患っていた場合もあります。また重度の症状になると、コミュニケーション上の失敗を恐れ、徐々に社会的な関わりあいを避けるようになる傾向もあります。社会的コミュニケーション症は社会生活における、高度なコミュニケーションスキルに影響を与える疾患です。そのため言語や社会的交流がより複雑になる青年期早期まで発症していることが分からない可能性もあります。上記の疾患のどれにも当てはまらないけれど、日常生活においてコミュニケーションの障害が引き起こされたり、コミュニケーション症に特徴的な症状が発症していたりする場合に診断されます。コミュニケーション障害とその他の疾患の違い出典 : コミュニケーション障害は一般的にアスペルガー障害や自閉症と呼ばれる広汎性発達障害の特性に伴うものや、他の精神疾患、知的能力障害に伴うものには含まれません。しかし他の精神疾患、知的能力障害から生じることばの障害の症状よりも、明らかにコミュニケーション障害の症状が重度である場合があります。その際にはコミュニケーション障害を併存・合併していると判断されます。コミュニケーションに困難が発生するといわれている代表的な疾患として以下のものが挙げられます。■医薬品の副作用:医薬品の副作用としてどもりなどの吃音が生じる場合があります。■構造的欠陥:口蓋裂(こうがいれつ)などにより、会話をすることを困難に感じることがあります。口唇口蓋裂についての基礎知識l 愛知学院大学■構音障害:構音障害とは脳性麻痺によって音を作る器官やその動きに影響が与えられ、発音がうまくできない状態が引き起こされる疾患です。■選択性緘黙(かんもく):選択性緘黙とは1つまたは複数の状況や環境で会話ができず、黙り込んでしまうことが特徴の不安症の一つです。選択性緘黙を抱えている人の多くは、家庭内や親しい友人と一緒にいるなどの安心できる状況下では正常な会話ができることが多いです。■トゥレット症:児童期から青年期にみられるチック症の一種で、多様な「運動チック」と1つ以上の「音声チック」が1年以上持続することを特徴とする精神・神経疾患です。この疾患は小児期発症流暢症の反復的な音声と似ている症状であるため注意が必要です。■自閉スペクトラム症:自閉症スペクトラム障害とは対人コミュニケーションに困難さがあり、限定された行動、興味、反復行動がある障害です。自閉スペクトラム症では、行動、興味、及び活動の限定された反復的な様式が存在し、社会的コミュニケーション症ではそれらの症状がが存在しないことで区別されます。■社交不安症:社交不安症とは、対人関係に対する不安、恐怖、そして苦痛のためコミュニケーションスキルが発達しているにもかかわらず、人と会話をすることに問題を抱えてしまう精神疾患です。コミュニケーション障害の原因出典 : コミュニケーション障害の原因はストレスや、遺伝など諸説ありますが未だ明確にされていないのが現状です。その理由として対人コミュニケーションを取る際に必要となる能力の種類の多さが挙げられます。人は認知などの脳の働きや、聞く・発声するなどの運動能力など、様々な能力をつかって他者とコミュニケーションを図ります。そのためコミュニケーション障害が生じている場合は、一人ひとりの背景に異なった原因があると考えることが大切です。その事例としてSLP(Speech Language Therapist)が行っている、コミュニケーション障害の診断評価が挙げられます。SLPとは、アメリカで主に活躍していると呼ばれる言語に関する療法を行う専門家です。そこでの分析の手法はSLPの数だけ、患者の数だけあると言われており、コミュニケーション障害の原因は多様に広がっていることが分かります。についてl The Nemours Foundation子どもの言語・コミュニケーション障害の臨床と語用論/ 大井学/ 金沢大学1994年コミュニケーション障害の相談先出典 : コミュニケーション障害は幼少期・小児期・青年期初期に主に発症する疾患ですが、決して症状の治療・改善ができない疾患ではありません。例として小児期発症流暢症を挙げると65~85パーセントの子どもたちが回復するという研究結果がでています。しかし年齢が上がってからの治療は、子どもがすでに話すことに対して強い抵抗感を覚えてしまい、治療が思うように進まない可能性があるため、早期に診察・治療することがすすめられています。コミュニケーション障害の場合は以下の相談先に相談するか、医療機関の受診をおすすめします。■児童相談所:児童相談所は、すべての都道府県と政令指定都市に最低1つ以上設置されている児童福祉の専門機関です。主に、「子どもの養育に関する相談」、「障害に関する相談」、「性格や行動の問題に関する相談」などの育児に関する相談ができる機関となっています。全国児童相談所一覧l 厚生労働省■全国精神保健福祉センター:各県、政令市にはほぼ一か所ずつ設置されている、保健・精神保健に関する公的な窓口です。精神保健福祉に関する相談をすることができます。精神科医、臨床心理技術者、作業療法士、保健師、看護師などの専門職が配置されています。相談については、予約制、健康保険の適応があるところがあります。詳細は、それぞれのセンターにお問い合わせください。全国の精神保健福祉センターを探すl 厚生労働省■耳鼻咽喉科:言語聴覚士がいるケースも多いですので、吃音の場合でも耳鼻咽喉科に行く場合もあります。特にお子さんが吃音の場合は耳鼻咽喉科をご選択ください。■精神科:心の症状、心の病気を扱う科です。心の症状とは具体的に不安、抑うつ、不眠、イライラ、幻覚、幻聴、妄想などのことです。心の症状に対して治療を行います。■心療内科:心と体、それだけでなく、その人をとりまく環境等も考慮して扱う科です。上記の心の症状だけでなく、ほてり、動悸などの身体的症状とその人の社会的背景、家庭環境なども考慮して治療を行います。精神科、心療内科どちらに行ったらいいか迷う方もいらっしゃるかもしれませんが、コミュニケーション障害の場合は精神科を受診しても、心療内科を受診してもどちらでも大丈夫です。コミュニケーション障害の治療方法出典 : コミュニケーション障害の治療方法として投薬による治療法と、精神療法が主に挙げられます。投薬に関しては現在研究中の段階であるため、コミュニケーション障害を直接的に治療する薬が処方されることはあまりないでしょう。しかし明らかに精神的な問題によって、どもりなどのコミュニケーション障害の症状が出ているという場合は、気分安定剤、抗不安薬などを処方される場合もあります。また、コミュニケーション障害のストレスによって発症する不安障害やうつ病などの二次障害には個々の症状にあった薬を処方されることがあります。コミュニケーション障害の治療のための精神療法として、認知行動療法が挙げられます。認知行動療法とは物事の受け止め方や考え方である“認知”に働きかけ、こころを楽にする療法の一つです。人間はストレスとなる出来事が起こると、それを認知し、認知が感情・気分や行動にも影響を及ぼすようになっています。認知行動療法では、認知を通して、人間の感情・気分と行動の両方にアプローチし、良い循環を起こせるように働きかけていきます。コミュニケーション障害はストレスや不安により更に症状が悪化し、最終的に重度のコミュニケーション障害を抱えている人は社会との関わりを避けるようになる傾向があるといわれています。そこで認知行動療法を行うことによって、コミュニケーション障害によって引き起こされるネガティブな感情やストレス、ことばを扱うことへの不安感を軽くすることを目指します。また、子どものコミュニケーション障害の治療として言語能力を鍛えるために読書や計算問題を繰り返し解く方法も行われています。発達障害のある子どもに見られるコミュニケーションの特徴l LITALICOジュニアまとめ出典 : コミュニケーション障害とは、人前でしゃべったり、人と会話したりするときに、自身が思った通りに話すことを苦手とする複数の疾患が一つにまとめられた総称です。言語症、語音症、小児期発症流暢症(吃音)、社会的(語用論的)コミュニケーション症、および他の特定されるまたは特定不能のコミュニケーション症群が含まれており原因や治療法は様々です。コミュニケーションは語彙の知識、認知や発声など多くの能力を必要とする行為です。上手く話すという基準は人それぞれであり、話すということにはその人の個性が出ます。話すということに対して、周囲と比べて過度に劣等感を感じたり、考えすぎたりするのではなく、自分に合った話し方を探していくと良いでしょう。また、周囲の人も、「話し方はこうあるべき」という基準を押し付けず、その人の話し方と、自分の話し方の違いを尊重し合いながらコミュニケーションを試みて行きましょう。しかし、話すことの抵抗感がとれず、日常生活や身体の調子に支障が出ているなどの場合は、早めに専門家に相談して、適切なサポートを受けることをお勧めします。
2016年12月25日生理の遅れから、多くの女性が妊娠に気付くのは妊娠2ヶ月目以降です。妊娠2ヶ月とは、妊娠週数でいうと妊娠4週目、妊娠5週目、妊娠6週目、妊娠7週目にあたります。着床からおなかの中で赤ちゃんとして生命が育まれる大切な時期といえるでしょう。妊娠が判明してうれしい半面、精神的にも情緒不安定になったりしやすい時期でもあります。妊娠2ヶ月目の女性は何に気をつければよいでしょうか。症状や注意点をご紹介します。妊娠2ヶ月目に見られる体の変化■生理がこない生理が来ないことで妊娠に気付く方も多いでしょう。生理の周期が28日など定期的であれば、遅れに気付くことは難しいことではありません。しかし、生理の周期が不安定なのであれば、必ずしもこの時期に妊娠に気付くわけではありません。場合によっては妊娠3ヶ月、妊娠4ヶ月…まで気づかないケースも。■熱っぽい黄体ホルモンの分泌から、高温期が続きます。高温期が続くことで熱っぽいと感じる方も多いでしょう。通常であれば、生理とともに高温期は終了しますが、妊娠をしている場合、胎盤が作られる妊娠12~15週まで高温期が続きます。常に微熱があるように感じてしまうのはこのためです。身体が内側から火照るような感覚になります。■眠い高温期が続き体温が上がっていることから、いつもよりも眠気を多く感じる方が多いようです。また、妊娠初期に分泌されるホルモン自体も眠気を生じさせるといわれています。眠い時には無理をせず仮眠をとるのが一番ですが、仕事をしているなど、自由に仮眠が取れない方も多いと思います。少しでもよいので目をつぶったり、頭を休ませたりすると、よいかもしれません。■妊娠初期は情緒不安定にも月経前症候群(PMS)はご存じでしょうか。生理前に黄体ホルモンの分泌により、イライラしたり感情的になったり落ち込んだり。妊娠初期では、ホルモンの分泌により、月経前症候群の状態がずっと続くということになります。ホルモンの影響に加えて、出産への恐怖、赤ちゃんを育てるプレッシャー、金銭的な心配など、妊娠の発覚には喜びと共に大きなストレスもつきものです。必要以上に心配せず、出産までの間に徐々に準備を進めましょう。不安やストレスを感じたら、妊娠初期は特に精神的に不安定になりやすいと自覚を持って、無理をしないように準備を進めてください。▼関連記事 ホルモンが増え体や心に変化が! つわりの症状も妊娠2ヶ月目から妊娠2ヶ月目からつわりの症状が出始めることもあります。つわりには、さまざまな理由が考えられます。ホルモンの急激な分泌はそのひとつです。精神面だけではなく、身体的にも不快感を与えることがあります。妊娠初期の5~6週ごろになると、つわりの症状が現れ始めます。妊婦さんにより個人差はありますが、吐気や嘔吐が多くなる吐きづわり、食欲が旺盛になる食べづわりなどのほか、食べ物の嗜好の変化、嗅覚の変化、1日を通しての食欲不振などがあります。つわりの原因は解明されていませんが、大きな見解としては、ママの体が栄養不足の際に症状が悪化するような傾向があります。つわりは病気ではなく、妊娠の生理的現象ですが、つわりの症状が悪化し、食事や水分を摂取できなくなったら、受診が必要があります。▼関連記事 妊娠するとなる、つわりってどんな症状? 原因は? 妊娠の初期症状がない場合も何も妊娠初期の症状が出ない、という場合も産婦人科にかかり、問題なく着床、成長の確認ができていれば心配は不要です。全員が全ての妊娠の兆候に当てはまる訳ではありません。全くつわりがないからといって、赤ちゃんが成長していないという訳ではありません。▼関連記事 妊娠初期症状がないのはおかしいこと? 妊娠検査薬で陽性! 初めての産婦人科、健診の内容とは?妊娠検査薬で陽性反応も出て、いよいよ妊娠を確信しました。正常に妊娠が進行しているか、産婦人科で診察を受けましょう。初めての産婦人科ともなると緊張するものですね。まずは、そもそも本当に妊娠をしているのか、そして正常に妊娠をしているのかを調べる検査が行われます。再度尿検査を行う場合と、市販の検査薬で陽性が出ているとを伝えると、内診やエコーの検査へ進む場合もあります。検査に不安のある場合は、あらかじめ受診予定の産婦人科に聞くとよいでしょう。▼関連記事 妊娠初期検査。妊婦健診って何をするの? 妊娠6週以下の場合は、胎嚢がうまく確認できない場合もあります。その場合は、1週間後に再受診となります。胎嚢、そして心拍が確認できると妊娠確定となります。子宮内膜ではなく卵管や卵巣のまわりに着床してしまう子宮外妊娠(異所性妊娠)になってしまうと、生理予定日の1週間後くらいからピンク色のおりものや少量の出血が続き、下腹部の痛みが生じるため生理と勘違いすることもあります。放置すれば受精卵の成長とともに症状が強まり、卵管流産や卵管破裂によるショック症状を引き起こすので、一刻も早い処置が必要となります。▼関連記事 「子宮外妊娠」に関する記事一覧 ■妊娠6週の赤ちゃんの成長は?妊娠6週の赤ちゃんは、頭殿長(頭からお尻までの長さ)がまだ1cmにも満たない大きさです。しかしこの時期は、「器官形成期」と呼ばれ、体の重要な器官が形成される時期なのです。目、口、鼻をはじめ、手や足、指の原型となる小さな芽がかたち作られていきます。さらに耳の神経や脳、脊髄、生殖器も急速に発達します。心臓・腎臓・肝臓などの臓器が形成され始めるのもこの時期です。母子手帳はいつ、どこでもらえるの?妊娠確定となったら母子手帳を受け取りましょう。母子手帳はお住まいの自治体の役所の窓口に「妊娠届出書」を提出すると交付されます。「妊娠届出書」には、「妊娠週数」「出産予定日」「妊娠の診断を受けた医療機関名」などの記入が必要です。印鑑や医療機関の証明書は必要ありません。▼関連記事 「母子手帳」に関する記事一覧 妊娠初期に運動してしまった! 赤ちゃんへの影響は?赤ちゃんができたことを知らず、今まで通りの生活を続けてしまっていたという方も多いのではないでしょうか。いつも通りにジムに行ってしまったという方や職業上少々ハードに動いてしまったという方は心配もあるでしょう。以前は、妊娠初期は安定期に入るまでは運動はしてはいけないなどと言われてきました。実際は妊婦本人の体調が悪くなければ、軽く体を動かすのは問題ありません。妊娠が判明してから以降は、事故や強い接触などを避ける意味でも激しい運動は避けた方がよいでしょう。普段運動する習慣があっても、走る、ジャンプするといった激しい運動は控えるようにしましょう。妊娠初期は、胎盤が完成していないので流産をしやすい時期といえます。運動不足と感じる方には軽いウォーキングがおすすめです。▼関連記事 妊娠初期に運動をしても大丈夫? 妊娠後も仕事は続けたい!働く女性が増える中、臨月まで仕事を続けるケースも珍しくはなくなりました。妊娠初期だとまだまだ外見ではわかりにくく、本人も仕事ができるうちはまだバリバリと働きたいと希望する方も多いでしょう。安定期に入る前に職場に妊娠の報告をするのは気が引けてしまうかもしれません。しかしその半面、妊娠初期こそつわりの症状も出やすく、赤ちゃんの器官形成期で大切な時期ともいえますので、業務の負担を軽減するお願いが必要かもしれません。職場の雰囲気や業務内容、また体調により、報告のタイミングを決めるのは自分以外にありませんが、あくまでも無理は厳禁です。職場に配慮しつつも、おなかの赤ちゃんは自分で守るという強い意思表示は、この先、出産後にもきっと役立つでしょう。▼関連記事 妊娠初期に仕事をしていても大丈夫? 妊娠しているとは知らずに薬を飲んでしまった!だるい、熱があるのではないかと妊娠初期に風邪薬を飲んでしまうこともあるでしょう。市販薬であれば、きちんと用法・容量を守って服用していれば、お腹の赤ちゃんの成長へ影響を及ぼすことはありません。しかし、胎盤が完成する前の妊娠初期の段階では、胎盤に備わるフィルター的な機能も未完成で、胎児を巡る血液は母親の血液になります。妊娠判明後は、風邪や頭痛などの不調でも、かかりつけの産婦人科に相談しましょう。▼関連記事 妊娠初期に市販の薬を飲んでも大丈夫? 妊娠中のお酒とタバコの本当のところ妊娠がわかったとはいえ、今まで続けてきた飲酒や喫煙を急に控えるのは難しいかもしれません。お酒やたばこが、赤ちゃんに悪影響を及ぼすとわかっていてもやめられないという方もいるかもしれませんね。では、お酒、タバコは実際にどのように赤ちゃんに悪影響を与えてしまうのでしょうか。おなかの中で何が起きるかをしっかりと知ることで、控えることができるかもしれません。▼関連記事 「妊娠中に飲酒しない」ことが大切な理由とは タバコは一度吸い始めてしまうと、常習性が身についてしまう可能性も大きいものです。しかし、喫煙により摂取するニコチンやその他の有害物質は確実におなかの赤ちゃんにも届きます。特に妊娠初期では、母親の血液が大事な器官を生成する元となるのです。▼関連記事 ママが「妊娠を機に禁煙する」ことが大切な理由とは 妊娠2ヶ月、週数別の注意点では、細かく妊娠週数別にママの症状や胎児の様子を見て行きましょう。■妊娠4週生理が止まります。高温期が続き、眠気やだるさを感じます。赤ちゃんは、早くも脳・脊髄・心臓・中枢神経など生命としてのベースがつくられます。この時期は、まだ「胎芽」と呼ばれます。▼関連記事 妊娠4週 ■妊娠5週胸が張るなどの症状も。子宮が大きくなり、チクチクとした痛みを下腹部に感じることもあるでしょう。胎芽の大きさは約1.5ミリ程度。胎嚢という袋に入っています。人類の進化を追っての成長が見られる時。頭部と腹部がはっきりとわかるようになります。▼関連記事 妊娠5週 ■妊娠6週黄体ホルモンの分泌が続き、さらに高温期も続きます。体の不調と共に精神的にも不安定になりやすい時期です。胎児には、心拍が確認されはじめる時期。心拍が確認されると初期流産の確立がぐっと下がります。目・鼻・口などのパーツも徐々に成形されます。▼関連記事 妊娠6週 ■妊娠7週つわりが始まるころです。吐き気・おう吐・食欲不振、もしくは食べづわりの症状が出る場合があります。妊娠前と味覚や嗜好が変わることもあるでしょう。胎児は14ミリ程度にまで大きくなっています。エコーでも赤ちゃんとわかる姿に成長しています。▼関連記事 妊娠7週 一気に器官形成が進み各パーツもハッキリ 妊娠2ヶ月のエコー(超音波)写真 妊娠、出産までの費用とは?妊娠が確認できたら、気になるのは実際にかかる費用や金額。出産まで一体いくら費用がかかるのでしょうか。入院、出産にかかる金額は地域などにより違いがあります。東京都の平均が平成25年調べで約59万円でした。分娩や入院にかかる費用以外にも、毎月の定期検診代、マタニティ用品代、ベビー用品やオムツ代などの費用も考慮しなければなりません。家庭によって、必要なものも変わります。自分の家庭で必ず必要なものを書きだしてみましょう。また、出産育児給付金など自治体からの給付金と支払いの手続きも確認しましょう。▼関連記事 妊娠がわかったら、妊娠・出産にかかる費用の相場をチェック まとめ妊娠初期は、流産しやすい時期でもあります。流産は全妊娠の約15%に起こることで、そのうち約80%が12週未満。これらの流産の多くは胎児の染色体異常によるものなので、残念ながら、避けがたいこと。妊婦さんのせいではありません。2ヶ月目だと、つわりなどの症状が出始めたとしても、まだまだおなかの中に赤ちゃんの存在を実感できないかもしれません。しかし、この4週間で赤ちゃんは驚くべき成長を遂げています。妊娠することで、身体的にも精神的にもさまざまな変化が訪れます。また、生活も妊娠前とは変ってしまいますが、変化に目を向けつつもマタニティライフを楽しみましょう。
2016年12月23日子どもの低緊張とは出典 : 低緊張とは、自分の体を支えるための筋肉の張りが弱い状態のことをいいます。専門的には、筋緊張低下症といわれており、その状態の子どもをフロッピーインファント(floppy infant)ということもあります。フロッピー(floppy)とは「ぐにゃっとした」、インファント(infant)は「子ども」という意味で、それらをつなげた言葉です。低緊張の子どもは、姿勢がよくなかったり、体がふにゃふにゃとしていたりするという印象がもたれます。というのも、低緊張の子どもは体を支えるための筋肉の張りが弱く、思うように体の動きをコントロールすることができないためです。低緊張の子どもは、体の筋肉の張りの弱さゆえに、運動発達に遅れがみられる傾向にあります。首や腰がすわるのが遅れることにより、その症状が顕在化し、乳幼児健診の際に医師から指摘されることが多いようです。低緊張には2つの種類があります。一つめは、良性筋緊張低下症といわれるもので、生後間もなくは、体がだらんとした状態にあるものの、発達の経過とともに低緊張が改善される場合です。二つめには、何らかの疾患や障害があり、その症状の一つとして体がだらんとした低緊張の状態が現れる場合です。例として、筋ジストロフィーやダウン症候群などが挙げられます。体がふにゃふにゃしている、長い間立っていられない、など低緊張の状態に気付いた場合には、原因となる疾患や障害がないかどうか調べ、専門的なアプローチを行うことが必要です。疾患や障害の程度にもよりますが、適切なリハビリを行い、筋肉を十分に使うことで少しずつ改善されていきます。低緊張の子どもの具体的な症状出典 : 低緊張の具体的な様子を知る前に、体の筋肉の緊張について理解しておくとよいでしょう。筋肉の緊張は、テントの張りに例えられます。テントがきちんと立つためには、適当な力でロープを張らなければなりません。ロープが緩んでいる状態だとぐらぐらとしてしまいます。筋緊張が低いお子さんの場合は、ロープの役割をする筋肉の張りが弱いために、テントとなる体は不安定になります。低緊張の子どもの特徴としては以下のようなものが挙げられます。◇口元・よだれがよく出る◇姿勢・うつぶせの姿勢から手だけで体を起こそうとする・立ち上がるときに、足の小指が浮いている・移動するときに、おしりを床につけてずりばいする・歩くときにおしりを後ろに突き出し、足を横に大きく広げている◇関節の極端な柔らかさ・足首を曲げたときに、足の甲がすねにつく・手のひらを内側に曲げたときに、腕につく低緊張の子どもの中には、同時に関節や靭帯(じんたい)の機能が弱い場合もあり、股やひざの関節に脱臼(だっきゅう)を起こすことがあります。足や手の左右に形の差がないかどうかを確認してみてください。立てた膝の高さや、足や手のしわが非対称の場合には、脱臼を起こしている可能性があります。低緊張の子どもは動くのを嫌がることがあります。筋肉の張りが弱く、体がぐらぐらとするために体を動かすことに対して不安を抱きやすいのです。また、低緊張の子どもは、疲れやすいという特徴もあります。というのも、不安定になる姿勢をなんとかまっすぐに保とうとするために、力が入る部分を過度に緊張させるからです。そのような行為が生活の中で幾度となく繰り返されるため、体の筋肉がアンバランスになることもあります。安藤忠/編『新版ダウン症児の育ち方・育て方』2002年 学研/刊 p173-175低緊張に関わる疾患、障害出典 : 低緊張には二つの場合があります。一つは、病気が原因ではなく、単に筋緊張や筋力が弱い場合です。このタイプの低緊張は、時間の経過とともに筋肉の緊張は元通りになります。二つ目には、疾患、障害の症状の一つとして低緊張が現れている場合です。それらは、筋肉に関する疾患、染色体異常による症候群、中枢神経系の障害という3つに分けることができます。このタイプには、先天性筋ジストロフィー、先天性ミオパチー、先天性筋強直性ジストロフィーなどの病気が含まれます。これらは、筋細胞膜を安定させる遺伝子が変異することによって筋肉の性質が変わったり、壊れてしまったりする疾患です。筋力の低下により、体がだらんとする低緊張の症状が現れます。また、他に見られる症状としては、母乳やミルクがうまく飲めない、呼吸困難がある、転倒しやすい、などが挙げられます。疾患が進行して筋力が低下すると、体の力が入らなくなったり、歩けなくなったりなど体の各部分の運動機能に障害がみられるようになります。合併症がある場合もあります。具体的に合併しやすいのは、中枢神経の障害や難聴、知的障害、発達障害、けいれん、白内障や網膜症などです。筋ジストロフィー/医学小知識通常の場合、人には46本の染色体があります。ですが、何らかの原因により染色体に異常が起こると、その数が多くなったり少なくなったり、変形したりします。染色体の異常は、妊娠中または出生後まもなく、血液検査により発見されることが多いです。染色体異常があって生まれた子どものうち、低緊張の状態が表れるのは、ダウン症候群、プラダー・ウィリ症候群などです。◇ダウン症候群通常、21番目の染色体が1本多くなっていることから「21トリソミー」とも呼ばれます。筋肉の緊張度が低く、場合によっては知的な発達に遅れなどを特徴とする症候群です。心疾患などを伴うことも多いです。ダウン症の出現率は、国や人種によらず800~1000人に1人といわれています。◇プラダー・ウィリ症候群低緊張、また、お乳を吸うための筋肉が弱い哺乳障害、幼児期からの過食と肥満、発達の遅れ、低身長などを特徴とする症候群です。15000人に1人の頻度で発生します。ダウン症を授かったご家族へ|公益財団法人 日本ダウン症協会プラダー・ウィリ症候群|難病情報センター中枢神経系の障害とは、脳の機能に障害が起こることです。脳の中枢神経系が未成熟な場合には、発達全般に遅れが生じます。筋肉の緊張が低く、だらんとした姿勢になることがあります。運動発達面の他には、言語、認知面にも遅れが生じる場合があります。低緊張が引き起こる中枢神経系の障害には主に以下の2つが挙げられます。◇脳性まひ中枢神経系の障害の一つです。脳性まひは出生前、もしくは直後に脳のダメージを受けることにより起こる運動障害のことです。同時にてんかんや知的障害を併発する場合もあります。◇広汎性発達障害・自閉症スペクトラム障害アスペルガー症候群などを含む広汎性発達障害(『DSM-5』では自閉症スペクトラム障害と診断名が変更されました)のある子どもの中には、身体的発達に遅れが見られる場合もあります。身体的発達の遅れている子どもが、同時に低緊張の状態を見せることがあります。広汎性発達障害・自閉症スペクトラム障害に関して、その特徴や診断方法が以下のページに詳しく載っているので、ご覧ください。筋疾患患者の診察|国立精神・神経医療研究センター病院乳児健診で運動発達遅延を指摘されたフロッピーインファントの神経学的予後について低緊張が心配な場合には、専門家に相談を出典 : 低緊張かな、と思った場合や子どもの発達について気がかりなことがある場合には、以下に紹介する専門機関に相談するとよいでしょう。診断や医学的な診察を受けたい場合には、小児科へいくとよいでしょう。運動発達以外にも心配がある場合には、子どもの発達に関する悩みごとの相談にも乗ってくれます。また、子どもの発達に詳しい療育機関などの情報も持っており、地元の専門機関を紹介してくれる場合もあります。行政や自治体が実施主体となって行っている事業です。子育て中の親子が気軽に集い、交流や子育ての不安・悩みを相談できる場を提供することを目的として各地域に設置されています。無料で相談をすることができます。リハビリを受けたい場合には、ここに相談をしてみましょう。0~17歳の児童を対象として、育児の相談、健康の相談、発達の相談など、さまざまな相談を受け付けています。必要に応じて、発達検査を行う場合もあり、無料で医師や保健師、心理士、言語聴覚士などから支援やアドバイスをもらうことができます。基本的に予約制なので、あらかじめお住まいの市町村のHPなどを見て確認するようにしましょう。児童発達支援施設とは、小学校就学前の6歳までの障害のある子どもが主に通い、支援を受けるための施設です。日常生活の自立支援や機能訓練を行ったり、保育園や幼稚園のように遊びや学びの場を提供したりといった障害児への支援を目的にしています。児童発達支援は、支援が必要であると認められた未就学の障害のある子どもが対象の福祉サービスです。利用は有料となりますが、自治体に申請を出し、通所受給者証を取得することで、1割以下の自己負担でサービスを利用することができます。受給者証の取得については、以下で詳しくご紹介しています。また、以下のリンクから、全国の子どもの発達支援を専門に行っている施設や機関を検索することができます。児童発達支援事業所の情報|LITALICO 発達ナビ低緊張の治療法って?出典 : 低緊張が、何らかの疾患が原因となっている場合には、もととなる疾患に対する治療行為を行うことで、体の機能を向上させることを目指します。また、低緊張そのものを改善するために、理学療法と呼ばれるリハビリを行うことも多いです。筋肉の緊張を含めて、体の機能全体を向上を目指した支援を受けることができます。理学療法は、運動機能に改善の余地のある人に対して、体を動かしたり、筋肉に電気や熱をあてたりするなどして、運動機能を向上する治療法です。理学療法では、生活をする上で欠かせない基本的な動きをスムーズにこなせるようにリハビリを行います。例えば、歩く、座る、立ち上がる、寝返りをうつ、などです。リハビリを行うことで、全身の筋肉の活動を活発にしていき、運動能力の向上や、血流の改善といった効果を目指します。理学療法を行うのは、国家資格をもつ「動作のプロ」と呼ばれる理学療法士です。乳幼児期には、寝返り、お座り、ハイハイなどの基本動作をできるようになるための訓練を行います。そして、幼児期から学童期にかけては、歩行や走行、階段の上り下り、ボールを使った遊びなどをしながら、体を大きく動かす運動を中心に行い、体の不器用さを軽減するためにリハビリを行っていきます。また、施設によっては、リハビリだけではなく、ご自宅や学校などで行えるトレーニングや、生活で取り入れられる工夫の提案や、必要に応じて靴や椅子などの補装具の検討などを行ってくれる場合もあります。理学療法を受けたい場合には、かかりつけの主治医や、市町村保健センターや保健師へご相談ください。まとめ出典 : この記事では、低緊張の子どもの具体的な症状、発達障害との関連、治療法、相談先などをご紹介しました。低緊張とは、自らの体を支える筋肉の張りが弱い状態であり、その後の運動面の発達に影響を及ぼします。低緊張の子どもは、自分の体を支えるための筋肉の張りが弱いために疲れやすく、動くことを嫌がることもあります。周囲の大人が無理に動くことを強要するのではなく、低緊張ゆえに生じる疲れや心理的な不安を理解してあげることが大切です。体の基礎となる筋力は理学療法などの専門的なリハビリだけでなく、遊びを通して養うこともできます。保護者が抱っこして、くるくる回ったり、おんぶをして背中にしがみついたりするなど、大人が子どもの体を支えながら、自分の体を使う経験をさせてあげましょう。
2016年12月15日軽度知的障害とは?出典 : 軽度知的障害とは、発達期までに生じた知的機能の障害により、知的発達が実年齢よりも低い知能指数(IQ)50~69の水準にとどまり、適応能力は正常またはやや遅れがある状態を指します。ことばや抽象的な内容の理解に遅れがみられることがありますが、身の回りのことはほとんど一人で行うことができます。学業面では遅れを感じることもありますが、年齢を重ねながら考える力を身につけられます。よって幼少期には気づかれにくく、小学校高学年~中学生までの間に軽度知的障害と分かる場合もあります。またストレスなどによる二次障害や自閉症スペクトラム障害などの合併症を伴っていることもあり、二次障害や合併症の方が目立って表出しているケースもあります。なお発達期とはおおむね18歳までを指し、それ以降に事故や病気などで知的機能の低下が発症しても、知的障害および軽度知的障害とは言いません。現在の精神医学書で使われている知的障害の定義は、アメリカ精神遅滞協会が提唱した定義を参考にしていることが多くなっています。以下はアメリカ精神遅滞協会が定めた定義です。知的障害は、知的機能および適応行動(概念的、社会的および実用的な定期追うスキルで表される)の双方の明らかな制約によって特徴づけられる能力障害である。この能力障害は、18歳までに生じる (AAMR,2002)知的障害は、染色体異常を原因とするダウン症のように出生後にすぐ診断できる疾病に合併する場合もあれば、自閉症のように生後すぐには診断できない障害に合併することもあります。出典:ICD-10精神および行動の障害-DCR研究用診断基準 新訂版 (2008)|中根 允文知能指数とは人の知能の基準を数値化したものです。ここでいう知能(IQ)とは、いわゆる学力ではなく、目的に沿って合理的に考え、効率的に環境を処理する総合的な能力のことをいいます。IQ90~109が平均の知能指数であり、そこからどのくらい高いか・低いかと考えます。軽度知的障害のある人は、概ね知能指数(IQ)が50~69にとどまると考えられています。適応能力とは身辺の自立(食事・着替え・排泄など)や家事、社会的な対人関係の構築、読み書き・コミュニケーションなど日常生活や社会生活上における全般的な能力のことを指します。能力の測定は、自分の強み・弱みを理解するために行います。出典:主な心理・発達検査の種類と特徴・WISC-Ⅲの概要出典:ICD-10精神および行動の障害-DCR研究用診断基準 新訂版 (2008)|中根 允文Upload By 発達障害のキホンこの図は知的障害の程度・区分を示した図です。横軸に「日常生活能力水準」、縦軸に「知能指数(IQ)」の程度を表しています。日常生活能力水準がaに近づくほど自立した生活が難しく、dに近づくほど自立した生活ができることを表します。同様にⅠに近づくほどIQが低く、IVに近づくほどIQが高くなります。知的機能が低かったとしても日常生活への適応能力が高ければ、ひとつ軽度の程度で判断されることがあります。IQ36~50の方でも生活能力が高ければ軽度知的障害に含まれます。一方で、IQ51~70の方でも日常生活への適応能力が低い場合は、中度知的障害に含まれる場合もあるということです。このように、知的障害は知的機能検査だけで判断されるわけではなく、知的機能と適応機能の2つが評価された上で診断が下されます。またこの程度を分類する方式は、療育手帳を取得する際にも用いられています。療育手帳については8章で詳しく説明していきます。軽度知的障害の原因って?出典 : 知的障害の原因は一つではなく、原因不明の知的障害の人も多いとされています。原因解明の研究が進んでいますが、現段階では内的原因と外的原因に分類することができるといわれています。内的原因とは遺伝子や染色体の異常など、子どもが先天的にもつ原因のことをいいます。病気や外傷など脳障害をきたす疾患で、これらの合併症として知的障害が一緒に起きることを病理的要因と呼びます。この中にはてんかんや脳性まひなどのほか、ダウン症などの染色体異常による疾病も含まれます。軽度知的障害および知的障害の原因の約8割が出生前に発生していることが分かっており、以下のような疾病があげられます。・ダウン症・多因子性疾患・てんかん・脳性まひなどまた、中には特に疾病名などがなくても内的原因によって知能水準が知的障害の範囲内にあるといった場合もあり、生理的要因と呼んで区別されます。外的原因とは出生前後に起こった事故や養育環境などによる外的な要因が、原因となることをいいます。具体的には出生前に母体を通じて感染症や薬物・アルコールなどの大量摂取などにより、子どもに影響を及ぼす場合があります。中には軽度知的障害だけでなく、発育の遅れや中枢神経に何らかの異常をきたす恐れもあります。また出産時のトラブルでの頭蓋内出血、出生後の感染症への感染、交通事故などによって意識を失うほどの頭部外傷が原因になることもあります。このことを環境要因と呼びます。・感染症・出産時、出産後に起こった頭部の外傷・出産時のトラブルなど出典:知的障害のことがよくわかる本軽度知的障害の特徴の現れ方出典 : 軽度知的障害は知的機能と適応能力にやや遅れがあるものの、身の回りのこと(食事・洗面・着衣・排泄など)は自分で行うことができます。空間・時間・数量の認識に特徴はありますが、自ら学び取る力もあり、経験を重ねることで得られる知識や学びは広がります。軽度知的障害の方は空間・時間・数量の認識にどのような特徴があるのでしょうか。順番に説明していきます。◆空間の認識:「今いる場所」「何度か行った場所」「行ったことがない場所」と、自分と空間の関係を分類した場合、軽度知的障害の方は、自分が行ったことのない場所でも、その場所が存在していることを理解することできます。知的障害があると、目に見えないものや、抽象的な概念を理解することは苦手と言われていますが、軽度知的障害の場合はある程度はその概念を理解することもできるといえるでしょう。◆時間の認識:時計を見て「ご飯を食べる時間」「寝る時間」「学校へ行く時間」などと、時間帯とやるべきことを関連づけて理解できます。また過去や未来という概念も理解できます。一方で、時間の長さを計ったり、何時間後は何時になるという計算などになると、とまどうことがあります。しかし、トレーニングを積むことである程度は解消できるようになります。◆数量の認識:「100円玉2枚で飲み物を買うことができる」というように、自分の経験と結びつけて理解することができます。おつりがいくらになるかなど、細かい計算を瞬時に行うことは難しいですが、足し算や引き算などのトレーニングを積むことによってある程度のスピードでできるようになります。軽度知的障害がある子どもは、自分が経験してきたことを元に物事を理解していきます。認識できる世界を広げていくためには、さまざまな経験をすることが重要です。知的障害がある子どもは言葉の遅れ、物事を記憶することが苦手といわれています。言葉の遅れに関しては、「言葉」という概念を認識するまでに時間がかかるために生じます。言葉を認識するためには、経験の一つ一つを「言葉」として理解できるように工夫するとよいといわれています。例えば料理を一緒にしていたら「料理をする」「キャベツをとる」「野菜を切る」「煮込む」など、実際に経験しながら、具体的な物や行動の名前を覚えていきます。また物事を記憶しておくことも苦手です。記憶には「短期記憶」と「長期記憶」が存在しますが、短気記憶を繰り返し思い出すことにより、長期記憶として蓄えられていくと言われています。軽度知的障害があっても、身のまわりのことは年齢を追うごとに問題なく発達します。しかし、上に述べたような空間や時間の認識に特徴があるため、周りからは学習面やコミュニケーション面で遅れがあると感じられるようになります。よって経験の範囲を超えた知的な要求が増える小学校高学年~中学生の頃に障害があることに気づくことが多い傾向があります。出典:知的障害のことがよくわかる本軽度知的障害の診断基準と検査方法出典 : 軽度知的障害の確定診断は臨床診断と各種検査の結果によって総合的に診断されます。医療機関を受診した際の臨床的な診断として、生育歴と行動観察について聞き取りを行います。■生育歴産まれてから今までの社会性や対人コミュニケーション、言葉の発達、幼稚園・保育園での様子や1歳半健診・3歳児健診での様子などをヒアリングします。発達面で知的障害の疑いがありそうか、発達にどんな特性がありそうかなどを見立てていきます。■行動観察遊びの空間で子どもを遊ばせ、それを注意深く観察することと保護者の方へのインタビューに基づいて行われます。知能検査では主に田中ビネー知能検査とウェクスラー式知能検査によってIQを計測します。また2歳未満の子どもの場合や医師から必要と認められた場合は新版K式発達検査などの発達検査を受けることもあります。適応能力の検査ではvineland-II(ヴァインランド)がよく使われています。■田中ビネー知能検査 V(ファイブ)2歳から成人まで受けることができます。就学する5~6歳の年齢にフォーカスをあて、特別な配慮が必要かどうかを判断するための「就学児版田中ビネー知能検査V(ファイブ)」という検査もあります。子どもが興味を持てるように、検査に使われる道具が工夫されています。日常生活において必要な知能と、学習する上において必要な知能の2つを測定します。■ウェクスラー式知能検査ウェクスラー式知能検査は、年齢ごとに3つのテストに分類されます。・幼児(3歳10ヶ月〜7歳1ヶ月)→WPPSI・学生児(5歳から16歳11ヶ月)→WISC・成人(16歳〜)→WAISIQが求められるだけでなく、脳の発達具合を下位検査を用いて導出し、総合的に判断することができます。■新版K式発達検査年齢において一般的と考えられる行動や反応と、対象児者の行動や反応が合致するかどうかを評価する検査です。検査は、「姿勢・運動」(P-M)、「認知・適応」(C-A)、「言語・社会」(L-S)の3領域について評価されます。検査結果としては、この3領域の「発達指数」と「発達年齢」が分かります。検査者は検査結果だけでなく、言語反応、感情、動作、情緒などの反応も記録し、総合的に判断します。■vineland-II(全年齢)0歳から92歳の幅広い年齢帯で、同年齢の一般の人の適応行動をもとに、発達障害や知的障害、あるいは精神障害の人たちの適応行動の水準を客観的に数値化する検査です。対象者にどんな特性があるのかを評価してくれます。また教育や福祉分野の個別支援計画の立案はVinelandの評価に基づいて行われることがあります。その他にも適応能力の検査として、以下の検査がよく使われています。・ASA旭出式社会適応スキル(幼児〜高)・S-M社会生活能力検査(乳幼児〜中学生)軽度知的障害の疑いを感じたら?出典 : 自分の子どもには軽度知的障害があるかもしれない、と疑問を持った場合、いきなり専門医を自分で探すのは難しいですよね。まずはお住まいの地域にある身近な相談機関や窓口に行ってみましょう。子どもか大人かによって、相談先が違うので、以下を参考にしてみてください。【子どもの場合】・保健センター・子育て支援センター・児童相談所・発達障害者支援センターなど【大人の場合】・発達障害者支援センター・障害者就業生活支援センター・相談支援事業所など先に挙げたような知能検査は、児童相談所などで無料で受けられる場合もありますし、相談機関では、知的障害のことだけでなく子どもの発達全般について相談することも可能です。自宅の近くに相談機関がない場合には、電話での相談にものってくれることがあります。軽度知的障害ならではの戸惑いや合併症などの悩みって?出典 : ここでは、軽度知的障害ならではの戸惑いや合併症などについて考えていきます。軽度知的障害は幼少期に気づかれにくく、概ね小学校高学年~中学生の時期に気づかれることが多いとされています。また障害の症状が基となって様々なトラブルを誘発し、ストレスによる二次障害や合併症を起こすことがあります。■軽度知的障害を受け入れることへの本人・保護者の戸惑い思春期に発覚することが多い障害であるがゆえに、本人や保護者が障害を受け入れることに戸惑いを感じることがあります。勉強についていけなかったり、対人関係が上手くいかなかったりなど、本人が「どうしてだろう?」と悩み、場合によっては相談もできずに自尊感情が低下することがあります。また、保護者も子どもに対しての接し方や周囲の理解や環境のつくり方、また子どもの将来のことなどの不安要素によって戸惑いを感じることがあります。息子の経歴を簡単に記載します。小学校、中学校、高校ではただただ勉強が出来ない程度の子供と思っていましたが高校卒業時に就職活動、卒業試験、普通免許の取得等の活動をしていましたが思うようにいかずに精神的におかしくなり、引きこもるようになりました。また、持病にてんかんをもっており、発作の回数が増えて主治医に相談したところ、専門の病院を紹介され、診察を受けたところ、18才で初めて知的障害であることがわかりました。■周囲への理解をどうやって得ていく?思春期に障害が明らかになるケースでは、以前から症状がありながらも診断を受けていなかったケースと、はじめて症状が明らかになってきたケースがあります。前者の場合は、症状がある程度みられていたため家族・親戚や学校なども、それぞれで既に本人に合わせた対応をしていることもあります。改めて話し合い、接し方や合理的配慮を考えていく必要があります。一方で後者のケースの場合は、一から周囲への理解を仰がなければならないため、「何からどうすればいいのか分からない」など、戸惑うことがあります。■二次障害や合併症が原因で問題行動が起きているとき軽度知的障害は、その特性が基となって周囲とのコミュニケーションが上手くいかないことや、不適合な環境やストレスなどが原因となって問題行動を起こしたり、行動障害や反抗挑戦性障害などの二次障害が引き起こされる可能性があります。問題行動とは周りの人を困惑させる行為のことをいいます。例えば自傷行為、徘徊、他人への攻撃、喧嘩を仕掛ける、あるいは不登校やひきこもりなどがあります。場合によっては軽度知的障害の症状よりも二次障害の症状が目立って表出する場合もあるため、問題行動の根幹原因を見極め、調整や変更などを行うことが求められます。軽度知的障害との向き合い方・学校等での配慮のポイント出典 : ■軽度知的障害との向き合い方保護者をはじめ本人にとっても、軽度知的障害を受け入れるには時間が必要です。無理に急いで受け入れようと焦っても心理的な負担になりかねません。一般的にゆっくり段階を追って障害を受容していくと言われています。最初のうちはショックや葛藤が生じることがありますが、本人や周囲の人が、それぞれのペースで身体的・社会的・心理的に障害を受け入れていくまで、焦らず時間をかけて関わり合うことが大切です。困った時は発達障害者支援センターや専門医など、専門家に頼りながら落ち着いた対応を心がけましょう。■合理的配慮という観点合理的配慮とは障害のある人が障害のない人と平等に人権を享受し行使できるよう、一人ひとりの特徴や場面に応じて発生する障害・困難さを取り除くための、個別の調整や変更のことです。2016年4月1日に施行された「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(通称、「障害者差別解消法」)により、行政機関や事業者には、障害のある人に対する合理的配慮を可能な限り提供することが求められるようになりました。本人を取り巻く周辺の人が合理的配慮を考える上での重要なポイントは、「その人が具体的にいつ、どんな場面で困っているのか」「その困りごとを解消するための適切な配慮は何か」の2点です。これらを踏まえながら学校や職場などの合理的配慮を検討・実施することが大切です。合理的配慮に関しては次のリンクを参考にしてみてください。■問題行動の背後にある原因の探り、解決を目指していく問題行動をとる子どもを「困った子だ」といって疎んじたり叱ったりするのではなく、その子ども自身が何に「困っている子」なのか、その子が問題行動をとらざるを得ない原因は何なのかを理解しようとすることが大切です。問題行動をとる子ども自身、その行動がよくない行動だということ理解している場合も少なくありません。それでもなお、数少ない自己主張の方法のひとつとしてその行動をとっていたり、心理的・身体的なストレスからその行動に移ってしまう場合があるのです。カウンセリングを通して子どもをケアしたり、学校・家庭の環境をもう一度見直すことなど、解決に向けた方法を探っていきましょう。軽度知的障害でも療育手帳は取得できるの?申請方法もご紹介します出典 : 療育手帳とは知的障害者に発行される障害者手帳で、知的障害のある方が一貫した療育・援護を受けられるよう、さまざまな制度やサービスの利用をしやすくすることを目的にしています。・おおむね18歳以前に知的機能障害が発症し、それが持続している。・標準化された知的検査によって測定された知能指数(IQ)が75以下。(70以下に規定している自治体もある)・日常生活に支障が生じているため、医療、福祉、教育、職業面で特別の援助を必要とする。上記の目安に従い、18歳未満は児童相談所、18歳以上は知的障害者更生相談所において知的障害と判定された方に対して交付されます。療育手帳制度の概要(厚生労働省)障害の程度などによって、交付される療育手帳の区分がわかれ、受けられるサービスの適用範囲が違ってきます。各自治体が判定基準に基づいて、知能検査による知能指数(IQ)と日常生活能力などから、知的障害の程度を総合的に判断し、療育手帳の区分を決定しています。軽度・中度・重度・最重度といったように知的障害でも4つの程度に分けられます。その分け方に関しては1章で図を用いながら紹介しました。療育手帳の区分は基本的に重度「A」と重度以外の中・軽度「B」の2つの区分にわけられますが、自治体によって区分の分け方もより細かく区分している場合などがあり、さまざまです。より細かい区分は自治体によって、また本人の年齢によって変わりますが、おおよそ以下の基準を目安に判定されています。ただし、これらは判定基準の一部分について例示したものであり、最終的には自治体の独自の基準によって区分が決められます。■重度(A)・最重度・重度■軽度(B)・中度・軽度(B/B2/4度など)療育手帳の区分について(自治体別一覧)/東京大学大学院経済学研究科READ療育手帳を申請に関する細かい点はお住まいの自治体によって異なりますので、申請される際には福祉担当窓口にお問い合わせください。■申請に必要な書類・療育手帳交付申請書:自治体の福祉事務所・福祉担当窓口、またはPDFのダウンロードや郵送での取り寄せができる場合もあります。・写真:サイズなど規定が決まっている場合があるので確認しましょう。その場で撮影してくれる自治体もあるようです。・印鑑・その他添付書類:通知表、成績証明書、医師による診断書などが必要な自治体もあります。詳しい申請の流れは以下の記事をご参照ください。まとめ出典 : 軽度知的障害がある方は日常生活を送る上では支障はなく、学校での授業など知的能力を問われる場合にならないと分からないことがあります。ですので、多くの方は小学校高学年~中学生の時に症状が明らかになります。学校の勉強に追いつけない、友達とのコミュニケーションが上手くいかない、友達関係も上手くいかないなど、年齢を追うごとに自然と困難な場面に出会うことが多くなるのも一種の特徴です。学校で受けた、そういったストレスが家庭で爆発してしまうケースもあります。また、その逆のケースもありえることです。軽度知的障害があっても、本人の認知特性に合った学習機会をつくれば、言葉や計算の力を伸ばしていくことができます。具体的な経験を積める機会を増やしたり、時間や空間などの概念は本人の経験に結びつけて説明をするなど、自信を持って理解や行動ができるような支援を行なっていきましょう。
2016年12月15日なんだか体調がいつもと違う、もしかして妊娠? 生理予定日までは少しあるけれど妊娠の症状かもしれないと思うと何かと不安と嬉しさが同時に押し寄せてくると思います。妊娠超初期の症状とその時期に注意すべきポイントをピックアップしました。妊娠超初期はどんな時期? 妊娠超初期とは、妊娠1ヶ月目、週でいうと0週、1週、2週、3週の時期のことを言います。妊娠は、最後に生理があった期間の初日を妊娠0週0日と数えます。妊娠1日目は生理の2日目になるので、7日で1週、そして4週を1カ月としてカウントします。生理が1週間ほど遅れ、妊娠かもしれないと気付いたときには、すでに妊娠5週になります。▼関連記事 妊娠初期と生理周期の関係って? 妊娠初期期症状の自覚はあるの? 妊娠超初期症状は、自覚として感じられないことが多くあります。ママ自身が妊娠の可能性に気づきにくい時期であることや、生理前の症状と、妊娠超初期症状はとても似ていて見分けにくいとされています。妊娠超初期の症状には個人差がありますが、多くは次のような症状がみられます。微熱っぽい体のだるさ、倦怠感ひどい眠気乳房の張りや痛み生理とは違う少量の出血下腹部のチクチクした痛み足の付根・恥骨あたりの痛み▼関連記事 みんなの妊娠エピソード〜妊娠初期体験談 妊娠超初期症状の自覚はないって本当? 妊娠超初期の兆候って何があるの? 妊娠超初期の兆候は風邪のような症状? 妊娠検査薬を使用するタイミング生理が1週間以上遅れたら妊娠の可能性を疑ってもよいでしょう。一般的な妊娠検査薬では、生理予定日の一週間後から検査することができます。生理予定日当日から使用できる早期妊娠検査薬もあるため、併せて検討しましょう。産婦人科を受診するタイミングは生理開始予定日の2週間後あたりが目安です。病院はいつ行けばいい? 気になるお金のこと産婦人科で検査をしてもらう前に知っておきたいことは、「妊娠は病気ではない」ということ。病気ではないので、経過が順調であれば健康保険は使えません。初回の健診時には、健康保険が使えないので、1万円くらいはかかるとみておいたほうが安全です。▼関連記事 「妊娠したかな?」と思ったらチェックしたいお金のこと 妊娠超初期の病気やトラブル 妊娠期間中は子宮粘膜が充血しやすいため、少しの刺激などで出血が起こりやすくなっています。激しい運動や長時間の立ち仕事など、お腹に負担がかかる動作が引き金となって出血するケースもあります。出血が必ずしも重大なトラブルによるものとも限りませんが、流産や子宮外妊娠の兆候である可能性もあり、十分な注意が必要になります。妊娠0週~3週の妊娠超初期に相当する期間内は、妊娠していることに気が付かない人も多くいますが、この時期に起こりやすい出血にはいくつかの種類があります。▼関連記事 妊娠超初期の出血とその種類とは? 妊娠超初期に風邪のような症状が出るのには、妊娠にともなうホルモンバランスの変化や自律神経の乱れが関係しているからと言われています。とくに妊娠超初期にはプロゲステロン(黄体ホルモン)の増加により高温期が続く状態になり、これが熱っぽさを感じる原因になります。また、ホルモンバランスの変化が免疫力の低下をもたらし、鼻水や鼻づまりが引き起こされることもあります。妊娠初期症状と風邪の症状には、さまざまな違いがあります。●妊娠初期症状と風邪に共通してみられる主な症状微熱、熱っぽさ(基礎体温が高いままである)体のだるさぼーっとするなどのだるさ倦怠感強い眠気頭痛腰痛寒気鼻水、鼻づまり喉の渇き下痢●妊娠初期症状のみにみられる主な症状乳房の張りや痛み出血(着床出血)下腹部のチクチクした痛みニオイに敏感になる便秘下痢イライラしたり、涙もろくなったりなど情緒不安定になるトイレが近くなる(頻尿)妊娠初期に、下痢や便秘、おならの回数が増えるなどの消化器系の悩みを抱える方も多いようです。その原因のひとつは、妊娠すると黄体ホルモン(プロゲステロン)がたくさん分泌されることによります。黄体ホルモンは、子宮の収縮を抑えると同時に、腸の働きまで抑制してしまいます。そのため腸内に便やガスが溜まったり、下痢などの症状を引き起こしたりするのです。その場合、激しい腹痛や吐き気、寒気を伴う下痢には注意が必要です。食中毒・ウイルス性腸炎・急性腸炎・感染性胃腸炎などのなどの可能性もあるため、早めに医療機関を受診しましょう。また下痢をすると腹圧がかかることもあり、流産しないか心配になりますよね。ネット上でも下痢と流産の関係性について書かれた記事がありますが、下痢が原因で流産になることは考えられません。ただ下痢による脱水症状などで身体に負担がかかってしまいますので、しっかり水分補給を行いましょう。●風邪のみにみられる主な症状発熱喉の痛みや咳風邪はウイルスが原因で発症するので、ウイルスのはたらきを抑制したり体内の免疫機能が働いたりするために発熱したり、喉の炎症による痛みや咳が現れたりしますが、これらは妊娠初期症状では発症しません。▼関連記事 妊娠超初期の兆候は風邪のような症状? 妊娠初期の流産の種類と原因は? 流産とは、妊娠22週未満に妊娠が終わってしまうことで、自然流産の発生頻度は約15%です。妊娠12週未満を早期流産、12週以降22週未満を後期流産と区別します。後述する「切迫流産」は、流産ではありません。妊娠初期に、少量の性器出血や軽度の下腹部痛があり、子宮口が未開大であるときは、「切迫流産」と診断されます。切迫流産とは、出血や腹痛が原因で診察を受けた場合につく病名。流産発生の危険があり、安静や入院しての治療が必要な場合があります。切迫流産は、不安になってしまう名前ですが、まだ流産してしまったわけではなく、妊娠を継続できるケースも多いので、パニックにならず、お医者さんの指示に従いましょう。▼関連記事 妊娠初期の流産の種類と原因は? 妊娠超初期におこる初期流産(科学的流産)とは? 妊娠12週目以前に起こる流産のことを初期流産といいますが、その中で化学的流産は妊娠5週目頃に起きやすいようです。流産自体は妊婦さんのうちおよそ10~20%が経験するとの統計もありますが、この数値には化学的流産は含まれていません。医学的には、胎嚢や胎芽、胎児の心拍が確認されてはじめて妊娠が確定しますが、化学的流産が起きる時期は胎児がそこまで成長しておらず、妊娠確定対象になりません。▼関連記事 初期流産(化学的流産)が起きやすい時期 妊娠に気づいたら、妊婦が禁煙する理由とは? 妊娠中のママの体内は水分量や免疫力が低下しており、タバコや副流煙に含まれる化学物質や有害物質、一酸化炭素などの影響を受けやすくなっています。・ママの体内に確保されている水分量の変化・お産直後、出血を止めるために血が固まりやすく変化上記のような状況で喫煙を行うと、前置胎盤、胎盤異常といった妊娠合併症のリスクや全治胎盤を引き起こす割合が高まると言われています。また産後には子宮頸がんなどの発がんリスクが増加する可能性もあります。妊娠期間中の喫煙はママの身体だけでなく、お腹の赤ちゃんにも悪影響を及ぼす場合があります。赤ちゃんにさまざまな発育不良が起き低体重児となったり、ママには、子宮内の羊水量が少なくなったり、流産や早産のリスクが高まったりなど、妊娠の継続自体が危ぶまれる可能性があります。また赤ちゃんが生まれた後にもさまざまな疾患の原因になる可能性があるうえ、乳幼児突然死症候群(SIDS)で命を落とすリスクが高まります。ママと赤ちゃんを応援するオーガニックハーブティー【AMOMA】母乳育児向けハーブティ、アロマ・オイルの専門ブランドであるAMOMA natural care(アモーマナチュラルケア)。 「母乳なんでも相談室」を開設し、授乳の悩みに育児経験者のスタッフが対応します。↓気になる商品はこちらから! ▼関連記事 ママが「妊娠を機に禁煙する」ことが大切な理由とは 妊娠超初期は妊娠しているか明確にはわからなく心配になりがちですが、なるべく心を安らかに自分のカラダを大切にして過ごしましょう。
2016年12月09日子どもの誕生は夫婦にとって幸せなことですが、それを機に夫婦の関係が変わってしまったという家庭も少なくありません。出産前と出産後では環境的にも精神的にもお互いに変化が訪れるからです。普通はしばらくすると落ち着いてくるものですが、中には夫婦の関係が完全に冷めきってしまう“産後クライシス”に陥るケースもあります。なぜそんなことが起こるのでしょうか。今回は、産後クライシスの原因の一つとも言われている“産後のガルガル期”についてお話ししていきます。●産後のガルガル期とは皆さんは“産後のガルガル期”という言葉を聞いたことがありますか?数年前から少しずつ使われることが多くなってきた言葉ですが、比較的最近生まれた言葉なので、聞いたことがないという人も少なくないと思います。産後のガルガル期とは、出産後にホルモンバランスの乱れや育児による心的負担などによって一時的に情緒不安定になる女性特有の症状ことを指します。正式な医学用語ではありませんが、動物が赤ちゃんを守るために気性が荒くなることに似ている ことから“ガルガル期”と名付けられたと言われています。ガルガル期の女性は周囲の人に対して攻撃的になることが多く、とくに自分の赤ちゃんに関わる機会のある義両親や親戚などに対してイライラしがちなようです。また、夫がイライラの対象になることもあります。基本的には産後1年程度でおさまるとされていますが、人によっては数年にわたる場合もあります。●産後のガルガル期を経験した人の体験談実際に産後のガルガル期を体験した人はどのような症状が出たのでしょうか。周囲のママにガルガル期の体験談について聞いてみました。『とにかく姑にイライラしてました。赤ちゃんを触られるのもイヤだし、おもちゃを買い与えられるのもイヤ。姑の一挙手一投足が気に入らない感じ 。産後数年経ってからは何とも思わなくなりましたが、当時はかなり毛嫌いしてましたね』(37歳女性/主婦)『私は特定の誰かというよりは、赤ちゃんに触ろうとする人全員を敵視している感じ でした。外から来て手を洗わずに赤ちゃんに触ろうとしてる親戚とか、夜泣きする赤ちゃんをあやす夫とか。とくに夫にはツラく当たっていたので、今は申し訳ない気持ちでいっぱいです』(31歳女性/販売)『自分が理不尽なことでイライラしているのは分かっていたけど、とにかく周囲に怒ってばっかだった。義両親にすらちょっと強めに言ってたな』(38歳女性/通信)ガルガル期は自分の赤ちゃんと接する機会のある人にイライラを抱きやすい傾向にあるようですね。とくに姑にイライラしていたというのは皆一致していた印象でした。●夫から見たガルガル期そんなママのガルガル期を、夫たちはどのように見ていたのでしょうか。『女性は産後にイライラしがちになるというのは事前に知っていたけど、実際に妻がガルガル期になったときは怖かったな〜。服を脱ぎっぱなしとか、手洗いうがいを忘れるとか、産前なら笑って許されていたようなことで毎日怒鳴られてたし、何をしてもイラつかれてた感じ 。どうしようもなかったのでひたすら耐えてました笑』(37歳男性/広告)『うちは私に対してはキツく当たらなかったのですが、私の母親にはイラついていましたね。二人とも険悪なムード で、「これが嫁姑戦争か」と非常に気まずい思いをした経験があります』(33歳男性/飲食)夫からみても、ガルガル期の妻からはそのイライラが伝わってきていたようです。●ガルガル期を夫婦で乗り越えるコツ産後のガルガル期は、本人の意思ではコントロールできない場合が多いです。そのため、ガルガル期を完全になくす方法はありませんが、夫婦で協力してなるべくイライラする場面を減らすことはできます。●(1)イライラしがちな人物は遠ざけるガルガル期のイライラは理屈ではなく、ほぼ感情的な問題なので、妻がイライラしがちな人物はなるべく遠ざけてあげることが大切です。たとえば、妻が姑を嫌悪しているときに、「うちの母親だって気を遣ってくれているんだよ」などというフォローは無意味 です。“理由は分からないけど、なんかイライラする”のです。そのため、妻がイライラを感じてしまうような人にはしばらく訪問を控えてもらうようにしましょう。ガルガル期の発言が原因で人間関係がこじれることもあり得るため、無理矢理仲良くさせようとするのは双方にとってデメリットとなります。●(2)“自分のことは自分でやる”を心がける産後の妻はただでさえ育児に追われて大変です。そんな状況で夫に服を脱ぎ散らかされたり、育児の邪魔をされたりするとイライラの矛先は夫に向いてしまいます。そのため、ガルガル期の間は夫も“自分のことは自分でやる”という意識を持って行動しましょう。なるべく妻のイライラを抑えてあげる のがガルガル期の夫の役割となります。----------いかがでしたか?ガルガル期に起こるイライラは、なかなか自分でコントロールできないものですが、夫婦で協力してなるべく減らすことはできます。産後のイライラは一時的なものですので、後の関係が変にこじれないようにいろいろ工夫するようにしましょう。●文/パピマミ編集部●モデル/倉本麻貴(和くん)
2016年12月07日こんにちは。心理食育インストラクターのSAYURIです。毎月やってくる生理と生理前のいつもの自分とは違う感覚。それはカラダだけでなく心の変化として起こる人もいます。でも、これが周囲の人、特に男性にはなかなかわかってもらえない。とても歯がゆい気分になりますよね。そこで今回は、生理周期と女性のカラダと心の変化について、男性にも理解しやすいようにご紹介したいと思います。●4つに分けられる生理周期生理には生理が始まってから次の生理が始まる前日までを1クールとした生理周期があります。その周期によって分泌されるホルモンのバランスが変わることで、カラダや心に変化があらわれます。生理が始まった初日から終わるまでが「生理周期 」、生理が終わってから排卵までが「卵胞期 」といいます。その後、「排卵期 」が訪れ排卵から生理が始まるまでの期間を「黄体期 」と呼びます。一般的にこの周期は25日〜38日が正常だとされています。●ホルモンバランスの変化に伴うカラダと心の変化まず生理周期を司る女性ホルモンには、『エストロゲン』(卵胞ホルモン)と『プロゲステロン』(黄体ホルモン)の2種類があります。エストロゲンは生理が終わってから排卵までの卵胞期に多く分泌される働きがあり、女性らしいボディラインやきれいな肌を作ったり、子宮内膜を厚くしたりして妊娠に備えます。またエストロゲンの分泌が多い時期は“幸せホルモン”とも呼ばれるセロトニンの分泌も増えるため、気持ちも穏やかで落ち着いた状態が維持できます。そして排卵を迎えると、エストロゲンの分泌が減少し、かわりにプロゲステロンの分泌量が増加します。プロゲステロンは妊娠しやすくしたり、子宮内膜を着床しやすい状態に整えたりします。他にも、体温を上げたり体の水分を保持したり、食欲を増進させたりする働きがあるため、むくみやすくなることもあります。このプロゲステロン、実はセロトニンの分泌を抑制してしまうため、イライラや不安、わけもなく落ち込んでみたり、攻撃的になったり、集中力が低下したりと精神的に不安定になってしまう という影響を与えます。●女性の8割が悩んでいる!? PMS(月経前症候群)や生理痛女性のカラダは妊娠・出産の準備のため、こうしたホルモンバランスの変化が毎月訪れます。しかし妊娠しなかった場合などは、子宮内膜を新しいものに作り替えるため、剥がして排泄します。それが生理の出血です。不要となった子宮内膜を剥がして子宮自体が収縮する ことで排泄させるので、そのときにお腹や腰に痛みを感じるのが生理痛。セロトニンの分泌低下で先述のような心の変化が起きたり、頭痛、食欲増進、肩こりなども起きたりするため、男性には理解できないお腹の痛みがあります。それをたとえるなら、下痢をしたときのお腹の痛みや風邪をひいたときの頭痛が何日も続く と言えばわかりやすいかもしれませんね。生理前や生理中に体調が悪かったり、急にイライラしたりするのは決して本人が望んでいることではなく、ホルモンバランスの変化によるものですから、男性には大きな気持ちで見守りフォローしてあげていただきたいと思います。【参考リンク】・生理のしくみ(生理周期、生理期間) | ソフィ()●ライター/SAYURI(心理食育インストラクター)
2016年12月01日小児期崩壊性障害とは?出典 : 小児期崩壊性障害とは、それまで問題なく発達していた子どもが、突然、成長の過程で覚えた能力を喪失していき、知的障害を伴った自閉症のような状態になる障害です。ヘラー症候群、幼児性認知症、崩壊性精神病、共生精神病とも呼ばれるこの障害は、小児の0.005%に発症するまれな障害であり、男性に多いとされています。参考ページ:小児期崩壊性障害|ハートクリニックHPこの障害は、広汎性発達障害が含む5つの障害のうちの一つとして位置づけられます。(下図参照)広汎性発達障害が含む5つの障害とは、自閉性障害(自閉症)、アスペルガー症候群、レット障害、小児期崩壊性障害、PDD-NOS(特定不能の広汎性発達障害)を指します。Upload By 発達障害のキホン小児期崩壊性障害はアメリカ精神医学会の『DSM-Ⅳ-TR』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第4版テキスト改訂版)という診断基準により分類された障害です。しかし、2013年に出された、この診断基準の改訂版である『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)において、小児期崩壊性障害は自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害というカテゴリに包括されました。そのため、現在は小児期崩壊性障害という診断名が下されることは少なくなりつつあります。とはいえ、すでにこの名称で診断を受けた人も多いこと、行政などで小児期崩壊性障害の名称を使用している場合も多いことから、本記事では『DSM-Ⅳ-TR』において定義されている小児期崩壊性障害についてご説明します。アメリカ精神医学会の『DSM-Ⅳ-TR』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第4版テキスト改訂版)による小児期崩壊性障害の定義は以下の通りです。小児期崩壊性障害の基本的特徴は,少なくとも2年の見かけ上正常な発達の期間に引き続く,多くの領域の機能における著名な退行である(基準A).見かけ上正常な発達は,年齢に相応した言語的および非言語的コミュニケーション,対人関係,遊び,適応行動に示される.生後2年以降(しかし10歳以前に),子供は,以下の各領域の少なくとも2つにわたり,以前に獲得した技能の臨床的に明らかな喪失を示す:表出性または受容性言語,対人的技能または適応行動,排便または排尿のコントロール,遊び,または運動技能(基準B).最も典型的には獲得された技能はほとんどすべての領域で失われる.この障害をもつ者は,自閉性障害をもつ者に広く観察される,対人的およびコミュニケーションの欠陥と行動的特徴を示す(82頁参照).対人的相互反応(C1)およびコミュニケーションにおける質的障害(C2),限定的,反復的,常同的な行動,興味,活動の様式(基準C3)がある.障害は他の特定の広汎性発達障害または統合失調症ではうまく説明されない(基準D).この状態は,ヘラー症候群,幼児痴呆,または崩壊性精神病とも呼ばれてきた.参考文献:高橋三郎ら/訳『DSM‐IV‐TR 精神疾患の診断・統計マニュアル』2003年医学書院/刊小児期崩壊性障害という診断区分を定めている『DSM-Ⅳ-TR』は最新の診断基準ではありません。そのため現在、この障害に相当する症状がある場合は、別の診断名が下されることが多くなってきています。ここでは、小児期崩壊性障害に相当する症状が、別の診断基準ではどう診断されるのか紹介します。・『DSM-5』における小児期崩壊性障害『DSM-Ⅳ-TR』の改訂版であり、2013年に発行された『DSM-5』において、小児期崩壊性障害は自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害というカテゴリに変更されています。Upload By 発達障害のキホン参考文献:日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院,2014)・『ICD-10』における小児期崩壊性障害世界保健機関(WHO)が定める『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)(以下、本文中の表記は『ICD-10』とする)という診断基準では、『DSM-Ⅳ-TR』における小児期崩壊性障害は「他の小児期崩壊性障害」というカテゴリーに相当するとされています。『ICD-10』で言われる「他の小児期崩壊性障害」の概念・診断基準と『DSM-Ⅳ-TR』における「小児期崩壊性障害」の概念・診断基準はほとんど同じとされています。参考文献:融道男 /著『ICD-10 精神および行動の障害―臨床記述と診断ガイドライン―』2015年医学書院/刊小児期崩壊性障害の3つの特徴出典 : 小児期崩壊性障害は、1. 発症時期は2歳から10歳までの間で、それまでは明らかに正常に発達する2. 発症後、それまでの成長で覚えたことを喪失していく3. 発症後は自閉症と似たような症状を示すという3つの特徴があります。以下において、小児期崩壊性障害の3つの特徴についてそれぞれ説明します。1. 発症時期は2歳から10歳までの間で、それまでは明らかに正常に発達する小児期崩壊性障害は、2歳から10歳までの間に発症します。発症までは、言語的および非言語的コミュニケーション、対人関係、遊び、社会適応における年齢に相応した正常な発達が続きます。つまり、定型発達の子どもと同じように順調に成長していくのです。2. 発症後、それまでの成長で覚えたことを喪失していく発症後、成長の過程で覚えた能力を失います。以下の能力のうちの2つ以上を失うとされています。・言葉の使用と理解・対人的技能または適応行動・排便または排尿の機能・遊び・運動能力発症の前兆として、よく動いたり、イライラしたり、不安になったりすることがあります。また、言語やその他の能力の喪失の兆しや、周りの環境に対する興味、関心が薄くなることもあります。これらの能力が失われていく期間は、多くの場合数ヶ月で止まります。その後は、能力が失われた状態が一生にわたり続きます。しかし、脳や神経の病気もある場合には、これらの能力は失われ続けるとされています。3. 発症後は自閉症と似た症状を示す小児期崩壊性障害は発症後に、以下に説明する自閉症(『DSM-Ⅳ-TR』では「自閉性障害」)にみられる3つの特徴のうち少なくとも2つの特徴が当てはまるとされています。(1)対人的相互反応における障害・目と目で見つめ合う、顔の表情、体の姿勢、身振りなどの非言語的な行動ができない・他人と満足のいく関係を築けない・対人的ないし情緒的な気持ちのやりとりの困難・他人の気持ちの共感・理解の困難(2)コミュニケーションの障害・話し言葉の発達の遅れ、または完全な欠如(身振りや物まねのような代わりのコミュニケーションの仕方により補おうという努力を伴わない)・会話の頻度が高い場合、他人と会話を開始し、継続する能力の明らかな障害がある・常同的で反復的な言語の使用または、独特な言語・発達の水準に相応した、変化に富んだ自発的なごっこ遊びや、社会性をもったものまね遊びの欠如(3)運動性の常同症や衒奇症(げんきしょう)を含む限定的、反復的、常同的な行動、興味、活動の型・特定の習慣や儀式にかたくなな興味をもつこと・特定の対象に持続的に熱中すること・芝居じみた挨拶や身振りを繰り返すこと・複雑な全身の動きを続けるなど、型にはまった同じ運動を不自然に繰り返すこと小児期崩壊性障害の原因出典 : 小児期崩壊性障害の原因は現段階では解明されていません。現状では、脂質代謝異常や結節性硬化症など、さまざまな疾患と関連があるのではないかと考えられています。小児期崩壊性障害と似ている障害出典 : 小児期崩壊性障害と似ている障害として、小児統合失調症や認知症、この障害と同じ広汎性発達障害のひとつである自閉症が挙げられます。・小児統合失調症統合失調症は妄想や幻覚などの症状が続く疾患です。ほとんどが思春期以降の発症ですが、まれに幼いころに発症することがあります。小児統合失調症の症状にも感情的な反応の欠如が見られるなど、小児期崩壊性障害と似ている症状が見られることがあります。・認知症小児期崩壊性障害と似ている障害として、成人期における認知症があげられます。しかし、小児期崩壊性障害は、頭部外傷などの身体的な要因が原因ではないこと、技能喪失の後ある程度の回復がみられること、自閉症に典型的にみられる特徴がみられることなどの点において認知症とは異なっています。・自閉症小児期崩壊性障害にも自閉症のような症状がみられます。しかし、自閉症も発達の遅れがみられるとはいえ、一度獲得した技能を失う退行は見られない点において異なっています。小児期崩壊性障害かな?と思ったら…出典 : 上記で述べた症状が見受けられる場合、医療機関や専門家に判断してもらうことをおすすめします。いきなり専門医に行くことが難しい場合は、まずは無料で相談できる身近な専門機関の相談窓口を利用するとよいでしょう。・保健センター・子育て支援センター・児童発達支援事業所・発達障害者支援センター・児童相談所など児童相談所などでは無料で知能検査や発達検査を受けられることも多いので、児童相談所で相談するパパ・ママも多くいます。まず身近な相談センターに行って、診断をすすめられたら、そこから専門医を紹介してもらいましょう。自宅の近くに相談センターがない場合には、電話での相談にのってくれることもあります。以下のリンクにおいて全国の発達障害者支援センターを検索できます。相談窓口の情報|発達障害情報・支援センターHP発達ナビ「地域情報」: 全国の発達障害者支援センターの一覧・どの診療科にいけばいいの?小児期崩壊性障害の診療が可能な診療科は、小児科、精神科、児童精神科、小児神経科、心身医療科、心療内科、発達障害外来など、病院により様々な名前となっています。どの病院に行けばいいか少しでも迷った場合は、まずは市町村の窓口や都道府県等の発達障害者支援センター等の相談窓口に電話で相談することをおすすめします。発達障害の専門機関は他の病気に比べると少ないですが、発達障害者支援法などの施行によって年々増加はしています。以下のリンクは発達障害の診療を行える医師の一覧です。この他にも、児童精神科医師や診断のできる小児科医師もいます。担当者との相性も大切なので、納得のいく医療機関を選ぶようにしましょう。日本小児神経学会 「発達障害診療医師名簿」・ 診断・検査の流れ本人や保護者に対する問診(面接)や行動観察、家族・学校の先生による提供情報の精査などを行う他、専門機関によっては筆記や口頭質問などを通した知能検査や発達検査などを実施する場合もあります。こうした様々な情報を総合的に評価して、診断がくだされます。検査は複数回に分けて行なわれたり、慎重に経過を見ながら行われるため、一度の受診ですぐに診断されることはあまりありません。知能検査は、田中ビネー知能検査Ⅴ(ファイブ)やウェクスラー式知能検査(3歳10ヶ月〜7歳1ヶ月の幼児の場合は「WPPSI」、5歳から16歳11ヶ月の子どもは「WISC」、16歳以上の成人の場合は「WAIS」)などの検査を受けることによって検査結果がでます。特性の現れ方や発達段階などを評価するため「CARS」や「新版K式発達検査2001」、「PEP-R」などを行う場合もあります。・診断に必要な準備や持ち物初診時に必要な物として保険証、子どもであれば母子手帳などがあります。服用中の薬などがあれば、お薬手帳なども持っていくとよいでしょう。また、生育や発達歴についての問診がありますので、言葉を話し始めた時期や日常生活での困りごとなどをメモして持っていくと質問に答えやすいかもしれません。発達外来などの専門機関によっては保育園や幼稚園の連絡帳、小学校の通信簿やホームビデオなどを参考にする場合もあります。事前に問診票をプリントアウトして持参する機関もありますので、専門機関の公式ホームページをチェックしたり、予約時に電話にて必要な持ち物を問い合わせてみてください。小児期崩壊性障害は治療できるの?出典 : 広汎性発達障害のひとつである小児期崩壊性障害の根本治療はできませんが、症状を緩和するためには療育的アプローチと薬物療法の2つが効果的です。障害のある子どもが、社会的に自立できるように取り組む治療と教育のことです。自分の問題を自分で解決できるようになるには、療育によりコミュニケーションスキル等の能力を身につける必要があります。療育は何歳からでも始めることができ、なるべく早くから通うことが推奨されます。療育とは、以下のように定義されています。療育とは医療、訓練、教育、福祉などの現代の科学を総動員して障害を克服し、その児童が持つ発達能力をできるだけ有効に育て上げ、自立に向かって育成することである。出典:療育と教育の接点を考える|障害保健福祉システムHP参考ページ: 療育とは何か|LITALICOジュニアHP小児期崩壊性障害そのものを根本的に治す薬はありませんが、特定の症状を緩和するために使用することがあります。薬によって開始できる年齢や症状が決まっており、人によって副作用がある場合もあるので、主治医とよく相談し、用法用量を守って服薬していくことが大切です。薬物療法は、症状を一時的に抑えるためのものであり、症状が軽減している間に、教育や支援をあわせて行うと効果的であるともいわれています。小児期崩壊性障害の場合、障害者手帳は取得できるの?小児期崩壊性障害を含む広汎性発達障害と診断された場合、2種類の障害者手帳を取得できる可能性があります。・療育手帳小児期崩壊性障害と診断されただけでは療育手帳付与の対象とはなりません。しかし、療育手帳を申請し、知的障害があると認められた場合は療育手帳が取得できます。・精神障害者保健福祉手帳小児期崩壊性障害は発達障害者支援法第二条において発達障害に指定されていて、さらに発達障害は精神障害に含まれます。そのため、小児期崩壊性障害により長期にわたり日常生活又は社会生活への制約があると認められた場合は精神障害者保健福祉手帳を受けることができます。もし、知的障害と精神障害のどちらもあると判断された場合は、療育手帳と精神障害者保健福祉手帳を両方取得することは可能です。まとめ出典 : 小児期崩壊性障害は、発症前までは子どもが問題なく元気に成長する障害であるため、発症時にはご家族の驚きも大きいかもしれません。しかし、小児期崩壊性障害は他の広汎性発達障害と同じく、早期発見と早期療育、通院治療等を通した支援が可能です。お住まいの地域の発達障害者支援センターなどの相談窓口や医療機関では、お子さんのことだけでなく、ご家族の方のためのアドバイスも専門家からもらうことができますので、お子さんの発達の仕方に何か違和感を覚えた段階で連絡をとることをおすすめいたします。悩みや疑問を解消し、お子さんの特性を理解することで、適切な支援方法を探していきましょう。
2016年12月01日こんにちは、佐原チハルです。肌寒い季節になり、冬が深まると、気になってくるのが感染症です。インフルエンザ、溶連菌、ノロウイルスなどさまざまありますが、忘れてはいけないのが『マイコプラズマ肺炎 』です。特に幼年期や学童期のお子様 がいる方、また青年期までの年齢の方 は注意しておきたいものです。そこで今回は、『マイコプラズマ肺炎』の特徴をはじめ、症状・対策のポイントをまとめてみました。●マイコプラズマ肺炎ってどんな病気?マイコプラズマ肺炎は、『マイコプラズマ・ニューモニア』という細菌によって引き起こされます。とても小さな細菌だそう。通常、肺炎というと乳幼児や高齢者に多い印象があるかと思いますが、それらの細菌性肺炎とは違います。マイコプラズマ肺炎にかかりやすい年齢層は、幼児・学童期・青年期が中心 なのです。感染報告は1年を通してありますが、秋〜冬にかけてが多めだということです。特徴としては、・潜伏期間が長め(2~3週間)・乾いた咳が出る(風邪と間違いやすい)などがあげられます。●マイコプラズマ肺炎の症状って?マイコプラズマ肺炎の始まり方は、通常の風邪ととてもよく似ています。熱が出る、頭痛がする、乾いた咳が出る、だるいなどです。そのため、マイコプラズマ肺炎であると気づけるタイミングが遅くなることも多いそうです。風邪よりも長引くことが多い ので、咳がなかなか治らない、などのときには、マイコプラズマ肺炎であることも想定しながら病院に行ってみるのがよいでしょう。保育園・学校など、周囲でマイコプラズマ肺炎にかかった子どもがいた場合には、その旨を医療機関にも伝えておいた方が安心です。またマイコプラズマ肺炎の場合は、風邪とは違い、重症化したり、中枢神経系の症状が出たり、中耳炎になるようなこともあります。合併症のリスクがある 、ということです。ただの風邪だと思われても、長引くようであればしっかりと病院に行けるようにしたいですね。●マイコプラズマ肺炎を予防するには、どうしたらいい?インフルエンザやおたふく風邪などとは違い、マイコプラズマ肺炎には予防接種がありません。感染経路は「飛沫感染(せきやくしゃみの際の唾などに含まれる病原菌による感染)」「接触感染(病原菌のついた部位で口や鼻などを触ってしまう)」です。通常の風邪と同様、手洗い・うがい・マスクの着用などで気をつけておくようにしましょう。なお、マイコプラズマ肺炎自体を治療するには、抗生物質の服用が必要 です。必ず、お医者さんに指示されたものを、指示された通りに飲むようにしましょう。自己判断で飲むのを途中でやめてしまったり、以前に出されていたものを飲んだりするのは危険ですので、いけません。できる範囲で予防をしっかり行うことが大切ですが、お子さまの年齢がまだ小さいと、うがいが難しかったり、マスクをしてくれなかったりして、予防が難しくなることは多いです。家族に二次感染することも多いので、一家でかかってしまった……という事態にもなりかねません。重症化も避けたいです。長引く風邪や、不安があったときには、早めに医療機関を受診し、早期対策ができるようにしたいですね。【参考リンク】・保育所での集団発生が起こりやすいのに、あまり知られていない!? マイコプラズマ肺炎 | (財)日本病児保育協会()・マイコプラズマ肺炎 | 東京都感染症情報センター()・マイコプラズマ肺炎とは | NIID国立感染症研究所()●ライター/佐原チハル(フリーライター)●モデル/沖まりね
2016年11月29日こんにちは、ライターの齋藤惠です。みなさんは『リーキーガット症候群 』という病気をご存じですか?日本ではその名前こそ知られてはいないものの、じつに70%もの日本人がかかっていて慢性的な症状に悩まされているという報告もあります。アメリカではすでに深刻な問題となっているとか……。そんなリーキーガット症候群とは、どんな病気なのでしょうか?●こんな症状ならリーキーガット症候群かも?リーキーガット症候群とは腸の病気です。英語では『Leaky Gut Syndrome』といい、直訳すると“Leaky=漏れる”、“Gut=腸”、“Syndrome=症候群”となります。腸の粘膜が傷ついたり穴が空いたりして未消化の物質や有害菌が体内へ漏れ出してしまう病気です。英語を省略して『LGS 』、または『腸管壁浸漏症候群 』とも呼ばれています。代表的な症状には、以下のものがあります。【腸】……便秘、下痢、胸焼け【皮膚】……にきび、発疹、湿疹、じんましん、アトピー性皮膚炎【脳】……慢性頭痛、うつ、自閉症、ADHDこれらはあくまで多くの人に共通して見られる症状の例であり、実際にはもっと多様な症状が起こる 場合があります。一つひとつを取ると独立した病気のように思われがちですが、根底にリーキーガット症候群という深刻な病が潜んでいる可能性があるのです。そう考えると、便秘も頭痛も軽視できませんね。●原因となる生活習慣『栄養医学研究所』によると、リーキーガット症候群は、乱れた生活習慣によって引き起こされる場合が多いようです。例えば、以下の過剰摂取が原因となる可能性があります。・アルコール類やカフェインなどの刺激物・(風邪薬などに含まれる)抗生物質・着色料、防腐剤、酸化防止剤などの食品添加物・精製食品炭水化物食品(白米、パン、砂糖など)・避妊用ホルモン(ピル)日常で多く摂り過ぎているものがあれば要注意です!なお、抗生物質があげられる理由は、“胃腸器官系の細菌、寄生虫、カンジダ、真菌類の異常繁殖を促すため ”だそうです。アルコールやカフェイン、精製食品などはとくに私たち現代人にとって身近な存在であるだけに、普段から過剰摂取しないよう気をつけなければいけないですね。●“腸の不調は万病のもと”と心得て!腸は人間の健康をつかさどる臓器の中でもとくにデリケートな部分 と言われています。腸の働きは単に食べ物の消化吸収だけにとどまらず、栄養をエネルギーに変えたり、解毒作用があったり、感染症に対抗する免疫を持っていたりと、生きるために必要な機能をたくさん担っています。そんな重要な腸のバリア機能が壊れ、栄養も病原体も漏れ出してしまう恐ろしい病気がリーキーガット症候群なのです。栄養過多やストレスによって日々、私たちの腸は病気の危険にさらされているかもしれません!そうならないために、毎日の生活習慣を見直しましょう!具体的にできることは、・胃に負担をかけない食生活をする・精製食品よりも玄米や黒糖などを食べる・食品添加物が多く含まれた食品を避ける・風邪薬やピルの気軽な使用は避けるなどです。できるところから実行して、健康な腸を保つ生活を送りましょうね!【参考リンク】・LGS(リーキーガット症候群)について | 栄養医学研究所()●ライター/齋藤惠(金融コンシェルジュ)●モデル/大上留依(莉瑚ちゃん)
2016年11月28日パニック障害とは出典 : パニック障害は突然の動悸やめまい、発汗とともに恐怖を感じる精神障害です。また、発作を繰り返すにつれて、「また発作が起こるのではないか」という不安と、「発作が起こる状況に対する恐怖」とを感じるようになります。パニックを回避するために、今までは出来ていたことが出来なくなったり、行けていた場所に行けなくなるといった症状も生じることがありますが、周囲からは単に怠けていると誤解されてしまいやすい疾患であると言えます。パニック障害が進行すると、うつ病を発症する可能性が高苦なるとも考えられています。この記事では、パニック障害についての基礎知識、支援や治療方法などを紹介します。パニック障害の症状の分類出典 : パニック障害は不安障害のひとつです。不安障害とは、生活に支障が出るほどの過剰な不安を感じる疾患全般をさします。不安や恐怖を、その対象に釣り合わないほど過剰に大きく感じ、状況や具体的なものに対して、過剰に不安、恐怖心を感じ、それにより様々な影響が身体と精神にあらわれ、社会生活を送ることに支障が出てしまう疾患です。パニック障害は不安障害の中で理由もなく不意に起こるパニック発作を発端とする疾患をさします。パニック発作そのものは、恐怖や緊張などなんらかの引き金があって起こりえますが、パニック障害の発作はきっかけがないのに起こるのが特徴です。繰り返し発作が起こり、検査をしても体の異常は見つからないことも多く、また昼夜問わず24時間いつでも起こる可能性があります。パニック障害は、パニック発作を発端として、また同じような発作が起きるのではないかという予期不安や、「同じシチュエーションで発作が起きるのではないか?」という場所と状況に対する不安すなわち広場恐怖の症状が現れ、悪化していく可能性があります。「パニック発作」「予期不安」「広場恐怖」というそれぞれの症状が一体どのようなものなのか以下で見ていきましょう。パニック発作とは繰り返される予期しない発作で、自覚されるきっかけが何もなく突然起こります。パニック障害の症状の中でも最も代表的なもので、これはパニック障害と診断される条件となっています。多くは強い不安や恐怖を感じます。特定の状況で生じることが多いですが、再発にはムラがあることもあります。パニック発作の主な症状として次のようなものがあります。動悸、心拍数の増加、発汗、身震いまたは震え、息切れ感または息苦しさ、窒息感、胸痛または胸部の不快感、嘔吐または腹部の不快感、めまい、ふらつき、気が遠くなる感じ、寒気または熱感、異常感覚(感覚麻痺またはうずき感)、現実感喪失、離人感(自分が自分でなくなるような感じ)、抑止力を失うなどがあげられます。予期不安とはかつて発症した症状がもう一度起きたらどうしよう、などと次の発作への恐怖を抱くことをいいます。これは一度パニック障害を発症すると、その恐怖心や不安を忘れられないという性質と関係があります。予期不安は一般的に長期間続くことが多く、約1ヶ月続くことがほとんどです。病気の急性期には、パニック発作が起こったときの状況がフラッシュバックとなって甦ることがありますが、治療が進み発作が起こらなくなると、自然に消えていきます。予期不安では、主に次のような感情があらわれます。・病気になってしまうかも?・気絶してしまうしまうかも?・死んでしまうかも?・運転中に起きたら、交通事故を起こしてしまうかも?・誰も助けてくれないかも?・発作が起きた場所から、すぐに逃げられないのかも?・取り乱したり錯乱して、恥をかいてしまうかも?・人前で吐いたり倒れたりして、恥ずかしい姿を見せてしまうかも?・他人に迷惑をかけてしまうかも?広場恐怖とは、一般名詞の「広場」の意味に限った恐怖ではなく、ここでは「パニック障害における場所に関係する恐怖」を意味する医学用語です。以前発作を起こした場所、もしくは似ているところに行くと「また発作が起きるのではないか」という恐れを抱くことです。次の特徴を持つ場所が広場恐怖になりえると考えられています。・発作が起きても、誰も助けに来れないところ・逃げたくてもすぐ逃げられないところ・発作が起きたら恥をかく、もしくは恥をかくと思われるところなど広場恐怖が進行すると、行けない場所が多くなり行動範囲が狭くなることが多くあるので注意が必要です。パニック障害の要因とは出典 : パニック障害の要因には、気質要因、環境要因、遺伝子要因・生理学的要因があります。否定的な感情や不安に対して敏感であることは、パニック障害を発症する要因の一つであると考えられています。それをもとに、パニック障害になりやすい性格がいくつかあります。・完璧主義な性格・几帳面な性格の人自分が満足いく状況でないとき、とてもストレスを感じます。また周りの人に頼らずに全てを完ぺきにこなそうとした結果、心も体もパンクしてしまいパニック障害を発症することがあります。・素直で従順な性格の人物事に対してひたむきに取り組んだものの失敗してしまい、そのまま立ち直れなくなってしまうことがあります。・マイナス思考、不安や恐怖観念が強い性格の人自分を責めたり落ち込んだりすると、ストレスや不安が溜まりパニック障害を発症しやすくなります。・利他的な性格、自分の気持ちをがまんしてしまう性格の人自分の気持ちを押し込めたり、他人のために尽くし過ぎたりすることもストレスがたまり、発症のもととなります。2013年に出版されたアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)によると、小児期に性的および身体的的虐待の経験があると、パニック障害の要因となり発症の可能性が高まると示唆しています。また、喫煙はパニック発作とパニック症の危険要因です。パニック障害がある人のほとんどが最初のパニック発作の前数ヶ月の間に特定できるストレス因があったと報告しています。現在複数の遺伝子が、パニック障害になりやすい特性に関係があると考えられていますが、遺伝子に関連する機能に関してはまだ詳しく特定されていません。また、喘息をはじめとする呼吸器系の障害もパニック障害と関連があるといわれています。パニック障害の診断ガイドライン出典 : パニック障害は米国精神医学会の診断基準である『DSM-5』などを用いて「パニック症/パニック障害」という名称で診断されることが多いです。『DSM-5』におけるパニック症/パニック障害の診断基準は以下の通りです。A繰り返される予期しない/パニック発作、パニック発作とは、突然、激しい恐怖または強烈な不快感の高まりが数分以内でピークに達し、その時間内に、以下の症状のうち4つ(またはそれ以上)が起こる。注:突然の高まりは、平穏状態、または不安状態から起こりうる(1)動悸、心悸亢進、または心拍数の増加(2)発汗(3)身震いまたは震え(4)息切れ感または息苦しさ(5)窒息感(6)胸痛または胸部の不快感(7)嘔気または腹部の不快感(8)めまい感、ふらつく感じ、頭が軽くなる感じ、または気が遠くなる感じ(9)寒気または熱感(10)異常感覚(感覚麻痺またはうずき感)(11)現実感喪失(現実ではない感じ)または離人感(自分自身から離脱している)(12)抑制力を失うまたは”どうかなってしまう”ことに対する恐怖(13)死ぬことに対する恐怖B発作のうち少なくとも1つは以下に述べる1つまたは両者が1カ月(またはそれ以上)続いている(1)さらなるパニック発作またはその結果について持続的な懸念または心配(例:制御力を失う、心臓発作が起こる、〝どうにかなってしまう")(2)発作に関連した行動の意味のある不適応的変化(例:運動や不慣れな状況を回避するといった、パニック発作を避けるような行動)Cその障害は、物質の生理学的(例:乱用薬物、医薬品),または他の医学的疾患(例:甲状腺機能亢進症、心肺疾患)によるものではないDその障害は、他の精神疾患によってうまく説明されない(例:パニック発作が生じる状況は、社交不安症の場合のように、恐怖する社交的状況に反応して生じたものではない:局所性恐怖症のように、限定された恐怖対象または状況に反応して生じたものではない:強迫症の様に強迫観念に反応して生じたものではない:心的外傷後ストレス障害のように、外傷性出来事を想起させるものに反応して生じたものではない:または、分離不安症のように、愛着対象からの分離に反応して生じたものではない)(日本精神神経学会:編『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院:刊P207より引用)パニック障害の治療を受けるまでの流れ出典 : パニック障害かもしれないと思ったら、精神科、神経科心療内科へ受診することをおすすめします。発作の症状は、体の病気やほかの精神疾患によっても起こるので、専門の医師による見極めが必要です。治療を受けるまでの流れは以下の通りです。・体の病気がないか調べる内科的な検査をして異常がないか、脳波や脳の画像検査を行う場合もあります。・問診・パニック発作の確定発作ではどんな症状があらわれたか、どんな状況でおこったか、発作の前後の状況などを詳しく聞いて「パニック発作の診断基準」と照らし合わせ、確定診断を行います。・パニック障害の診断パニック発作の確定診断があれば、次は「パニック障害の診断基準」と照らし合わせます。「症状が1カ月以上ある」「予期不安がある」などを調べ、場合によっては他の不安障害などによらないか調べることも必要になります。・広場恐怖の有無「広場恐怖の診断基準」に照らして、広場恐怖があるかどうか調べ、あれば治療法を検討します。・問診など不安の度合い、日常生活や仕事など、またどのように育ってきたか(成育歴)を質問し、情報はカウンセリングなどの治療に生かします(守秘義務に基づく)。パニック障害の治療方法出典 : パニック障害の治療には、主に薬物治療と精神療法の2つがあります。症状や状態によって飲む量や薬の組み合わせを調整していきます。薬物療法とは薬を使って治療する、最も一般的な治療方法です。パニック障害にはパニック発作を抑える抗うつ剤と精神を安定させる抗不安剤があります。・カウンセリング病気にとってはマイナスとなる考え方やものの見方を、自分自身で変えていけるよう医師からアドバイスを受けることです。まず、ベースとなるカウンセリングが繰り返し行われ、医師あるいは臨床心理士が患者さんの本心を聞きます。病気につながる問題点を明らかにし、専門家としてアドバイスしていきます。・認知行動療法物に対する考え方・受け止め方を改善することです。少し心臓がドキドキしても「死ぬのではないか」と思ってしまうような、薬では治せない「考え方のくせ」があることを自分自身が自覚(認知)し、行動を改善していきます。不安や恐怖が発生しやすい場所や状況に身をさらし(曝露し)徐々に慣れていくことで不安が解消されるようにする行動療法(曝露療法/エクスポージャーとも呼ばれる)もあり、パニック障害にうつ病を併発した場合でもよく取り入れられる療法です。・自律訓練法自分でリラックスできる方法を身につけ、予期不安や広場恐怖などの症状をやわらげる精神療法です。刺激に対して過敏に反応しないようになり、不安や恐怖を自分でコントロールできるようになります。パニック障害とストレス障害(PTSD)の関わり出典 : パニック障害と同じ不安障害の病気にPTSD(心的外傷後ストレス障害)があります。パニック発作やフラッシュバックなど共通の症状があらわれたり、パニック障害の二次障害としてPTSDが合併する場合があったり、関係性の深い病気です。PTSDとはトラウマになるような体験によって、強いストレスにさらされたあとに、特徴的な症状があらわれる疾患です。以下2つの疾患の相関関係を見ていきましょう。・パニック発作があるパニック発作自体はパニック障害でもPTSDでも起こりますが、PTSDの発作はトラウマ体験と重なる場合のみ起こります。・フラッシュバック症状がある両方の疾患で起こり得ますが、PTSDでは事故や災害など死に直面するような激烈な記憶ですが、パニック障害ではパニックが起こったときの状況がよみがえるのが特徴です。・脳にみられる特徴が共通している両方の疾患でノルアドレナリン(不安や恐怖に関わる神経伝達物質)や海馬(情動や記憶にかかわる部位)の働きに異常や不安定さを抱えています。よって効果をあらわす薬物も似ています(SSRIなど)。PTSDのある人はパニック発作があっても、パニック障害を併発することはほとんどありません。しかし、パニック障害のある人はパニック発作の経験がトラウマとなり、PTSDに進むケースがままあります。パニック障害の体験談出典 : こちらでは、パニック障害の体験談を紹介します。実際にどのようなパニック障害の症状があるのか見ていきましょう。最初はめまいみたいな感じで、フラフラとなりました、え?何?頭の病気?と思ったとたんものすごい不安感に襲われました。そうなると過呼吸になり手足がしびれ、そして指が動かなくなる・・・そうなると、ますます不安が押し寄せてきて、逃げたい、どこに?でも怖い、誰か助けて、でも変な奴と思われる、どうしよう、どうしよう・・みたいな感じの発作です。発作がくると、あ・・・きたかもという実感はあります、でも大丈夫、数分後、やっぱりなんか変、いや落ち着け、落ち着け、あ、大丈夫、でも・・・みたいに繰り返しているうちに、あれ?おさまった、ん、もう大丈夫、よかった、ほっ・・みたいな。でもいつくるかもわからなくて、拘束されたり(美容院、電車、会社など逃げ場がないときは特に)すると余計引き起こすような気がします。私もパニック障害です。パニック障害って、とても説明が難しい病気で・・・、人によってこれは大丈夫、これはダメっていうのがあるんですよね。自分でもその線引きが分からないときがあります。電車に乗れない人もいれば、電車は大丈夫っていう人もいます。症状の重さ・種類にもよるので何とも言えませんが・・・、(中略)・・・難しいですね。パニック障害の症状があると、いろいろと融通が利かなくなって、「できない」ことが多くなってしまうんですよ。やりたくてもやれない・・・という感じで。そんな自分にもイライラしちゃって。買い物に出られないのはなんとなく分かります。おそらく、人の居る場所に1人で行くことがダメなんじゃないかと(広場恐怖)。.・・・(中略)何よりもまずは、元気になることをみつけてそれをやるのが一番かなと思います。お友達と喋ったり、実家に甘えたり。以上のことからパニック障害が、突然自分の意思と反して生じることが分かります。また症状の種類や程度は人それぞれで、臨機応変に治療を行い周囲の人は支援を行うことが大切になります。そのためにも、どのような症状が起こるのか自分で把握することが、治療する上でも重要な姿勢となっていきます。パニック障害と付き合う上で気をつけること・再発防止のために出典 : パニック障害の症状は理由がなく不意に起こることから、本人はすぐさま救急車を呼ばなければならないという気持ちになり、連絡を急ぐケースも少なくありません。パニック発作が起こったと認められたら、次のように行動しましょう。・呼吸が浅く、過呼吸になっていたら、ゆっくりと腹式で呼吸するように指導する。・窮屈な衣類を緩める(呼吸をしやすくするのと、からだの熱を逃がすためです)。・室内や車内のときは、窓をあけて外の空気を入れる。・太陽の下のときは、日陰に移動する(暑くて湿度の高いモワッとした空気はパニック発作を引き起こしやすいのです)。(パニック障害患者さんのご家族の方へ受診を勧めるときには | こころの陽だまりパニック障害情報サイト)周囲の人は突然の発作に驚くかもしれませんが、慌てずに上記の対応をして本人を安心させてあげ、症状が落ち着くのを待つことが大切です。パニック障害と付き合う上では、生活上のストレスをなるべく減らし、規則正しい生活を送ることが大切です。人間関係だけではなく、過労や睡眠不足もストレスの原因となります。回復をあせらないようにしましょう。発作が治まってもすぐに治療が終了するわけではありません。急に服薬などを止めると、再発する可能性もあります。治療をどのように、どの程度継続していくかは、必ずかかりつけの医師に相談し、独断で治療を中止しないようにしましょう。また、治療には家族をはじめとする周囲の人たちの理解と協力が不可欠です。病気や困りごとについて説明し、落ち着いて治療に臨めるようなサポート体制を築きましょう。まとめ出典 : パニック障害とは、突然の動悸やめまい、発汗とともに恐怖を感じる精神障害です。いきなりの発作に周囲の人は驚きますが、本人はいつ次の発作が起きるかと不安に駆られながら生活しています。周囲の人たちは、完治を焦らせずに、長い目で見守りながらサポートしていきましょう。パニック障害・不安障害 | 厚生労働省パニック障害 | CBTセンターリラクゼーション療法とは? | パニック障害克服・治療・治し方マニュアルパニック障害ってどんな病気? | こころの陽だまりパニック障害情報サイト
2016年11月25日こんにちは。メンタルケア関係を中心に執筆しているメンタルケア心理士の桜井涼です。気温の寒暖差や気圧の変化を強く感じることで、体調を崩すことが多い季節になりました。長く続いた夏の暑さから、急激な寒さと乾燥といった気候の変化に体がついていけないことがあります。そうすると、さまざまな症状を引き起こすだけでなく、風邪などの疾患を起こしやすくなるのです。●秋風邪の原因と症状秋風邪をひいてしまう原因は、寒暖の差が大きく関係しています。それが体温調節に影響し、自律神経のバランスを崩してしまうことにつながるのです。自律神経のバランスが崩れてしまうと、ゆっくり睡眠がとれない、体力低下、だるさなどといった症状を起こします。そこに日常生活で起こるストレスが影響し、免疫力が低下してしまうという状態が起こってしまうのです。症状は、・発熱(38度を超えることもあります)・呼吸器系のトラブル(咳・鼻水・痰・喉の痛みなど)・頭痛やめまいなどです。この中でも特につらく感じるのが、発熱と喉の痛みと咳ではないでしょうか。晩秋になると、気温が下がります(日によって気温の差が激しく変わることも関係)。また、空気も乾燥してきます。免疫力が低下しているときに冷たく乾燥した空気を吸うことで、喉にウイルスが定着しやすく、炎症を起こしてしまうのです。ひどいと、気管支炎などにかかってしまうこともあります。●花粉症との違いこの時期、咳や鼻水といった呼吸器系のトラブルが出るため、「風邪をひいたかも?」とすぐに思ってしまうかもしれません。しかし、自己判断は危険です。風邪ではなく、花粉症である可能性もあるからです。花粉症というと、春のスギを思い浮かべる人が多いかもしれません。けれど、秋になるとブタクサ、ヨモギ、カナムグラといった植物が花粉を飛ばします。これらの植物に対してアレルギー反応を起こしてしまう人もいます。症状が強いと微熱を出す人もいるくらいです。秋風邪と花粉症の違いは、目のかゆみと高熱です。花粉症の場合は、目のかゆみと共に呼吸器系のトラブル が出ます。熱は出たとしても微熱程度です。秋風邪の場合は、呼吸器系のトラブルと高熱 が出ます。目のかゆみはありません。この2点に気をつけて、秋風邪なのか花粉症なのかを仮判断し、早めに医療機関を受診することをお勧めします。●予防方法秋風邪に対する対処法は、手洗い・うがいの他に次のことがあります。・体を冷やさない・マスクをするなどして冷気を思い切り吸い込まないようにする(気管支が弱い人は特に!)・ストレスを溜めない(免疫力の低下につながります)・軽い運動をして体力をつける・水分補給をこまめにして乾燥から身を守るなどです。特に体を温めることは、心に安らぎを感じさせることにもつながります。少々のストレスなら、温かみで癒やすことができるでしょう。コーヒーなどの温かい飲み物でもいいですが、根菜がたっぷり入っている味噌汁や豚汁、ポトフなどのスープ類を食べることをおすすめします。また、ホッカイロや腹巻きなどの腹部を温めるものを早い段階で使うのもいいですね。●おわりに秋はどうしても風邪をひきやすくなってしまいます。夏風邪と違って、喉に炎症を起こしやすい のでつらさが強いと言えます。油断していると長引きもします。気圧や気温など、少しでも「冷えるな」と感じたら、予防方法としてご紹介したことを試してみてください。つらい風邪を早い段階でくい止めましょう。【参考文献】・『non・no生活基本大百科』集英社・発行●ライター/桜井涼(メンタルケア心理士)●モデル/椎葉咲子(苺乃ちゃん、胡桃ちゃん)
2016年11月23日こんにちは、保育士でライターのyossyです。皆さんは、『先天性心疾患』についてどれくらい知っているでしょうか?実は、100人に1人 の割合で先天性疾患の赤ちゃんが産まれてくると言われています。意外に多いですよね。 生後すぐに見つかる場合もあれば、大人になってから気づく人もいるのだとか。今回は、先天性疾患のなかでも最も多い『心室中隔欠損 (しんしつちゅうかくけっそん)』(『心室中隔欠損症』とも言われます)について解説します。●心室中隔欠損は500人に1人の病気先天性心疾患の約20%が心室中隔欠損だと言われており、500人に1人程度に起こる病気 ということになります。具体的に、どういう病気なのかをみていきましょう。心室中隔欠損というのは、左心室と右心室を隔てる筋肉の壁に、生まれつき穴があいている病気のこと。心臓が4つの部屋に分かれていることはご存じのかたが多いでしょう。右心室、右心房、左心室、左心房という4つの部屋があります。心臓はポンプのような役割をしていますが、全身からの血液(酸素が少ない)↓右心房↓右心室↓肺(酸素を取り入れる)↓左心房↓左心室↓全身へという順序で巡っていくのです。全身を巡ると血液中の酸素は減ってしまいますが、右心室から肺に行くことで、また酸素を取り入れているのですね。右心室と左心室は隣り合っていますが、壁があるため、本来直接血液が流れ込むことはありません。しかし、心室中隔欠損の場合はそこに穴があいているので、左心室の血液が右心室へ流れ込んでしまうのです。その結果、心臓は余分な血液を送らなくてはならなくなり、負担がかかってしまいます。●呼吸が速くなる、体重が増えづらい等の症状が出ることも心室中隔欠損の場合、生後1週間程度で心雑音が現れることが多く、1か月健診時に診断されることも多いようです。穴の大きさや位置によっても症状はさまざまですが、心雑音以外の症状が全くと言っていいほどないケースも。穴が小さければ、1~2歳ごろまでに自然閉鎖することも多い と言われています。ただし、・呼吸が速くなる・脈が速い・母乳・ミルクの飲みが悪く、体重が増えづらいといった症状が出る場合もあり、手術が必要になることもあります。手術をすれば、問題なく園生活・学校生活を送れるケースが多いようです。●原因は遺伝子の異常であることが多い妊娠中の風疹感染、タバコやお酒、赤ちゃんに有害な薬などの影響で先天性心疾患になることもありますが、赤ちゃんの遺伝子の異常が原因のケースも多いと言います。症状が軽い場合、通常の生活をしているうえでは気づきにくいケースも多い先天性心疾患。筆者の子の場合は、生後4日目の診察で2つの心疾患がみつかり、そのうちの1つが心室中隔欠損症でした。定期的に検査を受け、3歳を過ぎてから完治の診断を受けています。定期的な診断を受けていれば、異常が出ても早期に発見できるケースが多いはず。医師から心雑音などを指摘されたら、早めに専門医を受診しましょう。【参考リンク】・心室中隔欠損症 | 日本小児外科学会()・心室中隔欠損(VSD) | 国立循環器病研究センター病院()・[73]こどもの心臓病 | 国立循環器病研究センター()●ライター/yossy(フリーライター)●モデル/倉本麻貴(和くん)
2016年11月17日こんにちは。心理食育インストラクターのSAYURIです。空気が乾燥し始めると症状が強くなると言われるアトピー性皮膚炎。自分にアトピーがあると、「子どもに遺伝したら……」と不安になる人も多いようです。そこで今回はNPO法人予防医療推進協会の理事でアトピーアドバイザーとして全国で公演活動や2,000人を超えるメルマガ会員さんにアトピー情報を発信している、桑野やすし氏にお話を伺いました。●アトピーは遺伝するってホント?桑野氏によると、『「アトピーは遺伝するのか?」については、いくつもの研究・調査があるようですが、概して「遺伝する 」と言ってよいでしょう。研究によって幅がありますが、片親がアトピーの場合で30〜50%程度、両親ともアトピーの場合で50〜80%程度の子どもがアトピーになると言われています。日本皮膚科学会の『アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2016年版』にも、アトピー素因の一つとして“家族歴”が記載されていますね。遺伝が重要なファクターだと認識されているということです。僕自身3か月の息子がいますが、いずれ彼にもアトピーが発症することを覚悟しています。今できることとしては、3つあると思って実践しています』とのこと。以下に桑野氏が実践している対策法をご紹介します。●子どものアトピー発症に備えた対策●(1)保湿をこまめに丁寧に乳幼児期の子どもの肌は非常に乾燥しやすいので、カサついていたらすぐに保湿。化粧水と乳液の組み合わせで行っています。離乳食が始まったら、食事前に口の周りにワセリンを塗って、食品が口周りの皮膚に付着しないよう保護する こともお勧めします。●(2)動物園や牧場へ行く家畜などの動物が身近にいる環境で育つと、アレルギーの発症率が5分の1になるという研究があります。さすがに家畜は飼えませんが、動物園や牧場へは連れて行ってあげようと思っています。●(3)親の食卓での振る舞いを見直すアトピーの子どもさんの多くは早食いで姿勢が悪い。そうすると消化・吸収に負担がかかります。ですから、姿勢良く、ゆっくり食べるという習慣を身に着けさせる ことが大切。そのためには、ご両親がそういう食べ方を実践する必要があるわけです。子は親の姿を真似しますからね。一口ごとに箸を置いてよく噛み、食事中は席から立たない。落ち着いた食卓を築いてください。●親が心の準備をしておくことも大切また同氏によると、親の心の準備も大切とのこと。桑野氏がこれまで数多くのアトピーのお子さんを見てきた中で、アトピーの子どもを持つ親のメンタルについても以下のようにお話しされています。『アトピーのお子さんを抱える家族を見ていると、多くの場合、子どもよりも親の側に心理的な不安定さが見え隠れしています。親が自分を責めていたり、わが子を過剰に“かわいそう”に感じていたり、周囲の目が気になってアトピーであることを隠そうとしていたり。そういう心の“ぐらつき”があると、それは子どもにも伝わります。そうすると、ストレスの影響で症状が悪化・長期化する こともありますし、親子関係にしこりを残す ことにもなりえます。「アトピーになってもならなくても、この子に幸せがたくさん降り注ぐことを祈っていよう」というくらいの心の準備をしておきたいですね。遺伝する確率が高いということは、“準備ができる”ということです。お子さんがいる方も、これからという方も、今からできることがあると思います』----------いかがでしょうか。自分がアトピーであったり子どもにアトピーがあったりすると、どうしても不安やつらい気持ちが大きくなりがちですが、桑野氏のアドバイスによって少しでも心が軽くなればと思います。【取材協力/アトピーアドバイザー・桑野やすし】・アトピー改善アドバイザー 桑野やすし オフィシャルブログ●ライター/SAYURI(心理食育インストラクター)●モデル/神山みき(れんくん)
2016年11月17日うつ病(大うつ病性障害)とは?出典 : うつ病とは、繰り返し気分が落ち込んだり、意欲がなくなることが特徴の精神疾患です。これらの症状がただの気分の落ち込みではなく病的なうつ状態であることを意味しています。人間は誰しも、身の回りで起きる出来事によって気分の落ち込みを感じたり、やる気がなくなってしまったりすることがあります。しかし何もないのに気分が落ち込み、感情を自分自身でコントロールできないときはうつ病を発症している場合があります。軽症を含めると日本の人口のうちの15人に1人がうつ病を発症したことがあると考えられており、現代社会では珍しい疾患ではありません。しかしながら、うつ病は自然治癒が難しく、治療が必要な障害という認識が重要となります。うつ病は、2013年に出版されたアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)の診断基準においては、双極性障害(そううつ病)とはっきり区別するため、大うつ病性障害という診断名に分類されています。本記事では、一般に普及しているうつ病という表記で説明していきます。うつ病の症状出典 : うつ病の症状には精神症状と身体症状に大きく分けられます。それぞれ代表的なものを中心に紹介します。■持続的な抑うつ気分:うつ病の代表的な症状です。症状として、気分がひどく落ち込む、憂うつ、ひどく不安になる、落ち着かない、イライラするなどの抑うつ気分が持続的に生じます。症状の多くは朝方が最もひどく、夕方になると少し良くなるという傾向があります。症状が進むにつれて、罪悪感などを感じ自分を責めてしまうようになり、悪化すると自殺願望を起こしてしまう場合もあります。■意欲の低下:何事にもやる気をなくしてしまいひきこもりがちになったり、趣味などに対してこれまでと同じような興味がもてなくなります。意欲の低下が進行すると日常生活に支障が出るようになり、外出や家族以外の交流をしなくなる傾向があります。■思考・行動の抑制・抑止:物事に集中することができなくなり、注意力・判断力が低下し、決断したり行動したりすることが難しくなります。これにより、・感情の動きが小さくなる・自己評価の低下・自分を責めてしまう・不安・焦燥感・妄想・自殺願望などの症状が現れやすくなります。■全身のだるさ・疲れやすさ:激しい運動をしていないのに、全身がだるく感じられ、疲れやすくなります。この疲労感は休憩しても回復せず、慢性化することが特徴です。■睡眠障害:うつ病のほとんどの人が睡眠障害になります。代表的な症状としては、不眠(眠ってもすぐに目が覚めるなど)が全体の8割、過眠(眠っても眠り足りない)が2割を占めます。特に、いつもより早く目が覚める人が多いようです。■食欲低下とそれに伴う体重低下:食欲低下もほとんどのうつ病がある人が経験します。味覚が分からなくなることで、食事の楽しさを感じることができなくなるなどの症状を発症します。食欲低下に伴い、人によっては体重が大幅に減少することがあります。こちらではうつ病を体験された方の経験を紹介します。うつ病で休職中の会社員です。私の経験では脳がつかれる感覚がすごくわかります。睡眠でも疲れが取れないようなら軽いうつの可能性もあるかもしれません。精神科にかかるのでしたらしっかりと医師に相談するのがいいと思います。かりにうつ病でも必ず治りますし早い段階で治療を開始するのはいいことだと思います。人によっていろいろな症状から現れます。まず不眠になる人や、憂鬱感が酷くなる人、拒食、不安、出社拒否、酷い倦怠感など、うつ病になるきっかけは個人によって違います。これらの症状が一度に出る人もいますし、「ただ泣きたくなる」とだけ言う人もいたりしますよ。上記のように、うつ病の症状は人により大きく異なります。長期間気持ちの落ち込みが続き、日常生活に支障をきたす場合は、一度うつ病を可能性を考えてみましょう。そして、うつ病かもしれないと思った場合は、早めに医療機関を受診しましょう。うつ病に伴う身体症状l ヤンセンファーマ株式会社うつ病症状チェックシートl シオノギ製薬ライフステージごとのうつ病出典 : ■学童期(6~12歳):子どもがうつ病を抱えてしまう可能性は低いですが、まれに発症する場合があります。学童期のうつ病では頭痛や腹痛、吐き気・嘔吐、チック症、おねしょが特徴となります。また、ひねくれたり、反抗的な態度を起こしてしまったりする問題行動が現れることもあります。■思春期・青年期(11~20歳):思春期や青年期は精神的な葛藤を抱えやすく、うつ病の症状も成人とあまり変わりません。身体とこころの成長バランスが崩れやすいので、突然の発症・症状の進行が一気に進むことがたまにあります。また、登校拒否やひきこもりの状態、アルコールや薬物に手を出してしまうなどの問題行動を起こすこともあります。■青年期・壮年期(21~64歳):青年期・壮年期は、仕事や人間関係、夫婦・親子関係など、生活のあらゆる場面でプレッシャーを感じやすいため、比較的うつ病にかかりやすくなる時期です。そうした背景もあり、うつ病の平均発症年齢は20歳台となっています。またホルモンバランスの崩れにより、更年期障害の症状としてうつを発症することもあります。女性の場合は、女性ホルモンの増加、妊娠、出産をはじめとする女性特有のうつ病があります。■老年期:老年期になると、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害、アルツハイマー病などの疾患からうつ病を合併することが多くあります。その他にも退職や家族・友人との死別などの喪失体験から来る精神的ストレスも、発症の原因となります。老年期のうつ病は、身体の不調などの身体症状が前面に出ることが特徴ですが、妄想などがみられることもあります。発達障害の二次障害としてのうつ病出典 : (注意・多動性障害)、アスペルガー症候群や広汎性発達障害(PDD)などの発達障害がある人は、うつ病が合併する確率が比較的高い傾向があります。そのときは、“人間不信的行動”という二次障害としてうつ病を発症する場合が多いです。人間不信的行動とは、自尊心・自己肯定感が低下して「自分はダメな人間かも知れない」と思うようになり、また、そんな自分のことを周りは誰も理解してくれないという気持ちから、周囲の人を信じられなくなったときに起こしてしまう行動のことを指します。発達障害がある人は、自身が発達障害であることを認識していないケースも多く、周りから理解が得られていない場合も多いです。その結果、人間不信になり、身の回りの環境に対してストレスを感じてしまい、知らない間にうつ病を発症しているということも少なくないのです。二次障害にうつ病が多い理由とはl 朝日新聞デジタルうつ病の原因出典 : うつ病の発症には、主に性格、ストレス、生物学的要因が大きく関与しているといわれています。かつてはうつ病は性格や遺伝の問題であるとされていました。しかし近年患者数が急増するとともに研究が進み、性格や遺伝の問題だけではないことが徐々にわかってきました。近年ではストレスや生物学的要因がうつ病に深く関与していると言われていますが、まだはっきりと解明されたわけではなく、研究が進められている過程にあります。■性格:主にきまじめな性格や、社交的な反面気が弱い性格の人がうつ病になりやすいと言われています。熱心に仕事に打ち込み、責任感が強くすべてのことに対して正直に取り組む人や、親しみやすくいい人として周囲からは見られるが、実は気が弱いために他者を優先させてしまう一面を持つ人が例として挙げられます。性格がうつ病の原因となる理由として、きまじめな性格により身の回りに起こる出来事をより重く受け止めてしまう傾向があることが挙げられます。深く考えすぎてしまうために、その出来事がストレスとなったり、対処しきれなくなるまで抱え込んでしまうのです。■ストレス:近親者の死亡、病気、家庭内のトラブル、出産、結婚・離婚、会社の人事異動や転勤、仕事上のトラブル、過労などさまざまなストレスがうつ病の発症の大きな誘因となっているという研究結果が出ています。■生物学的要因:上記の性格やストレス要因が当てはまる人のなかで、うつ病を発症する人としない人の違いは、主に生物学的要因によると言われています。脳の中で重要な情報伝達の働きをしているセロトニンやドーパミンなどの異常が、うつ病の発症と深く関わっているのではないかという有力な説があります。うつ病の診断基準出典 : アメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計のマニュアル』第5版)による診断基準は以下の通りです。A.以下の症状のうち5つ(またはそれ以上)が同じ2週間の間に存在し、病前の機能からの変化を起こしている。これらの症状のうち少なくとも1つは(1)抑うつ気分、または(2)興味または喜びの喪失である。注:明らかに他の医学的疾患に起因する症状は含まない。(1)その人自身の言葉(例:悲しみ、空虚感、または絶望を感じる)か、他者の観察(例:涙を流しているように見える)によって示される。ほとんど一日中、ほとんどの毎日の抑うつ気分注:子供や青年では易怒的な気分もありうる。(2)ほとんど一日中、ほとんど毎日の、すべてまたはほとんどすべての活動における興味または喜びの著しい減退(その人の説明、または他者の観察によって示される)(3)食事療法をしていないのに、有意の体重減少、または体重増加(例:1ヶ月で体重の5パーセント以上の変化)、またほとんど毎日の食欲の減退または増加。注:子どもの場合、期待される体重増加が見られないことも考慮せよ。(4)ほとんど毎日の不眠または過眠(5)ほとんど毎日の精神運動焦燥または制止(他者によって観察可能で、ただ単におちつきがないとか、のろくなったという主観的感覚ではないもの)(6)ほとんど毎日の疲労感、または気力の減退(7)過剰であるか不適切な罪責感(妄想的であることもある、単に自分をとがめること、または病気になったことに対する罪悪感ではない)(8)思考力や集中力の減退、または決断困難がほとんど毎日認められる(その人自身の説明による、または他者によって観察される)。(9)死についての反復思考(死の恐怖だけではない)、特別な計画はないが反復的な自殺念慮、または自殺企殺、または自殺するためのはっきりとした計画B.その症状は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を起こしている。C.そのエピソードは物質の生物学的作用、またはほかの医学的疾患によるものではない。注:基準A~Cにより抑うつエピソードが構成される注:重大な喪失(例:親しいものとの死別、経済的破綻、災害による損失、重篤な医学的疾患・障害)への反応は、基準Aに記載したような強い悲しみ、経済的破綻、災害による損失、重篤な医学的疾患・障害)への反応は、基準Aに記載したような強い悲しみ、損失の反芻、不眠、食欲不振、体重減少を含むことがあり、抑うつエピソードに類似している場合がある。これらの症状は、喪失に際し生じることは理解可能で、適切なものであるかもしれないが、重大な喪失に対する正常な反応に加えて、抑うつエピソードの存在も入念に検討すべきである。その決定には、損失についてどのように苦痛を表現するかという点に関して、各個人の生活史や文化的規範に基づいて、臨床的な判断を実行することが不可欠である。D.抑うつエピソードは、統合失調感情障害、統合失調症、統合失調症様障害、妄想性障害、またはほかの特定および特定不能の統合失調症スペクトラム障害およびほかの精神病床がイ軍によってはうまく説明されない。E.躁病エピソード、または軽躁病エピソードが存在したことがない。注:躁病様または、軽躁病エピソードのすべてが物質誘発性のものである場合、またはほかの医学的疾患の生理学的作用に起因するものである場合は、この除外は適応されない。診断名を記録する際、各用語は以下の順に記載する:うつ病、単一または反復エピソード、重症度/精神病性/寛解の特定用語、そしてその後に現在のエピソードに当てはまる、以下に列挙するコードのない特定用語が来る。不安性の苦痛を伴う、混合性の特徴を伴う、メランコリアの特徴を伴う、非定型の特徴を伴う、気分に一致する精神病性の特徴を伴う、緊張病を伴う、周期発症、季節型などに分類される。うつ病に関する相談先出典 : うつ病かもしれないと思ったり、不安を感じる場合は専門機関などに相談することをお勧めします。■精神福祉保健センター:心の健康相談や医療機関への受診に関する相談、社会復帰相談や精神疾患の相談などを行っています。心の問題や病気で悩んでいる方そのや家族向けに無料で相談を受け付けているほか、電話にてこころの健康相談も行っています。全国精神保健福祉センター一覧l 八千代病院■保健所うつ病の治療や社会復帰に関する相談に、医師などの専門医がアドバイスを行います。お住まいの地区の保健所へ電話し、場合によっては家庭訪問を行うこともあります。■日本産業カウンセラー協会働く人のホットラインという無料電話相談をおこなっています。相談料金は無料です。職場、暮らし、家族、将来設計など、働くうえでのさまざまな悩みなどを相談することができ有料のカウンセリングも受けることができます。相談・カウンセリングをご希望の方へl 日本産業カウンセラー協会■U2plus:認知行動療法をベースにした無料のうつ病コミュニティです。無料のうつ病コミュニティl U2plus■いのちの電話自殺予防を目的として、日本いのちの電話連盟が運営しています。各都道府県ごと設置され、相談員が応対します。一般社団法人日本いのちの電話またうつ病の診断の際には、主に精神科や精神神経科で受診が一般的です。また、心療内科やメンタルヘルス科、メンタルクリニックなどの医療機関でも受診することができます。よく分からない場合は事前に電話やインターネットなどで確認することをおすすめします。うつ病の診断・治療の流れ出典 : 診断の際には、まず軽い問診を行います。うつ病を発症している可能性があると判断されると、身体検査から心理検査の流れで症状の程度などを検査し、うつ病かどうかを特定し定期ます。1.問診:うつ病の診断基準と照らし合わせ、どのような症状があるのか、どのような人なのかを聞いていきます。必要に応じて家族や周りの人にも質問し、さまざまな角度から本人と向き合っていきます。2.身体検査:その後身体の状態と他の合併症の有無を確認するために、必要に応じて身体検査を行います。代表的なものとして、尿検査、血液検査、画像検査(頭部CT・MRI)、心電図検査、脳波検査などが挙げられます。3.心理検査:心理検査は、うつ病の重症度を数値化するときに用います。ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)という質問表に従って質問が行われます。質問にはそれぞれ3~5個の答えが用意されいて、その中で一番当てはまるものを選択します。検査には15~20分ほどの時間を要し、重症度を5段階に分類します。うつ病は一人ひとりの症状に合わせて薬物治療、精神療法や電気けいれん療法などを行っていきます。■薬物療法:薬物療法の場合、うつ病に対してはうつ症状を改善する「抗うつ薬」が用いられたり、不安を抑える「抗不安薬」が処方されたりすることがあります。代表的な抗うつ薬として三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)などが挙げられ、十分な量を十分な期間服用することが重要であるとされています。うつ病は再び症状が出現することの多い病気です。回復後1年の間に約20パーセントの患者さんに再び症状が出現する上に、その後の再発も含めると、その割合は約40~50パーセントに上がります。薬物療法は継続することが大切であり、途中で治ったと感じて治療することをやめてしまうと半年後に再び症状が出現する危険性は2倍になるという研究結果がでています。しかし、治療法には個人差があり薬物療法に関してはことさら注意が必要です。■精神療法:現在様々な精神療法が開発されていますが、うつ病に有効であると考えられているのは認知行動療法と対人関係療法です。精神療法では、医師やカウンセラーとの対話を通して、自身がどのタイミングで不安や心配を感じるのか、物事をどのように捉えているのか自身の思考のクセを把握していきます。そして、不安を感じる状況をどのように捉え、対処していけばいいかを考え、自身の感情をコントロールできるようにしていくことで治療を進めます。また対人関係療法は、うつ病を抱えている人だけではなく、その人の家族や恋人などの重要な他者との関係に焦点を当てて、他者との関わり方を考えていく精神療法です。最終的には身近な他者との関係だけではなく、より広い範囲の人々に対してもよりよい関係を築けるようになることを目的とします。■修正型電気けいれん療法(m-ECT):頭皮から電流を流すことで意図的にてんかん発作を発生させ、抑うつ症状を改善します。この治療法が用いられるのは薬物療法をはじめ、認知行動療法、その他の治療では効果が認められない場合、あるいは妄想をしてしまうなど症状が非常に重く治療の緊急性が高い場合です。軽、中度のうつ病の場合、あるいは他の治療法によって効果が認められている場合には原則使用されません。電気けいれん療法がなぜうつ病や、双極性障害の症状に効果があるのかについては未だ解明されていません。しかし、多くの医療機関においてその有効性が確認されており、日本においても保険の適応となっています。以前は治療の過程で生じる全身のけいれんが骨折などの怪我につながるリスクがありました。しかし、1980年代頃から施行されるようになった「修正型電気けいれん療法(m-ECT)」では麻酔科医の同伴のもと麻酔薬及び筋弛緩剤を投与し、けいれんを防ぐことができます。治療を受けることができる医療機関は必要な薬剤や人員の確保ができる病院に限られるようです。うつ病l 慶應義塾大学病院出典 : うつ病の治療には時間がかかることも多く、場合によってはそれなりのお金もかかってしまいます。医療費については、個人の症状に合わせて治療が行われるため、一概には言えませんが、うつ病で初診の際にかかる費用は、診療費と薬代を合わせ、大体1万円前後というのが平均的です。ということは、保険を使わず自費負担の場合は、その全額を支払うことになります。保険を使った場合には、健康保険(健保)では本人は2割負担(2003年4月より3割負担(3~69歳))なので2000円前後、健保家族と国民健康保険(国保)では3割負担なので3000円前後を支払うことになります。平均的な通院ペースは2週間おきで、薬も2週間分処方されることが多いようです。2回目以降(再診)は、初診の頃より、薬の処方量が増えることも多く、その分薬代はかかりますが、初診料はかかりませんので、合計の支払金額は若干安くなるようです。このような治療費の負担を抑えるために、経済的な支援をおこなう制度があります。■自立支援医療制度:障害のある患者さんに必要な医療を確保し、継続して治療を受けられるように支援することを目的として定められたものです。医療費の自己負担額が原則として1割に減額されると同時に、所得に応じて1ヵ月あたりに支払う金額に上限が設けられます。■健康保険の傷病手当金(健康保険加入者向け):病気・ケガのために勤務先を連続して3日間休んだ場合、4日目以降から支給されます。支給金額は日割給与(標準の報酬日額)の100分の60であり、最長1年半間受け取ることができます。受給条件や受け取れる金額は場合により異なる場合があるので加入している保険組合に確認しましょう。また、国民健康保険の場合は任意支給となり、傷病手当金制度がない場合がほとんどです。■精神障害者保健福祉手帳:税制上の優遇措置をはじめ、さまざまな支援サービスを受けることができます。交通機関の運賃や公共施設の料金が割引となるサービスもあります。■精神障害労災:これは労働者災害補償保険法に基づく制度で、仕事中にケガや病気、後遺症もしくは死亡した等の場合、本人や遺族に対して一定の保険給付を行う制度です。うつ病になった時の、本人・周囲の人々の対応法出典 : うつ病の治療には十分な休養と休息を取ることが、最も重要となります。早く治そうと焦らず、規則正しい生活を送りましょう。栄養バランスのとれた食事、適度な運動・睡眠時間を取ることが望ましいです。また、うつ病を抱えている人は自分自身では気持ちをコントロールすることをすることを難しいと感じ、自身が思うように行動することができていない場合が多いです。そんな中、周囲の人がうつ病を抱えている人に”頑張れ”などの声をかけたとき、更にその人を追いつめてしまう恐れがあります。そのため、うつ病を抱えている人に対しては励ますより、少し休んでみるなどの提案を行い、その人がリラックスできる環境づくりをすることをおすすめします。まとめ出典 : うつ病は日本において、15人に1人が発症したことがあるといわれている、決して珍しくはない疾患です。一度うつ病を経験すると、ストレスのもととなる要因が多い現代社会において、他のストレス要因も敏感に感じ取るようになり悪循環に陥ってしまう場合も少なくはありません。そのため、悪循環に陥る前の初期治療、そして症状が治まった後の再発予防がとても大切になっています。近年研究が進んでいることにより治療法の種類も増えてきています。そのため疾患や症状の程度を考慮した上での一人ひとりに合わせた治療法が選択できるようになっています。最近気分が晴れず、ずっと暗いまま自分をコントロールできないなど、不安を抱えている場合はうつ病を抱えている可能性があります。気になることがある場合は、専門家に相談しながら、症状の見極めや対応方法を検討すると良いでしょう。
2016年11月12日こんにちは、ライターの齋藤惠です。2016年10月22日に放送されたラジオにて、歌手の和田アキ子さんが『シェーグレン症候群 』という病気にかかっていることを発表しました。あまり聞き慣れない病名ですが、いったいどんな症状になってしまうのでしょうか?また、私たちにも起こり得る病気なのでしょうか?●難病『シェーグレン症候群』とは?難病情報センターの説明によると、『シェーグレン症候群』とは、『1933年にスウェーデンの眼科医ヘンリック・シェーグレンの発表した論文にちなんでその名前がつけられた疾患』だそうです。また、『日本では1977年の厚生労働省研究班の研究によって医師の間に広く認識されるようになりました』とのことです。一般の人々にはほとんど知られていない病気という印象がありますが、意外にも、潜在的な患者さんやアメリカでの報告を含めると年間10~30万 もの人々がこの病気によって病院にかかっているそうです。●具体的にどんな症状?シェーグレン症候群になると、下記のような症状があらわれます。・目の乾燥(ドライアイ)・口の乾燥・鼻腔の乾燥・唾液腺の腫れと痛み・全身の疲労感人によって個人差はありますが、実にさまざまな症状が起こってしまいます。ちなみに和田アキ子さんの場合は、涙や唾液が出にくいとのことで、常に水を手放すことができない生活を送っているそうです。歌手にとっては直接仕事に影響しそうな症状ばかりで、つらそうですね。●どんな人がかかりやすい?シェーグレン症候群の患者さんは、とくに50歳代の女性に多い と言われています。ただし、少数ですが子どもから高齢者まで広範囲にわたり発症する可能性はあるとのことです。女性ホルモンの変化や遺伝、ウイルス、免疫異常など複数の原因が考えられるようですが、やはりこれから更年期などをむかえる女性は特に気をつけたほうがよいでしょう。●どんな治療をするの?現在のところ、残念ながら病気そのものを治療する方法は見つかっていない ようです。ただ、患者さんの症状に合わせて乾燥対策を行うことで、10年後も20年後も現状と変わらない生活を送ることができるといいます。そのためには、定期的な健康チェックを行い、医師の指示にしたがって生活習慣を改善していけばよいとのことです。具体的には規則正しい生活や、過労を避け休息をたっぷりとること、適度な運動など、シェーグレン症候群に限ったことではなく、誰もが健康を維持するために理想的な生活をすれば自然と病気の悪化を防ぐことにつながります。根本的な治療方法がわかっていない難病と言われているだけに、かかってしまった人は極度の不安に陥ってしまうこともあるようですが、体の免疫力を落とさないためにも事態を暗く考えてはいけません。今回、和田アキ子さんが病気を公表したことで、シェーグレン症候群への理解が一般へと広がり、治療の研究が大きく進展することに期待したいですね!【参考リンク】・シェーグレン症候群 | 難病情報センター()・シェーグレン症候群 | 大阪大学 免疫アレルギー内科(大学院医学系研究科・医学部)()●ライター/齋藤惠(金融コンシェルジュ)
2016年11月07日気分障害とは出典 : 気分障害とは常に気分が落ち込んだり、逆に高まることで日常生活に様々な支障をきたしてしまう心の病気です。この障害名は世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)により定められています。気分障害とは気分に関する障害がある病状・疾患を一群としてまとめたものをさしますが、主に以下が含まれます。・うつ病エピソード・躁(そう)病エピソード・双極性障害(躁うつ病)・反復性うつ病性障害・持続性気分障害「エピソード」とは、症状が現れている状態であるということを表す用語です。上記の分類に当てはまらない場合は、その他の気分障害や特定不能の気分障害と診断されます。人は生活を送っていると少なからず嬉しいことや悲しい出来事に直面しますが、その際に気分が上がったり、気分が落ち込んだりしてしまうことは当たり前のことです。しかしこのように発生した感情を、自分でコントロールできなくなることがあります。こうした状態が一定期間以上続いて仕事や私生活など普段の生活に支障がでている場合は、気分障害の可能性があります。参考文献: 『ICD-10』 2013年 中山書店/刊気分障害の種類と症状出典 : 『ICD-10』によると気分障害は大きく分けて5つに分類することができます。うつ病エピソードは気分の持続的な落ち込みを主体とした症状が現れている状態のことです。医師によってうつ病エピソードが確認されると、いわゆるうつ病と診断されます。うつ病エピソードが当てはまると診断された場合は、他の細かい基準が用いられ障害の程度が判断されます。厚生労働省のデータによると、日本においては「一生のうちにうつ病になる頻度は約15人に1人と考えられている」とされるとてもメジャーな疾患ですが、その中の4分の3の人は治療を受けたことがないと言われています。症状としては、・通常なら快楽を感じる活動に対して興味または喜びを感じなくなる・喜怒哀楽などの感情の変化が顕著に無くなってしまう・通常より2時間以上早く起床する・重度の抑うつ気分が午前中に現れる・食欲が激しく低下する・体重の減少・様々な欲求への著しい減退が挙げられます。現れる症状は人それぞれですが、『ICD-10』によるとこれらの症状のうち4つ以上の症状が2週間以上つづくとうつ病の基準を満たしていると診断されます。また、うつ病が重症になると妄想の症状が出ます。代表的なものは体の過度な不調があると妄想する心気妄想、自分はまずしいと思い込んでしまう貧困妄想、自分は犯罪など悪いことを行ってしまったと確信してしまう罪業妄想です。1990年のWHOの研究では「健康な生活を障害する疾患」の4位として発表されていましたが、2020年には虚血性心疾患に次いで2位に上昇すると言われています。その理由として社会のストレス要因が増えてきていることがあると言われています。また慢性疾患を抱えているとうつ病が合併しやすいといわれていることも挙げられます。例えばがんを発症している人のうちの20~38パーセント、糖尿病は25パーセントの人がうつ病を合併していると言われています。こころの耳l 厚生労働省気分障害l 慶応義塾大学病院躁病エピソードは爽快感、身体の快調感、幸福感があり、自信に満ち溢れ楽観的な考えに支配される症状が現れている状態のことです。医師によって躁病エピソードが確認されると、いわゆる躁病と診断されます。躁病エピソードが当てはまると診断された場合は、他の細かい基準が用いられ障害の程度が判断されます。躁病の症状としては、・活動的になる・口数が多くなる・注意不足、集中力低下によるミスが増える・睡眠欲求の低下・性的欲求が高まる・リスクを考えない浪費や無謀な運転などの常識をはずれた行動を起こす・社交的になる、または過度に馴れ馴れしくなるが挙げられます。『ICD-10』によると躁病の診断には上記の症状のうち3つの症状が4日以上持続していること、日常生活に本人が感じる程度のトラブルを起こしてしまっていることが条件となります。多くの場合、躁病の症状は徐々に始まり、何となく元気がみなぎってきたり、仕事の能率が上がったりすることで調子がいいと感じていきます。症状が重くなっていくと活動性が増加し、多くのアイデアを実行しようと一日中活動し続けます。この場合に睡眠時間が短くなってしまったとしてもあまり疲れたと感じません。当初は意識的に活動量を調整するように気をつけることができます。しかし、次第に調子が出すぎているという認識がなくなり周囲の人を考えない言動をするようになります。最終的には口数が多く、自己主張が強くなり、しきりに他人の世話を焼こうとし、対人関係トラブルを起こしてしまう傾向にあります。生涯にわたって躁病の症状しか発症しない単極性躁病はとても珍しく、躁病エピソードを発症している人のほとんどは双極性障害を発症しているといわれています。うつ病エピソードのみを2週間以上継続し、2回以上繰り返すと反復性うつ病性障害と診断されます。反復していると診断される基準として、先述したうつ病を発症した後2ヶ月以上同じような症状が現れない期間が存在することがあげられます。反復性うつ病性障害の一例として季節性感情障害が挙げられます。季節性感情障害とは主に秋から冬にかけて抑うつ状態となり、春には症状が改善するなど、抑うつ症状になる期間と回復する期間の転換が1年のうちの特定の時期に起こる疾患です。双極性障害とは一般的に躁うつ病と呼ばれる疾患です。双極性障害はうつ病エピソードと躁病エピソード両方を反復する場合、基準に当てはまると診断されます。初めのエピソードを発症してから次のエピソード発症するまで平均5年程度かかるといわれますが、エピソードを繰り返すごとに再発までの期間は短くなり、一つ一つのエピソードの継続期間はながくなるといわれています。躁病エピソードは急に発症することが多く、2週間から5か月程度持続します。一方うつ病エピソードは徐々に発症し、躁病エピソードに比べて発症期間が長い傾向にあります。双極性障害によって気分が高揚し、いらいらしたり、注意散漫になったり、誇大的になったりするなど対人関係などにも様々な障害を引き起こすことがあります。双極性障害は再発率が高いと同時に、自殺をしてしまう確率が精神障害の中で最も高い精神疾患の一つといわれています。双極性障害(躁うつ病)l 前田クリニック主に気分循環症・気分変調症をまとめて指す疾患です。躁病やうつ病の症状は当てはまらないけれど、明らかに気分が変わっていることが分かる状態をさします。■気分循環症通常は成人早期までに発症する双極性障害の軽症型です。うつ病エピソードと双極性障害の症状すべての条件を満たさない程度で、数日単位で落ち込んでいる状態と気分が良い状態が不規則に反復する期間が2年間以上続きます。気分循環症の症状としては、うつ病期間と気分高揚期間にそれぞれ3つ以上の症状が当てはまることが条件となります。うつ病期間:・エネルギーあるいは活動性の低下・自信が急に無くなるなどの自己評価の激しい変化・不眠・集中ができなくなる・引っ込み思案になり、社会からひきこもる・欲求の低下、喜びの感情の喪失・口数が少なくなる気分高揚期間:・エネルギーがありあまり、活動性が高くなる・睡眠欲求がなくなる・自己評価が過大になる・頭の働きがとてもよくなる・社交的になり、人付き合いがとてもよくなる・口数が多くなる・欲求を追い求めるようになる・過剰に楽観的になったり、過去に成し遂げたことに対して過大評価をしてしまう軽うつエピソードが優位の抑うつ型、軽うつエピソードと軽躁(そう)エピソードが同じ頻度で出現する定型的な気分循環症、軽躁(そう)エピソード優位の軽躁型の3つのパターンがあります。抑うつ型を発症している人が一番多く、割合としては気分循環症を発症している人の50パーセントを占めていると言われています。■気分変調症うつ病の診断基準を満たさない程度の軽度の抑うつ状態が2年以上持続する疾患です。うつ病と違い比較的短期間であれば気分が落ち込まない正常な期間が存在しても診断内容に影響がないと言われています。気分変調症の症状としては、気分循環症のうつ病期間に発症する症状に加えて、・涙もろい・物事に対して絶望感を感じる・日常生活でこなさなければいけない課題を対処しきれないという考えに陥る・将来や過去の出来事に対して考え込んでしまうなどの症状を発症します。これらの症状のうち3つ以上が当てはまると気分変調症を発症していると診断されます。持続性気分障害を発症している人自身は無気力感や気分の大きな落ち込みを感じていますが、社会的・職業的にはトラブルが発生していない場合が多いです。そのため本人も周囲の人も疾患を発症していると認識できず、本人は不調をそのままにしてしまう傾向があります。参考文献: 『ICD-10』 2013年 中山書店/刊気分障害を発症しやすい年齢出典 : うつ病はいかなる年齢においても発症しますが、発症率は思春期以降に大きく増加します。平均発症年齢は20歳代ですが、高齢者になって初めて発症する人も少なくはありません。厚生労働省研究班のデータによると、日本においては「一生のうちにうつ病になる頻度は約15人に1人と考えられている」とされています。女性のほうがかかりやすく、有病率は男性の1.5倍~3倍であると言われています。これは女性ホルモンの増加、妊娠、出産など女性に特有のトラブルが多いことが原因の一つであると考えられています。うつ病をしっていますか?l 厚生労働省双極性障害の発症年齢をみてみますと、15~19歳が最も多く、20~24歳がそれについで多く、それ以上では50歳以上も稀にあると言われます。発症平均年齢は30歳と言われています。5、6歳くらいの子どもについても双極性障害の発症が認められていますが、ADHD(注意欠陥・多動性障害)との識別が難しく、まだ研究が進められている段階です。双極性障害l 前田クリニック気分循環性障害は通常青年期または成人期早期に始まる疾患です。性別関係なく発症すると言われており、子どもの気分循環性障害では症状発症の平均年齢は6.5歳です。気分循環性障害がある人が双極性障害を発症する可能性は15~50パーセントです。気分変調症は小児期、青年期、あるいは成人期早期に発症し、慢性化する場合が多いです。『DSM-5 』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版)2014年医学書院/刊気分障害の原因出典 : 気分障害が発症してしまう理由として遺伝子、ストレス、環境、性格などの様々な要因が複雑にかかわりあっていることが挙げられます。主な要因は抑うつ症状の強いうつ病・気分変調症、もしくは躁うつ症状がでる双極性障害・気分循環性障害のどちらかによって異なります。しかしまだはっきりとした原因は解明されておらず、今後更なる研究が必要とされています。うつ病・気分変調症は主に性格、ストレス、生物学的要因が大きく関与しているといわれています。かつてはうつ病や気分変調症は性格や遺伝の問題であるとされていましたが、近年患者数が急増するとともに研究が進み、性格や遺伝の問題だけではないことが徐々にわかってきました。近年ではストレスや生物学的要因がうつ病に深く関与していると多く言われています。■性格:主にきまじめな性格や社交的な反面気が弱い性格の人がうつ病になりやすいと言われています。熱心に仕事に打ち込み、責任感が強くすべてのことに対して正直に取り組む人や、親しみやすくいい人として周囲からは見られるが、実は気が弱いために他者を優先させてしまう一面を持つ人が例として挙げられます。■ストレス:近親者の死亡、病気、家庭内のトラブル、出産、結婚・離婚、会社の人事異動や転勤、仕事上のトラブル、過労などさまざまなストレスがうつ病の発症の大きな誘因となっているという研究結果が出ています。■生物学的要因:上記の性格やストレス要因が当てはまる人のなかで、うつ病を発症する人としない人の違いは主に生物学的要因にある傾向があります。脳の中で重要な情報伝達の働きをしているセロトニンやドーパミンなどの異常が、うつ病の発症と深く関わっているのではないかという有力な説もあります。しかし、この生物学的要因もまだ解明されたわけではなく、研究が進められている過程にあります。双極性障害・気分循環性障害の発症要因と考えられるものは遺伝子、ストレス、性格、生物学的要因で、もっとも深く関与していると言われているのが遺伝子です。■遺伝子:双極性障害は同じ家系に発症する確率が高いことから、何らかの遺伝子が発症にかかわっているのではないかと指摘されています。しかし、ある特定の遺伝子ではなく、いくつかの遺伝子の組み合わせによって発症するのではないかと推測されています。■ストレス:身の周りで起こることを本人がストレスに感じてしまうことも大きな原因の一つであると言われています。例として結婚や引っ越し、出産などのライフイベントに対する受け止め方や重なり具合、職場の人間関係などが挙げられます。このような生活環境の変化がストレスとなり、こころの安定の成分をつかさどるセロトニンに影響がでてしまったり、様々な支障が発生します。■性格:うつ病・気分変調症を発症する人と違い、双極性障害・気分循環性障害を発症する人は社交的で明るい、ユーモアのある性格という傾向があります。このような性格を一般的に循環気質と表現します。気配りも上手で、常に周囲の人の中心的役割を果たしていますが、気分が高揚しているときと沈み込んでいるときが周期的に訪れるため、状況に応じながら気分や思考がポジティブになったり、ネガティブになったり変化します。しかし、現在では循環気質の性格だけではなく様々な気質の人も発症することが分かっており、執着気質がその一つです。執着気質とは一つのことにたいして徹底的に自分を追い込む頑張り屋さんのような人です。「疲れてなんかいない」といって自分自身を鼓舞し、さらに頑張り過ぎることを継続することで双極性障害を知らない間に発症している場合があります。■生物学的要因:近年双極性障害には生物学的要因もあることが明らかになってきています。それは、脳細胞内にあるミトコンドリアの機能異常です。ミトコンドリアはエネルギー物質を生産する働きの他に、情報伝達にかかわるカルシウムの濃度を調整する機能をもつ物質です。ミトコンドリアの異常によってカルシウム濃度の調整がうまく行われなくなると細胞内の情報がうまく伝わらず、双極性障害の発症を誘因するものと考えらます。しかし双極性障害は発症する確率も低くはっきりとした原因はまだ解明されていません。研究が今後進んでいくことが期待されます。気分障害l 前田クリニック気分障害の相談先と治療先出典 : 気分障害に区分される疾患はストレスが多い現代社会ではいつ、誰が発症してもおかしくない疾患です。気分が上がらず憂鬱な気分のまま数週間が経ってしまったり、逆にテンションの上がり下がりにムラがあり不安を感じる場合は以下の行政機関に相談するか、医療機関の受診をおすすめします。■児童相談所:児童相談所は、すべての都道府県と政令指定都市に最低1つ以上設置されている児童福祉の専門機関です。主に、「子どもの養育に関する相談」、「障害に関する相談」、「性格や行動の問題に関する相談」などの育児に関する相談ができる機関となっています。全国児童相談所一覧l 厚生労働省■全国精神保健福祉センター:各県、政令市にはほぼ一か所ずつ設置されている、保健・精神保健に関する公的な窓口です。精神保健福祉に関する相談をすることができます。精神科医、臨床心理技術者、作業療法士、保健師、看護師などの専門職が配置されています。相談については、施設によって予約が必要な場合や健康保険の適用が可能なところがあります。詳細は、それぞれのセンターにお問い合わせください。全国の精神保健福祉センターを探すl 厚生労働省■精神科:精神疾患をはじめ、精神障害や睡眠障害、依存症を診療する科です。具体的には不安、抑うつ、不眠、イライラ、幻覚、幻聴、妄想などの症状を扱います。■心療内科:心と体、それだけでなく、その人をとりまく環境等も考慮して扱う科です。前述の精神症状だけでなく、ほてりや動悸などの身体症状、また社会的背景及び家庭環境なども考慮して治療を行います。精神科、心療内科どちらに行ったらいいか迷う方もいらっしゃるかもしれませんが、気分障害の場合は精神科を受診しても、心療内科を受診してもどちらでも大丈夫です。気分障害の治療出典 : 気分障害の治療法として現在主に効果的であると考えられ、用いられているのは薬物療法、精神療法、そして電気けいれん療法です。発症している疾患により細かい治療法は異なるので詳しい情報は専門家に相談することをおすすめします。薬物療法の場合、うつ病に対してはうつ症状を改善する「抗うつ薬」が用いられます。一方、双極性障害に対しては激しい移り変わりがある感情を安定させる「気分安定薬」が中心的に用いられます。いずれの場合も、不安を抑える「抗不安薬」が同時に処方されることがあります。代表的な抗うつ薬として三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)などが挙げられ、適切な量と期間で服用することが重要であるとされています。抗うつ薬は主にうつ病・気分変調症に処方されています。双極性障害・気分循環障害を発症している人が抗うつ薬を服用するとかえって気分が不安定になったり、躁状態になってしまったりすることがあるため、躁うつの症状に対しては抗うつ薬は基本的に使用されせん。気分安定薬には気分が上がりすぎる躁状態を抑える効果、沈みすぎてしまう抑うつ状態を改善させる効果、いったん安定した気分を維持させる効果があります。現在、双極性障害・気分循環障害の薬物療法は気分安定薬が中心となっていますが、飲み始めてからしばらくは重い副作用を防ぐために血液検査が数回必要です。また検査後も一定期間ごとに採血をすることで効果と安全性が確かめられるため、継続して受診することが大切です。うつ病は再び症状が出現することの多い病気です。回復後1年の間に約20%の患者さんに再び症状が出現する上に、その後の再発も含めると、その割合は約40~50%に上がります。また、途中で治ったと感じて治療することをやめてしまうと半年後に再び症状が出現する危険性が2倍になるという研究結果もでています。しかし、いずれの場合も治療法の効果や必要な量・期間には個人差があるため、自分だけで判断することは危険です。治療の際には、専門家の指導を受けながら用量・用法を守って行うことが大切です。気分障害l 慶應大学病院気分変調症l前田クリニック現在様々な精神療法が開発されていますが、気分障害に有効であると考えられているのは認知行動療法と対人関係療法です。一般的には医師やカウンセラーとの対話を通して、自身がどのタイミングで不安や心配を感じるのか、物事をどのように捉えているのか自身の思考のクセを把握します。そして、不安を感じる状況をどのように捉え、対処していけばいいかを考え、自身の感情をコントロールできるようにしていく治療法です。また対人関係療法は気分障害を抱えている人だけではなく、その人の家族や恋人などの重要な他者との関係に焦点を当てて、他者との関わり方を考えていく精神療法です。最終的には身近な他者との関係だけではなく、より広い範囲の人々に対してもよりよい関係を築けるようになることを目的とします。頭皮から電流を流すことで意図的にてんかん発作を発生させ、抑うつ症状を改善します。うつ病、双極性障害に有効といわれています。この治療法が用いられるのは薬物療法をはじめ、認知行動療法、その他の治療では効果が認められない場合、あるいは妄想をしてしまうなど症状が非常に重く治療の緊急性が高い場合です。軽、中度のうつ病の場合、あるいは他の治療法によって効果が認められている場合には原則使用されません。電気けいれん療法がなぜうつ病や、双極性障害の症状に効果があるのかについては未だ解明されていません。しかし、多くの医療機関においてその有効性が確認されており、日本においても保険の適応となっています。以前は治療の過程で生じる全身のけいれんが骨折などの怪我につながるリスクがありました。しかし、1980年代頃から施行されるようになった「修正型電気けいれん療法(m-ECT)」では麻酔科医の同伴のもと麻酔薬及び筋弛緩剤を投与し、けいれんを防ぐことができます。治療を受けることができる医療機関は必要な薬剤や人員の確保ができる病院に限られるようです。気分障害l 慶應義塾大学病院まとめ出典 : 気分障害がある人は少なくとも世界に3億5000万人以上もいると言われており、世界的に増加傾向にあります。日本も例外ではなく厚生労働省によると、平成26年度時点で約112万人の人が発症していると言われています。気分障害の症状により日常生活に悪い影響をきたしてしまうと、何かとうまくいかないことがストレスにつながり悪循環に陥ってしまう場合も少なくはありません。そのため気分障害は悪循環に陥る前の初期治療、そして症状が治まった後の再発予防がとても大切になっています。近年研究が進んでいることにより治療法の種類も増えてきています。そのため疾患や症状の程度を考慮した上での一人ひとりに合わせた治療法が選択できるようになっています。最近気分が晴れずずっと暗いままであったり、気分の上がり下がりが激しく自分をコントロールできない時があるなど、不安を抱えている場合はこころの風邪である気分障害を抱えている可能性があります。気になることがある場合は、専門家に相談しながら、症状の見極めや対応方法を検討すると良いでしょう。平成26年度患者調査の概要l 厚生労働省
2016年10月26日情緒障害とは出典 : 「情緒障害」とは、子どもが何らかの要因により感情面に問題が生じ、社会に適応できない状態にあることを指す言葉です。広義に解釈すると上記の意味ですが、実は「情緒障害」は、厳密かつ普遍的な定義がなく、その意味や内容は時代や社会的な背景とともに大きく変遷してきました。そのため現在実際に使われている「情緒障害」という言葉も、文部科学省、厚生労働省、医学のそれぞれにおいて定義や概念にばらつきがあります。情緒障害に含まれる具体的な障害もそれぞれの定義によって異なるため混乱を招くこともままあり、必要に応じて関係機関の定義を参照し、確認する必要があります。以下でそれぞれの定義を見ていきましょう。教育、福祉、医学、それぞれ違う「情緒障害」の定義出典 : ・情緒障害の教育的定義主に特別支援教育の場面で使われる、文部科学省による「情緒障害」の定義は以下の通りです。状況に合わない感情・気分が持続し、不適切な行動が引き起こされ、それらを自分の意思ではコントロールできないことが継続し、学校生活や社会生活に適応できなくなる状態をいう。平成25年教育支援資料Ⅶ 情緒障害|文部科学省HP・情緒障害の教育的定義に当てはまる症状教育の場で用いられる情緒障害にあてはまる症状の具体例としては、主に選択性緘黙(かんもく)を指し、その他、集団行動・社会的行動をしない、引きこもり、不登校、指しゃぶりや爪かみなどの癖、常同行動、離席、反社会的行動、性的逸脱行動、自傷行為をあげています。・教育的定義における情緒障害と発達障害の関係文部科学省では、情緒障害は心理的な要因から生じる後天的な問題であり、先天的な問題から生じる発達障害とは違うものと定義しています。・「情緒障害」の教育的定義の成り立ち教育の場で言われる「情緒障害」は、教育上の概念・分類であり、医学用語の「情緒障害」の定義とは必ずしも一致しません。現在、このようなわかりにくさを生んでいるのは、情緒障害という障害の概念が時代によって変遷していることと、特殊支援教育の歴史的背景に由来しています。公立学校に現在の特別支援学級の前身である情緒障害特殊学級が成立した1969年当時、自閉症などの先天性由来の障害も含めおおまかに「情緒障害」と定義していました。のちに、先天的な障害である自閉症は「情緒障害」から除外されたため、「情緒障害」は後天的な心理的問題により社会に適合していない子どもを分類するための概念と修正されました。平成18年には「学校教育法施行規則の一部を改正する省令」が発令され、平成21年には「情緒教育特別支援学級」の名称も「自閉症・情緒障害特別支援学級」と変更され、特別支援教育の場でも自閉症が情緒障害から分けられるようになりました。・情緒障害の福祉的定義厚生労働省管轄の情緒障害児短期治療施設などの福祉の場面で用いられる「情緒障害」は、厚生労働省が定義したものに沿っています。厚生労働省の情緒障害児の定義は以下の通りです。情緒障害児とは,家庭,学校,近隣等での人間関係のゆがみによって,感情生活に支障をきたし,社会適応が困難になった児童をいう。厚生白書(昭和53年版)・情緒障害の福祉的定義に当てはまる行動や状態不登校、引きこもり、かん黙、軽度の非行、チック、発達障害による二次障害、虐待により心理的に傷ついた状態など参考ページ:厚生白書(昭和43年版)第3章社会福祉|厚生労働省HP・福祉的定義における情緒障害と発達障害の関係厚生労働省が定義する「情緒障害」(情緒障害の福祉的定義)は、同省が定義する発達障害に含まれる、としています。参考ページ:発達障害者支援法の施行について|厚生労働省HP医学的な用語としての「情緒障害」は、主として、心理的な反応として起きる、情動が著しく不安定で激しい現れ方をする状態であり、病名ではないとするのが主流です。国立特別支援教育総合研究所によると、医学的な用語としての「情緒障害」は次のようにまとめられます。1)厳密で普遍性のある定義はない。2)病名ではなく症状もしくは状態像を指して用いられることが一般的。3)現在では、心理的要因が原因と想定されるものに主に用いられるが、例外もある。世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)においては、「情緒の障害」と表記されているものが、医学的な用語としての情緒障害とほぼ同義とされ、病名に相当する診断カテゴリーとされています。参考:発達障害と情緒障害の関連と教育的支援に関する研究・医学的見地における情緒障害と発達障害の関係基本的に、医学的には情緒障害と発達障害は別の区分とされています。就学相談などで使われる「情緒障害」のさす意味とは?出典 : 教育の場で「情緒障害」とされる状態は、具体的には2種類の問題行動があります。一つは、周囲から介入しない限り周囲に迷惑や支障を生じない、内向性の問題行動、もう一つは、周囲からの介入がなければその行動自体が周囲の人に迷惑や支障を生じる外向性の問題行動です。専門用語で「内向性行動問題」と呼ばれるもので、周囲が介入しない限り迷惑や支障を生じないものをさします。具体的な例として、・選択性緘黙(かんもく)・不登校、集団行動・社会的行動をしない・ひきこもり、指しゃぶりや爪かみなどの癖・身体を前後に揺らし続けるなどの同じパターンの行動を反復すること(常同行動)・自分の髪の毛を抜くことなどです。一般的にはただの「癖」と考えられているものでも、この行動が長期間頻繁に続き、学校での学習や集団行動に支障をきたすほどの場合には情緒障害としてとらえられます。専門用語で「外向性行動問題」と呼ばれるもので、周囲からの介入がなければその行動自体が周囲の人に迷惑や支障を生じる場合をさします。具体的な例は、・離席、教室からの抜け出し・集団逸脱行動・犯行、暴言、暴力、反社会的行動・非行、性的逸脱行動などです。これらの行動から、学校での学習や集団生活に支障をきたしてしまいます。攻撃性を示す場合が多く、その攻撃性が自分に向った場合である自傷行為も情緒障害としてとらえられます。教育の場で「情緒障害」としてあがることの多い、選択性緘黙と不登校について紹介します。・選択性緘黙文部科学省が定義する選択性緘黙は、以下の通りです。選択性かん黙とは,一般に,発声器官等に明らかな器質的・機能的な障害はないが,心理的な要因により,特定の状況(例えば,家族や慣れた人以外の人に対して,あるいは家庭の外など)で音声や言葉を出せず,学業等に支障がある状態である。(平成25年文部科学省教育支援資料)・不登校文部科学省の教育支援資料において、不登校は、以下のように定義されています。不登校の要因は様々であるが,情緒障害教育の対象としての不登校は,心理的,情緒的理由により,登校できず家に閉じこもっていたり,家を出ても登校できなかったりする状態である。そして,本人は登校しなければならないことを意識しており,登校しようとするができないという社会的不適応になっている状態である。したがって,一般的には,怠学や学校の意義を否定するなどの考えから,意図的に登校を渋る場合は,学校に登校しないという状態は類似しているが,ここでいう情緒障害の範囲には含まない。平成25年教育支援資料Ⅶ 情緒障害|文部科学省HP「情緒障害」の子どもには、どのような支援があるの?出典 : 自閉症・情緒障害通級指導教室通級指導教室とは、通常学級の学校に籍を置いて、通級指導の時間のみ通級指導教室に通って支援を受けるという制度です。子どもが在籍する学校に通級指導教室が無い場合は、通級指導教室がある他の学校に通って通級指導を受ける場合もあります。障害の種別に分かれ、その子に合った指導が受けられますが、情緒障害のある子どもは「自閉症・情緒障害通級指導教室」に通うことになります。・対象者通常の学級におおむね参加でき、一部特別な指導(社会的適応のための特別な指導や強化の補充指導など)を必要とする程度のものであるとされています。・どのような指導がされるか基本的には、特別支援学校などにおける、障害がある生徒の自立を目指した教育的な活動を参考とした指導が中心で、社会的適応性の向上が目的とされています。通級指導を受ける場合、大半の時間を通常学級で過ごし、通級指導を受ける時間は限られています。そのため、必要に応じて各教科などの補充的な指導は行っていますが、個別の指導内容を設定することはできません。自閉症・情緒障害特別支援学級特別支援学級とは、通常学級ではなく特別支援学級に籍を置き、よりきめ細かな指導を受ける少人数の学級です。もし、子どもに手厚い指導が必要な場合は、上記の通級指導教室ではなく特別支援学級に通う場合が多いです。情緒障害のある子どもは「自閉症・情緒障害特別支援学級」で指導を受けることになります。・対象者文部科学省は、自閉症・情緒障害教育の対象を以下のように定めています。一 自閉症又はそれに類するもので,他人との意思疎通及び対人関係の形成 が困難である程度のもの二 主として心理的な要因による選択性かん黙などがあるもので,社会生活へ の適応が困難である程度のもの平成25年教育支援資料Ⅶ 情緒障害|文部科学省HP選択性かん黙や不登校などの感情面での問題のために、通常の学級では学習を行うことが難しく、社会的適応のための特別な指導を行う必要がある子どもが対象者であるとされています。・どのような指導が受けられるか情緒障害や自閉症のある子どもなどが、人とのかかわりを円滑にし生活する力を育てることを目標に指導を受けることができます。 特別の教育課程を編成することができることが特徴です。基本的に主な授業は特別支援学級で受けますが、体育や図画工作、給食の時間は通常学級の子どもたちと過ごすこともあります。特別支援学校基本的には、情緒障害であるというだけで特別支援学校の支援対象となることはありませんが、情緒障害とされている子どもが、知的障害や病弱・身体虚弱を伴う場合は、知的障害、病弱などの区分での支援対象となることもあります。特別支援学校と特別支援学級・通級指導教室の違いについては、以下のコラムに詳しく解説されています。・放課後等デイサービス幼稚園・大学を除いた学校に就学中で、かつ障害のある子どもが、学校の授業終了後や長期休暇中などに通い、生活能力向上のための訓練および、社会との交流促進を行う施設です。施設利用にあたって療育手帳や障害者手帳は必須ではなく、障害児通所支援受給者証を申請し、認可が下りれば利用することができます。施設のタイプは、習い事型、学童保育型、療育型の大きく分けて3つのタイプに分けられます。詳しくは以下の記事をご覧ください。・情緒障害児短期治療施設(児童心理治療施設)情緒障害短期治療施設とは、学校教育との緊密な連携をとりつつ、医学的な心理治療を行う総合的な治療・支援施設です。情緒障害児短期治療施設の対象児童は、心理的困難や苦しみを抱え日常生活に生きづらさを感じている子どもたちであり、心理治療が必要とされる子どもたちであるとされています。知的障害児や重度の精神障害児は基本的に対象ではありません。利用方法は、宿泊入所、通所、外来相談の3つがありますが、施設によっては外来相談が設置されていない場合もあるため、一度お近くの情緒障害児短期治療施設に電話などで相談してみることをおすすめいたします。・児童相談所児童相談所とは、家庭や学校などから18歳未満の子どもに関するあらゆる相談に応じ、また、子どもおよび家庭に対して医学的、心理学的、教育学的、社会学的及び精神保健上の判定や調査、調整を行う場所のことです。各相談所には精神科医師、児童心理士、児童福祉司などの専門職員が配置されています。・児童家庭支援センター児童家庭支援センターは、児童心理療育施設、児童養護施設、児童自立支援施設、母子生活支援施設、乳児院に設置されているもので、18歳未満の子どもに関する様々な相談を、子ども、家庭、地域住民から受け付けます。また、児童福祉施設などの関係する機関との連絡調整も行います。学校で子どもが直面する「情緒障害」の原因は?出典 : 教育的定義における「情緒障害」とされる状態を引き起こす原因としては、対人関係のストレス状況、学業・部活動の負担、親子関係の問題などが考えられるとされています。友人同士や教師との関係において、対等な人間関係が崩れた場合大きなストレスが生じます。いじめがその最たるものとされています。一方的、威圧的に教師や友人に接されることによりストレスが生じ、情緒障害とされる状態に陥る原因になります。学業、部活などにおいて、本人の能力に見合わない要求をされ、かつその環境から抜け出すことができない雰囲気がある場合、それがストレスとなり情緒障害の原因となると言われています。親子関係において信頼関係が築けていない場合に、教育的定義における「情緒障害」の原因となる可能性があります。親子の信頼関係が築かれていないパターンで、児童虐待なども含まれます。子どもと過ごす時間を十分にとることが信頼関係の構築において大切です。平成25年教育支援資料Ⅶ 情緒障害|文部科学省HP子どもが情緒障害の疑いがあるとき、どう対応すべきなの?出典 : 生活上の問題が生じたときは、できる限り早い段階でなんらかの対応をとることが必要です。・毎日の基本的な生活環境を整える子どもの成育には、障害の有無、障害の種類にかかわらず、安心して過ごせる環境作りが必須です。毎日の生活のなかで、家族関係の安定を意識し、なるべくお子さんをほめてあげること、そして、できるだけ一緒に過ごしてあげること。このような安心して過ごせる基本的な環境作りを心がけることこそが、お子さんの症状の回復のための基礎づくりとなります。・いじめはすぐ対処もし、お子さんがいじめを受けているように感じたら、本人に対処させるのではなく、いじめが起きている環境から保護することが最優先です。まず、教師に相談し、お子さんのいる環境を変えるなどの対応をし、それに加え児童精神科などで専門的な治療を受けることで、心の傷がこれ以上深まらないようにする必要があります。・医療機関を受診する身体症状が強い場合は小児科、情緒面の問題が強い場合は児童精神科を受診することをおすすめします。専門家の指示を仰ぎ、適切な指示を受ければ、ご家族もお子さんも、無為に苦しむことなく解決の糸口を見つけることができます。どうしても、医療機関の受診への敷居が高い場合には、スクールカウンセラーや各相談機関を利用するのも一つの手です。もし、近くに児童精神科がない場合は、大学病院や総合病院の精神科でも診療してもらえます。少しでもお子さんが何らかの問題を抱えているように感じたら、どうか一人で抱え込まずに、専門家の助けを求めてください。参考文献:杉山登志郎 /著『子どもの発達障害と情緒障害』2009年講談社/刊まとめ出典 : 「情緒障害」の定義はさまざまですが、一般に情緒障害とされる状態は、主に対人関係などの後天的なストレス要因から生じるとされています。先述の通り、お子さんの成育の基本となるのは安心して生活できる環境づくりであり、それには家族からの理解が不可欠です。お子さんをあたたかい目で見守ってあげることこそが、問題解決のための近道となります。とはいえ、保護者の方が、何のストレスも感じずお子さんに接し続けるのは難しいこともあります。専門家からアドバイスしてもらうことで、今までずっと悩んでいた問題から抜け出す解決の糸口が見つかることもありますので、少しでも悩み事がある場合は一人で抱え込まず、医療機関や相談窓口に連絡を取ることをおすすめします。平成25年教育支援資料Ⅶ 情緒障害|文部科学省HPあなたのそばの相談機関|情緒障害児短期治療施設(児童心理治療施設)ネットワークHP発達障害者支援施策について|厚生労働省HP厚生白書(昭和53年版)|厚生労働省HP情緒障害児短期治療施設運営指針|厚生労働省HP特別支援教育について|文部科学省HP 自閉症・情緒障害とは|国立特別支援教育総合研究所HP
2016年10月24日発達障害の治療、お薬はどんなときに使われる?出典 : 発達障害に対してお薬が使われるとき、それは全て対症療法として投与されます。対症療法とは症状を和らげることが目的の治療で、根治、つまり障害を治すための治療でありません。残念ながら現在の医学の水準では、発達障害を根治する治療はありません。ただ、適切なタイミングと種類、量のお薬を使うことで、その症状を緩和できる場合があります。どんな症状に対してお薬が使われるの?出典 : では主にどんな症状に対して、お薬が使われるのでしょうか。自閉スペクトラム症の場合には最も効果が確かめられているのは、その易刺激性、つまり刺激に対して反応しすぎる状態に対する投薬です。日本でもいくつかの抗精神病薬が、厚生労働省からその適応を正式に承認されています。こうしたお薬は自傷や他害といった攻撃的な行動がある際に用いられますが、その効き目の見極めには大事なポイントがあります。易刺激性に基づく攻撃的な行動、例えば嫌いな音を聞いた後のパニックやイライラする状況から逃れるために人を突き飛ばすなどの行動には、ある程度効果が期待できることがあります。一方で、遊びの目的、つまり「窓ガラスを叩くといい音がして楽しいから」とか、コミュニケーションや交渉の目的で「冷蔵庫を開けさせるために家族を叩く」とかの行動には、お薬の効果は期待しにくいのです。ここを上手く見極めて使わないと、無効なお薬を飲むことになったり、大量にお薬を使って、効果よりむしろ副作用が問題になったりすることが起こってきます。結局はお薬を使う場合にも、その標的となる行動の分析が必ず必要となるのです。著しい反復的な行動に対してもお薬が使われることがありますが、この場合もその背景が重要になります。遊びの性格が強い反復的な行動にはお薬はほとんど効果がありません。もしこれを薬で止めようとすると、大量のお薬を使って、眠くてだるくて遊ぶ元気もないという状態を作ることになってしまいます。一方で不安や強迫といった、「やらないと心配」「やらないと落ち着かない」からやむを得ずやっているという、繰り返しの行動には時にはお薬が有効な場合があります。その他、睡眠の障害やカタトニアなどの症状に対して、それぞれの状況にあったお薬が使われることがあります。これらの場合にも有効な場合とそうでない場合の見極めが必要ですので、主治医にご相談いただくとよいでしょう。また注意欠如多動症(ADHD)に対しても、お薬が使われることがあります。実はADHDの治療薬は、あらゆる精神科のお薬の中でも一番効き目が確かなお薬の一つです。投与するとかなり高い割合で効果を発揮します。しかしこれも対症療法に留まり、一方で副作用もしっかりあるので、使いどころを見極める必要があります。どんなときに「薬を使う」という決断をすれば良い?出典 : さてそれでは、どんなときにお薬を使うことを考えればよいのでしょうか。発達障害そのものへの投薬は常に対症療法であるため、発達障害があること、それだけでは投薬の対象にはなりません。必要な対応や環境の調整をして、それでも本人の苦しさが続くとき、またいろいろな対策を講じていてもどんどん環境との不適合が増しているときは、お薬をつかうことを考えても良いでしょう。自分の場合には、「人生の中で嫌いなもの・ことがどんどん増えているとき」というのを一つの基準にしています。またお薬以外の方法をとることがそもそも難しい場合も、投薬を考えることになります。家庭の状況に全く余力がないとき、家族に他の危機が訪れているときなどには、時期を限ってお薬を使うこともあります。もう一つ、これは発達障害に対する投薬ではありませんが、併存する他の精神疾患がある場合には、当然その治療薬を使うことになります。また最も大切で難しいのはお薬のやめどきです。これについては、常に止めることを考えながらお薬を使う、というのがおそらく正解であると思います。減薬や中止のチャンスを常にうかがっていないと漫然とお薬を使うことになってしまいます。・標的となっていた症状が改善してきたとき・環境との不適合が小さくなってきたと感じられるとき・他の支援がうまく回り始めたときなどが、お薬を減らす・止めるチャンスです。ただし急な中止や減量によって逆に有害な症状を来すお薬があるので、減量、中止の際には必ず医師と相談してください。
2016年10月14日反抗挑戦性障害(ODD)とは?出典 : 反抗挑戦性障害(ODD)とは、別名「反抗挑戦症」とも呼ばれ、親や教師など目上の人に対して拒絶的・反抗的な態度をとり、口論をしかけるなどの挑戦的な行動をおこしてしまう疾患です。症状の現れ方によって過興奮型、すね型、マイペース型に分類される場合があり、症状を発症する場面・相手が多いほど重度であると診断されます。反抗挑戦性障害が発達期を通じて何年間も続く場合、両親、教師、監督者などの目上の人だけではなく、同年代の友人、恋人ともトラブルを起こしてしまい日常生活に様々な障害が発生します。反抗挑戦性障害は捉え方によって特徴が異なる疾患です。とくにアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)と世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)では診断基準などが違う場合があるので注意が必要です。反抗挑戦性障害の主な症状出典 : 反抗挑戦性障害の症状として大きく3つのパターンがあげられます。・怒りっぽくイライラする:周囲からの刺激に過剰に敏感になり、すぐにイライラしてしまいます。そのためしばしばかんしゃくを起こしたり、腹を立てて怒ったりしてしまいます。・周囲に挑発的な行動をする、口論がすき:権威のある目上の人物や、子どもの場合は大人から決められたルールに従うことに積極的に反抗し、口論をふっかけます。そしてわざと周囲の人をイライラさせ、自分の失敗、または失礼な行動の原因を他人のせいにしてしまいます。・意地悪で執念深い:周囲の人との間に起こった出来事を根に持ち続け、他人に対して優しくなれない状態が半年に少なくとも2回発生します。反抗挑戦性障害と反抗期の違い出典 : 通常子どもの健康な育成に反抗期は必要なものとされています。反抗期には誰でも親に反抗的な態度をとったり、いらいらしたりするものです。そのため反抗期と反抗挑戦性障害を見きわめることは難しい場合があります。見分けるためには反抗的な行動がどのくらい続いているのか、どのくらいの頻度で発症するのかを考えることが重要です。例えば第一次反抗期にあたる5歳未満の子どもの場合、周囲の人に対して怒ったり、乱暴な言葉をもちいて反抗したり、かんしゃくを起こしたりする行為が1週間に1回、少なくとも半年間続くことが条件となっています。しかし反抗挑戦性障害か見分けるためには、これらの条件だけではなく発達水準、性別、文化の基準などさまざまな条件を考慮する必要があります。これらすべての条件をふまえた上で発症頻度・症状の重さが通常の反抗期を超えている場合は、反抗挑戦性障害と診断されます。判断することが難しい場合は専門家に相談することをおすすめします。反抗挑戦性障害を発症しやすい人出典 : 反抗挑戦性障害は通常就学前に発症し、青年期初期以降の発症はあまり見られないといわれています。発症率の男女比は思春期以前は1.4:1となっており、男児のほうが発症率が約1.4倍高いです。しかし思春期以降は性別による発症率の差はあまり見られなくなります。2~5歳児を対象とした調査では反抗挑戦性障害を発症している人の割合は、それ以外の疾患を発症している人の割合より格段に多く、16.8%のという研究結果がでています。そのうちの半数は重い症状があると診断されました。参考文献: ロバート・ヘンドレン/著 『子どもと青年の破壊的行動障害―ADHDと素行障害・反抗挑戦性障害のある子どもたち』 2011年 明石書店/刊反抗挑戦性障害の主な原因出典 : 反抗挑戦性障害の要因として、育った環境が関わっている場合があるといわれています。その理由として、反抗挑戦性障害は、目上の人からの指示などに対して拒否する拒絶症状が症状の中核となっていることが挙げられます。拒絶症状は一日で現れるものではなく、反抗的な感情がだんだん積み重なって発症してしまうと考えられており、主に幼少期の環境に左右されやすいのです。保護者や周囲の人と対立してしまったときに、大人が次はこうしようかという改善策を提示せず、子どもをただ批判、非難することによって抑圧してしまうことはとても危険です。これにより、子どもは自分を守るため挑戦的で反抗的な感情をおこしたり、行動してしまう可能性が生まれるのです。しかし環境要因は決定的な要因ではなく、気性が荒い、我慢することを苦手などのもともとの気質要因、遺伝的要因なども関わり合うともいわれているため、はっきりとは原因が解明されていないのが現状です。反抗挑戦性障害の診断基準出典 : アメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版)による診断基準は以下の通りです。A. 怒りっぽく/易怒的な気分、口論好き/挑発的な行動、または執念深さなどの情緒・行動上の様式が少なくとも一人以上の人物とのやりとりにおいて示される。怒りっぽく/易怒的な気分:(1)しばしばかんしゃくをおこす(2)しばしば神経過敏またはいらいらさせられやすい(3)しばしば怒り、腹を立てる口論好き/挑発的行動:(4)しばしば権威のある人物や、または子供や青年の場合では大人と、口論する(5)しばしば権威のある人の要求、または規則に従うことに積極的に反抗または拒否する(6)しばしば故意に人をいらだたせる(7)しばしば自分の失敗、または不作法を他人のせいにする執念深さ:(8)過去6ヶ月に少なくとも2回、意地悪で執念深かったことがある注:正常範囲の行動を症状とみなされる行動と区別するためには、これらの行動の持続性と頻度が用いられるべきである。5歳未満の子どもでは、ほかに特に記載がない場合、その行動は1週間に1回、少なくとも6ヶ月間にわたって起こっていなければならない(基準A8)。このような頻度の基準は、症状を定義する最小限の頻度を示す指針となるが、一方、その他の要因、たとえばその人の発達水準、性別、文化の基準に照らして、行動が、その頻度と強度で範囲を超えているかどうかについても考慮すべきである。B.その行動上の障害は、その人の身近な環境(例:家族、同世代集団、仕事仲間)で本人や他社の苦痛と関連しているか、または社会的、学業的、職業的、またはほかの重要な領域における機能に否定的な影響を与えている。C.その行動上の障害は、精神病性障害、物質使用障害、抑うつ障害、または双極性障害の経過中のみ起こるものではない。同様に重篤気分調整相の基準は満たされない。■現在の重症度は軽度:症状は一つの状況に限局している(例:家庭、学校、仕事、友人関係)中等度:いくつかの症状が少なくとも二つの状況でみられる重度:いくつかの症状が三つ以上の状況でみられる『DSM-5』では、反抗挑戦性障害と素行症を別の疾患として定義しています。素行症とは、周囲の人に反発して、学校のずる休みや繰り返しの嘘をつくなどの挑発的な行動をとったり、激しい喧嘩をしたりすることに加えて、放火や盗み、物に対しての破壊行為などの法律違反に当たる行動をとることを指します。一方、世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)では、反抗挑戦性障害は素行症という疾患の中に含まれて定義されます。ここでは、反抗挑戦性障害はおよそ9~10歳未満の子どもに発症する行為障害(素行症)の軽度の症状であると位置づけられます。参考文献: 『ICD-10』 2013年 中山書店/刊反抗挑戦性障害の合併症出典 : ■素行症反抗挑戦性障害の代表的な合併症として素行症が挙げられますが、これは小児期発症型のをもつ子どもによくみられる併存症です。合併してしまう主な原因は、自分より偉い人との間に挑戦的な感情をもってトラブルを起こしてしまうという、共通の症状があることと言われています。反抗挑戦性障害が重度になるにつれて素行症の症状もあらわれてきてしまうのです。しかし反抗挑戦性障害と違い、素行症には人や動物に向けた殴るなどの攻撃的な行動や、物の破壊、または盗みや詐欺など違反行為がみられるため、しっかりと区別することが重要です。■ADHD(注意欠陥・多動性障害)もう一つの代表的な合併症としてADHD(注意欠陥・多動性障害)があげられます。ADHDとは、不注意(集中力がない)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(考えずに行動してしまう)の3つの症状がみられる発達障害のことです。 年齢や発達に不釣り合いな行動が社会的な活動や学業に支障をきたすことがある障害です。ADHDを発症している子どもの20~56%は二次障害として反抗挑戦性障害を発症するといわれており、発症する確率は3歳の子どもが一番高いと言われています。その他にも反抗挑戦性障害は不安症群やうつ病の合併のリスクも高いと言われています。その理由は怒りっぽい、気分の波が激しいなどの症状が一致している傾向にあるからです。発達障害に関連のある行動障害についてl 国立特別支援教育総合研究所ADHDの二次障害としての反抗挑戦性障害出典 : 反抗挑戦性障害とADHDは強い関わりがあるといわれており、年齢を重ねるとともに合併する可能性が高くなると言わています。そのときは、元々ADHDがある人が“人間不信的行動”という二次障害として反抗挑戦性障害を発症する場合が多いです。人間不信的行動とは、自尊心・自己肯定感が低下して自分はダメな人間かも知れないと思い、そんな自分のことを誰も理解してくれないという気持ちから、周囲の人を信じれなくなったときに起こしてしまう行動のことを指します。ADHDを発症している人は、自分自身がADHDであることを認識していないケースも多く、周りから理解が得られていない場合も多いです。そのため知らない間に人間不信になり、反抗挑戦性障害を発症しているということも少なくないのです。またADHDには主に、不注意優勢型、多動性・衝動性優勢型、混合型の3つのタイプがあります。その中でも、不注意優勢型のADHDのほうが反抗挑戦性障害の症状が比較的軽い傾向にあります。ADHDのある子どもとその家族の間でおこる衝突の多くは、合併症としての反抗挑戦性障害が関与している場合があります。そこで衝突・喧嘩をする回数が過度に多いときはADHDではなく、反抗挑戦性障害が原因かもしれないと考えることが重要です。ADHDに反抗挑戦性障害が合併すると、対立や怒りの感情の発生、コミュニケーション障害によって、単なる衝突・喧嘩にとどまらない対人関係への悪影響の及ぼし合いが多く発生します。例として母親との関係を挙げると、ADHDと反抗挑戦性障害が合併している10代の子どもの多くで、その青年の症状に加えて母親の精神的苦悩が加わり、親子間の対立や悪影響の及ぼし合いが発生することが分かっています。反抗挑戦性障害が気になったときの相談先出典 : 反抗挑戦性障害は素行症(行為障害)やADHD、うつ病などの、様々な合併症と関わりあっている場合が多く、年をとるにつれて症状が複雑化しやすい傾向があります。また、年齢が上がってからの治療は、反抗挑戦性障害がある子どもが治療に対して抵抗することがあるため、早期に診察・治療することがおすすめとされています。明らかに感情の波が激しく怒りっぽかったり、口論が絶えなかったりする場合は以下の相談先に相談するか、医療機関の受診をおすすめします。■児童相談所:「子どもの養育に関する相談」、「障害に関する相談」、「性格や行動の問題に関する相談」などの育児に関する相談ができる機関となっています。全国児童相談所一覧l 厚生労働省■全国精神保健福祉センター:各県、政令市にはほぼ一か所ずつ設置されている窓口であり、精神保健福祉に関する相談をすることができます。相談については、予約制、健康保険の適応があるところがあります。詳細は、それぞれのセンターにお問い合わせください。全国精神保健福祉センター一覧l 厚生労働省■精神科・心療内科:心の症状、心の病気を扱う科です。心の症状とは具体的に不安、抑うつ、不眠、イライラ、幻覚、幻聴、妄想などのことです。心療内科は心と体の不調だけではなく、ほてり、動悸などの身体的症状とその人の社会的背景、家庭環境なども考慮して治療を行います。反抗挑戦性障害の治療法出典 : 反抗挑戦性障害の治療は・症状の重さと発症する頻度を減らすこと・患者が社会生活を送る上で発生するトラブルを少なくすること・家族のストレスを軽減すること・行為障害へ進行することの予防を目的として実施されます。治療法として主に薬物療法、社会技能訓練、認知的技能訓練、ペアレント・トレーニングなどがあります。薬物療法に関しては、反抗挑戦性障害の原因に直接的に効果がある薬はまだ開発されていないため、興奮や衝動性などの症状を抑える薬が処方されます。社会技能訓練とは反抗挑戦性障害がある人が、大人や友だちがいる場で周囲の人のサポートを受けながら行う、社会の中での過ごし方を取得する訓練です。正しいコミュニケーション方法のとり方、怒りや拒絶の感情が発生したときの対処方、目上の人との適切なやり取りの仕方などの練習を行います。また、反抗挑戦性障害がある人が否定的な物事の捉え方や考え方を修正し、トラブルが起こらない意見の言い方を獲得するための治療を認知的技能訓練といいます。そこでは主に反抗挑戦性障害がある人がトラブルをおこさないように、自分で課題解決が行えることを目的としています。反抗挑戦性障害がある人を訓練するのではなく、その保護者の子どもとのかかわり方を訓練する、ペアレント・トレーニングという支援方法もあります。主に、保護者の子どもへの行動、対応方法を変えられるようになることを目的としています。親は子どもの反抗的な行動の動機、行動のパターンを理解・分析する訓練をすることによって、問題行動にたいして上手く対応し、子どもの反抗的な行動を減少させることを目指します。日本ではアメリカで開発されたペアレント・トレーニングをさらに日本向けに改良した治療法が実施されており、訓練を受けたトレーナーの指導の下で行われています。反抗性挑戦性障害がある子どもへの周囲の人の対応方法・接し方出典 : 反抗挑戦性障害には主に過興奮型、すね型、マイペース型の3つのタイプがあります。タイプ別の対応法を解説します。■反抗-過興奮型過興奮型の子どもは指示に素直に従えず、無視するか、返事はするものの結局やらない傾向があります。このような状態にも関わらず指示を繰り返すと、子どもが興奮して暴言を返してくるなど、売りことばに買いことばとなってしまいがちです。「指示に従うことは自分の負けだ」などと、誰に対しても、勝ち負けの気持ちが働いてしまうことが主な原因です。このような過興奮型には、前もって約束する方法が適切です。その場ですぐに「~しなさい」と命令するのではなく、前もって約束したことを思い出させるようにします。そうすることで子どもにとって親との戦いではなく、約束を守るかどうかという「自分との闘い」となるように誘導します。具体的なポイントとして、子どもが約束を思い出せないときは、「何を約束したっけ?」と内容を聞きだすのではなく、まず約束したという事実を伝え、「お風呂、遊ぶ、どっちかな?」と二択の質問にします。ことばだけでは伝わらないときには、絵カードを用いて選ばせることもおすすめです。■反抗-すね型すね型の子どもは衝動性が高く、思いついたら計画性なくすぐに行動してしまいます。しかし、自分の思い通りにならないことがあると、ちょっとした拍子ですねていじけてしまったり、ケンカをしてしまったりします。すねていじけてしまう原因として、数多くの失敗体験が心の中にたまり自信が持てなくなり、どうせやっても失敗してしまうとネガティブな思考が染み付いてしまったことが挙げられます。そのため、自分は上手になれる、上達できるという成功体験を実感してもらう必要があります。おすすめは、運動や料理などを通じて、成功体験を実感してもらうことです。例えば縄跳びでは、跳ぶ回数や跳び方でランクをつくり、徐々に上手くなっているという実感を体験してもらいます。ここで重要なポイントは、・何をやるべきかを明確にする・どこまで到達することができたか分かりやすくするために段階的な目標を示す・子どもの取り組みのモチベーションを維持するために結果のみではなく過程を評価することです。また子どもは。本当に自分にできるかと、心の中では不安を感じています。そのため、「本当に上手くなってきたね、こうやっていけばもっと上手くなるよ」と語りかけをしつつ、自信をつけてあげることが大切です。■反抗-マイペース型マイペース型の子どもは集団で遊ぶことや、他の子との共同作業を苦手とします。幼児期では集団に入るよう誘うとパニックを起こしてしまうことがあります。その後、小学校の半ばあたりになると、周りの子どもたちと興味やペースが合わないことがはっきりとしてきます。マイペース型は、じっとすることは苦手であるにも関わらず、好きなものには集中することができるといった子どもによく見られます。また、人の気持ちを理解することを苦手とする一面がある子もいます。このような子どもに対しては、本人の興味やペースなどを配慮して、周囲との距離感を調整してあげることが主な対応方法となります。子どもが嫌がっているような素振りや表情を見せた場合は、無理強いしないで合わせてあげることが重要です。出典 : と反抗挑戦性障害を合併している子どもと家族がうまく関わっていく上で、重要な4つのポイントを紹介します。1. 感情的に対応しない:子どもが感情的に話をする場合には「静かに話すこと」を促し、落ち着くまで相手をしないようにしましょう。ちょっとしたことでも感情的に反応してしまう傾向があり、周囲の人々がそれに対して感情的に接してしまうと状況が悪化してしまう恐れがあります。2. パパに理解してもらう多くの家庭は子どもと多くの時間を過ごすのはママである場合が多いです。そのため、たとえ子どもとママの関係が悪化してもパパはあまり状況をつかむことができず、子育てから離れるようになってしまうケースは少なくありません。一方、子どもは普段一緒に過ごす時間が少なく、あまり反抗する相手とはならないパパの話にはよく耳を傾けることも多いため、パパが話し合いに加わることでみんなで冷静な話し合いができるということも考えられます。思春期を乗り越えていくときのことも含めて子どもを上手に育てていくには、パパの理解を得てみんなで協力していくことが重要です。3.約束を守りきる経験を積ませる:ADHDと反抗挑戦性障害を合併している子どもは約束したことをなかなか守れないという傾向があります。しかしそのような傾向があるからといって諦めたり大目に見ることを続けたりすると、子どもはどんどん約束を守ろうとしなくなります。そのため子どもの特性を理解し守りきれる約束をすることが大切です。守れたらいっぱいほめる、破ったらなんで守れなかったのかきちんと話し合うとあらかじめ明確に決めておくことがポイントです。また約束を守れなかったときには簡単に許さず、譲らないようにしましょう。4. 子どもに期待し、ポジティブになる:過去のことを責めても子どもの自尊心が低下し、状況や症状が悪化する場合が多いです。これからの成長に期待しネガティブになりすぎないことが子どもの心の健康のために重要です。の理解と対応l 公益社団法人発達協会まとめ出典 : 反抗挑戦性障害とは、通常子どもが発症する障害であり、青年期早期以降の発症はあまりみられません。発症する症状として怒りっぽい、口論が絶えない、執念深く根に持つなどの症状が少なくとも半年続くことが挙げられますが、現れる症状は人それぞれです。通常、反抗期そのものは子どもの健康な成長には必要なものです。それゆえ、反抗期と反抗挑戦性障害の見極めが難しい場合があります。また反抗挑戦性障害はADHD・素行症などの他の障害とも合併・併存しやすい疾患であり、症状が複雑化しやすい傾向にあります。気になることがある場合は、専門家に相談しながら、症状の見極めや対応方法を検討すると良いでしょう。
2016年10月09日感覚の過敏さ(感覚過敏)、鈍感さ(感覚鈍麻)とは?出典 : 「感覚過敏(過剰反応性)」とは、光や音などをはじめとする特定の刺激を過剰に受け取ってしまう状態のことを指します。逆に、刺激に対する反応が低くなることを「感覚の鈍感さ(鈍麻・低反応性)」といいます。どちらも感覚のはたらきに偏りがあることが原因です。感覚過敏があると、多くの刺激を受け取りすぎることによってストレスが増したり、多くの人にとって平気な刺激を過剰に怖がることがあります。また、感覚の鈍感さがあると、遊びの呼びかけの声を聞き逃してしまい、仲間に入れないなど、集団の中でうまく過ごせないことがあります。身体の痛みに気がつかず、病院で手当てを受けるのが遅れてしまうこともあります。このように感覚の感じ方に過度な偏りがあると、日常生活に支障をきたす場合があります。感覚プロファイル,日本文化科学社感覚は、個人の主観的なものであり、個々によって刺激の受け取り方はそれぞれです。そのために、感覚の偏りがある人の困難さは、他の人からは理解されにくいものです。以下に、感覚の偏りのある子どもの情報のとらえ方を表した映像があります。ご覧ください。映像では、子どもが、環境の中にあふれる情報や刺激を細かく大量に拾ってしまう様子が表現されています。多くの人が何も感じない場面でも、感覚に偏りがあると、その場所にいるだけで耐えがたい苦痛を感じることがあるのです。感覚の偏りは4つのパターンに分けられる出典 : 感覚の偏りに関する問題は、その傾向によってパターンに分けて整理することができます。以下に感覚刺激への反応傾向のプロファイリングで使用される4つの分類をご紹介します。なかなか理解のされにくい感覚の偏りについて、客観的な把握をすることで役立てることができるでしょう。■感覚過敏刺激に対して過剰に反応することで、環境の変化やちょっとした刺激も極度に気になるという状態を指します。■感覚回避刺激に対する過剰な反応があるため、刺激のある環境を回避する行動をとることです。■低登録刺激に対する反応が弱く、感覚が鈍い傾向があるとされます。低反応・感覚鈍麻(どんま)のことです。■感覚探求刺激に対して反応が弱いがゆえに、強い刺激を求める行動をすることです。青年・成人感覚プロファイル|日本文化科学社それぞれの感覚ごとの症状刺激の感じ方は個々によりさまざまで、症状も多岐にわたります。感覚の偏りが引き起こす具体的な症状とはどのようなものなのでしょうか。ここでは、五感と呼ばれる視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚と、体の動きをつかさどる固有感覚、体のバランスをつかさどる平衡感覚について、それぞれに分けてお伝えします。出典 : ■情報の刺激がいっぺんに目に飛び込んできてしまう人は多くの刺激がある環境でも、注意を向けたい刺激を無意識的に選ぶことができます。しかし、視覚過敏がある場合には、全ての刺激情報を均等な濃さで受け取ってしまいます。ビビッドでカラフルな色のものや、たくさんのもののある場所は苦手です。■白いものや光をまぶしく感じる視覚過敏でない人にとっては気にならないような光や白いものが、視覚過敏のある人にとっては目に突き刺さるほどまぶしいことがあります。蛍光灯の光や、テレビやパソコンの液晶画面、白い紙を苦手とします。授業中に席を離れてしまうといった問題とされる子どもの行動の背景には、感覚の偏りがある可能性があります。出典 : ■音がやけに大きく聞こえる、響く賑やかな場所にいると疲れやすいなどが聴覚過敏の症状です。聴覚過敏の症状が強い場合、耳をふさぎたくなるほど耳の奥が痛くなったり、頭痛が起きたりするような身体的な痛みを伴うことがあります。人によって気になる音は異なりますが、例として、女性の甲高い声や、休み時間のチャイム、合奏の音、掃除機などの機械音などが挙げられます。■周囲の全ての音が等しく同じように聞こえてくる選択的に音を拾い集めるのが困難になってしまいます。音の刺激に対して適切に注意を向ける処理ができないために起こります。一生懸命聞こうとしていても、たくさんの音が聞こえてしまうので本人は混乱しています。■音が聞き取りにくい逆に聴覚への反応性が低い場合には、音を聞き取ることができないために、結果的に、授業中に上の空になったり、呼びかけても応じなかったり、またテレビの音を大きくしたりといった様子が見られることがあります。埼玉県立総合教育センター特別支援教育担当 『自閉症の特性と支援 Q&A集』p6出典 : ■においに過剰に反応する少しのにおいを過敏に受け取ってしまうことが嗅覚過敏です。少しのにおいでも過剰に受け取ってしまうあまり、ストレスが増加します。においに耐えられなくなって、吐いてしまうこともあり、ひどい場合には身体的、精神的ともに支障をきたすことがあります。■においがわからない逆に、嗅覚の鈍感さがみられる場合には、適切ににおいを感じることができません。においがわからないと、同時に味も分かりにくくなるので、嗅覚と同時に味覚の感覚にも支障をきたすことがあります。出典 : ■偏食がはげしい味覚に感覚の偏りがみられる場合、多くの人にとって美味しいと感じられる味がそうではないように感じたり、変わった味を好むようなことがみられることがあります。例えば、特定の味に対して、非常に強い不快感を感じたり、味が混じることを嫌がり、分けて食べたがったり、食べ物、飲み物の苦みや酸味を過剰に感じたりします。結果的に食べ物の好き嫌いの差が顕著で偏食の傾向が見られるようになったり、刺激的な味を好むゆえに調味料や香辛料で過剰に味付けすることがあります。出典 : ■触るのを嫌がる触覚が過敏な場合には、皮膚に触れる刺激を過剰に感じて不快感が生じます。触ることができないものとしては、のりやねんど、スライムなどのぬるぬる、べたべたするものや、たわし、毛糸、洋服のタグが代表として挙げられます。触覚に対する過敏さからくる反応として、以下のような例が挙げられます。・他人から離れて座る、近づこうとする人を押しのける・特定の服ばかり着たがる・爪切り、耳かきを嫌がる・自分からは人懐っこいかかわりをするのに、触れられることを嫌がる・触ることのできないものがある(よって、遊び・活動の幅が制限される)■痛みや熱さに気づきにくい触覚の鈍さがみられる場合には注意が必要です。というのも、触覚が鈍いときには、痛覚(痛みを感じる感覚)、温覚(温度を感じる感覚)も同時に鈍いことがあるからです。温度、身体的な痛みを感じることができないと、身体の異変に気がつかず、その結果適切な対処をできないこともあります。例えば、転んで怪我をしたときにも、本来ならば病院に行って手当をしなければならないはずなのに、その痛みや怪我をしていることに気が付かず、即座に適切な治療を受けることができない場合もあります。■刺激を求めて自傷行為をしてしまう自分が感じることのできる刺激を求めるあまり、血が出るまで腕を掻いたり噛んだり、頭をぶつけるなどの自傷行為を行うことがあるので注意が必要です。■筋肉に対する刺激を過剰に求める固有感覚とは、筋肉の張り具合や関節の曲げ伸ばしを感じとる感覚です。自分の体の位置や動きを把握する役割があります。固有感覚につまづきがあると、筋肉に対する刺激を過剰に求める「感覚探求」が生じます。その結果として、見られる子どもの行動特性には以下のようなものがあります。・強く足踏みをする・体の一部を動かし続ける(常同行動)・他人に思いっきりぶつかる、激しく関わる■動きの刺激を過剰に好んだり、過剰に怖がったりする平衡感覚とは体のバランスをとるときに働く感覚で、主に姿勢のコントロールや体のバランスを保つことに関わっています。平衡感覚に偏りがある場合には、体の揺れや傾きを自身で調節することが難しく、その結果、刺激を求める探求行動があります。例えば、刺激を求めて頭を振りながら走ったり、ぐるぐる回ったり、席を立ったりすることや、まわる遊具やブランコなどが大好きで離れようとしなかったりします。逆に、平衡感覚が敏感な場合には、動きの刺激に対して恐怖心や不安を持ちます。例えば、ブランコや高い場所に行くことを嫌がったり、頭を傾けたり体が傾いたりするのを嫌がったりします。ります。感覚の偏りの原因は? 発達障害と関係があるの?出典 : 感覚に偏りがみられる原因はあいまいではっきりとはわかっていませんが、中枢神経系(辺縁系や視床下部など)における感覚情報処理の問題によるのではないかと考えられています。感覚の過度な偏りと発達障害には密接な関係があります。その中でも、自閉症スペクトラム障害(ASD)では、幼いころから感覚の偏りが見られることが多いといわれています。発達障害のある子どもは、刺激に対して適切な感情を生じさせる機能に特性があると考えられています。そのため本来は有害でない刺激に対して過度な恐怖、不安の感情をもつことがあります。また、適切に外部の刺激を取捨選択し、注意を向けたり調整することが難しいために、発達障害のない子どもに比べて、過剰に反応をしてしまうのです。その結果、新しい活動を避けるようになってしまったり、多動傾向になったり、パニックになったり、周囲に対する不安感が強くなったりします。そして、子どもの場合には、そのような不安を適切な方法で表現できないために、癇癪(かんしゃく)や自傷行為などの問題行動につながりやすい傾向にあります。また、逆に感覚の鈍感さがあるときの行動の一つとして見られるのが、手をふらふらする、首をふるなど、「常同行動(自己刺激行動)」と呼ばれる行為です。これは、感覚刺激を求めたり、不安を紛らわせたりするための、自己調整の行動ではないかと考えられています。常同行動だけを見てしまうと、その行動は不思議に見えてしまいますが、その理由には感覚の偏りがあるといわれています。このような刺激に対して、適切にコントロールすることができれば、本人の不安やストレスは軽減され、そのような行動が減るようになります。子どもの行動が気になるときには?出典 : 子どもの行動が気になったときには、まず子どもの行動をよく観察してみましょう。観察するときは、特定の気になる行動が起こったときに、「どのような状況だったのか(時間、場所、その場にいた人、出来事)」と、「その行動に対してどうしたのか、その結果どうなったのか」という前後の状況を記入しておきます。そうすることで子どもの困りごとやその行動がどこからきているのか把握するための手立てとなります。また、行動をするときにはその背後に何らかの理由があります。子どもが気になる行動をとったときには、その行動がどのような刺激や、どのような理由によって引き起こされているのかを知ることが必要です。つまり、子どもがどのような種類、強さの刺激に対して過敏なのか、嫌悪感を感じているのか、受け取りにくいのかを周囲の大人が知っておくことが大事です。子どもの感覚の偏りを知ることによって、日々の子育てに役立てることができたり、幼稚園や保育園、学校の先生に具体的なサポートをお願いすることができます。また、子どもの感覚の特性を把握するために、保護者が簡単に利用できる感覚のチェックリストもあります。このようなチェックリストを参照することで、気を付けておくべき子どもの行動特徴を知ることができます。判断がつかず心配な場合には、病院の小児科や、地域の子育て支援センターを訪れ、専門家に相談してみましょう。日本版感覚インベントリー改訂版(JSI-R)感覚過敏、感覚鈍麻のある子どもへの4つの対応方法出典 : 上で述べたように、お子さんの様子を注意深く見て、困りごとを発見することで、子どもの困りごとに対する適切な対処方法を考えることができます。感覚に過剰な偏りのある子どもの困りごとを軽減させるためには環境を整える方法と、個人にアプローチする方法があります。感覚の偏りは、刺激に対して過剰に反応する、または感覚に対する反応が鈍いというあくまで「状態」であり、病気とは異なります。医師の間でもその定義はあいまいで、処方箋や治療方法は確立されていないのが現状です。ここでは、感覚に偏りのある子どもの苦痛や困りごとを軽減するための方法についてお伝えします。■感覚に過敏である場合子どもの感覚過敏を理解する上で重要なことは、「無理に刺激に慣れさせることは逆効果である」ということです。感覚過敏自体は、訓練や練習で急激に改善することは難しい場合もありますが、時間の経過や子どもの発達とともにある程度緩和されていくことがあります。刺激に嫌な経験が結びつくと、さらに刺激に対して嫌悪感を強めるようになります。無理に刺激を受けることを強要せず、軽減する方法を考えます。運動会やお祭りといった行事など、いつもと異なる環境で強い刺激が想定される場合・一部のみの参加にする・ピストルの音を子どもが受け入れることができる音(ホイッスルなど)にしてもらうなど刺激を軽減してもらうことも検討します。■感覚が鈍い(低反応である)場合触覚が鈍い子どもは、自分の感じることのできる刺激を過剰に求める「感覚探求」と呼ばれる行動をとる場合があります。例えば、なんでも触って回る、絶えず洋服を触っている、など落ち着きがなかったり、周りの人にべたべたして距離が近いなどの行動が例として挙げられます。このような落ち着きのない行動がみられる背後には、本人の脳に必要な感覚が十分満たされていないことがあるのではないかと考えられています。本人の感覚への欲求を満たせるような遊びや課題を提供してあげるのがよいでしょう。例えば、タオルや人形など、別の触っても構わないものを渡すことで、それらの感覚要求はは満たされることもあります。その結果、子どもは落ち着きのない行動をとる必要がなくなり、安心してじっとしていることが可能となります。自分で刺激を回避する方法を学ぶことも、感覚過敏による苦しみを軽減するひとつの手段です。子どもと大人の間で、このような出来事が起こったときにはこうする、というルールを決めておくとよいでしょう。感覚が過敏である場合について考えます。例えば、教室が賑やか過ぎて落ち着かないときに、黙って教室を飛び出るのではなく、イヤーマフを自分でしたりして、適切な対処方法をとることができます。また、視覚が過敏な場合には、サングラスをかけたりすることにより回避することができます。「音がうるさいときには、イヤーマフをする」「外に行くときにはサングラスをする」というように子どもに決まりごととして認知することにより、自ら刺激を回避できるようにします。感覚過敏のある子どもは、思ってもみなかったタイミングで音や光が突然に入ってくる場合に、不安やパニックなどの不快な情動が特に起こります。ゆえに、子どもを不安にさせないためにはこれから入ってくる刺激に対して、その量や質、そのタイミングを予測できるようにすることが大切です。また、なぜその刺激が生じるのか、刺激に直面した場合、どのように対応したらいいのかを理解することで、刺激に対する不安を軽減することができます。例えば触覚に偏りがある子どもの場合だと、突然に体に触れられると、驚いてパニックになってしまうことがあります。子どもの体に触れたり、水をかけたりする前に、あらかじめ声をかけてあげるようにしましょう。特に「触覚」「平衡感覚」「固有感覚」の発達については、運動や遊びによって日常生活に必要な感覚を整えることができます。これは、「感覚統合療法」と呼ばれ、療育の場面で使われています。感覚統合とは、人の持つ複数の感覚を組み合わせて、整理したりまとめることです。人は、環境からの刺激を受けると、無意識のうちに複数の感覚を連携させながら、反応を起こします。例えば、床に置いてある水の入ったバケツに足をぶつけてしまったときの例を考えてみましょう。バケツに足をぶつけた瞬間、①足にぶつかった感覚を「触覚」で確認し、②身体の現在位置を「固有感覚」で把握し身体に力を入れます。③その情報を受けた「平衡感覚(前庭感覚)」が、こけないように姿勢を保ちます。④ぶつけた音を「聴覚」で聞き、⑤足元にあるバケツを「視覚」で見て、このように、人は複数の感覚を「統合」し、日常生活を送っています。この感覚の統合がうまくいかないと環境から感じた刺激に対して体がうまく反応できません。この感覚統合のプロセスが適切に生じるように促していくくのが「感覚統合療法」です。感覚統合療法を受けるには、自治体の療育センターや、リハビリ、小児の医療機関を訪れ、感覚統合療法に専門性のある作業療法士(OT)に治療を行ってもらうことができます。また、専門のスタッフに治療を行ってもらうほかには、家庭や学校で遊びを通して感覚統合を行うこともできます。家でできる感覚統合の遊びが以下の書籍で紹介されていますので、参考にしてみるとよいでしょう。太田篤志/著『イラスト版発達障害児の楽しくできる感覚統合―感覚とからだの発達をうながす生活の工夫とあそび』2012年/合同出版/刊太田篤志/著『「発達障がい」が気になる子がよろこぶ!楽しい遊び』2016年/PHP研究所/刊森嶋勉・太田篤志/著・監修『ちょっとしたスペースで発達障がい児の脳と感覚を育てる かんたん運動』2011年/合同出版/刊川上康則/著『発達の気になる子の学校・家庭で楽しくできる感覚統合あそび』2015年/ナツメ社/刊おわりに出典 : 感覚に偏りがある場合には、子どもの生活空間に存在する不快な刺激をコントロールする同時に、感覚の偏りによる困難さを理解し、子どもが生きやすい環境をつくることが大切です。子どもが安心して過ごすことのできるように、周囲の大人が子どものことをよく見て、感覚の偏りがあることを本人が知ることで、適切に対処できるようになるといいですね。
2016年10月06日こんにちは、海外在住プロママライターのさとうあきこです。甘くてトロピカルな味のするマンゴーは、スーパーマーケットでも見かけるほど身近なフルーツになりましたね。南国の味を手軽に味わえるようになってうれしい限りです。ところが、マンゴーを食べる機会が増えたことである問題が起こっています。それはマンゴーアレルギーにかかる人が増加していること。今回は、“マンゴーアレルギー”についてご紹介します。目次マンゴーアレルギーの症状マンゴーアレルギーが起こるメカニズムマンゴーアレルギーの予防方法まとめ●マンゴーアレルギーの症状マンゴーを口にして15分程度で口や唇のしびれ、顔のむくみ、喉の腫れ などを感じたら危険信号。激しい症状では、じんましんが出たり、呼吸困難などを引き起こすこともあります。ほとんどの症状は1時間程度で治まりますが、進行が続き、救急治療を必要とする場合も稀にあります。花粉症や喘息患者、他の野菜・植物・フルーツなどにアレルギーを持っている人の場合は、特にアレルギー反応が激しく出る可能性があり、注意が必要です。●マンゴーアレルギーが起こるメカニズムマンゴーアレルギーは、ほぼ花粉症と同じメカニズムで起こっている と考えられています。花粉症を引き起こすアレルゲンの構造と、マンゴーに含まれる植物性のタンパク質の構造がよく似ているため、マンゴーを摂取した口腔内で同じようにアレルギー反応を起こしてしまうのです。また、リンゴやキウイ、桃、メロンやサクランボなどのフルーツでも同様の反応が起こることがあります。●マンゴーアレルギーの予防方法アレルギー反応を完全に防ぐには、マンゴーを食べないことが一番の予防となります。特に花粉症患者はマンゴーアレルギー発症率が高いので注意しましょう。発症してしまった場合は、抗アレルギー薬を服用することで症状を抑え、激しい症状が出ている場合にはステロイド薬を使用することもあります。ほとんどのマンゴーアレルギーは、「アレ?ちょっと口の中がむず痒い?」程度です。そのため、アレルギーであることに気づかずに食べ続けてしまう ことも少なくありません。ただ、体調不良時に大量に食べると突然強い症状が出ることもあるので、マンゴーアレルギーの存在を知り、食べ過ぎに注意することが大切でしょう。また、幼児などに食べさせる場合は少量から、様子を見ながら与えるようにしましょう。●まとめマンゴーをはじめとしたフルーツにアレルギーがあることは、意外と知られていません。また、その症状もナッツなどのように激しく現れることが少ないために見過ごしてしまうことも多いようです。ところが、花粉症の時期や体調不良時などにいつもより多く食べると、突然激しいアレルギー症状を起こして驚かされることがあります。こうなると、マンゴーに敏感に反応するようになってしまい、今後食べたいのに食べられないという悲しい状況に追い込まれてしまいます。適量を食べていれば、絶食するほどの大きなアレルギーではないだけに、マンゴーが好きな人は“食べ過ぎ”には十分注意したほうがよさそうです。【参考リンク】・口腔アレルギー症候群・ラテックスフルーツ症候群の診断・治療 | 渋谷内科・呼吸器アレルギークリニック()●ライター/さとうあきこ(海外在住プロママライター)
2016年10月04日1学期はあまり学校に通えなかった娘、心境の変化。出典 : 学期が始まりました。昨年話題となった、鎌倉市図書館の「学校が始まるのが死ぬほどツラかったら、図書館においで」というツイートで、9月1日に子どもたちの自殺が多いということを、ご存知の方もいらっしゃると思います。小学生の娘も、1学期の終わりは半分ほどしか登校しておらず、2学期が始まればまた、大きなストレスがかかるのではないか?と不安を抱えながら夏休みを過ごしていました。ところが8月を少し過ぎた頃、娘が突然「私、2学期は毎日学校に行くことに決めた!」と宣言したのです。あれほど、学校へ行きたくないと言っていた娘の、突然の変化。私「どうして行きたいと思うようになったの?」娘「先生や友達に会いたくなったから、かな。」私「そっか。じゃあ、無理はせずに楽しんで行けるようなら行ってみようね。」体に異変が出るほど辛い登校。それでも娘は学校に行くと決めた出典 : そして、その日から娘のチックが始まったのです。本人は気付いていませんが、1日中、目や口を右に左にぐいっと上に引き上げるようになりました。体にチック症状が現れるのは、いつも過剰なストレスを受けたとき。それほどまでに負担がかかるなら、なぜ「学校へ行く」という選択をしたんだろう?それでも私は、娘の決めた事ならば見守ってみよう、と様子を窺っていたのですが…。案の定、9月を前にすると不安は増し、チックはますます酷くなり、塞ぎ込む日が続きました。身体症状が出るほど、娘にとって負担の大きい「学校へ行く」という選択。それでも、娘が「学校へ行く」という選択をしたのは、お友だちや先生に会いたいという気持ちが大きかったからでした。学校から戻るやいなや、娘は私にこう言った…出典 : そして迎えた始業式当日。チックはまだ出ていましたが、娘が決めたことです。私は温かく送り出しました。その後、自宅に戻ってきた娘は一言、「私、学校やめるね」と宣言しました。そして、それ以降、娘は学校に行かずに家で過ごしています。ご家庭によって、「学校」の捉え方は千差万別。また、学校へ行かなくなる理由も、子どもによって違うでしょう。娘の場合、慕ってくれるお友だちは割と多く、先生との仲も良好です。成績もそこそこ良く、授業についていけないという訳でもありません。それでも、行けないのです。その理由を以前、聞いたことがあります。私「学校に行っている間、楽しい時間はある?」娘「家から持って行った本を休み時間に読んでるとき!」私「お友だちや先生と過ごす時間はどう?」娘「う~ん、楽しいのは楽しいけど、私がお喋りしたいことはみんなが知らないことだし、みんなが興味のあることは私にはどうでもいいことだから、結局疲れちゃう。」私「先生は時々しか時間が空いてないし、1対1で話せるわけじゃないから。」とのこと。結局、娘にとってはお友だちと過ごす時間も、会話の内容を相手に合わせる「おつきあい」の一環でしかないようです。朝は仲良しのお友だちが誘いに来てくれて一緒に学校へ行くのですが、ルールに厳格な娘は、道路に向かって缶を蹴ったり、急に走り出したりする児童にも強い怒りを覚えます。出典 : 理由は他にもあります。贅沢な悩みと思われるかも知れませんが、教科書に1度目を通せばわかることを、延々と説明され反復させられる授業も、娘にとっては辛い時間なのです。授業時間を、娘にも意味のある時間にできれば…と、「先生が人に教える時、どんな工夫をしているか観察してみたら?」「先生がお友だちをあてる順番に、どんな意味があるか考えてみたら?」といろいろやってみました。でも、それも1度わかってしまえば、つまらなさすぎる、とのことでした。今、娘にとっての学校は『安心して過ごせる』場所ではなく、顔中にチックが出るほど負担のかかる場所なのです。ずっと頑張ってきました。お友だちも作ったし、係の仕事も掃除も運動会の練習も応援も、誰よりも頑張ってきた。「行かない」と決めたなら、それでいいんじゃない。そんな大きなことを自分で決められるようになった。それだけでも、充分得るものがあったのだと思います。学校が悪い訳でも、娘が悪い訳でもなく、学校というシステムに娘がマッチしなかった。そういうことなんだろうと思います。やめさせるのは簡単なこと。だとしても、子ども自身の学びに繋げたい出典 : 実は、娘が学校へ行くと決めた後、繰り返されるチックを見て、私は何度も「もう学校へ行かなくていいよ」という言葉を口にしそうになりました。でもこれは、自分の人生を決めるのは自分なんだ、ということを身を持って学ぶ良いチャンスと考えていました。苦しんでいる娘に一声かけて、楽にしてあげるのは簡単なことですが、そこで私が「行かない」方へ背中を押してしまうと、「お友だちや先生に会いたかった」という心残りがいつまでも消えず、いつの日かきっと後悔すると思うのです。私にできることは、娘に寄り添い、学校に行かない場合のメリット・デメリットを話し合い、どんな結論を出しても「ママはあなたを応援する」と繰り返し安心させてあげることだけでした。「学校へは行きたくない」でも「お友だちや先生に会いたい」という気持ちを天秤にかけ、どちらを選択するかは、娘自身にしかできないからです。学校をやめた子どもを支えるため、大切にしたいこと出典 : こうして、学校へ通わず家で過ごすようになった娘。これから、担任の先生やスクールカウンセラーを交えての話し合いが、続くことになります。この先、学校へ行かないことでどんなメリット・デメリットがあるのかも、よく調べていかなければなりません。それでも、自宅でリラックスしながら、自分のペースで学習に取り組める環境は、娘に合っているようです。学校の話をすると、まだチックの出る娘。しかし、リラックスしている時には出ないので、この選択で良かったのだと思います。何が正解なのかは誰にもわかりません。だからこそ、親も子もゆっくりと問題点を洗い出し、考え、決断をしていかねばならないのだと思います。わが家では、これからも『安心して過ごせる場所』を基準に子どもと一緒に考えていこうと思います。
2016年09月27日統合失調症はどんな病気?出典 : 統合失調症とは、認知、行動、情動のいずれかに機能障害が発生する精神疾患です。代表的な症状としては、意味がよく分からない言葉を言う、幻覚、幻聴、被害妄想が起こるなどが挙げられます。一般的に10代後半から30代半ばに出現します。神経伝達物質の異常が原因と考えられており、人により機能障害がおこる脳の部分が異なるため、人により症状が大きく異なります。以前は精神分裂病という病名で呼ばれていましたが、病名に対してネガティブなイメージがあることから、2002年から新しく統合失調症という病名を使用することになりました。現在では統合失調症という病名がよく使われているため、本記事では統合失調症と記します。日本精神神経学会/監修 『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』 2014年 医 学書院/刊統合失調症の主な症状出典 : 統合失調症の主な症状は、陽性症状と陰性症状の2種類に分けられます。陽性症状は「妄想」や「幻聴」が代表的な症状として挙げられます。陰性症状は「うつ状態になること」や「感情の起伏が少なくなること」が代表的な症状として挙げられます。人が変わったかのように急に症状が現れるため、周囲の人が戸惑うことも少なくありません。本人には自覚症状がないことが多く、そのため受診が遅れる場合もあります。次のような症状がみられる場合は周囲の人が受診をすすめるとよいでしょう。陽性症状とは神経が興奮し、精神的に不安定になる症状です。主な症状として、妄想、幻覚の2つがあります。・妄想:妄想とは、現実的にはありえないことを信じてしまうことを言います。誰かに攻撃される、悪口を言われているといった被害妄想など数種類の妄想があります。幻覚:現実には起こっていないことが見えたり聞こえたりします。実際にどのような症状があるのか、体験談をご紹介します。今日一日中悪口聞こえた…。いつ治るんだろうこの病気。泣きたい、というか無様だけど、泣いた。頑張っても頑張り続けると、そのストレスで病気悪化するし、どうしたら幸せになれるの?馬鹿みたいなこと言ってるって分かってるけど、神様に嫌われてるとしか思えない。お隣の方の音が私に対する嫌がらせと感じたり、悪口を言っているように感じたりします。又、発症した時には家の中で監視カメラを撮られているように感じて落ち着かなかった経験もあります。セールスの方が来た時には自分を調査していると感じた事もありました。被害妄想が始まると、段々とエスカレートしていって、収拾が付かなくなりがちです。他人から陰口を言われているのではないかなどと要らぬ心配や不安を感じるのです。そんなとき、どうすればいいか判断できません。陰性症状は、エネルギーが下がった状態で起こる症状です。主な症状としては、うつ状態になることと、感情の起伏が少なくなることの2つがあります。陰性症状が進むにつれて日常生活を送ることが難しくなる特徴があります。やる気がないように見えることから周囲の人からは怠け者と見なされ、精神疾患に気づいてもらえないことも少なくありません。具体的な症状としては次のようなものがあります。・感情の表現が乏しくなり、喜怒哀楽がなくなります。・意欲が下がり、やる気がなくなります。例えば身の回りのことに気が回らなくなります。・考える力が低下し、話す内容が少なくなります。話の流れからすると全く関係のないことを話したり、受け答えをしたりすることがあります。・コミュニケーションを取ることが難しくなり、塞ぎこみがちになります。そして外出を控えるようになり、ひきこもりに発展してしまうこともあります。統合失調症の陰性症状が酷くなってきてて記憶力や思考力低下で困ってる統合失調症の陰性症状で動けないんだけど怠け扱いされてツラい。統合失調症の診断ガイドライン出典 : 統合失調症は、大きくとらえると「統合失調症スペクトラム障害および他の精神病性障害群」という疾患分類の中に含まれる病気です。2014年に出版されたアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)によると、統合失調症の診断基準は次のようになります。A. 以下のうち2つ(またはそれ以上)、おのおのが1ヶ月(または治療が成功した際はより短い期間)ほとんどいつも存在いする。これらのうち少なくとも1つは(1)か(2)か(3)である。(1)妄想(2)幻覚(3)まとまりのない発語(例:頻繁な脱線または滅裂)(4)ひどくまとまりのない、または緊張病性の行動(5)陰性症状(すなわち情動表出の減少、意識欠如)B. 障害の始まり以降の期間の大部分で、仕事、対人関係、自己管理などの面で1つ以上の機能のレベルが病前に獲得していた水準よりも著しく低下している(または、小児期や青年期の発症の場合、期待される対人的、学業的、職業的水準にまで達しない)C. 障害の持続的な兆候が少なくとも6ヶ月間存在する。この6ヶ月間の期間には、基準Aを満たす各症状(すなわち、活動期の症状)は少なくとも(または、治療が成功した場合にはより短い期間)存在しなければならないが、全駆期または残遺期の症状の存在する期間を含んでもよい。これらの前駆期または残遺期の期間では、障害の兆候は陰性症状のみか、もしくは基準Aにあげられた症状の2つまたはそれ以上が弱められた形(例:奇妙な信念、異常な知覚体験)で表されることがある。D. 統合失調感情障害と「抑うつ障害または双極性障害、神経病性の特徴を伴う」が以下のいずれかの理由で除外されていること。(1)活動期の症状と同時に、抑うつエピソード、躁病エピソードが発生していない。(2)活動期の症状中に気分エピソードが発症していた場合、その持続期間の合計は疫病の活動期および残遺期の持続期間の合計の半分に満たないE. その障害は、物質(例:乱用薬物、医薬品)または他の医学的疾患の生理学的作用によるものではない。F. 自閉スペクトラム症や小児期発症のコミュニケーション症の病歴があれば、統合失調症の追加診断は、顕著な幻覚や妄想が、その他の統合失調症の診断の必須症状に加え、少なくとも1ヶ月(または、治療が成功した場合はより短い)ぞんざいする場合にのみ与えられる。(参考文献:日本精神神経学会/監修 『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』 2014年 医学書院/刊p.99-100)統合失調症のプロセス出典 : 統合失調症にはいくつかの段階があります。それは時間の経過とともに症状や程度が少しずつ変化するからです。一般にうつ症状と似ている前兆期に始まり、興奮の激しい急性期、落ち込みの激しい消耗期を経て、回復期へとむかいます。■前兆期焦りと不安を感じ、感覚が過敏になったり気力がなくなる症状が現れます。例えばいらいらしたり、忘れっぽくなることなどが挙げられます。また頭痛や食欲減退が生じることもあり、身体の不調が起こり始めます。■急性期幻覚や幻覚、妄想などの、統合失調症に典型的な症状が現れます。この場合、光に敏感になることも多く生活リズムが崩れてしまうこともあります。例えば誰かに監視されているような妄想があったり、誰かが自分の悪口を言っているように幻聴が聞こえたりすることもあります。■消耗期疲れやすく、集中力がなくなるなどの症状が現れます。神経が消耗することからよく眠るようになります。また子どものような振る舞いがみられる退行が生じることもあります。これはエネルギー不足から生じる症状です。よく眠り、よく休むことでエネルギーを充電しているのです。■回復期エネルギーが次第に戻ってくると、治療などにより行動範囲が徐々に広がり、生活意欲が高まります。そこでリハビリテーションにより社会復帰を目指します。しかし社会復帰に向けてがんばるなかで焦りを感じ、状態が悪化する場合もありますので注意が必要です。統合失調症が生じる要因出典 : 統合失調症はさまざまな要因が複雑に関係しています。いくつかの要因によりストレス耐性が弱まり、それをきっかけに発症すると考えられています。統合失調症が生じる要因としては主に環境要因と遺伝要因、脳内物質の異常の3つがあります。■遺伝要因遺伝要因は統合失調症の発症に関連していると考えられています。しかし、単純に親から子への遺伝だけが統合失調症の原因ではないということが研究で分かっています。あくまで、発症リスクが他の親子と比べて高いということに留まります。統合失調症の親から生まれた子が統合失調症になる率は13%ですので、一般人口における100人に1人よりはリスクが高まりますが、統合失調症を発症しない人のほうがずっと多いといえます。功刀 浩/著 『図解 やさしくわかる統合失調症』 2012年ナツメ社/刊遺伝要因に加えて環境要因が合わさって、統合失調症の発症に影響を及ぼすとも考えられています。■環境要因環境要因としては生まれた季節や生まれ育った環境が関係すると考えられています。たとえば、晩冬や早春、都市部で育った子ども、少数民族の集団などが挙げられます。また胎児期から思春期にかけて起こった出来事も関連があると考えられています。胎児期におけるストレスや感染症への感染、幼児期の虐待などが挙げられます。■脳内物質の異常脳内で情報伝達の役割を担うドーパミンやセロトニンといった脳内物質の分泌量の異常が、統合失調症の要因の一つとして考えられています。伊藤 順一郎/著 『統合失調症 正しい理解と治療法 (健康ライブラリーイラスト版)』 2005年講談社/刊功刀 浩/著 『図解 やさしくわかる統合失調症』 2012年ナツメ社/刊統合失調症の治療を受けるには出典 : 統合失調症を発症する人は自分が病気にかかっていると自覚していないことがほどんどです。本人が病院などの専門機関に行きたがらない場合、周囲の人が受診を勧めましょう。治療が早ければ早いほど回復が早くなります。早期発見、そして早めの治療がポイントになります。統合失調症が疑われる場合は、神経科や精神科、精神神経科などを受診しましょう。病院により受診内容が異なることもあるので、受診できるかどうか事前に病院へ問い合わせて確認すると安心でしょう。本人が病院へ行くことがためらう場合は、保健所、精神保健福祉センターなどに相談するのも良いでしょう。全国の精神保健福祉センター一覧 | 厚生労働省緊急の場合には、夜間や休日でも受付している精神科救急医療機関にいきましょう。周囲の人に危害が及ぶほどの緊急事態の場合は、精神保健福祉法に基づき任意入院または医療保護入院などを行うことも選択肢となります。早めに専門機関に相談しましょう。【精神科救急情報センターご利用のご注意 】夜間休日精神科救急情報センターのご利用に際しては、下記のことについてご協力とご理解をお願いしています。(1)激しい暴力行為等でお困りの場合は、110番通報、お近くの警察署にご相談ください。(2)怪我や病気など、急を要する身体科治療が必要な場合は、119番へご連絡ください。(3)夜間・休日の緊急入院患者用に確保しているベッドの数が限られています。この為、翌日以降の受診で対応できる方については、ご連絡を頂いても受診できない場合があります。(4)緊急入院患者用にベッドを確保している病院は、都道府県内精神科病院による当番制となっています。この為、必ずしもお住まいの近くの病院をご紹介できるとは限りません。また、受診が必要と判断できるまで、原則病院名をお教えすることはできません。(5)入院を前提とした受診を行っても、医師の診断によっては入院が不要となることがあります。(6)お酒を飲んで酩酊状態にある方や、危険ドラッグ・覚醒剤等の薬物を使用されている方は対象外となる場合があります。(7)受診が必要かどうか判断するために、現在の状況やお住まいの場所等を教えていただく必要がありますので、ご了承ください。(夜間休日 精神科救急医療機関 案内窓口 | メンタルヘルスONLINE)一般的に医師が問診を行います。以下が質問の一例となります。・現在どのような症状がありますか・いつから症状は始まりましたか・どのような経過を経ていますか・生活にはどのような支障をきたしていますかできるかぎり家族など周囲の人も付き添いましょう。本人だけではなく身近な人からの情報も役立つことがあります。ただ本人が家族の同席を希望しないこともあります。そういった場合、本人は医者と、家族はカウンセラーやソーシャルワーカーといった専門家と面談するのがよいでしょう。鑑別診断/統合失調症の診断フローチャート | 統合失調症ナビ統合失調症の治療には一般的に、薬物治療を併用しながら心理社会的療法(リハビリテーション)が行われます。薬物療法と他の療法を併用することによって、再発率が低下することがわかっています。治療法の組み合わせによる1年後の再発率*を調べた研究によると、「薬物療法のみを行った群」での再発率が約30%であったのに対して、「薬物療法とリハビリテーションを併用した群」および「薬物療法と家族心理教育(家族技能訓練)を併用した群」の再発率はともに8%と著しく低下していました。リハビリテーションや家族心理教育を単独で行っても再発率は低下しませんので、薬物療法と組み合わせることで高い治療効果が得られることになるといえます。(治療する 治療のポイント | 統合失調症ナビ)それぞれの治療法について、詳しくご紹介します。■薬物治療薬物療法は抑うつ状態や不安を軽減し、気持ちを安定させることなどを目的としておこなわれます。薬物治療には抗精神病薬と補助治療薬を使います。主に抗精神病薬を主とし、他の精神病の症状がある場合に医師の判断により補助治療薬を併用します。・抗精神病薬抗精神病薬とは精神症状を和らげるために使うものです。幻覚や不安、神経症状といった陽性症状や陰性症状に対して有効です。・補助治療薬抗精神病薬のほか、補助治療薬が処方されることもあります。補助治療薬とはうつや不安、不眠など精神症状がある場合に、併用するお薬です。また副作用を和らげたり、気分の上がり下がりを安定させたりするような薬もあります。必要な場合は医師が判断し、服用します。薬物治療は人により副作用が生じることがあります。これは服用する薬が神経へ働きかけているからです。薬物治療を行う際には必ず医師の指導に従い、副作用と疑われる症状が起きた場合には、自分で判断せず医師に相談しましょう。起こりうる副作用について詳しくは次のサイトをご覧ください。うつ病・統合失調症薬の副作用イラスト集とその使い方(医師) | COMHBO 地域精神福祉福祉機構■心理社会的療法(リハビリテーション)心理社会的療法(リハビリテーション)はストレスの原因となるものを特定することや認知(ものの考え方やとらえ方)を変えることを目的としておこなわれます。カウンセリングなどを通して病気への理解を深めます。自分の考え方のくせを知ることでストレスへの対処法を学びます。またリハビリテーションを通して生きがいや働く力を育み、社会生活への復帰を目指します。さらに本人が睡眠・生活バランスを整えたい場合や医師や家族が必要と判断する場合、入院を選択肢の一つとして考えることができます。詳しくは次のサイトをご覧ください。活用できる資源や制度 | こころの健康情報局すまいるナビゲーター統合 失調症統合失調症に対する望ましい接し方出典 : 統合失調症の治療には周囲の理解と協力が欠かせません。しかし人が変わったかのように急に症状が現れるため、周囲の人は戸惑ってしまいます。症状に対する正しい理解のもと、次のようなことを心がけるとよいでしょう。■幻覚や幻聴などの症状に悩まされている場合、否定したり説得することを避けましょう。本人の話を聞いてうなずき、安心させましょう。■正しい知識を身につけ、統合失調症の症状を理解しましょう統合失調症には様々な症状があります。たとえば次のような症状があります。覚えておくとよいでしょう。・疲れやすい・臨機応変に行動できません・周囲の状況を把握することが苦手です・新しい環境や急な変更に対応できません■本人を勇気づけ、治療をサポートしましょう■医師と連携し、薬の服用や生活リズムなどを確認し、治療を支えましょう。また幻聴や気分の落ち込みが続くと、自殺を図る場合があります。自殺してはいけないというメッセージを伝えるとともに、危険な場合には医師に相談し医療機関との連携を取りましょう。何か少しでも疑問などがある場合は、気軽に専門機関に相談しましょう。本人を支える家族も一緒に悩み、抱え込んでしまうことが少なくありません。何か悩みがあるときは相談相手を増やしましょう。医師や保健所、精神保健福祉センター、関係者が集まる家族の会などがあります。一人で悩まず、誰かに相談することで不安な気持ちを解消しましょう。統合失調症のある人にどうやって接したらいい?体験談を紹介出典 : 統合失調症のある方は症状により幻覚や幻聴、気分の落ち込みがあるため、いつもと違った言動や行動をしてしまうことが少なくありません。そういったとき、家族をはじめとする周囲の人はどのように対応したらいいか悩んでしまいます。一体どのようにして統合失調症のある方に接しているのか、体験談をご紹介します。私の身近な人が統合失調症を患っています。すでにお勉強済みかもしれませんが、妄想の話にあわせてはいけません。どんどん妄想がエスカレートしてひどくなります。調子のいい時と悪い時があるはずなので、担当の患者さんをよく診てその時その時の状態を察して上げれるようになってください。性格に素直な人も多いと聞きますがお薬を飲むのを嫌がったり治らないのではと絶望的になっている方には調子の落ち着いている時に向き合ってあなたが真剣に患者さんのことを考えている、一緒に回復へ伴走しましょう、と話してみてください。妄想の話が止まらない時は話題をお互いの共通のもので声を掛けてみてください。そして恐ろしいと思うことを言っても落ち着いて、接してください。統合失調を患っている方は電話ででも相手がどう感じているかなど敏感です。妄想に話をあわせないこと、私は真摯にあなたの病気を一緒に治そうとしているんだよ、という気持ちを伝えること、こういったことはとっても重要に思えます。というのも、私も、思い出せば、家族にそのように接してもらっていたからです。そのおかげで、幻聴や妄想も、自分の、病気による妄想、思い込みなんだと身体できづくことができました。なかなか時間はかかりましたが。そしてなにより、真剣に私の病気を健康に治そうとしてくれているんだ、という、信頼感、安心感がもてるようになり、心を素直に開くことができました。あと、どんなささいなことも、いいにくい環境をつくるのではなく言いやすいように接してもらうと、とても気分が楽なります。人により症状はさまざまですが、その症状を冷静に観察し、適切に対応することが求められます。例えば妄想がある場合は話をあわせないことが重要になります。また“あなたのことを見守っている”という姿勢を見せることで、本人は安心感を感じることができます。統合失調症がよくわかる本統合失調症は症状が多岐にわたる、とても複雑な病気です。そのため今ではたくさんの本が出版されています。今回はその中でも統合失調症を理解するのに役立つおすすめな本を3冊ご紹介します。出典 : 功刀 浩/著 『図解 やさしくわかる統合失調症』 2012年ナツメ社/刊出典 : 白石 弘巳/著 『よくわかる統合失調症―ねばり強い治療で、回復と自立をめざす (こころのクスリBOOKS)』 2011年 主婦の友社/刊出典 : 利用できる福祉サービスは?出典 : 統合失調症となったとき、必要性が認められれば障害年金や心身障害者扶養救済、自立支援医療、生活保護、障害者手帳をはじめとする福祉サービスを利用することができます。■障害年金…障害の程度に応じて、一定の金額が毎月支給される年金制度です。■心身障害者扶養救済…障害者のある方の生活の安定と将来に対する不安の軽減を目的に、保護者が生存中掛金を納付することで本人に終身年金を支給する任意加入の制度です。■自立支援医療…自立支援医療は心身の障害を取り除くためにかかる医療費の自己負担額を軽減する制度です。障害の種類や所得に応じて、ひと月当たりの負担額に上限が設定されています。■生活保護…病気やけがにより収入がない、もしくは不十分な場合に最低限度の生活を保障するために給付される制度です。■障害者手帳…障害のある人が取得することができる手帳のことをいい、取得することで障害の種類や程度に応じて様々な福祉サービスを受けることができます。一般に身体障害者手帳、療育手帳と精神障害者保健福祉手帳の総称のことを障害者手帳と言います。詳しい制度内容や利用方法は以下のリンクをご覧ください。伊藤 順一郎/著 『統合失調症 正しい理解と治療法 (健康ライブラリーイラスト版)』 2005年講談社/刊まとめ出典 : 幻覚や幻聴、気分の落ち込みなどが統合失調症の特徴的な症状としてあります。不眠や焦りが病気の徴候としてみられることもあります。また、陰性期にはなにも手に付かず、無気力になってしまうこともあります。身近に統合失調症のある人がいる場合、家族や身近な人は振り回されると感じたり、なんとかしたいと注意したり励ましてしまうこともあるでしょう。ですが、本人は強い不安や追い詰められてつらい気持ちを感じています。そんなとき、周りの人が本人の気持ちに寄り添うことがなにより助けになるのです。本人や周りの人が統合失調症への正しい理解をすることがとても重要です。統合失調症は、治療を早く始めれば早いほど、治りが早くやすいという特徴があります。統合失調症が疑われる場合は早めに受診しましょう。セルフチェック | 統合失調症ナビ心身障害者扶養保険共済制度の改正について | 独立行政法人福祉医療機構自立支援医療 | 厚生労働省生活保護制度 | 厚生労働省参考文献:伊藤 順一郎/著 『統合失調症 正しい理解と治療法 (健康ライブラリーイラスト版)』 2005年講談社/刊テーマ1: 統合失調症とは何か | 公益社団法人 日本精神神経学会 事務局統合失調について | こころの健康情報局すまいるナビゲーター統合失調症統合失調症 | 厚生労働省 知ることから始めようみんなのメンタルヘルス統合失調症とは・統合失調症 症状と治療法 | メンタルヘルスONLINEどんな病気?/症状と機能障害 | 統合失調症ナビ統合失調症 | 東京都立松沢病院
2016年09月23日異食症(Pica)とは?出典 : 異食症とは少なくとも1ヶ月間、通常食べることのない・栄養がないものを1つ以上、継続して口にしてしまう摂食障害の一つです。摂取してしまうものの例としては、氷や土、毛髪、チョークなどが挙げられます。特に氷、土、毛髪を食べることは多く知られており、氷食症、土食症、食毛症という個別の症状名がつけられています。しかし乳幼児のように、まだ十分に認知機能が発達していないことから生じる突発的な異食行動や、熱帯地域などの場所で慣習的に土が食べられているといった、異食行動がその地域にとって普通の行為である場合は異食症とはみなされません。文化的にも社会的にも通常食べられないものを摂取してしまう場合に限り、異食症とみなします。異食症は年代や性別などによっても様々なタイプがある疾患です。おもに、子ども・妊婦・他の疾患を発症している人と3つのタイプに分けることができます。タイプごとにどういう症状や原因があるのか、どういった対応・治療をしていけばよいのか見ていきましょう。子どもの異食症の症状・原因出典 : 乳幼児期は物の区別を苦手とする上に好奇心が旺盛で、何でも口に入れてしまう傾向があります。しかし異食行動を行う頻度は年齢とともに低下していく傾向にあるため、2歳以前の異食行動自体がすぐに問題になるわけではありません。そこで、子どもにおいては生後24ヶ月以降に栄養のなく、通常食べることのないものを継続して摂取してしまうという症状があった時、異食症とみなされる場合があります。子どもが摂取してしまう異物は、子どもの身近にあり手に入りやすいものと考えられます。例えば氷、毛髪、氷、土、毛髪、絵具、ひも、鉛筆の芯、布、ほこり、糞便、紙片が挙げられます。先述したとおり、2歳までは知的好奇心による正常な行動の場合が多いです。しかし、それ以降も異食行動が習慣化するまで継続してしまうと、異食症と診断される場合があります。異食行動を続けてしてしまう原因として、保護者のネグレクトなどにより空腹感から異食してしまう等も考えられますが、決してそれだけではありません。子どもがストレスをため込みやすい性格をもっており、その発散方法として異食行動を行ってしまう、周囲の人が知らない間に異食行動を見逃し、それが常態化しているなど、様々なケースがあります。妊娠中の女性の異食症の症状・原因出典 : 女性は妊娠期間中に衝動的に異食行動を行ってしまうことがあります。この場合は妊娠中のみに発症し、自然に治ることが多いと言われています。口にするものとして、土、石、氷、生のジャガイモや小麦粉がよく挙げられます。妊娠中の女性による異食症は、鉄や亜鉛などの栄養不足が大きな原因と言われています。妊娠することによって女性のからだは、自分自身ではなく赤ちゃんに優先して栄養や酸素を供給するように自然とはたらき始めます。栄養や酸素は血液を通して赤ちゃんに送り込まれるため、からだは体内の血液量を増やそうとします。しかし、通常摂取している1人分の栄養素で多くの血液を体内で生成しようとすると、成分に影響が出てくる可能性があります。その成分が鉄や亜鉛です。妊娠中に意識的に必要な栄養素を摂取していない場合、身体が通常の鉄分・亜鉛でたくさんの血液をつくろうとするため、これらの成分が不足してしまいます。血液中に栄養素が少なくなると、体内で酸素をうまく運ぶことができなくなり貧血がおこります。この鉄欠乏性貧血は、妊娠中に特に起こりやすくなる貧血の一つです。氷や石・土の異食症は、身体が無意識に鉄分を補おうとして引き起こされることが多いとされています。しかし、妊娠中によって発症する異食症の原因は栄養不足だけではありません。脳への酸素供給量が不足することによって、「おなかいっぱい」だという感覚を失ったり、からだの温度調節の機能が鈍くなったりすることで異食症が引き起こされる場合もあります。またその他にも精神的ストレスによって、精神を安定させる働きのある脳内の神経伝達物質の一つ、セロトニンが不足してしまい、感情や欲求が抑制できなくなったりするなど、様々な要因が重なり合っている場合があると考えられます。その他の疾患と異食症を併存している人の症状・原因出典 : 併存症を発症している人は、その併存している疾患によって症状が異なります。その代表的な例として、統合失調症、脅迫性障害、パーソナリティ障害などの他の精神疾患、自閉スペクトラム症などの発達障害、知的障害、そして認知症があげられます。上記で述べた他の疾患と異食症と併存している場合、目に入るものが食べ物かどうか判断することを難しいと感じる認知の障害が元となり、異食行動を起こしている場合が多いです。そのため異食症として摂取してしまうものは、その人の身近にあり手に入りやすいものであることが多くなります。例えば氷、毛髪、氷、土、毛髪、絵具、ひも、鉛筆の芯、布、ほこり、糞便、紙片が挙げられます。またパーソナリティ障害の場合は、自傷行為のために釘や針を異食したり、出血するまで爪をかんだりすることがあります。パーソナリティ障害とは、思考、感情、人とのかかわり方、衝動の制御の4つのうちの少なくとも2つにおいて、柔軟性がないと判断された場合に診断される疾患です。パーソナリティ障害がある人は、考え方や行動パターンの偏りが大きくなるため、異食行動を起こしてしまうことがあります。異食症と一緒に発症しているその他の疾患が直接的な原因となる場合があります。疾患が進行していく途中に異食行動を起こすようになり、エスカレートしていくと異食症と診断される傾向があります。・自閉症スペクトラム:自閉症スペクトラムとは、社会性と対人関係の障害、コミュニケーションや言葉の発達の遅れ、行動や興味の偏りの3つを特徴とする発達障害の1つです。この場合の異食行動は、本人が特定の食べものの視覚や舌ざわりに対して強いこだわりを持った場合に起こることが多いです。・統合失調症:統合失調症は、感情や考えがまとまりづらく、気分や行動、人間関係などに影響が出てきてしまう疾患です。この場合の異食行動は、幻覚や妄想の症状によって引き起こされやすいと言えます。・認知症:中度~重度へと進行した際に引き起こされる、味覚障害、認識障害が主な異食行動の原因となります。・知的障害:18歳までの発達期に生じた知的機能の障害により、理解、判断、思考、記憶、知覚などの知覚機能の発達が、周囲と比べて遅れている状態のことです。発達の遅れによる認知の障害が異食症の要因と言われています。異食症と関係する合併症出典 : 異食症では普段口にすることがない物質を体内に入れるため、身体的に様々な合併症を引き起こすこともあります。合併症の症状は食べたものによりますが、主に・胃炎、胃潰瘍、腸閉塞・中毒・電解質異常・寄生虫の発生があります。その他にも普段の食事の栄養バランスに偏りがうまれ、ビタミン欠乏症、鉄欠乏性貧血が発症する可能性もあります。病院へ行くべきなの?異食症の見分け方と相談先出典 : 乳幼児期の異食行動は、ほとんどの子どもに起こりうることです。また、妊娠中の女性の異食に関しても、多くの場合起こりうる症状です。しかし、以下に当てはまる場合は要注意です。・行動が徐々にエスカレートしていく。・ストレスを感じている様子がある。・明らかな体調不良を感じる。・継続的に異食する物質が人体に有害な恐れがある。本人の状態を見てこれらに当てはまるときは、ためらわず、かかりつけのお医者さんに相談することをおすすめします。異食症は、様々な原因によって発症する疾患です。そのためまずは、かかりつけの病院で相談することをおすすめします。しかし身近に相談できる病院がすぐには見当たらない、いきなり病院へ行くのはためらいを感じる場合は以下の相談先も活用してみましょう。・児童相談所:児童相談所は、すべての都道府県と政令指定都市に最低1つ以上設置されている児童福祉の専門機関です。主に、「子どもの養育に関する相談」、「障害に関する相談」、「性格や行動の問題に関する相談」などの育児に関する相談ができる機関となっています。全国児童相談所一覧l 厚生労働省・全国精神保健福祉センター:各県、政令市にはほぼ一か所ずつ設置されている、保健・精神保健に関する公的な窓口です。精神保健福祉に関する相談をすることができます。精神科医、臨床心理技術者、作業療法士、保健師、看護師などの専門職が配置されており、相談については、予約制、健康保険の適応があるところがあります。詳細は、それぞれのセンターにお問い合わせください。全国の精神保健福祉センターを探すl 厚生労働省・精神科:心の症状、心の病気を扱う科です。心の症状とは具体的に不安、抑うつ、不眠、イライラ、幻覚、幻聴、妄想などのことです。心の症状に対して治療を行います。・心療内科:心と体、それだけでなく、その人をとりまく環境等も考慮して扱う科です。上記の心の症状だけでなく、ほてり、動悸などの身体的症状とその人の社会的背景、家庭環境なども考慮して治療を行います。精神科、心療内科どちらに行ったらいいか迷う方もいらっしゃるかもしれませんが、異食症の場合、精神科を受診しても心療内科を受診してもどちらでも大丈夫です。食べてしまったものによって明らかに身体に不調がでている場合は、まずは内科に行き、中毒症状などの治療を受けることを優先してください。異食症の診断基準出典 : 年に出版されたアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)によると、異食症の診断基準は次のようになります。A. 少なくとも1ヶ月間にわたり。非栄養的非食用物質を持続して食べる。B. 非栄養的非食用物質を食べることは、社会的にみて標準的な慣習でもないC. その摂食行動は文化的に容認される慣習でも、社会的にみて標準的な慣習でもない。D. その摂食行動が他の精神疾患(例:知的能力障害、自閉スペクトラム症、統合失調症)や医学的疾患(妊娠を含む)を背景にして生じる場合、特別な臨床的関与が妥当なほど重篤である。世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)によると、幼児期に土を食してしまう割合は1歳児で35%あるのに対し、4歳児では6%ほどになるとされています。その為、幼児期の異食行動は自然に起こるものという考えが一般的です。そこで、2歳を異食症の境界としています。参考文献:ICD-10精神科診断ガイドブック2013年中山書店/刊先ほど説明した『ICD-10』では「精神遅延を除く他の精神および行動の障害が存在しない」ことを条件としています。しかし『DSM-5』については「他の精神疾患の経過中にのみ認められる場合、特別な臨床的関与が妥当なほど重症である」と条件付きの併存を認めています。異食症の治療法出典 : 異食症の治療は、合併症の有無をまずは判断し、ある場合は先にその合併症を治療します。その後、心理的評価を行い、心理療法および薬物療法により対処します。異色症の治療l health line育児放棄や虐待がある場合には、その状況を変えなければなりません。また、鉛などの毒性物質への暴露も避けるべきです。治療のポイントは心理社会的、環境的、行動的、家族指導的アプローチにおきます。穏やかな嫌悪療法や負の強化療法(例えば軽い電気ショック、不快な音、催吐薬)が効果を挙げています。正の強化、モデリング(modeling)、行動修正(behavioral shaping)、矯正(overcorrection)治療なども用いられています。年にはマルチビタミンサプリメントが、子どもの異食症治療に効果的であるという研究結果が発表されました。ビタミンにより、栄養のない物を食べたいという欲求を減じるか、なくすことができる可能性があります。異食症の子どもに対するビタミンサプリメントの効果l National Center for Biotechnology Information, U.S.異食行動を発見した時の緊急対処法出典 : あなたの周りの人が異食行動をしているのを発見してしまった場合、どうすればよいのでしょうか?以下の緊急の対処法を行うことをおすすめします。大声を上げて怒らず優しく接することが重要です。なぜなら怒鳴られたりすることで、びっくりして口の中のものを急に飲み込んでしまったり、ストレスを感じて異食行動がエスカレートしてしまったりする可能性があるからです。優しく、お菓子など口に入れる代替品となるものを差し出し、吐きだすように誘導するようにしましょう。体に有害なものを飲み込んでしまった場合は、早急に以下のように対処する必要があります。・ティッシュや紙くずなど消化できるもの....のどに詰まってない場合は、しばらく安静にして様子を見ます。・小銭、電池、ビー玉、ビニール、おむつなど消化できないもの....のどに詰まっていない場合は、無理に吐かせず直ぐに受診します。・たばこ....ニコチンなどの有害な物質を体に吸収させてしまう恐れがあるので、水を飲ませず早急に吐かせます。・洗剤....食道や胃の粘膜を炎症させたり、傷つけてしまう恐れがあるので、吐かせずに水を飲ませて直ぐに受診します。しかしこのような誤って物を飲み込んでしまう緊急事態が起こってしまった場合は、個人で判断せず、すぐに駆け込める病院を確保しておくこと、日本中毒情報センターの中毒110番に確認することがおすすめです。中毒事故発生時の対応l 公益財団法人日本中毒情報センターまとめ異食症は短期間で症状が治まる可能性が高く、治療法もあります。特に子どもの場合は物を口に入れてしまうことは自然なことであり、焦る心配はありません。しかし食べてしまう物によっては、身体に影響を与える危険性のある疾患です。ですので、まず第一に飲み込まないようにすることが大事です。万が一、飲み込んでしまった場合や、症状について気になった場合は迷わず診察を受けに行くことをおすすめします。またご自身でも小さなストレスから取り除いていき、不足していると感じる栄養素を積極的に摂取していく日々の積み重ねが大切といえるでしょう。
2016年09月22日こんにちは、子育て研究所代表の佐藤理香です。先日、子どもの予防注射で『MR(麻しん・風しん)』2回目を予約しようと試みました。ところが病院からの返事は、「現在、麻しんのワクチンが不足している ため、予約できない状況です。入荷も未定です」でした。この“麻しん”こそ、2016年9月現在流行中の『はしか 』です。乳幼児がかかると死にも至るケースがある怖い病気。本日はこの『はしか』のポイントを確認したいと思います。目次1 『はしか』ってどんな病気?2 どんな症状がでるの?3 妊婦と1歳前後の乳幼児、ママパパ世代は要注意!4 どうやったら予防できる?●『はしか』ってどんな病気?はしかは、麻しんウイルスによる感染症です。感染力が強く、死に至ることもあります。ワクチンを接種していない乳幼児に比較的多い傾向があります。空気感染やひまつ感染、接触を通じても感染します。『世界保健機関(WHO)』では、はしかを排除することを目標にしています。日本では昨年2015年に、“はしかを排除できた状態”と認定されましたが、なんと今年の8月中旬以降、患者が出てきてしまいました。●どんな症状がでるの?10日~12日くらいの潜伏期を経て、熱が出て発症します。はじめの2日~3日は38度前後の熱や咳、鼻水、結膜炎など、かぜと同じ症状です。その後、一旦熱が下がる傾向にありますが、再び高熱、それとともに赤い発しんが出てきます。全身に発しんが現れてからも4日~5日高熱が続きます。合併症で肺炎などを併発することでも知られています。一度発症してしまうと特効薬はなく 、熱をやわらげるなどの対処療法となります。●妊婦と1歳前後の乳幼児、ママパパ世代は要注意!妊婦と1歳前後の乳幼児、ママパパ世代は特に注意が必要です。妊娠中の方が『はしか』に感染すると、流産や早産の恐れがあると言われています。さらに1歳前後の乳幼児は免疫力が低いうえ、ワクチンを接種していない場合もあるので、流行している場合はできるだけ人混みを避けるなど対策が必要です。つい先日、兵庫県尼崎市では、保育園に通う子どもや職員が18人も集団感染する事態になりました。厚生労働省から各自治体を通じて集団生活の場となる園にも連絡が入っているとは思いますが、気になる場合は感染防止対策について園の先生に聞いてみるのもよいと思います。意外にも要注意なのが26歳~39歳のママパパ !実際に感染した人を年齢別にみた調査では、この世代が半分以上いることがわかっているのです。なぜかというと、理由はワクチンの接種回数にありました。『はしか』はワクチンを2回接種することで、高確率で予防することができるといわれています。しかし、この世代のママパパは、ワクチンの定期接種が1回しかなかったのです。このため、きちんと免疫がついていない、または免疫が低下してしまったママパパが『はしか』にかかりやすい状態になっているのです。●どうやったら予防できる?一度かかってしまったら対処療法しかとれないので、予防することが最優先になります。『はしか』はワクチンを2回接種することで、免疫が確実につきます。現在は、1歳で1回目、小学校入学前に2回目の定期接種(通常は無料)が行われています。このため、1歳になったらできるだけ早く接種する ことがポイントです。また、『はしか』を予防するMRワクチンは、生ワクチンです。赤ちゃんへの影響を避けるため、妊娠している人は接種できません。妊娠していない場合であっても、接種後2か月程度の避妊が必要と言われています。妊娠の希望がある人は事前に確認しておきましょう。感染症を防止するための一般的な対策も有効です。人混みを避ける、マスクを着用する、しっかり手を洗うなどを行いましょう。----------最後に、『国立感染症研究所』が出しているスローガンをお伝えします。『はしかにならない!はしかにさせない!1歳のお子様は、1歳のお誕生日に!!』わが子のためにも、お友達にうつさないためにも、時期がきたらすぐにワクチンを接種したいものですね。【参考リンク】・麻しん・風しん | 厚生労働省()・麻疹とは | NIID国立感染症研究所()●ライター/佐藤理香(株)●モデル/大上留依(莉瑚ちゃん)
2016年09月19日ムスメちゃんとオコメちゃん
ドイツDE親バカ絵日記
yopipiのプチプラコーデ〜ときどき育児日記〜