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子どもにとっては大事な経験「園の友達トラブル」親はどう関わる?

あんふぁん
親にとって、お友達トラブルはできれば回避したいものですが、子どもの発達にとっては大切なもの。
友達関係はどのように変化して、どんなトラブルが起こりやすいのか。園ではどのようにサポートして、親はどう関わると良いのか。
発達心理学の専門家である岡本依子先生に聞きました。

子どもにとっては大事な経験「園の友達トラブル」親はどう関わる?


お話を聞いたのは:岡本依子さん
立正大学 社会福祉学部 子ども教育福祉学科教授。専門は発達心理学。特に親子のコミュニケーションの発達について研究。
共著「エピソードで学ぶ保育のための心理学〜子ども理解のまなざし」他、保育者を目指す学生向けのテキストなども執筆している。


友達関係の発達段階を知ろう
友達関係は、発達につれて変化していきます。年齢ごとの特徴や、起こりやすいトラブルを知っておきましょう。

子どもにとっては大事な経験「園の友達トラブル」親はどう関わる?


イラスト/杉浦さやか

◆3歳頃「一時的な関係」性別関係なく、同じ場所にいる子と遊ぶ
集団生活に慣れていない時期には、一緒に遊ばなくても、近くにいる子どもに興味を持ったり、隣の子の遊びにつられたりする様子が見られます。
その後、友達と遊び始めますが、3歳では「その場にいる子と遊ぶ」という一時的な関係。男女が入り混じり、気が向いたら同じ場にいる子と遊び、飽きたら違うところに行ったり、一人遊びに戻ったりと、こだわりなく遊ぶ段階です。
この時期のトラブルは、まだ友達同士のルールが分かっていないために起こる、アクシデントのようなものです。
おもちゃを取ってしまうのも「それは今、使っている子のもの」という「所有」の概念が未発達なためで、悪意はありません。
取られた子が怒ることもありますが、多くは「ああ、持っていったな。
じゃあ今度は何を使おう」という感覚です。
感情のコントロールはまだ上手ではないので、感情的になっているときは寄り添って落ち着くのを待って。
園の先生は、こうした場面を「ルールを学ぶチャンス」と捉え、「貸してって言おうね」などと適切な言い方を伝えていきます。

◆4歳頃「一緒に遊ぶから友達」好きな遊びが同じ子と一緒にいるように
4歳を過ぎると、率先して自分の好きな遊びを選ぶようになります。すると、自然と好きな遊びが同じ子と一緒にいるようになり「一緒に遊ぶから友達」という関係に。ただ、あくまでも主軸は自分の遊びなので、「外で遊ぶ友達」「ままごとをする友達」などと分かれることが多いでしょう。
3歳までは「ありのままの自分」で生きていますが、4歳頃からは「すてきなおねえさん、かっこいいおにいさんでいたい」など、「自分はこうなりたい」というイメージを持つように。
「ルールを守っている自分は偉い」という正義感も芽生え、ルールを守らない子を見ると告げ口をすることも出てきます。

自分と友達の正義が違うと、屁理屈をこねたり、言葉がきつくなったりすることもあるでしょう。
4歳後半くらいから仲間外れも見られるようになりますが、これは「友達は大切だから、仲間外れにすることが(相手にとって)罰になる」という友情関係が分かってきた証拠。その発達を理解しつつ、園の先生は相手がイヤな気持ちになること、仲間外れは良くないことを伝えていきます。

◆5歳頃「友達だから遊びたい」一緒に遊びたいから自分の意見は後回し
これまでは「一緒に遊ぶから友達」だった関係が、「友達だから遊びたい」に変化する時期。
「◯◯ちゃん、一緒に遊ぼう。何して遊ぶ?」と、遊ぶことを前提に、何をするかという交渉が始まります。
自分の遊びが主軸だった時期はやりたいことが違う相手とは遊びませんが、この頃になると、その友達と遊びたいがために、自分のやりたい遊びを後回しにして、友達の意見を優先できるようになるのです。
これは、学童期の友情関係である「心の友達」につながる出発点。
とても重要な変化です。
また、友達がどう思っているかを気にするようになるのもこの時期。4歳では一方的だった正義感も「他者の立場に立つ=他者視点」が発達して柔軟になってきます。
例えば、滑り台を滑る側から上ろうとする2歳児を見たとき、4歳では「ダメだよ」と決め付けますが、5歳では「まだ小さいから分からないのか」と考えられるようになります。
園の先生は自己主張と他者視点がバランス良く発達するように、トラブル解決をサポートしていきます。

親はどうする? 友達関係の心配事
読者アンケートで「わが子の友達関係に関する心配」について聞き、多かった声について岡本先生にアドバイスをもらいました。

親の役目はトラブル前の園との信頼関係作り
以前に比べ、今は「園での友達トラブルは、園の責任で解決する」という方針が広く定着しました。また、何か問題があれば教えてもらえますから、子どもが元気で楽しそうに通園しているなら、基本的に心配はいらないでしょう。

とはいえ、子どもに「◯◯ちゃんとケンカした」と言われ、その相手を知らないと、親は不安になるもの。
普段から、誰と仲が良いか、何をして遊んでいるかといった情報を、先生と親で共有しておくことが大切です。
また、子どもはボキャブラリーが少なく、ささいなことを大げさに話したり、誰と遊んだか記憶があいまいで「一人で遊んだ」と言ったりすることも。
元気をなくして登園をしぶる日もあるでしょう。心配事があれば、「こんな様子なんですけど、心配し過ぎですか?」「親からは見えない子どもの姿があると思うので、先生からどう見えるか教えてください」など、親の気持ちも含めて先生に相談しましょう。

友達トラブルは、子どもが社会性や協調性を身に付けていく上で、大切な成長の糧でもあります。
親の役目はトラブル回避よりも「トラブルが起こっても大丈夫」と思えるように、園との信頼関係を作っておくこと、と考えるといいですね。

自分の意見を言えない、それも子どもの個性 友達を優先しているのかも
新しい集団に入ったばかりなら、子どもの個性なので問題ありません。
まわりの様子をしっかり見て、少しずつ自分を表現するタイプなのでしょう。
もし集団に慣れた時期になっても意見が言えないなら、意見を言わない環境に慣れてしまっている可能性も。
家庭で子どもが自由に意見を主張できているか、振り返ってみましょう。
4〜5歳になって、友達の希望を優先することで「友達を喜ばせることができた」と満足感や誇りを感じているようなら、成長の証。褒めてあげるといいですね。

友達ができない 遊びに没頭しているなら大丈夫 子どものペースを見守って
ひとりで遊んでいても、遊びに没頭できているならまずは見守ってみましょう。
遊びに没頭するのは、むしろ発達的には大事な時間です。もし、一人遊びの最中も友達の様子が気になっているようであれば、じっくり集団の様子を観察してから加わりたいタイプなのかもしれません。

子どもは「友達になって」と言わなくても、集団の後ろから付いて歩いているうちに仲間に入ったり、離れて遊んでいる子をまねしているうちにお互いが気になって、一緒に遊ぶようになるもの。
子どものペースで関係が出来ていくので、親はヤキモキせず、おおらかに構えていましょう。怒りっぽい 今は感情コントロールの練習中 言葉で表現する方法を伝えて
怒るのは、悔しさやイヤなことがあったから。怒りはある種の原動力になり、うまくコントロールできるようになると、「これをバネにして頑張ろう」というやる気につながります。幼児期はそうした感情コントロールの練習期間と捉えましょう。
また、怒っていることを表現できない方が困ることもあります。「イヤなことされたら、僕だって怒るんだよ」ということを相手にうまく伝えた上で、「もうやめてね」と言えるのが理想的。そのためには、「イヤだったから、怒ったのね」など、感情を言葉で表現する方法を伝えていきましょう。

同じ子としか遊ばない 友達だから遊びたい段階 閉鎖的になったらフォローを
これは気にしなくて大丈夫。幼児なりに「気が合っている」ということで、「友達だから遊びたい」の段階に進んでいると考えられます。
さらに発達して他者視点が身に付いてくると、友情関係を試すかのように「他の子としゃべっちゃダメ」などと言うこともあるかもしれません。
この場合、本気の意地悪ではありませんが、関係が閉鎖的になっているようなら、「お友達がイヤな気持ちになるからね」など、良い方向に導くように声を掛けましょう。

友達をしつこく遊びに誘う どのくらいしつこくすると相手が怒るか試すことも大事な経験
そもそも子どもはしつこいもの。あまりにしつこくすると相手の子が怒るかもしれませんが、「どのくらいやると相手が怒るのか」を試すのも大事な経験です。
相手の子が遊びたくないのなら「◯◯ちゃんはイヤって言っているから、他の子を誘ったら?」、誘っている遊びがイヤなら「違う遊びで遊ぼうって言ってみたら?」など、アドバイスしてみるといいでしょう。

友達に対して言葉がきつい 相手が気分を害していると分かれば徐々にマイルドな言い方に
言葉がきつくなるのは4歳頃に多く見られ、基本的には一時的なもの。
まだボキャブラリーが少ないためで、相手を不快にさせようとしているわけではありません。
友達が自分の言葉で気分を害しているのが分かると、言い方を考えるようになり、徐々にマイルドな表現ができるようになっていきます。親は、子どもの言葉がきついと感じたときに「◯◯って言おうね」と、言い換え方を提案してみましょう。
また、言葉に関しては「親を映す鏡」という側面もあります。家族の間でも、きつい言葉は避けるといいですね。

これも気になる もしも園の友達が新型コロナにかかったら子どもにどう説明する?
友達が感染した場合は、下手に隠したり、ごまかしたりせず、子どもが知りたい「単純な事実」をきちんと話すことが大切です。
「病気だから治るまでは一緒に遊べないけど、治ればまた遊べるよ」と事実を伝えれば安心できるでしょう。
それ以上の説明は、子どもの理解力に合わせて。くどくど説明して、ちゃんと理解できないまま「コロナはすごく恐ろしい」という恐怖心だけを植え付けるのは避けましょう。
また、「◯◯ちゃんは、手洗いしてなかったからコロナになったのかも」「悪い子がコロナにかかるから、あなたはいい子にしなさい」という言い方もNG。友達に対して「手を洗っていなかった子」「コロナになった悪い子」など、誤ったイメージを持たせないように気を付けましょう。

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