アークレイは10月14日、京都大学との共同研究で、ヒトiPS細胞を1個から培養可能な、超小型培養装置の開発に成功したと発表した。同研究成果は同社と同大学大学院工学研究科の小寺秀俊 教授、巽和也 准教授、同大学再生医科学研究所の多田高 准教授、同大学物質-細胞統合システム拠点のLiu Li 助教らによるもので、国際学術雑誌「Biochemical and Biophysical Research Communications」に掲載された。再生医療をはじめ細胞培養を伴う医療応用分野において、細胞の品質(安全性・機能性)管理は非常に重要だが、一般的な培養皿を使用する手法では、培養皿の中の液体(培地)の対流により、細胞周囲の環境を精密に制御することが困難となる。また、老廃物の蓄積などにより、細胞周辺環境が影響を受けてしまうことや、作業時に外気へ接触することによって細菌やウイルスが混入する危険性がある。そのため同研究グループでは、簡単かつ安全にヒトiPS細胞を培養する方法を検討していた。今回の研究では、シリコン樹脂素材により作製した直径0.5mmの流路と、小型ポンプを組み合わせて超小型培養装置を設計・作製した。同装置は、顕微鏡のステージ上に設置可能なサイズであり、培養中の細胞を随時観察することもできる。従来に比べてこの装置を用いた培養手法は、細胞周囲の環境を精密に制御できる、操作が簡便で自動化に向いている、密閉状態を維持できるため細菌などの混入リスクが低い、などの利点がある。細胞の品質管理が容易であることから、今後医療応用分野における標準的な手法になり得るという。さらに、同研究では、ヒトiPS細胞の1細胞からの培養を実現し、増殖したiPS細胞が本来の性質を維持していることが確認された。同培養手法を応用することで、装置の大規模化による大量培養装置や培養機能を検査装置に組み込んだ細胞診断機器の開発につながることが期待される。
2014年10月15日デルは26日、幅6.9mmのスリムベゼルを採用した24.1型液晶ディスプレイ「U2415」を発売した。パネルはIPS方式で視野角は上下左右178度の広さ。sRGB 99%の色域をカバーする。直販価格は33,980円(税込、送料込)。「U2415」はDell デジタルハイエンドシリーズに属する24.1型の液晶ディスプレイ。アスペクト比は16:10、解像度は1,920×1,200ドット、表面は非光沢仕上げとなっている。6.9mmの狭額縁設計により、マルチディスプレイでの使用にも向いている。映像入力インタフェースはMHL対応のHDMIを2基、mini-DisplayPortとDisplayPortを1基ずつ搭載。映像出力用のDisplayPortや5基のUSB 3.0も備えている。USB 3.0は高速充電対応のポートを含んでいる。その他の仕様は、ドットピッチが0.27mm、応答速度が6ms(GtoG、Fastモード)、輝度が50~300cd平方メートル、コントラスト比が2,000,000:1(ダイナミックコントラスト)。スタンドは115mmの高さ調整、チルトとスイーベル(可動範囲不明)、左右両方向のピボットに対応している。サイズはW532.2×D205.0×H402.9~517.9mm(スタンド含む)、重量は6.69kg(スタンドとケーブル含む)。故障時の良品先出し対応(3年保証)、1つの輝点ドット抜けで新品と無償交換に応じるプレミアムパネル保証(3年)が付属する。
2014年09月30日京都大学は8月22日、ヒトiPS細胞から肺胞上皮細胞を分化誘導し、単離する(取り出す)方法を世界で初めて確立したと発表した。同成果は同大学大学院医学研究科呼吸器内科学講座の三島理晃 教授、同 後藤慎平 研究生、同 伊藤功朗 助教(物質-細胞統合システム拠点連携 助教)、同 iPS細胞研究所増殖分化機構研究部門の長船健二 准教授、同 医学研究科腫瘍生物学講座の小川誠司 教授らの研究グループによるもの。8月21日(米国時間)に米科学誌「Stem Cell Reports」に掲載された。今回の研究では、肺胞上皮細胞の前段階にあたる肺胞前駆細胞を効率よくヒトiPS細胞から分化誘導するのに、CPMという酵素が有用であることを突き止めた。また、蛍光タンパク質(GFP)を注入することで、肺胞を作るのに不可欠な2型肺胞上皮細胞に分化すると光るヒトiPS細胞を作成したという。さらに、CPMを使って単離した肺胞前駆細胞を3次元培養して肺胞上皮細胞を分化誘導したところ、GFPが光り、2型肺胞上皮細胞の単離に成功したことが確認された。同研究グループはこの結果について「ヒトiPS細胞から2型肺胞上皮細胞の分化誘導と単離というプロセスが確立したことで、肺の再生研究だけでなく、さまざまな難治性疾患の研究に踏み込める大きなチャンスが到来した」とコメントしている。
2014年08月22日(画像はプレスリリースより)痩せやすく太りにくい身体づくりのためのジェルクリームマッコイは、イオン化ミネラルで細胞レベルまで浸透する痩身クリーム「ノンFエナジークリームSP」をさらにパワーアップした「ノンFモンスター」を2014年6月2日(月)より発売。「ノンFエナジークリームSP」は、長時間代謝を上げてセルライトを分解させることに特化した商品。「ノンFモンスター」は0.2~0.7ナノ(1ナノは1ミリの百万分の1)の浸透型ミネラルのため浸透が早く、ミネラルバランスを整えながら代謝を上げることで、痩せやすく太りにくい身体づくりができるジェルクリームです。痩身効果のある植物性ケミカルをふんだんに使用し、100%天然由来原料のイソラムネチンが太るメカニズム(脂肪幹細胞からの脂肪細胞への分化・肥大化)を抑制。ミス・ワールドジャパン2014公式認定コスメ、購入できるのは施設リリースセラピー受講サロンのみ。『ノンFモンスター』発売記念キックオフパーティー開催日時は2014年7月7日(月)13~16時、会場は東京都渋谷区宇田川町13-8ちとせ会館B1FT2 Shibuya -International Restaurant-、対象はマッコイが招待するエステサロン及びディーラー。【参考】・マッコイプレスリリース・取り扱いサロン一覧
2014年07月04日東京大学(東大)は、ショウジョウバエを用いて、正常な老化に伴い嗅覚神経細胞死が生じると、特定の匂いを感じることができず、異常な行動をとる原因となることを発見したと発表した。同成果は、同大大学大学院薬学系研究科 薬科学専攻の千原崇裕 准教授、同 三浦正幸 教授、米カリフォルニア大学サンディエゴ校のJing Wang教授、米スクリプス研究所のRonald Davis教授らによるもの。詳細は「PLOS Genetics」に掲載された。老化に伴って記憶学習や認識などの脳機能が低下することの要因の1つとして、老化に伴う神経細胞の細胞死が挙げられるが、正常な老化と神経変性疾患の双方において起きており、神経変性疾患における細胞死の研究は行われてきたものの、正常な老化の過程における細胞死の研究はこれまで、ほとんど研究されていなかった。今回、研究グループはショウジョウバエをモデル動物として用いて、正常な老化における脳内の細胞死の観察を試みた。その結果、老化したショウジョウバエの神経細胞のうち、特に匂いを感知するのに重要な神経細胞「嗅覚神経細胞」で細胞死に必要な酵素「カスパーゼ」が活性化していることを確認した。ショウジョウバエには約50種類の嗅覚神経細胞があり、それぞれの神経細胞ごとに感知する匂いが異なるが、カスパーゼの活性は、「リンゴ酢や酵母の匂い」を感知する「Or42b神経細胞」に見られ、実際に老いたショウジョウバエでは、同神経細胞の数が減少していることも確認したほか、嗅覚中枢の活性化とショウジョウバエのリンゴ酢に対する行動の調査では、老化したショウジョウバエではリンゴ酢を与えても嗅覚中枢がほとんど活性化せず、リンゴ酢がある場所に集まらない(誘引されない)ことを確認したとする。また、Or42b神経細胞でカスパーゼが活性化できないようにしたショウジョウバエでは、たとえ老化してもリンゴ酢の方向へ誘引されることも確認したとする。一般に、老化に伴って匂い感覚能(嗅覚機能)は低下するほか、パーキンソン病を含む神経変性疾患においても運動機能障害に先だって嗅覚機能低下が現れることが知られている。そのため研究グループでは今回の成果について、正常な老化における神経細胞の細胞死の意義、分子機構に迫るとともに、神経変性疾患時における神経細胞の細胞死の原因、ひいてはその発症機序の理解にもがることが期待されるとコメントしている。
2014年07月03日カネカは5月7日、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)と、iPS細胞を用いて創薬スクリーニングを行うための自動培養装置の開発を目指した共同研究契約を締結したと発表した。CiRAではiPS細胞からさまざまな組織や臓器の細胞へ分化させる技術開発が進められており、患者由来のiPS細胞(疾患特異的iPS細胞)を用いて病態解明や治療法の研究開発を行うことが可能になっており、新薬開発の初期段階における副作用検査や創薬ターゲット探索など創薬分野でのiPS細胞の活用が期待されるようになっている。一方、同社は細胞培養工程でCPC(Cell Processing Center)のようなクリーン度の高い施設を必要としない自動細胞培養装置の販売を行ってきたが、今後、今回の契約をもとに細胞培養装置の新たなターゲットとして、CiRAの技術を活用したiPS細胞を用いた創薬スクリーニング装置の開発を進めることで、根治薬のない希少・難治性疾患に対する治療薬の開発が促進されることが期待できるようになると説明している。
2014年05月07日京都大学iPS細胞研究所(CiRA)は、iPS細胞の初期化の過程として、ヒトの体細胞は、中胚葉や内胚葉の細胞のもととなる「原条」と呼ばれる構造の細胞に似た状態を経て初期化されることを明らかにしたと発表した。成果は、CiRAの高橋和利講師、同・山中伸弥教授、スタンフォード大学の田邊剛士研究員(元CiRA)らの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、日本時間4月24日付けで英オンライン科学誌「Nature Communications」に掲載された。ほ乳類の発生過程で現れる溝の様な構造。マウスの場合、発生開始から6~7日目に見られ、この部分で細胞の形態が変化し、中胚葉や内胚葉の細胞のもとになる。山中因子ともいわれる、初期化因子因子「OSKM」こと「OCT3/4」、「SOX2」、「KLF4」、「c-MYC」を含む転写因子を発現させると、分化した体細胞が多能性を獲得するが、その効率は決して高くない。この効率の悪さの要因として、OSKMの添加に加えて、「初期化の障壁を取り除く」あるいは「未だに知られていない2次的なイベントが必要である」と考えられてきた。それらを明らかにすることで初期化効率の改善が期待されるわけだが、集団の中で大部分を占める初期化されそこなった細胞が各種解析結果において大きなノイズとなり、初期化の分子機構を研究する上で障壁となっていた。そのため、iPS細胞へと初期化される過程にある細胞の中で起きているイベントを捕まえることはとても難しいのが現状だったのである。昨年、高橋講師らは細胞表面の抗原(タンパク質)である「TRA-1-60」を指標に初期化途中の細胞を集めるという手法を開発。ヒトの細胞の内、OSKM誘導によって生じたTRA-1-60陽性細胞がiPS細胞へと初期化される途中段階の細胞であることを示すことに成功した。また、TRA-1-60陽性細胞の動態解析から、初期化の開始段階ではなく、その後の成熟過程がボトルネックとなって初期化の効率を決めていることも明らかにしている。しかし、実は初期化途中の細胞の特徴についてはまだほとんどわかっていないという。そこで今回の研究では、真正なiPS細胞の候補である途中段階の細胞としてTRA-1-60陽性細胞を集め、遺伝子発現についての解析を実施したのである。「ヒト線維芽細胞(HDF)」にOSKMを作用させてからさまざまな日数において、iPS細胞へと初期化される途中の段階であるTRA-1-60陽性の細胞(d3~d49)が回収され、それらの遺伝子発現が調べられた。比較として、もとのHDF細胞に加え、初期化が終わったiPS細胞(iPSC)やES細胞(ESC)、さらにiPS/ES細胞から少し分化させた細胞の「内胚葉(EN)」、「中胚葉(ME)」、「神経外胚葉(NE)」、「原条様中内胚葉(PSMN)」についての解析が行われた。すると、初期化途中の段階の細胞、特に20~49日目の細胞はPSMNにとても似ていることが明らかになった。また、初期化の途中にあるTRA-1-60陽性細胞ではPSMNに特徴的なマーカー遺伝子の「BRACHYURY(T)」、「MIXL1」、「CER1」、「LHX1」、「EOMES」などが一過的に活性化していることが確認されたとする。一方でほかの系統の細胞に特徴的なマーカー遺伝子は一時的に活性化することはなかったという。これらの結果から、TRA-1-60陽性細胞が初期化の後半でPSMNと似た遺伝子発現をしていることがわかったというわけだ(画像)。以上の結果から、iPS細胞へと初期化される際には、原条の様な状態を経ていると考えられるという。逆に原条の状態を誘導すると、初期化の効率が高くなることが予想されるとする。そこで原条に関連する転写因子をいくつかOSKMと同時に誘導したところ、FOXH1を利用した場合にできるiPS細胞のコロニー数が飛躍的に増加することが確認された。また、FOXH1の機能を「RNA干渉法」により抑制すると、iPS細胞のコロニー数も対応して減少。これらの結果からFOXH1が初期化を促進することがわかったのである。今回の成果により、TRA-1-60を目印として初期化の途中にある細胞を捕まえる戦略により、初期化途中の細胞がPSMNと似た状態を経ることが明らかにされた。このPSMNに似た状態が次第に変化して、iPS細胞へとさらに初期化されるというわけだ。初期化過程の研究を進めることで、iPS細胞のより強固な樹立を可能にすることができると考えられるとしている。
2014年04月25日岡山大学は、正常な黄体細胞がリンパ管を通じて卵巣外へ流出することによって黄体が卵巣から消失することを発見したと発表した。同成果は、同大大学院環境生命科学研究科 動物生殖生理学分野の奥田潔教授らによるもの。詳細は米国オンライン科学雑誌「PLOS ONE」に掲載された。多くの哺乳類において排卵後の卵巣に形成される黄体は、黄体ホルモンを分泌することで雌の体を妊娠できるようにするが、妊娠に至らなかった場合、黄体は卵巣から消滅し(黄体退行)、妊娠可能な状態が解除され、次の排卵を待つこととなる(ヒトでは月経が生じる)。これまで黄体退行は、黄体を構成する黄体細胞がプログラムされた細胞死(アポトーシス)ならびに黄体へ侵入したマクロファージによる貪食作用(死細胞の除去)によると考えられていた。しかし、研究グループでは、アポトーシスと貪食による卵巣からの黄体細胞除去には5日程度掛かる健康なウシに、薬剤(プロスタグランジン F2α)を用いて人為的に黄体退行を誘導した場合、約24時間で黄体が卵巣から消えるが、黄体細胞除去に働くマクロファージの数は生理的な黄体退行時と変わらなかったことから、従来の説に疑問を感じ、新たなメカニズムの探索を行ったという。その結果、卵巣から採取されたリンパ液中に多数の生きた黄体細胞を発見したほか、リンパ液中の黄体細胞の数は黄体退行時に急激に増加し、特に黄体が卵巣上から完全に消滅する際に黄体細胞の流出が重要であることが判明したという。今回の「黄体細胞がリンパ管を通じて卵巣から流出する」という成果について研究グループでは、リンパ管を通じて細胞が流出する現象はがん転移の際に観察されていたが、そうした細胞流出が生理的な器官の消失に関与するという報告はなく、今回の発見は生物学的に重要なものとなると説明するほか、ウシの人工授精では排卵のタイミングをコントロールする必要があるが、排卵には前の排卵時に形成された黄体の消失が必須条件となるため、今後、大量の黄体細胞を任意のタイミングでリンパ管へ流出させる技術を開発することで黄体退行を人為的に制御できるようになれば、効率的に排卵を促し人工授精を行うことが可能になるとコメントしている。
2014年03月24日横河電機は2月27日、細胞の塊や培養容器に貼りついた状態の細胞の画像から、個々の細胞の形態を簡単かつ高精度に定量化する共焦点定量イメージサイトメーター「CQ1」(画像1)を開発したと発表した。細胞検査を初め、iPS細胞やES細胞、STAP細胞などの多能性細胞による再生医療研究、がんなどの疾患研究では、細胞の画像観察に加え、面積や形状などの形態を定量化して把握したいというニーズが高まっている。正常状態の細胞のデータと比較することで、細胞がどのような状態にあるかを簡単に判断することができるのが主な理由だ。対象となる細胞には、培養液中の浮遊細胞、培養容器に貼りついて単層状に培養された平面培養細胞、3次元培養された細胞の塊などがある。これらを定量化するためには、これまでのところは、蛍光顕微鏡を使って目視で測定するか、細胞の形態を定量化する専用装置を利用するのが一般的だ。それら従来の装置は、細胞の塊を1つ1つの細胞に分けたり培養容器から剥離する必要があったりすることから、データの種類や精度に限界があった。そのため研究者や検査士は、塊のまま本来の生体機能や特性を維持した状態で、形態に関する多様で高精度なデータを取得できる装置を求めていたのである。そこで同社は、これらのニーズに応え、累計台数2200台以上という世界中の研究機関で広く使用されている共焦点スキャナユニット「CSU」を中心としたワンボックスタイプの共焦点定量イメージサイトメーターとして、「CQ1」を開発した。共焦点スキャナユニットは、通常の光学顕微鏡に取りつけて共焦点顕微鏡システムにすることができるユニットだ。共焦点顕微鏡は、蛍光試薬などで染色した試料にレーザを照射し、励起された蛍光を観察することで、きわめてコントラストの高い鮮明な画像を、任意の焦点距離で選択的に得ることができるのが特徴である。このため、試料を切片にすることなく生きたまま断層(スライス)画像を得たり、そのスライス画像データから3次元立体像を構築したりすることが可能だ。さらにCSUは「ニポウディスク(回転円板)」とマイクロレンズアレイを組み合わせた従来にない「マイクロレンズアレイ付きニポウディスク式共焦点光学技術」が採用されているのが特徴である。ニポウディスクには多数のピンホールが渦巻き状に配置されており、これによってマルチビームスキャンを行うことが可能だ。さらに、このニポウディスクのピンホールに光を集中させてより明るくするために組み合わせられているのが、微小なレンズを格子状に並べたマイクロレンズアレイである。これにより、高速スキャン性能を保ったまま、光の利用効率を大幅に改善可能。この技術により、細胞を塊のまま個々の細胞の表面積、体積などの3次元形態情報や細胞の位置情報を簡単に、しかも高精度に定量化できるのである。CQ1の特徴を改めて述べると、まず「細胞を剥離せず、形態情報を高精度に定量化」が可能な点だ。細胞の塊をバラバラにしたり、培養容器から細胞を剥離したりすることなく細胞本来の生体機能や特性を維持した状態で、高精度に定量化することができる。2次元情報である面積に加え、3次元情報である体積、表面積、細胞の個数や位置、細胞内の微小な粒子の位置、蛍光強度などの各種データを視認性よく、表・グラフ形式で表示すことが可能だ。2点目は、生きた細胞観察機能を有している点だ。CSUについても前述の通りだが、共焦点スキャナとして、レーザ光による細胞ダメージ(光毒性)や蛍光退色を最小限に抑えながら、細胞のスライス画像を高速に得ることができる。CQ1にはCSUが搭載されているので、生きた細胞の3次元、多色観察が可能だ。研究や検査で使った細胞も破棄する必要がなく、細胞を無駄なく活用できるため、再生医療用細胞の品質管理・検査・実験に適しているとする。3点目は、再現性の高いデータ。励起するレーザのパワーモニタ機能により、安定したレーザパワーを維持すると共に、定期的に内部校正を行い、レーザパワー以外の変動要素の影響も補正し、再現性の高いデータが取得できるようになっているとした。そして主な市場だが、再生医療分野、医学・病理学・解剖学・生物学などの基礎研究分野、薬学、創薬研究、細胞を扱う研究・検査分野(FISH法など)やこれらに関連する分野としている。用途は、iPS/ES/STAP細胞研究、再生医療に用いられる細胞研究、創薬、疾患研究における細胞品質評価、病理切片評価などとした。発売は2014年5月を予定しており、同社は同製品を3月4日から6日まで国立京都国際会館で開催される「日本再生医療学会総会付設展示会」に参考出品する予定とした。なお、CQ1の仕様は以下の通り。光学モード:マイクロレンズ付き広視野ニポウディスク共焦点、位相差(オプション:画像2)蛍光観察レーザ:405/488/561/640nmから2~4色選択、10穴フィルタホイール内蔵搭載カメラ:sCMOS2560x2160ピクセル、16.6mm×14.0mm (2倍対物レンズで96ウェルプレートの1ウェル全範囲をカバー)対物レンズ:最大6本 (2倍~40倍ドライのみ、位相差、長作動)培養容器:マイクロプレート(6、12、24、96、384ウェル)スライドガラス、カバーガラスチャンバ、ディッシュ(35、60mm)特徴量:細胞数、細胞内顆粒数、輝度、体積、表面積、面積、周長、直径、球形度、円形度、ほかデータ形式:画像:16bitTIFFファイル(OME-TIFF)、表示画面をPNG形式で出力、数値:FCS形式、CSV形式本体サイズ・重量:600mm×400mm×298mm、38kgユーティリティボックスサイズ・重量:275mm×432mm×298mm、18kg
2014年02月28日東京医科歯科大学(TMDU)は2月17日、東海大学との共同研究により、ほ乳類の個体発生に重要な働きをする「ゲノムインプリント記憶」が、生殖細胞でリプログラミング(消去・再成立)される際の消去過程に「能動的脱メチル化機構」が機能することを、マウス個体を用いた実験で突き止めたと発表した。成果は、TMDU 難治疾患研究所・エピジェネティクス分野の石野史敏 教授、同・李知英 特任講師、東海大の金児-石野知子 教授らの共同研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、1月13日付けで英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。ほ乳類の発生過程では、ゲノムワイドな「DNA脱メチル化」が、(1)受精から着床までの初期発生の時期、(2)「始原生殖細胞(primordial germ cell:PGC)」が将来の生殖巣(精巣や卵巣)である生殖隆起まで移動し定住する時期で起きる。特に、PGCでは脱メチル化に伴うインプリント消去後、精子・卵子形成過程でインプリントが再刷り込み(再成立)されるので、インプリントは完全に消去(脱メチル化)される必要がある(画像1)。画像1は、ゲノムインプリントのリプログラミングを表した概念図だ。ゲノムワイドの脱メチル化は、受精直後の受精卵(a)と生殖細胞系列のPGCの中で起きる(b)。精子、卵子に刷り込まれたゲノムインプリント(c、d)は体細胞系列で一生維持され、細い黒線がそれを表す。PGCは、初めは体細胞と同じゲノムインプリントを持っているが(太い黒線)、将来の生殖巣(卵巣や精巣)である生殖隆起に定住する前後で消去される仕組みだ(b)。なおDNAメチル化とは、DNA塩基「シトシン(C)」が「メチル基(CH3)」で修飾されることをいい、一般的にはこれが起きると遺伝子が抑制される形だ。よって、DNA脱メチル化は、その反対の現象である。ゲノムインプリントの場合、精子、卵子にメチル化状態が刷り込まれ、インプリント遺伝子の発現・抑制の両方に機能し、消去の際に脱メチル化される。そのゲノムインプリントとは、ほ乳類発生に重要な「エピジェネティック」情報の1つのことで、父親・母親由来ゲノムからのみ発現する「インプリント遺伝子」の発現制御を行う。ゲノム刷り込みともいわれるこの情報は、ほ乳類のライフサイクルで生殖細胞において消去・再成立され次世代に伝わる形だ。脱メチル化過程でメチル化シトシン(5mC)は異なる2つの機構で未修飾のシトシン(C)に変換される。「受動的脱メチル化(passive demethylation)」は5mCが細胞分裂に伴って希釈されていく機構、「能動的脱メチル化(active demethylation)」は細胞分裂に依存せずCまで変換する機構だ。しかし、前述した(1)、(2)の時期にどちらの機構が関与するのか、見解は二転三転していたという(画像2)。初期発生における卵子に由来する「雌性前核」は、細胞分裂と共に徐々に希釈される受動的脱メチル化を受ける(画像2a)。それに対して精子に由来する「雌性前核」、つまりPGCにおけるゲノムインプリントの消去は能動的脱メチル化の代表例と考えられていた(画像1・2b)。しかし2009年以降、ゲノム中に5mCの酸化誘導体である「ヒドロキシメチル化シトシン(5hmC)」などの存在が確認され、この酸化反応を触媒する「Tet(ten eleven translocation)酵素」群もほ乳類で同定されたことから、それまでの考えは大きく修正されることになったという。5hmCは「能動的脱メチル化機構」の中間体でもあるが、雄性前核の場合、Cから5hmCへの急速な変換後は受動的に希釈されること(画像2c)、PGCでのゲノムインプリント消去も、PGCの細胞分裂速度の速さから考えて受動的脱メチル化を支持する意見が優勢になったのである(画像2c)。2002年に研究チームは胎仔期のPGCにおいてインプリント記憶の消去が起きる過程を世界で初めて検出することに成功した。インプリント消去途中のDNAメチル化パターンがモザイク状を示すことが能動的脱メチル化の関与を示唆する証拠であると考えられ(画像3)、受動的脱メチル化反応に対する阻害剤としてDNA複製阻害剤の「アフィディコリン」、能動的脱メチル化の阻害剤としてDNA塩基除去修復に働く「Poly(ADP-ribose)polymerase(PARP)阻害剤」の「3-AB」の2つの薬剤のPGCにおける脱メチル化における効果が生体において測定された。画像3は、PGCにおけるゲノムインプリントの消去に関するグラフとモザイク状メチル化パターン。胎仔から分離したPGCの「H19-DMR」の場合、PGCにおける脱メチル化は胎仔期9.5日目から11.5日目までにほぼ完了する。途中のメチル化パターンには、メチル化(黒丸)部分と非メチル化(白丸)部分が1本のDNA(左から右への一行)に混在したモザイク状模様が見られる。細胞分裂による希釈では説明できず、能動的脱メチル化の関与が示唆されるとした。その結果、どちらの薬剤も脱メチル化を阻害することから、両方の機構がこれに関係していることが判明した(画像4)。特に、DNA複製を止めた状態でも脱メチル化反応が進むことは(画像4)、生体内でのPGCのインプリント消去に能動的脱メチル化機構が積極的に関与することを物語っているという(画像2d)。画像4は、脱メチル化反応に対する阻害剤の効果を表したグラフ。胎仔期9.5日目から半日置きにDNA複製阻害剤または塩基除去修復阻害剤を母体に投与し11.25日目に胎仔から分離したPGCのH19-DMRのメチル化度が調べられた。コントロール(右)と比べて塩基除去修復阻害剤(中央)の高い阻害効果は能動的脱メチル化の証拠だとする。DNA複製阻害剤(左)も一部に阻害効果が見られたが、脱メチル化はかなり進行していることも能動的脱メチル化の関与を示唆するという。卵子形成では、インプリント消去の開始から短時間で、「減数分裂第一分裂」に入り、そこで個体の性成熟まで細胞分裂が停止する。完全に両親由来のインプリンティング記憶の消去(特に父親由来のインプリント記憶消去)がなされないと、次世代の子供の発生に重大な問題を生じると考えられるという(画像5)。その意味で、PGCにおける能動的脱メチル化は、ヒトを含めたほ乳類の個体発生において重要な役割を果たしているといえるとした。画像5は、能動的脱メチル化の生物学的意義を表した概念図。メスのPGCではゲノムインプリントの消去開始から減数分裂が開始されるまでの細胞分裂の回数は限られる。受動的脱メチル化だけでは幾つかの卵細胞にメチル化DNAが残り(細胞分裂3回ならば2/8、4回ならば2/16)、特に、父親型インプリントが残る場合は発生異常の原因となると考えられるという。よって、能動的脱メチル化はゲノムインプリントの完全な消去に必須の機構と考えられるとしている。今回の研究はゲノムインプリントの消去に能動的DNA脱メチル化が関与することを、生体内から分離したPGCを用いて明らかにすることに成功した形だ。今回の成果は、PGCにおける真の脱メチル化機構を明らかにしただけでなく、能動的DNA脱メチル化の卵子形成における重要性を示したことで、ほ乳類の生物学に重要な新局面を拓いたものといえるとしている。
2014年02月19日北海道大学(北大)は2月17日、チェコ・南ボヘミア大学との共同研究により、胚(受精卵)の一部を染色して観察すると、チョウザメの始原生殖細胞「PGC(Primordial germ cells)」はカエルと同様の機構で生み出されることが判明し、一方、この細胞をチョウザメとは異なる発生過程を示すキンギョの胚に移植したところ、キンギョの生殖腺へ移動する能力を持っていたことから、卵や精子の元となる細胞の形成や移動には種を越えた共通性があることが示されたと発表した。成果は、北大 北方生物圏フィールド科学センター 七飯淡水実験所の山羽悦郎 教授らの国際共同研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、日本時間2月6日付けで米オンライン科学誌「PLoS ONE」に掲載された。世界三大珍味「キャビア」を求めて乱獲されたため、チョウザメ天然魚は世界中で激減し、保護の対象となっているが、チョウザメはいわゆる古代魚、「生きた化石」とされ、進化を解明するうえで重要な材料としても知られている。現在、絶滅危惧種のチョウザメを復活させるため、チョウザメの配偶子(卵や精子)をほかの種で作らせる技術の開発が進められている。そのためには、配偶子の元となる細胞であるPGCの由来を明らかにしなければならないというわけだ。すべての生殖細胞の元になるPGCは、胚発生の早い段階で胚中に形成される。PGCは将来の生殖腺とは離れた領域で形成され、胚発生を通して生殖腺へと移動する性質を持つ。カエルなどの無尾両生類やゼブラフィッシュなどの魚類では、特定の細胞質(生殖細胞質)を受け継いだ細胞がPGCに分化することが知られているが、PGCが作られる胚の領域はそれぞれの種で大きく異なる。例えばカエルでは卵黄に富む胚の植物極側でPGCが形成され、ゼブラフィッシュでは胚の動物極側でPGCが形成されるという具合だ。その中間的なパターンを示す動物系統がいるのか、いるとしたらPGCはどのように発生するのか、そうした点はこれまで明らかにはなっていなかった。今回の研究対象であるチョウザメの胚発生パターンは、カエルによく似ていることが知られている。今回の研究では、生殖細胞質あるいはPGCだけを緑色蛍光で標識するようにデザインされたメッセンジャーRNAを極小のガラス針で発生過程の胚に顕微注入することで、チョウザメ胚のどの領域でPGCが形成され、どのように将来の生殖腺形成部位に移動するかが詳しく調べられた。さらに、PGCの移動機構が生物間で保存されているかどうかを調べるため、緑色蛍光で可視化したチョウザメのPGCを単離してキンギョ胚に移植し、その移動パターンが観察されたのである。その結果、まず明らかになったのが、チョウザメの生殖細胞はカエル胚と同じく植物極付近に分布しており、PGCはそれを取り込むことで植物極側で形成されるということ。つまり、チョウザメは魚類であるにも関わらず、カエルに似たPGCの形成パターンを示すことが判明したのである。ところが、生殖腺へと移動中のPGCをチョウザメ胚から取り出しキンギョ胚へと移植すると、チョウザメPGCはキンギョのPGCと同じ経路をたどり、キンギョの生殖腺に定着した。この結果は、見かけ上大きく異なるPGCの発生パターンを持つ遠縁の動物種間であっても、PGCの移動機構が機能的に保存されていることを示しているという。今回の研究により、その生殖細胞の元になる細胞の発生パターンが生物間でどのように変化するのか、不明であったミッシングリンクの1つが埋められた形だ。しかし、チョウザメはすべての種が絶滅危惧種に指定されている一方で、キャビアの需要は世界的に高まり続けているという現状もある。その一方で、キャビア(成熟したメスの生殖細胞)の元になる細胞であるPGCの性質や、その細胞がどのように生殖腺を形成するのかはまったく調べられてこなかったのも事実だ。今回の研究はチョウザメの生殖腺が発生する仕組みの基礎的な知見となるだけでなく、将来の生殖コントロールや効率的な養殖生産につながることが期待されるとしている。
2014年02月18日産業技術総合研究所(産総研)は2月17日、和光純薬工業 試薬事業部 試薬開発本部 ライフサイエンス研究所との共同研究により、移植用細胞に残存する未分化のヒトiPS細胞やヒトES細胞を、通常は廃棄する細胞培養液を用いて簡便に検出する技術を開発したと発表した。成果は、産総研 幹細胞工学研究センター 糖鎖レクチン工学研究チームの舘野浩章 主任研究員、同・平林淳 首席研究員兼研究チーム長、同・器官発生研究チームの小沼泰子 主任研究員、同・伊藤弓弦 研究チーム長らの共同研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、現地時間2月12日付けで英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。ヒトiPS/ES細胞は、いろいろな細胞に分化できる「多能性」と、分裂して自分と同じ性質の細胞を増やせる「自己複製能」を持つ。その2つの能力により、再生医療のための細胞材料として大きな期待が寄せられているところだ。ただし、ヒトiPS/ES細胞を用いた再生医療には大きな解決すべき課題もある。ヒトiPS/ES細胞から分化させることにより調製した移植用の細胞に、ヒトiPS/ES細胞が残存していると、それらが腫瘍を形成する危険性があるのだ。よって、患者の危険性を最小限にするためには、実際に移植治療を行う前に、移植用細胞にヒトiPS/ES細胞がどの程度残存しているかを品質検査することは必須だ。そのため、移植用細胞に残存するヒトiPS/ES細胞数を計測する技術の開発が求められていたのである。これまでのところ、「フローサイトメトリー法」や「qRT-PCR(Quantitative Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction:逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)法」などの技術があるが、それぞれに問題があった。フローサイトメトリー法は、溶液中に懸濁させた細胞の散乱光や蛍光を1個ずつ高速で測定する方法で、大量の細胞の性質を解析する際によく用いられる一般的手法である。もう1つのqRT-PCR法は、RNAを鋳型に逆転写を行い、生成されたcDNAをPCR法で増幅して、DNAの定量を行う方法で、調べたい遺伝子の量を定量的に解析する一般的手法だ。しかしこれらの従来技術では、せっかく作った移植用細胞の一部を破壊して検査に使用する必要があった。このような問題点を解決するために、細胞自体を用いずに、移植用細胞にわずかに混入するヒトiPS/ES細胞を簡便に検出する新たな技術の開発が求められていたのである。そうした要求の中で進められた今回の研究において見出されたのが、ヒトiPS/ES細胞に特徴的な「O型糖鎖」を持つ「ポドカリキシン(H3+ポドカリキシン)」が、さまざまな種類のヒトiPS/ES細胞から培養液中に分泌されているという点だ。なお糖鎖とは、単糖がつながることによりできた一群の化合物のことだが、糖同士だけでなく、タンパク質や脂質などとも複合体を形成し多様な分子を形成するのが特徴である。すべての細胞表面を高濃度に覆い、その構造は由来する生物、組織、細胞により異なることから「細胞の顔」とも呼ばれ、細胞や疾患を判別するためのマーカー(疾患診断や細胞同定のための指標)として有効だ。細胞と細胞の情報伝達を仲介することにより、さまざまな生命現象に関与することでも知られている。またO型糖鎖は糖タンパク質の糖鎖の内で、タンパク質の「セリン」または「スレオニン残基」に結合している糖鎖のことをいう。そしてポドカリキシンは、高度にO型糖鎖などで糖鎖修飾されているのが特徴の膜タンパク質の1種だ。ヒトiPS/ES細胞に発現するポドカリキシンは、ヒトiPS/ES細胞に特異的に存在する「Hタイプ3」というO型糖鎖を持っている。このポドカリキシンは腎臓などほかの組織にも存在するが、ヒトiPS/ES細胞に特徴的なH3+ポドカリキシンは、これまでの研究では通常の体細胞からは分泌されていないことがわかっている。つまり、培養液中のH3+ポドカリキシンを調べることで、細胞自体を使わずにヒトiPS/ES細胞を検出できるというわけだ(画像1)。通常、タンパク質は特有のアミノ酸配列を認識する抗体を用いて検出することが多いが、ポドカリキシンは多量のO型糖鎖で覆われた巨大な「ムチン」様タンパク質であるために、抗体を用いることはできなかった。そこで、H3+ポドカリキシンに多く存在する特徴的な糖鎖構造に着目し、そのO型糖鎖を認識する「レクチン」を2種類用いて検出する新しい「サンドイッチアッセイ」系による検出システムが考案されたのである(画像2)。なおムチンとは、動物の上皮細胞などから分泌される粘性物質のことだ。高度に糖鎖修飾された糖タンパク質であり、高い保水性と粘性を持つ。そしてレクチンとは、糖鎖に結合するタンパク質の総称で、ヒトからウイルスまですべての生物に存在する。糖鎖に結合することにより、さまざまな生命現象に深く関与していることが明らかになってきた。またサンドイッチアッセイとは、ある特定の分子を2種類の検出分子でサンドイッチ(挟み込む)することにより検出する方法の総称だ。2種類の抗体を検出分子として用いる抗体-抗体サンドイッチアッセイが一般的であり、疾患を診断する際によく用いられる。今回開発された検出システムの詳細な方法は以下の通りだ。H3+ポドカリキシンを認識する「rBC2LCN」を判別試薬として固定化した反応容器を準備する。なお、rBC2LCNとは、グラム陰性菌「Burkholderia cenocepacia」由来のレクチン「BC2L-C」のN末端ドメインの組み換えタンパク質のことだ。未分化なiPS/ES細胞と反応するものの、分化した体細胞とはまったく反応しないため、未分化なヒトiPS細胞を検出するための検出試薬として有効である。1滴(50μL)の細胞培養液を反応容器に入れ1時間反応させてH3+ポドカリキシンを吸着させる。洗浄して細胞培養液を除いた後、rBC2LCNとは別のO型糖鎖を認識する酵素標識「rABA」を、反応容器に吸着したH3+ポドカリキシンと1時間反応させる。rABAは、キノコ「Agaricus bisporus」由来レクチン「ABA」の組み換えタンパク質に酵素「ペルオキシダーゼ」を標識したもの。基質を加えると濃い青色を呈する。酵素標識rABAを発色させ、その発色強度を測定して、H3+ポドカリキシン量を決定する。H3+ポドカリキシン量から、H3+ポドカリキシンを分泌したヒトiPS/ES細胞数を算出する。今回開発された検出システムのポイントは、第1にrBC2LCNを判別試薬として用いてヒトiPS/ES細胞から分泌されるH3+ポドカリキシンだけを選択的に反応容器に吸着させること、そして、第2に1分子のH3+ポドカリキシン上に100個以上あると予測される構造のO型糖鎖を認識するrABAを検出試薬とすることで、1分子のH3+ポドカリキシンに多くの酵素を付着させて高感度検出を実現したことの2点点だ。すなわち2種類のレクチンを用いることで、選択性と高感度を両立させたのである。今回の検出システムを用いると、多数の検体を3時間以下という迅速さで検査することが可能だという。また、10mLの培養液で1000万個の細胞を培養している場合、5000個(0.05%)以上のヒトiPS/ES細胞の検出ができるとした。移植用細胞中のヒトiPS/ES細胞の混入率を測定できるため、ヒトiPS/ES細胞を用いた再生医療の安全性評価法として期待できるとしている。今後は、今回の技術を実際の再生医療に用いるヒトiPS/ES細胞由来の移植用細胞の安全性評価に利用し、ヒトiPS/ES細胞を用いた再生医療の促進に貢献していくという。また今回の技術の感度と定量性をさらに向上させると共に臨床検査機器を開発し、再生医療分野に広く普及させていく予定としている。
2014年02月18日京都大学は1月30日、すい臓の「ランゲルハンス島(すい島)」において、血糖値を下げる効果のある唯一のホルモンである「インスリン」分泌における重要因子である細胞内ATP(アデノシン三リン酸)濃度と、カルシウムイオン濃度の動態を同時に可視化することに成功し、インスリンを分泌する細胞は血糖値(血中ブドウ糖濃度)の変化に伴った細胞内ATP濃度の変化を鋭敏に感知することにより、インスリン分泌を制御していることSを明らかにしたと発表した。成果は、京大 白眉センターの今村博臣特定准教授、同・大学院 生命科学研究科の垣塚彰 教授、同・大学院 医学研究科の稲垣暢也 教授らの共同研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、1月24日付けで米生化学・分子生物学会の学術誌「The Journal of Biological Chemistry」に掲載された。食事後に血糖値が上がると、ランゲルハンス島の大部分を占めるβ細胞がそれを感知してインスリンを分泌し、肝臓や筋肉などに作用し、これらの組織において血中のグルコースの取り込みを促進し、結果として血糖値を下げる。β細胞からのインスリン分泌がうまく行かなくなると糖尿病となるため、インスリン分泌の仕組みを理解することは糖尿病の予防や治療を考える上でとても重要だ。これまでの研究によって、ブドウ糖が細胞内で分解された時に作られるATPがインスリン分泌の直接の引き金である細胞内カルシウムイオン濃度を制御する重要因子であると予想されていた。しかし、実際にATP濃度がβ細胞内でどのように変化するのか、そしてカルシウムイオン濃度の複雑なパターンの形成に関与しているかは不明だったのである。今村特定准教授らは、以前に開発していたATP濃度に応答して蛍光色が変化するバイオセンサをマウスより単離したすい島の細胞内に導入して蛍光顕微鏡でイメージングすることにより、生きたすい島細胞内のATP濃度の変化をリアルタイムに追跡する方法を確立した。また、同じ細胞に蛍光のカルシウム指示薬を導入することによって、インスリン分泌の直接の引き金である、すい島細胞内カルシウムイオン濃度も同時に測定。この測定系を用いて、さまざまな条件ですい島細胞内のATP濃度とカルシウムイオン濃度が変化する様子が調べられた。その結果、ブドウ糖濃度が上昇することによって急速に細胞内ATP濃度の上昇が引き起こされることが実際に確かめられ、このATP濃度の上昇が初期のカルシウムイオンの濃度上昇に必要かつ十分であることも実験的に示されたのである。一方で、ブドウ糖刺激後しばらくしてから生じるカルシウムイオン濃度の振動期においては、ATP濃度の明瞭な振動は起こらず、ATPが高い濃度で保たれていることがカルシウム振動の維持に必要であることを示す新たな知見が得られたという。糖尿病になることで、すい島細胞内におけるATPとカルシウムイオンの動態がどのように変化するかを詳細に調べることによって、糖尿病が発症する仕組みの解明や新たな治療戦略につながると期待されるとした。
2014年02月06日東京大学分子細胞生物学研究所(IMCB)は1月23日、幹細胞マーカー「Lgr5」が、ほとんどのヒト大腸がんで多量に発現していること、そして大腸がんが腫瘍を作るために極めて重要な役割を果たしていることを見出したと発表した。成果は、IMCBの秋山徹教授、同・川崎善博講師らの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、1月23日付けで英オンライン科学誌「Nature Communications」に掲載された。最近の再生医学や幹細胞研究の飛躍的な進歩によって、腸管では「腸管幹細胞」が自己複製すると同時に分化して腸管を形成する機構が解き明かされてきている。このような研究で重要な役割を果たしているのは、幹細胞に多く発現し、幹細胞を特定するための目印の「幹細胞マーカー」となるいくつかの分子だ。Lgr5も腸管幹細胞マーカーの1種で、さまざまな研究に利用されており、また、腸管幹細胞の機能に重要な役割を果たしていることが示されている。なお、Lgr5は「7回膜貫通型タンパク質」の1種で、細胞膜を7回貫通する特徴的な構造を持つタンパク質だ。細胞外の因子を受け取り、細胞内に伝える役割を持つ。一方でがん研究にも幹細胞という概念が導入され、腫瘍を形成しているがん細胞は一様でなく、一部の「がん幹細胞」と呼ばれる細胞のみが強い造腫瘍性を持つこと、さらに、がん幹細胞は、自己複製すると同時に、造腫瘍性の低下したがん細胞に異分化して増殖すると考えられるようになってきた。化学療法や放射線治療によって一時的にがんが退縮しても再発してくるのは、大部分の造腫瘍能の低下したがん細胞が死滅しても一部のがん幹細胞が生き残っている可能性が示唆される。従って、がん細胞における幹細胞性の重要性を明らかにすることは現在のがん研究の最も重要な課題の1つだ。そこで研究チームは今回、幹細胞マーカー「Lgr5」に注目。ほとんどのヒト大腸がんで多量に発現していること、そして大腸がんが腫瘍を作るために極めて重要な役割を果たしていることを見出したのである。例えば、特定の遺伝子の発現を抑えることができる「siRNA」(短いRNA配列)を用いて大腸がん細胞のLgr5の発現を抑制すると、胸腺を欠くため免疫機能が働かないマウス(ヌードマウス)で腫瘍を作る能力が顕著に低下することが明らかになった。一般に、腫瘍を作る能力が低下したがん細胞は、シャーレの中での増殖能が低下したり、細胞死を起こしたりすることがよく知られている。しかし、Lgr5の発現が低下した大腸がんの細胞はこのような性質を示さなかったという。従って、Lgr5の幹細胞性に関わる機能が造腫瘍性に重要である可能性があると示唆されたというわけだ。それでは、なぜLgr5は大腸がん細胞で多量に発現しているのかという点にも研究チームは迫り、大腸がん細胞では転写因子の1種「GATA6」が大量に発現しており、直接Lgr5の転写を活性化していることを見出した。なお転写因子とは、DNAの特定の塩基配列に結合して、遺伝子の発現を調節するタンパク質の総称のことをいう。またその後の解析によれば、大腸がんの細胞ではsiRNAの1種「miR-363」の発現が低下していることがわかり、大腸がんにおけるGATA6とLgr5の大量発現はmiR-363の発現の低下によるものと示唆されたという。miR-363はGATA6の発現を抑制する働きがあるが、発現が低下しているためにGATA6の発現が増加しているという仕組みだ(画像)。今回の成果は、細胞内におけるmiR-363、GATA6、Lgr5の3分子による情報伝達の仕組みががんの分子標的薬を創製する上で重要な標的となることを示唆しているという。今回の研究の成果により、今後、この仕組みを標的とした薬剤が開発され、大腸がんの治療に貢献することが期待されるとした。
2014年01月29日京都大学は10月18日、体細胞からiPS細胞へと初期化する過程で、RNAを切り貼りする「スプライシングパターン」も初期化されることを明らかにしたと発表した。 成果は、京大 iPS細胞研究所(CiRA)/生命科学研究科大学院生の太田翔氏、同・生命科学研究科の西田栄介教授(科学技術振興機構 CREST)、同・CiRA所長の山中伸弥教授(物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)、グラッドストーン研究所)、同・CiRA/iCeMSの山本拓也助教、らの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、米国東部時間10月17日付けで米科学誌「Cell Reports」のオンライン版に掲載された。 一般的な真核生物のDNAから転写されたメッセンジャーRNA(mRNA)前駆体には、「イントロン」と呼ばれる直接タンパク質のアミノ酸配列に関わらない領域がある。このイントロンを除き、残った「エクソン」と呼ばれる領域からなるmRNAが作られる過程はスプライシングと呼ばれる。 そして、1つの遺伝子から複数のタンパク質を作る仕組みの1つが「選択的スプライシング」だ。同じDNAを参照していても、必要とするエクソンと必要としないイントロンの領域が異なることで設計図として変化し、複数種類のタンパク質を作れるのである。この仕組みによりタンパク質の種類は豊富になり、より複雑で柔軟性のある仕組みを作ることができるというわけだ。 また、多能性と無限増殖性を持った細胞であるES細胞では、同細胞に特徴的なスプライシングが行われていることが報告されている。分化した細胞にはそれぞれ特徴的なスプライシングのパターンがあり、各細胞に固有の機能や特性を生み出しており、細胞を特徴付ける大きな要因であるのだ。 しかしその一方で、スプライシングの仕組みには、パターンを間違える可能性という危険性があるのはいうまでもない。スプライシングパターンを誤ると、当然のことながら間違えたタンパク質ができてしまったり、そもそもタンパク質そのものができなかったりすることもある。よって、スプライシングパターンが変わってしまうことで生じる疾患も多数報告されているというわけだ。 分化した細胞に、俗に「山中因子」と呼ばれる4つの初期化因子(「Oct3/4」、「Sox2」、「Klf4」、「c-Myc」)を導入するとiPS細胞への初期化が行われるが、その過程でスプライシングパターンも変化しているのかどうかは明らかにはされていなかった。もし、スプライシングパターンが変化しなければ、同じiPS細胞であっても由来細胞によって大きく性質の異なるiPS細胞になる可能性が考えられるというわけだ。そこで研究チームは、大規模遺伝子解析の技術を用いて体細胞とiPS/ES細胞のスプライシングパターンを解析することにしたのである。 初期化前後でのスプライシングの違いについて調べるために、線維芽細胞、ES細胞、線維芽細胞から樹立したiPS細胞それぞれのmRNA配列の解析が実施された。すると、線維芽細胞のスプライシングパターンがiPS/ES細胞に特徴的なスプライシングパターンへと変わったことがわかった(画像1)。選択的スプライシングにはさまざまなタイプがあるが、ここでは「スキップド・エクソン」(A-B-CとA-Cという2つの選択、エクソンBを飛ばすかどうか)についての解析が行われた。画像1のスプライシングパターンの解析結果では、線維芽細胞(MEF)から作製したiPS細胞は、MEFとは大きく異なり、ES細胞と似たスプライシングパターンを示したのである。 特徴的なスプライシングパターンを決めているメカニズムは、RNAに結合するタンパク質が制御していると考えられるという。そこでRNA結合タンパク質の中から、特にiPS/ES細胞で特異的に働いているタンパク質を作る遺伝子92種が選ばれ、それらの遺伝子がRNA干渉法により1つ1つ働かないようにされた結果、9種類のRNA結合タンパク質がスプライシングパターンに影響を与えることが判明したのである。 これらのタンパク質が働かないようにした結果、2種類のタンパク質「U2af1」と「Srsf3」がそれぞれ働かない場合に、iPS細胞ができる効率は低下することが確認された(画像2)。画像2はU2af1およびSrsf3を働かなくした細胞での初期化がわかるiPS細胞のコロニー(左)とシャーレ上のを占める面積を表したバーグラフ。 画像2中のAPは、アルカリフォスファターゼ(iPS細胞へと初期化されたことを確認する指標)。U2af1およびSrsf3の働きを阻害した場合には、iPS細胞のコロニー(紫色の点)の数が減少し(左)、シャーレ上を占める面積も減った(右)。shNCは、コントロール(遺伝子の働きに影響を与えないRNA)、shU2af1はU2af1を作れないようにするRNA、shSrsf3はSrsf3を作れないようにするRNA。#1、#2、#3はそれぞれ同じ内容で実験が行われた。 以上のことから、体細胞が初期化される際にU2af1とSrsf3がRNAスプライシングに影響を与えることによって、重要な役割を果たしていることが明らかとなったのである。 今回の研究では、選択的スプライシングについてゲノム全体で解析を行い、細胞が初期化される過程でスプライシングパターンやスプライシングを制御するメカニズムが変化していることが解明された。また、選択的なスプライシングの制御が細胞を初期化するメカニズムの一翼を担っており、多能性に重要な働きをしていることを示唆しているという。この成果から、iPS細胞はES細胞などと同様に多能性を持つスプライシングパターンへと体細胞のパターンから変化していることが明らかになった形だ。今回の成果を応用することで、iPS細胞の品質評価やiPS細胞作製時の効率や時間の改善などにも利用できる可能性が考えられるとしている。
2013年10月21日2012年も終わり。今年は暗いニュースだけでなく、東京スカイツリー開業やロンドン五輪でメダル獲得数が過去最多になったり、iPS細胞研究の山中伸弥さんがノーベル生理学・医学賞を受賞したりするなど、うれしいニュースもありました。震災から一年、笑いが少しずつ増えてきたのではないでしょうか。そこでその中立的な目線でテレビやお笑いを見つめ、分析・評論を行う「てれびのスキマ」さんに2012年お笑い界の総まとめ、2013年への展望を存分に語っていただきました。■2012年を振り返って――2012年、一番輝いていた芸人を挙げるなら誰でしょうか。やはり今年のMVP的活躍といえばバナナマンでしょう。設楽統の『ノンストップ!』、日村勇紀の『イロドリヒムラ』、そして生放送に設楽が間に合わないことがわかっているのにも関わらず異例のレギュラー抜擢となった『笑っていいとも!』と、バナナマンが文字通り「すごいこと」になっていましたね。――日村さんが結成当初に放った言葉「おれたち、すごいことになるぜ!」が現実に起きた年だと。そうですね。準レギュラーの『リンカーン』『ゴッドタン』『とんねるずのみなさんのおかげでした』などでも欠かせない存在でした。またあの有吉弘行をして「D(出川哲朗)の名を継ぐもの」と言わしめた狩野英孝の活躍も『アメトーーク!』の企画「出川と狩野」や「世界衝撃映像社」「狩野着ぐるみ接近ロケ」などを筆頭にその爆発力が目立ちました。ほかには、フットワークが軽くなったとんねるず(特に石橋貴明)、博多華丸・大吉、平成ノブシコブシ吉村、千鳥、バカリズムなども印象的です。――2012年、番組や番組内の企画といった観点ではいかがでしょうか。『アメトーーク!』の「どうした!?品川」と『テベ・コンヒーロ』の「コウメ太夫で笑ったら即芸人引退スペシャル」、はそれぞれ別アングルで芸人の業の魅力をあぶり出した素晴らしい企画で芸人観を豊かにするものでした。「どうした!?品川」は東野幸治によるプレゼンから本編、そしてその後も他番組に波及し度々ネタにされる部分も含め『アメトーーク!』の中でも最高傑作のひとつと言って過言ではないと思います。そんな中で、「コウメ太夫~」を放送した『テベ・コンヒーロ』と前身の『クイズ☆タレント名鑑』の終了は大きな挫折感を伴うものでした。――ほかにはいかがでしょうか。タモリ×さんまを1日限りとはいえ復活させたり、マンガ家・久保ミツロウやよしもと所属の女優で劇団員の伊藤修子など別ジャンルからの新たな人材を積極的に起用したりと、柔軟さが復活しつつあるような兆しのある『笑っていいとも!』がベースになった『FNS27時間テレビ』は、テレビっ子にとっては宝物のような番組でした。加えて、『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』の「田中破天荒(我が田中)」「なんやねん50人斬り」など今年に入ってから(特に上半期)のアナーキーっぷりは特筆すべきだと思います。■2013年の展望――2013年、どんなお笑いのスタイルが隆盛しそうですか。昨年のHi-Hiに引き続き、2012年もスギちゃん、バイきんぐなど苦節の長いベテラン若手に光が当たりました。このネタのレベルの高低よりも(もちろんネタの面白さは前提として)「人間」的な魅力の強さが重視される傾向は今後も続いていくのではないかと思います。またテレビでコントやネタがなかなかできない時代に、存在そのものをコントにした友近の演歌ひとすじ40周年の大物演歌歌手を演じたキャラクター「水谷千重子」という方法論は可能性と示唆に富んだものだったと思います。――では、芸人でいうと誰がブレイクする可能性がありますか。そうした「人間」的魅力の強さが重視される中で2012年後半ジワジワブレイクしつつあったずんの飯尾、そしてライブやラジオで独特で意欲的な活動をしているレイザーラモンRGは個人的にイチオシです。また『はねるのトびら』終了後、その呪縛から自由になったキングコング、ロバート、インパルスなどの元はねトび勢の動向も気になります。あとは有吉やオードリーがそろそろゴールデンまたは23時台あたりに冠のお笑い番組を持ってほしいなぁと期待してます。2013年はアンジャッシュやCOWCOWが結成20周年、ピースや東京03などが結成10周年。2012年に活躍を見せた芸人たちの、さらなる脂の乗った芸が見られることが期待されます。(取材・文=くわ山ともゆき)
2012年12月22日美容整形などを行う湘南美容外科クリニックは、全国の15歳から89歳までの男女1,400名(世代ごとに男女各100名)を対象に、「2012年、もっとも好感を抱いた言葉/嫌悪感を抱いた言葉」に関するアンケート調査を実施した。「2012年もっとも好感を抱いた言葉」のトップに選ばれたのは、日本の技術が世界的に証明された「IPS細胞」。続いて2位には、北島康介選手を思ったオリンピック水泳代表・松田丈志選手の「手ぶらで帰らせるわけにはいかない」だった。総合でのランキング入りは見逃したものの、「奇跡の一本松」も、熟年層の支持を集めたという。同社では、「日本の明るい未来を感じさせてくれるこれらの言葉が、単なる『流行語』と『好きな言葉』の違いではないだろうか」と分析している。「2012年もっとも嫌悪感を抱いた言葉」のトップに選ばれたのは、「生活保護不正受給」。男女を問わず、あらゆる年代からの反感を買っており、2位以下を大きく引き離す結果となった。2位以下には、「尖閣列島」「決められない政治」など、政治にまつわるキーワードが多く、2012年、日本国民は自国の政情に大きな不満を抱いていたことが読み取れる。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年12月12日SMBCコンサルティングは28日、「2012年のヒット商品番付」を発表した。その結果、東の横綱には京都大学の山中伸弥教授が研究している「iPS細胞(人工多能性幹細胞)」が、西の横綱には今年5月に開業した「東京スカイツリー」が、それぞれ選ばれた。東の横綱に選ばれた「iPS細胞」は、あらゆる細胞に分化が可能で、医学や創薬の新しい可能性に世界中から期待が寄せられている。山中伸弥教授は同細胞の研究により、ノーベル医学・生理学賞を受賞。発表から6年目での受賞はノーベル賞史上でもまれにみる速さで、研究界に与えたインパクトがスピード受賞の一因となったとみられる。西の横綱に選ばれた「東京スカイツリー」は、5月のオープン後、わずか5日間で来場者数113万2,000人を突破。2011年11月には世界一の高さを持つタワー(高さ634メートル)としてギネス認定を受けており、改めて日本の技術力の高さを示した。このほかの番付は、東の大関「東京駅」、関脇「タブレットPC」、小結「マルちゃん正麺」、前頭1「ロンドン五輪」、前頭2「フィットカット カーブ」、前頭3「ノンアルコール飲料」、前頭4「街コン」、前頭5「さくら色LED照明」、前頭6「きゃりーぱみゅぱみゅ」。一方、西の大関は該当なしとなったが、関脇「LCC」、小結「小型ハイブリッドカー『AQUA』」、前頭1「天体ショー」、前頭2「低価格機能性メガネ」、前頭3「塩こうじ」、前頭4「新東名高速道路」、前頭5「レノアハピネス アロマジュエル」、前頭6「代官山 蔦屋書店」となった。東の小結「マルちゃん正麺」は殊勲賞も受賞。東洋水産が2011年11月に発売した同商品は、5個セット525円とインスタントラーメンとしては高価格の設定ながら、発売後1年間の累計出荷数が2億食を突破。この大ヒットを受け、他メーカーも追随して同様の商品を売り出すなど、新たなブームの火付け役となった。技能賞を受賞したのは東の前頭2「フィットカット カーブ」。同商品は、プラスが発売した家庭用ハサミで、丸くカーブしている新開発の刃形状により、切りにくい厚紙なども軽い力で切ることができるという。ハサミ市場は年間100万本売れれば大ヒットとされる中、発売後約5カ月で大台を突破した。敢闘賞は西の前頭2「低価格機能性メガネ」が受賞。今年は機能性メガネの中でも、長時間のパソコン作業から目を保護するPC用メガネが人気を集めた。ブームの牽引役となったジェイアイエヌの「JINS PC」をはじめ、インターメスティックの「Zoff PC」など各社から様々な商品が発売された。SMBCコンサルティングは、2012年は爆発的なヒット商品は限られたものの、既存商品に新たな視点を加えることで話題や注目を集めたものが多く、日本の「底力」を感じた1年だったと分析している。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年11月29日ハーバード大が成功、正式発表へさまざまな種類の細胞へ変化させられる人間の新型万能細胞として注目されているiPS細胞。難しいことはわからなくても、名前くらいは聞いたことがあるのではないだろうか。このiPS細胞から、脂肪を燃やす働きのある褐色脂肪細胞を人工的に作り出すことに、米ハーバード大学などが成功したそうだ。この成功報告は、15日付の科学誌Nature cell biology電子版に正式発表された。肥満を効率よく解消する、治療への応用が期待される成果だ。将来は美容技術にも活かされるかも脂肪細胞には、脂肪を燃焼させる働きのある褐色脂肪細胞と、脂肪を蓄える性質のある白色脂肪細胞の2種類が存在する。このうち、万能細胞の一種であるES細胞では、これまで白色脂肪細胞に変化させることはできても、褐色脂肪細胞に変えることができていなかった。研究チームが、iPS細胞から変化させた褐色脂肪細胞をマウスに移植したところ、もともとの脂肪細胞同様、問題なく定着したという。今後、肥満症の治療を中心に利用が期待されている。肥満症とまではいかなくとも、脂肪を燃やす働きがあるとなると、美容面からも気になるところ。将来はよりひろく活用される技術となるかもしれない。元の記事を読む
2012年01月17日