自然と向き合うヴォールト天井の家 植物や虫や動物たちと境界なく暮らす
土の深さはいちばん薄いところで200㎜、厚いところで900㎜と大きな差がある。
2階の四周につくられた庭でも植物が育っている。
内外を隔てるのはガラス戸1枚のみ。
土を深くする
そして地上レベルだけでなく2階と屋上にも庭をつくる際にクリアしないといけない問題が“水”だった。この問題に対処するのにヴォールトが大きく関係してくる。通常の庭であれば雨が降ればそれはまた大地へと戻っていくが、建築は大地の上に建つことでその循環を断ち切ってしまう。しかし、うまく循環させるような建ち方はないかと考えたところでヴォールトを利用することになった。「雨が降ったら山から谷へと流れていくようにヴォールトのカーヴに沿って水が下へと流れていく。それをコンクリートでやってみたんです」
ヴォールトの“谷”は深いところで900㎜ある。ここまでの厚みを取ったのには意味があるという。
「人間にとっても動物や虫にとっても、生物が居心地がいい居場所にするためには土が深いということがとても重要です。植物であれば地被だけではなくて、低木や中木までを含めて多種多様な植物が生息できる可能性が一気にぐっとあがるんです」。屋上に上がると建物の上にいることを忘れてしまうほどに多様な植物が生い茂っていて「ぎりぎりでも大地と呼べる環境ができたらいいなと思った」