2017年7月13日 21:15
31歳、このまま寂しい人生はイヤ|12星座連載小説#118~獅子座10話~
「……で、どうなのよ?」
『どうって……』
「もう! 分かってるくせに。あなたのハートを奪った“誰かさん”についてよ」
『………』
黙って、カクテルを一口飲む。苦味と酸味が一気に口の中に広がる。
『まぁ、その、話していて楽しい人だったかな』
「へぇ~、真利子がねぇ。珍しい。いつものあなたなら、“くっだらないことばっか言ってくる男がいたから、言い負かしてやったわよ!”なんて言ってるのにね」
『そんなこともないわよ』
「もう、急にしおらしくなっちゃって」
尾田ちゃんが泡の弾ける炭酸カクテルに口をつけながら、聞いてくる。
「で、どんな人なの? その人。真利子のお眼鏡にかなうなんて、なかなかじゃない」
『いや、別に、身長も低いし、これと言って特徴もない、ただの―――』
言いかけて、そこから言葉が出なくなった。
そう、ただの男じゃないんだ。言葉ではうまく言い表せないけど、“特別な何か”を持った人。
「……ただの?」
『弁護士さん、かな』
「ヒュー! 弁護士なの!? やるじゃん、真利子!」
『ちょ、ちょっと……あんまり大きな声出さないでよ!』
「あっ、ごめん」
尾田ちゃんがペロリと舌を出す。