くらし情報『「男の欲」を受け入れる女|12星座連載小説#130~蠍座 10話~』

2017年8月1日 21:15

「男の欲」を受け入れる女|12星座連載小説#130~蠍座 10話~

「余計なことしないでよっ!」

縄でギツギツに縛られた彼女は、キッと私を睨みつけ、そう言い放った。

『え……?』

「私は、今、会長の寵愛を受けているの……! 私から望んでやってることに、あんたからどうこう言われる筋合いはないわ!」

―――ああ。もう全てが狂っているんだ

私はその時、思った。

“会長の欲”と“倫子の欲”。

……それらはグズグズになって癒着し、ひとつの醜い肉塊として、ここに在るのだ。

「……分かったかぁ! 帰れぃ!」

『会長!』

会長の最後の言葉と共に、黒服が私を囲む。勝ち誇ったような倫子の眼差し。

そうか。

最初から全てが狂っていたんだ。

これが“標準”ってこと。もしかしたら私も、狂っているのかもしれない。黒服に促され“人形部屋”から追い出される。
きっと今の私は、泣き笑いのような顔をしているのだろう……。

『あはは……』

マンションの廊下で、ひとり乾いた笑い声が響く。
「男の欲」を受け入れる女|12星座連載小説#130~蠍座 10話~


泣かない。
泣くもんか……。

泣けば、会長の思うツボ。

―――私は奥歯をギリと噛んで、エレベーターに乗りこんだ。

占いで出た“ストレングス”のカードが思い浮かぶ。
凛とした女性が、獅子を手懐けているあのカード。

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