2017年8月1日 21:15
「男の欲」を受け入れる女|12星座連載小説#130~蠍座 10話~
あの二人には信頼関係があるのだろう。
だから女と獅子として成立し得るのだ。
でも、私と会長との間には、初めから信頼関係などなかった。何もなかったんだ……。
狂気に愛は通用しない。初めから、私のしようとしていたことは、おこがましいことだったのだろう。
自分を納得させるかのように、あれこれ考えを巡らす。白昼夢を見ながら徘徊する病人のように、フラフラとエントランスを出る。
会長との食事。初めてお店を持たせてもらった時のこと。スイートルームで二人きりの夜。
これら全ては、高く持ち上げておいて一気に叩き落とすための、“会長のシナリオ”だったのだ。
私はそれを“ホンモノ”だと思い違いしていただけのこと。そう、誤解していただけのことなんだ。
新宿の夜は、いつまでも明るかった―――。
【今回の主役】
須藤由紀(絢芽) 蠍座30歳 クラブホステス
豊満な肉体を持つセクシーな女性。
貧しい幼少期を経て、自分の身体一つを武器に若い頃から水商売の世界でトップを取り続けてきた。さまざまな男性と情事を重ねる日々の中で、自分の生き方に疑問を感じ、男と女の化かし合いに疲れている。このまま、夜の世界の女帝となるか、それとも……。