2017年8月11日 21:15
「I understand. 」~私は理解する。~|12星座連載小説#138~射手座 最終話~
内腿についたキスマークをなぞる。
いつもの彼とは思えないくらいに、本能的で官能的で、野性的だった。
思い出すと、身体の芯がゾクゾクと疼く。やだ……。
“あの日”以来、私のクリスを見る目は大きく変わった。
それまで気がつかなかった、男らしさと感性。あの時、ガングロ男に言い放った“ドスの利いた声”……。
―――あれはきっと、お爺様譲りのものね。
クスっとなる。私は何も分かってなかったんだなぁ。
この世の中は、自分の知らないことで溢れている。一番身近にいるはずの彼のことだって、私は何も分かっていなかった。
でも……、
ひとつひとつ経験していくことでしか、そんなの分かんないじゃん。最初から、完璧に分かっていたら、それこそつまんない。
シャワーを止めて、バスローブに身を包む。髪を乾かして、後ろ髪をポニーテールに結ぶ。
リビングでは、クリスがオレンジジュースをグラスに注いでくれていた。
「サッパリしたかい?」
『ええ、とっても』
窓から見えるシチリアの太陽は、とても眩しく輝いていた―――
射手座の女の人生は、
“I understand.” ~私は理解する。~
ひとつひとつの経験から、生きていることの意味を体感し実感していく。