って、10日間も美術館を僕の撮影のために開けてくれた。こんな贅沢、後にも先にもきっともうないだろうな。
――館長はどんな方なんですか?
篠山:80代の男性で。そういえば、毎日撮影を見に来て、僕の横にぴたっとくっついてたのは、僕を監視してたのか…?いや、たぶんレンズの先の女の子を見てたに違いない(笑)。いや、とにかく、すごく懐の深い方ですよ。写真って、カメラの前のものを写すということではなくて、被写体が存在する場のありさま、空気、雰囲気を撮るものだと思うんです。だから僕にとって、“場”っていうのは本当に大事なもの。そういう意味で原美術館は、本当に“撮りたい!”という気持ちにさせてくれる場なんです。
10日間、飽きるどころかアイデアがどんどん湧いてきてしまって、終わりが近づくほどに、もっと撮りたい気分になりましたね。素晴らしいでしょ。
――空間の持つ力、すごいですね。
篠山:いや、それは私の才能の力です。
――そうでした!大変失礼いたしました(笑)。
篠山:んなことない(笑)。冗談冗談。
――それにしても、確かに篠山さんといえばヌードのイメージはありますが、なぜ今回、この空間でヌードを撮ろうと?
篠山:僕が撮りたいと思ったことを直截に表現できるのは、何も身に着けていない身体なんです。