「苦しみの中にある現在の精神科医療にスポットライトを」名匠が見た医療の奇跡
患者は「病気」という枠に閉じ込められておらず、ちゃんとした「人」として見られています。個性的で他人とは違うものを持ってはいますが、それを“異常な人”とジャッジされることがないので、ありのままでいられるのです。
そしてスタッフたちは、彼らを孤独から引っ張り出し、世界とつなげる手助けもしてくれます。アダマン号というのは、そういう思想を持った場所なのです。
―素晴らしいですね。ただ、そのいっぽうで精神科医療の厳しい現状に対しては危機感も抱いているとか。
監督特に財政的な問題や人手不足など、いろんな要因が重なって公的な精神科医療の状況は悪化しています。スタッフたちはやる気を失ってしまうような環境で仕事をしているので、患者の声に耳を傾ける余裕も、ワークショップを開く時間も持てなくなっているほど。
本当にたくさんの問題がありますが、それが本作を撮る動機にもなりました。
精神疾患を抱えている人たちへの考え方を変えるべき
―実際に彼らの活動を間近でご覧になって、監督の考えに影響を与えたことはありましたか?
監督まずは、精神疾患を抱えている人たちに対する、私たち自身の考え方を革命的に変えるところから始めるべきだと感じるようになりました。