ドラマ化記念、原作者よしながふみが語る『きのう何食べた?』
あと実際に作ってくださる方が、同じタイミングで同じことを感じられるように、加熱しているときのにおいとか、見た目が変わる瞬間なども、なるべく盛り込むようにしています。お料理って、科学実験的な楽しさもあると思うので。
続けてきたからリアルに感じる、登場人物のお悩み
©️きのう何食べた?製作委員会
これだけ長く連載が続くと、登場人物にもいろんな変化がありますよね。親との関係だったり、老いの問題だったり、結婚や離婚など、生きていれば起こりうるようなことも描きたかったテーマのひとつです。だけどそればっかりは描きたくなかったというか、スパイスみたいにピリッと感じられるくらいの分量でいいんだよね、と思っていました。
たとえば週に1回病院に通わなくちゃいけなかったり、ゲイじゃなくても親とうまくいっていないような人は、たくさんいますよね。そういう人たちも仕事をしたり、ごはんを食べたりなど普通の日常を送っていて、四六時中、気が重いことばかりを考えているわけではない。逆に大した情報量じゃなくても、ごはんを食べているときに少しだけ登場人物の悩みが開示されたりすると、だからあのときああだったんだって、ちょっとしたミステリーを味わえたような気分になれますよね。