【インタビュー】樹木希林が、是枝監督の想像を超えた瞬間! 「孫がいたからできたシーン」
樹木:へぇ…。
是枝監督:それは、希林さんもそうなのか…あの映画の中のおばあちゃんもウッときてるんだよね。「こんな風にセリフが立つのか!」と思いました。孫はどこかでそれを信じたくて、でもおばあちゃんはそんなこと起きないってわかってる。でも、そのズレを孫に気づかせちゃいけないと思ってて、そうやって互いに間接的に思いやっている様子がすごくよかった。
樹木:あれは孫のいる女優じゃなきゃできなかったかもしれないわね…。
是枝監督:ああいうこと、あるんでしょうね。そんなに深く考えていない孫のひと言にグッときちゃうことが。
――阿部さんが演じた良多は、これまでの是枝監督の作品の中でも、類を見ないほどのダメ男として突出しているように思います。監督の中でいつも以上に踏み込んだという意識は?
是枝監督:ギリギリまで攻めてみようかと。
樹木:ただ、私は「あそこまで」と特別なものとは感じなかったわね。もっとすごい人を周りでいっぱい見てきたし…。
是枝監督:いろんなことを時代のせいにして、背中を丸めながら生きてる男。
――ただ、そこまで特別な悪い男という思いは…
是枝監督:なかったかな…。ひとつひとつの行動を撮りだすと、息子としても、父親としても、夫としても弟としてもダメなんだけど…。