自分らしく“生きる”とは? 性を切り口に人間の本質に迫る注目作
抗いがたい欲望に突き動かされた2人は、それぞれに葛藤を抱えながらも、“身体の言い分”と称してその衝動に身を委ねていく。
壊れゆく世界の中で、閉鎖された濃密な空間に留まり続ける2人。大きな世界の事情が小さな個人の事情とぶつかりせめぎ合うという滑稽でアナーキーな状況が、強烈な余韻となって本作をより輝かせていることは間違いないだろう。
「どう生きるべきか」という根源的な問い
その一方で黒々と口を開けた神々しくも禍々しい火口のビジュアルや、幻想的な西馬音内盆踊りの風景など、本作にはそこはかとなく「死」の薫りが漂う。
そして否が応でも浮かび上がってくる「世界が終わる時、誰と何をして過ごしますか?」という主題。本作はただひたすらに体を重ねる2人の姿を通じて、「どう生きるべきか」という根源的な問いを観る者に投げかけてくるのだ。男の女のエロティシズムをリアルに描く監督・荒井晴彦
メガホンをとったのは、暴力的な性愛の継承をテーマとする菅田将暉主演作『共喰い』(2013年)や、女へと目覚めていく少女を追った池松壮亮出演作『海を感じる時』(2014年)など、男と女のエロティシズムをテーマとする脚本を多数手掛け、キネマ旬報脚本賞に5度輝いた荒井監督。