【インタビュー】柄本佑、“映画”という大きな世界を変幻自在に泳ぐ
「原作の小説だと賢治が40歳くらいで直子が30代半ばくらい。明らかに僕らが演じるには若いんですよね。ただ原作通りの年代で映像にしたらもっとディープでどろどろした感じになっていたと思うんです。原作は男と女がある一つの何かを超えて、一周回って子供に戻って素直になるというイメージでした。原作よりも若い僕らがやることで、ある種の抜けの良さみたいな、青春性みたいなものが増したのかな、という気がします」
そう話す柄本さんが最も「賢治らしい」と思ったというのが冒頭、賢治と直子の再会直後のシーンだ。
「最初に直子が『ピアスどうしたの?』と言うと『なんとなく』、『その頭は?』『なんとなく』って。『何か悪さでもしたんじゃないの?』と言われて、『自分の自由にできるのが髪の毛だけってのも悲しいよな』って。このセリフが印象に残っているんですよね。
賢治という人間を表しているなと思ったんです。“ああ、コイツは髪の毛しか自由にできないと思ってるんだ”って(笑)。それくらい覇気がないのか、って。このときの賢治の精神状態が分かるなぁと思ったんですよね」
そんなダメ男・賢治を丸ごと包み込み、グイッと引っ張る直子。本作には最初から最後まで賢治と直子の2人しか登場しない。