くらし情報『『ミッドサマー』と『ヘレディタリー』の深い繋がり―「絶望の叫び」と「疎ましさ」からアリ・アスター作品を読み解く』

2020年3月3日 18:00

『ミッドサマー』と『ヘレディタリー』の深い繋がり―「絶望の叫び」と「疎ましさ」からアリ・アスター作品を読み解く

Photo by cinemacafe.net

《text:宇野維正》

※本記事は、映画の重要な展開について触れています。必ずご鑑賞後にお読みください。

アリ・アスター作品における“絶望の叫び”の意味

「アアアアアアアアアアアアアアア」。アリ・アスターの作品からは、他のどんなスリラー映画やホラー映画の叫び声とも違う、同じ音階のまま異様に長く引き伸ばされた、この世のものとは思えないような絶望の叫びが聞こえてくる。長編デビュー作となった前作『ヘレディタリー/継承』(2018年)の中盤でその叫びを上げるのは、筆舌しがたいほど無残な事故で娘を失った時の母親だったが、それは『Munchausen』(2013年)を筆頭とする初期短編においても特徴的な、これまでのアリ・アスター作品のシグネチャー(署名)である。そして、彼の作品の恐ろしいところは、その叫びの先にさらなる「本当の地獄」が待ち受けていることだ。アリ・アスター作品における絶望の叫びは、いわばその幕開けを告げるファンファーレの役割を果たしている。

通常版でもその尺が147分(170分のディレクターズカット版も存在する)という、ホラー映画(ちなみにアリ・アスター監督自身は本作が「ホラー」

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