【映画と仕事 vol.9 後編】給与、ユニオン、英語力…衣装スタッフとして活躍する日本人が明かすNYエンタメ業界のお仕事事情
――そういう意味で、ユニオンの存在はすごくありがたいですね。
そうなんです。とはいえ、私もそうでしたけど、この仕事って「勉強して」なれるというものではないんですよね。じゃあ、アシスタントとして誰かの下に付いて、いろいろ経験すればいいかというとそういうものでもなくて、非ユニオンのアシスタントの立場だと、学べることって少ないんです。というのも、ユニオンのルールとして「アシスタントにさせてはいけない仕事」というのがリスト化されていて、アシスタントの立場だとできることが限られてしまうんです。自分で手を動かして、経験しないとできるようにならないことも多いので、最近は正直、仕事のできない若い子が増えていて、それはユニオンでも問題になっているんです。手縫いすら知らなかったり、ボタンのつけ方、アイロンのかけ方、洗濯の仕方から教えないといけなかったり。そういう講義の時間をユニオンで設けるべきだという議論もあります。
ちょっと話がそれますが、時代に合わせたユニオンの動きとして、人種差別の問題に関連して、積極的に有色人種の人を雇おうという動きもあるし、プロダクションからそれを言われることもあります。皮肉だなと思うのは、そういう動き・変化がある中でも、各部門のトップが集う会議に出ると、私以外はみんな白人で、アジア系どころかアフリカ系の人さえいなかったりもするんです。