日米デザイナー対談! 2人のデザイナーは鬼才ホン・サンスの世界をどう切り取ったのか?
今回の『小説家の映画』に関しては、モノクロで長回しを多用し、会話も多く、カットも少ないので、場面が限られています。そういう意味では楽なんですけど、その中からいかにこの2人が良い表情をしているところをチョイスするか? といった、なかなか伝わりづらい部分で努力はしていますが、最終的にできあがったデザインを見た人が肩に力が入らないようなものにしたいなと思いました。
『小説家の映画』日本版ポスター
――タイポグラフィに関しては今回、どのようなことを大切に?
若林:モノクロ作品であり、ある意味で「何も起こらない」映画なので、タイポグラフィも凝り過ぎず、一番シンプルでスタンダードなものを使いました。先ほども話しましたが「どうですか!」みたいな感じで見る人に訴えるようなものではないデザインを心がけました。
タイポグラフィに関しては、読ませるべきことを読ませないといけない――写真などが邪魔して文字が読めなくなってしまっては本末転倒なので、情報を伝えるためにきっちりと固めた上で、空いた部分で写真を処理するというやり方をしています。写真は僕自身が撮ったものではないですが、タイポグラフィは自分で考えて作り上げていく部分なので、ある意味、自分の“信念”みたいなものなんですね。