くらし情報『『君たちはどう生きるか』作品評 理屈を超越した「漫画映画」への回帰』

2023年7月21日 07:30

『君たちはどう生きるか』作品評 理屈を超越した「漫画映画」への回帰

宮崎監督は生来アニメーターであり、脚本家でも演出家でもない。映画制作は常に絵作りと一体である。本稿では「漫画映画」という観点から本作にアプローチしてみたい。

「描きたい」というアニメーターの衝動が最優先

少年が慣れない地で不思議な生き物に異界へと誘われ、異常な体験を通して成長を遂げ、元の世界へ帰還する。本作の骨子は御伽噺に通じる古典的ファンタジーそのものだ。入口と出口は定形であり、要諦は中盤の異界表現である。不可解・不条理に満ちた絢爛豪華なイメージの断片を「これでもか」と詰め込み、その総和で「成長した」と納得させる。個々の場面の分散的突出が、戯作的順列や脈絡を突き破り、動く画の特異な活力が押し寄せる。
この進行は、複雑な設定や物語のカタルシスを楽しむ「アニメ」よりも、プリミティブな「漫画映画」に近い。

「漫画映画」は元々即興的な短編からスタートしており、長編制作が開始されてからも、脚本よりも絵作りが先行する「骨子明快+末端肥大」型だった。かつてのディズニーも東映動画(現東映アニメーション)も、アニメーターたちが「イメージボード」に奇抜・滑稽・華麗なアイディアを描いて持ち寄り、そのリレーによって長編が形成されていた。

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