くらし情報『『君たちはどう生きるか』作品評 理屈を超越した「漫画映画」への回帰』

2023年7月21日 07:30

『君たちはどう生きるか』作品評 理屈を超越した「漫画映画」への回帰

Photo by cinemacafe.net


82歳となった宮崎駿監督の10年ぶりの新作『君たちはどう生きるか』が公開中だ。ネット上では連日様々な感想や推測が行き交っている。作中に登場する吉野源三郎の小説「君たちはどう生きるか」(1937年)、設定に共通点が多いジョン・コナリーの児童文学「失われたものたちの本」(2006年)、景観が似ているアルノルト・ベックリンの絵画『死の島』(1880年~1886年)など、様々な影響が語られており、多事争論の様相だ。それらの指摘も賛否の声もそれぞれ興味深く、一方向に評価が収斂されるより健全で新鮮だ。全ては鈴木敏夫プロデューサーの「事前宣伝・制作者側の情報発信なし」の破天荒な方針を貫いた成果と言える。

本作は鮮烈な火災シーンで幕を開け、主人公の少年・牧眞人の丁寧な日常描写を経て、幻想的な異界へと進む。以降は旅とも冒険ともおぼつかない迷宮の如きイメージが交錯する。そこに監督自身の生い立ちや戦中の栃木県宇都宮市への疎開経験、「宮崎航空機製作所」の工場長であった父、戦後病床に臥せていた母の面影などを見出すことも可能だが、本稿では触れない。


宮崎監督は自作を肯定的に語る際、度々「漫画映画」という用語を使用して来た。

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