くらし情報『『君たちはどう生きるか』作品評 理屈を超越した「漫画映画」への回帰』

2023年7月21日 07:30

『君たちはどう生きるか』作品評 理屈を超越した「漫画映画」への回帰

時に作品の統一感を破壊する個性的な断片まで混在し、それが本筋を食ってしまうほど強烈なインパクトを残しても良かった。トーキングアニマル(しゃべるマスコット)の活躍、歌と踊りのミュージカルシーンなどはその典型だ。脚本・演出主導の整合性や統一感よりも絵作りの総合力で勝負していたとも言える。それは数百人の分業による集団創作という制作工程にも適合していた。

過去の「漫画映画」と本作が大きく異なるのは、集団創作でありながら監督の個性が濃厚に反映されている点だ。「こういうシーンを描きたい」というアニメーターとしての衝動が最優先されている点は同じだ。

かつて宮崎監督はアニメーター志望の若者に向けて、以下のように記している。

「ある種の気分、かすかな情景の断片、なんであれ、それは君が心ひかれるもの、君が描きたいものでなくてはならない。
他人が面白がりそうなものではなく、自分自身がみたいものでなくてはならない」

(宮崎駿「発想からフィルムまで(1)」『月刊絵本別冊アニメーション』1979年7月号)

作品の中盤以降は、生と死・秩序と混乱・破滅と再生など寓意的詩的な「情景の断片」が錯綜する。それらは「漫画映画」

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