【インタビュー】黒沢清監督が語る、黒沢流・恐怖演出と映画『Chime』での挑戦
特に、怖い映画で使われる“音”については下手したら50年以上大きく変わっていないのではないでしょうか。もちろん、全く新しい怖さを追求している映画もあるのかもしれませんが、少なくとも僕はまだ観たことがありません。
――しかし『Chime』には多様な怖さが詰め込まれていますよね。個人的にゾクッとしたのは、料理教室でカメラが何かに憑りつかれたかのように激しく動き出す部分です。その先に映るものというよりも、カメラワーク自体に恐怖したのは新鮮な体験でした。こういうものは脚本段階から想定されているのでしょうか。
いえ、脚本段階ではそこまで具体的には考えていません。場合によりますが、多くはロケハンの中で決まっていきます。
というのも、脚本に「料理教室」と書いたとしても、どんな場所か全くわからないからです。撮影に際して実際の料理教室を使わせていただけることになり、自分の目で見て「ここで撮るんだったらこうしたら面白いかも」という発想が生まれてくる形です。やはり現物を見ないと、文字だけではほとんど何も浮かばないものです。
――主人公の妻が不自然なほどに大量の缶をしかも脈絡のないタイミングで捨てているシーンも鮮烈でしたが、あれはどういった発想から生まれたのでしょう。