【インタビュー】黒沢清監督が語る、黒沢流・恐怖演出と映画『Chime』での挑戦
料理教室は撮りようによってはすごく無機的で不気味だし、刃物が平気で置いてある怖い空間だなと感じ、脚本に反映させていきました。
ただ、実際に貸してくれるところは少ないんじゃないか、どこも貸してくれなかったら別の設定に書き直さざるを得ないかなと危惧もしていました。幸い、中野にある料理教室が内容も分かったうえで気軽に貸してくださって、有難かったです。
――となると、電車の音や光が急に入ってくるような不気味な演出は撮影地が決まったことで生まれたのですね。そうですね。中野の料理教室を見に行き、実際にやたらと電車が通るので劇中でもそうした設定にしました。最初から狙っていたわけではなく、ああいうことが雑然とした都会の真ん中で起こるのはなかなか良いなと思い、加えた形です。
――黒沢監督は以前、恐怖演出の方法論の一つで「タイミングをずらす」というお話をされていましたよね。
『Chime』にもそうした要素を随所に感じました。
何かが突然バーン!と起こる怖さよりも、「何かが起こりそうな感じがするけれどこれは怖いんだろうか?」と観ている人が判断できないような間(ま)は、上手くやると1番怖いのではないかと考えています。