女の節目~人生の選択 (3) vol.3「初めての、恋」【4歳】
Kくんたちが無言で絵本を片付けようとする姿を見て、私はままごと女子の一員として、どうにも我慢ならなかった。
細かな経緯は忘れたが、気がついたらガキ大将の一派に殴り込みをかけて宣戦布告していたのだ。「貴様たちが所構わずドンパチ始めるせいで、我々のままごとスペースが蹂躙され、結果、Kくんたち罪もない人々までもが苦しめられている。これは教室内に平和を取り戻すための戦争である」というのがその理屈。
愛する人が心穏やかに暮らす日常、その未来は私が守る。たとえこの手が血に染まっても構わない。それに、災厄を退ける勇猛果敢な姿を見れば、もしかしたらKくんが「かっこいい」私に惚れて、晴れて相思相愛になれるかもしれない。……当時は本気でそう思っていたのだ。
我ながら、ルーシーとペパーミント・パティを足して二で割ったような、厄介な恋する女児だったと思う。
もちろん園児のやることだから、最終的には好戦的な男女が入り乱れて、プロレスどころではない掴み合いの大乱闘。先生が仲裁に入る頃には、教室の隅で震えるKくんが私を見る目は、野獣に怯える小動物のそれになっていた。
○私は最低、あなたは最高
「三つ子の魂百まで」