女の節目~人生の選択 (3) vol.3「初めての、恋」【4歳】
という諺がある。誰かに恋愛感情を抱いたとき、それがうまくいかなくなったとき、私はいつもこの諺を思い出す。狼狽と恐怖に顔を引きつらせた男。ためいき一つ残して去っていった男。「君には僕よりもっとふさわしい相手がいるはずだよ」と慰めてくれた男。Kくんに似たいろんな男を好きになり、彼らのように生きたい、彼らに似合う私でありたい、と思って行動してきたのに、どれもこれも実を結ばなかった。
私がジュリーを好きになったように、彼らにも、私のことを好きになってもらいたかった。でも、その方法がわからなかった。
好きでもないガキ大将の襟首を掴むことは簡単なのに、静かに絵本を読む彼らの眼鏡には、指一本、触れられなかった。私の汚れた手で乱暴に触ると、美しい彼らの存在が、はらはらと壊れてしまうかもしれないと思ったから。外に出て真っ黒に灼けるまで遊び、裏山の池で泥まみれになってザリガニを釣り、昆虫を捕まえようとして叩き潰し、時にガキ大将と掴み合いの喧嘩をしながら、私は「綺麗な男の子」が好きだった。Kくんだけは、真っ白のまま、穢したくないと思っていた。彼と、彼の住む世界にだけは、きちんとこの手を石鹸で洗って殺菌消毒してからでないと、触れてはならないと思っていた。