2014年11月21日 12:55
女の節目~人生の選択 (6) vol.6「初めての、犯罪」【11歳】
くらいだった。実際の電話口に出るのは仲間内で一番大人っぽい声の子だが、私はその人物設定を練り上げる係として重宝された。「駅での待ち合わせ」に誘い出すなら「クリスマス・エクスプレス」のCMみたいな美少女がいい。もう少し不良っぽく話したほうがエロい。大人向けの小説や漫画を貪り読んでいた私は、男心をそそるリアルな「少女」像を作り出すのに熱中した。
我々は、小学生にしてすでに「女」である自分に価値があることを、それがもう数年後、女子高生や女子大生になったときに最高値をマークすることを、ちゃんとわかっていた。冴えない男を往来でビンタしたり、熱烈なプロポーズをこっぴどく拒絶したり、出世街道やお立ち台や玉の輿に乗って高笑いしたり、そんなトレンディドラマに描かれる「女」たちのように。急ぎ足で大人の階段を上りはじめた我々にとって、これは「生身の男を手玉に取る」快感を手軽に味わえるゲームだった。
コロッと騙された大人の男を「バカだなぁ」「ざまあみろ」と声に出して笑うとき、復讐心が満たされるような気持ちもあった。制服を着て電車通学していると、朝の満員電車でほとんど毎日のように痴漢被害に遭う。どんなにちゃんとした格好の大人でも、一皮剥けば人間のクズだ。