『るろ剣』の戦いはなぜ「すごい」のか? 谷垣健治アクション監督に聞く撮影ポイント
例えば、役者が少しバランスを崩したけど、そこをリカバーして次の動きに行くとか、そういう「いいアクシデント」は僕らの大好物で。全てカットを割って決め決めで撮影すると、そういう映像にはならないんです。
ただ、マスターショットだけでやっているわけでもありません。マスターだけで撮っていると、いろんな情報が流れてしまうこともあるんですよね。しかも、例えば3台のカメラでずっと撮りっぱなしにしていると、互いに映り込まないようにある程度距離を取らなきゃいけない。映画には閉じた構図と開いた構図というのがあって、群衆の外から撮ることもあれば、中に入って撮る場合もあるわけじゃないですか。だから、僕らはまずマスターで撮って、その後にピックアップショットを撮ります。中に入って「この動きだけを撮る」というのがとても重要なんです。
ピックアップショットを撮るときにも、マスターショットの良い影響があって、役者さんはすでに1手から30手目までを演じて嗅覚を覚えてるから、「さっきの5手から8手目を寄りで撮りたい」と言ったら即興で簡単にできるし、切り取り方にもつぎはぎ感がなくなります。
――たとえば『HiGH&LOW』では乱闘アクションの撮影で、坊主だらけの学生達に交じるために撮る方も坊主にして…という話も聞いたことがありますが、そういうこともあるんですか?
『HiGH&LOW THE WORST』の場合は、カメラマンではなくアクション部の鈴村正樹君が、高校生達の戦いを撮るときに、群衆の中でカメラをカメラマンに引き継ぐというサポートをしていたんですね。