佐藤健×朝井リョウ、映画『何者』を通して驚いた互いの仕事観
とにかく就活っていうのは人間総合力テストでもなんでもなくて、あるひとつの能力を試されているだけの教科にすぎないんだな、ということです。
あとは、1を10にする嘘じゃなくて、0を1にする嘘をつくのはよくない、ということも身に染みて感じました。それこそ俳優とか、大勢の人の前で演技をすることに慣れていないと、0を1にする嘘をついたとき、身体に何かしらの反応が出るんですよ。背中が曲がってしまったり、目が泳いでしまったり。その面接は見事に落ちました。僕が人狼をあまり得意としない原因はそれかなと……。
佐藤:わかる(笑)。
朝井:佐藤さんはうまいんですよ。
佐藤:それは努力の賜物だから。僕も最初顔に出てたけど、顔に出ないために集中してやる。自己催眠ですね。
――就活という題材には、どんな理由があったんでしょうか?
朝井:当時SNSなどを通して感じていた「若者同士のコミュニケーションの変容」が最も顕著になる舞台は「就活」かな、と勘が働いたんです。あと、実は小説を書くときに、ニッチな場面を細やかに描いたほうが普遍性が出てくるなというのを感じていて。みんなが知っていることを書こうとすると、逆に誰にも刺さらない作品ができあがる。