純愛映画の逆を行く『ナラタージュ』 観客に「傷ついてほしい」行定勲監督の思い
そういうところを歩いているのが、ロマンティックではない現実ですよね。2人が自分の感情に気づいて必死で、寄り添いたいと思うからこそ軋轢が生まれたりして、ぶつかり合いが恋愛なんでしょうね。
僕自体が、シナリオを作っていくときに、「決定的にしたくない」といつも思っているんです。人生に決定的なことなんてちっともないから。そんなに確固たる何かを残せていける人生なんてつまんないですよね。曖昧さが好きなんです。
――そんな葉山先生の曖昧さに、くそ~と思わされたり。
恋愛の偏差値が試される映画だなって話していたんですけど、どれくらい深く恋愛の場面とぶつかって、自分が翻弄されているかが現れますよね。
恋愛には翻弄されるべきだと思うんですよ。全然好みじゃなくても、いいところを見つけると一瞬で好きになっちゃったりとか。そういう経験ってみんなあるだろうに、映画になるとどうしても美男美女の物語になってしまうから、ダメな部分を突出させています。松本君も「これ、俺、大丈夫?」って言ってましたから(笑)。
○高校生に傷ついてほしい
――松本さんは完成作を観た後に、演じている最中に感じていた葉山のダメな部分について何かおっしゃってましたか?
そこについては言わなかったけど、「思った以上に大人の映画だから、自分のファンは大丈夫かなあ」